こんにゃく入りゼリーによる窒息事故への対応及び食品の形状・物性面での安全性についての法整備に関する提言

2010年7月23日
消費者委員会

1.はじめに

こんにゃく入りゼリーを含む食品等による窒息事故については、食品安全委員会による食品健康影響評価(本年6月10日)及び消費者庁の「食品SOS対応プロジェクト」による報告(同年7月16日)が、それぞれなされている。これらを踏まえ、また、同種事故による被害の発生又は拡大の防止が消費者行政における喫緊の課題と考えられることにかんがみ、当委員会は、以下のとおり提言をする。

2.消費者安全法上の措置について

消費者安全法は、商品等又は役務が消費安全性を欠くことにより重大事故等が発生した場合において、重大消費者被害の発生又は拡大の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置がある場合を除き、内閣総理大臣による事業者に対する勧告及び命令、譲渡等の禁止又は制限並びに回収等の命令について規定している(第17条から第19条まで)。これらの規定は、上記窒息事故のようないわゆるすき間事案への対応を可能とする観点から設けられたものであり、内閣総理大臣においては、同法の趣旨を踏まえた適切な措置を速やかに講ずることが求められている。
まず、内閣総理大臣においてなすべきことは、消費者安全法の施行後に収集された上記窒息事故に関する危険情報を契機として、当該情報にかかる事案の追跡調査を含めた事実確認を早急かつ誠実に行うことであると考えられる。その上で、当委員会は、重大消費者被害の発生又は拡大の防止を図る観点から、上記の勧告及び命令など、同法が定める所要の措置が適切に講じられることを求めるものである。

3.食品の形状・物性面での安全性についての法整備について

まず、消費者庁は、こんにゃく入りゼリーやそれに類する食品等の形状・物性等の改善につながる「参照指標」の作成等、上記「食品SOS対応プロジェクト」報告で述べられた取組みを早急に進めるべきである。また、関係行政機関は、消費者庁から協力を求められた場合には、これに誠実に対応して連携を図ることが必要である。
また、食品の形状・物性面での安全性の確保については、現行法制上、これを正面から規律する法令が存在しないと考えられる状況であり、必要に応じた適切な法整備を図ることは、政府の基本的責務である。政府としては、公衆衛生の分野での知見に加え、製品安全等の分野で蓄積された知見も活用した上で、食品の安全性の確保に関する既存の法令改正のみならず、新法の制定も視野に入れつつ、消費者被害の発生又は拡大の防止の実効性を確保する観点から、できる限り広範に対応することのできる法整備に向けた検討を進めるべきである。

以上

提言の概要

  1. 消費者安全法上の措置について(安全法施行後に収集された窒息事故に関する危険情報に係る事案の追跡調査を含めた事実確認の早急かつ誠実な実施、その結果を踏まえた安全法が定める所要の措置)
  2. 食品の形状・物性面での安全性についての法整備について(「参考指標」の作成、食品の形状・物性面での安全性の確保のための法整備に向けた検討)

主な成果

  • 「こんにゃく入りゼリー等の物性・形状等改善に関する研究会」でとりまとめた報告書(2010年12月22日)において、こんにゃく入りゼリーやそれに類する食品等について、重篤な窒息事故につながり得る食品等側のリスク要因を踏まえ、「窒息事故リスク低減の考え方の整理-参照指標」を提示。
  • こんにゃく入りゼリー製造等事業者の製品改善等の取組状況について公表(2011年12月)