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「消費者問題シンポジウム in 松江」を開催しました

「消費者問題シンポジウム」とは

消費者委員会の委員が地方に出向き、消費者、関係各団体のみなさまの声に直接真摯に耳を傾け、問題の解決に効果的に取り組むため、地方の関係団体や自治体などと連携し、意見交換等を開催するものです。

松江での会合の様子を紹介します。

「消費者問題シンポジウムin松江」は消費者委員会と島根県生活協同組合連合会が主催し、「消費者被害をなくすために」をテーマに平成27年11月14日(土)くにびきメッセで開催しました。

会場の様子
(会場の様子)

当日は、松江市をはじめ近隣の市の消費者行政担当者や相談員のほか、消費者団体、弁護士、一般消費者など約40名の参加がありました。

開会挨拶を行う鎌田会長理事
(開会挨拶を行う鎌田会長理事)

冒頭、島根県生活協同組合連合会の鎌田会長理事より、「近年、消費生活をめぐる環境は、高度情報化など、社会システムが急激に変化し複雑になっています。この変化に一人一人の消費者が対応しきれないこともあり、架空請求や名義貸し詐欺など消費者が巻き込まれるトラブルが急増し、広範な消費者被害を発生させています。先月も松江市で80歳の方が被害にあった還付金詐欺の報道がございました。本年、島根県での還付金詐欺など特殊詐欺の被害は、2億5千万円を超え過去最悪を更新している状況と聞き及んでおります。このような危機的な状況のもと、本日、この松江で『消費者被害をなくすために』というテーマで、講演いただくことは、消費者被害の減少に向けての大きなきっかけ、転換点となると考えております。今回のシンポジウムが実り多いものとなりますことを祈念して開催にあたってのご挨拶といたします。」との開会挨拶がありました。

基調講演を行う池本委員長代理
(基調講演を行う池本委員長代理)

シンポジウムは消費者委員会の池本委員長代理による基調講演「消費者被害をなくすために」で始まりました。

まず、消費者被害の実情について説明しました。「最初に10年間の相談件数の推移を見ると、減っているように見え、これはいいことじゃないかと思われるかもしれません。しかし、30年間の期間で見ると、激増して高止まりしているということになります。近年では90万件前後で推移しています。しかしこの90万件の相談も氷山の一角と言えます。国民生活センターのアンケート調査によると、どこにも相談しないであきらめている方が一番多く40%となっています。特に注目して欲しいのが、行政窓口に相談した方は2.8%しかいないことです。過去30年間では急増して高止まりにある状況にあり、またその潜在化率を考えると、むしろ増えているのではという見方もあり得ます。地域の中で埋もれていると見てもおかしくないということです。

この被害額がどれくらいか、消費者庁の推計では、7.8兆円とされています。このような被害額が不本意な形で発生しているのです。全国の消費者行政予算は約140億円です。7.8兆円と推計される被害額の1割でも2割でも減っていけば、地域経済にもとても有益なことです。消費者庁の推計方法で地域の被害額を検証いただければと思います。地域社会で取り組む必要性がより理解できるのではないでしょうか。

何をすべきか。まずは相談窓口を設置することがあります。体制を充実させよう、地域で埋もれている被害を表面化させ解決していこうと窓口の整備を行ってきました。島根県では窓口整備は他の地域より一歩早くクリアされています。このあたりは、次のパネルディスカッションでパネリストより報告があると思います。人口当たりの相談件数は、全国平均が一人当たり80.9件のところ、島根県は一人あたり82.3件。あっせんの件数においては全国では8%のところ、島根県では9.8%と高い。相談窓口を整備し、地域でご利用いただく、そして解決まで持っていくことをきちんと対応されていることは評価できるでしょう。

消費者行政の予算はどう推移しているか。平成10年から相談件数は2倍になっています。しかし予算は39%減っており、さらに職員数は40%減っています。自治体全体の予算はというと、11%減に留まっています。全体の予算が削減される中、消費者行政の予算にしわ寄せがきています。地方消費者行政強化の必要性があります。」と述べました。

次いで、これからの課題について説明しました。

「4段階に課題は分けられると考えます。1つ目、相談窓口の整備。2つ目、窓口で寄せられた相談を解決までもっていく、相談業務の質的向上と被害救済機能の強化。3つ目、被害を防ぐ、行政による消費者啓発・教育と被害防止。4つ目、地域連携による被害防止・消費者市民の育成です。

地域ネットワークを作ろうということで、今、全国的に取組みが始まっています。福祉では高齢者見守りネットワークがあります。しかしこれは介護を受けていない人は繋がっていないのです。もう少し広いネットワーク、行政の課題を横断的に網羅する広いネットワークづくりが必要だと思います。島根県にはパネリストとしてご出席いただいている野津さんが事務局長をされている地域つながりセンターがあります。暮らし全体の結びつきが重要です。だからといってネットワークに頼ればいいというものでもなく、消費者被害は次から次へと新手の問題が発生します。自ら学び、エネルギーをさいてみようという人の育成が必要ではないでしょうか。

各地で消費生活サポーターやリーダー育成の取組みが始まっています。自分が被害に遭わない、しかも周りに伝えていく人。そういう人が地域のネットワークに参加していくことが重要です。そうはいっても、勉強して下さい、地域で伝えて下さいといっても、個人では実現できません。市町村の職員さんの役割が非常に期待されます。これからは地域の中で被害防止を図る、団体や人を結びつける、働きかける、本当の意味でのコーディネーター役は市町村の職員さんだと思います。

しかし、地方では専任の職員がいない状況です。消費者委員会では『消費者行政における新たな官民連携の在り方に関する調査報告』を本年8月に発出しました。いろんな業務を民間委託して進めるという意味ではありません。民間に全部委ねていては継続できません。行政は財政支援を含めてコーディネート役をかってでる。そういう積極的な連携。ヨーロッパでは『保障行政』と言われています。そのことがまっさきに活かせるのが地方消費者行政ではないでしょうか。過疎化、高齢化、買い物難民と問題は山積みです。そんな中、財産被害は深刻な問題です。それも含めてトータルな横断的、視野の広いネットワークづくりを是非期待したいと思います。」

と述べ、次の報告者である消費者委員会の黒木事務局長につなぎました。

報告を行う黒木事務局長
(報告を行う黒木事務局長)

黒木事務局長は、「消費者委員会の活動について」と題する報告を行いました。

「消費者委員会とは、今から6年前に消費者庁と一緒に作られた新しい組織です。具体的にどういうことをしているか、2つあります。1つ目、自ら調査をして審議し、消費者庁をはじめ関係省庁に意見を発信する。これは通常の審議会には珍しい、特徴的な権限です。誰かに言われたわけではなく、自ら調査するというところに特徴があります。2つ目は、大臣などからこれについて考えて下さいといった諮問を受けて審議するというものです。

自ら調査や、諮問を受けて審議するなどし、消費者行政全般を監視し、問題提起をしています。他には、河上委員長がよくおっしゃる消費者と行政をつなぐパイプ役もございます。意見書や要望書をたくさんいただいています。頂戴したものは、委員に見ていただき、次の調査テーマの参考にしています。さらに本日のような地方でのシンポジウムや消費者団体などと定期的に意見交換も行っています。

消費者委員会は10名の委員で構成され、任期は2年です。この消費者委員会委員のほかに、調査審議の必要に応じて、専門委員や臨時委員もおります。消費者問題は幅が広く、労働や防衛以外はほとんど関わってきます。消費者委員会の下に下部組織を設けており、食品表示部会、公共料金等専門調査会、消費者契約法専門調査会、特定商取引法専門調査会、特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会などがございます。メルマガを登録いただければ、会議の開催案内など発信しております。

本年9月に第4次消費者委員会が発足しました。現時点での主な関心テーマは消費者教育、地方消費者行政、官民連携などです。これらのテーマを調査していこうと動きだしているところです。」と述べて、報告を終えました。

休憩後、パネルディスカッションが行われました。パネリストは消費者庁の日下部参事官、島根県環境生活総務課消費とくらしの安全室の河原室長、島根県消費者センターの久保消費生活相談員、地域つながりセンターの野津事務局長、消費者委員会委員の池本委員長代理、コーディネーターは消費者委員会の増田委員が務めました。

コーディネーターの増田委員、パネリストの日下部参事官、パネリストの河原室長、パネリストの久保消費生活相談員、パネリストの野津事務局長、パネリストの池本委員長代理
(コーディネーターの増田委員、パネリストの日下部参事官、パネリストの河原室長、
パネリストの久保消費生活相談員、パネリストの野津事務局長、パネリストの池本委員長代理

冒頭、基調講演を行った池本委員長代理を除く各パネリストよりご発言を頂戴しました。消費者庁の日下部参事官から消費者庁の消費者被害防止に向けた国の取組みと現況について、島根県の河原室長から島根県の消費者被害防止に向けた取組みについて、消費者センターの久保消費生活相談員から具体的な事例を中心に消費者被害相談の状況について、地域つながりセンターの野津事務局長から地域の見守りの現状や実際にあった事例での取組みについて、説明がありました。パネリストの発言を受けたのち、討論を行いました。

「日下部参事官から説明がありましたように『地方消費者行政強化作戦』が策定され、地方自治体で実施に移され、数字的には徐々に達成されてきています。また、基調講演の中で池本委員長代理がお話しされた、改正消費者安全法をふまえた、消費者行政の実現として、消費生活相談窓口整備の第一段階と、消費生活相談業務の質的向上と被害救済機能の強化の第二段階に入っている中で、島根県下の達成状況は全国平均を上回る状況になっています。

ただ、相談内容が複雑化してきており、消費生活相談窓口として十分なものとなっているか、また、消費生活相談員の質を確保するための制度が整っているかということについて、それぞれのお立場からお話ししていただけますでしょうか。まず、久保消費生活相談員に相談窓口が設置されていても、消費生活相談員が配置されていないこともあるかと思いますが、そのような場合、県としてはどのように支援をしているか、お伺いします。」

「県としての支援について、相談員としては、マル1、相談員のいる市町には、経験を積んだ相談員の方が年数回から10回の巡回訪問を行う。また、相談員の方が県のセンターに来られた際、実際の相談を一緒に聞いていただくなどの方法で研修を行っています。また、マル2、相談員のいない市町には、相談員が出向き、まず、担当職員の方に相談業務の内容を理解してもらうところから始めます。担当職員の方は兼務職で『この市、町の相談は年数件しかない。』といった認識をお持ちの場合が多いが、県のセンターには担当職員の市、町からの相談が数十件に上っていることをお話することで、認識を改めていただくことが多いです。まず、行政の担当職員の方と顔つなぎを行うことが巡回訪問の目的となっています。

また、マル3、年2、3回、事例研究を中心に、相談員が講師になって研修を行っています。こうした活動の結果、市町の相談担当者から直接、相談内容について相談が来るようになり、助言ができるようになりました。今後ともできるだけ地域の相談窓口を巡回訪問していきたいと考えます。」

「野津事務局長が『おたがいさま』活動をされる中で、センシティブな問題が多々あると思いますが、そうした場合、現状ではどのようにされていますか。注意点なども含めてお話ください。」

「先ほどのご説明で申し上げましたように、地域活動に参加される方が少なくなる中で、周囲との新たな『つながり』の必要性が切実なものとなっています。有償たすけあいシステム『おたがいさま活動』の中では、直接家庭の中に入って活動する場面も多々あり、濃い人間関係ができますが、利用される方々の中には繋がりのない方、弱い方は思うより多いのが現状です。また、いろんな相談があり、例えば『食べるものがないので、何とかして欲しい。』という電話もあります。こうした場合は、その方に話をよく聞いてから社会福祉協議会や市町の担当部署に連絡をとるなどの方法で解決できるように心がけています。また、施設に入っている方が病院に入る場合には家族が付き添いをすることになっていますが、家族が付き添えない場合なども『おたがいさま活動』で対応することもあります。こうした活動の中で、今回のお話を伺い感じていますのは、依頼して来る方に、もっとお話をしてもらうようにすること、アンテナを立てることが大事だと感じました。先日、活動の中で、携帯サイト代30万円を払ったという話を聞く機会がありました。その女性の方は、『寂しくて海外の男性医師という方と会話するために、支払った。』ということでしたが、騙されたことを高い勉強代として納得しようとしておられました。この話を聞いたとき、『私、寂しかったの。』という言葉が、心に強く残りました。今日の話を聞くにつけ、こうした消費者被害の問題も勉強する必要性を強く感じています。また、『おたがいさま』は社会福祉協議会の方や地域包括支援センターの方との連絡体制はとれています。先日も見知らぬ人が高齢者のところに出入りしていましたが、ヘルパーさんやケアマネさんなど関係者と協力して高齢者の方にお話しし、結果、不審者の出入りがなくなったことがありました。事前に被害防止できたのではないかと思います。」

「島根県では、5万人未満の市町村における消費生活センターの設立と、消費生活相談員の配置、資格保有率などが課題となっているようですが、地域の特性も踏まえて、河原室長に今後の県の施策の方向性についてお伺いします。」

「強化作戦に関する島根県下の現況をお知らせすると、平成21年と27年比較で、窓口は県下19市町村について21年4市に留まっていたものが、22年には全市町村に設置されています。センターについては、21年3市(松江、出雲、浜田)が27年では大田、江津を除く6市に設置されています。5万人未満(目標50%)については、18.8%に留まっています。また、相談員数は21年7人、27年12人(8市)と増加していますが、達成率は47.4%(目標50%)に留まっています。有資格の消費生活相談員については、13名で有資格者率は56.5%と目標(75%)を下回っています。

しかしながら、相談業務全般については、県としては現状特に困った状況にはないと認識しています。ただ、より良い環境づくりを目指すこととし、まずは、交付金などを利用してセンター不在の大田、江津に設置を働きかけることを考えています。ただ、江津に見られるように、相談員の方がいない状況にあり、まずは資格者の育成に努めることとしています。専門講座、リーダー育成講座の拡充を図り、人材育成を図ることとしています。また、巡回訪問を通じ、行政相談員等の経験値を高める研修も実施していくこととしています。

ただ、市町村については財政的な問題をかかえているところも多くあり、なかなか進みませんが、働きかけを続けていきたい。さらに、市町村が連携して相談事務をおこなうことと、新たな方策を検討、支援していくこととしています。

「今後、全国的に相談業務などの強化策が実態として機能しているか、その検証が必要だと思いますが、日下部参事官には、島根県のお話を踏まえ、消費者庁の検証・対策をお伺いします。」

「消費者庁では、強化作戦の達成度に関する資料として、本日の資料として配布させていただいた日本地図(各指標の達成度を各都道府県別に色分けした資料)を用いて、ブロック会議などで、都道府県に達成状況を説明しているところです。

消費者庁としましては、地方でお使いいただく交付金を確保し、地方消費者行政の活性化事業に使っていただくことが有用と考えており、こうした交付金も利用して強化作戦の達成率を上げていただくことを地方にお願いしているところです。」

「池本委員長代理には、これまでのパネリストの皆様のお話しから、強化作戦を踏まえ、どのような感想をお持ちか、伺います。」

「これまでのお話を伺い、気づきの点を何点かコメントします。まず、5万人以下の自治体すべてで相談員を配置し、体制を整えることは大事なことですが、相談が年間数件しかない場合などは費用対効果を考えると得策とは言えません。先ほど河原室長が言われていた市町村間の連携ですが、2つの形態があります。1つはABCの市町村がある時、3つの自治体が合同のセンターを設置し、担当の曜日を決めて3つの自治体からの相談を受け付けるといった方式、もう一つは中核的な市Aがある場合、BCがAに委託して相談業務を行う、この2つの方式があります。ただ、2つ目のケースで大事なのは、BCの自治体が予算はAに渡したので、後はよろしく!といったことがないようにすることが大事な点です。BCの行政職員の方も相談員に任せるのではなく、定期的にセンターを訪れ相談員の方と顔なじみになり、Aの行政職員とともに相談員さんと協力して取り組むことが大切です。県から小規模自治体への支援が必要だと考えています。

県のそうした市町村へのバックアップ事例を紹介します。1つは京都府です。京都府は京都市以外の市町村はそれほどの規模がありません。そうした中、京都府がテレビ会議用の回線設備を設置し、小規模自治体を結んだテレビ会議を開催し、地域の相談員の方の研修に活かしています。これだと相談員の方の手が空いている時に研修に参加できるメリットがあります。また、テレビ回線を通じて地域の相談員から県の相談員さんに相談内容を相談できるようになります。折角の交付金ですので、こうしたところに使ってはいかがかと思います。

「被害回復が困難な事例が増えてきている状況の中で、消費者教育だけでは被害を防ぐことが難しい、こうした状況において、消費者被害防止には連携が大きな役割を持つと思われますが、現場に近いところで活動されている野津さんには、これまでのお話を聞かれて、これまでの経験で、連携がとれなかったことや、うまくとれたこと、また、今後、速やかに連携を図るにはどうしたらよいか、伺います。」

「これまでのお話を聞いて『深いつながり』が大事なポイントかと思われました。見守りネットワークは、民生委員や地区社会福祉協議会などの方が行われていると思われますが、私たちのように、JA、生協、保健生協など、企業体の活動でも『おたがいさま活動』のように、いろいろな「顔を合わせる」活動を行っている訳で、お互いどのような活動を行っているか、活動の中での気づきを共有できるような交流を見守りネットワークの方々とできることが大事なのではないかと感じました。ただ、民間の活動団体が地域の民生委員の方と連携しようとした場合、問題となるのが個人情報保護法の問題だと言われています。何か地域の問題を解決するための活動を行おうとしても、地域の自治会などから『そうそう個人情報を教えるわけにはいかない』と言われ、進まないことが多々あります。中には民生委員のトップの方が『個人情報とはいえ、命にかかわることだから』といって開示してくれる場合もあります。ネットワークという観点からは、このあたりの問題があります。また、先ほど出た啓発活動や消費者教育の話題に関連して、小・中・高と消費者教育を学んでいただき、高校生には、消費者教育の先生として地域の集会に参加し、『皆で気を付けよう』的なことはできないでしょうか。また、消費者サポーターについても、勿論専門的な知識は必要だと思いますが、サポーターのハードルを下げて、誰でも参加できるようにしてはどうかと考えます。『あいサポーター』などは研修を受ければだれでも活動できる仕組みになっています。消費者ホットライン『188』については、つい最近知りましたが、例えば、子どもが間違った薬を飲んだ時は『#8000番』が子育ての本なんかに掲載されています。私の娘は、『中毒180番』という情報を持っていました。身近にすぐに連絡をできるように『188』の番号の普及についてもいろいろな媒体に掲載する工夫が必要ではないでしょうか。

「消費者相談において、近年高齢者からのご相談が増えてきており、直接面談ができない場合や電話での相談が難しい場合などの工夫、注意点など、被害者相談の課題を久保消費生活相談員に伺います。」

「ご承知のとおり、島根県は東西に細長い県で、直接被害者相談が難しい傾向があります。また、特に少し認知症が入った方、足腰が弱い方などは、民生委員や社会福祉協議会の相談委員の方に付き添われて来られる場合や、または代わりに民生委員などからの電話での相談になります。データ開示は設定されていますが、マニュアル化されていません。例えば、どこの町の誰それが消費者被害に遭ったとの情報があったとしても、その地区の、どの機関にお願いして被害情報を集める、といったことが明確になっていません。そのため、被害者ご本人に電話で確認し、了解を得て、地域包括支援センターの方たちと出向いて行くことになります。ただ、そうしたことをされても困る、という方もいて難しい状況にあります。

池本委員のお話にありましたように、センター相談に来られるのは3%、残りの97%が隠れています。被害者から相談を受けた方が、『消費者センターに行けば何とかなる』と言っていただければ非常にありがたいと感じます。センターは被害者の生の声を聴けるのが強みになります。啓発、出前講座の場でもこうした生の声に基づいたお話ができます。これまで被害者になる可能性のあるご本人たちに講演に行きましたが、今後は被害者の周辺の方、例えば『おたがいさま』のような活動をされている方にもお伝えするのが私たちの新しい仕事だと意識しています。」

「ただいまお話がありましたように、消費者トラブルが多発する中で、今後警察との連携や行政処分を進めるかと思われますが、連携の関係で、河原室長にお伺いします。」

「見守りネットワークについては、高齢者、障害者を中心に進めているところですが、島根県の高齢化率、独居老人率の割合は、いずれも全国平均より高い現状があり、悪質な業者がマーケットにしているのはこういった方々が対象になっている。高齢化率が高いということは、トラブルに巻き込まれることも多いわけで、こうした消費者被害を防止するためにも既存のネットワークを活用しながら進めていくことになります。これまでは、本人が困った時に相談するのが通常の形態ですが、ネットワーク化によって民生委員の方たちが相談に来ない方の問題を吸い上げることが期待できます。

また、あっせんによって解決できた割合は、本県は85%程度で推移しており、他県と比べ高い割合ですが、解決できていないものがあり、これを解決できるように行政ADRなども使って、より一層解決率の上昇に努めることとしています。」

「では、次に日下部参事官に消費者庁の立場から、見守りネットワーク等を作った後、継続的に持続させるためにどういったことが必要かについて、お伺いします。」

「消費者安全法が改正され、来年4月施行となります。この改正の中で消費者安全確保地域協議会を設置している場合、協議会に加入しているとかなり自由に個人情報を取り扱え、共有することができるようになります。もちろん、この協議会は既存の組織をベースに設置されてもかまいません。安全法の施行により個人情報の問題はかなり解決されるのではないかと考えています。

海外とのトラブルについても、消費者庁では、『消費者庁越境消費者センター(CCJ:Cross-Border Consumer Center Japan)』を開設し、海外事業者と国境を越えて行う、越境取引でトラブルに遭った消費者からの相談を専門的に受け付けていました。越境消費者センター(CCJ)は、インターネット通販等の、海外事業者との取引でトラブルに遭った消費者のための相談窓口で、海外の消費者相談機関と連携し、日本の消費者と海外の事業者のトラブル解決を支援しています。今年4月から国民生活センターに機能移管を行いました。

また、消費者教育については、高齢者への消費者教育は重要ですが、民法改正に関し成年の年齢が議論されている中で、18歳までに、高校生にも契約の概念等、消費者教育の必要性が高まっています。消費者ホットライン『188』の周知については、ご指摘の通り6%くらいしか認知が進んでいません。『188』に電話し、音声で郵便番号の入力を求められますので郵便番号を入力すれば、近くの消費生活センターにつながるようになっています。もっと宣伝していかなければなりません。また、国民生活センターも行っているが、消費者庁においても消費者被害についての注意喚起のための周知に努めているところです。」

「では、次に池本委員長代理にこれまでの皆様の意見を踏まえて、ご意見をお伺いします。」

「まず、個人情報に関連して、消費者安全確保地域協議会についてですが、皆さん結構設置のハードルが高い感じで捉えられています。新たな協議会を設置しなければいけないように考えられていますが、決してそんなことはなく、既存の組織、例えば高齢者部門に関するネットワークが既にある場合、そのネットワークに定期的に消費者問題に取り組む部分を追加し、名称を消費者安全確保地域協議会として認可してもらえばよい。その際、ネットワークの方を協力員、また、協力団体として委嘱することで、その方たちには個人情報をお伝えすることができるようになりますので、上手くこの制度を使っていただきたい。もう一つは、既存のネットワークの方々に、消費者問題に気づく目、あるいは伝える力を養っていただきたい。そのための出前講座などに取り組んでもらいたい。それと、島根県でも養成されている、消費者リーダーとして地域で活躍してもらう意欲のある方々については、日常から地域の消費者問題について勉強をしていただき、何か問題があれば消費生活センターへと周囲に知らせてもらうことも一つの役割ですが、単に何回か講座を受ければ力が付くというものではないので、やはり、相談員の方と顔の見える関係になることが重要です。そのためには県が要請した消費者リーダーの資格を持つ方が、どの市にどのくらいいるか、そうした情報を市町村に伝え、市町村の相談窓口と消費者リーダーが年に何回か意見交換してもらうようにしていくことが役立ちます。そうなれば、消費者リーダーの活躍する場を広げることができ、人材育成の場を提供することができます。」

パネルディスカッションで意見を交わすコーディネーターの増田委員とパネリストの皆さん
(パネルディスカッションで意見を交わすコーディネーターの増田委員とパネリストの皆さん)

パネルディスカッションの最後に、各パネリストからまとめや感想などのコメントを頂戴しました。

地域つながりセンターの野津事務局長から「ネットワークは福祉関係だけではなく、地域の中にいろいろなネットワークを作って活動している方々が多くあります。今、『つながり』とさかんに言われています。きっかけづくりは、いろいろ多様にあることが望ましいのですが『顔が分かる』関係の構築が大切だと感じました。やはり、顔が分かる関係にならなければ、安心して話せる関係にならず、何か被害に遭っても話してもらえません。今後とも『顔の見えるつながり』づくり、ネットワークづくりを地域の中でやっていこうと思いました。」

島根県消費者センターの久保消費生活相談員から「消費者委員会の存在は、名前だけは知っていました。今回シンポジウムのお話をいただき、何を行うのか、趣旨が良く分からなかったのですが、これまでの打ち合わせを通じ、また、昨日、センター訪問を受け、島根の行政の中だけで考えていたことに対し、全国ではこんな良い方法を取っているとこがあるとか、この辺りは直した方が良いとかいろいろなお話が聞けて良かったと感じています。私たち相談員も、今後の消費者行政にお役に立てるのではないかと考えられ、参加させていただき良かったと思います。」

島根県環境生活総務課消費とくらしの安全室の河原室長から「本県の場合相談先として20%、全国的には、3%という話をお伺い本県は良く相談を受けていると言えます。ただ、昨年度、消費者基本計画改定のためにアンケートを行ったのですが、70%の方が「よく知らない」という結果でした。まだまだ、よく知られていないということで、消費生活センターの存在を県民に知っていただくようにしていきたいです。そのためにはリーダーの育成とともに活用策、また、消費者被害の防止のための県民運動に取り組むことが必要と感じました。また、センターは土日やお昼休みでも相談対応していますので、こうしたことも知っていただくようにしたいと考えています。」

消費者庁の日下部参事官から「中央で仕事をしておりますと地方の現状がなかなか良く分からないところがあります。しかし、本日はパネルの中で、いろいろな実例を教えていただき、勉強になったと感じています。『つながり』についても都会特有の問題として捉えてきましたが、昨今は地方においても同様で、いろいろな工夫をして『つながり』を維持し、消費者被害の防止につなげていらっしゃる。消費者問題が全国的な課題となっている中で、今後とも消費者庁は単に予算獲得面のみでなく、消費者被害防止のために制度面でも整備を行ってまいります。そのため、消費者委員会にも特商法等の改正に向けて様々な審議をお願いしているところです。」

消費者委員会の池本委員長代理から「参加者の皆様、今日のシンポジウム、お疲れ様でした。消費者庁、消費者委員会がこうした地方でシンポジウムを開催する目的の1つに、委員会や消費者庁での大きな方向性や動きをお知らせするとともに、地域の消費者行政に対する問題提起があります。ただ、今回は問題提起を行おうとした課題の各段階、消費生活センターを紹介し、相談を受け、解決していく、また、そうした相談事例を用いて啓発活動を活発に行う、さらに地域のネットワークを構築する、ということに島根県さんは先進的に取り組んでおられ、全国平均を上回る結果をだされておられる。私としては今後こうした課題に取り組んでおられる各地でお話する際に、『島根県ではこうした取り組みをされていますよ。』という良い材料をいただいたというのが本音です。そしてこの流れをさらに高めていくには、『消費者被害は地域において重大な問題なのだ。』と認識してもらうことが重要です。首長さんや行政の方、自治体の中で、消費者問題が認知症対策や要介護などの暮らしの問題に直結していることや、安全・安心の観点から、命、財産被害も含め、そうした多種多様な問題を抱合しているのが消費者問題だ、と認識してもらうことが大切です。また、地域の他の課題に取り組んでいらっしゃる関係者も含めて、先ほど島根県の河原室長が言われたように県民運動として、地域が一体となって消費者問題に取り組むことが大切だと考えています。今後の島根県の活動に大いに期待していますので、今後とも宜しく願います。」

コーディネーターの消費者委員会の増田委員から「私も今回大変勉強させていただき、島根県がモデルケースとしてご紹介できるのではないかと思います。本日の池本委員の資料の中に、相談先の割合の表があるのですが、『家族に相談した』『友人・知人に相談した』『消費生活センターなどの行政の窓口に相談した』『消費者団体に相談した』と回答した合計は、約32%になります。周辺の方と行政が連携することで、3割を超えることを考えると、こうしたネットワークを構築していくことは大切だと改めて思いました。今後はそれを目指して頑張っていきたいと思います。本日はお忙しい中、参加いただき、誠にありがとうございました。」と総括し会合は終了しました。

参加者のアンケート結果から

会場では参加者にアンケート調査を行いました。アンケートには、

  • 啓発の成果で自ら気づくだけでなく、まわりの方がどう発見するかも大事であるかが分かりました。
  • 「おたがいさま」の活動では消費者被害を問題としたことがあまりなかったとあったが、被害にあったことを他人に話にくいのだろう。身近な人からの支援とともに消費者センターのような公的機関の支援、両方が必要と思う。
  • 消費者行政はともすれば行政の中でも後回しになることが多いように受けとめています。消費者行政に、もっと光をあてて、こうした被害が少しでもなくなる方向になるようご努力をいただければ幸いです。
  • 大企業だけではなく、地元の中小企業へのトラブル未然防止を視野に入れた協力体制について考えてみてほしい。
  • 昨年夏頃、他県で一人暮らしの母親が貴金属店で店の人にのせられて、パンや牛乳を買うように2、3日おきに10万円単位の買い物をしていたことがわかり、消費者センターに相談したことがありました(島根県ではない)。担当者は非常勤の方で週に3日くらいしか出勤日がなく、話がなかなかできず困りました。またアドバイスとして、「店に手紙を書いてみたらどうか、半分くらい(お金)はもしかしたら戻るかもしれません」と言われ、がっかりしました。もう少し相談員さんに研修を受けさせるなど必要だと思いました。そのためには予算措置も必要だと思います。

などのコメントが寄せられました。

松江市、島根県への表敬訪問

開催前日である11月13日(金)池本委員長代理は表敬訪問のため松江市の松浦市長、島根県の新田環境生活部長をそれぞれ訪ね、開催にあたっての後援のお礼を述べ、当シンポジウムについて、島根県の消費者被害について、取組みについてなど幅広く意見交換しました。

松江市の松浦市長と撮影
(松江市の松浦市長と撮影)

島根県の新田環境生活部長と撮影
(島根県の新田環境生活部長と撮影)

以上

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