非営利法人課税WG(第4回)後の水野座長記者会見の模様

日時:平成15年2月21日(火)12:24~12:53

水野座長

それでは、税制調査会基礎問題小委員会、非営利法人課税ワーキンググループの第4回が、今日開かれましたので、お話をしたいと思います。

本日は、前回に引き続きまして、非営利法人に対する課税の基本的な考え方ですね、これについて議論いたしました。前回は、現行制度の説明といったような時間が多かったんですが、本日は、今後どうすべきであるかということについて、もっぱらお話をいたしました。会議の中で、堀田委員の方から、ご自身の考えている非営利法人課税というもののあり方についてご意見をお話になりたいということでしたので、最初に堀田委員の方から、その旨のお話をいただきました。

主な議論の様子をお話しいたしますと、1つには、法人制度ですね。この問題についてどう取り組むか。本日も内閣官房の行政改革推進事務局の方に来て、オブザーバーという形で参加していただいて、いろいろご説明なども伺ったんですが、あちらで出してあります、いわゆる公益法人、NPO法人、それから中間法人、この3つをですね、まとめて非営利法人という形でくくるという基本的な発想を持っておられるわけですけれども、それに対して、こちらの方でもう少し、なぜこの3つの形態、これを1つにするということに妥当性があるのか、合理性があるのかと。あるいは、3つの形態の違う法人、これを1つにまとめる趣旨は、理念は何であるか。そういうような形で、こちらから投げかけるようなことをいたしました。既にお持ちと思いますけれども、それにつきましては、資料の非営利WG4-4ですね、「非営利法人制度改革について(メモ)」、これがいわゆる非営利法人制度という1つの仕組みにつくりかえるということに対する、こちら側、ワーキンググループとしての意見ということで、お話を事務局の方からしていただきました。

それから、もう1つといいますか、今日の非営利法人課税の基本的な考え方を議論するに当たってですけれども、資料の非営利WG4-5を、1枚紙ですけれども、見ていただきたいと思いますが、基本的に、この非営利法人に対する考え方というのは、ほとんどの方そういう認識をお持ちだと思いますけれども、一方で、公益法人に典型的に見られますけれども、いろいろ弊害が出ているとか、ここには「現在の公益法人が抱えている問題点」とありますけれども、天下りであるとか、いわゆる本来監督しなければいけない官庁と癒着してしまっていると。特に、委員の方が指摘されたのは、内部留保が非常に蓄積していると。そういうようなことから、こちらの公益法人制度というものを改革していかなければいけないと。そういう立場からですと、課税問題についてもかなり厳密に、きつい課税になってくるということですが、他方でですね、これはいわゆるNPO、ボランティア活動を推進するというお考えの方も少なくないと思いますが、そちらを促進するという立場からですと、できるだけ自由に動きやすいようにと。特に、一般からの寄附金ですとか、場合によっては会費というのもありますけれども、そういったものの取り扱いについて、課税上便宜を図るべきではないかと。ということで、いわゆる非営利法人制度そのものに対してですね、両極端の認識があるということですね。片方は、社会的な弊害を除去する形で、その中で課税問題も考えるべきではないかと。これに対して、新しく出てきたボランティア活動としてのNPO、せっかく法律もできたわけですから、これを生かしつつ--生かすといっても、非営利法人に一本化されることは決まっている…、大体ほぼその方向ですけれども、課税についてできるだけ原則的には非課税といいますか、緩和の措置をとるべきではないかと。こういう両極端の立場がございますので、なかなか議論を収れんさせる1つの方向へ持っていくというところが非常に難しいわけですけれども、それなりに2時間近く時間をかけて議論いたしまして、前向きに進んでいると思っております。

ちょっと様々な意見につきメモをとったものですけれども、ご紹介させていただきますと、問題提起も入っておりますけれども、いわゆる今お話ししました公益法人、NPO法人、中間法人、そもそもこれは別の性格のもので、従来別の課税方式、それから法律の制度であったわけですけれども、その混在としたものをですね、どうやって取っ払って1つの制度としてきちんと持っていけるのであろうかと。これは問題認識の問題ですけれども。場合によっては、さまざまの法人が混在するというのであれば、これは委員のご意見ですけれども、法人を区分するような方向で取り扱うということもあり得るのではないかと。典型的に言ってしまいますと、良い法人と悪い法人とを分けるような取り扱いと、こういうことも考えられないであろうかということですね。

それから、これは大きい問題ですけれども、いわゆる従来公益法人は原則非課税であると、こういう言葉が使われてきたわけですけれども、その結果ですね、いわゆる財務諸表と計算書類が非常にずさんになっていたのではないかと。きちんと申しますと、いわゆる課税という側面がありますと、帳簿書類の備えつけ、それから年度末の決算書類、こういったものをきちんとやるわけですけれども、原則的には収益事業の33業種に当たらない限りは課税されないという前提がありますと、ややもするとその会計の記録等がいい加減になりがちであると。そうなりますと、課税所得といった計算もこれはできないことになってしまう。そういう背景があったのではないかというご指摘がございました。

それから、これは今後の方向に関するご意見ですけれども、従来公益法人、基本的には33業種の収益事業には課税するという形になっておりますけれども、ざっくばらんに言えば、非課税を原則にしていたということですけれども、今後非課税団体として認めるためには、積極的な公益性といったもの、これがやはり必要ではないかということですね。これはまだご意見として出た段階で、まとめ案としてどういう形で取り入れるか決まっておりませんけれども、現行制度においても公益性というものを根拠に非課税という形をとっておりますけれども、やはりこの公益性というのは重要ではないかというご指摘がありました。

大体、2時間近い、1時間半ほど自由討議という形で、配付いたしました資料をもとにしてご議論いただきましたんですけれども、もう一度繰り返しますと、基本的にやはりこの非営利法人の課税についてどういうふうに考えるかというのは、先ほどお示ししました資料の非営利WG4-5ですけれども、何分公益法人というのは民法ができて以来ですから100年の歴史を持っておりますが、非常に弊害も出ていると。他方で、NPOのように、特に阪神大震災ですね。あれでボランティア活動というものが非常に重視されたと。そちらの立場から、ぜひこういう民間の非営利活動というものは促進してほしいという、こういう立場がどうしても対立と申しますか、大きな基本的な意識として違いがありますので、なかなか課税問題を考えるに当たって、それをどういうふうにまとめていくかなということは非常に難しい問題でございますが、ただ、議論の中で大分相互に理解をいただけたのではないかと。原則非課税か原則課税かという議論だけでまいりますと、非常に抽象的な、単なる空中戦になってしまいますけれども、具体的に非課税にこだわるのはなぜかというと、例えば寄附金ですとか--寄附金ですね、多くの。ボランティア活動に対する寄附金に対して課税されるのは困るという、そういうようなご指摘がありますと、それは個別的な規定で対応することができますので、そういう形で問題を解決をできると。それから、他方で公益法人の、ついこの間も国土交通省関係の財団が課税漏れがあったということで新聞にも出ておりましたけれども、そういうものにつきましては、場合によっては事後的、いわゆる税務調査が徹底できるような形。そのためには、やはり帳簿を備えつけるとか、情報を開示すると。こういうような外からの監視という体制ですね。そういうものがあれば、改善させる余地があるのではないかと。そういうようなことが議論されました。

大体、ちょっと雰囲気をお伝えできたかどうかですが、大体こんなような状況でございます。ですから、今日は取りまとめという形にはなっておりませんけれども、なるべく1つのたたき台のようなものを出したいと思っております。

以上です。

記者

今後のまた議論の進め方、これは内閣の側との調整もあると思うんですけれども、どのように進めていかれる予定でしょうか。

水野座長

今ざっと申し上げましたが、次回、3月4日、火曜日ですね。このときにですね、たたき台のようなものを作ってお出ししたいと。ある程度具体的な基準といいますか、非課税となるためにはこういった要件が必要かなといったものを事務局と話し合いながら、作りたいと思っております。

それから、どうしても必然的に問題として出てきますのが、いわゆる(登録法人の)中でもやはり課税上優遇する必要があるような法人は何かといったような議論になりますと、どういった組織でそれを判定するかという問題が出てまいりますが、こういったことはまた内閣官房との間でキャッチボールになりますけれども、将来、近い将来、そういうことについて議論をいたしますと、すると考えられますということですね。今のところではまだ、こちらのワーキンググループでは議論しておりませんけれども、そういった問題も取り扱わなければいけないかなと考えております。

記者

2点お伺いしたいんですけれども、今日のワーキンググループとしてまとめられた非営利WG4-4のメモですね。ここに幾つか問題提起されていますが、これについて行革事務局側の方から何か具体的な説明が今日あったのかどうかということとですね、水野先生ご自身は、今そのNPOの方から、公益法人、中間法人、NPOをですね、1つの非営利法人にまとめるということについて、強い反対意見も出ていますけれども、水野先生ご自身はですね、その非営利法人に一本化するということについては、どのように考えていらっしゃるのか、お願いします。

水野座長

そうですね、この非営利法人制度改革について、これについて…、ちょっとお願いできますか。

事務局

小山室長の方からは、これは1つ1つお答えになるということではございませんで、3つのこの法人について、非営利という共通の切り口があるということをベースに、その法人格は容易に作ると。ただ、その中でも、これまでの公益法人やNPO法人のように、社会貢献活動と申しますか、公益活動と申しますか、そういうものをしているものについては、登録機関ということで、いわば2階建てみたいなものを設けるというような形で、法人格の取得とですね、それからさまざまな公益活動といった判断とを切り分けたいというようなお話がございました。ただ、1つ1つについてお答えになるというような時間もございませんでしたし、そういう形ではございませんでした。

水野座長

ありがとうございます。

それで、もう1つのご質問ですけれども、さて公益法人、NPO法人、中間法人、これをどうするかということなんですが、内閣官房の方の事務局のご説明では、いわゆる法人格の問題と課税その他の問題を分けるということですね。それで、法人格の取得自体は容易にするように、準則主義で認めるようにするというお話が前から出ております。多少疑問になりますのは、準則主義でそういう非営利法人というものの存在を認めることに何の意義があるのかと。それこそこちらのメモに関連してまいりますけれども、具体的にですね、課税の問題を除いた場合に法人制度というのは、一体残りは何があるのかと。簡単に申しますと、これはちょっと議論の中でお話ししたんですけれども、銀行の預金契約をするときに、人格のない社団ですと代表者の名前を書かなきゃいけないわけですが、法人になりますと、その名前をもって契約の当事者になることができるし、取り引きができると。確かに便利ではあるかと思いますけれども、それを超えたですね、何かそんなメリットというものがあるのかどうかですね。逆に、話が混乱するのは、法人格という、その取り引きの当事者になるという性格と、団体としてどんな団体であるかという、この2つの問題がかみ合わさっているわけなんですね。それをあっさりと法人格の取得は準則主義で認めますと。じゃあ、それでいっぱい法人ができて、何かいいことがあるんだろうかというような多少懸念はございますけれども、あくまでこれは個人的な感想ですけれども。

記者

そういう、非常にその根っこの部分ですが、なかなか議論がかみ合わないということでですね、哲学的に議論をしなければいけない中で、当然、水野先生おっしゃったように、さっき言ったように抽象的な議論になるというのは取りまとめる方向とは全く違うわけですけれども、それを4日までにきちんと整理できるのですか。

水野座長

あの、結局、議論がですね、原則課税と原則非課税かと。これは非常に議論しやすい形ではありますけれども、何か結論の出てこない議論になりますが、もともとこれは制度をつくるためのワーキンググループですので、論点を上げまして、この問題--具体的にはですね、寄附金の取り扱いはどうするんだとか、従来は収益事業33業種でしたけれども、これを50に増やせとか、100に増やせといった考え方がありますし、またそれを取っ払っても、法人である以上、収益は課税するべきであるという、法人税の原則に戻った考え方があります。そういった1つ1つの技術的な論点を上げてまいりますと、大体第一印象での意見の相違というものはですね、割と収束するというとおかしいんですけれども、割と調整がつくような形で話ができるように思っております。現実に、今日でも1つ、今日は収益事業の話でしたけれども、結局、一般的に、いわゆる民間非営利活動を重視するような立場の方でも、収益事業をやっているんだったら課税をするのは当然の話だというようなお話をされていましたので、ですから非課税を原則とすべきであるという、この旗を立てると非常に大きな話になりますが、具体的な制度の話になりますと、それほどの距離はないのではないかと思っております。ですから、何らかの形でまとめていくことは可能ではないかなと期待はしております。

いかがでしょうか。

事務局

ちょっと追加させていただきますと、簡単に原則課税とか非課税とかという言葉だけでなくて、原則課税という方にとっても、当然今までと同様、非課税にすべき法人、あるいは事業活動というのは当然出てくるわけでございますから、何か右と左にすごく散らばっているのではなくて、どういうものが課税対象になり、どういうものが結果的には非課税になるのかということでは、何も右と左がいつも、ずっと水と油のように交わらないものではないわけです。前回、水野座長の方から4つの要件があればというようなお話がございましたけれども、原則課税とかいっている部分もですね、結局は今のように、今の新しい制度のように、もうほとんど株式会社と同じような、営利法人と非営利法人の境目というのは、つまり株式会社と今度の非営利法人の境目というのは、利益配当をするかしないかの1点だけしかなくて、あと違いはないわけですね。今の公益法人の中にNPO法人をと思われると、何か公益活動をされている、良い活動をされいるというイメージがありますが、今度の制度はそういう良い、悪いを取っ払っちゃうという新しい制度ですので、何もその原則課税とかという言い方が、今のNPOの活動とか公益法人の活動を課税しようというつもりで原則課税という言葉が出てきているわけではないわけでございますから、右と左が交わらないような対立軸があるというわけではないと思っております。そういうことを水野座長も今おっしゃられたと思います。

記者

先ほどの寄附金の優遇の話なんですが、これも要するに寄附金としては個別に優遇税制をとればいいという、そういう方向ということですか。

水野座長

これはまだ全然といいますか、深くは議論しておりませんけれども、やはり寄附金というのはボランティア活動の中で重要な要素を占めますので、それこそ何らかの要件を作って、適格の寄附金のようなものを決める。この場合には、受け入れた側でも課税をしない会計処理をするとか、当然それから寄附をした側では、経費としての控除ができると。個人でしたら所得控除なり、そういうような形は考えられますですね。ただ、これ全部全く、全部をオールオーケーにしてしまいますと、これがいわゆるそれこそ濫用が起きてしまうということになります。例えば、先ほど課長がおっしゃっておられますように、営利社団法人である会社と非営利法人とどこが違うかというと、利益を分配するかしないかぐらいであるとなりますと、これ簡単に寄附金を使うとですね、自分のサラリーを自分のつくった非営利法人に寄附すると、じゃあ自分の税金は減るのかと。そういうようなことだって簡単に出てきますから、これは相当きちんと押さえないといけないとは思いますが、ただそれだからといって、寄附金の控除はだめですよということにはならないと思います。ちょっとこれは、何度も言っておりますが、3月にまとめる大綱にそこまで技術的な規定が盛り込まれるかどうか、ちょっとまだわかりませんですね。

記者

先ほどおっしゃっていた登録機関というか、登録に関するところで、それも今度議論になる、1回もまなきゃいけないというような感じでしたけれども、その認証機関については、先生はどうお考えになっているんですか。

水野座長

そうですね、そもそもこの認証機関というのが、恐らくこれは内閣官房の、あちらの行政改革推進事務局で決めることになりますので、大体それに対応した形で、そこの団体なり役所が認証するということになると思いますけれども、よく引き合いに出されるのが、イギリスのチャリティーコミッションなり、アメリカですとこれは内国歳入庁が独自に認定をしますけれども、ちょっと職員の数、その他を考えた場合に、これをはて--税務署というのは、経済活動を後から調査することはできますけれども、この団体が公益的な活動をちゃんとするだろうかという、予防的なチェックというのはこれは難しいし、そういう経験は積んでいないと思いますので、やはりそれなりの第三者機関がいいのかなとは思っておりますが、ただそれも、第三者機関というのもやはり同じように新しくできるわけですから、そう慣れているわけではありませんですね。ちょっとこれは難しいですけれども、そこはやはりかなり腰を据えたような組織にしてもらいたいと思っておりますが。

(以上)

非営利法人課税ワーキンググループ