非営利法人課税WG(第5回)後の水野座長記者会見の模様

日時:平成15年3月4日(火)16:24~17:30

水野座長

それでは、税制調査会基礎問題小委員会、非営利法人課税ワーキンググループ、第5回目のお話をさせていただきます。

今日は、答申といいますか、報告書になるようなたたき台になるものを出しまして、議論をいたしました。基本的にちょっと認識をお願いしたいのは、この現行制度と新制度を対照してあります先ほどお配りしてあるポンチ絵があると思うんですが、時々、新聞それからテレビのニュースで耳にしますのは、現行の原則非課税が、非営利法人制度の課税見直しの時に原則課税になると、それで非常にボランティア活動を阻害することになるのではないかと。そういうようなご意見をかなり耳にいたしましたので、ここでこの委員会の基本的な発想といいますか、大まかな方向を話しておきたいと思います。後で詳しく要件などはお話ししたいと思います。

今、事務局からも言っていただきましたこの資料ですが、現行制度を見ていただきますと、現行制度は民法34条のいわゆる公益法人ですね、それから、いわゆるNPO法と言っているものに基づいてできたNPO法人、それから中間法人という、これも法律で新しく作られましたこの3つ、公益法人とNPO法人、中間法人ですね、で、現行はどうなっているかということは何度かお話ししておりますが、民法34条の公益法人につきましては、基本的には収益事業のみに課税すると。NPO法人につきましても同様に収益事業を行う場合に納税義務を負うと。中間法人は、これは共益的なものですので、一般的な納税義務を負っているという前提に立っております。

これをちょっとお話ししますと、法人の課税ですけれども、法人税というのは会社に対する税金だという認識が強いように思われるわけですけれども、そうではなくて、法人全体にかける税制であると。法人税法では、法人税の納税義務者ということで6種類ぐらい出していたと思いましたが、更に今増えていますけれども、いわゆる営利法人であれ、社団法人であれ、株式会社、有限会社に限った税制ではないということです。法人であれば、所得を生ずれば課税すると、これが一番の基本でありまして、そういう原則のもとでNPOなり、従来の公益法人で適正なものについてはどうやって課税を外していくかと、こういうのがこの会議の目的であります。ですから、原則論でいきますと、法人である限り所得が発生すると課税されちゃうことになるんですね。それではちょっとまずいであろうと。いわゆる公益目的で活動するボランティア活動、社会貢献活動といったものがありますから、そういうところに他の収益が生じた場合には、それをどうやって課税の枠から外していくかと、こういうことを検討しているわけであります。

このポンチ絵を見ていただきますと、現行制度と新制度になっておりますが、新制度は、これはお聞き及びのことと思いますけれども、いわゆる法人格の準則主義ですね、一定の要件を満たしていれば、自分で登記することができる。会社なら商業登記になりますが、どういう登記方法になるかはまだこれからですが、いずれにしても準則主義で、自分で要件を満たしていると思ったら作ることができるということなんですね。そうなりますと、当然法人の数は増えていくでしょうし、中には全く非営利目的とは相入れないような法人も出てくる可能性があると。そこで、今、内閣官房の行政改革推進事務局、そちらが新しい法人制度を考えておりますけれども、それを視野に置きながら、新しくなった法人制度の課税をどうするかということで検討しているわけです。

ご覧いただきますと、新制度というのは、結局この3つの…現行制度の3種類の法人を1つにまとめてたものが非営利法人となるわけですけれども、従来と同じように公益目的の法人につきましては、従来通りの課税ですね、収益事業を行う場合にのみ納税義務を負うと。それ以外の法人につきましては、一般的に納税義務を負うと、こういうような方針で臨みたいと考えているわけです。ですから、税制が変わって、NPO法人の課税が強化されると、そういうことがないような要件を作っていきたいと考えているわけです。このポンチ絵を見ていただきますと、これが理想的な姿で、いわゆる公益目的の法人につきましては、課税上、やはり収益事業だけに課税をすると。そうでない共益的、あるいは自分の利益のために作ったような法人、株式会社ですと資本金額が必要になりますから、そうではないようなもの、幾らでも出てきますが、そういうようなものには通常の法人税をかけると、こういうような考え方でおります。

それから、加えておきますと、ポンチ絵の中に網かけが入っているところがありますが、これは、いわゆる寄附ですね、慈善活動等に対して寄附というものが不可欠ですけれども、寄附をした場合に寄附控除が受けられるかどうか、いわゆる寄附者のほうの側から見たものですけれども、公益法人につきましては、特定公益増進法人という規定がございますので、それに当たるものに寄附をすれば寄附者は控除できると。NPOの場合には認定NPOに寄附をすれば控除ができますと。中間法人にはそのような特典は認められておりません。これは共益的なものだということですね。それで、新制度のほうにつきましても、やはりある種の寄附金については優遇して、非営利活動といいますか、公益活動に奉仕するような法人に対する寄附については何らかの特典ですね、寄附者に対する特典を与えるということを考えております。

これはまだ前段といいますか、大ざっぱな話で、お配りしてありますが「非営利法人に対する課税の基本的考え方(案)」、これを見ていただきたいと思います。この非営利法人に関する課税の基本的考え方をたたき台として、できればこれを報告書の形で整えたいと思っております。先ほどのポンチ絵の説明にございましたように、基本的な考え方としては、やはり公益といいますか、社会貢献するような法人につきましては、できるだけ法人税の課税という本則から外れるといいますか、そのような形で検討をしたいと考えております。ですから、この報告書といいますか、報告の検討につきましても、よく新聞、ニュースなどで言われていますように、従来は原則非課税であったけれども、今度は原則課税であると、そういうような表現は使っておりません。そのような表現は、非常に誤解を生ずるわけですね。原則非課税であると、このポンチ絵を見ていただきましても。新制度になるとどうなるかというと、従来公益目的で非課税といいますか、法人税が限定的に課されていたものについては、やはり限定的な課税にすべきであろうということで、この点は特に異論は出ておりません。ですから、原則課税、原則非課税で議論しますと、かえって話が混乱して、抽象論だけになってしまいますので、そこは避けたいということです。

それで、時間もそうございませんので、簡単にこの非営利法人の課税の基本的考え方(案)(非営利WG5-3)という資料に基づいてお話ししてまいります。

まず1番目ですけれども、「非営利法人に関する課税のあり方を検討するに当たって」です。これは何かと申しますと、内閣官房の行政改革推進事務局で法人制度の改革をやっております。先ほどから申し上げておりますが、この3つの法人の種類につきまして、これを改革するということで、結論としましては、いわゆる非営利法人ということでくくりまして、しかも、一定のルールに基づいて、それを充足している団体につきましては、自ら届け出ることによって法人格を取得する。いわゆる準則主義ですけれども、こういうふうになるということが言われております。ワーキンググループにおきましても、基本となるのは、近い将来になるかもしれませんが、非営利法人といったものに法人制度が変わるということになりますと、それを前提とした上で議論しなきゃいけないわけです。しかし、ただそれだけを受け止めるわけにはいかないということで、幾つかコメントを出しております。それがこの1の課税のあり方を検討するに当たってということです。

まず検討されている非営利法人制度の概要ですけれども、今お話ししましたよう、ポンチ絵の3つの法人を1つにまとめまして、非営利法人としてくくると。実際に法人格を取得する場合には、準則主義と言っておりますけれども、一定の要件を満たした団体は自ら…まだここははっきりしていませんが、自ら登記することによって法人となることができると、こういうような形になっているわけです。いろいろ考えてみますと、異質なものですね、特に中間法人というのは共益的な存在ですが、公益法人と、更にはNPO法人になりますと、これはボランティア活動をやると。公益法人やNPO法人と中間法人を一括して非営利法人とされる理念は何なのかというような疑問が出されております。

それから、非営利法人ですけれども、これもこの間お話ししましたが、その見方につきましても非常に両極端の見解があると。一方で公益法人につきまして、特にテレビのニュースに出るようなことがままありますけれども、いわゆる公益法人の不祥事に着目して、公益法人制度を積極的に改革しなければいけないという考え方がある。中には、課税を強化しなければいけないという意見、考え方もあり得るわけです。他方で、NPOに象徴されますような、特定非営利活動法人と言っておりますが、これは、ボランティア精神に基づいた社会貢献ということですから、できるだけそちらのほうは促進して、むしろ援助するような形で進めてもらいたいと、こういう考え方、両極があるわけですね。公益法人という長い歴史を持った制度の中には悪いものが出ていると。他方で、特定非営利活動法人として認められたNPOについては、できるだけこれを育てるようにしてもらいたいということがありますので、それもまた基本的な視点が違っているということでありますので、これが非常に議論を難しくしているところであるわけです。

ということでございますけれども、そこで、「(1)内閣官房において検討されている非営利法人制度の概要」、この概要につきましては、先ほどお話しした通りでありますが、この「(2)非営利法人制度の考え方に対する指摘」というのは今お話ししました、違ったものを1つにする理念は何であるのかということがいまだはっきりしないということであります。それから(3)につきましては、課税の点ですね、今お話ししましたように、従来からある公益法人に不祥事が起きているというのと、新しいNPOの考え方、これが非常に対立しているということです。それから、「本報告書の位置付け」が(4)ということになりますけれども、これは、基礎問題小委員会のほうへ3月14日の会合の折に提出いたしまして、さらに税制調査会総会のほうに報告されると、こういうような仕組みになっております。なおかつ、政府が公にします法人制度改革の大綱、その中にも盛り込まれるということになっております。

そこで、本題の「二、非営利法人に対する課税、1、非営利法人に対する課税のあり方」ですけれども、今、議論を行っている最中ですが、先ほどもお話ししましたように、(1)ですが、「法人に対する課税の原則」、何度も申し上げますけれども、法人税というのは会社税ではなくて法人税であると。これは、何も株式会社、有限会社に対する税制ではないということですね。ですから、法人格を取得すると、所得がある限り法人税を納めるという納税義務が発生します。ただ、公益的な目的を持った公益法人ですとか、NPOにつきましてはどういう形で課税を軽減していくかと、そういうことをしてきたのは従来の制度でありますし、更に今検討しているのも同じように、適正な活動をしている法人については、同じように課税を軽減していくと。その方法を考えなければいけないという方針に立っております。ただ、先ほどお話ししましたように、これから法人制度が主務官庁の許可ではなくて、準則主義ですね、一定の要件を満たせば自分で登記できると、こういうような形になりますと、法人の数は相当増えていくであろうということですね。ということで、法人数がいっぱい増加するということを考えてみますと、基本的には、そういった法人も、法人格を取得した以上は法人税の納税義務者になるということです。ですから、そこからどういうものを救っていくといいますか、課税を行わないということにするかというのが、このワーキングループの課題であります。

そこで、2番ですけれども、「非営利法人が行う事業活動を非課税とするための要件」。ここは非常に技術的な話になりますが、さて、どういう基準で判断したらいいだろうということですね。今までですと、公益法人の場合は主務官庁が許可をしました。NPOにつきましては、都道府県が認証でしょうか、そういう形でチェックしたわけですが、それが準則主義で法人が自由に作れることになるために、そういう仕組みではなくなってしまうと。それ全部を非課税にするなんていうことはできませんので、何らかの要件を作らなければいけないということで、少なくとも課税については、こちらのほうで新しいルールを作っていかなければならないということですね。そこで考え出しましたのが、まだこれは議論の途中でございますけれども、そして前にも4つの要件とお話ししましたが、それを多少拡充したものになっています。

そこで、いわゆる非営利法人の中で公益的、社会的な活動を行っている、この法人の所得を非課税とするためにはどうしたらいいだろうということですけれども、これを2つのグループといいますか、縦軸と横軸と申しますか、そういうふうに分けております。1つは、(1)法人という組織についてどういう要件を求めるかということですね。それからもう1つは、次の(2)になりますけれども、法人の活動そのものがどういうものであるかと。こういうような2つに分けました。ですから、基本的には法人の制度がどういうふうに作られているかという問題ですね。それと、2番目は具体的な事業活動がどういうふうになっているかと、その2つの側面から検討して、非課税となるような要件を考えていこうということでございます。

書いてありますが、「(1)法人としての要件」。これがまず法人の組織の問題でありますけれども、1つには「事業活動の公益性・公共性、あるいは社会貢献性」というところです。従来の公益法人やNPO法人もこれを根拠に法人税を課されない部分といいますか、負担が軽減されていたわけですけれども、営利法人、従来からあります株式会社等の営利社団法人とは異なっている点、ここが一番異なるであろうということですので、これを要件として求めていくと。ただ、これからまだ議論しなければいけないわけですけれども、今日も議論が出ましたが、事業活動の公益性とか公共性、これをどうやって判断するんだろうという、その難しさですね。それはあります。

それから2番目、「内部留保の制限」といった問題、これは、動かなくなった自動車を修理したり運んだりしたりするようなサービスをやっている公益法人がありますけれども、極めて高い内部留保を持っていると。そういうようなことも出ているということでございますので、あまり内部留保を無制限に認めておくと、良からぬことにもなってしまう。ということですので、やはり内部留保には制限を行う必要があるのではないかと。

それと裏腹をなしておりますけれども、3番目に利益分配とありますが、利益の分配をすると、これは株式会社と同じようになってしまいますから、利益の分配はできないと。これは今でも公益法人はそうなっていると思いますが、分配しないだけに内部留保が蓄積するということがありますけれども。それから最後に、残余財産ですね、もともと非営利法人の一番の中心人物が亡くなったと。形の上ではその団体を継続することは可能ですけれども、その段階で解散してしまう、廃止してしまうということはあり得るわけですけれども、それが亡くなった代表者の家族の財産になってしまうと。こうなりますと、いわゆる非営利法人として活動してきた、利益の分配を行わない、社会のために貢献してきたという趣旨とは相入れませんので、この残余財産については国に帰属させるということに考えております。あるいは、別の同種の非営利法人に帰属させるということも考えられますけれども、解散した場合には利益を自分達に戻してはいけないということです。

それから4番目、「組織運営等に関する要件」となっていますが、これは結構重要なものですが、いわゆる情報公開ですね。非課税であるためには、やはりそれなりに会社の会計書類、それから事業活動といったもの、これがきちんとしていなければいけない。後で出てきますけれども、そのための1つの担保の手段としては、やはり情報を開示させるということになるのではないか。開示させる、場合によってはホームページを作らせるなどということもあり得ますけれども、こういう形で国民の関心にさらすということですね。今までも会計書類を作っていたところもあれば、作っていないずさんなところもあったということですけれども、少なくとも課税の面で非課税の措置を受けたいということになりますと、やはり帳簿書類その他でチェックする必要があります。また、税金の問題が絡みますとそれなりに組織のほうでも帳簿書類などはきちんとしておくというインセンティブにもなろうかと思われるわけです。ですから、情報開示ということですね、こういうものが必要ではないかということであります。組織運営、まだいろいろ論ずるところがありますけれども、1つの考え方では、いきなり書類を持ってきて認めてほしいと言われても困りますので、数年間どういう活動をしてきたかと、こういうようなことをもとにして、いわば従来の実績をもとにして非課税とする判断に用いるということでございます。これが法人組織としての要件ということになります。

それから、2番目が「事業活動の内容に関する要件」です。従来、これは収益事業という言葉を使いまして、公益法人、それからNPO法人につきましても、これは収益活動について課税すると。法人税の本法では、収益事業以外には法人税を課さないとなっているんですが、収益事業課税ということが行われてきておりますけれども、それを新しい言葉で、事業活動の内容に関する要件ということで、1つには「非課税対象となる事業活動」をどう認定するかという問題です。これはいろいろ考え方がありますけれども、従来33業種を挙げて、それだけが収益事業として課税されるということになっていたわけですけれども、ここから先はまだ議論途上ですが、あるいはその収益事業を50にする、100にするといった意見もありますし、対価を受け取る限りは課税をするという考え方も出ております。いずれにしましても、どういうふうにするか、かなり具体的なルールを作らなければいけませんが、基本的には非課税となる事業活動というものを定められるようなルールを作らなければいけないということですね。

それで、「その他の考え方」というのは、いろいろな考え方が出ておりますけれども、これは少数の意見ですが、社会的に貢献すると、こういう公益的な事業から生ずる所得については非課税にするというような規定にしてほしいという意見も出ております。ただ、社会的に貢献する、あるいは公益的な事業ということにしますと、非常に範囲が定まらなくなってくるわけです。そういうこともありまして、こちらのほうは意見として出てまいりますけれども、少数意見にとどまるのではないかと思っております。社会的に貢献する活動は、全て非課税であるという発想でやりますと、例えば弁護士の方が弁護活動をやって収益を上げると。それも、自分の持っている財団の運営のために使うんだと、こういうことになりますと社会貢献とは言えないかというとなかなか難しい問題になってきますので、社会貢献とか公益的な活動という言葉を使いますと、範囲が曖昧になってしまう。そういうこともありますので、従来の収益事業と似たような考え方ですね。ただ、これは業種はどうなるか分かりません、これも議論している最中ですけれども、包括的な規定にするという考え方もありますし、課税の対象となる業種の数を増やしていくということも考えられます。ただ、ちょっと見た感じで、例えば中に美容院ですとか床屋とか書いてあるわけですけれども、美容院なり床屋なり、こういった活動は明らかに所得を得るための営利活動でありますので、こういうものまでリストに入れなければ課税できないという仕組みもちょっとおかしいのではないかという気もするわけです。ですから、これは今後の検討の課題ですけれども、収益事業のほうの数を増やすのか、それとも一般的に対価を行うような活動には課税をすると、そういうふうに包括規定にするかどうか、これはまだ議論途中ですけれども、選択肢になると思います。

それから[3]ですが、「収益的事業から公益的事業に支出した場合の配慮措置」というのは、今までも公益法人などに認められておりますけれども、みなし寄附金と呼んだりしますが、こういう形で従来から課税の範囲を狭くするというようなことをやってきておりますけれども、この考え方は継続して用いられるのではないかと。ですから、仮に収益が非常に上がった年があったと。公益的な活動をやったんだけれども、まだ余ったと。それに課税されてはたまらないという気持ちは当然あるし、来年度使いたいということがありますけれども、これを一定限度認めると。ここで配慮措置と言っているのはそういうことであります。

それから、[4]軽減税率ですが、これも今日議論が出ましたが、普通法人に合わせるのは当然だから、これは検討する必要がないというご意見もありました。従来から、税制調査会の答申なり中期答申におきまして繰り返し、やはり税率は基本の法人税率に従うべきではないかということでここに挙げております。これは、今度初めてということではなくて、前々から問題点として指摘されてきたところであります。

そこで、(3)ですが、「共益的事業を行う非営利法人が受ける寄附金・会費の取り扱い」ということです。これは、技術的な性格が強くなりますけれども、今まで上の要件を満たしていた場合でも、いわゆる共益的なものはどうなるんだろうと。半分は公益で半分は私益であると、こういうようなものが出てきますので、この場合にどういうふうに対応するか。寄附金などの優遇といったようなものが非課税法人には出てくる可能性がありますし、そもそも非課税になるということなんですけれども、共益的な事業を行う非営利法人が受ける寄附金・会費につきましては、その趣旨ですね、公益的なものでない場合には、これは課税されることになるでしょうと。ですから、先ほどのポンチ絵でいきますと、新制度のほうですけれども、一般的に納税義務を負うとなっております。いわゆる寄附金だとか会費の中身が、それが公益的な活動につながる場合は2の(1)のほうへも入ってきますけれども、寄附だとか会費を払いましても公益に直接ストレートにつながってこないもの、こういったものについては課税するという本則に戻るのかなということであります。

それが1枚目ですが、2枚目を見ていただきますと、3ということになりますが「事後チェック」、これは今日もずいぶん議論の中で強調されましたが、事後チェックを重視していくことが必要であろうということです。では、事前のチェックはどうかということですけれども、ここは先ほど申し上げましたが、2のところで、非課税となる要件ということを定めてありますけれども、一体これは誰が判断するのかということまでは書いてないんですね。これは、内閣官房の行革事務局のほうとの兼ね合いといいますか、どういう組織でこれを判断するかということですね、そこがはっきりしておりませんのでまだ出していませんが、事後的なチェックになりますと、収益事業から収益を生じているといったものにもかかわらず申告をしていないとか、国税庁のフットワークを生かしまして、事後的なチェックは行うべきではないかという意見がありましたね。ですから、会計書類、それから税務調査といったもの、これは重視していく必要があるのではないかということです。

更に、もう少し進みますと、事後的なチェックをしまして、例えば税務調査できちんと申告しているかどうか、本当に非課税の要件を満たしている活動を行っているかどうか、こういうことをチェックしますけれども、ひどい場合には、いわゆる是正措置として非課税法人であることの資格を失うようなことを登録する機関に請求すると、こういうようなことも考えられるのではないかということです。ですから、ちょっと分かりにくいと思いますが、非課税とするための要件を判定することを仮に登録としますと、優遇措置を受けるために登録制度が作られたとした時に、その登録する機関がまだ議論されていませんが、それだけではなくて、実際に登録が認められて非課税法人になると。それで、事業的な活動を行っている場合ですけれども、その場合に、事後的なチェックを重視するわけですが、更に、あまりにもひどい場合には、その登録機関に是正するような要請をするとか、場合によってはその登録を抹消するような請求をすると、こういう形で事後的なチェックを行っていく必要があるのではないかということです。もともとの趣旨が、公益法人制度を動かすということ、いろんな見解がありますけれども、基本的に規制を緩和した場合には大体事後的なチェックを強化するということですので、同じようにこの場合にも、特に課税の面ですけれども、国税庁のほうで調べた結果、課税のあれがかなり生じていると。帳簿もきちんと整っていない、そういうような法人であった場合には、登録機関に対して国税庁のほうから登録の抹消を請求すると、そういうような措置も考えてはどうだろうということです。

それから、先ほどもありましたが情報公開ですね。これは、非課税の要件にも入っておりますけれども、情報公開を継続的に要求していくということです。

4が、「要件を担保するための具体的仕組み」です。分かりにくくて恐縮ですが、これが、いわゆるどういう機関が登録をするかということなんですね。1ページ目でご説明いたしました非課税とするための要件、これは課税の側面ですけれども、登録機関というものが独立した機関、あるいは第三者機関、そういったものになった場合に、課税上の非課税の要件というものと適合するような仕組みになっていませんと困りますので、この点は今後の課題であるということです。

それから、5の「移行する場合の税制上の取り扱い」ですが、これはまだそこまでは議論しておりませんけれども、少なくともこのポンチ絵で見て、従来課税の範囲が、公益法人なら収益事業33業種に限定されますし、NPO法人もそうですけれども、このグループに入っていたものが、今までの経緯を見て適正に行われているという場合にはそのまま新制度のもとでも、この点線の左側に入るような仕組み、これが移行する場合の税制上の取り扱いということで、できるだけ今までの適正な活動を行ってきた法人は、新制度になっても非課税の恩典は受けられるようにと、これが経過措置の考え方です。実際には、1つ1つの法人を認定していきますのでかなり作業はかかります。両方合わせれば2万から3万になると思いますが、これも今後の課題ですけれども、こういうことも検討しなければいけないでしょうということですね。

それから、時間が長くなって恐縮ですが、三の寄附金税制、これはポンチ絵を見ていただきますと、それぞれ先ほど網かけと申しましたが、いわゆる通常の寄附金ですと控除される限度額が決まっているわけですけれども、こちらの特定公益増進法人ですとか認定NPO法人の場合には、寄附をしたほうの側の人が控除を受けられると。ですから、それによってどんどん寄附をしてくださいと。社会的に貢献している公益的な活動を行っている法人を助けてくださいという趣旨から寄附は控除することになっているわけですが、同じような考え方で寄附金の税制というものも考えていくべきであろうということです。というようなことでございまして、まだ寄附金税制のところ、今日はあまり議論できませんでしたが、大体事後チェックの問題、それから1ページ目の公益性の問題、それから(2)の事業活動の内容、いわゆる社会的に貢献する活動は全部外せとか、やはり収益事業は課税すべきであるというようなところがかなりの論点でございました。

あと、二、三、どういう具体的ご意見があったかご紹介しておきましょう。これは意見ではありませんが、最初に、毎回会合のたびに内閣官房の行政改革推進事務局の方に来ていただいているわけですけれども、法人制度としてどうして公益法人とNPOに並んで中間法人が一緒になって、非営利法人になるんだろうと、こういうようなことなどをこちらの行革の事務局の方から説明を伺いました。それを付け加えておきますが、あとは、今報告書の中身を話したわけですけれども、基本的には、公益法人とNPOをどう見るかと。前回、図をもってご説明いたしましたけれども、NPOの立場に立った物の考え方をする方と、公益法人の濫用といいますか、運営のいいかげんさ、こちらをよくご存じの方はしっかり取り締まるようにということで、どうしても対立的な意見が飛び交ったと、こういう状況でございます。

スケジュールとしましては、3月11日、次週ですけれども、この時に今お話ししました案をもう一度検討しまして、取りまとめを行いまして、3月14日の税制調査会の基礎問題小委員会に報告する予定でおります。まだ3月11日、来週でまとまるかどうか分かりませんけれども、できるだけ鋭意努力をして、そのように努めたいと思っております。

大分長くなってしまいましたが、失礼しました。

記者

最初におっしゃっていた、議論の混乱のもとになった原則課税・非課税問題というのがこういう新しいところで収斂されて、若干、形が同じようなのか違ったのか、ちょっとよく分からないんですが、これについて、堀田先生だと思うんですけれども、納得されたというか、皆さんの一致を見たんでしょうか、この基本理念というところでは。

水野座長

先ほどの4要件とか、その他ですね。

記者

まずは、その分け方というんですか、2つの。

水野座長

そうですね、堀田先生はそもそも法人制度、NPOと中間法人が一緒になるのがどうのとか、そういう議論はしておられませんので、これについては特に異論は持っておられないですね。

記者

認定機関のことでは、ある程度たたき台的なところでは、第三者だとか何とかというのはある程度のものは出なかったんですか、もうちょっと意見というか。

水野座長

もともとこれは、行政改革推進事務局の仕事で、向こうでいわゆる法人、従来の主務官庁を外すと。そのかわりにどういう機関を持ってくるかということを検討することになっておりますので、こちらではその辺は話題になることはありますけれども、特に積極的に取りまとめの案に入れるということはございません。

記者

では、案からそのことには言及しないという可能性はあるわけですか。

事務局

ちょっと補足させていただきますと、内閣官房のほうで登録制度というものを検討されておりまして、そこでも幾つか登録基準ということで要件は考えておられると。別途、税制調査会のワーキンググループのほうでも、先ほど座長から説明していただきました要件を考えておるところでございます。ただ、そうした要件が一致するのか、あるいは仮に一致したとして、そもそもその登録制度の登録主体というものがどのようなものなのか。どのような権限を持って、どういう体制なのか、そういうところが全く分からないものですから、あくまで仮定の話として、例えば登録制度に乗っかるといいますか、要件が一致して、しっかりしたものであるならば、例えば税の当局と登録主体との間の連携の仕組みとか、そういうものが必要じゃないかとか、そういう議論はございました。

記者

3点ほどお伺いしたいんですけど、非課税要件で4つの基準を設けられましたが、例えば内部留保だと何パーセントで線引きするかといった具体的な基準、これについては11日の段階で出るのか、あるいは3月の取りまとめには出なくて、来年度に移るということであればいつごろに具体的なものがまとまるのかというのが1点。

2点目が、先ほど先生がおっしゃられた3つの法人を一くくりにすることに対する積極的な理念が見当たらないということでしたけれど、今日、内閣官房のほうの説明で、ワーキンググループとしては一まとめにすることの理念について納得されたのかどうか。

3点目が、今、NPO関係者なりが今回の改革についていろいろ反対をしておりますが、仮にその非営利法人という一くくりの中からNPOが抜け落ちてしまった場合に、税制面の検討というのは前提がかなり変わってしまうことになるかと思うんですが、そういった場合の想定はどのようにお考えになっていらっしゃるのかをお願いいたします。

水野座長

第1番目の内部留保ですね、利益留保した場合の点については、数字は出しておりません。ちょっとまだデータとかありませんので、少なくともこの3月の大綱では出さないと思います。

それから、2番目の3つの法人ですね、これについては、正直なところ分かったような分からないようなところなんですけれども、中で、民法の先生の意見で、いわゆる生活的な,何というんでしょうかね、従来法人というのは専ら事業活動を行うためのものであったんだけれども、最近は生活のために使うような法人、そういうようなものが出ていると。そうしますと、多少共益的なものを排除しないで、生活法人というような形で考えられるかなと。何となくいまだにすっきりはしませんけれども、幾つか回答のようなものはいただいております。

それから、NPOが落ちるということは、NPOが参加するわけじゃありませんので、行政改革の事務局のほうで案をまとめると。その時のNPOというのは中心的存在でもありますので、これが外れるということはないですよね。

事務局

今日も行革事務局のほうからは、資料の非営利WG5-1ですけれども、NPOも含めて一元化するというふうな説明を受けております。

記者

重ねての質問なんですけれども、その4要件のところというのは、先生のイメージでは、内部留保だけじゃなくて、公益性・公共性とか、3番目とか4番目の部分について、これは何か定性的な基準なのか、それとも何か数値目標みたいな、客観基準みたいなものにするのか、その辺のイメージとしてはどういうお考えを持ってらっしゃいますか。

水野座長

今、定性的と言われたのは具体的にどういう?

記者

数字を設けないで、公共的とは何たら何たらのようなものですというふうに定めるのか、それとも、こういう活動において何%の事業があってとか、そういうイメージなのか。内部留保なんかは数値目標を設けやすいんでしょうけれども、1番目のところが、さっき先生もおっしゃっていましたがいま一つよく分からないところがあるので、どういう基準を設けられるイメージなんでしょうか。

水野座長

委員の中には、これを客観的にすることができると。というのは、外からの寄附金の割合と自分のNPOならNPOの収益の割合が7対3ぐらい、こういう状況だったら、これは公益的ではないかというようなことを言われた方がありますけれども、そういう数値的な形でできるかどうか、これはちょっとまだ議論の最中ですので、分からないですね。といって、先ほど言われたように定性的にと。これも難しい話でありまして、これは法律にした時に行政庁の裁量で決められるような規定というのは租税の場合は認められていませんので、何らかの客観的な基準を作らなきゃいけないんですね。具体的に申しますと、裁判所に行った時に、裁判官がきちんと答えを出せるようなものでないといけないということなんです。だから、ほかの行政と税金との違いは、行政庁に、それは手続的な面では裁量が出てくることはありますけれども、こういう中身の課税するかしないかということは、法律で全部決めなきゃいけないことになっていますので、そこが難しいところなんですが。恐らくこれに基づいて、この公益性・公共性、社会貢献性というものを示しているような更に詳細な基準を作って、できるだけ客観的に判断できるというところまで持っていかなきゃいけないなとは思っております。

記者

認定機関のほうは、行革事務局からはどういう説明があったんでしょうか。

水野座長

今日は公益法人、それからNPO、中間法人をなぜ一つにするかというような理念の話で、特に認証といいますか、登録といいますか、そういう機関の話はなかったですね。ただ、行革事務局のほうではそれなりの考えは持っているようですが。これも難しいところで、行政改革を進めるための事務局で、また別の行政機関を作ってしまったなんていうと非常に難しいことになりますので…。といって、たった20人しかいないようなところで3万ある法人に対応できるかというと、全くこれは意味がありませんので。ただ、今のところ、行革推進事務局のほうからもその話は伺っておりませんので、やはり課題として残されると思います。

記者

これから具体的な税制改正に入っていく段階では、それこそさっき先生がおっしゃったみたいに、詳しい裁判の基準になるような基準というか、必要になってくると思うんですけれども、具体的に何年度の税制改正でこれを考えていて、実際そういう詳細な部分をどういう場で…。基礎小なのか総会なのか、どういうような場で検討されていくことになるのかということが1つと、あと、基本的考え方に入っているその他の考え方というのが2つほどあるんですけれども、2の1、非営利法人に対する課税のあり方の(3)と、2の(2)の[1]のロなんですけれども、これいずれも堀田さんの少数意見を併記する格好で取り入れたという理解でよろしいわけなんでしょうか。

水野座長

はっきり言えば、そういうことです。それから、1番目のこれからの改正のプロセスですが、とにかく3月に公益法人の改正の大綱を出さなければいけないというところで、1つはそこまでの議論ですけれども、それから、記録では平成17年になっていますね。17年度中ということですので、できるかどうかはまた別の話ですけれども、平成17年度改正でこぎつけたいということですね。

事務局

昨年3月の閣議決定において、今年3月末までに大綱を策定するということと、17年度中を目途に必要な法整備を行うということが決定されております。ですから、今ワーキンググループで3月の大綱を目指して作業をしておりますが、その後の制度につきましては、まだその法人制度のほうもいろいろ検討すべきことが多々あるところでございますし、税制面もそういうことを見ながらやっていくことになりますので、現時点で具体的に何年度改正で行うというふうなことはまだ決まってはおりません。

記者

公益法人の場合、税の優遇のかさが金融収益にもかかっていたように思うんですが、それの取り扱いについては何かご検討なされたのかということと、あと、経過措置で、既存の法人については基本的に時間もないし、登録というんですか、そちらのほうに流し込むようになるのではないかという趣旨のご発言があったと思うんですが、そういうことでよろしいのでしょうか。それから最後に、課税される事業活動の範囲の規定で、50とか100とか33とか規定するのか、もしくは対価を受け取る事業は基本的に課税するという方針、どちらかの流れだというふうなことだったんですが、これはきちんと、特に対価を得るか得ないかについては流山のほうでも裁判になっていると思うんですが、そのどちらかはきちんと11日には出されるということなんでしょうか。

水野座長

これは、まだ議論の途中で、恐らくこの大綱の段階ではそこまで議論できないんじゃないかと思うんですね。もう少し抽象的な、いわゆる業種を増やすほうで決めると、さっきの質問につながりますけれども、業種を増やすという方向で検討するか、それとも収益事業から生じた所得には課税するという形で規定を置くようにするのかですね。対価を得て行う収益事業とか、そんな書き方がありますけれども、そのどちらかにするかはまだちょっと決まっておりません。そこまで詰めてしまうかどうかも、これは来週の議論の様子ですので、まだ分からないです。

それから、既存の法人は時間がないからそのまままとめるということではございませんで、既存の法人が、今まで仮に収益事業が当てはまらなかったので課税されてこなかったと、そういうような法人がかなりあると思いますけれども、その場合にどう対応するか、やはりここは全く経過措置ということで、議論をまだ詰めておりませんけれども、少なくともそのまま移行するということはないでしょうね。やはりそこでチェックをすると。特に、何年間か活動してきているわけですので、その資料に基づいて認定といいますか、登録を認めるかどうかということではないかと思いますけれども、ただ、これは先ほど事務局の説明があったように、どこが認定するかという登録機関がまだ決まっておりませんので、それによって多少のずれが出るかなとは思いますが、少なくともそのままOKということではないと思います。

(以上)

非営利法人課税ワーキンググループ