総会(第5回)終了後の香西会長記者会見録

日時:平成19年11月 5日(月) 16時30分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

それでは、第5回総会後の記者会見を始めさせていただきます。

質問

今日の議論を振り返って、総論の話で、言葉の使い方は多少差はありましたけれども、委員の中から幾つか目立ったなというふうに思いながら聞いていたのは、社会保障あるいは所得格差の問題への対応、そのための税制のあり方を考えるべきだということを、総論の中に基本的な考え方として置くべきだというご意見が強かったように思います。これは、こういう方向で答申の中にそこを柱にしていくのか、どのようにお考えでしょうか。

香西会長

今日指摘されたことについては、十分配慮していかなければいけないと思っていますが、具体的にどういう柱を何本立てるかというようなことは、まだこれから考えるところだと思っております。今のところ、これに決めたというものはありません。総理からは、「成長して、そしてやさしい」、その2つを言われたことも非常に私の頭には残っております。

質問

会長ご自身は、今、税制が期待されている、果たさなくてはいけない役割として、社会保障の支え合いの部分や所得格差への対応ということについて、重要であるという認識なのか、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

香西会長

これは、どういうふうに言えばいいかわかりませんが、税調として格差問題を取り上げなければならないということは、私が会長になって最初に考えたときには既にそういうことを私も申し上げて、委員からも支持された。当時の諮問には格差という言葉は出ていなかったわけですけれども、吉川先生も最初からそれをご主張されていましたから、私はそれはぜひやらなければいけないと思ってやってまいりましたので、自分はそれを重視している人間だ、こう考えております。

社会保障についても非常に大事だと。大事だからこそ危機的なことを、さっきはちょっと言い過ぎたかもしれませんが、例えば役人を信用していないという実態がまずあるわけですね。そういう中で持続性を確保するのは一層困難であるという、かなり厳しい課題だということです。社会保障が必要でないというのはとんでもない話で、社会保障を持続的に経営していくためには、やはり相当いろいろ考えなければいけないのではないか。私はそのほうの専門家ではないですけれども、大事だからこそ逆に危機感を持っていると理解していただきたいと思います。

質問

2つほどありまして、1つは、増税が必要ではないかという意見がある一方で、社会保障とか少子化とは別の柱で、法人税については、グローバル化ということを考えると軽減していったほうがいいのではないかと。増税が必要だというメッセージと、減税が一部では必要だというメッセージというのを、今後、どういう形で収れんさせていくのかというのが1点ですが、まず一つずつ伺います。以上の点をお願いします。

香西会長

社会保障というのが非常に大事で、歳出削減等できるだけの努力をした上で、社会保障や少子化に伴うやむを得ない支出が必要になった場合には安定的な財源を考えてくれというのは、去年の秋にあった諮問において既にそういう方針になっていたわけです。だから、そういう条件が必要になった場合には安定財源を何とか確保する方法を考えなければいけない、これは一方の柱だと思います。

法人税というのはその中の1つの税目であって、これについて言えば、国際化、グローバル化していく中では、多くの国がそれを下げているわけです。日本も世界並みというところをねらっていったほうがいいという感じは前々からあったわけで、日本における法人税のGDPに占める比率というのは割りに高い方向にあったわけです。そして、これは別の言い方をすれば、将来金の卵を産むものであって、そういう形で経済が活性化するならば、それは増税を少しでも少なくする方向に働くことですから――全体的な増税をですね、そういう意味で両立することが可能かどうかということがあったわけです。政府税調は、現在でもまだその点について議論が内部的には続いていることはお察しのとおりだと思います。

質問

もう1点は、政治がかなり局面が変わっていて、その中で政府税調というのはどういう役割を演じるのか。特に小沢代表が辞めるというふうな意向を示されて、民主党がどうなるかわからないですけれども、その中で今後の政府税調の議論というのが何らかの影響を受けるとお考えでしょうか。

香西会長

政界のことは本当に一寸先は闇で、とても見当がつかない。これはどなたかがおっしゃっていましたが、シミュレーションしたらあまりたくさんあるから、やらないほうがいいぐらいなものだと。そういうことで、何があったどうしようということを考える余裕もなければ能力もないわけですから、私どもとしては、「Business as usual」といいますか、与えられた使命を着実にやってみる。その結果がどうなるかは一寸先のことはわからない。税というのは、何回も申しておりますように、基本的には政治の問題、つまり国会の決定によるところですから、それによって影響を受けることは明らかですけれども、私どもとしては、政界について何かコントロールする力などは全く持っていないものですから、自分たちの知見の許す限りで考え方を議論していくということでいいのではないか。

それ以外できもしないし、そうすれば、これは後にならなければわかりませんけれども、それなりにいい成果が出る可能性もある。つまり、今日の総理の言葉で言えば、国民の目線に合うような答申でその理由が書いてあればそれなりの効果を発揮することがあるかもしれない。その程度のことで、しかし、それは仕事なのですから、必ず成功すると決まらなくてもやらなければいけないという感じでいるわけです。どうも勤労哲学の話になってすみませんが。

質問

ちょっと確認というか、総論のところで、会議の中で神野さんのまとめ方というか、最後のところを聞いたときに、とりあえずいろいろ議論は出たけれども、この論点整理(メモ)、大体この線で行けるのではないかというようなお話があったと思います。例えば「国民の安心」とか「経済社会の活力・発展」とか4つ項目が挙げていて、私などはこの線に沿って答申を書いていくのかと思ったのですけれども、そういう理解でよろしいのか、それともそうではないのか。

香西会長

これは、まだこれから書くわけでしょうし、それにさらに議論がいろいろ付け加わるわけですから、今、それについてお話しする段階ではないと思います。しかし、神野さんとしては、一応そういうことでスタートしてもいいのではないかと。とりあえずこれを素材として書くなら書いて、それをさらに叩くという段階が当然あるわけです。そういう第一歩の着手としてはこれの材料を使います、という話だったというのが私の理解です。

質問

たびたびすみません。総論のことで補足でお尋ねします。一部、経済界出身の委員の方から、やはり経済成長というのが大事である、経済成長を促進するための税制も総論の中でうたうべきではないか、という意見が何人かからあったと思いますけれども、これもやはり総論の中では必要な要素というふうに会長はお考えですか。

香西会長

私個人は、これは法人税を上げるとか下げるということは別として、やはり成長を促進していく必要はあると思います。これは税だけの問題ではなくて、いろいろなことを考えても。それは簡単にできるものではないだろうと思いますから、成長するから大丈夫だという意味でそういうことを言っているのではなくて、日本経済としては成長を少しでも上げていく努力をすること、日本経済を活性化していくことは、それがうまくいけば安心にもつながるというのはたしかに一つの論理だと思っています。それが確実に行われるとか、そういうことではないですね。チャレンジという言葉がありましたけれども、チャレンジすべき一つの課題であるということです。

米百俵、その米を使って教育することで人的資本を蓄えたことが、明治時代にはよかったということもあるわけですから、そういうチャレンジができるような、しかも、それで活性化できるような目途があるのであれば、政策として考えていくのは当然のことだと思います。全体の財政規模が縮小していくときに何ができるかというのは、また問題がありますけれども、そういうチャレンジのルート、こうやっていきたいというのを探していくことは必要なことであるというふうに思っております。

質問

そのあとに所得課税、法人課税の話もしまして、時間がやや限られたこともあって、意見がいろいろなところでいろいろなものが出てはいたのですが、全体としてどういう方向に行ったのかがよく見えなかったなという印象を私は受けました。これはまた改めて議論するのか、それとも今ある材料の中で書き方を考えていくのか、これはどのようなイメージでしょうか。

香西会長

今日もいろいろな材料がつけ加えられたわけですから、それをどうこなすかというのはこれからの問題だということです。時間的な制約というか、いつまでももたもたしていたくはないのですけれども、今すぐ形が整っているわけでないことは当然で、こういう文章というのはぎりぎり最後までというか、時間のある限りは議論を尽くすということが必要で、それを何とかまとめていくのが仕事だろうと。そういうふうに達観しているつもりですけれども。

質問

今後の進め方ですけれども、次回、今日と同じような感じで全体的な話の後半の部分をやると。それで終わったあとの話ですけれども、今度はどのように何を議論していくのか、どういうスケジュール観なのか、どんなイメージをお持ちでしょうか。

香西会長

それについては次回の調査会でも、どういうふうにそれを組み立てるかということを委員の皆さんにお話ししなければならないと思っております。ただ、次回に間に合うかどうかわかりません。幾つかのやり方の中から選択して、こういう形でやりたい、ご協力をお願いするというのは、できれば次回の調査会でご相談してみたいと思っておりますが、まだ成案があるわけではありません。

質問

ちょっと大きなところというか、今日お話が出たところで、抜本改革の輪郭を示すべきではないか云々というやり取りがございました。今回、抜本改革を検討するというお話でスタートしているところだと思いますけれども、会長は、どういうものが抜本改革だというふうに位置づけてこれまでずっと議論してこられていらっしゃるのでしょうか。

香西会長

それは、非常に難しいといえば難しい問題であります。一つの考え方は、租税体系をどれくらい動かすかということ。それから、租税負担をどうするか。例えば国民負担率とか、租税負担率というものをどういうふうに上げていくかということも大きな問題であります。

たしか昭和30年くらいの高度成長の初期に、税制調査会は国民所得の20%が税の上限であるべきであるという提言を出して、これはほとんど守られたわけです。だから絶えず、天井に近づけば減税するというのが税調の仕事だったわけです。それから、前に抜本的な改革として言われたのは消費税であったわけで、この場合は恐らく、将来的には消費税の財源が大事だということだったのでしょうけれども、当時は所得税をむしろ最初に減税しておいて後に消費税ですから、いわば直間比率の改定ということで、税の体系が変わったという点で、あれも抜本的改革というふうに言われたと思います。

これは定義の問題ですから、何億円動いたからというふうに考えることもできるかもしれませんし、ほかにもっと抽象的な形で、租税の基本理念が変わったという場合もあったかもしれません。例えばシャウプ勧告のときは、それこそ今いろいろ議論になっていますけれども、個人所得税というものが中心である。そのために総合課税をちゃんとやるということが、イデオロギー的ですけれども、中心の命題だったと思います。これは20世紀の所得税の包括所得税というのを理想とした、そういう理念の問題もあっただろうと思います。

アメリカではファンダメンタル・タックス・リフォームというのが言われております。これは学者によっていろいろ違いますけれども、ある人は、所得課税から消費課税へ移っているとか、そういうことをファンダメンタル・タックス・リフォームというときの条件にしています。学者によって定義が非常に違っています。グーグルなどを引いてみるといっぱいそういう文献が出ておりますが、税体系の変化が一つの問題であることは共通しているという印象を私は持っております。

質問

何度もすみません。ちょっと話題は変わりますけれども、近日中に経済財政諮問会議と、あと、私の記憶違いだったらごめんなさい、自民党の財政改革研究会と、両方とも出席されるご予定だと思います。それぞれ、どういうことをお話しされるために呼ばれて、どういうことをやろうと思っていらっしゃるのか。

香西会長

諮問会議のことは大田大臣が記者会見で、呼んで話を聞くと言われたそうですが、具体的な注文というのは今のところまだ来ていません。もう時間はないのですけれども、はっきりしたものを受け取っているわけではありません。最低限できることは、これまでの審議の結果をご報告する。どういう問題が残っていて、それをどういうふうに議論しているかをご紹介する。ご質問があれば、いろいろ答えなければならないだろうというふうに考えているという程度です。まだ準備しているわけではありませんで、今のところはその日暮らしですから、お呼び出しの前日くらいまでには何かもう少し考えておくかもしれませんが、こちらの考え方をお話しするということだと思います。こちらからの希望もお話しさせてもらいたいと思っております。

質問

先ほど、今後の詰め方、まだ成案を得ていないということでしたけれども、どんな選択肢があるのでしょうか。会長はどのように進めたいと。日程もしくは何日頃に答申を出したいのかということを伺いたいと思います。

香西会長

できれば早いほうが気が楽です、だいぶくたびれてきていますから。私、体力がないので、できれば月内、もっと早ければ半ばであればさらにいいと思っていますけれども、これはでき上がらないとちょっとわかりませんですね、申し訳ありませんが。だけど、とにかくもうあまり時間がないつもりで仕事をしております。

やり方ですけれども、委員の皆さんの意見も聞いてどういう形にするかということを決めないといけないと思いますので、次回ぐらいには一応の案を考えて――まだ十分考えていませんが、やはり委員のご意見も聞いて、こういう体制をつくるとしたらこういう体制でやりたいと言って、それには各委員からどういうふうに意見を吸い上げるか、こういうふうにしたいというようなことをご説明した上でスタートするということですので、金曜日の議論も踏まえた上でヨーイドンという形にしたいと思っております。

質問

1点だけ確認です。手続き論として、最後に総理に手交されるご予定ですか。答申をお渡しするというのはやられるご予定ですか。

香西会長

従来の慣例によればやっているわけですね。総会を開いて、そこでこれが答申ということをやったこともありますし、総会ではなくて代表が総理官邸に行ってお渡ししたという例もあります。セレモニーのやり方は私は前例をよく知りませんけれども、諮問が出て答申が出ないというのではやはり責任問題になるでしょうから、答申という形をとるつもりで仕事をしております。

質問

ふるさと納税の取扱いです。これは研究会の報告書というのがあると思いますが、これまで出された意見とか今日の意見などは、ちょっと批判的なものもあるかと思います。報告書の修正を求めるような意見が答申に盛り込まれる可能性というのもあるのでしょうか。

香西会長

今日いろいろ議論があって、そこは総務省の担当部局の方も聞いておられたわけですね。私からはそれに対して、いろいろあったけれども、それはどういうふうになるのかということを聞きましたら、今のは報告書がある。だけど、例えば立法するということになれば、また改めて法制局も含めてということになるかもしれません。よくわかりませんけれども、そういう法制局的な面も踏まえていろいろな議論が起こるだろうと思います。私のほうは、次にまた具体化するために必要な検討の過程において、今出た意見はぜひ参考にして考えてほしい、それについて何か動きがあったら教えてほしいということをお願いしておりますので、そういう形で考えていただけるものというふうに期待しております。

質問

答申ではあまり関係ないということですか。

香西会長

いえ、決裂したらやはり意見は言わなければならないという場合もあるでしょうし、その辺は、私たちの答申が出るまでにどの程度話が整理されているかということにかかっていると思います。

司会

ほかにございますか。よろしいですか。

それでは、これで記者会見を終了させていただきます。

香西会長

どうもありがとうございました。(了)