消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体等との意見交換会 議事録(9月16日)

日時

2014年9月16日(火)13:58~16:01

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
石戸谷委員長代理、阿久澤委員、岩田委員、齋藤委員、高橋委員、夏目委員、橋本委員、唯根委員
【説明者】
全国消費者行政ウォッチねっと
拝師徳彦 事務局長
河村真紀子 事務局次長
全国消費者団体連絡会
河野康子 代表理事(共同代表)
山根香織 代表理事(共同代表)
日本経済団体連合会
阿部泰久 常務理事
斎藤仁 政治社会本部長
日本ヒーブ協議会
上田稚子 代表理事
鈴置由紀恵 副代表理事
日本弁護士連合会
野々山宏 消費者問題対策委員会 委員長
大迫惠美子 消費者問題対策委員会 副委員長
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、大貫参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体等との意見交換について
    全国消費者行政ウォッチねっと
    拝師 徳彦 事務局長
    河村 真紀子 事務局次長
    全国消費者団体連絡会
    河野 康子 代表理事(共同代表)
    山根 香織 代表理事(共同代表)
    日本経済団体連合会
    斎藤 仁 政治社会本部
    日本ヒーブ協議会
    上田 稚子 代表理事
    鈴置 由紀恵 副代表理事
    日本弁護士連合会
    野々山 宏 消費者問題対策委員会 委員長
    大迫 惠美子 消費者問題対策委員会 副委員長
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開 会≫

石戸谷委員長代理 定刻よりも早いですけれども、皆さんがおそろいですので、始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。ただいまから、「消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体等との意見交換会」を開催させていただきます。

大変申しわけないのですが、委員長が急遽海外の出張で、今、帰国の途についているのですけれども、間に合わないということで欠席となっております。山本委員が欠席になっております。

では、まず、配布資料の確認につきまして、事務局からお願します。

○大貫参事官 お手元に配布しました資料ですが、議事次第の裏側に記載しております一覧表をごらんいただきますと、資料1から資料5-3までということでございます。参加いただいた皆様からの資料を御発言順に記載しております。不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますよう、お願いいたします。

なお、本日の会議につきましては、公開で行います。議事録についても後日公開することといたします。

石戸谷委員長代理、議事進行をよろしくお願いいたします。

≪2.消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体との意見交換について≫

○石戸谷委員長代理 それでは、議事に入りたいと思います。消費者委員会のほうでは、今後の運営改善等の参考にするために、消費者団体ほか関係団体から御意見を伺うということで、今年度も開催したいと考えております。

すみません、きょうは全部「さん」づけでよろしくお願いします。

本日は、全国消費者行政ウォッチねっとから拝師徳彦さん、事務局長。

河村真紀子さん、事務局次長。

全国消費者団体連絡会から河野康子さん、代表理事。

山根香織さん、代表理事。

日本経済団体連合会から阿部泰久さん、常務理事。

斎藤仁さん、政治社会本部長。

日本ヒーブ協議会から上田稚子さん、代表理事。

鈴置由紀恵さん、副代表理事。

日本弁護士連合会から野々山宏さん、消費者問題対策委員会委員長。

大迫惠美子さん、同副委員長ということであります。

お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。

毎年行っているものなのですけれども、これまで大きいテーマで意見交換をさせていただいたのですが、どうも話が拡散的になるので、今回はワンテーマで行ってみようということで、消費者基本計画というテーマを取り上げてみました。

問題関心なのですけれども、消費者基本計画は2004年の消費者基本法のときに各党からいろいろ案が出たのですが、現行の消費者基本計画の仕組みが導入されまして、2005年度から2009年度までが第1期の5年間というのを実施いたしまして、普通であれば、その段階で消費者保護基本法のときの消費者保護会議のときとどう違ったのかみたいなのを一応総括をして、次のステージにと多分そうなったと思うのですけれども、2009年は御承知のとおり、消費者庁、消費者委員会が発足いたしまして、発足して、すぐ次の基本計画をつくらなければいけないということになって、司令塔としての消費者庁ができて、消費者委員会ができて、どういうふうにこの基本計画をつくり上げていくのかというのが、一種試行錯誤みたいな状況の中で、次の計画をつくり上げていったということだったと思います。

傍聴して拝見している限りにおいては、随分透明化されてきたなという感じはありまして、それが定着しているのですけれども、他方、本年4月に総務省から勧告が出ておりまして、基本計画については消費者庁が司令塔としての機能を発揮して、政府全体として、いつまでに何をやるのかということを体系的にもうちょっと取り組むべきではないか、みたいな内容になっております。

そういう意味からすると、ここでもう一度、基本計画をどういうことでつくり上げていくか、もちろん重点施策はどうあるかとか、個別の施策の問題でも結構ですし、その辺について意見交換できれば、何かしら次のステージに進む場合の手がかりが得られるのではないかということで考えました。

個別施策とか体系的な点については、まだ時期的にそれぞれ組織ですので、積み上げていくのに時間がかかると思いますので、ちょっと早いかと思いますけれども、他方、今、言ったようなことで、これから次の基本計画のキックオフという時期なので、そういうことを考えるにはちょうどいいタイミングではないかと考えておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

問題関心はそういうことでありますので、意見交換のほうを時間が取れれば、うれしいなと思っております。ということでありますので、15分以内ということで時間を決めておりますが、15分以内ということで15分使い切らなければとか、そういうことは全くありませんので、よろしくお願いしたいと思います。

では、まず順番が、全国消費者行政ウォッチねっとからよろしくお願いします。

○全国消費者行政ウォッチねっと拝師事務局長 全国消費者行政ウォッチねっとの拝師です。

発言メモというのをお出ししていまして、資料1に基づいて簡単にお話しさせていただきます。個人的な意見がかなり入っているということを御了承ください。私のほうからは、新しい消費者基本計画、特に重要と思われる点とか、あるいは見落としがちではないかと思われる点について、ピックアップしてお話をしたいと思います。

まず第1が「公益通報者保護法の抜本的な改正」をぜひ入れていただきたいということで、我々ウォッチねっとのほうでは、10回にわたり勉強会を重ねてきまして、いろいろな関係者の方に来ていただいて、お話を伺っています。そうする中で、やはり相当、現行法は不十分な点がたくさんあるのではないかということで考えておりまして、例えば、通報者への報復、異動とか降格ですね。なかなか外から報復かどうかがわかりにくいようなものも多いわけですけれども、そういうことをしても何の制裁もない。そのために繰り返し報復を行う。報復というのは通報した人に対する報復ですね。そういうことがやられている企業が現に存在していて、今の法律では、それ以上はもうどうしようもないという状況が現にありますので、こういうことも踏まえて、きちんと見直しをしていただきたい。

そもそも公益通報者保護制度というのが、市民のために有益な情報を取得するための一つの重要なツールであるという位置づけをした上で、対象範囲の拡大も含めた抜本的な改正が必要であると考えています。

次に第2ですが、「地方消費者行政の充実強化」ということで、これまで国としては地方消費者行政活性化基金を延長してやってきて、それなりの成果が出た部分もあるかと思うのですが、やはり一つは限界が見えてきているのが、小規模自治体のほうでどうしても伸び悩みが顕著であるということですので、こういうところを中心に継続的な財政支援が必要であろうと考えています。

一方で、もともと基金というのはあくまで地方自治体が自分のところで独自予算をつけて、きちんと自立していくためのサポートをする期間であるという位置づけでお金を交付してきたわけですから、当然その独自予算化のための具体的な方策を国としても提案しながら、自治体がなるべく頑張ってやっていくというサポートは当然しなければいけないと思うのですが、他方で地方の現場を見てみると、本当に基金が終わってしまうと一気に基金相当額の予算を一切つけないということで、頑張ってふやしてきた相談窓口、相談員なども一気にその部分を削ってしまうのではないかというところもあります。ですから、一気に後退するおそれもありますので、そういう実態をよく見ながら、丁寧な支援策を講じることを計画の中にもきちんと書き込んでいっていただきたいと思っています。

地方消費者行政の大きな流れとして、人材育成、消費者教育であるとか見守りの中で活動する人材育成ということが入ってきたり、あるいは当然、窓口支援などというのもきちんとしていかなければいけないということだと思いますが、そういう中で都道府県の役割が今まで以上にはっきりしてきていると思いますので、都道府県の役割なども見落とさずにきちんと書き込んでいっていただきたいと思います。

第3として「消費者事故調の機能強化」ということで、消費者事故調自体は調査件数がなかなか上がらないとか言われながらも、少しずつ実績を上げてきて、我々としては実際に行われてきた消費者事故調、消費者安全調査委員会の調査の視点とか報告書の内容そのものは基本的に先進的なものであろうということで評価をしています。重要なのは、その事故調査の結果、提案された改善策ですね。意見具申等が実際に実施されて、初めて事故調査が完結する。これによって社会の安全度が上がっていくという立てつけになっていますので、事故調として改善まできちんと見届けるべしということをはっきり書いていただいて、事故調のミッションを基本計画の中に明記していただきたいと思っています。

見落としがちなのが、次のポツに書いてあるヒヤリハットの関係でして、今の安全法の立てつけからしても消費者事故調そのものがヒヤリハット事案についても事故調査をして対応できるということにはなっているのですが、実際になかなかそこまで手が回らないということと、あとはそもそも事故調査をするときの視点として、ヒヤリハット情報をその業種として、業態として、どういうふうに集めて、どういうふうに対応策を立てていくべきかというあたりの視点が弱いのかな、あるいは欠けているのかなという気がしています。

これはもう事故調査の中身そのものですが、やはりヒヤリハット情報をきちんと集めて分析する。それは事故調そのものがやるだけではなくて、当然それぞれの業態の中でやっていただかないと、いつも事故が起きてから、後から調査をするということでは、事後対応ということになってしまいます。ヒヤリハット情報を集めて分析して対応すると予防というのができて、一歩進んだ安全対策ということになるわけで、こういうものを業界の中に浸透させていくという意味では、事故調査、事故調査の中でその分野のヒヤリハット対策がどうなっていたかというのを書いていく必要があるだろうと思います。そういう視点もぜひ基本計画の中にも書き込んでいただきたいと思います。

第4、これは大分スポットを狭めた議論ですが、マルチ被害の問題です。これについては現行の計画では、一応項目としては載っているのですが、消費者庁としては対応は実施済みとなっています。ただ、実際に被害はまだ存在していますし、特にマルチの特徴としては被害がなかなか表に出てこない。潜在化したまま組織として処理されてしまう可能性が結構高いだろうと思っていまして、被害実態について、さらに慎重に調査をした上で踏み込んだ対応が必要ではないかと考えています。

第5「訪問販売、電話勧誘販売についての不招請勧誘禁止」ということで、消費者委員会そのものが非常にこの不招請勧誘の問題については頑張っていらっしゃると思いますが、御存じのとおり、高齢者被害のほとんどは電話によるアプローチがきっかけです。それが結果的に特商法の訪問販売の形態になるのか。あるいは電話勧誘販売の形態になるのか、それはともかくとしまして、実際には訪問販売そのものでいきなりぴんぽんとやって来るよりは、何らかの形で電話でアプローチしてくる。それがきっかけで被害に遭うというケースが圧倒的に多いと思います。ですので、DoNotCallとかDoNotKnockなどの海外の制度とか、またはその成果なども見極めた上で、ぜひ導入の検討を進めていっていただきたい。そのための先鞭として基本計画の中にこの辺はきちんと書き込んでいただきたいと思っています。

最後に「消費者団体支援の強化」ということです。消費者団体支援については、消費者庁国会のときの附帯決議にもこう書いてありますし、形式で言うと、地方消費者行政活性化基金でも消費者団体支援に使える部分もあるので、一部そういう支援をしていただいている面もあることはあるのですが、ただ、やはり適格消費者団体を始めとして、財政的にも苦しい団体が非常に多くて、なかなか力をまだ伸ばし切れていないというのが現状だと思っています。この辺も抽象的に消費者団体を支援しましょうということではなくて、もう少し具体的な支援のあり方も含めて、検討の場を設けていただければと思います。

結果的には、消費者行政そのものが消費者団体のきちんとしたバックアップを得ることで、非常に強くなるという関係にありますので、民間にただお金を渡すということではなくて、自分たちの消費者庁あるいは消費者委員会の政策課題を実現するために消費者団体というのをきちんと強化するのだと。そういう政策的な目的を持って支援をするという位置づけをしていただければと思います。

私のほうからは、とりあえず以上です。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

河村さん、よろしいですか。

○全国消費者行政ウォッチねっと河村事務局次長 後ほど。

○石戸谷委員長代理 いろいろと意見がある委員の方もいそうな感じですけれども、一通り、まず各団体から御意見を頂戴してから意見交換としたいと思います。

では、次に、全国消費者団体連絡会、お願いします。

○全国消費者団体連絡会河野代表理事 全国消費者団体連絡会からは、代表理事の一人で主婦連合会から山根会長と、事務局長の河野が参加させていただいております。

今回の消費者委員会さんとの意見交換会といたしまして、いただいた消費者基本計画なのですけれども、消団連として、どのような心構えでこれに取り組んでいくのかということで資料をつくらせていただきました。そういう視点から個別の案件についてではなくて、どういうふうな立ち位置に立って第3期の消費者基本計画を見ていくかというところで、現在、全国消団連のところで意見交換をしている内容を御紹介させていただきたいと思っております。

資料2をごらんください。目前に迫りました第3期の消費者基本計画改定への対応ですけれども、全国消団連では2014年度の重点テーマとして位置づけております。消費者庁さんによる素案が12月中旬ごろに提示されるということですので、8月の理事会では今後の取り組みをそこの四角の箱の中に書かせていただいたように決めまして、まず12月は素案が出る前までの取り組み。それから、素案提案後、どんなふうに私たちはそれに対してアプローチをするかというふうに分けて考えております。

12月中旬までは社会の大きな変化の中で、特にここのところ、世の中の流れというのは物すごく早くなっています。最初に国生審で消費者問題に対して提案があったころから、世の中の流れというのは倍々のスピートで進んでいると感じております。社会の大きな変化の中で消費者政策に何が求められているのか。生活者の視点から大きな立ち位置に立って、問題設定の大枠について考えていこうと思っています。素案が提案された後は具体的に検討して、各論に関する意見を出していきたとい思っています。

「2.これまでに寄せられた意見について」ですけれども、今までに5月以降、そこに書いてあるように消団連では、さまざまな検討の場を設けてまいりました。5月には運営会議の中で、2014年度、今年が第2期の最終年度になりますけれども、今年度の進捗点検・見直しのパブリックコメントを提出ということで、そのことに関しまして質疑応答を行い、私どもの意見をまとめて提出したところでございます。

8月に行いました理事会では、今、1番のところで申しましたように、基本計画改定に向けた取り組みの進め方について検討を行いました。つい10日前なのですが、学習会を行いました。学習会では、変化する社会と消費者政策の課題ということで、消費者政策改定に向けて、慶應大学大学院の石岡准教授に御講演いただいた後、参加者の間で意見交換を行いました。この内容をこの後の2ページ以降でざっくりまとめてございますので、今から簡単に御紹介したいと思います。

2ページ目をお開きくださいませ。消費者基本計画を含めて、消費者問題のことを創世記から時系列で学んだり、消費者の権利はどんなものかというのを学んでいく中で、参加者の中からそこに大きくまとめましたように、1から7番くらいまでの意見が出てまいりました。

まず、消費者問題の領域を広くとらえることが重要ではないかということでございます。消費者問題は暮らしの多様化とともに、さまざま広がっている点をしっかり押さえること。いわゆる消費者被害回復だけに特化しない、広い視点からの基本計画づくりが望まれるのではないか。特に環境や情報といったような、取引を媒介としないけれども、暮らしに影響する領域が拡大している。消費者問題を権利・義務関係に絞り込むと、やはりそこにとらわれてしまう。こういう見方が一つ出されました。

2つ目は、「他省庁との連携強化」でございます。2つ目の●にありますように、国民生活審議会の時代と第1期消費者基本計画のころまでは、他省庁の政策にもっと積極的に口を挟んでいたように思うという経験者の方の御意見がありました。消費者庁が誕生して以降は、なかなか消費者庁の所管に関する基本計画的になって、やや射程が短くなっているのではないか。基本計画を他省庁の所管に口が出せる、しっかりとしたツールとして活用していくような方向性が望ましいという御意見がございました。

また、同様に消費者委員会も本委員会だけで議論を進めるのではなく、テーマごとに専門委員会をしっかり配置して、その中で知見を集めていく仕組みにしてほしい。消費者団体とも連携を図るべきだという御意見もいただいております。

3つ目、「消費者の権利を『用いる』」。これまでは消費者の権利はこうであると唱える時代だった。理念としての権利から権利を行使する、用いる時代に変えていかなければいけない。第3期を迎えましたので、それにふさわしい、私たちが使える基本計画にしていくことが必要だという意見をいただいています。

法制度・権利ができてしまうと、それで満足してしまいがちである。行政も制度を実効的にすることに力を入れていってほしいと思いますし、消費者側も積極的にそれを求めることをしていかないといけないという御意見をいただいています。

3ページに移ります。3ページでは、「『保護』を適切に位置づけること」というまとめにさせていただきました。自助という言葉が実は2年前から今の基本計画の中に入っています。しかし、その自助という言葉の説明は、本文の文章の中にはございません。私たち消費者にとって、消費者政策にとって、自助という言葉がどういう意味で使われているのか。そのことを改めて考えたいという問題提起がございます。

自己責任、消費者教育の問題とされてしまうことが多くなって、それと自助がつながるということでございますけれども、なかなか納得がいかないという御意見を結構たくさんいただいております。消費者の自立というのは目指すべきところではございますけれども、自立というのは依存の反対語であって、保護と対立する言葉ではない。社会構造や経済構造の中で消費者保護というのは、当然その対象者も含めて積極的に図られるべきであるという意見が出されています。

5つ目「『知らされる権利』の確保」。私たちからすると、知る権利と言い換えもできますが、知らされる権利の基盤整備として当然のことながら、企業による情報公開の徹底。先ほどウォッチねっとさんの御報告にもございましたけれども、内部告発者の保護等について、もっと言及、強調していくべきではないか。さらに新しい時代に知らされる権利を確保するためにはどうしたらいいのか。消費者・事業者間に構造的存在する情報格差はますます差が開いている。このあたりに対して、しっかりと言及すべきではないかという御意見をいただいています。

6番目は「地域の底上げを図ること」でございます。1960年から1980年代、そのころは高度成長期ですけれども、当然、国民の暮らしはほぼ同じレベルで底上げしていける時代だったと考えております。現在はサービスも経済化されております。各個人の暮らしも本当にさまざまになりました。それに加えて、各地方でも抱えている問題はさまざまになっています。空間的な地域差、個々の消費者が抱えている個人差にどう対応するかも新しい基本計画のテーマの一つかもしれないと見ております。

最後に、国際指標からの評価でございます。安全な商品・サービス、公正な市場経済というのは、諸外国から日本への評価につながる、日本にとって非常に大切な価値であると思っています。日本の消費生活がしっかりと担保されれば、諸外国から見て日本は非常に評価すべき国だ、安全な国だ。当然インバウンドの観光客等も入ってくるでしょうし、商品の取引も盛んになると経済にもいい効果を及ぼすと考えます。このあたりをどう考えていくか。

さらに現在、検討中でございますけれども、国連消費者保護ガイドライン、ISO26000等の国際指標からの検証も行うべきだという御意見をいただいています。

では、まとめます。最後に先ほどの1ページの一番最後の3番目をごらんくださいませ。今回は5年ぶりの抜本改定の機会になります。できるだけ多角的な視点から問題設定の枠組み自体を検討することが重要だと考えています。例えば、歴史的な視点。今日まで消費者政策の変遷をもとにして、国生審での報告から第1期、第2期に盛り込まれました消費者基本計画。そうしたところを踏まえまして、今後5年間に求められる基本計画はどのようなものであるべきか、考えなければいけないと思っております。

少子高齢化、情報化、さらに国際化などの情勢変化からの視点。国際的なバランスをどうとるかという視点。さらに地域への配慮という視点。また、現計画の継続としての視点。最後に、消費者の8つの権利、5つの責務。そうした本来、消費者が目指すべき目標からの視点など、さまざまな視点から論議を起こしていくべきだと考えております。

消費者団体はこれまでも、その時代の動きをとらえて活動を組み立ててまいりました。これからの5年間、どこに目標設定して、どのように提案していくのか。この秋の取り組みの中でしっかりと知恵を寄せ集め、私たちも意見を申し述べていきたいと考えております。

以上です。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

それでは、日本経済団体連合会、よろしくお願いいたします。

○日本経済団体連合会阿部常務理事 経団連の阿部でございます。初めに、関係団体等ということで、意見交換会にお招きいただきまして大変ありがとうございます。

経団連としては、消費者基本計画について総括的な検討はまだ行っておりません。これから申し上げますことは、あくまでも事務局の意見だという前置きで、まず3点申し上げたいと思います。

1つ目は、これから新しく消費者基本計画をつくる上でぜひとも考えていきたいのは、地方自治体をどう活用するかということであります。さきの通常国会で改正景表法が成立いたしまして、権限が都道府県知事に移譲されたわけでありますが、都道府県と申しましても、人員規模、予算規模で十数倍、20倍以上の差があるところがございます。

正直、東京都でできたことが小さいところでできないとか、あるいは同じ法制度の執行がばらばらになることは非常に困るわけでありますので、ぜひとも地方自治体によります消費者行政あるいは運用については、なるべく均一化を図っていただくように消費者庁、消費者委員会としても御指導いただきたいと思います。

特に霞が関の縦割りが県庁の縦割りにつながっているような事例が往々にございますので、消費者行政についてはそういうことがないように、消費者委員会、消費者庁と中央各省庁との連携と、自治体の各部局との連携がうまくいくようにということを切にお願いしたいということが1点目でございます。

2点目は、広報というのか、教育というのか、今までいろいろなことで御尽力されたわけでありますが、やはり対事業者向けについて、特に個人事業者、中小零細事業者に消費者政策が届いていないというのが実態かなと思っております。事業者は、法人だけでも二百数十万、個人事業者も合わせますと400万という単位でございます。私どもの努力不足もございますが、その隅々にまで今の仕組みをきちんと熟知していただいて、適切な対応をとっていけるようにするためには、一つには、当然、地域の経済団体とか業界団体の御努力も必要かと思うわけでありますが、やはり消費者行政の中で国あるいは地方自治体のお仕事の中で、事業者に対する教育、広報、啓発というものを今まで以上に御尽力いただければと思います。

3点目は、法制度について2つ申し上げたいと思います。1つは、消費者契約法の抜本的な見直しでございます。昨年論点整理が出されまして、1年たっておりますし、この3月からは消費者庁で検討会も開かれているようでありますが、そろそろ本格的な検討の場に移していただきたいということでございます。当然、民法の債権法関係の改正の動向を待ってということかと思いますが、既に法制審議会の民法部会からは、要綱仮案の提示がなされております。一番肝心な定型約款のところはこれからということでございますが、年末には決着がつくはずでございます。そういう意味では、民法改正の動向を踏まえた上で、消費者契約法の抜本的な改正を正式に議論する場が整いつつあると思います。日弁連さんから既に意見書が出ているわけでありますが、私どもも当然に意見を述べたいと思っております。ほかの各団体等からもいろいろな御指摘があるかと思いますが、できるだけ幅広い場をつくっていただきまして、この消費者契約法の抜本的見直しに取り組んでいきたいということでございます。

あえて申しますと、私どもは決して後ろ向きではございません。民法の見直しにはかなり後ろ向きのことを申しましたけれども、民法は一種の基本法としての位置づけがあるわけであります。そういう意味では民法の上に立つ特別法としての消費者契約法につきましては、いろいろな議論があって然るべきだと思います。私どもも真摯に対応いたしますので、是非ともきちんとした場をつくっていきたいと思います。

もう一つは、景品表示法の改正についてでございます。景表法の見直しの二段目の課徴金の導入について、今、議論されております。お手元の資料3は8月末に課徴金導入についてパブリックコメントに付されましたので、そこで改めて意見を述べたものでございます。ここでは繰り返しませんけれども、私どもは今の概要に2点ほど疑問がございます。

1つは、これは法律の案文を見なければわからないところがあるわけでございますが、一体この事業者にどこまでの立証責任を課すのかということでございます。もともと私どもは重過失のみを対象にすべきと主張したわけでありますが、概要では幅広く対象にした上で反証を行えということでございます。特に零細な事業者は一体どのような反証を行えばいいのか。ここが定かでないということが1点目です。

2点目は、事業者の自主的な対応に対する課徴金の減免制度でございます。これは非常にうまくつくられたと思うわけでありますが、やはり最終的に国民生活センターに寄附をすればいいんだ、みたいな話になりますと、景表法の役割とずれてくるかなと思います。一概には反対いたしませんけれども、うまく制度設計をしていただければと思います。

私からは以上です。補足を斎藤のほうから。

○日本経済団体連合会斎藤政治社会本部長 政治社会本部長の斎藤でございます。

本日はまだ基本計画の素案をつくる前の段階ということで、ざっくばらんに考えているポイントを2点申し上げます。1つは、各省庁の施策との連携について。もう一つは、マルチステークホルダーの視点についてです。この2つにつきまして、具体例を挙げて御説明させていただきたいと思います。

消費者基本計画は消費者庁が所管している30本くらいの法律をもとに書いてございますが、各省の施策と関連する共管の法律もございます。それらについても書いてあるのですが、見たところ、はっきり申し上げまして、何かホチキスどめの感を否めません。各省庁が本来行っている施策との間の連携とか消費者の視点というのをうまく引き出したような、わかりやすい計画にできないかということを考えております。

その一例といたしまして、消費者庁は地方消費者フォーラムというのを全国8ブロックでやっておりまして、今年は高齢者の見守りネットワークというのが政策の目玉だということで、消費者庁とここにいらっしゃる消団連さんが中心となって行われております。私どものほうでも社会的責任円卓会議というのをやっておりまして、事業者、消費者のみならず、労働組合、金融セクター、NPO、NGO、ほかの省庁等が集まった一つの円卓会議という場がございます。

そこで高齢者の見守りネットワークをテーマに8月末にキックオフ集会というのを行いました。河野事務局長もお出になって一緒の席で議論させていただきましたけれども、その中で感じましたことは、高齢者のネットワーク、もちろん消費者庁は高齢者が詐欺とか金銭的な被害に遭うことを防ぐための見守りという視点で政策を考えて、そのための人員と配置を考えていらっしゃいますが、実は見守りという観点でとったときに、例えば、社会福祉の関係の包括ケアでありますとか、民生委員さんとか、あるいは社会福祉協議会の活動、さらにNPO、NGOの活動、そして、また事業者でも宅配業者でありますとか、地方の信用金庫、信用組合といったところが地域密着型でさまざまな活動をしています。

これは見守りという点では共通しているのですが、その活動自体は必ずしも詐欺に限った問題ではなく、幅広く御老人にお声がけをしたり、自殺の予防とか、あるいはコミュニティーの場をつくったり、もっと言うと地域全体の活性化のためにどういうことをやったらいいか、さまざまな視点で考えております。そういった施策というのがあって初めて高齢者を孤独にしないし、だまされないというのが出てくるというものではないかという点で、消費者団体をはじめとする皆さんが集まった会議の場で意見が一致したところでございます。

ところが今の消費者庁の法体系は、高齢者の金銭的取引の被害ということしか示唆がないわけです。高齢者の見守りというのはもっと大きな次元の話なので、そこを各省庁の見守りに関する政策をうまく横ぐしに見ていただいて、その中で協力できる点は何かというような視点をぜひ計画の中に盛り込んでいただければいいのではないかと思います。消費者基本計画は消費者政策会議という全閣僚が一堂に会する場での決定でございますので、何も狭義の消費者政策に限った問題ではないと思います。それを実現するためには、今は地方創生の時代ということで、地方創生基本法というものもできるそうでございますけれども、その中で消費者教育、地方消費者行政の活性化をどう位置づけるかというような視点がぜひ必要ではないかというのが第1点ございます。

第2点は、消費者教育でございます。これは今度、板東長官になられまして、実は板東さんが文科省の局長時代に私どもと消団連が事務局をやりまして、文科省で消費者教育フェスタというのを開催しました。そのときに御挨拶いただいたのが今の板東長官でございますが、教育という観点では消費者庁の消費者教育がございますし、もちろん文科省もございますし、環境教育もございますし、金融教育がありますが、それぞればらばらに行われて、それぞれが横に見ているような状態です。その主体として事業者も一生懸命やっていますし、また、NPO、NGOも一生懸命やっています。

例えば、今年の11月には小泉前首相のお声がけで始まりました、UNESCOで行われますESDというEducation for Sustainable Developmentの国際会議が名古屋と岡山で開催されます。そこはSustainable Developmentの教育でございますので、消費者教育とすごく共通する点があります。ところが、消費者庁とか消費者団体とかは余りかかわっていない。専ら環境省とかNGO、NPOが関わっている。しかし、目的とするところは同じです。

そういったものは幾らでもありまして、せっかく基本計画をつくるのであれば、そういったものも含めた横断的な視点、さらにプレイヤーとしてのマルチステークホルダーの視点を入れた形の計画にしていただきたいというのが私のほうの感想でございます。よろしくお願いいたします。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

引き続きまして、日本ヒーブ協議会、お願いいたします。

○日本ヒーブ協議会鈴置副代表理事 本日は、日本ヒーブ協議会代表理事上田と私、副代表理事鈴置の2人でお話しさせていただきます。

お手元に封筒の中に入れて配布させていただいている資料がございますが、これは発表の際に随時御案内いたします。

まず、「ヒーブとは」について、鈴置より御説明いたします。日本ヒーブ協議会は、企業の消費者関連部門に働く女性が生活者と企業のパイプ役として、よりよい仕事をするため、その能力向上を目的に1978年に設立された団体です。1920年代にアメリカで家政学会の一分科会として設立された、消費者と企業を結ぶ役割を持つHome Economists In Businessが語源で、日本では企業内家政学士と訳されます。

消費者運動が活発になり出した70年代、日本にもヒーブの考え方が導入されましたが、アメリカとは異なり、家政学士に限定せず、企業の消費者関連部門に働く女性が企業と生活者の信頼関係を構築すべく自らが参画し行動する女性の会として活動し、今年で発足で36年目を迎えました。会員数は4月現在92名、会員企業は75社で、東京、関西、九州の3支部で活動しております。資料として会員企業一覧をつけてございますので、後ほどごらんいただければと思います。

2ページ、ヒーブ協議会の活動とスタンスですが、異業種の女性交流によるノウハウ共有と自社へのフィードバック及び社会への情報発信を活動とし、独自調査や分科会での研究会成果などを出版物で発表しております。スタンスとしては、企業人であると同時に生活者としての立場をとり、企業と生活者のパイプ役としての役目を担っており、消費者視点と就労視点の2つの視点を活動に生かしています。

消費者視点で見ると、企業人として売り手の視点に立つことができると同時に、生活者として買い手の視点で立つことができます。同様に就労視点で見ると、自分が働く上で企業をどのように考えるかという働く女性と企業という視点とともに、生活者として仕事とプライベートの生活にどのように折り合いをつけるかといった働く女性と暮らしを考える視点を持ちます。配布資料の図のように、4つの領域から企業と生活者をとらえております。

3ページ、お手元に配布させていただきました具体的な成果物について説明いたします。まず、「お客様の声を活かした取り組み55事例」は、設立35周年を節目に実際に会員企業で消費者の声をもとに、消費者と行政のコミュニケーションツールの一つとして、企業の商品やサービスに反映された事例をまとめた事例集です。多業種、多方面の事例をまとめることで消費者の現状やその声を生かす着眼点への理解を深め、今後の会員企業の事業活動につなげていただきたいと考えました。また、このような企業の積極的な取り組みを消費者や行政もお伝えしたいという思いで作成いたしました。

次に、青い表紙の「働く女性と暮らしの調査」ですが、こちらはヒーブ協議会が1985年から継続して実施している調査の報告書で、独自調査の実施によるオリジナルデータの蓄積と対外発信として企業で働き、生活者の視点を持つヒーブならではの提言を掲載しています。こちらは第9回になりますが、こちらでは質問を定性項目とトピックに分けて、トピックでは東日本大震災前後の生活意識の変化や、会社内での男女共同参画の状況なども調査分析いたしました。

最後は、資料では印刷だけですけれども、こういう冊子が1つできておりまして、こちらは「電話・Eメールお客様対応マニュアル」。こちらは会員が例年自主的に行ってきた研究活動の成果をまとめたもので、1993年に作成されたマニュアルから数えて3回目の改訂版になります。本冊子ではお客様対応の基本的なスキルを中心として、言葉遣いや電話対応のほかに業界別の事例を掲載するとともに、Eメール対応の基本的な考え方や参考事例も掲載しています。昨年度からこれを活用したお客様対応基礎講座を実施し、今年度も1月に予定をしています。また、高齢者からのお問い合わせがふえている現状から、高齢者対応を深堀した改訂を今後の課題としています。

○日本ヒーブ協議会上田代表理事 続いて、上田のほうから消費者基本計画に係る最近の関心事項について述べさせていただきます。

4ページ、企業間ネットワーク形成による企業活動の模索はもとより、企業と消費者の相互理解の促進によるギャップの縮小化。企業と行政間のネットワーク形成による消費者への情報伝達の2つを推進させるべきだと考えております。

まず、企業と消費者の相互理解推進によるギャップの縮小化ですが、55事例、先ほど鈴置が説明した事例にも掲載しています表示などの事例も一例になります。消費者行動の多様化により、今まで企業が当たり前としてきたことがそうではなくなり、相互理解の促進に向けたコミュニケーションツールの開発と活用が求められています。また、企業の大小にかかわらず、消費者の声を生かす取り組みが必要です。現場の情報を企業人、生活者の両方の立場から集約して、具体的な改善につなげることが課題となっています。

次に、企業と行政間のネットワーク形成による消費者への情報伝達ですが、企業、行政それぞれが持っている情報が共有されることにより、より多くの消費者への伝達が可能になると考えます。

5ページ、続いて、消費者基本計画への要望ですが、お客様相談業務や商品開発に携わる会員が多いヒーブ協議会では、社会全体が消費者間、企業間について、正しくとらえていくことが必要だと肌で感じております。消費者保護法が消費者基本法にかわって久しくなりますが、現在でも消費者は保護とされる対象の位置づけが強く、消費者と企業は対立構図でとらえることが傾向として多く見られております。消費者行政はトラブル回避に追われ、被害に遭わないことが賢い消費者であり、消費者教育も消費者の信頼確保のために行われているように感じております。もちろん情報格差はありますが、現在の消費者は多種多様な情報を容易に、しかも迅速に収集できるようになっています。企業からも有益な情報を提供しております。

こうした情報を活用し、消費者が自主的に行動し、商品、サービスを選択することで企業の健全な育成を推進することが必要になってきます。消費者が自ら消費活動、選択活動によって企業支援、育成することにより、企業側もより積極的に消費者を研究し、消費者視点を発揮することが企業側からの情報提供や消費者教育の支援に推進できるようになります。

先ほど御紹介した、「お客様の声を活かした取り組み55事例」集もそうした消費者からの寄せられた御意見や御要望から改善された事例を集めています。こうした事例集が消費者の目に止まることで、企業努力についても理解を深めてもらい、さらなる提案や要望をもらえることは企業活動にとっても非常に有意義なことです。こうした信頼関係を循環させることで、企業と消費者は決して対立構図ではなく、Win-Winの関係になると思われます。

消費者は適切な情報収集により正しい選択と対処ができ、企業にも意見を言い、自らの消費生活を充実させる立場にあるとの意識転換もこうしたことで可能になると思われます。そして、消費者行政には、こうした消費者と企業との密接な信頼関係の構築をバックアップしていただきたいと思います。また、消費者教育は消費者の自立的消費行動と倫理的消費行動の推進によって社会の利益と発展を考えた、消費者、行政、企業の三者がスクラムを組める三位一体になることが理想だと思われます。

6ページ、消費者基本計画について前述しましたヒーブ協議会の視点から申し上げますと、消費者視点では対行政、対企業について消費者力の向上、総合的支援が推進されておりますので、双方向のコミュニケーションは形成されつつあると思います。しかし、企業人としての視点から申し上げますと、企業と行政の関係については指導監督といった一方通行のコミュニケーションが多く、企業と行政の情報交換、情報共有はまだ十分とは言えないと感じております。

例えば、基本計画の重点課題であるPIO-NETの情報は、企業側から自社の企業の詳細を開示請求できず、企業活動に役立てることはできないというのが現状です。しかし、企業に直接寄せられるお客様と同様、そこには企業に寄せられるものとはまた違った視点の情報で企業活動の改善、事故の未然防止につながるヒントがあるかもしれません。既にあるシステムをより積極的に活用し、コミュニケーションを活性化するだけで従来の構造が大きく変わり、今後につながるものと考えます。

7ページ、これから目指す三位一体の消費者市民社会に向けての期待をヒーブ協議会がどのようにお役に立てるかという視点で述べさせていただきます。

まず、ヒーブ協議会では、先ほど鈴置が説明しました、客様対応マニュアルを通して、業界を横断したコミュニケーションのあり方を検討し、高齢者対応など、世の中の変化に対応しようとしております。こういった消費者と企業とのコミュニケーション活動が同様に広がるべきだと考えます。

また、行政に入る消費者情報を企業との共有について、PIO-NETの中の情報の活用であるとか、あとは55事例の事例集のように消費者の声が企業を変える存在であることを示す場。また、企業も常に改善を継続していることを伝える場があることが望まれます。

3つ目としては、企業からの情報を集約して、行政から消費者に伝えるコミュニケーションツールとして、例えば、企業の窓口対応などの実態調査ですとか、企業の直接のお客様に対しての実態調査を行政が活用することで、行政、企業双方からの消費者対応がスムーズになり、コミュニケーションが深まると思われます。

ヒーブ協議会では、働く女性と暮らしの調査に代表される統計調査のように調査会社に外注せず、日ごろマーケティング調査やリサーチを専門とする会員によって独自調査を実施している事例もあります。これらの冊子データは消費者とのコミュニケーションツールとなり、消費者と企業との相互理解を推進できる重要な資料と考えています。

8ページ、ソーシャル型の消費者市民社会実現のためには、消費者、企業、行政それぞれが自発的にコミュニケーションをとり合う、より連携を強化した関係になるべきです。そうした関係づくりのために行政と企業が共同できることをヒーブ協議会の立場で御提案いたします。

1つ目、ダイバーシティです。海外進出や国内での消費者の多国籍化など、消費者の多様化により企業の窓口対応もかなり変化をしております。中でもPIO-NETの報告にもあるように高齢者からの問い合わせは企業でも増加し、一くくりで高齢者と言っても認知症などのトラブルを抱えた方もいらっしゃれば、現役世代よりも活動的な方など多様化しているので、対応が複雑化しております。それぞれの企業でも悩みはありますけれども、なかなか共有することができておりません。論点が少し違うかもしれませんが、ヒーブ協議会の感じている課題として、高齢者の企業への問い合わせ、もしくは企業と高齢者の対応などの実態調査に取り組む予定にしております。今後、ヒーブ協議会の元代表などで組織されている消費者力支援研究所の協力も得て実態を把握し、お客様対応のノウハウとしてまとめる予定です。これらの実態調査を企業と行政が共有することで、よりスムーズな対応や消費者の信頼確保にもつながると考え、行政の連携を期待しております。

次に、自立して考える消費者を育てるためには、消費者の意識調査など、行動だけではなく真相の実態把握や変化もとらえて、方針に加味すべきだと考えます。

最後に、消費者教育です。消費者支援功労賞を毎年表彰されて、ヒーブ協議会でも数名いただきましたけれども、こういった団体や個人など消費者教育の実績を持った方々と行政との連携がよりよい消費者教育の循環につながるものと考えます。ヒーブのOGで消費者支援功労賞をいただいたものも消費者力支援研究所を立ち上げて、消費者力支援のノウハウの蓄積や啓発活動を行っております。今回、消費者基本計画の見直しにつきまして、ヒーブ協議会の立場で意見を申し上げさせていただきました。

以上でございます。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

では、最後に日本弁護士連合会、お願いします。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会野々山委員長 日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会の委員長を務めております野々山です。私のほうから御報告をさせていただきます。

きょうは資料を3つ用意させていただきました。メインは資料5-1でありますけれども、まず、資料5-2をご覧ください。これは私どものこの1年の活動状況です。当委員会は1985年に発足しておりまして、今年で30年目を迎えております。1989年に松江で開催された、人権擁護大会で3つの目標を掲げました。

1つ目は、司令塔となる消費者庁の設置。2つ目は、統一消費者法典の制定。3つ目は、消費者のための司法の実現。この3つを目指して、これまで30年活動してきております。

現状認識でありますけれども、消費者庁の設置は5年前に実現をしております。当初は非常に混乱をしていたと、私も渦中にいて非常に実感をしていたわけでありますが、大分落ち着いてきて、一定の活動・成果が積み重なってきているという認識であります。さらに、消費者庁が司令塔として、どう強化していくかということが非常に重要な課題であると考えております。

2つ目の統一消費者法典の制定は、まだ実現の過程でありますけれども、さまざまな法律ができつつあると考えております。ただし、そこには理念の統一の問題、あるいは各法律間の連携の問題、その他重なりあったり、個別ばらばらであったりしている。そういうところを統一的に考えていくことが、これからの課題だと思っております。

3つ目の消費者のための司法の実現。これは一番遅れております。消費者裁判手続特例法ができましたけれども、現実の通常の訴訟における手続は証拠開示の問題、あるいは証拠収集の問題など、消費者の権利の実現のために必要な訴訟手続が欧米に比べても極めて遅れている。これは30年間全く前進していないと考えております。こういう現状認識の中で消費者基本計画も考えていきたいと考えております。

そこで資料5-1を見ていただきたいと思います。これは本年4月18日に当連合会のほうで消費者基本計画の検証評価、計画の見直しに向けて出させていただきました意見書です。大部でありますので、要約をしたいと思います。重要な点と考えているのは9つあります。それを順次お話をしていきたいと思います。

第1点は、安全に関する課題が多い。安全に対して十分な取り組みがされていないという認識であります。意見書には番号がつけてあります。1から19番までがいずれも安全に関するものであります。この中で4点、特に重要だと考えているものがあります。

1つ目は、1番に書いてあります、PIO-NETの充実であります。安全に関する被害がPIO-NETには十分入ってきておりません。取引事案は十分入ってきていると考えておりますけれども安全事案が少なく、この辺の対策が重要であると考えております。

2つ目は、5番に記載をしております、リコール制度の問題であります。リコール制度はありますけれども、十分消費者に浸透しているかどうかということと、ヒヤリハット情報の積極的な活用が十分にされていくかということが非常に重要だと考えております。

3つ目は、8番に書かれていることであります。消費者安全調査委員会、消費者事故調です。できておりますが、私どもから見て十分に機能しているとは見えてきておりません。消費者事故の予防、再発防止のためにさらに強化が必要です。十分機能していない原因をきちんと把握しながら、さらにこれを強化、充実をしていっていただきたいと思っております。

4つ目は、9、16、19番に記載した、いわゆる消費者安全に関する実際の事件ですね。近時諸問題が発生していまして、具体的には窒息事故であったり、食肉の食中毒事件、あるいはぎょうざなどの毒物混入事件があります。こういう事件は決して終わってはいないということであります。忘れてはいけない。こういう事案の再発のない規制というものに対して、きちんとした対応が必要であると考えております。これが第1点の安全に関する問題であります。

第2点としては、最近の課題である、食品表示に関する課題が重要と考えております。この意見書の20から25番が食品表示に関するものです。ここには健康食品も含めて考えているわけであります。ここでも4点ほど重要だと考えるものがあります。

1つ目は、20番に書かれておりまして、食品表示法ができたわけでありますけれども、その食品表示基準の策定が重要であるということで、きちんとしたわかりやすさだけではなくて、基本理念を持った基準を策定する必要があると考えております。

2つ目は、健康食品の機能性表示であります。これについては貴委員会でも現在検討を進めているわけですが、日弁連としては届出制を前提とした緩和については反対であるという意見を持っております。この点も重要な課題だと考えております。

3つ目は、健康食品に関する広告規制が十分ではないと考えております。昨今の健康食品の送りつけ商法等があるわけで、直接的には表示の問題ではありませんけれども、こういう健康食品の曖昧さというものから、健康食品の知識が十分に消費者に浸透していない点が一つの原因にはなっているのではないかと考えております。

4つ目は、食品には限りませんけれども、52番に書いてあるのですが、景品表示法の執行強化と課徴金の導入をしっかりやっていただきたいと考えているところであります。

先ほどの機能性表示は24番、健康食品の広告適正化は25番ということになります。

続きまして、第3点の課題としては、エステ、美容医療サービスについて、私どもは重要な課題であると考えております。被害事例が未だに多く寄せられておりますし、医療とのボーダーラインのところにありまして、厚労省との関係もあるわけでありますけれども、重要な課題だと考えております。

番号としては26番であります。ここではホームページを広告の規制対象にしていくということです。即日施術というものが横行しているわけでありまして、一応ガイドラインでは、これを回避するように言われているわけでありますけれども、この回避の徹底というものが重要であると考えております。

第4点の大きな課題としましては、重要な消費者関連法の改正であります。これは3つあると考えております。1つは、消費者契約法であり、2つは、特定商取引法であり、3つは、割賦販売法です。この3つの改正が非常に重要だと考えております。

消費者契約法につきましては、29番に記載をしております。消費者が使える法律にしていくということ。制定時に積み残した論点について、再度きちんと立法事実を踏まえた議論をしていくことと、民法改正で漏れた消費者関連条項の導入についても議論をしていっていただきたいと考えております。私どもはつい最近、意見書とともに消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)を出させていただいております。

次に特商法の改正であります。これは番号で言えば30番、44番、45番に記載しております。具体的には、訪問買取に関する規定であるとか、あるいは指定権利の廃止、除外事例の縮小、後出しマルチというものが今、行われておりますので、マルチの強化が必要だと思っています。大事なのは実際の被害事例に対応した法律をつくらなければいけないと考えております。

さらに割賦販売法の改正の問題であります。これは31番に書いてあるものであります。マンスリークリアカードに対する対応。決済代行への対応が重要なポイントであると考えております。

第5点の大きな課題といたしましては、高齢者の被害増加の対応があります。つい先日、国民生活センターが認知高齢者という言葉を使っていましたけれども、そういう認知高齢者被害が1万件を超えたということであります。もちろん、その認知高齢者の周りには認知症には至らない高齢者の被害がたくさんあるわけでありまして、これに対する対応が非常に重要だと考えております。これらは飛び飛びで申しわけないのですが、34番、41番、43番、49番、61番、62番、65番、66番に記載しています。このように横断的な課題として,被害が非常にあるということです。

34番や66番で申し上げているのは、ネットワークづくりであります。高齢者への見守りのネットワークづくりが非常に重要だと考えております。高齢者に対する対応は犯罪行為、いわゆる商法と言えるかどうかということもありますので、その詐欺的商法あるいは詐欺そのものに対する摘発の強化が必要だということで、この点は43番、61番、62番で記載をさせていただいております。

もう一つ重要だと考えておりますのは、こういう悪質商法のツールそのものを規制していくということであります。

49番を見ていただきますと、これは商業・法人登記制度を利用して、実際はもう空っぽな会社であるわけですけれども、あたかも法人があり、その信用力を悪用したものがあります。未公開株とか社債商法ではそういうものがありますので、こういうものを何らかの形で対応していく対策が必要になってくる。もちろん携帯電話なども含めてであります。こういうツールに対する対応が高齢者被害への対応には重要だと考えております。

第6点の大きな課題としては、住宅に関する課題であります。これは35から41番にかけて記載し、取り組んできております。これまでは欠陥住宅という形で考えてきておりましたけれども、住宅から地盤、宅地ですね。地盤の問題がこれからは重要になってくるということであります。

38番をごらんください。ここでは東日本大震災の経験の中で、宅地の安全性確保が非常に重要であるということが認識されました。その宅地の地盤形成の中にさまざまな過失や問題点があるということがありまして、今回、広島の土砂災害においても宅地の問題。これは何が原因かということはこれから原因究明がされていると思いますけれども、建物から宅地の問題がこれからは重要になってくるだろうと考えております。

第7点は、インターネット取引などの新しい情報機器による被害への対応が重要だと考えております。これは88から102番までに記載させていただいております。

特に重要なものは4点ほどありまして、1つは88番に記載させていただいた決済代行業者への問題ですね。割賦販売法の問題でもあるわけであります。2つは同じく、88番に書きましたが、国境を超えた取引の取り組みです。決して今の消費者庁の相談窓口だけで十分かというと、決して十分ではないと考えております。

3つは、95から99番に書いておきましたが、電気通信事業法に基づくものです。現在、総務省を中心に、電気通信取引分野の適正化、クーリングオフを強化していくことをやっておりますけれども、これも非常に重要な課題だと考えております。

4つは、102番に書かせていただきました、パーソナルデータの利活用の問題です。これは利便性もありますが、さまざまな問題もあるわけで、その問題について重点課題として考えていく必要があると考えております。

第8点は、消費者市民社会の実現に向けた消費者教育の充実強化ということでありまして、これは総務省の勧告の中でも、より具体化するようにということが書かれてあったかと思いますが、重要だと思っております。

第9点は、創設5年目を経た消費者行政に関する課題です。71から75番、83から86番に書かせていただきました。3つあると考えております。1つは、消費者行政の3機関である、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターのそれぞれの役割と連携、充実といったものが重要になってくると考えております。

2つ目は、地方自治行政、地方消費者行政の充実であります。

3つ目は、適格消費者団体をはじめとする消費者団体の支援というものですね。これをきちんとやっていくことは必要かと思います。

消費者行政の課題については総務省の消費者取引に関する政策強化の結果に基づく勧告の中でも個別にあったことだと思っております。これら9点が重要だと思っております。

本年度になっての喫緊の重要課題につきまして、資料5-3をおつけさせていただきました。内容までは踏み込みませんが、主には、1つ目に商品先物取引法における経産省あるいは農水省の省令による不招請勧誘禁止の緩和の問題。2つ目は、いわゆるカジノ解禁推進法案の問題。3つ目は、消費者契約法改正。4つ目は、景品表示法への課徴金制度導入が喫緊の重要な課題であるということで意見書を出しています。この点についても、これからの取り組みいかんによっては、基本計画の中に盛り込んでいく必要があると考えております。

以上でございます。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

各団体から貴重なお話をありがとうございました。ここから先はシナリオなき進行に入っていくわけでありまして、先日、委員間のほうで今日に向けて若干この基本計画について意見交換も行ったところでありますけれども、そこでもかなりさまざまな意見が出ておりました。委員のほうからどうでしょう。各団体からいろいろとお話が出されておりますけれども、それに対して御意見、御質問、その他、関連して自分の意見でもいいし、ありましたら、お願いします。

では、齋藤さん、お願いします。

○齋藤委員 私が、今度の消費者基本計画で出てこなければ、恐らく消えてしまうと思うのは、消費者市民社会という言葉であります。法律に確かに、先般、入りましたけれども、その直後の5年間の基本計画で「こういうイメージ」というものが形成されなければ、恐らく定着するはずがないと思っています。今度の計画の中でこの姿が見えてくるのが一つ重要な点だと思っていたところ、今お伺いした中で、日本ヒーブ協議会と経団連と日弁連の中で、私のイメージと少し似ているようなことが具体的に言及されました。消費者市民社会をどう考えていくかという考えがありましたら、あるいは議論されていましたら、それぞれ教えていただきたい。

ヒーブ協議会の資料の最後のページで「ソーシャル型の消費者市民社会に向けた」という具体的な提案までなされています。メンバーの中でもう少し具体的に議論をされたことがあれば、紹介していただきたい。

経団連では、地域の底上げという説明があり、恐らくこれが消費者市民社会の一つの姿かと思ったのです。今度の計画の中でそういうものが入ってくるとすれば、どういう入り方が考えられるのか。事務局レベルでも結構ですが、あれば御紹介いただきたい。

それから、日弁連さんの説明の中では、最後のほうに消費者市民社会というキーワードだけが出てきました。けれども、全体の中に10個近い重要なテーマがありまして、それとの絡み合い、状況の関係とか、どういうふうに関係してくるのかというイメージが沸き難いので、ありましたら、御紹介いただきたいと思います。

○石戸谷委員長代理 大きい話がぼんと来ましたのですが、では、各団体からお話を伺いましょうか。時間に問題があるので、まとめて質疑をやっていると時間が足らなくなるということなので、今の点をまず。

では、日本ヒーブ協議会、経団連、日弁連ということで順番にお願いします。

○日本ヒーブ協議会上田代表理事 日本ヒーブ協議会のほうから説明させていただきます。今回、私どもが考えております消費者市民社会についてですけれども、ソーシャル型と定義いたしましたのは、双方から手を伸ばす、つながるイメージで提案させていただいております。

55事例のほうを見ていただくとわかるのですけれども、消費者自身、自分が社会や環境といったところに何かかかわっているという実感を持つ例がなかなか少ないと考えておりまして、それをいかに見える化する場をつくる、情報をつくるというところが消費者市民社会への一歩につながるのではないかと会としては考えております。

以上です。

○日本経済団体連合会斎藤政治社会本部長 私はISO26000に起草のプロセスでかかわっておりました。実はISO26000の消費者課題には初め、持続可能な消費や消費者教育は入っていなかったのですが、経団連のほうで提案しました。要するに消費者は企業とかに対して物を言う存在であると同時に、自分たちも持続可能な社会の実現のために積極的な行動をとる主体となるべきだということです。

そのために例えば、環境問題についても、もったいないの精神ではありませんけれども、消費のことをしっかり考えるとか、あるいは買占めとか、そういった行動に走らない。そういったことをできるかできないかというのは、正しい情報をもとに賢明に判断して、それを行動に移していくことが非常に大事になって参ります。そのために企業のほうも、先ほど情報の公開の話もございましたけれども、しっかりした正しい情報を消費者のほうに示していく。またはそのための教育啓発活動に積極的に取り組むということが非常に大事で、これはセットで考えなければいけない。それができて初めて、消費者市民社会の実現ができるというのが基本的な考え方でございます。

ところが、やはり消費者被害という観点から弱者の立場、どうやって救うかというのを前面に書きますと、先ほど日弁連さんも確かにそのようなトーンが強かったと思うのですけれども、そうすると事業者は非常に悪徳事業者で、そこからどうやって守るかということになります。このこと自体は非常に大事な視点だと思います。ただ、情報量も事業者と消費者では差があるし、それを前提として取引をやるのだけれども、やはり我々が考えているのは、先ほどヒーブ協議会さんがおっしゃいましたが、九十数パーセントは善良な事業者で、ほんの一握りの悪徳業者にどう対応するかということなので、その辺のバランスをもった施策が必要であると思います。我々事業者にとっても悪徳事業者を市場から排除するということは事業者の利益にかないます。悪徳事業者がいれば市場原理が働きませんから、いかに悪徳事業者を市場から排除して、善良な事業者と消費者との間でWin-Winの関係を築くかというのが大事だと思っています。

ただ、そのために規制が余りにも厳しくなるというのは、事業活動の妨げにもなるということで、その辺のバランスを消費者行政、消費者政策のほうに求めているのが基本的な立場でございます。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会大迫副委員長 日弁連のほうから申し上げます。副委員長をさせていただいております大迫と申します。

日弁連でも消費者教育の関連では、この消費者市民社会という言葉を大事にして、これから考えていきたいと思っておりますが、その考え方はやはり消費者が主体的な行動をとることによって、その消費的な行動を通して社会を変えていく。あるいは社会の主体として、社会の方向性をつくっていく。そういうイメージを持っての消費者市民社会という言葉遣いでございます。

但し、この言葉を使うことについては、日弁連内には、さまざまな議論がありまして、例えば、消費者が主体的に行動するというならば出た結果については自己責任だとされてしまうのではないかという懸念が挙げられております。そのような消費者市民社会を、消費者に自己責任をとらせる言葉だというとらえ方をされるのは日弁連の意図しているところとは全く違うということを、あらかじめお断りさせていただきたいと思います。

私どもは、消費者が非常に弱い存在なので保護すればいい、というだけでは正常な社会はつくられない、やはり消費者が主体として積極的に社会の方向性を決めていけるものでなければならないと考えております。消費者は、消費行動を通じて社会をつくっていくものであるという、こういう考え方に立っております。

ただ、実際には非常に被害が多いということも現実ですし、これからの5年間ということを考えてまいりますと、我が国の消費者の質というものが、この5年で恐らく、また変わっていくだろうということは忘れてはなりません。消費者人口の中で非常に高齢化した厚い層がさらに高齢化していくという社会ですので、消費者の質は5年後には5年分、歳をとって表れるという現実を大変懸念しております。現在でも高齢者の消費者被害が非常に多うございます。資産を貯めている高齢者の消費者を狙う事件が大変多くて、それを守ることを忘れては消費者問題は何も語れないのが現実です。そのため、主体的に消費行動を通じて社会を変えていく原動力としての消費者と、重大な被害の前にさらされて手厚い保護を必要としている消費者とがないまぜになって存在する、これが今の消費者問題であろうと思っております。

○石戸谷委員長代理 どうぞ。

○夏目委員 関連してよろしいでしょうか。ただいま日弁連さんから消費者市民とか消費者市民社会がどういうものであるかというお話をいただいて、非常に納得するところですけれども、私が伺いたいのは、全国消費者団体連絡会のほうでございます。3ページのところで、保護を適切に位置づけることというところで、要するに自己責任とか消費者教育の問題とされてしまうことが多いと感じられて、やはり危惧を覚えるというような記載がございます。

消団連様としましても、消費者市民の理念、消費者市民社会が目指すもののところについては、これは消費者教育推進法の基本的な考え方なので異論はないかと思いますが、ここで危惧されていることと、消費者市民または消費者市民社会のありようというものについて、もう少し御意見をいただければと思います。

○石戸谷委員長代理 よろしいですか。お願いします。

○全国消費者団体連絡会山根代表理事 ありがとうございます。全国消団連の代表理事で主婦連合会の会長の山根でございます。

個人的な発言かもしれませんが、消費者市民社会、一人一人が社会を構成している市民であることを自覚して、社会に積極的にかかわっていく。自分で物を選ぶ。行動する消費者というようなイメージを持っています。

ただ、心配をしておりますのは、賢い消費者でなければならない、自立しなければならないということが余りにも強調されて、そのために消費者教育が必要で、それが不足しているから被害がある。よりよい社会になかなか向かわない。そういうことで短くまとめていただいてしまうことにとても懸念を持っております。

保護される消費者というものがおりますし、今の高齢化、高度情報化、複雑な消費社会の形等々、そういったものから保護ルールの重要性は明らかであると思っておりますので、そのあたりのバランスと申しますか、過度な消費者市民社会ありきだけでは問題が解決しないのではないかと思っております。

○橋本委員 事故情報について、お伺いしたいのですけれども。

○石戸谷委員長代理 消費者市民社会の話はこれくらいでよろしいですか。

○全国消費者行政ウォッチねっと河村事務局次長 全国消費者行政ウォッチねっとの河村でございます。主婦連合会の事務局もしております。

消費者市民社会のことについては、国民生活局として最後に作成された平成20年の国民生活白書に消費者市民社会という言葉がほぼ初めてのような形で詳しく書いてあったと思うのですが、ヒーブ協議会さんの御発言とかに対して私の意見を申し上げたいのですけれども、その白書には、そもそも最新の科学的な分析で、消費者というのはどんなに合理的に行動をしようと思っても合理的に行動できない面があるということが書かれています。

例えば、情報が多過ぎた場合にはこうなるとか、きちんと調査に基づいたこともコラムとして書いてありますし、確かに自立した賢い消費者になるほうがいいに決まっていますけれども、社会全体として、そういうことを目指すことは難しいですし、そもそも合理的と思っている人たちですら、大量の情報の前で合理的には必ずしも行動できないのだという研究結果もあるわけですから、そのあたりを重視していくべきだということを申し上げたいと思います。

もう一つ、経団連の方がおっしゃった九十何パーセントの優良な企業と一握りの悪質な企業というお話ですが、そういう観点で消費者問題、消費者行政を見ていくと非常に狭いものになってしまいまして、その数%の企業というのは、多分その問題は消費者問題というよりも犯罪問題みたいなものでございまして、主婦連合会が60年にわたってやってきたのは犯罪の問題というよりも、純粋な消費者問題です。主婦連合会が不買運動をした対象の企業は国を代表する大きな家電メーカーでしたし、別に悪質事業者だと言っているわけではなくて、その取り引きに関して消費者の権利が損なわれているということで運動をしてきましたから、ほとんど犯罪のようなことをやっている企業に対しての施策が消費者問題であると狭くしないで、経団連のメインな会員でいらっしゃる企業も含めて、消費者との間でフェアな取り引きがWin-Winで行われていくようにという観点で議論を進めていただけたらと思います。

○日本経済団体連合会斎藤政治社会本部長 前回もここの場でお話ししたのですが、前回は企業行動憲章をお配りいたしました。企業行動憲章の第1条に、企業は社会に有用な商品・サービスを提供して、消費者顧客の信頼を勝ち得る。それなくして企業の存続はあり得ないと書かれております。我々が言っている優良な企業というのはそういうことに取り組む企業です。ですから、消費者を敵に回すとか、消費者を軽視するということは全くございません。消費者から信頼を得るために、コンプライアンスの面のみならす、CSRの一環として、さまざまな情報を提供していく企業が善良な企業であると私は申し上げました。そのような観点から消費者とWin-Winの関係を構築しようということであり、全く消費者を無視しているというのは誤解でございます。ぜひ経団連の企業行動憲章に書かれている内容を見ていただければと思っております。

○石戸谷委員長代理 消費者市民社会は、私は初めて見たのが消費者行政推進基本計画、消費者庁をつくるときにもとになったもので、それに消費者市民社会への第一歩であると総論の最後にぱっと出てきます。その前段は安心安全な市場、良質な市場の実現が長期的に見て、消費者側にとっても事業者側にとっても唯一の道であるみたいなことが書いてあって、根本はつながった話であるし、市場の中で多数事業者、多数消費者というのがいて、その中で健全なところが伸びていくという絵を描いて進んでいるのだと思いますので、そういう認識では共通しているのではないかと思います。各論的な点はいろいろと出てくるので、それはしようがないと思います。

高橋さんは、今の話と関連した話ですか。

○高橋委員 そうですね。私は河村さんにお伺いしたいなと思いまして先ほど挙手しましたが、積極的に御発言をいただきまして、ありがとうございました。

消費者委員会でも打ち合わせの場で、消費者行政を推進していく上で事業者との関係性を今後我々も考えていく必要があるというやりとりがありましたし、今回いつもいらしてくださっている経団連に加えて、初参加のヒーブ協議会ということで、行政と企業、消費者も巻き込んだコラボレーションに関する御発表がいただけましたし、御提言もいただけたと思っています。

当然ながら、消費者と企業は必ずしも対立する構造、対立関係ということではなく、企業も早くから企業市民という考え方で、今、言われている消費者市民社会の中での一つの市民としての立場を確立しようと努力してこられていると思うのですけれども、例えば、消団連さんとかウォッチねっとさんからの御視点で、今後の新しい基本計画において、企業が消費者市民社会の中で果たすべき役割とか、具体的に消費者行政が置くべき施策について何か積極的な御意見があれば、ここでお伺いできるとありがたいと思っています。もう一歩踏み込んだ御意見があれば、ぜひお伺いしたいと思います。

○全国消費者団体連絡会河野代表理事 先ほどの消費者市民社会の御議論ですけれども、消費者市民社会が私も本当に理想といいましょうか、かなうべき社会の現状であるならば、そういった方向にしっかりと進むべきだと思いますし、私たちもそういう消費者でありたい。ただ、恐らく情報量、交渉力、これは消費者基本法に書かれていますけれども、圧倒的に消費者側に不利であり、裁判になっても不利であるというところで、現状ある情報量と交渉力の差を消費者側が埋られるところまで社会環境を引き上げられれば、消費者市民社会の実現にも近づくのではないかと感じたところです。

今、高橋委員のほうから、今後どういうふうに考えていったらということですが、1つは、先ほど経団連の斎藤さんからもお話がありましたように、事業者は必ずしも企業だけのことを考えているわけではなく社会全体の発展を考えているというお話。それを信じるといいましょうか、CSRの観点から企業存続を考えると、社会で本当に有益な役割を、社会的使命をどれだけ果たせるかというところを考えて企業活動を進めてほしいと思います。

その視点で企業活動を進めるところで消費者志向といいましょうか、消費者の存在ですね。それをしっかり全面に押し出して、企業活動をやっていただきたい。消費者志向を前面に押し出して企業活動をしている事業者団体といいましょうか、そういう方と消費者側もコミュニケーションをとるといいましょうか。やはり距離を余り置いておいてはいけないのかなと。社会課題の解決のためには、誰かが頑張るだけでは実現困難です。行政にしても企業にしても消費者にしても、それぞれがベクトルの方向を同じに持っていかなければ、社会資源も有効に使えないし、ロスも大きいと思いますので、消費者志向の事業者さんとの間で消費者団体もなるべくコミュニケーションをとる。お互いの考えていることをしっかりと理解し合う。そういうのが1つもとめられる部分かと思います。

恐らく消費者庁さんが今年総務省さんに出されたレビューの中に、そういった文言が書かれていたように記憶しておりますので、お互いによりよい方向ということで、そういう考え方もあるのではないかと思っています。

○石戸谷委員長代理 テーマがいきなり消費者市民社会という大きいテーマになってしまって、なかなかほかに移れないのですが、短く、河村さん。

○全国消費者行政ウォッチねっと河村事務局次長 申しわけありません。これ以上続けるつもりはないのですが、経団連の方が非常に誤解をされたようなので一言だけ。私は別に消費者のことを全く考えていない悪質企業が九十何パーセントと言ったつもりは全くございません。消費者問題というのは、狭い意味の、いわば犯罪のような行為をしている悪質事業者のことだけを対象にしているのではないという意味でありまして、それは誤解しないでいただきたいと思います。

もう一つ、高橋さんの御質問に関連してなのですが、主婦連がやった勉強会で消費者市民社会を取り上げたときのテーマには、会社法について話してくださった先生もいますし、貧困のことについても聞きましたし、自殺のこともお話ししていただきましたし、供用品といってユニバーサルデザインの取組みをしている方、障害者の方の視点とか、様々な角度から消費者市民社会の在り方を探りました。

実はこの勉強会のシリーズは平成20年の国民生活白書を執筆された、内閣府にいらした高橋さんと一緒に企画をした勉強会だったのですが、つまり、全員が賢くなって消費者市民になるという考え方ではなくて、社会全体の中で、やはりリードしていく市民はいるはずだというのは海外からいらしていただいたヴィクトリア・トーレセンさんもおっしゃっていました。でも全員ではなくて、リードするような消費者もいるし、そもそもだんだん判断力を失っていくような人も、この中にだって私も含めているわけですから、そういう市民を含めて、消費者市民社会の在り方を捉える必要があるという意味です。

高橋さんの御質問の答えとして私が思いついたのは、今は詳しく思い出せないのですが、会社法の改正というようなことも視野に入れておっしゃってくださった先生が言っていた、会社のあり方、公益的な視点、そういうことが今、高橋さんがおっしゃったことの答えの中に一部入るかなと思いました。

○石戸谷委員長代理 またまだあるかと思いますけれども、この問題は語り出しますと延々とかかるテーマでありますので、ほかのテーマに移らせていただきます。

橋本さん、お待たせいたしました。先ほどの質問。

○橋本委員 もっと議論を進めたほうがいいのかなと思ったのですけれども、時間があることなので、次の話題ということで、事故情報について、ウォッチねっとさんのほうでも消費者事故調の機能強化を図るべきではないかというような御提案がございました。これについて、もう少しお聞きしたい。

弁護士連合会のほうからもリコールも含めて、こういった事故情報。本当に取り引き関係はかなり議論されてきているのですけれども、なかなかこちらの方面は議論が深まらないのだなというところもありますので、その辺をお聞きしたい。

御発言はなかったのですけれども、経済団体いうことで、このリコール情報の在り方というところで、その企業の姿勢というようなものがもしあれば、そのことをお話しいただければと思っております。

先ほど弁護士連合会のほうからも、5年というのは非常に長いというようなお話があったのですけれども、この計画は5年なのですが、この5年のスパンをどのようにお考えなのか。その辺もあわせて、お聞きしたいと思います。

ヒーブさんもPIO-NETの活用というところで、事故情報なども含めて、そのPIO-NETの活用をおっしゃっているのであれば、その辺のところもお聞きしたいなと思っております。

○石戸谷委員長代理 また、たくさんの質問が出てしまったのですけれども、では、御指名があったところを順次、ウォッチねっとのほうからよろしくお願いします。

○全国消費者行政ウォッチねっと拝師事務局長 消費者事故調査の関係では、資料1で書いたとおり、基本的な方向性としては非常にいい方向に行っているだろうと思っていますが、とにかくマンパワーが足りなくて、事故調査をきちんとこなし切れていないというのが現状で、とにかく人をきちんとつけるというのが最大の課題だろうと思っています。

それとも絡むのですけれども、なかなか調査が早く進まない理由としては、事故調査を担当している消費者庁の事故調査室のメンバーの方々は、やはり事故調査の専門性をなかなか蓄積し切れていない。もちろん、できて間もないのでしようがないのですが、そういう事故調査の専門性を築ける体制にしていく。2年いて、また異動して、ほかの人が来るということではなかなか難しいので、事故調査をずっと携わってやっていくような人材をきちんと育てていかないと難しいのかなというのが1点です。

あとはリコールの話とかもされていましたね。リコールの関係は事故調の話とはまた違ってくるのかもしれませんけれども、全体として非常に取り組みがおくれていると思っています。これについては経団連さんからもぜひ意見を伺いたいのですけれども、企業のほうもホームページとかではリコール情報は出しているのですが、本気でどこまで消費者に伝えようという意欲があるのかどうかというのが見えないということと、我々が今、考えているのは、地方あるいは地域の力を借りて、なるべく顔の見える関係性の中でリコール製品の洗い出しのようなことをしていかなくてはいけないのかなと。相当手間がかかるのですが、最も効率的だと思っています。

そのときに物すごくコストがかかります。例えば、老人会にお願いをして、サロンのところに行って、こういう製品があるから見てくださいと。そのとき普通はカラーで刷って、その製品をお見せして、それで自宅にあるかどうかを見てください。そういうことをやると時間も手間もかかるのですが、そこはいろいろなところに協力をいただくとして、カラーコピーの資料代はどこが出すのか。今のところは行政でモデルとして、やろうかなというところもあって、行政が出すことになっていますが、本来的には、それは事業者が出すべきではないかと考えていまして、その辺の費用負担の問題もぜひきちんと議論をしていただきたいと思っています。

○石戸谷委員長代理 では、先に日弁連、それから経団連、お願いします。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会野々山委員長 安全の問題は、もちろん取り引きもそうなのですけれども、被害が起きると深刻になるということ。規模も大きくなるということがありますので、その情報収集と情報の発信が非常に重要になってくると考えております。その収集の面の中では、冒頭にも申し上げましたけれども、PIO-NETが消費生活相談をもとにした情報ということがありまして、安全の身体、健康の被害は消費者が、消費者被害として、まず見ないというところがあります。ですから、これも消費者被害だということで、保健所だけでなく消費生活センターのほうに持っていくということの周知が必要ではないかと思っております。

ただ、消費生活センターのほうでも、それを受けても、安全に関する専門性は十分ではないという認識もありますので、これについても対応できる専門性のある連携機関をきちんとつくっていくなどして、消費生活センターのほうにこういう安全被害も入っていく。そういう体制と周知が要るだろうと思っております。ヒヤリハット情報などもなかなか入ってこないことがあります。

今、消費者庁のほうでも追究していると聞いておりますけれども、お医者さんとの関係ですね。安全に関する健康被害はまずお医者さんのところへ行くということがありますので、そのお医者さんの専門性の見地から、これは安全の被害だということをわかれば、すぐにそれを通報していくというシステムが必要かと思っております。

リコールの問題でありますけれども、リコールは消費者に届かないといけない。しかも、その消費者は十分な情報力とか理解力がないということを前提にして考えていかなくてはいけないだろうと思っております。そういう意味では、今、努力はしているとは私も思っておりますけれども、例えば、新聞に載っている告知、あの新聞の告知を見て、これはリコールだと皆が見るのか。社会面の一番下のところにあるのをすぐ見るかという問題もあります。

これから高齢化社会になってきますと、その情報がそれぞれの家庭の手元まで来るということが必要になってくる。やはり他の省庁との連携。例えば、厚労省とか総務省、そういうところの持っているネットワークを使って、リコール情報を出していく。企業のほうは高いお金を出して、テレビで出していくというのもありますけれども、そういうツールが重要ではないかと思っております。

先ほど言った消費者教育もそうですけれども、私は他の省庁との連携が重要と考えています。消費者庁だけで頑張ったって、できるものではないわけでありまして、文科省など他の省庁との連携。先ほど御発言がありましたけれども、他の省庁のそういう政策との連携はとても大事です。リコールの分野でもとても大事です。事故をなくしたいというのは経産省だって厚労省だって思っているわけですので、そういうものについて全国に張りめぐらせた各省庁が持っているネットワークを活用していくというものが今後必要になってくる。これはわかりやすい伝達方法ですね。

もう一つは、事故調であります。確かに消費者安全調査委員会は非常に期待をされるものでありますが、その後、事故の原因であるとか、あるいは再発防止の施策であるとかいうものの調査・提言が十分できてきていない。その最大の問題は組織がまだ十分ではないというところがあると思いますし、専門的な機関との連携がどうなっているかもある。

私が国センの理事長就任したころも大分模索をしまして、国民生活センターのほうで専門的調査の受け皿になれないかと。国民生活センターの専門性も限界があるわけでありますが、そういうところでの受け皿で日常的なものがうまくできていけば、いいかなと思っています。委員会の事務局と検査機構の体制が充実してこないといけないだろうと思っています。特に専門家の連携が必要かなと思っております。とにかく、できるだけ目に見える形で、この消費者安全調査委員会の活動をぜひ見てみたいという思いがあります。

最後に、消費者基本計画が5年で長いのではないか。私は長いと思っています。消費者問題は5年だとかなり進展をしていくわけでありまして、1年ごとでもいいぐらいです。これは個人的見解で、日弁連がそう考えているわけではありませんけれども、見直しをしていくわけですから、毎年考えていって、やっていくということはあってもいいのではないかと思っています。

○日本経済団体連合会斎藤政治社会本部長 初めにリコールについてなのですが、誤解を恐れずに言いますと、リコールをする企業イコール事故を起こしたり、悪い企業ではありません。企業というのは社会に有益なものをつくるために研究開発をして、すばらしい商品を出していくというのが一つの使命であります。

ただ、本当に全てが100パーセント初めから安全というような製品・サービスは、世の中にはほとんどありません。そのために、製造が終わって市場に出した後、何らかの形で欠陥なり不具合が見つかった場合には、速やかに製品を使っている消費者に連絡して、それを回収するというのがリコール制度でございます。リコールをするから事故を起こしやすい企業ということは違うのではないかということを前提に致しましても、リコール制度は一企業では対応が非常に難しい面が確かにあります。全国にはがきを出しても、まだ回収できていない製品はございます。

そのために一つは、情報を持っている一つの企業のみならず、特に役所ですね。警察とか消防とか、いろいろな省庁が持っている情報を活用できないかというのが一つあると思います。

もう一つは、個人情報保護法の関係がありまして、例えば、車のリコールが出た場合にメーカーが回収しようといっても、保険会社はユーザーの情報は個人情報ということで、恐らく出せないと思います。そうすると、個人情報保護法は公益目的の場合には適用されないということになっておりますけれども、結果としては、個人情報保護法がリコールの妨げになっているというような部分もあります。ですので、そういったような目的を持ったときに法律の壁、あるいは役所の壁をどうやって取り除いていくか。それは社会全体としての課題ではないかと思っております。企業は努力しておりますけれども、一企業の限界というのも確かにあるということで、それをぜひ、むしろ消費者団体とか、いろいろな関係者と一緒になってリコールに協力していただいて、製品の速やかな回収並びに安全の確保を図っていくことが必要ではないかと思います。

事故情報でも、例えば、何か火が出たとか火事が起きたというと、すぐに警察とか消防に物品を押さえられてしまい、一度押さえられた場合には、メーカーはそれを調べようにもなかなかアクセスができないというような例も聞いております。事故を起こした企業も一緒になって再発防止に当たるというような観点からは、そういった事故情報の共有というのか、さっきPIO-NETの話もありましたけれども、ぜひそういったような仕組みを社会全体で考えていただければと思っています。

以上です。

○日本ヒーブ協議会上田代表理事 ヒーブ協議会から先ほど申し上げましたPIO-NETの活用ですが、現在、PIO-NETに請求を出して情報開示していただけますが、件数だけで、自社のものであっても内容については詳細がわかりません。項目ごとに整理された情報は手に入るのですけれども、もしかしたら、そこが何か安全や改善にかかわる可能性があるかもしれません。先ほど経団連の方も言われていたように、大きくあるコミュニケーションの情報を行政だけではなくて、企業とか消費者団体があわせて活用することで、何か生まれるのではないかと考え、今回の提案に入れさせていただいています。

以上です。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

だんだん時間が残り少なくなってきたのですが、基本計画の大きい問題として総務省の勧告がありまして、消費者庁は司令塔機能を発揮して、政府全体としての消費者取引の適正化を推進するため云々ということで、具体的な指標を設定して、いつまでに何をやるのかはっきりしろとか、そのような話で、これは非常に重い勧告だと思います。それに従って、こういかなければいけないということになると思いますけれども、残った時間でその辺について何かお考えがあればと思います。

具体的施策については充実した提案がいろいろ出てくるのですが、それをどうやって基本計画の中で位置づけながら、それをまとめていくかというところのつくり方といいますか、その辺が大事になってくるのではないかと思いますけれども、その辺で何か御意見がありましたら、ぜひお願いします。

いきなり重い話になってしまったのですが、5年という期間はいかがでしょうか。私もヒアリングをやっていて、5年となってしまうと、えらく長いなと。今の消費者基本計画の冒頭部分は位置づけとして、5年間ほとんど変わっていないのですけれども、具体的施策は多少ずつなのですが、今年は最終年ということもあって、そんなことがあるのかないのかはわかりませんが、これは私の勝手な印象ですので、多少ちょっと大きい変更は新計画に盛り込んでおこうか、みたいなことがあるようなことだとすると長過ぎるのではないかという感じもします。

他方、消費者基本法が改正されまして、国会に対する年次報告が法律上、義務づけられておりますので、25年度からの消費者白書は非常に立派な白書が毎年出まして、苦情、問題発生状況とか傾向がどうとか、大変充実したまとめになっているのですが、それが次の施策のほうにつながって行くような仕組みになっているのかというのは、多少そこは工夫の余地があるのではないかという感じもしますし、その辺を含めてでもいいのですが、ありましたら、ぜひ大事なところなので御意見を伺いたいなと思います。お願いします。

○日本経済団体連合会阿部常務理事 ある程度、中長期の目標という意味では5年でよいと思うのですが、今みたいに5年が終わってから次の5年というのではなくて、途中で例えば、3から4年目から次の改定を準備して、ある意味オーバーライドしていくみたいなやり方を考えてはいかがでしょうか。5年たって新しい計画をつくって、また、その次の5年という区切りではなくて、5年計画を随時塗り変えていくみたいな形で、例えば、3から4年たったら新しい計画の準備をして、継ぎ目なく、重なるような形でやっていくということはあり得るのではないかと思います。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

いかがでしょう。改定は毎年やるようにはなっているのですけれども、骨格の部分がどんと骨太に決まっているということがあって、その部分は余りあれかなという感じがします。

○日本経済団体連合会斎藤政治社会本部長 消費者基本計画もそうですけれども、消費者庁ができた経緯から、各省庁寄合部隊で人事もいまだ消費者庁のプロパーの人事はほとんどされていなくて、何年かたつと、もとにいた省庁に帰るというような感覚で、課長も平均で2年ちょっとしかいらっしゃらない。その中で5年の計画というと、5年スパンで一つのことを考えるということであれば、少なくとも消費者庁に出向した方はせめて5年くらいは腰を据えていていただくというのが何よりもの施策であると思います。司令塔云々というよりも、今の法律では各省に対する措置命令を内閣府の長である総理が出せますから、消費者庁は立てつけではかなり強い権限を持った省庁で、それをどう使うかの問題であると思います。行政に携わっている人がその仕組みに対して十分理解するということが一番大事ではないかと思います。

300人くらいの所帯ですから、全てのことが自分たちでできるということはあり得ませんし、まして地方に行きますと出先もない。そうであれば、いかに権限を効率的に活用して、地方あるいは各省との連携を図っていく。そういう運用なり、あり方の話であって、人を増やせとか、権限をこれから強化しろという話ではないような気がしております。それが1点です。

ここ5年間を振り返ってみますと、あまりにも政治に随分左右されたなというのがありますし、消費者担当大臣だけでも民主党政権のときは10人近くも変わった。これは望ましい姿ではないという中で、今の政権ではかなり長く腰を据えて大臣も長官もなされると思いますので、その辺はよくなるかとは思って期待しております。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

この辺はいかがですか。

○全国消費者行政ウォッチねっと拝師事務局長 私も計画としては5年でいいのかなと思っていまして、例えば、消費者市民社会というさっきのキーワードの問題はそんなにころころ変えるものでもないし、変わらないだろう。そのかわりにきちんと議論をして入れ込むというものだと思います。

そのかわりに今の立てつけでも毎年改定して見直しはしているわけで、とりあえずはそれでいいのかなと思っています。法律もできると大体3年後とか5年後に見直しというのが普通なので、余り短過ぎると、そこも全体の大きな流れが逆に見えなくなっても困るかなというのがあるので、個人的には5年くらいでいいのかなと。余り確固とした意見ではないですが、そういうふうには思っています。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

こちらで勝手にテーマを設定して済みません。だんだん残り時間が少なくなってきましたが、まだ発言されていない方。

では、岩田さん。

○岩田委員 幾つかの団体で、例えば、ウォッチねっと様が消費者団体に対する国の支援について要望なさっておられるのは、具体的にどういう活動に対して御要望があるのかとか、やはり国費で支援を申し上げるということだと、それなりの理由がしっかり要ると思います。例えば、本来は国がやるべきことをかわって団体がやっているとか、ある団体に支援をすることによって、国の施策目標が初めて達成できるのだとか、理屈が要ると思いますので、どんな活動に対して支援を期待されているのか。また、それはどういう理由づけで、それが可能だと思っていらっしゃるのか。それ以外の団体も国の支援を言われた団体様がいらしたと思いますので、お話を伺いたいと思います。

○全国消費者行政ウォッチねっと拝師事務局長 消費者団体の活動は幅広いですので、具体的にどのような活動にというよりは、むしろ手続のほうをきちんと決めるべきだろうと思っていまして、地方消費者行政活性化基金については、例えば、千葉県だと県民提案事業という形で消費者団体等から、いろいろなこういう事業をやりますよというのを応募してもらって、審議員みたいな方々がいて、その人たちが本当に消費者のために役立つ事業なのかどうかを行政の立場で判断して、オーケーが出れば、それに対して、お金を出す。そういう仕組みです。

ですから、中身をあらかじめ決めつけてやるというのはむしろ危険で、手続として透明性を持たせて、ある程度の基準は必要なのかもしれませんけれども、そういう手続をきちんと定めた上で、それなりに消費者の役に立つだろうと判断されたものに対しては、しかるべき措置をとるのがいいのかなと思っています。

限定すると、あとは適格消費者団体です。これは活動が決まっていて、国がある意味でお墨つきを与えながら、やる業務もきっちり決まっているものですから、それについては支援はしやすいのかなとは思っています。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

いかがですか。

○全国消費者団体連絡会山根代表理事 金銭的な支援もいただきたいところですけれども、それはなかなか難しいということで、地域、地域でうまく連携をしながら進めるということになるのだろうと思います。支援をお願いしたいのは消費者団体とか市民団体づくりですね。そういう集まる場づくりというか、そういったことは大きな金銭的なものでなくてもできることがあると思いますので、各地域でそういった団体づくり、消費者問題を考える場づくりのようなことで支援をいただければと、そういったことは思っております。

支援とはちょっと違うかもしれませんけれども、今の計画見直しの議論ですね。そこに積極的に消費者団体として加わりたい、意見を出していきたいというのは、すごく消団連の中でも多くの団体が表明しているというか、述べていることですので、そうしたところに積極的に参加できるような情報提供であるとか、そういったこともぜひ積極的にやっていただきたいと思っています。

≪3.閉 会≫

○石戸谷委員長代理 よろしいですか。ありがとうございました。最後の点は、これからどういう具合にしてやっていくかという上では、具体的に考えていかなければいけないかなという点だなとは思いました。

最後にまとめのようなものをやらなければいけないのですけれども、頭が混乱していて、うまくまとめられないので、考えるテンポがもうちょっといつもはスローに考えているものですから、いただいた意見についてはじっくり考えて、まだキックオフというか、まさにそのタイミングですので、新しい基本計画を組み立てていく上でヒントにしながら進めていきたいと思います。

きょうはお忙しいところをありがとうございました。ワンテーマでやってみたらどうかと思ったのですけれども、まだまだ話を聞いてみたいなという中身になったのではないかと思います。また、今後ともよろしくお願いいたします。

どうも本日はありがとうございました。

(以上)