総会(第6回)終了後の香西会長・神野会長代理・田近主査記者会見録

日時:平成19年11月20日(火) 15時37分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

それでは、ただいまから第6回総会終了後の記者会見を行います。

香西会長

本日は、午後2時から第6回の総会を開催しまして、答申を決定させていただきました。先ほど会合の場で申し上げましたけれども、私が会長に就任した1月から本日答申としてまとめるまでの間、年前半は調査・分析作業、秋以降は税目別を中心とした審議など、29回の会合を開き、60時間弱に及ぶ審議を重ねております。その間、マスコミ関係の方々にも原則公開ということで、会合を傍聴していただき、また、会合終了後は会見をさせていただきまして、様々なやりとりをさせていただきました。皆様には、この答申が非常に中身の濃い議論が集約された集大成であるということをご理解いただければ大変ありがたいと思っております。

皆様におかれましては、そうした経緯を経た答申であることをご理解いただき、文章の一部だけとらえるのではなくて、考え方などについて丁寧に国民に情報を発信していただければありがたいと、大変勝手でありますけれども考えております。

先ほど、会合を傍聴された方は聞こえたと思うのですけれども、最後に私余計なことを言いまして、会長代理や田近さんと意見が違っていたことがあるというようなことも申しましたけれども、これは3人の間でも、あるいはほかの主査の方を含めてもいろいろな議論を我々はしたということで、そのご努力に感謝するつもりでありましたのが、いささか冗談を言ったような形になりまして、お二人には大変ご迷惑をかけたと思っております。よろしくお願いします。

司会

ご紹介が遅れましたが、田近主査が本会見に同席されることになりましたので、よろしくお願いいたします。それでは、どうぞ。

質問

会長にまず全体的なことをお尋ねしますが、今回の答申は、表題にあるとおり、何年度税制改正答申というような従来この時期に出すような表現はない一方で、来年度に向けて取り組むべき事柄と、中期的な課題を混在したような形になっています。読むと年度答申と中期答申が一体になったようにも見えるのですけれども、なぜこのようなスタイルになったのか、それはもともと年初からこういうイメージを持ってこういう形にまとめたのか、その辺のご説明をお聞かせいただけますか。

香西会長

年初にこういう形でいくということはまだ全く考えていなかったと思います。結局、短期、中期、長期という分類が、通常の税調の答申の書き方としては、大体は予見できる、かなり予見できる、政府与党の動きとかそういうのはかなり予見もできるし、国会の動きについても、大体こういうスケジュールになるだろうということが、いわばルーティンみたいなものがある程度はっきりしていたと思うのです。しかし、今回はそういうスケジュールがそもそも立てにくい。したがって、短期だと思っていたものが意外と短期でなかったり、長期だと思ったら急にぱっと短期になったり、そういうことが確率としてはかなりあり得る形になっていると思います。したがって、そういうことが不確定でもあり、我々が予測しがたい状態であるけれども、それでも役に立つ、一応これまで1年近く審議してきましたので、それに対するまとまった考え方というのを一応発表したいと。

したがって、お前は大人になって就職したらこうなる、結婚したらこうなる、子どもが生まれたらこうなる、ということで、そういういつかは起こるだろうと思うことであるわけですけれども、その順序について、あまり正確というか、ほとんど今の状態では、まあ例外はもちろんあります。20年度に必ず問題になる問題はそれを先延ばししては困ると思いますから、そういうものは当然そういうふうになるわけですが、子どもも生まれるだろう、結婚もするだろう、だけどどっちが先に起こるかはわからないという状態で、しかし、それでも役に立つアドバイスを送るとしたらどういうものか、という形で自然にここへ押し込まれていったというふうに考えております。押し込まれたというのは、客観情勢によって押し込まれていったので、誰かからこうしろと言われたわけではありません。

質問

今の補足でお伺いしますと、客観情勢というのは、これは本来、政府与党は従来、秋以降から抜本的な税体系の改革を取り組むのだという姿勢でやってこられたわけですけれども、それは7月の参議院選がああいう結果になったことによって、実現の見通しがなかなかつかないという現実問題がある。そういう政治情勢を意識したものなのでしょうか。

香西会長

それはちょっとノーコメントですね。ご想像にお任せします。

質問

3点、香西会長にお願いします。

あちこちに出てくるのですけれども、22ページ、消費税に関してです。「社会保障財源」という言い方をこの答申の中でいろいろされるのですけれども、社会保障の財源化というのは、社会保障の目的税化というのを含んでいるのかどうか、その目的税化というのを視野に入れているかということを、会長の解釈をまずお聞かせください。これがまず1点です。

それから、先ほどの客観情勢というところに、今回、消費税の引上げについて、「選択肢の一つ」というふうに書かれているのですけれども、この税調の中で消費税を討議した時は、皆さん、ほとんどの方が必ず入れるべきだというお話をされていたと思うのです。相当強い意見があったと思うのですけれども、私からしますと、かなり弱い表現にとどまっているというふうに感じられるのですが、これが会長の言われる客観情勢というものに影響されたのかどうか、これが2点目です。

3点目が、税調の答申ですからあれですが、会長のこれまでの発言からいっても、歳出削減というのが非常に重要になってくると思うのですけれども、この点について改めてどのようにお考えか、この3点についてお願いいたします。

香西会長

消費税の社会保障財源化ということについて、明確な定義をここで下しているというわけではないと思います。ただ、言っていることは、私の理解では、消費税が社会保障の財源として適性があるので、その役割が増えるということ、そういう傾向のことを広くとっていると思います。したがって、この中に目的税というのも社会保障財源化の一つの形態としてはあると思います。しかし、それ以外の形もあるでしょうということ。また、社会保障財源化の程度をどこまで上げるかということについても、いろいろ議論があるわけですから、ここでは消費税というのは社会保障財源として適格であるという意見を出して、したがって、消費税を社会保障の財源として、なるべく緊密な関係を実際上実現しようと、そういう方向が一つの選択肢の一つであるというわけですから、選択の幅はまだたくさん残っているけれども、この方向でやりたいということだと思います。

二つ目は、弱いと言われたのですが、何に比べてですか。あの会議で目的税化が非常に有力だったと、こういうふうにお感じですか。

質問

申しわけありません。弱いということは、引上げの必要性について、弱いというふうに私が感じるということで申し上げました。目的税化が弱いということではなくて、引上げの必要性について、弱いのではないかということです。

香西会長

私にはそういう意識がなかったせいか、あまり強い印象には残っていませんので、どういうふうに答えていいかわかりませんが、例えば、消費税率を引き上げることによって賄うなんて言うと、何だかどんどん上げちゃえというような印象もないことはないわけですから、特に弱まったというふうには私は思っておりませんですね。

ただ、消費税率を引上げということに対して反対される意見も当然あったわけです。したがって、みんなが一色で引き上げろと言っていたわけではなくて、それとは違うご意見の方もけっこういらっしゃったと私は思っています。何対何だったかということはわかりませんけれども、引上げが最初から税調の既定方針だったということは全くないわけです。それは当然議論をしていった中で、いわばこの時点で一応まとめるとしたら、こういう意見で一応打って出るかというぐらいのことだと考えております。

その辺はもしかしたら印象が違うかもしれませんので、神野先生や田近先生からもコメントしてください。

それから、三つ目は、もう一度ちょっと。

質問

歳出削減です。

香西会長

それは私としては強く主張したいと思っておりますし、例えばここでもどこかに書いてあると思いますが、5ページでしたか。草案ができてページが時々入れかわってしまうものですから、なかなか何ページか頭に入りませんけれども、5ページの4番目、「もちろん」のところですね。「負担の増加をできる限り抑制するため、引き続き社会保障を含む歳出の合理化・効率化を徹底して進めることは不可欠であり、成長力を高める努力を」というふうに書いてありますのが私の強い希望であります。そこで書かれているということだと思っております。

これは私どもの受けました諮問、安倍内閣時代の諮問ですけれども、諮問には、「国民負担の最小化を目指す」とか何とか、そういう一句も入っている。それだけあってもなおかつ必要な安定財源を探せと、こういうのが諮問の趣旨だったわけですから、その時以来、やはり依然として歳出の合理化・効率化が必要だということになっておりますし、政府の財政制度等審議会には、私も特別委員なのですけれども、繰り返しそのことを要望して、歳出歳入一体改革なのですから、歳出だけ先に走らないでくださいということは繰り返し要望したつもりであります。

以上、私の印象はそういうことなのですが、いかがでしょうか。どうぞ。

神野会長代理

同じことになるかもしれません。ちょっと補足させていただくと、先ほどのご質問にも関連しますけれども、もともとこの答申は、昨年の11月の諮問に基づいて、中長期的な視点から答申を出さなければいけないわけです。この時点で年度改正と一緒に出すか、あるいは別々に出すかという議論はいたしましたけれども、ほぼまとめて出すというようなことを最初から想定しておりました。最初からというか、途中の、香西会長がおつきになってから方針として決めておりましたので、そう大きな差があって、異様な形態として今回出したわけではないということです。

そういう観点からいえば、先ほどのご質問でいっても、私の理解している限りでは、議論は基本方針として、私たちがどういう社会を作っていって、そのためにどういう税制が必要かということから、社会保障の財源の基盤を確保するために消費税の基盤をしっかり充てていくことが必要だという意見が大半を占めました。基本方針として、基本的な考え方として出すわけですから、いつの時点でどういう税率の引上げというようなことではなかったと思っています。

質問

答申の中で09年度の基礎年金の国庫負担の引上げの話もあるのですが、消費税率の引上げの時期は、これに合わせて09年度までに引き上げる必要があるとお考えになっているかどうか、これは香西会長に伺いたいのと、それから、法人税率の実効税率の引下げについてもいくつか言及があるのですが、これの時期のめどは、短期的なのか、中期的なのか、あるいは消費税の引上げとある程度リンクさせて一体的にやっていくべきなのか、この辺の見通し、考え方を教えていただきたいのですが。

香西会長

それは今、情勢が非常に流動的に動いておりますから、今すぐ答えるということはちょっと難しいと思います。難しいから中短期、長期の別なく、神野先生が言ってくださったように、日本社会のあり方としての税制という形で、中長期、短期も含めて全部一緒に書いているというのは、そういうタイミングというのは現在まだ非常に流動的なのではないかと。例えば、どれぐらい自然増収が続くのか、続かないのか、企業増益が続くのか、続かないのか、いろいろなことで変わってくる可能性があると思います。

「はじめに」というのが1ページ目についていますが、平成20年度以降、どのようなタイミングで実施に移していくかについては、今後、政府において適切に判断されることを期待する、というふうに言いましたのはそういうことであって、私どもとしては、主として中長期を中心にかくあるべきではないかということを申し上げて、それから、日限の決まっているものについては、ぜひやってほしいということを書きましたけれども、それは何でやるか、例えばプライマリーバランスとか、2分の1とか、そういうのをどういう手段で達成するかということについては、まだいろいろ議論もあるし、確定していない状態ですから、それは私どものほうからは、なるべく早く、理想というかゴールへ接近してほしいという気持ちはありますけれども、具体策としてそれをここでは議論してはおりません、ということだと思います。

質問

今回、3年ぶりに答申の中に「消費税」という文言が入ったかと思うのですけれども、なぜ消費税の引上げが必要だというふうに書かれたのでしょうか。大変シンプルな質問で申し訳ないのですけれども、改めてお聞きします。

香西会長

どこかのテレビでは、今晩、増税路線一本の何とかというのが放送されるという新聞記事らしいのですけれども、私どもは、別に増税路線を走っているつもりは全くありませんで、日本のこの今の社会保障制度、いろいろ問題はあるけれども、これを継続しないで、つまり持続させることが危うい情勢があり得る、十分そういう危険があるということを前提に、それをそのままにしておいていいのですか、というのが我々の一番大きな問題意識の一つなのです。したがって、増税路線どころか、むしろ社会保障継続路線。保障というのは継続しないと意味がないのですから、それを国民の皆さんに考えていただきたいという答申だと私は思っているのでありまして、そこをなぜ増税かと言われれば、繰り返しになりますけれども、いろいろ理由はあるといえばあるわけですけれども、なかんずくここで特に私どもが重要だと、国民生活の観点からいっても重要だと思いましたのは、社会保障というものを、それはいろいろ社会保障は改革しなければいけない点があると私も実は思っているのですけれども、しかしそうは思いながらも、これが断絶するという形はやはり避けるべきではないか。そのための方法として何があるかというふうに議論をしてきたということ、そういう考えで税として何をなすべきかということを議論したと、こういうことですので、単純にただ増税していくということではないということを、ぜひともご理解いただきたいと思っております。

質問

加えてお願いいたします。2点目についてですけれども、いわゆる所得課税のところについてお伺いします。ここにある配偶者控除や給与所得控除、それから退職所得控除、年金所得控除、それぞれ見直しが必要であるということで、3年前のいわゆるサラリーマン増税で大分政府税調は批判された向きもあるかと思いますが、この控除、サラリーマンを含め、あとはいわゆる高齢者にも見直しを迫るというところは、これは間違いなく増税ではないかと思うのですけれども、ここのところはどうしてなのでしょうか。

香西会長

そこのところは、確かに所得再分配機能をもう少し重視したいと思っております。そういうことは否定しません。しかし、むしろ具体的な対象としては、やはりアンバランスになっているもの、あるいは合理的でなくなったもの、そういったものをこの際見直せということであって、何が何でもサラリーマン増税をしよう、狙い打ちしようというつもりはないということを、まず言っておきたいと思います。

例えば、給与所得控除というのは、サラリーマン全員が関係のある税金でありますけれども、私どもが問題にしましたのは、青天井なんですね。例えば1億円の給与をもらう人の、上の方へいけば5%なんですけれども、それはどこまでいっても5%なんです。1億円の給与をもらっている人がいるかどうか知りませんけれども、そういうことはやはりちょっとどうかと。そういうのは少し手を加えてみてもいいのではないかという気持ちもあります。正直言いますと、そういう案を発表しておられる財界団体もあるぐらいなんですね。そういうものもまだ残っているわけなんですから、そういうところはちょっと考えてもらいたいなと思っています。

それから、年金についても、年金と給与と二つもらえるわけですが、二つに控除がありますから。そして年金所得者で相当高額な給与を貰っている人がいらっしゃるわけです。そういうことについても、ちょっと何とかしてもらえないかとか、そういったような、今の時代としておかしいんじゃないのというところを中心に考えている。そういうことをぜひご理解いただきたいと思います。

田近主査

では一言。

香西会長

ぜひ田近さんのほうから少し、一言ではなくて、もっと詳しく説明してください。

田近主査

所得税の見直しが増税ではないですかというご質問ですけど、今日は答申があるので、7ページを見ていただきたいのですけど、基本的にこの線に沿って考え方を説明したほうがいいと思うのです。またあとで読んでいただく時のために。7ページの「経済・社会・地域の活力を高める税制」のパラグラフの3番目で、「しかも、その税制改革では、働き方や家族のあり方を含め、個人のライフスタイルが多様化していることへの対応である」と。まさにそういうことで、これ、わかりやすく言えば、ここで写真を撮っているカメラマンは女性ですよね。男がカメラマンだという時代は、僕も今日意外だったんですけど、もう終わって、いろんな働き方がある。こういう時にいろんな働き方がある中で、今までの様々な所得税の控除のあり方でいいのかというのが、わかりやすくいえば今回我々が一生懸命やったことで、それが今度は、12ページにいきますけれども、配偶者控除の話はどうあるかということも踏まえて、扶養控除も、(2)の下、一番最後のパラグラフですけれども、扶養控除のあり方として、政策的に子どもを生み育てることを支援するとの見地からは、控除のあり方も考えようとか。だから、この答申がどう報道されるのか私わかりませんけれども、増税だと言われるのは、私は今回ずっとこの仕事を携わらせていただいて、それは少し、違うとは言いませんが、考え方をもう少し多様に見てもらいたいということで、やはりライフスタイルに合わせた形で所得税も組み替えていくべきだというのが、今回の答申の一つのメッセージだと思います。

質問

あと1点だけお願いします。会長にお伺いします。道路特定財源の扱いに関してですけれども、答申の中では暫定税率を維持したままということがありましたけれども、ここのお考え方を伺えますでしょうか。

香西会長

これは閣議決定が一応あるわけですね。24ページのところに書いてありますけれども、昨年末、12月8日の決定の方針で、とにかく頑張ってやってもらいたいということを主張しているものになっております。

この問題もいろいろご議論があるわけですけれども、私どもとしては、とりあえずといいますか、環境面で財政事情とかそういったことをいろいろ考えるけれども、基本的には目的税を外すということであろうと考えております。

質問

再び基本的なことですみません。消費税とかがマスコミ的には議論になりまして、要するに税金というのは上か下か、ステイか、三つぐらいしかないと思うのですけれども、その方向性について、例えば今回では、中核を担う税制であるとか、社会保障の財源として重要ですねという表現はあるのですけれども、例えば国民の人がこの答申を読んだ時に、果たしてどっちなんだ、上げるのか、上げないのか、というところがいまひとつ答申を読んでしっくり来ない部分がある。別に消費税だけには限らないのですけれども、各税目のベクトルというのがどっちに向いているのかというのが、いまひとつ明確に打ち出されていないところが、この辺の議論の限界というか、答申の限界なのでしょうか、という質問をぶつけさせてください。

香西会長

消費税については、先ほど議論になった22ページあたりを見ていただくと、消費税率を引き上げていくことによって賄うことも選択肢だと書いてあるぐらいですし、引上げという言葉が出てきて、はっきり書いている答申というのはあまりないというふうに私は思います。少なくともその可能性を示しているわけですね。

それから、もう少し一般的な議論としては、消費税の役割が非常に重くなる、高まるという言い方は確かしていたと思います。そして、要するに社会保障の財源というのは、消費税のほかに、これは4ページの注1に、今現在、社会保障給付費は93.6兆円だけれども、そのうち社会保険料は55兆円、公費負担は約30兆円と書いてありますが、これが必要だと。その上の文章では、「社会保険料のほか、税を原資とする公費によっても……その額は大きく、予算に占める比重も高いうえに、今後も大幅に増加することが見込まれる」と書いてあるわけですから、そしてしかも、そのところに新しい税とか、そういうものとして、つまり税に対する社会保障の需要というのは増えるのだと。

それじゃあ、その税の中ではどういう税がいいかというと、やはり消費税がいいのではないかというのがこの答申ですから、合計すると、よほど歳出削減が厳しく行われない限りは、消費税が増えてくるという形になるということですね。

保険料を上げるということももちろん一つの手なんですね。しかし、大体世界的に見て、社会保険料のピークは、スウェーデンでも年金のピークは18.5、日本でも厚生年金のピークは18.8ですから、そういうふうに社会保険料というものに依存することにはやはり限界があるということになってきていて、海外でも社会保険料よりは税に依存したいというのが、フランスとか、ドイツでもこの間3%付加価値税を上げましたけれども、うち2%は財政再建ということで財政を安定させる。あと1%は失業保険料を軽減する。こういうことでやっているわけですから、そうなると、ここでも少なくとも消費税に対する需要は、社会保障の財源として位置付けるとすれば、それに対する、簡単にいえば厚生労働省からの注文はどんどん増えていく傾向にある。

しかし、それについて、書いてありますように、歳出をうんと合理化して締めるのだけれども、社会保障制度そのものをつぶすことは避けたいということですから、それだけ重なれば、方向は今のままだと、あるいは、もちろん我々は社会保障の財源がこれだけ必要だということについての厚生労働省の推計、これは18年5月の数字をまだ皆さん使っていると思うのですけれども、それについて細かく審議してはいませんから、実際に実現する時には、そういったことを振り返って全部チェックし直した上でやはり最後の決断はおろしてもらいたいと思っていますけれども、しかし、そこに大きな誤りがない、将来見通しに誤りがないとなってきた時にどうするか、ほかに何も手がなかったらどうするかということについては、かなりはっきりした方向性が示されていると私は思っております。

質問

何点か伺いたいのですけれども、先ほどの質問とも絡みますけれども、所得税のところで、給与所得控除であるとか配偶者控除とか扶養控除のくだりがあります。これは先ほどもありましたけど、給与所得控除のところは、基本的に「勤務の実態をより正しく反映する仕組みが望まれる」というくだりがあって、これは2年前の所得課税の論点整理の時にも同じような指摘があるのですけれども、基本的には、給与所得控除はやはり実態に合わなくて課題であるから、縮小の方向だと読み取ればいいのでしょうか。

香西会長

縮小というか、そこまではっきりしているわけではないのですが、まず第一に、実態に合っているかどうかということについての議論をちゃんとしていくということが必要だと思います。

質問

その実態に合っていないというのは、ずっと前から議論があって、給与所得控除の見直しというのは、所得税のタックスベースの拡大で一番大きい論点なわけですけれども、ここに書いてあることは、2年前の論点整理にあったその方向をそのまま伸ばして考えていると思えばいいのでしょうか。

香西会長

2年前のサラリーマン増税論というのは、大変な誤解だと私は思っております。それは当然調べなければいけないと思います、実態と合っているかどうかということを。それは当然なことであって、それがサラリーマン増税論と同じかどうかというのは、ちょっと次元が違う話ではないでしょうか。

質問

いや、サラリーマン増税云々の話をしているわけではなくて、所得税の財源調達機能を強化する上では、おそらくここに入らざるを得ないのでしょうから、単にサラリーマン増税云々ではなくて、そういうことを意図しているのではないのでしょうか。

香西会長

実態よりもっと低いものであれば、当然のこととしてそうなります。実態が今の構造でも賄えないというか、もっとたくさんの費用がかかっているということであれば、そういうことにはなりません。ただそれだけのことだと思います。

質問

ただ、実態として特定支出控除はほとんど利用されていなくて、実際に使っている額は少ないという資料はずっとこの間政府税調で出ていて、それに対する反論もなくて、それでこういう話であれば、別に批判を恐れる云々ではなくて、そこは当然これまでの議論を踏まえた上でこれを書かれているということではないのでしょうか。

香西会長

13ページの第3パラグラフですね。「その際、給与所得控除の勤務費用の概算控除の部分については、給与所得者の勤務の実態をより正しく反映する仕組みが望まれる」と書いてあります。「具体的には、実額に基づく控除の拡充を図る見地から特定支出控除の対象範囲等を検討する」。つまり、実際これだけかかりましたという届があれば控除するという、そういう申し出ですね。自発的。本来は申告制度を徹底すれば、これは非常に望ましいやり方です。非常に徴税事務費はかかりますけれども。これは非常に重要だけれども、それでも対象範囲は拡大してもいいというふうに書いてあるということは、それはそのとおりです。

したがって、本当に証明が付くものであれば、それについては、控除で増税するというようなつもりはありませんから、その点は誤解のないように。ただ、それはやはり事実に照らし合わせた対応をするということだけであると思います。

質問

お聞きしたのは、ここで言っているのは、単に、具体的には対象範囲の検討と、控除額の上限が設けられていない仕組みを見直すことだけを言っているのでしょうか。給与所得控除全体の話をしているのではないのでしょうか。

香西会長

具体的には、ここでそれを最も注視しと言っております。それはほかのものが問題があるのなら、当然ほかの、例えばこれを受け取った政府なりのところでそれをつけ加えられることは、ご自由というか、結構なことだと思いますけれども、私どもとして問題があるかなと思っているのは、今の2点だということは、今の文章でおわかりだと思います。

質問

もう1点、所得税の最高税率のところの見直しに答申で触れるのは初めてなのではないかと思いますけれども、今回の答申を見ると、格差問題への対応というところも入っていて、バランスに対する配慮もあるのかなと思うのですが、最高税率について触れているのは、消費税の話なんかが出てくる中で、公平性の問題とか、そういうのが大事になってくるからという観点が背景なのでしょうか。

香西会長

これは議論があるといいますか、委員の中から最高税率については考え直したらどうかというご議論があったことは事実です。したがって、それは当然取り上げました。それはその人々の関心を聞いて、そういう関心でこういうことを主張したいと、つまり最高税率をちゃんと上げたほうがいいのではないかというご議論がありました。しかし、それに対する反論もまたあったわけです。つまり、資本主義というか、市場経済というか、そういうところで例えば事業をして、高い所得を得る、つまりお金持ちになるということは、それは一つの仕組みになっているわけですね。それをあんまり抑えていいのかということもあるし、早い話が、松坂が何億円取ったからけしからんというような話でもないわけです。それから、税率にしても、やはり市民の自由というのはあるわけで、そのプライベートなといいますか、自分たちでやりたいことができなくなってしまうような高い税率、例えば戦時中の88%、これは軍国政府だからやったことなんですね。だから、税率についても、これはそこで言われたわけでもないけれども、5割がいいのかとか、そういうことについても、5割というは五公五民ですから、徳川幕府と同じなんですけれども、それがいいのかどうかというようなことも、それは議論になってくるわけです。したがって、ここはまだまだもう少し議論をしないと結論は得られなかった。ただし、そういったことについても、いろいろ検討していくべきではないかと、こういう形の提案になっております。

質問

最後に1点、寄附金税制ですけれども、住民税のところで寄附金税制のことを触れていて、税額控除も検討すべきだと。これも初めてなのではないかと思いますけれども、これはなぜ住民税だけこういう言及があって、所得税の寄附金税制のところには言及がないのでしょうか。

香西会長

ふるさと納税について、寄附については税額控除にしたいというのは、一応、ふるさと納税研究会の報告書が出ております。したがって、それに関連する事項として書いてあるということだと理解しております。

質問

増税一色ではないというお話がありましたけれども、給付つき税額控除が項目を割いて盛り込まれていて、これは会議の中では、どちらかというと、税の専門家の中から、あまり賛成できないという意見のほうが割と多かったように思うのですが、これを盛り込んだというのは、香西会長の税を格差是正として使いたいという強い思いとか、そういうあらわれということで理解してよろしいのでしょうか。

香西会長

私がその点に非常に興味を持っていることは事実ですけど、私はそんなに権力者ではなくて、民主的チェアマン、モデレーターだったつもりですから、私が無理やり押し込んだということでは決してありません、と言いたいと思います。これは確かにアメリカの経験などでもそうですけれども、アメリカというのはすごい国で、今や例のアーンド・インカム・タックス・クレジットと言われるもので、働かせて、そして賃金がある程度になるまではそこまでの賃金をくれる。だからもっと働けばもっと賃金がある。こういう仕組みにしているわけです。2,000万人以上でしたか、2,000万戸ですかね、おそらくアメリカとしては最大の福祉プログラムですね。いろいろな文献があって褒めていて、従来のポバティライン、つまり貧乏人として定義されていたのが、1年か何かで500万人が上へ上がってしまったと随分褒めているのですが、しかしその一方で、不正というか、正確でない申告があるわけです。月給なんかは毎月必ず来るようなものだからいいですけど、子どもがいつ生まれたとか、家族構成が変わると給付が違ってくるのです。そうすると、その時にちゃんと申告しなかったとか、そういうので誤りに近いものもあるのだそうですけれども、88年の調べでは、なんと3分の1だというデータがあります。その後、それはもっと下がって、正しくない申告があるのは個人所得税と変わらないのではないかという論文も出たのですけれども、2002年か何かのアメリカ歳入庁のデータで調べると、今でもやはり3割だと言われています。金額がいくらかというのはちょっとわかりませんけれども、まあ、かなりそれは難しい点があるということはある。しかし、ブレアとか、あるいはクリントン、これはニクソンが始めたのですけれども、そういう人たちはそれを非常に高く評価して、政策の中心に置いて、アメリカでは最大のウェルフェア・プログラムになっている。そこまでいっているという事実があるわけです。私は、一つは社会保障と税とを一体化にするというところに興味がありますし、つまり、先ほども言いましたように、社会保障も保険料で喜んで国民が払う時期から、だんだんそれが重荷になっていく。どこの国でも高齢化は進んでいるわけですね。そういう中では保険料システムをどこまで作れるかというようなことは、いろいろ問題になってきていることは事実なのですが、それを社会保障も一体化することによって、つまり福祉であると同時に勤労を引き出していく、非常にいい制度だという議論もありますので、私はそこは大いに検討して、韓国も実施しますから、それもどんなふうになるか見て、大いに議論したらいいのではないかということですが、それに対してご反対の方も必ずある、当然出てくるわけですね。それは私もよくわかっておりますから、そこはちゃんと考慮してもらいたい。こういうつもりで載せていただいたつもりですが、もし神野さんや田近さんからご意見があれば、ぜひ教えてください。間違ったことを言っているかもしれませんので、どうぞ。

神野会長代理

まず、今回の答申は、安心と活力と公正、こういうふうに3本柱になっているわけです。安心のほうは二つ柱があって、一つは増大していく国民の生活を支える社会保障の財源をどうやって支えるかということです。これについては、消費税で支える。つまりお互いに負担し合って支えるということだろうとここでは書いているわけです。

もう一つは、一方で安心を支えるために税の所得再分配機能を強化しましょうと。この所得再分配を強化するという観点から、当然、所得税の税率や控除が見直されますので、最高税率などの議論も当然俎上に上げなければならないのですが、実質的な累進性を考えれば、形式的に累進税率を引き上げるということが再分配機能を強めるかどうかという議論がありますので、ここはそういう書き方になっている。控除のほうもそういう観点から議論すれば、当然、所得控除が税額控除、それから、もう一つ、税額控除にしろ給付つきの税額控除をつけるか、あるいは給与所得についても、前まで設定したシーリングといいますか、アッパーを外しているわけですけれども、それは本当にいいのかどうかということが、当然答申の中に書き込まれていますので、それが一つの柱になるわけです。ただ、控除その他については、もう一つ活力という点からも見直していて、これは中立性にかかわることになるわけで、ライフスタイルその他を選択をゆがめるということがないような形で見直しましょうと。だから、所得税の控除については、再分配と中立性と二つの観点から見直されているということ。もちろん、「簡素」とか「公正」とかという概念も今回の目玉ですから、その観点でも見直しているというふうに整理をしていただければ、おわかりいただけるのではないかと思います。

質問

もう一つすみません。今後の政府税調の活動について、これをもって総理の去年の諮問に答えたとすると、今後の活動は、会長ご自身の現時点の考えで結構ですが、どういうふうにお考えになっているか。

もう一つ、その今後の活動の中に、国民との直接の対話集会とか、そういう形で現時点での考え方をわかりやすく伝えていくとか、そういうことをお考えになっているかどうか、教えてください。

香西会長

私は今日やっと税調の意見をとりまとめて、一応、今言うべきと思うことは、すべて答申に盛り込んだつもりでおります。それぞれ反対意見もありましたけれども、それについても、入れられなかったその他の主な意見というのをまとめて同時に公表したいと思って、準備を進めているところです。今後のことは、まだ自分としても、しばらく休ませてもらいたいなと思っておりますし、政府や政治の場での議論の状況も、これからだんだん深刻というか、現実的というか、もう予算の編成もそろそろ始まるでしょうし、党税調の議論も始まるでしょうしということで、その中でまたいろいろな動きが出てくるだろう、国会の動きもいろいろあるだろうと、こういうふうに考えております。そういう場合も踏まえて、税調として必要があれば、今日の会議でも最後に申しましたけれども、必要に応じて会合を招集したいと。政府税調は諮問に対して答えることを大きな任務としてやってきているわけですけれども、組織としては、必要に応じて意見を述べるということも任務にされておりますので、まさに必要があれば、調査会を招集し、審議を行っていくつもりであります。

それ以上の具体的な見通しは、もうちょっと時間がたったところで、まだ現時点では見通しがはっきりしておりませんので、そういった状況変化を見ながら、必要があれば審議を行っていくことになるだろうと思っております。

また、私どもの言ったことについて、いろいろな議論が起こってくるということも期待しておりまして、それも見定めて今後のことを考えていきたいということであります。

質問

「はじめに」の一番最後に、時間がなくて改革が遅れるほど、解決困難な課題が膨れ上がってしまうということで、抜本的な改革を急げということを書いていらっしゃるわけですけれども、今回の答申そのものが抜本的な改革というのに資するような内容になっているのかどうかというところが、先ほど中身がやや曖昧な部分もあるのではないかという質問がありましたけれども、その点、会長は今回の答申が抜本的な改革を示したものだというふうにお考えなのでしょうか。

香西会長

今、考えられるところでは、そういうつもりでやりました。こういうことであります。

質問

何度もすみません。2点お伺いします。全体的な話ですけれども、今回の答申というのは、先ほど、増税路線ではなくて、社会保障の継続なのだというようなことを強調されていましたけれども、個別に税目を見ていくと、その対価としての給付の部分はあるというのはもちろんわかりますけれども、消費税が上がるとか、あるいは所得税の各種控除を見直すとかあって、個々人それぞれいろいろなところに影響の仕方はありますけれども、やはり負担増のメニューが多く並んでいるというのは、これは客観的には言えるのかなと思います。それで、そういうこともあったのかなと思うのですけれども、これまでの会合のあとの記者会見で、会長が何度かおっしゃって印象に残っているのは、「これまでの税調や主税局の仕事というのは減税でよかったのだけれども、これからは負担増の話をお願いしなければいけないので、気が重いな」みたいなことをおっしゃっていたかと思うのです。その気持ちを、改めてどんな思いでおっしゃったのかお伺いしたいのと、そういうお気持ちを踏まえて、今回の答申を書くに当たって、どういうところに意を用いたのか、あるいは、これから国民に対して、これを読む方に対して、どういうふうに読んでほしいというメッセージを投げかけたいのか、その辺についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

香西会長

私としましては、おっしゃるように、そもそも主税局というところは、私は一度も勤めたことはありませんけれども、例えばドッジラインの最中でも減税論を主張して譲らなかったという伝統があるわけでして、国民負担が増えることを防ぐということ、それから、これは中山先生か誰かの時、税は国民所得の20%を超えないようにしようという答申も出しておられるわけですから、本当ならそういうことをやりたかったといえばやりたかったと思う。

ただ、それにもかかわらず、やはりここまで財政事情が逼迫して悪化した中で、これは悪化させたのは誰だという議論ももちろんありますけれども、しかし、結果的に今になってこれだけ悪化した中で、社会保障のあり方自体についても、もちろん私はいろいろ改善してもらいたいと思っていますけれども、しかし、基本的な部分といいますか、社会保障というものはやはり続いていく、だから信頼があって社会保障の意味がある。保障というのは、さっきも言いましたけれども、継続がなければ意味がないということになりますので、それはやはり簡単に金がないよと言ってばかりはいられないという情勢に今なってしまった。しかも、お金をいただいたから、それじゃあ非常にいいことができるか、プラスができるかというと、少子高齢化でお金が要るという時には、レベルは上がらないんですよね。つまり、働く人が少なくなって、もらう人が多くなったのですから、1人当たりもらう金額がどんどん増えるから、皆さんも成長してお金ができたでしょうから上げてくださいというような情勢ではなくて、とにかく、今のレベルで、さらにいえば合理的なレベルまで落ちても仕方がないのかもしれませんが、それをやっても、なおかつ社会保障の体をなさないというようなことだってあり得るということが一つの問題でして、それは従来とは非常に違った局面だなと。元会長の石さんにも、「君、えらい時になったね」といって同情されたのですけれども、それは確かに厳しい事態であるということは考えております。その点では、仕方がないといいますか、これは耐えなければならないことであろうと思います。しかし、それと同時に、過去に作った制度で、その時は非常によかった制度でも、かなり時間がたって、今の時代にそぐわないものとか、ほかの制度とバランスがとれていないものとか、そういったものについては、この機会にそれだけ厳しい中でやるわけですから、ご協力もいただくわけですから、公平とか公正という観点から制度を改革する。それは当然、社会的な門戸をむしろ緩和するといいますか、公平にするという意味でやるわけで、しかも例外的に今問題が特に強いところについて、是正をお願いする。こういうことでやっていくしかないのではないかと思います。

それから、従来ずっとやってきたけれども、例えばさっきお話があった所得控除なのか、税額控除なのかという問題がありますけれども、簡単に言えば、今までは所得控除でずっとやってきたのですけれども、所得控除のほうがある意味で所得の高い人には有利になっているということは事実なわけですから、それに比べれば税額控除というのもあるのではないかというようなところもある。それから、あまりスペースを割けられなかった点ではありますけれども、やはり成長していくということも必要なことであって、そういう希望も忘れてはいない。そういうことがどうしても必要だと思いますね。

私、あっち見たりこっち見たりしすぎるといって、みんなに笑われているのですけれども、モデレーターを11ヵ月やって、やはりいろいろな人の意見があって、その中で一つのバランスを求めていくというのが今では必要なのではないかと。議論してみると、それぞれ立派な議論であるというような意見にたくさん出会いましたので、ややあれこれ、課題が三つあって、その中を超えてまだもっとあるというようなことで、非常にぼけているという批判が出てくるということは、薄々とは感じていました。それもやや弁解的になると思いますけれども、やはり今の日本の状況では、そういう形で厳しい状況を乗り越えていくということしかない。天才的発想がなければそこへ落ち着く。それは平凡かもしれないけれども、それを着実にやっていくということで、とりあえず私としてはそういう覚悟でこの答申をまとめさせていただいたということだと思っております。新しいことも多少は入れていただいたと思いますし、それから、特に皆さんからは非常にたくさんの意見をいただいて、そういう点では、すらすらというわけではなかっただけに、私には勉強させていただいたと考えています。

質問

もう1点です。9月からの論議を聞いていますと、2ヵ月余りの短い間にかなり多数の会合を続けて、一応、主要税目については全部議論はしたわけですけれども、全体として受ける印象としては、消費税の議論は非常に時間もあったし、意見がかなり多く出たと思うのですけれども、個人所得課税の控除の部分は、このペーパーにはいろいろなことが割と具体的に書かれていて、一つ一つがけっこう重い話なのですけれども、受けている印象としては、こういう意見はもちろんありましたけれども、それについて、いいとか悪いとかという議論があまりないまま、そういう意見があったことがそのままここに書かれているという印象が私にはあるのですけれども、それは私のうがった見方なのかどうか、どのようにお考えでしょうか。

香西会長

オープンにしたのは企画会合という、総会と同じメンバーが出て議論するものでありましたけれども、これを文章にする段階に入りますと、主査を中心として、それから事務局にも入ってもらって、文章を書くわけですから、そこでもう一度議論になるわけですね。例えば何とか委員がこう言った、これを書こうという意見があれば、それはどうかと。じゃあ、あの時彼は反対したけど、ちょっと聞いてみようかとか、そういうコミュニケーションは、これは公開はできませんでしたけれども、それは当然あったと思うのです。そういうことで、文章を書く過程で、あそこの討議以外にもいろいろな議論がそこの議論を補足するような形で、あそこでの議論に対しては自分はこう思うというようなことを言ってくる方もたくさんいらっしゃったわけで、そういう意味では、あそこだけの議論で全部がまとまったわけではなくて、事務局で整理した議事の内容を踏まえながら、それはそうではなくてこういう解釈をすべきだとか、いや、そうじゃなくてこれはこういう反対論があるはずだとか、そういうことも主査や委員の中からも申し入れといいますか、自分の意見をメモその他で持ってこられた方もいらっしゃいますが、そういったことはありました。時間的制約はありましたけれども、できる限りのコミュニケーションは審議会としてとってきたつもりです。所得税については、いろいろ書いてあって、それが全部増税へと向かっているというふうに言われるのですけれども、これはそう簡単には言えないというか、そうではないのではないかと。一つは税制の細かい設計によるところがあるのです。例えば、所得控除を税額控除に変える時に、どういう変え方をするか。同じ金額をそのまま所得控除したらものすごく税収が減ってしまいますから、それはできないわけですね。ですから、そこのところの計算もやらなければいけないとか、いろいろなことがありますので、はっきり言って、あれを全部増税路線だと言われるのも、非常に私としては不本意な感じを持っているということです。私からはとりあえずそういうことで、あとまた田近さん、何かありませんか。特に所得課税について。

田近主査

今、そちらのご質問は、所得税のところは、税調の会議でそんなに議論しなかったのに、何でこんなにいっぱいあるのだと、わかりやすくいえばそういう質問ですよね。ただ、これは水野先生が主査でやられてご報告されて、そのあと企画会合でもこれが何回か出てきて議論をしたという意味で、議論は二、三回通っているわけです。ただ、私が申し上げたいのは、議論は出ましたけど、ここであまり割れたということはなかったような気がするのです。配偶者控除について、若干昔の美風を尊ぶ人もいましたけれども、大体はワークライフバランスとか、ライフタイムの中立性だったし、あと給与所得の控除のところも、ここでサラリーマンからがっぽり取れなんていう人もいたわけじゃなくて、全体とのバランスであると。ということで、会長のほうから所得控除と税額控除について触れましたけど、税調の審議としては、やはり所得税の税収の力を増やすこと、それから、ライフスタイルに対する中立性を明確にして、その意味でみんなに自由に働いてもらいたいというところで、だからここでそれ自身が結果として多少増税になるにしても、増税をしたいからというだけの意図ではなくて、やはり積極的に今回ライフスタイルについて出してきたというのは、私も税調をずっと見ていますけれども、特色の一つだと思います。

質問

今回の2ヵ月余りの議論を振り返って、抜本的な改革というのを今回うたっているわけですけれども、その議論は十分尽くされたのかどうか、もう少し時間が欲しかったなという思いはあるのかないのか、会長にちょっとご感想で結構ですので、お考えをお聞かせ願えないでしょうか。

香西会長

私、へとへとになるぐらい議論を行ったものですから、一旦は休みたいというのが本音であります。

質問

すみません、休みたいというのは、おっしゃっている意味がよくわからないのですけれども、私の質問に答える元気がないという意味なんでしょうか。

香西会長

いやいや、そうではありませんで、やはりほかのいろいろな審議会と比べても、これくらいいろいろな議論がされるというのは、今までいくつか別の審議会をやってきましたけれども、私は珍しいと思っています。それを皆さんのご協力でとにかく今日まで来たというので、ほっとしているところですね。時間があればいいというのは当然のことで、だから検討すべきであるというのが大分残っているわけですけれども、しかし、率直に言って、私どもの調査会がある程度実務的なところへも届くためには、今日ぐらいにまとめないと困るというのが私の判断でした。もうそろそろ党税調もご活動になりますし、与党税調も公明党を含めても議論があるでしょうし、民主党のほうも何か考えておられることになるでしょう。一方、政府の中ではそろそろ予算編成も始まるでしょう。私のような人間が会長をやって、あちこち呼ばれて、税調はどうですかと言われると、私はいつも「いや、まだ審議しています。皆さんまだ議論しています。」ということしか言えなかったわけです。それで終わっちゃったら、むしろ政府税調としての役割を果たしたことにならないと思いましたので、とにかくこの時点でまとめて、あとはそれに対するいろいろなご議論を聞いて、また対応していくという形のほうがいいのではないかと。時間いっぱい使って、全部決まってからのそのそ行ってもしようがないと、そういう感じでおります。

質問

香西会長にお聞きしたいと思います。最初のほうで、消費税について税率の引上げの時期や税率幅について明記されなかった背景として、情勢が流動的に動いているというご説明があったのですが、これは首相ないしは政府・与党の関係者から、消費税率の引上げについては先送り論が強まっているような政治情勢が含まれているのでしょうか。また、そういった情勢の中で、あえて首相の諮問機関として、消費税率の引上げをこういった形で明記されたことについての意義をお聞かせください。

香西会長

私どもはこの答申の内容について、どこからも、特にこういうふうに書けとは言われておりませんし、情勢がよくわからないということはありましたけれども、そういう意味で、いろいろな将来の不確実性がたくさんあるなということで、不確実性でいろいろな状態が起こっても生き残れるような答申にしたいと、これは一生懸命考えたのですけれども、それ以外に特にあまり顧慮して考えたわけではない。いろいろな情勢があり得る中で、私たちとしてはこう考えるのが一番応用がきくだろうと、全く役に立たないわけでなくて、そうしておけば、不確実な世の中でも役に立つ答申になるのではないか、ということを念頭に考えて書いたということ以外にはないと思っております。

質問

法人2税の改革による地域間格差是正ですけれども、これが8ページにあると思うのですが、具体的な方策というのはほとんど示されていないのですけれども、これは政府内で意見の違いですとか、委員の方の立場の違いなんかで意見がまとまらなかったという解釈でよろしいのでしょうか。

香西会長

率直にいえば、議論をしてもなかなかまとまらない問題だったということは確かにあります。委員の中でもいろいろ論文なども発表されて、私も拝見しましたけれども、簡単に一つになるようなことではない対立がありました。

それから、税というのは国民と政府の関係というふうになるわけですけれども、これは政府と政府の中の話なので、非常に入り組んでいるという印象も持ちました。したがって、今回については、こういう形であまり具体的なところまでは踏み込めなかったというのはご指摘のとおりだと思いますが、それでも一応私どもとしては、地方自治といいますか、分権というか、そういうことが基本の課題であって、地方分権改革に資するというか、それに一番整合的なやり方は何だろうかということを私としては模索してほしいと、こういう気持ちでおりますけれども、具体的にはそこに書いてあるとおりのことで一応意見をとりまとめさせていただいたということであります。

司会

よろしいですか。それでは、これで記者会見を終了させていただきます。

香西会長

どうも11ヵ月お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。私の答弁はあまりおもしろくなくて、あまり答えなくて申しわけなかったと思っておりますが、ひとつお許しください。(了)