「第5回地方消費者委員会(山口)」を開催しました

地方消費者委員会とは

消費者委員会の委員が地方に出向き、消費者のみなさま、関係各団体のみなさまの声に直接真摯に耳を傾け、問題の解決に効果的に取り組むために、地方の関係団体や自治体などと連携し、地方での意見交換等を開催するものです。

山口での会合の様子を紹介します

写真集はこちらから御覧いただけます。

河上委員長が演台で参加者に向かい講演する写真
河上委員長による基調講演

「第5回地方消費者委員会(山口)」は、消費者委員会とNPO法人消費者ネットやまぐち、山口県弁護士会が主催し、平成24年10月20日(土)に山口市にあるニューメディアプラザ山口多目的シアターで開催されました。
参加者は、県・市の消費者行政・福祉行政担当者、消費者関連団体(生協)、消費生活相談員、弁護士等の98名で、遠くは、尾道市や北九州市からの参加もありました。

シンポジウムの冒頭、NPO法人消費者ネットやまぐちの長井美智子理事長からの開会挨拶があり、河上正二委員長の基調講演「高齢者の消費者トラブルについて」で始まりました。講演の中で、河上委員長は「高齢者をだましているのは若者。若者を加害者にしない教育も必要」と述べました。

続いて、山口県消費生活センターの石田健一所長から「山口県における消費者行政の現状と取組」について報告がありました。報告の最後に、石田所長は「高齢者は外出の機会も少なく、情報が届きにくい状態。地域の防犯ボランティアや民生委員、介護士、警察など、高齢者のすぐ隣りで寄り添っている方々とのパイプ役となり見守りをしていきたい」と締めくくりました。
次に、公益社団法人全国消費生活相談員協会会員の松下和子相談員から「高齢者の消費者被害の現場からの事例報告」がありました。松下相談員は、日々の相談業務の中から、いくつかの問題点を明確に打ち出し、「広告をわかりやすく、せめてメリットとデメリットは同じ大きさで表示するなどできないか」など、いくつかの提言をしました。

休憩の後、消費者庁の村山裕消費者政策課長から「消費者安心アクションプラン(原案)」についての説明があり、その後、パネルディスカッションが行われました。
パネリストは山陽小野田市地域包括支援センターの尾山貴子所長、山口県弁護士会消費者問題対策委員会の出口裕理委員長、事例報告者の松下和子相談員、消費者委員会の山口広委員、NPO法人消費者ネットやまぐちの吉冨崇子副理事長の5名が、コーディネーターは消費者委員会の原早苗事務局長が務めました。
最初に、パネリストから、高齢者の消費者トラブルの現状について報告がありました。「地域包括支援センターの認知度はまだ低いが、高齢者を介護、福祉、健康、医療等さまざまな面から総合的に支える中核的機関として活躍している。高齢者の家の中に実際に踏み込める強みを生かし、高齢者が消費者被害に遭わないよう、各関係者の連携役を担っていきたい」「県弁護士会は県や市の消費生活センターと連携して被害回復に取り組んできたが、最近は詐欺的投資トラブル等、事後回復が困難な案件が増えている。消費者被害の未然防止にフィールドを広げていくのがこれからの課題。悪質業者が簡単に預金口座、電話番号を入手し、法人登記できる仕込みを変える必要を感じている」「消費者分野で働く人たちと、他分野の連携の薄さの克服が課題。啓発は、し続けることが大事。行政の担当者が短期間で異動し、知識・経験が行政に蓄積されていかないのは問題。相談員の処遇向上、長期雇用は、相談窓口の専門性の向上につながり、結果的に県民にとってはメリットが大きいはず」など、それぞれの立場からコメントがありました。
続いて、高齢者被害の防止、救済についてディスカッションが行われました。主な意見には、「従来どおり、体力や判断力の衰えた高齢者だけを啓発対象に、高齢者対策をとっているだけではいけない。最近では、知識、学歴、お金や社会的地位もあり、判断力がしっかりした高齢者が投資詐欺の被害に遭って相談に訪れるケースが増えている」「消費者被害に遭ったことを周囲に相談したり、情報提供することで、社会全体の消費者被害が軽減されるという共通認識を育む必要がある。『相談することは恥ずかしくない、みんなで地域を守ろう!』の意識が大切」「悪質業者の口座を凍結し、仮押さえしても、残金がゼロというケースが多い。悪質業者の『やり得』を阻止する抜本的な取組みが必要」「悪質商法はやっただけ損をする、やったら捕まる、と悪質業者に思わせる抜本的な対策が必要」などがありました。

パネルディスカッション中のステージを撮影した写真。コーディネーター原事務局長が立ち上がり資料を手に話をしている。
パネルディスカッション

また、フロアからも、「悪質業者の手口は年々巧妙化している。高齢者には被害の未然防止のため、電話帳から電話番号を消すことを提案したい。いい人に見える営業マンが、優しく甘い言葉をかけて騙してくるのが消費者トラブルの実態」「自治体と地域の民生委員等との連携だけで消費者啓発を進めるのには限界がある。先般、消費者教育推進法が成立したが、消費者庁、文部科学省をはじめ、国レベルで横の連携を深め、各自治体で推進すべきことを強調してもらうことは大きな効果がある。国にはぜひ努力してもらいたい」「地域での高齢者見守りも大事だが、都会に出ている子や孫に、週に1回でも高齢者の安否確認をするよう、キャンペーンを行ってはどうか。子が親の面倒を見ない風潮は地方だけの問題ではない。都会でも問題意識を共有化すべき」等々の提案をいただき、会場を巻き込んだ活発な意見交換が繰り広げられました。

最後に、河上委員長から「高齢者被害には決め手となる解決策がないが、『見守り』と『連携』が重要なキーワード。若い人や行政が見守るだけでなく、今後は消費者問題の関係者や法律家だけでなく、大脳生理学の分野の方なども含む、多様な連携が望ましい。また、バーチャルオフィスやレンタル電話等、人を騙すためのツールが使いにくくなるよう、制度的な工夫も必要。消費者委員会としても、高齢者被害の問題を一過性のものとせず、関係する方々と問題を共有しながら具体的な解決策を探っていきたい」と締めくくりの発言がありました。

参加者のアンケート結果から

会場では、参加者を対象にアンケート調査を行い、参加者の声を集めました。アンケートでは、「周囲を巻き込んだ対策が必要だと思った。連携が取れていないことは大きな問題なので、行政も、市民にもわかりやすい情報提供・開示が必要だと思う」「大変参考になる会でした。被害防止につとめ、老人を見守りたいと思っています」「山口まで来ていただき、委員会の様子を生で感じることができ、身近に学習できてよかった」などのコメントがありました。

山口県副知事、山口市長への訪問

地方消費者委員会の開催前日の10月19日(金)、河上正二委員長と原早苗事務局長が、山口県庁を訪ね、岡田実副知事へ後援のお礼と、最近の消費者問題や課題などについて忌憚なく意見を交わしました。
続いて、山口市役所を訪問し、渡辺純忠市長へ後援のお礼と、消費生活センターの実態などをお聞きし、地方消費者行政の重要性について意見交換を行いました。

  • 向かって左から河上委員長、岡田副知事、原事務局長の3人が並んだ写真
    岡田実副知事を囲んで
  • 向かって左から原事務局長、渡辺市長、河上委員長の3人が並んだ写真
    渡辺純忠市長を囲んで