第36回基礎問題小委員会・第3回非営利法人課税WG合同会議 議事録

平成17年5月20日開催

委員

それでは、時間になりましたので、今日の合同会議、開催したいと思います。

今日は、パワーポイントの関係で、いつもと違ったところに座らされる方がいて、戸惑っている人もいるかと思いますが、お間違えなきよう。

今日は、有識者の方からお話を伺うという形で、東京大学の田中弥生先生をお招きしております。我々の問題意識、すでに事務局から伝わっていると思いますが、非営利法人の果たすべき役割、どうあるべきか、あるいはそれとの関係で寄附税制どうするか等々ありまして、やはり専門の先生から一回お話を聞きたいということでお願いしたわけであります。これまでの議論を踏まえまして、大局的なところでいろいろ議論したいと思っています。

田中先生の若干のご紹介をさせていただきますが、現在、東京大学工学系研究科社会基盤学専攻助教授で、非営利組織論、あるいは評価論をご専門にされております。行革大臣のもとに置かれました「公益法人制度改革に関する有識者会議」のメンバーとしても、この公益法人改革に深くかかわっておられるようであります。

『NPO 幻想と現実』『ボランタリー経済と企業評価』といったご著書論文がおありでございまして、NPOと社会をつなぐさまざまな点でご研究をされていると聞いております。

30分ほどで、短い時間でございますが、最初にプレゼンテーションをお願いいたしまして、あとは皆の質疑にお答えいただけたらと思います。よろしくお願いします。

委員

東京大学の田中と申します。

今日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。では、これから座ったままでプレゼンテーションさせていただきます。

(パワーポイント)

タイトルは、実は事務局のほうからお題をいただいたのですが、「わが国経済社会と非営利法人」。できるだけ骨太の非営利法人論を話してほしいということで、私にとってもかなりチャレンジなのですが、そのお話をさせていただきたいと思います。

本日の構成ですが、お手元の資料もご覧いただければと思いますが、まず、非営利法人、もう皆様には釈迦に説法かもしれませんが、対象の設定、定義をさせていただいて、社会的な背景、そして非営利組織の役割、最後に、若干ながら結論ですが、これは問題提起とレコメンデーションという形でさせていただけたらと思います。

まず非営利組織の定義ですが、これはジョンズ・ホプキンス大学のレスター・サラモン教授の定義を使わせていただきました。

第1に、フォーマル:ある程度組織的な実在を示していること。

それから民間(private)でありますが、これは言い方を変えればnon-governmentalということになります。

3番目、非営利。これはもうけてはいけないということではなく、非分配、non-profit-distributingの原則にのっとっているということであります。

それから4番目として、自己統治(self-governing)。これはみずからの使命や組織のあり方、そして活動のあり方、人事管理までをみずから管理する能力があって、外から干渉されないということであります。

そして5番目としては、自発性(voluntary)ということで、これは組織を設立するに当たって、活動するに当たって自発的な参加がある、またはあったということです。

したがいまして、本日のプレゼンテーションにおきましては、さきの定義に基づき、「非営利組織」というものを広義の意味で用いております。ですから、新たな、今検討されております非営利法人制度の対象となる非営利法人、NPO法人も含んでおります。

さて、第2のトピックに入りますけれども、その社会的な背景について、若干かいつまみながらお話をしたいと思います。というのも、もうすでに税制調査会のほうで、「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」ということで、かなりきめの細かな、そしてダイナミックな調査をされていますので、私のほうがこれをつまみ食いさせていただくということをさせていただきました。

まずは少子高齢化の問題でありまして、次のデータを見ていただくとわかるのですが、これはおなじみのデータだと思いますが、2100年には、明治中期ぐらいの人口に数が落ちてしまうということであります。

それから、これは出生率と死亡率の推移を見ていますが、圧倒的に亡くなる方のほうが生まれる方の数より増えているということであります。

これは従属人口指数の推移でありますが、単純に言ってしまえば、養う人よりも養われる人の数が圧倒的に多くなるということを数値で示したものであります。

じゃ、こういったわが国、現在、将来にわたってそれを支えている財政状況はどうなのかということですが、これはおなじみのことですので説明は割愛させていただきますが、一番わかりやすいのは、これは1カ月の家計にたとえたらということで、収入が40万円に対して、毎月28万円の赤字が出ていて、しかもローンが5,300万円残っているという状況で家計を回していかなければいけないということであります。

じゃ国民がどのぐらい負担しているのかということについても、これは数値を使わせていただきましたが、国民負担率は35.5%で、これは国際比較をしてみましても、必ずしも日本国の国民の負担率は高いほうではありません。

これが非常にざっくりとしたわが国の現状ですけれども、そこの論点であります。

そこで問題提起ですが、人口問題、財政状況を鑑みれば、従来の官に大きく依存したシステムでは、日本を維持することはできません。シビル・ミニマム――あえてシビル・ミニマムという言葉を使っておりますが、後ほど説明します。それを引き上げることを前提につくられてきたわが国のシステムを再設計する必要があるのではないかということであります。

シビル・ミニマムとは何か。シビル・ミニマムとは、美濃部都政時代に、松下圭一氏によってつくられた造語であります。現在では、本当に当たり前のようにいろいろな論文の中で使われているのですが、いわゆるナショナル・ミニマムという言葉に対するequivalentな言葉として用いられるようになっています。

これは松下先生のご本の中から定義を抜粋させていただいていますけれども、大きく2つの意味があると述べています。第1にそれは市民の権利という性格であり、それは賃金だけではなく、社会保障、社会資本、社会保健の各側面において一定基準以上の保障がなければならないということであり、もう一つは、自治体の政策公準という性格です。これは、自治体は市民の直接民主主義的な憲法制度として位置づけ得るがと説明されていますが、この自治体の政策をシビル・ミニマムを達成するためにどのように設計していくのかという意味であります。

そして、この政策公準の設定には以下5つの課題があるだろうと説明されています。1つは、まさにその地域をつくっていく中には市民の内部に自己統治能力というものを育成する必要があるということ。それから生活の保障ですね。これは基準としてのシビル・ミニマムを確立するということ。そして3番目としては、地域の生産力を拡大しながら地域を活性化するということです。そして4番目は自治権を拡大するということで、まさに今議論されて、またはされ続けていることです。そして5番目としては、効率的な行政業務、民主的に、しかも能率的に業務を行っていくということです。

したがいまして、保障の最低基準というだけでしたら、ナショナル・ミニマムという言葉だけで十分なのかもしれないのですが、松下先生はあえてシビル・ミニマムという言葉を使い、そこには、市民主体であって、自分たちの中にガバナンスの能力を身につけるからこそ、シビル・ミニマムの言葉の意味があるとおっしゃっています。

ただ、このシビル・ミニマムというのは1970年代に提唱された言葉でありまして、現在と大きく違う点があります。それは現在が右肩下がりの時代だということであり、そのように考えますと、シビル・ミニマムの考え方も含めて再定義をし、そしてシステムの再設計が必要ではないかと考えます。

これは、私が実は今、国政のマニフェストとか地方のマニフェストの評価に着手していることもありまして、そこから、直観的なのですが、システム再設計のために必要な4条件というのを提案させていただきました。

第1に、シビル・ミニマムは達成したということを国民の中でコンセンサス、認識を持った上で需要をコントロールするということです。例えば公園の公衆トイレ、これをウォシュレットにしたいという地域住民のニーズがあったとすれば、それはシビル・ミニマム以上だというのは皆さんも直観的におわかりになるだろうと思います。このような発想で、私がいるところは実は土木工学科なのですけれども、例えば社会資本のあり方についても、また社会保障のあり方についても考え直していく必要があるのではないかということです。

2番目は、持続可能な地域づくりのための選択と集中型の政策。私、最初はこれ、ダウンサイジングという言葉を使っていたのですが、それよりは選択と集中をして、リストラクチャリングを本当の意味でする。そういう政策と予算編成が必要であるということ。

そして3番目、官と民の役割分担の見直しをするということ。というのは、前提条件に、官に余りにも大きく依存し過ぎてきたのではないかということがあります。民というのは、企業と非営利組織を指しています。

そして4番目、市民の自立であります。いろんな側面で自立というものが望まれますけれども、受益と負担に対しての認識を改めるということで、特に私はUser Payの発想をもっと取り入れていく必要があるのではないかと思います。

ちょっとイメージの図をつくってみました。実はこんなに簡単にサービスを図解できないところがありまして、例えばストック型の社会サービスとフロー型の社会サービスではかなり違いますし、準公共財と私的な要素の入った公共財ではまたこれのあり方も違うのですが、かいつまんで説明すればこのようになるかと思います。

これはサービスの選択の幅を下から、小から大の方に乗せました。そして現在はどうかといえば、シビル・ミニマムが赤い線だとすれば、官側がそれ以上にいろんなサービスを提供してきたのではないか。その上にいろんな選択肢といいますか、ありますが、それは市場なり、最近では非営利組織が提供しているということです。

今後はどうしたらいいかということなのですが、まさに右肩下がりのときにはやはりシビル・ミニマムまで下がって、官の役割というのを下げていただきながら、その部分を民が補うということです。民の場合には、これは企業もそうですし、非営利組織の場合も対価性を求めることがあります。サービスを選択する側がみずからの責任で選択をし、それに対して料金を払ったり何らかの若干の対価を払う。特に非営利組織の場合には、対価はフルペイではないのですが、例えば汗の出資のように、労力を提供するというような形の支払いの仕方もあるかもしれませんけれども、民が入るということはそれが問われると思います。

では、非営利組織の話にお話を移していきたいと思います。非営利組織は何かということですが、資源の流れで非営利組織をとらえてみることにしました。左が寄附者とか助成金、または補助金を出すような、これを資源提供者と言わせていただきます。そして、寄附を得るとか助成金を得るというような形で非営利組織はそれを調達して、そして社会のサービスにそれを転換するという、私はこれを資源変換装置と呼んでいます。

この資源の流れをとってみますと、非営利組織は大きく2つの役割があります。1つは、右側の方ですが、社会のニーズに対してサービスを提供していくわけですけれども、そこは、先ほどのシビル・ミニマムにのっとって、市民社会、市民の生活を支えるということです。

そしてもう一つ重要な役割があります。先ほど、非営利組織というのは、対価を求めることがあるのだけれどもフルペイでないと申し上げました。大抵は相手が非常に貧しかったり弱者であることがありますので、若干の負担を求めますけれども、残りの部分というのは寄附や、それから業務受託のような形で資金を調達して、それで支えています。

実はここの部分は、単にもらうだけではなくて、大変重要な役割を果たしているということをドラッガーが述べているのですが、つまり、非営利組織に寄附や、またはボランティアという形で参加することによって、自分自身が社会に生かされている、それから他者を心使うという愛他の精神、または公共を自分たちで支えるという公共心、それを養っているのだと言います。これを市民性創造の役割と名づけさせていただきました。今の説明ですね。

次にいきます。システム転換期における非営利組織の役割というのは、実はもう一つ、特にこれから重要な役割があるのではないかと思います。というのは、官に大きく依存していたシステムを転換しましょうと言っています。でも、先ほどの説明、それから今日は説明を割愛しましたけれども、政府の失敗、市場の失敗の穴埋めをするという非常にスタンダードな非営利組織論がありますけれども、それは官に依存していたシステムでも、非常に都合よく、NPO、説明することができるのです。

でも、もしそれから脱却したいのであれば、もう一つ大事な役割があって、それを私は、政策提言、または政策の立案プロセスにいかに市民側の声を反映させながら参加していくか、または非常に有益な提言をしていくかという役割があると思います。現に、国内、海外を見てみましても、そのような事例が少しずつ増えております。

海外について申し上げれば、例えば、特別な例と言われてしまうかもしれませんけれども、アパルトヘイト時代の南アフリカで活躍したのは、ODAを政府では受けられなかったものを直接受けたのはNGOで、そこが目覚しい活動をしましたし、これはここにいらっしゃるある先生がよくご存じだと思いますが、東欧革命時に最も活躍したのはやはり非営利組織でありました。

それからもう一つ、最近、日本のNPOに関しても、ちょっと地方を回りながら見ていてよくわかるのですが、最初、例えば介護の受託をしながらいろんなサービスをしているのですが、サービスをしているうちに、法律がいろんなところで住民のニーズにそぐわないということに気がついて、それで法律とか基準というものをもう少し改めたらいいのではないかということで、提案、交渉しているようなNPOも出てきています。

じゃ現在の非営利セクターの変化と特徴というものについても述べさせていただきたいと思いますが、大きく3つに分けて注目してみたいと思います。

1つは市場との関係。これは接近という言葉を書かせていただきましたが、公益を求めながらも収益性を追求するような非営利組織、特にNPOの中でそれが多く出現するようになっております。例えば、ここには書きませんでしたが、NPOバンクとか、それからコミュニティ・ビジネス、北海道にありますけれども、風力発電の会社というのはNPOがつくっています。というようなものです。

それから2番目は行政との関係でありまして、ここは深度を深めていると。これは全員には当てはまらないのですが、その特徴が顕著であると思います。特に介護保険分野に関しましては、これが導入されて、事業者としてNPOが認められるようになりましたので、収入の7割8割をこの介護保険とか行政からの受託で維持しているというものが増えております。

それからもう一つ、3番目としては、市民との関係であります。1990年当時に私が調べたときには、市民の感覚というのは、NPOというものをどうやって探し当てたらいいかわからないという意見が多かったのですが、最近のITで検索が目覚しく容易になりましたので、ちょっとそのミスマッチの内容が変わっています。それは信頼できるNPO、非営利組織をどのように自分で見定めたらいいのかということでありまして、実はこの問題、かなり本質的で、先ほどの行政、それから企業関係者にとっても共通の悩みであります。

したがって、今の3番目の問題に注目させていただきたいのですが、なぜならば、非営利セクターというのは、価格メカニズムとか、それから選挙のような、そのセクターにユニバーサルな評価メカニズムというものを内在していないからです。したがって、これは事務局の税制第二課長の言葉を借りれば、0.5セクターという言葉が出てきたのですけれども、これを一人前にするためには、この本質的な課題をいかに克服するかという問題をはらんでいると思います。

いきなり解のほうに入ってしまいますが、そこで必要なものというのは、公正な競争であり、社会的な監視というものが必要です。観念論的に申し上げれば、寄附者が擬似の市場をつくって、そこで、その市場の中で非営利組織が競争をして評価される、自然淘汰されるという考え方もあるのですが、現在、特に日本においては、寄附者の数はまだまだ少なく、市場が薄い状態ですので、これをサポートするような社会装置が必要ではないかと考えます。

例えばということで、その社会装置の例なのですが、評価専門機関が例えばアメリカやフィリピンにあります。アメリカは、National Charities Information Bureauと書いてあります。これはNPOです。これは非営利組織を、いろんな調査をしまして、そして格付けをして、それをニューズレターにして、寄附したいと思っている一般市民や企業関係者にニューズレターという形で配付しているというもの。それからフィリピンのPCNCの例は、まさに寄附免税の認証のチェックですね。NGOがつくった第三者機関が財務省から完全にその仕事を引き受けて、今まさに評価作業を行っているというものです。

そのほかに、ちょっと毛色が違うのですけれども、寄附者と非営利組織を1対1でつなぐために、いろいろ相談をしたり、それから仲介をしますが、仲介するときに、非営利組織がきちんとしたものであるかどうかという評価というのをかなり丁寧に行って、一種、信用保証のような形で寄附者にそれをフィードバックしているというものです。こういうものがあれば、まさに寄附市場が育っていくプロセスでそれをサポートするような役割を果たしてくれるのではないかと思います。

今の社会装置に共通する特徴ですが、1つは民間非営利組織で、民間側にあるということです。それから、それ自身が自分たちの組織をどうというよりは、社会と市民社会の発展という大きなビジョンを持っていて、そして、中には寄附する、資源を提供するというものと、それから非営利組織の間の取引コストを軽減して、そして両者がマッチングしやすい環境を整備しているということです。それからもう一つは、評価やモニタリングを通じて資源提供者に対してフィードバックをしますし、非営利組織に対しては、改善案を提案するフィードバックをしているということです。

そのイメージ図を資金仲介の例をとってここに図解させていただきました。これは後でご参照いただければと思います。時間も差し迫ってまいりましたので、結論の方に急がせていただきます。

今日の発表の論点、ちょっとだけ復習させていただきますが、2つありまして、1つは、システム変革期における非営利組織の役割というものであり、若干、その中の論点になりましたけれども、非営利セクターの成長を促すための社会装置の話をしました。したがって、結論もこれに沿って説明させていただけたらと思います。

まずシステム変革期における非営利組織の役割ですが、1つは、非営利組織側の課題があると思います。それは、システムの改革の担い手となるような非営利組織の役割をもっと説明する非営利組織論というものが必要であると思います。それは、繰り返しになりますが、市場の失敗、政府の失敗だけでは説明できないと思います。

それから2番目は、非営利組織自身がもっと自立しなければいけないということで、それはガバナンスの問題であり経営の問題であります。

そして3番目、自己評価のメカニズムというのを自分たちの組織の中にビルトインしたらどうか。例えばですが、実は私自身もNPOにかかわっておりまして、認定NPO法人をアプライしたのですけれども、そのときに政治的な中立性を証明しろというお題をいただきまして、それで一生懸命考えたのですが、神学論争になってしまったのですね。

それで、苦肉の策だったのですけれども、IRSのデータを調べましたら、政治と宗教に関する団体をどう扱うかというマニュアルが出てきたのです。それを見ますと、こうあるべきではなくて、こういうことはしていないというネガティブチェックリストだったのですね。それを使って、監査役とか監事役が若干中立的な立場でそのNPOのモニタリング、評価をしてはどうかというようなアイデアであります。これはまさに非営利組織のアカウンタビリティをどうするかという話にも通じるかと思います。

それから2番目の課題は制度設計上の問題で、本会議の議題にも通じるかと思いますが、1つは、いわゆるサービスデリバリー型の非営利組織のみならず、今申し上げたように、インタンジブルなもの、例えば政策というようなものを扱うもの、それから市場との関係であれば、かなり対価性を求めるような非営利組織が日々エボルブ、進化しております。それにできるだけ対応できるような制度設計が必要ではないかということ。

それからもう一つは、先ほど資源変換図を見ていただきましたけれども、市民性の創造。つまり、NPOにかかわっていく人たちの公共心や愛他心を育成するような制度設計が必要であるということです。

それから、これは最後になりますけれども、社会装置をどのようにつくっていったらいいかということで、これはかなり私の試案であり、問題提起とさせていただければと思います。というのは、社会装置の話をしますと、必ず、官民の役割分担をどうするのかという話になりますし、私が参加しておりました公益法人制度改革の中でもそういう話が出てまいりました。これは、私、官か民か、オール・オア・ナッシングという話ではないと思っておりまして、このような作図をしてみました。

かいつまんで申し上げますと、官側の第三者機関というのは私は必要だと思ってまして、ここが非営利組織の、先ほど申し上げた自己評価をする際のルールセッティングをすると。非営利組織がそれに基づいて、例えば監査役などが評価をします。同時に、独自の評価項目というのもそこで加えて評価すればいいのではないかと思います。ルールに基づいた評価については、これは官側に提出して、そして官側はそれに基づいてまさにチェックをする、評価するということです。

ここから先が問題ではないかと思うのですが、どういうルールセッティングをしたのか、それに基づいてどういうチェックをしたのか、その結果、そして非営利組織自身が評価結果というのを各々公開することによって初めてそれが寄附者に伝わり、そして場合によっては、寄附者をサポートするような先ほどの民側の社会装置、評価機関とか仲介機関とか、そこがちょっと企業側の言葉をかりれば勝手格付けのようなことをして、そして寄附者をサポートして、そして最終的には寄附者がそれをジャッジするというようなメカニズムが働いてくれるというのが私は理想像ではないかと思います。

ただし、これは実はかなりアメリカを意識しているのですけれども、日本では、非営利セクターも、それから寄附市場もあまり成熟しておりませんので、ここら辺の制度設計については工夫が必要ではないかと思います。

以上、説明をさせていただきましたが、ご清聴ありがとうございました。

委員

大変パンクチュアルにまとめていただきました。ありがとうございました。大変興味ある明快なご主張があったと思います。

それでは、少し時間をとりまして、メンバー、委員の方々と質疑応答していただきたいと思います。どうぞ、どなたでも結構ですから。時間も限られてますから。

委員

結局、この非営利法人というのはフルペイではなくて、でも、ちゃんとした存在であると。そのフルペイでない部分で間に合うというのは、結局、心ということなのですか。

委員

フルペイでなくて間に合うのは、おっしゃるとおり、1つは志で、そこに参加してくださっている、またはそれを運営してくださっている方たちがある種、無償で協力するところもありますが、寄附という形でそれを得ることによって、対価で不足している部分をペイ組織が支えているのです。つまり、企業の場合には、サービスを提供すると相手から対価をもらって、フルペイでもらって活動を維持していますけれども、非営利組織の場合には、サービスを受ける人から対価を得ることもありますが、第三者から寄附という形、またはボランティアという形で協力を得ながら、活動に必要なリソースを得ているということです。

委員

ほかにいかがでしょうか。

委員

ちょっと質問ですが、この最後のチャートというのですか、非常に興味深いと思ったのですけれども、最後におっしゃった、これはアメリカを意識したということで、日本的にアレンジが必要だなということ、そんな感じのことをおっしゃいましたね。もうちょっとそれを具体的に教えてもらえます?

委員

はい。これはかなり非営利組織がそれこそ自立をしていて、きちんとしていることを前提に置いています。ですから、それを信頼した上で、例えばアメリカの場合ですと、先ほど申し上げたIRSの話がありましたけれども、最低限のことが整っているかということで、システムチェックを行う。例えば財政とか会計上のところをチェックするのと、プラス、さっき言ったような政治的な中立性みたいなものは、ネガティブなリストだけにしますとかなり裁量が入らなくなるのですね。これをやってないということだけをマルバツでつければいいですから。それにのっとって、この非営利組織がそれをみずから評価して、それを官の第三者機関のほうに提出するということです。

じゃ非営利セクターなり寄附市場があまり成熟してないところでどうするかということですが、あくまでもこの図をイメージしながら考えれば、私はやはりルールセッティングのあり方、それからどういうふうにチェックをするか、さらにはペナルティをどう置くかによって、かなり官のコントロールのあり方というのを調整できるのではないかと思います。

委員

関連ですけれども、寄附費用というからには出し手と受け手がありますよね。受け手はおそらく、非営利法人、頑張るでしょう。出し手が問題だと思うのですよ。アメリカはおそらく多々いると思うけれども、私は日本の寄附文化というのはまだまだ貧困だと思うのですけれども、税制が重過ぎるからやれないなんて言う人がいるけれども、本来やる気がない人がいっぱいいるのですね。日本は。その辺、ご専門で、国際比較などを踏まえて、出し手のほうの寄附市場の育成、これについて何かお聞かせいただけますか。

委員

寄附市場の育成に関しては、実は私は絶対量が、要するにリソースを提供するほうの絶対量が少ないとは思ってないのです。私自身、実は助成金を世界中のNGOに出すという仕事を17年ぐらいやっておりまして、例えばフォード財団だったり、あとは世銀だとかUNのNGO担当ディビジョンの方と話をしていますと、資金を出したいのに、いいNGO、NPOがうまく見つけられなくて困っているという話をされるのですね。NGOのほうを訪ねれば、必ず資金がないと言います。これをいつもいつも耳にしてまして感じたのは、おそらく資金の絶対量が少ないという、または寄附者の絶対量が少ないというよりも、ミスマッチが起きているのだろうと考えたわけです。

委員

日本は多いのですか、資金提供者。フォードとか世銀、いろいろありますよ、外国は。特に日本の個人の寄附者ね。これがどうも僕はまだ層が薄いのではないかと絶えず思っているものですから。

委員

ここに関しましては、私、きちんと研究していませんので、非常に直観的で雑駁な意見を申し上げれば、介護関係のNPOの見学をこの間九州のほうでさせていただいているのですが、そのときのお話というのは、地方に限らないと思いますけれども、結構、遺贈関係ですね。特にお年寄りのお世話をしていて、そして亡くなった後に家族の方がそこのNPOに、家1軒寄附をして宅老所をつくりたかったのです。大体時価にして5,000万円ぐらいですけれども、2,000万円近くのいろんな、税金も含めた諸雑費が必要で、それでいただけなかったという話を聞いていまして、私は実は、遺贈と、生きている方も含めたその周辺というのにはかなり潜在的な寄附の市場があるのではないかと思います。

委員

ほかにいかがでしょうか。

何かない? ご専門の立場で。

委員

大変すばらしい話、ありがとうございます。

ちょっと20ページが一番大事だと思いますけれども、「資源変換装置としての非営利組織」ということで、資源提供者と社会ニーズというのがあって、資源提供者というのは、我々納税者というか、一般の私有財産を持っている人間だと思いますが、これが社会のニーズ、つまり、公共財の供給に私有財産をどうやって転換するかというときに、強制的にとる税という仕組みのほかに、自発的に寄附という形で公共ニーズを満たしていくというのがこの図ではないかと思うのです。その点から考えると、例えば地方に寄附をするというのは、ある意味では、その分、寄附金控除をすれば、その税率部分はタックス・エクスペンディチャーというか、税金が減るわけですけれども、残りの部分に着目すれば、その部分に公共財が結局供給されるということですから、言ってみたらタックスインカムという形で、増税をしなくて社会ニーズを満たすことになるのではないかと思うのですが、そのように解釈してよろしいでしょうか。

委員

はい。おっしゃるとおりだと思いますし、それが、先ほどお見せしたシビル・ミニマムの図がありましたけれども、全体で、官と民との組み合わせのあり方を変えて、それでミニマムをみんなで達成していこうということですので、決して公共財、財そのものがサービスが減るというわけではありません。

委員

単純な質問ですが、15ページのシビル・ミニマムの課題の[1]ですけれども、「地域における直接民主主義の実現」という言葉の意味がよくわからないのですが、直接民主主義ですから、要するに選挙制なんかではなくて、自分たちが直接やるということなのですね。そうすると、例えば地方団体なんかはある程度小さな規模に分割していって、みんなが集まって相談できると。そういう意味なのでしょうか。そういうことではないのでしょうね、きっと。ちょっとこの意味を説明していただけたらと思います。

委員

私も、結構この言葉が非常に重いので、松下先生に確認したいところがいろいろあるのですけれども、ここでおっしゃっている直接民主主義というのはいろんな住民参加のことを説明されていると思います。住民投票というものもあると思いますけれども、いろんな場面で、住民に対して情報をオープンにしたり、パブリックコメントを求めたり、それからオーディエンスとして参加することもあると思うのですが、そこをかなり象徴的に説明されていると思います。

委員

普通の直接民主主義とは違うわけですね。

委員

はい。

委員

わかりました。ありがとうございました。

委員

ちょっと一番最初に戻ってしまって申しわけないですが、3ページのところで非営利の定義がございまして、もちろん、ここでもすでにこの非営利の定義でスタートしているのですけれども、「組織の所有者に利益を還元しないこと」というのは、組織の所有者と運営者との関係が、例えば所有者は同時に運営者であるという場合は、要するに利益が分配というのは、例えば社員に対して外部に分配されるという概念と、それから逆に、もし組織の所有者が運営者を兼ねた場合には内部で一応利益は分配されてしまうというような問題があるのではないかと思っておりまして、実はこの前の議論で、私、途中休んだこともあってよくわからなかったのですが、社員と理事の関係ですね。要するに所有者と運営者との経済関係がどうなっているかによって、非常に形式的に外部に分配してないけれども、中で実は、事実上、利益は分配されているのではないかという気がいつもしているのですが、その辺のところは何かもう少し歯どめをかけるやり方、つまり、非営利というものの歯どめのかけ方というのはないのでしょうかね。私は、非常に極端に言うと、所有者は運営者を兼ねてはいけないとかね。

委員

例えば、アメリカの例でたびたび申しわけないのですけれども、基本的にやはり事務局とボードメンバーというのはかなり牽制関係にあって、常にハウトゥマネージとか、コントロールボードという本も複数出ているのですけれども、ただ、それはかなり組織が規模があってしっかりしているところだと思うのですけれども、日本の場合には、そこは理事長と事務局長というものがオーバーラップしているケースもあると思いますが。

委員

もう一つ、仮に持ち分があった場合には、出資をする所有者、出資をしたり、それを運営する人と、それから事務局的な存在と、一体こういう組織の中のどういう関係にあるのか、どうも私にははっきりしないものですから。

委員

所有の意味が非常に難しいと思うのですが、企業の場合でしたら、株主がいて、そこに利益を配分するということがありますけれども、そういった形で、例えば理事に対して上がった利益を配当するというようなことをしないという意味で。

委員

いや、理事には配当しないのは当然ですが、そうでなくて、理事にはどうせ給与とか賞与になるだろうと思いますが、その所有者に対しては、もし出資のような持ち分があれば配当になるので、それは禁止されているというのがこの文脈なのですけどね。そこの区別が本当にきちんとつくのかなあというのが……。

委員

それは難しい問題提起だな。

委員

ですから、組織で非営利法人というのは、持ち分なり社団のようなもの、ちょっとその辺と、持ち分なり出資者がいるような話……

委員

しかも利益が何かということももう一回定義し直さなければいけないと思いますが。

委員

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、まだ我々、あと議論しなければならないこともございますので、今日はお忙しいところをありがとうございました。大変参考になりました。厚く御礼を申し上げます。

それでは、先生にご退室いただいた後でそろそろ取りまとめのほうの議論にいかなければいけないと思いますが、その前に、忘れないうちに、今日欠席の委員から寄附金税制の意見があるという紙が来ておりますので、後ほどご覧いただけたらと思います。

それでは、今のお話を受けて、我々のまとめのほうに入っていく手順を組みたいと思いますが、その前に、前回幾つか質問もあって、事務局が後で説明しようというそのこともございましたので、税制第二課長と、市町村税課長のほうから各々、ちょっと手短にその件、ご説明ください。

じゃ税制第二課長、お願いします。

事務局

お手元資料でございますが、基礎小36―2という一枚紙がございます。議論の過程、ご審議の過程で、イギリスのチャリティ委員会の概要というお尋ねがございましたので、まとめたものでございます。

ここにございますように、チャリティ委員会、メンバーとしましては、主席(チーフ)が1人、それ以外の委員が2~4ということで、最大5名ということになります。

その資格でございますが、法律上は、うち2名は法曹資格を有する者ということが明記されているということでございます。実態的には、そういう法律家、会計士、あるいは大学の関係、教授、あるいは企業の方など、チャリティに関係した経験のあるような方々がずうっと過去任命されてきておるというのが経緯でございます。

この制度は1853年に公益信託法ということでできた制度でございまして、最近随時整備をされて今日に至っておるということのようでございます。

ちなみに事務局は、下に書いてございますが、590名ぐらいというスタッフを抱えた形で運営されているということでございます。

以上でございます。

委員

よろしいですか。えらくさっとした説明だけど、こういう機構図であるということはよくわかりました。

それでは、市町村税課長、お願いします。

事務局

先日、寄附金控除、地方税関係について論点を整理してくれという宿題がございましたので、「資料(寄附金控除(個人住民税))」という資料で説明させていただきます。

まず「基本的な考え方」ですが、1ページをご覧いただきたいと思います。一般的に、「個人住民税の性格と諸控除」ということですが、これまで累次の答申におきまして、例えば所得税より低い水準で設定すべきであるとか、いろんなものも応益原則に基づいて見直しを図れであるとか、国家的な政策の見地からの控除については極力整理すべきというような答申をいただいております。

その結果として、2ページをご覧いただきますが、いわゆる人的控除、これにつきましては、すべて同じ項目がございますが、金額的には差をつけているという制度になっております。

それから3ページがいわゆる政策的な控除というものでございますが、まず所得税にあって住民税にないものがそれなりにあると。それから両方にある場合も、その内容に差をつけているといったものが現行の制度になっております。

4ページをご覧いただきますと、それ以外の観点としまして、地方分権ということがございます。これまで言われていることとしまして、地方公共団体の自己決定権と自己責任ということの確立が必要ではないかということが1点。

それから最近の動きとしまして、所得割のフラット化ということがございますが、それをより応益性を増していこうという理由もその一つとなっております。

5ページをご覧いただきたいと思います。それでは、寄附金控除はどうかということでございまして、所得税と住民税では差があるわけですが、それについての理由でございます。アンダーラインを引いておりますが、個人住民税の寄附金控除については、控除を行う地方団体と寄附金による地方団体の受益との対応関係が必要であるため、所得税に比較し、極めて限定されたものとなっているという説明がなされております。

具体的には6ページに対照して比較しておりますが、先日、住民税については3類型の対象があると言いましたが、所得税と比べますと、所得税で認めているもののごく一部という形で限定しております。

所得税の3の[2]、[3]あたりが、今回、公益非営利法人で議論の対象になっておりますが、それ以外についても、先ほどの受益の関係で、非常に限定しているというのが現状になっております。

具体的に、この受益の関係というのがどういうことかというのが7ページでございます。これは現在、制度化されております共同募金会に対する寄附ということでございます。共同募金というのは、社会福祉法でこの配分のルールが決まっておりまして、納税者が都道府県の共同募金会に寄附いたしますと、配分委員会がその都道府県の中の社会福祉法人などに対して分配するということで、必ず県内に閉じておるということでございます。

なお、市町村と県という関係はございますが、そこは配分委員会の中で、特定の市町村に偏ることはないだろうと、そういった割り切りをしているのだろうと考えております。

それから8ページが、今回の公益法人、非営利法人の新しいスキームとの関係ということでございます。まず、国がある法人を公益性ありと認定したケースでございますが、それと納税者の住所地が異なるということが想定されます。この場合については、現在認めておるものと違って、受益と負担との関係が乖離するというケースが考えられようかと。それから納税者の住所地以外の都道府県で単独で認定されたもの、これについても同じことが起ころうかと考えております。

それから、先ほどの先生のお話と絡みますが、今、地方団体がいろんなNPOなんかに業務を助けてもらっているといったようなことについてお話がありましたので、調べてまいりました。

9ページをご覧いただきたいと思います。これはどちらかというと行政的な切り口で、地方団体のNPOの支援策について調査したものでございます。各都道府県、一様にNPO支援策というものを講じていると。市町村も一部講じているということで、例えば補助、真ん中あたりにございますが、都道府県で半分程度のものがやっていると。それから一番下に地方税減免措置ということで、法人住民税均等割とありますが、そのほかに自動車税とか、不動産取得税とか、いろいろな減免措置を講じておるようでございます。

それから次の10ページが、多少切り口が違いますが、同じような調査を国民生活白書の中で行っております。やはり一番多いのは自治体からNPOへの事業委託ということで、従来、自治体が直営でやっていたようなものをNPOに委託するであるとか、共同で行う。先ほど先生がおっしゃっていたような、企画・立案のようなやり方もあります。それから下のほうに、資金援助という形で直接支援しているものも半数程度あるということでございます。

それから11ページが、最近の例ということで、わりと話題になりました市川市の制度でございます。これは、まず納税者が市民税を払っていると。その自分が払った市民税の1%相当額を、市川市がリストをつくりまして、そのリストに載っている団体のここに支援してほしいということを選択できるという制度でございます。今年から始まりまして、市川市、大体22万人ぐらいの人口ですが、5,000件程度の応募があって、約81団体に分配されたということでございます。

最後、このようなことを踏まえまして、12ページが、個人住民税で寄附金控除を考えるときの主要論点ということでございます。

まずは、控除を行う地方団体と寄附金による地方団体との対応関係が必要ではないかということで、例えば地方団体にとって役に立つ、あるいは地域住民にとって役に立つ団体に控除を認めるというのが原則ではないかと。

それから2つ目は、従来言われておりますような「地域社会の会費」という、住民税について政策的に課税ベースを狭めるということはどうかと。

それから3つ目が、コストパフォーマンスと申しますか、最高税率が13%という住民税の所得控除ということで、寄附のインセンティブといろんなコストの増加というものをどう考えるかと。

それから4つ目が、「寄附文化の普及・定着」という目的はいいとして、地方公共団体の減収につながるような寄附金控除を一律に地方税法で定めると、全国どこもこれでやるといったようなことは問題ではないかと考えております。

それで、最後、地方公共団体が独自に条例で寄附金控除の制度を設けると。自分の地域に役立っている団体に対して寄附金控除を設けるということにつきましては、一番大きな問題である、受益と負担との関係を明確にできるというか、その受益と負担との関係の判断を地方団体自身がやるということで、その一方で、地方団体の、あるいは納税者の事務負担が増加することとなると。特に住民税の場合に県税と市民税を市町村が合わせて集めておるわけですが、仮に所得控除を入れたときに、課税ベースが両者で異なるといったようなことについてどのように考えていくのかといった課題があると思います。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

とりわけ、今のご説明、地方税の寄附金税制のあり方あたりにつきましてご意見を伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。しばらく時間をとりましょう。どうぞ。

委員

地方税は会費的な性格で応益原則だから、Aという団体で税収が減って、Bという団体が受益するのは、それは確かにそのとおりだと思いますけれども、すべての地方団体が平等であればおっしゃるとおりだと思いますが、実際は金持ちが東京に集中していて、東京のお金持ちが寄附を例えば田舎にすると。そうすると東京の税収が減って地方のサービスが増えるわけですから、むしろ地方分権に役に立っているのではないかと、詳しいことはよくわかりませんが、素朴に思うのですけれども、そういうふうにはならないのですか。

委員

いやいや、それも考えているのでしょう、当然。

委員

考えているのですか。

委員

最後の主要論点の5つ目のマルはそれも含む、あるいは自分のところだけにしか認めないよというような狭い意味で書いているのですか、これは。

事務局

いわゆる偏在是正みたいな、もともとの寄附金控除を認める話とは別の政策的要請でそれをやるかというご意見は確かにあろうかと思います。ただ、普通は地域に役立っているところがその受益に応じて負担するというのが原則だろうと思います。先生がおっしゃったような考え方も制度設計上はあり得ると思います。

委員

まあ割り切りでしょうな。

委員

この論点を常識的に読ませていただくと、それはやらないためにいろいろ知恵を絞られたのではないかと思うぐらい上手に書けて(笑)。常識的に言えば、例えば国税が1万円というときに10万円とか、それから適用範囲なんかでも、30%と25%の差というのはそんなに問題になるほどの開きではないけれども、そういうことからいくと、全体として国が――国がというのは、国と地方という意味ではなくて、全国民的に寄附文化を育てようかというようなことを言っているときに、いや、地方は違うのだというような印象を与えるのはちょっとどうかなと、若干違和感を持ちますね。やはりある程度、これがそれでは減収になると言って、その地方自治体がひっくり返るほどの話かとなれば、結局、神社仏閣の話に戻ってしまうような程度のレベルの話ですよね。

そういうときに、いや、これは地方は全く違うので、応益原則ですとかいうようなことだけで説明できるのかなあと思いますね。だから、こういうものはある程度そろえておくと。適用は適宜やればいいわけでね。本当に東京都が寄附を持っていかれてひっくり返りそうならそれは考えるでしょうから、その辺は少し無理があるのではないかという気がいたします。

委員

ご意見として伺っておきます。どうぞ。

委員

1つ、今のこの寄附の話と、私、ちょっと早めに退席したいので、もう一件、別件をちょっと。

まず、この寄附の話は、私、全く今の委員と同感で、ここの主要論点に書かれてある、あまり認めたくないからこういう論点をわざわざ持ち出してきたのではないかなというのはまさにそのとおりの感じですよね。やはり余りにも住民税の場合の寄附の範囲が狭過ぎるし、それから最低限10万円というのはもう対象になるのはほとんどないのではないかと思うぐらいですよね。それからあと所得のあれは、所得税が30%で、住民税は25%ですか。というところもやはりそろえたほうがいいのではないかという気がします。

それと、ついでにもう一件、直接これではない関係ですが、非営利法人を認定するいわゆる第三者機関の話ですが、これは私、前にも1回同じようなことを言ったのですけれども、繰り返しになるかもしれませんが、もう一度ちょっと言わせていただきたいのですが、第三者機関と言ってますが、そもそもこれは第三者なのでしょうかねということですよね。第三者というのは、ここで見てもわかりますように、当事者以外のものと書いてありますね。そうしますと、認定される法人から見れば、この第三者機関というのはまさに当事者そのものですね。にもかかわらず第三者とおっしゃるのは、おそらく、いわゆる主務官庁と言われている既成の省庁とは違うものだからだと。したがって第三者だということでしょうけれども、しかし、この委員会というのは、この前、内閣官房の方にお聞きしたら、国家行政組織法第8条に基づく8条委員会であると。8条機関っていろんな種類あるかもしれませんが、要するに証券取引等監視委員会のようなものだとおっしゃったわけで、そうしますと、これは属人性の官庁ではないかもしれないけれども、まさに行政機関そのものですね。行政委員会ですから。

そうしますと、これを第三者機関と言われると何となく違和感を感じるわけですね。しかし、こういう方向でいくということであれば、第三者性といいますか、中立性といいますか、独立性を担保するようなものが必要なわけですよね。それは例えば委員の人選だとか事務局のつくり方だとか、そういったことを十分配慮するような形にやっていただかないと、これは十分機能しないのではないかという気がするわけです。

委員

第三者という言葉のイメージがつかみにくいということですね。

委員

そうですね。私、全く第三者だと思えないのですよ。

委員

一番最後に言おうと思ったのですけれども……

委員

いいですよ、今ごろで(笑)。

委員

実は地方団体の場合は寄附金控除を入れて税収が減るわけですよね。これと交付税との関係をどうリンクするかというのが非常に大事で、需要は減らさないで収入金額を減らせば、交付団体は交付税が増えるだけの話であって、痛くもかゆくもないと。そういう財政制度のもとで、だから、例えば寄附金控除をした場合に当該NPOに出している需要というものを全体として削減しないと、地方財政全体の財源不足だって縮まらないし、当該団体も痛くもかゆくもないという話があるので、単なる地方税の寄附金控除をどういう目的でやるのかということと財政制度との関係をよく理解した上で議論をしないと、国の場合は完全にその分だけ税収が減るわけですけれども、地方財政計画で総体の財政需要というのを保障した場合には、寄附金控除で実際に穴があいた部分を当該団体についてどうやってやるかということは非常に大きな問題になって、財政上はやってもやらなくても関係ないということであれば、どんどんやればいいという話になるのではないかと思うのですよね。

委員

さらにもう一歩いってご意見ありませんか。つまり、地方交付税で面倒見なくてもいいではないかという議論もありますよね。それは一番すっきりする。見るの、おかしいではないかという議論もあるでしょう。

委員

見るのはおかしいではないかということになると、要するに寄附金控除は制度として認めていながら、寄附金控除がなかったものとして計算しなければいけないということになるわけですね。

委員

最後に引けばいい。個別に全部配った後に、個別の団体から、おまえのところで寄附金控除している分は引くよと。全体の計算を……。いいですか。

委員

いやいや、技術的にできない話ではないと思うのですよ。それだけのことです。

委員

今の話ね、定性的には確かにそういう議論も成り立つと思うけれども、そんなに寄附なんてばかばか出るわけはないと言っているのだ、僕は。10年20年たって、とうとう地方財政に穴があくかとなったら考えればいい話であってね。当面の前進のためには多少のことやりなさいという話でね。

もう一つは、第三者機関というのは47都道府県全部できるのですよ。国が認定する団体もあるし、地方で地方独自の組織があって、おい、地方独自の中だけでやるんだよと。もろもろのサービスは。というのがあるわけだ。それは認定が行われるでしょう。それなら、僕は東京に住んでいて、田舎が広島だけれども、広島の小学校にでも寄附するかと思うことがあるかもしれない、ないかもしれない。わからない、そんなことは。そうするとそこにいろんな問題が生じるけれども、この認定団体で、各都道府県、自分で認定するわけだから、その中の県民が東京に出すとか地方に出すのではなくて、うちの地域のそれぞれに何かをやってみたいと思う人がいるかもしれない。財産が余ってしまってとか、いろんな気持ちがあって。それだったら別に、この10万円なんて屁みたいなこと置かないで、素直にやっていけばいいではないかと。ただ、よその県に持っていくとなるとまた狭量な話がすぐ出てくるからね。けつの穴の狭いような話が出てくるからね。だから、まあ、あっても構わないと思うけれども、嫌だったらば、地域内のあれだったらいいよというぐらいにすれば、こんなネガティブな大論文を書かんだって済むではないかというのが私の印象ですけどね。

委員

他地域でやるのも条例で決めたっていいのですよね。やる気なら。その地方議会がね。

委員

そんなこと言わないで、何か工夫したらどうだという。

委員

ほかにございますか。

委員

論点出た繰り返しで言えば、6ページの、今認められている住民税で、6ページで認められているのが住所地の都道府県共同募金または住所地の日本赤十字とかいうことですけれども、だから、今やっている改革は、できるだけNPO、非営利法人を認定して、そして寄附金もそれにつけようということで、何か流れとして非常に、どれを認めるかというのはここでかかってきてしまうわけですよね。この段階で。そうすると、今具体的に日本赤十字社以外に認めているものというのは、ほかにどういうものが具体的にあるのですか。

事務局

6ページに書いてあるものすべてでございまして、都道府県、市町村、それから共同募金会、赤十字社のみでございます。総務大臣の承認というのは、毎期やるものについて会計チェックをして、これはいいですよといっている意味でして、それ以外に何かあるということではございません。

委員

基本的によくわからないのは、盛んに今、住民税の応益原則という話をされました。それはそのとおりだと思いますが、税収も減ると、このようなことをおっしゃいましたけれども、つまり、この寄附金の場合は、言ってみれば、受益を受けるのはむしろ自治体側も受けるのではないのかなあと。つまり、応益原則を自治体側に適用すれば、寄附金もちゃんと充実したものにしていって当たり前ではないのかなという気がするわけですよ。

つまり、例えば税収は落ちるかもしれないけれども、先ほどおっしゃったように、じゃ歳出面で削れるかもしれない。先ほどの交付税の財源保障の問題は全然僕は論外だと思っているからこれ以上言いませんけれども、そういう意味で、応益原則を住民だけに適用するのではなくて、この寄附金税制の場合は自治体も応益原則を適用したらいかがですか。それは基本的な考え方ではないのかなと思うのだけれども。

委員

さっき言ったのは否定的な意味で言ったのではなくて、寄附金の控除を幾らしたって、地方財政に、当該団体にあまり影響なければ、どんなやり方でやったって、大いにやったって構わないということを言おうとしたのです。

委員

現行制度で言えば、当然ながら、それは民が官を、つまり地方自治体の責任を民が肩代わりする部分がすごく出てくるわけではないですか。考え方としてですよ。そうしたら当然ながら、それは歳出カットするのは当たり前の話ですよね。そうでしょう。そうしたら、現行制度と言っても地方交付税は減るのですよ。

委員

それは、当然、そういうNPOとか寄附団体に地方団体が助成をしていればそういうことになります。だけど、そうとは限らないわけですから。

委員

少なくとも、つまり、先ほど先生がおっしゃったけれども、住民サービスの部分を民が肩代わりするということになれば、これまでやっていた官の住民サービスというのは当然ながら減って当たり前だと、こういう考えが成り立つと、そういうことを言っているわけです。

委員

皆さん、わかった上で議論しておられるのだろうと思いますが、ちょっと私わからないのですけれども、要するに、今度の新しい公益法人制度で、公益法人の認定というのは国だけではなくて、各都道府県でも行われるわけですよね。その各都道府県が行った公益法人に対する税制上、国税上の扱いというのは、国が行った場合の認定された公益法人に対する扱いと全く変わらないということが前提になっている。

ということは、少なくともここの議論を聞いてますと、所得税に関するいろいろな扱いは考えていくということになっていると思うのですよね。だから、都道府県が認定した公益法人に対する税制上の特別の扱いというのも当然所得税に関してはついてくるということで、その場合に地方税についてはどうなのかというのが今議論されていると、こういうふうに考えていいですか。

委員

なるほど。地方が認めて、国までカバーしてしまうのはいかがなものかということですね。これはどうですか、事務局。今言われた問題。

事務局

今、寄附金税制についていろんな形態なものがあります。公益法人については、今900ほど特定公益増進法人認定されていますが、どういうものに所得税の寄附金控除がなされているかという実態を一度見ていただいてご判断していただければいいと思います。

何を申し上げたいかというと、頭に冠のついているような、何々県何とか何とかというものとかありまして、その地域だけで活動しているものもありますし、また全国ベースでやっているのもいろいろありますので、今問題提起がありましたように、所得税でどこまでやるのか、住民税でどこまでやるのか、実態も見て、あるいは今後出てきそうなものも含めてどういうものを対象にするのか。つまり、一律、所得税、国税で全部面倒を見て、プラス、地方税でも認めるというやり方もあるでしょうし、役割分担という考え方もあるでしょうし、そこはよくご議論いただければと思っています。

委員

今のお話を聞いて、そういうことなのだろうと思いますが、ということは、そういうふうに考えてくると、国が公益法人だとして認める場合の基準のあり方と、それから県が認定する場合の基準のあり方が違い得るというような感じもするのですよね。初めからそれが同じような基準で適用されるのだと、今おっしゃったような、わりに任意性というのですかね、そういうものはあまりないのではないかなと僕は思うのですけどね。

それからもう一つ、先ほど言い忘れたのですが、僕の理解で言えば、都道府県単位で公益法人が認定されるときには、地方公共団体のやる仕事に深い関係のあることをやるというのがやはり一つの前提のような気が、私の理解ですよ、するので、そうすると、それはやはり何がしか、住民税なり何なりと関係する話ではないのかと。それがどの程度になるかによっては、国全体の税収と地方の税収との間の調整をしなければならんという問題も出るかもしれませんし、それはそうだろうと思うのですが、そこまでいかないという段階の話は、まあそれはそこまでいかないでもいいのではないかなと思うのですけどね。

委員

ちょっと先へいきたいのですが、何かこの際……。どうですか、手挙げていたかな。いい?

委員

同じようなことですので。

委員

実は次のテーマとしてまとめの方向にこれからいかなければいけない。そういう意味において、「これまで出された主な意見」というペーパーがございまして、これはこれまでさまざまな機会で言われたものを全部まとめてもらいました。これがベースになってこれから文章化していこうという作業を6月の後半にかけてやらなければいけないので、実は今日、最初にまとめてもらったものですが、一応読み上げてもらいまして、どんなことを我々これから議論しなければいけないという共通の基盤をつくりたいと思っております。そういう作業を最初にとっかかりでやりたいと思ってますので、じゃちょっと事務局、最初に読んでいただけますか。

(「これまでに出された主な意見」朗読)

委員

ありがとうございました。

それでは、まだ30分ぐらい時間が残っておりますので、この内容に即したご議論をいただきたいと思いますが、今日はこの文字づらの議論は不要であります。つまり中身で勝負してください。表現上の、厳しい時代とか、何とかであるかという形容詞的なところであまりこだわらず、基本的な方向として、これをやるのかやらないのか、緩めるのか、あるいは強化するのか。私が今見た範囲では、おそらく対立点は3カ所か4カ所ぐらい。逆な方向にいっているのがね。したがって、その辺を中心にして、私はこっちを強調すべきだというようなトーンが出れば、今後の文章化するときの助けになるし、あるいはこれから以降の議論の促進にもつながりますので、そういう視点でご議論いただきたいと思います。

正直言って、今回のまとめ方は、従来の何か消費税率がどうだこうだに比べると、圧倒的に皆さんの意見がある幅に落ちついてますので、まとめやすいかなあとは思っております。ただ、細かい点になりますといろいろ議論が分かれるかもしれません。

じゃどうぞ、どなたでも結構ですし、どこまでと言わないで、この8ページ分、どこでも結構でございますから、議論を出していただきたいと思います。何ページ目のどこだという指定の箇所をおっしゃってください。

委員

むしろ何ページにも書いてないのでちょっと心配なのですけれども、先ほどの委員がおっしゃったことがずっと頭の中にこびりついておりまして、寄附金控除を広げたところでそんなに寄附は増えないと。ところが、法律家というのはものを深読みするものですから、寄附が増えないにもかかわらず、もし現実に寄附が増えるとしたらどんな寄附だろうと考えてみたのです。自分のお金を寄附して、あるいは土地を寄附して、それが暗黙裡に自分にキックバックされるような寄附だったら、寄附金控除とられたらおいしいなあというふうに、何かそういうことばかり考えているとよくないのですが、ある種の課税逃れ商品が仕組めてしまうようなところが、まあそういう方は少ないと思うのですが、もし出てきたら困ると。

その場合に、特に非営利法人がかなり拡大されますから、寄附をしたのだけれども、実際には寄附してない。つまり、だれのものでもない財産がつくり出されてしまって、それが実質はだれかのために利用されるということがあるわけで、そうすると、何か寄附の際に一定のバックアップ、今ですと、例えば公益法人等に対する寄附について、相続税法66条というのがあって、相続税や贈与税をかけるというような租税回避否認規定がありますけれども、どこまで厳しくするかはともかくとして、本来の寄附でないようなものが出てくる可能性がもし出てきたときに、執行のほうが対応できるような何らかのバックアップというのは、あまり厳しくてもいけないと思いますが、しかし、一定程度置くということにしないと、せっかく善意でこういう制度を広げて、結果として何か逆の方向にいってしまうのでは困るなあという、そんな心配がちょっとあるものですから。

委員

ただ、取り消しを認めているわけですからね。第三者機関が。過去にさかのぼって返せと言っているのだから、それは十分できるのじゃない?

委員

いや、初めから明らかなときがあるわけですね。だから、現行法にもそういうバックアップ規定が……。

委員

何かそれは考えるべき必要があるかもしれませんね。

委員

今のお話で、確かにそういう人もいるでしょう。結構小金持ちで、これ使ったらうまく逃げられるかと。名目だけ立派でね。必ず出てくるのですよ。悪知恵は世の中にたくさんあるのだから。それをチェックしようと思えば、基本的には、第三者委員会が認定するときに条件をつける。条件つけるというか、今先生がおっしゃったようなところの寄附を幾らか封ずるような、それでも抜け道ができるけれども、やっておけば、後でぎっちりと、悪いことやったら、悪用したら、事後的に締め上げるぞということにしておけば、あとはまあ、100人のうち1人や2人いるかもしれないけれども、ぐらいのところで我慢するかということですな。

委員

2つ言いたいのですけれども、寄附金のほうは、結構本気になって、寄附金、みんなやるような世の中にすべきだと思うのですよ。その際、多少ずるいやつ等、やくざが入ってきたりするのはしゃあないと。そういう細かいことではなくて、トータルでそういう寄附の世界をつくっていくのがいいと。それは心の美しい世界なわけですから、そういう方向を目指す。

その条件というのは、田中先生も言っていたように、シビル・ミニマムを下げるということがセットでなければ意味ないわけですよ。だから、寄附金の社会というのは歳出を減らすと。官だとむだ使いだから、寄附で、民でやれという話ですから、そこのところ、歳出のカットとセットにしないと何の意味もない。それをどう仕組むかということだと思うのですよ。だから税調でできるなあという感じがしますので、それが1つ。

あともう一つは、新しい法人のあれで、第三者機関というのは僕は絶対信用できないのですよ。このふるいなんてのはできるわけない。今までのあれでね。どこからどう見たって。だから、それはそれでいいのですよ。制度自体は。だから、認定した公益法人も、そうでない普通の株式会社も同じ税率にしてしまえば、認定自体に何の意味もないわけですから、基本的に、法人と銘打っている限り、どんなのであろうが税金は全部同じと。とるものとると。公益であれば、全く別なほうからちっとは後で負けてやってもいいよというのがいい。でも、そのこととさっき言った寄附金というのはつながらないからちょっと困るところがあるのですが、そこはだれかつないでほしいということです(笑)。

委員

2つあるのですけれども、第三者機関の公益性認定の際に、公益性認定が寄附金優遇まで直結する話なので、やはりここのところできちんと、寄附金が公益性ある事業に使われているかとか、適正に事務処理されているかとか、そういったことがきちんと確認されていることが担保されるようにして認定するというような仕組みをやはりビルトインしておく必要があるのではないかなと思います。

それから2つ目は、さっきの地方との関係ですけれども、地方の第三者機関が新たに認めるのであれば、やはり地方でテイクケアしていくというか、そういう考えで、やはり地方にもそういった効果を広めていくという観点で、もう少し寄附金税制について地方についても考えていくべきではないかと思います。

委員

3ページの他の法人との関係というところですが、一番上のマルのところです。私は具体的に何がどうこうということではないのですけれども、今回は確かに公益法人のこの話というのはある程度限定的な話でありますけれども、特別法に基づいて設置されている公益法人との関係について、今回は継続は適当であるでいいけれども、今回この新しい税というものを適用してみて、税というのは特別法の設置根拠とか何かとはまた別の世界ですから、その状況を見て、将来こういうところも場合によっては見直すこともあり得るということは触れておいたほうがいいような気がするのですが。

委員

幾つか議論されてない点で争点になっているところとしまして、4ページですけれども、金融収益ですけれども、これも世界的なあれからならすということであれば、後者の金融収益については非課税であると。むしろ基本財産を例えば土地・建物でやって、その利益を奨学金に使っている団体等もありますので、この辺も国際的に見れば投資収益という形で、それも考えてみてもいいのではないかと思います。

それから6ページの一番下に、認定期間ということになってますが、特増が今大体2年ということになってまして、2年のたびに一たん切れるのですね。そうすると、我々、調査したのですけれども、平均すると70日ぐらい間があいてしまって、その間に寄附すると、特増であったところでも寄附金控除が受けられないという非常に変な制度になってますので、これは少なくとも更新すべきであるし、2年というよりも長くしたほうがいい。それから取り消しはいつでもできるようにしておくという意味からすると、何年というものの意味合いももう少し考えてもいいのではないかなと思っております。

それから4ページのマルの2つ目、3つ目のところがいろいろ違うのですけれども、大体、非営利法人というのは金をもうけない、あるいはやってももうからないところをやるから非営利なわけであって、そこが収益事業をやるのであれば、これは取り上げないといけないと。取り上げる方法は2つあって、税として取り上げるか、公益的に社会に自主的に支出させるかということであって、そういう意味から言うと、みなし寄附金制度というのは、上限を設けるということも考え方としてありますが、むしろ下限を設けて、外でやったものについては公益的なことに回して、収益的な部分でため込まないような制度にすると。両方足し合わせたら、一般の法人税よりかむしろ高いぐらいの形をとってもいいのではないかなと私は思います。

委員

ということは、算入割合を拡大しろとおっしゃっているの?

委員

拡大しても。これはつまり、税務署に払うのか社会に払うのかという話なのです。もともとの趣旨から言うと、寄附金が足らないから、お金が賄えないから、その収益事業をやっているわけですね。そこから上がった収益は、本筋から言うと公益目的に使うためにやっているわけですから、これは公益性のあるほうだけですけれども、公益性のあるほうについてはそういう考え方も1つとしてあり得るのではないかということです。

それから最後に1つ。先ほどの二人の委員の最初の指摘は、二次的な利益分配があったときとか、そういうことかと思うのですけれども、これには対処の方法が3つぐらいあると思いますが、1つは、第三者機関のハードルを高くするという方法があろうかと思いますが、これはせっかく準則主義にしようという流れから、やはりおかしな話であって、また、中に入ったものを第三者機関が追い出すというのも、これは非常に行政コストがかかるわけですから、できるだけ自己取引とか、そういったものにはペナルティの税金をいっぱいかけるとか、あるいは情報公開、例えばしなかったら1日当たり幾らのペナルティをかけるとか、非常に見た目に不純なものが入り込みにくいような制度にしておいて、自発的に入らないようにするというのが一番コストが安く済むという。つまり、法経済学的なね。そういう形が一番、インセンティブを逆にマイナスインセンティブを入れておくというのがいいやり方ではないかなと思います。

委員

入ってくると大変だよというイメージを与えるわけね。しっかりしてもらわなきゃ、いいかげんなことではいけないと。

委員

ええ。というか、逆に変なやつはぜひ入ってきてくれと、全部身ぐるみはぐからという感じなのですよ、アメリカは。そういう格好のほうがいいのではないかと思います。

委員

今の委員と同じようなことについて申し上げたいと思います。要するに、非営利法人を第三者委員会が認定をして、税制上のいろいろな扱いも、それでもう一元化してしまうという考え方自身、私、いいと思うのですけれども、こういう公益法人制度と税務行政といいますか、そういうもの、あるいは税制、これというのはやはりかなり性格の違うところがあるので、一つの制度を仕組むときにどうやったらそれが一体化できるのかというような問題は、実際問題、多分あるだろうと思うのですよね。今の委員のような考え方で全部仕切れるかどうかというのも、私、よくわからないのですけれども。

だから、認定要件の中にその両方が入っているようなうまい仕組みをつくらなければいけないし、それから事後の認定の継続性を確保する要件というようなものがやはりしっかり担保されていなければいけない。同時に、国税、行政との関係で言えば、おそらく税務行政上から見たいろんな情報でそれがフィードバックされて、その要件が認定されているかどうかという点も多分要るのではないかなと。そういうことを担保できるような制度に私はする必要があるのではないかという、ちょっと気がするのですけどね。難しいと思います。

委員

ちょっと私の理解が間違っているのかもしれませんけれども、先ほどもおっしゃられたみなし寄附金制度です。ちょっと教えていただきたいのですが、要するに全体的に寄附金制度の範囲を広げようというのが今方向だと思いますけれども、そうすると、当該公益法人等が収益事業をやるのだけれども、その公益法人等が寄附の対象法人になったときは、ほかの法人がその法人に対して寄附をすれば全部認められるのに、当該法人が収益事業をやったら2割しか認められないというのは何かちょっと矛盾ではないかなと。つまり、その収益事業をやっている部分が別の法人であるとすれば、その法人に対してもうけの全部を寄附すれば、それは全部寄附金控除の対象になるのに、自分の中でやっているから、2割しかそれは損金算入認められないのだと。

委員

B to Bでということですか。もうけたやつでお金をやってやればフルに控除になるけど、自分だけだと2割だよと。

委員

ええ。

委員

そういう議論しました? そういうふうに理解するの?

委員

だからちょっと理解が違うのかもしれません。

委員

それは自分の懐の中でもうけから出しても、自分の懐ではない、よそへ出しても同じ20%の枠内でという。

委員

そういう理解でしょうね。つまり、もうけた金で損益算入は2割ずつだということね。

委員

いや、そういうことではなくて、例えばBという公益法人がありますよね。それが寄附ができる法人だとすると、Aという会社が幾らここへ寄附しても、それは寄附金控除の対象になるわけだと思うのですけれども、まあ上限があるのかもしれませんが、だけど、この公益法人が、Bという法人が自分で収益事業やってもうけたものは自分のところに寄附するというか、公益会計のほうに移しかえるのだろうと思いますが、その場合には2割しか認められないというのは何か矛盾があるような気がするのですけど。

委員

今、委員は、BからAにやったって2割だよとおっしゃったのでしょう。

委員

BからA、それは公益法人だからという意味でしょう。

委員

そうです。

委員

そうでなくて、一般法人であれば違うのではないですか。

委員

おっしゃっている趣旨はわかりますけれども、一般の営利会社がほかへ寄附をするときには、全額、損になる場合もありますし、所得の2.5%とか、資本金の額によっての枠のかかるケースもございます。

委員

それが2割とイコールフッティングになるのですか。額的に。

委員

それは、新しい制度で損金算入枠を幾らにするか決めてないからこういうことになって、当然それはそちらを決めてどうリンクするかという話になろうかと思います。

委員

だから、おっしゃっておられるように、いいことをしている法人が自分で稼いでいいことに使うときに、税制上どういう配慮をするかというのは一つの議論としてあり得る話でございます。その2割がいいかどうかという話は。

委員

要するに、一般法人の場合の限度額と、それから自分が自分に寄附する場合の限度額というのがどこから見ても同じ、バランスがとれていないとおかしくなるのではないかなということを提起と。

委員

そうかなあ。

事務局

ちょっと整理いたしますと、一般法人が寄附するということにつきましては、いわゆる一般の寄附枠ということで所得金額の2.5%と資本等の金額の0.25%との合計額を掛ける2分の1というような形で枠設定がされております。それからみなし寄附という話につきましては、公益法人の寄附金の損金算入枠が20%という中で、収益事業の中で稼いだものから2割を限度に非収益事業に移しかえられるという形になっております。これはまさに公益的な活動に使われていくというようなことの配慮で設定されているものですから、大きさからすれば、イコールフッティングという議論ではなくて、むしろ公益性のほうが大きくなるという形になるということだと思います。

委員

イコールフッティングではないでしょうね。もう少し考えましょう。

委員

お話を伺っていて一番基本的な問題だと思うのは、税務署に払う税金も社会のために払っているのですよね。そこを、何かそっちは全然変なものに払っているかのような議論はやはりしてはいけないと思うのです。この話をするときに。それから、そもそもは、話の発端は、官が全部やっていたのではもう無理だから、できるだけ民のほうに移そうではないかと。そのときに民がお金が要ると。それで寄附金の制度について考えてやろうという議論を我々はしているはずなのですよね。だから、そこはやはりその筋から外れないようにしてほしいと思うのは、今の2割の話にしても、それを広げていくということは、そういう公共のために働いてくれるNPOのような法人にできるだけ収益事業をやりなさいよという話になってしまうわけですね。収益事業をやれば有利ですよという。そうするとこれは、そもそも収益事業ではないことをやる、パブリックな世界を考えるところを育てようと言っているのに非常におかしな話になってしまうのではないかと。

それから一方、第三者機関できちんとした認定をやる。そのとおりですよね。おっしゃるとおりだと思う。それで、今度はその後の事後的なことまで追っかけると。これも確かに必要ですよね。だけど、この話というのは新たな官の肥大なのですよね。これも官だということを忘れないでいただきたいと思うのですね。確かにトップは第三者の方、非常に良識ある方々がおそろいになっているかもしれないけれども、その下にある機構は全部官になるわけですから、それが一体どこまでやれるのかということをよく考えていかないと、何か変なものができてしまうと思うのですね。

それからもう一つ言わせてください。それではパブリックの世界に民に出てもらうというときに、それはどこの仕事かというと地方の仕事なのですよ、主として。だから、地方の仕事のためにそういうものを、新しいことを考えていこうと言っているのに、地方団体の寄附金控除については制限してしまうということは私はロジックの矛盾だと思うのですね。そういうものを認めたかわりに、今まで地方が自分でやっていたことを民のほうに移していくという議論をしているはずなのですね。だから、確かに東京都の収入が減ってどこかほかの地方団体の収入が増えるというのはおかしいと思いますから、それは何らかの方法を講ずるにしても、我々、何の議論をしているかというところをやはり離れないようにしなくてはいけないのではないかと思います。

委員

ありがとうございました。根本的な、非常に重要な点をご指摘いただいたと思います。

委員

今の話で一番端的なのは千葉県の市川市の話なのですよ。いいですか。市民税を1%、自分が新たに寄附するのではない、納めたやつの1%をおれたち恣意的にというか、判断があるのだけれども、しかもあそこのNPOに配っていきたいなということになっているわけ。これは寄附よりももっと根本的な問題提起していると僕は思うのだ。あれを推奨するようなNPOの人もいるし、聞いたこともあるし、提唱しているけれども、あれはしかし、そんなに簡単な話ではないのだ。まだ寄附金のほうが、先ほどの委員の根源的な質問に対しては多少ごまかしながらいけるかもしれないなという気がする。

第2に、第三者機関と言うでしょう。これ、47都道府県全部できるのですよ。みんな立派な人が全く同じ頭の構造ですわ、同じ尺度で全部さばけるかといったら、そんなこと絶対あり得ない。必ずどこか甘めで、片方は厳しめで、でこぼこあってしようがないという話が必ず出るに違いないのですよ。しかし、それは百もわかって制度つくったのだから、しようがないと。しかし、ここは税調が決める話でも何でもなくて、それこそ総務省が全部決めるわけだから。これから秋に向かって細則についてね。そこのところ、厳しいことを税調としては言っておく必要がある。今よりももっとゆるふんじゃ困るぜと。これは注文つける立場ですよ。こっちは内容に踏み込んで、どういったってそんなことは言えないから。財務省の仕事ではないから、この話は。ということだけぜひとも、僕は最初から同じこと繰り返していくるのだけれども、ここが一番不安なのですね。

委員

大体時間になりましたけれども、この際もっと意見をという点ございますか。

委員

寄附金の本筋の話ではないのですけれども、3ページの(他の法人との関係等)の3つ目のマルの「人格のない社団等」に対する課税のところでございます。同窓会とかPTAとか町内会とか、非常にたくさんの人格のない社団等があるわけですけれども、これをいわば剰余が出たら課税の対象にすると。同窓会等を勘案して、会費は除くというような考え方もあるようで、それも同じ横並びにはなろうかと思いますが、そこまで考えますと、本当に抜くのは会費だけでいいのか。地方公共団体の助成金や何かをもらって自治会や何かはいろいろ活動しているような例が多いわけですので、今の考え方で実施するとどういう影響が出るのか、そこら辺、実態としての検討も必要なのではないかと思いますけれども。

委員

ご心配は、会費だけだと狭過ぎるから、もうちょっと広げたほうがいいだろうというご趣旨ですか。今おっしゃったことは。

委員

というようなものがあるのではないかと。

委員

そういう問題提起ですね。わかりました。

よろしゅうございますか。用意した時間がちょうど来たのですが。

いずれにいたしましても、今日随分ご議論いただきましたが、まだ完全にイエスかノーかのところで詰め切れてない点もございますが、一応これは次回以降、文章にした上で、皆さんの意見を聞きましてマジョリティな方向、あるいは基本的な方向で一本化して話をまとめていきたいと考えております。

そこで、あとの予定ですが、かなり日程的には詰まってくるかと思いますが、一応テイクノートをお願いしたいのは、来週、24日、総会を開きます。2回、小委員会あるいはワーキングをやりましたので、それを総会にかけまして、この非営利法人並びに個人所得課税につきましてご議論いただく予定です。2時から4時までを24日、火曜日考えています。

それから27日、金曜日、これは個人所得課税をやっております基礎小でございまして、これはかなり住民税の話もしなければいけないということもありますしいろいろありますので、3時間予定しておりますので、14時から17時まで、よろしくお願いいたします。途中でご退室ということもあってもいいかと思います。

それから6月7日以降、午後、ダブルヘッダーということもあり得べしでして、例えば6月7日火曜日は1時から3時まで、この合同、それから3時から5時まで基礎小とかいうことも考えておりますので。ほぼ決めたのがあるのですが、総会のときに、総会の皆さんのあれも踏まえて、印刷したものをお渡ししたいと思いますが、とりあえず、火、金、火、金の午後は、今のところは、6月に入って7、10、14、17、21日と考えておりますが、これは毎週ということです。すみません。いろいろご多用中と思いますが。

じゃどうも今日は長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

非営利法人課税ワーキンググループ