総会(第5回)議事録
日時:平成19年11月5日(月)13時00分~
場所:総理大臣官邸大ホール
〇香西会長
ただいまから「税制調査会第5回総会」を開催いたします。皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただき、誠にありがとうございます。
本日は、福田総理を始めとして関係閣僚の皆様にも御出席をいただいております。
私ども税制調査会では、9月以降、各税目の審議を行いまして、先週までで一応、一巡したというところでございまして、今週からは更に議論を深め、答申とりまとめに向けた審議をしていきたいと考えております。こうしたタイミングで、税制調査会に福田総理を始めとする関係閣僚の皆様に御出席いただいたことは非常にありがたいことだと考えております。
それでは、早速でございますけれども、福田総理からご挨拶をお願いしたいと存じます。
〇福田内閣総理大臣
福田でございます。どうも今日は御苦労様でございます。一言、ご挨拶をさせていただきます。
税制調査会の委員の皆様におかれましては、非常に厳しい御日程の中、精力的な御審議を賜っていただいておるということをお聞きいたしております。心から御礼を申し上げます。
これからの人口減少や内外の環境変化を考えますと、安定した成長と財政再建の両方を進めていく必要がございます。経済成長戦略を着実に推進するとともに、温もりのある政策も考えていくことが重要でございます。併せて、例えば随意契約の見直しや入札制度の改善、会計検査院の検査報告の反映というような、予算の無駄を徹底して排除していくということも必要がございます。
このように歳出改革を断固として進めてまいりますけれども、必要な歳出までが削られて国民生活に影響が生ずるという事態は避けなければいけないと思っております。特に高齢化が進行する我が国は、国民生活に密接に関わる年金制度をはじめとする社会保障制度については、長期的な視野に立って、将来にわたって国民の信頼を得られるものとすることが不可欠でございます。まずは、社会保障や少子化などについて将来のあるべき姿を描いた上で、それに必要な安定財源を確保し、将来全体への負担の先送りを行わないようにすることは政治全体の責任であります。
税制調査会におかれましては、本年9月以降、21世紀においてあるべき税制についての本格的な御議論をいただいておりまして、本日以降、答申に向けて御意見を集約していかれるというように伺っております。今後とも、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる社会をめざし、ただいま申し上げましたように、我が国が直面するさまざまな課題を踏まえた検討をお願いしたいと思っております。
同時に、国民の皆様の信頼なくしては、どのような政策も必要な改革も実現することは不可能であります。国民のひとりひとりに改革を行うことの必要性を理解していただけるように、国民の目線に立った御審議を賜りますよう、お願いを申し上げる次第でございます。
最後に、委員の皆様の御尽力に改めて厚く御礼を申し上げて、簡単でございますが、ご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
日程の御都合もございますので、福田総理はここで御退席になります。どうも、本当にありがとうございます。
(福田内閣総理大臣退席)
〇香西会長
それでは、額賀大臣からご挨拶をお願いしたいと存じます。御意見・御注文もよろしくお願いします。
〇額賀財務大臣
今、御紹介いただきました、財務大臣を拝命しております額賀福志郎であります。今日は税制調査会の総会にあたりまして、一言、ご挨拶を申し上げさせていただきたいと思います。
税制調査会の委員の皆様方には、将来のあるべき税制改革の姿を目指して御議論をいただいておりまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。
御承知のとおり、我が国経済は、今、構造改革の取組みによりまして、長い不況のトンネルを抜け出しまして、力強いというか、底がたい景気回復の軌道を歩んでおります。しかしながら、アメリカ経済とか、原油価格の高騰とか、そういう内外の状況を見極めつつも、しっかりと我々は景気回復を持続的に展開していかなければならない。そういうふうに思っております。
御承知のとおり、今の我が国の財政事情というものは、国と地方合わせて、長期債務残高が773兆円、対GDP比で1.43倍の極めて厳しい環境でありまして、先進国の中では最悪の水準になっているわけであります。このため、我々は2011年度までに基礎的財政収支を着実に黒字化するための目標を掲げて、今、歳出歳入改革の一体化を進めているところでございます。その上で、2010年代半ばには債務残高対GDP比の安定的な削減を図ってまいりたいと思っております。
また、同時に、我々は2009年度までにに社会保障の基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1にしなければならないということが法律で決められているわけでございます。社会保障費というのは現在90兆円でありますが、恐らく2025年には141兆円になるというのが厚労省の試算に出ております。そういう中で、国家財政再建を着実に進めていかなければならないわけでございます。このために、我々も消費税を含む税体系の抜本的な改革をしていかなければならない。そして、安定した財源を確保していかなければならない。そういうふうに思っているところでございます。
もとより、社会保障や税制は国民生活に密接に関わるものでございます。今般の税制改革においても、わかりやすく、なおかつ、国民の皆さん方に理解していただくように、国民的な合意を形成するために、税制調査会においてもいろいろと問題提起をしていただき、あるいはわかりやすく説明ができるようにお願いできれば幸いであると思っております。
各委員の先生方の熱心な御討議と、立派な答申をいただくように心からお願いして、ご挨拶に代えます。ありがとうございました。
〇香西会長
どうもありがとうございました。 増田総務大臣は本日御欠席でございますが、谷口総務副大臣が御臨席でありますので、ご挨拶をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
〇谷口総務副大臣
本日、増田総務大臣が国会用務のため出席ができませんので、代わって税制調査会第5回総会の開催に当たり一言ご挨拶を申し上げます。
香西会長を始め、委員の皆様方には、税制改革に向けて精力的に御議論を賜り、心から御礼を申し上げる次第であります。
急速な少子高齢化の進展を始め、我が国を取り巻く構造変化が進む中で、経済社会の基盤である税制においても、さまざまな政策課題に対応できるよう、抜本的な改革が求められておるところでございます。その中でも、地方の自由度を拡大し、責任を持って行政を実施できる、地方が主役の国づくりを目指して、地方分権改革を力強く推進していく必要がございます。特に地方の自立と責任を確立するために、地方の自主財源でございます地方税の充実と併せ、税収の偏在度が少ない地方税体系を構築することが喫緊の課題であると考えておるわけでございます。
税制調査会におかれましては、地方分権の推進や、これを支える地方税の重要性に深い御理解を賜り、あるべき地方税制に関して引き続きよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
最後に、香西会長を始め、委員の皆様方の多大な御尽力に重ねて御礼を申し上げまして、簡単でございますけれども、私からのあいさつとさせていただきます。以上です。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
日程の御都合もありまして、官房長官と財務大臣はここで御退席になります。どうもありがとうございました。
〇町村官房長官
よろしくどうぞお願いします。
(町村内閣官房長官、額賀財務大臣退席)
〇香西会長
それでは、本日の審議に入りたいと思いますが、その前に委員の交替がございましたので、御報告いたします。
本日付をもちまして、松田英三委員が退任されました。代わりまして、杉山美邦様が委員に任命されておりまして、新しく御参加いただいております。
杉山様はどこにお座りでしたか。
一言どうぞ。
〇杉山委員
読売新聞の杉山です。よろしくお願いします。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
それでは、本日の審議でございますけれども、先週お話ししましたように、前回で税目別を中心とした審議が、一応、一巡したということでございまして、本日と次回の会合では、これまでの議論を整理したものを基礎にして更に議論を深め、答申のとりまとめに向けた審議をしていきたい。こういうふうに考えております。
ただ、その前に、これまでの審議の宿題が幾つかございますので、本日はまず、この宿題返しといいますか、問題になってそのままになっているような点について、最初に事務局から説明をお願いしたいと思います。
それでは、財務省からお願いしたいと思います。
〇星野税制第一課長
税制第一課長でございます。
お手元に「総5-1」という「補足説明資料」がございます。これに基づきまして、まず私の方から各国の課税最低限の関係について簡単に御説明させていただきたいと思います。
10月26日に個人所得課税の御議論をいただいたときに、中里委員から給付付きの税額控除の関係で、実質的に給付措置ということであると、課税最低限の計算上、考え方としてどういった整理になるのかというような御質問をいただきまして、その関係につきまして整理をさせていただいたものでございます。
1ページで、課税最低限は、ここまでは税負担が生じないという、例えば給与収入ですと、給与収入の水準がここから税負担を生じませんということを示す指標でございますけれども、さまざまな控除のうちで一般的に適用される控除、具体的には給与所得控除、それから、基礎的な人的控除として、基礎控除、配偶者控除、扶養控除といったもの。あと、社会保険料控除。これらの額を合計したものとして計算しているわけでございますけれども、こういった控除の中には、主要諸外国における児童を対象とした税額控除といった、議論になりました、給付付きの税額控除がございます。
一般的に適用される措置であれば、社会保障給付の性格を有する税制上の措置についても、税法上規定されているということを基準として、これまで計算上、この課税最低限の計算の対象としてきたところでございます。その結果、幾らになるかということを、この1枚目に書いているわけでございます。
この基準に基づいた国際比較では、ご覧のとおり、近年、諸外国において税額控除等が拡充されてきた結果、我が国の水準が他の主要国に比べて低い水準にあるということがおわかりいただけようかと思います。
しかしながら、実際に納税者がどこから納付を行うのかという、納付の開始点という意味で考えますと、例えばイギリス、ドイツでは、これらの制度は納付税額と関係なく給付を行っているということでございます。
2ページで、今、申しました税負担を表すものさしとして納付税額に着目するということであれば、例えばイギリスの就労税額控除、あと、児童税額控除ですとか、ドイツの児童手当のように、執行上、算出税額から控除されることなく、別途、税務当局より全額が給付されるといった制度については、その影響を除いて、給付税額が生じる給与収入の水準がどこからかを比較するというのも一つの考え方であろうかと思います。 欄外の注2に書いてあるんですけれども、フランスでは、所得税に加えて国税ベースで、個人所得課税として一般社会税、いわゆるCSGと呼ばれている税があるわけでございますけれども、それ自体は所得にかかる比例税ということなので、所得がゼロのところから実際に課税が始まるといったようなこともございます。
一応、ここではイギリス、ドイツの控除について、納付税額が始まる点はどこかということで整理をいたしますと、この2ページに書かれておりますとおり、イギリス、ドイツについては実際の納税が始まる点がぐっと下がるわけでございまして、こういった比較で見てみると、我が国の課税最低限というのは他の主要国と比べておおむね中間ぐらいにあるのかなということが言えようかと思います。
それでは、実質的に給付措置まで含めて比較した場合、どうなるかということで参考までにつくったものが3ページ目でございます。
子どもに係る給付措置を考慮いたしますと、例えば日本においては児童手当相当額について実際にどれだけ税を軽減して、どこからが実質的な税の負担になるかという点を求めることができるわけでございます。
イギリスにつきましては、児童税額控除とは別個の制度として児童手当が若干出ておりまして、そういった制度ですとか、あと、フランスにおきましても児童手当相当額を加えるというようなことをいたしますと、この3ページ目にあるようなことが実質的な課税最低限というか、実質的な負担の始まる点になろうかと思います。
これも、フランスの一般社会税について調整を行いますと、507万円ぐらいから実質的な負担が始まるというようなことでございまして、そういったことを総合的に考えると、我が国の負担というのは、大体、この中間水準にあるのかなといったようなことが言えようかと思います。
以上をまとめますと、今、申し上げた課税最低限の議論に当たっては、単にこれまでの方法だけではなくて、納付税額が生ずる給与収入に着目した課税最低限とか、実際の給付措置を加味したラインはどこかといったようなことも含めて、今後、検討を進めていく必要があると思いますし、更に実際の所得税の負担の国際比較を行うに当たりましては、これまでも申し上げているとおり、租税負担率とか、税率、ブラケット、あと、所得分布の状況といったようなさまざまな要素も含めて総合的な検討を行っていく必要があろうかと考えているところでございます。
まず、私からの説明は以上でございます。
〇川上調査課長
調査課長でございます。続きまして、財務省の資料の4ページ以下、今まで各回の御審議の中で御要請のありました資料を簡単に御紹介申し上げたいと思います。
4ページ目でございますが、法人税の議論のときに、たしか吉川委員から配付の御提案をいただいたかと思いますけれども「研究開発促進税制の効果について」という経済産業省作成の資料でございます。これは御参考でございます。
5ページ目以下でございますけれども、先日10月30日の経済・財政総論の御審議の際に、現在の歳出の状況を「骨太の方針2006」に沿った歳出削減がきちんと足下でもなされているかという御質問を何人かの委員の方々からいただいておりますので、その関係の資料を幾つか御紹介申し上げております。
5ページ目は、昨年7月の「骨太の方針2006」の「歳出改革の具体的内容」で、それぞれ2006年からの自然体の増に対しまして、それぞれの項目ごとに削減額が定められているということで、例えば社会保障でございますと、右から2つ目の段で、削減額が▲1.6兆円程度となってございます。このうち、この資料にはございませんけれども、国分が▲1.1兆円ということも、同じく「骨太の方針」の中で決められているところでございます。
あとは、ざっとご覧いただいたとおりでございまして、例えば公共事業関係につきましては▲3%~▲1%と付いてございまして、合計といたしまして▲14.3兆円~▲11.4兆円程度の削減というところで、これは国、地方合計のベースでございますけれども「骨太の方針2006」で定められているというのが5ページの資料でございます。
6ページ目は、本年8月10日のシーリングの閣議了解分でございますけれども、2~4行目にかけてでございますが、平成20年度予算の編成に当たりまして、引き続き、基本方針2006にのっとった最大限の削減を行うということが閣議了解されているところでございます。
7ページ目が、言わばシーリングのポンチ絵でございます。各省からの要望につきましては少し膨らみができるようになってございますけれども、査定額の上限が黒抜きの範囲でございます。例えば一番左をご覧いただきますと、制度改革等による削減・合理化ということで▲2,200億円と定められておりまして、これは先ほど「骨太の方針」で社会保障を5年間、国分が▲1.1兆円の削減の計画ということを申し上げました。その1年分ということがここでうたわれているわけでございます。
それから、真ん中の辺りでございますと、公共事業関係費等々で▲3%ということで、先ほどの範囲の中では一番厳しい枠となっております。
そういうようなことでございまして、全体として「骨太の方針2006」と整合的なシーリングの姿になっているというところが見て取っていただけるかと存じます。
8ページで、足下の税収の関係の資料をお付けしてございます。ご覧いただきますと、御案内のように、ここのところ、景気回復の過程で、当初予算から補正予算、更に決算へと、上方修正の流れができておりましたけれども、今回、若干、様子を異にしているということでございまして、18年度当初、18年度補正、18年度決算という右下のところをご覧いただきますと、足下の18年度決算におきましては、18年度補正に対しまして、所得税で約0.5兆円、法人税で約0.9兆円の減でございます。
19年度予算は、18年度補正を土台にして見積りをつくってございますので、引き続き、足下は景気回復をしてございますので、現在、9月末の段階の税収は足下でもまだ26%程度の進捗ということで、なかなか具体的な見込みを申し上げる段階にはございませんけれども、従来、この2年間、3年間にわたりました税収の流れからは、若干、様相が違ってきているというところがご覧いただけるかと思います。
私の方からは以上でございます。
〇香西会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明について御意見・御質問等がございましたら、お手をお挙げくださるよう、お願いします。どなたからでも結構だと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
それでは、また御疑問が再度あるかもしれませんけれども、本日、かなり長い時間の会議になる予定になっておりますので、多少、ショートカットしていただくということで、とりあえず、この点を終わりまして、続いて同じ宿題返しでございますけれども、総務省から御説明をお願いしたいと存じます。
〇原田市町村税課長
市町村税課長でございます。それでは「補足説明資料(地方税関係)」ということで「総5-2」と「ふるさと納税研究会」の報告書の本体を「総5-3」という形で付けさせていただいております。前回、ポイントで御説明させていただきましたけれども、今回は本体を参考に置かせていただいておるところでございます。
「総5-2」の1ページをご覧いただきたいと思います。前回、10月26日の企画会合で御説明させていただいたところでございますが、全体のイメージであったり、国税との関わりであったり、また、いろんなケースの実例みたいなものを教えてほしい、示してほしいというような宿題がございました。今回「ふるさと納税研究会」の報告書では、最終的に現行の地方公共団体に対する寄附金税制を活用することによりまして「ふるさと納税」というものが提案された趣旨、また、ふるさとを大切にするという気持ちを、この税制の中で具体化していく。こういうことを提言されているところでございます。
1ページには、地方公共団体に対する寄附金税制の現行ということで、現行におきましても、地方公共団体に対する寄附金につきましては、住民税、国税である所得税、双方でそれぞれ所得控除が行われているところでございます。若干、割合なり下限については差があるところでございます。
そういうものを前提にしまして、今回、研究会の最終的な御提言ということで、住民税につきましては所得控除方式を税額控除方式に改める。
また、所得税の軽減額と合わせて寄附金全額を控除する。なお、この場合、全額控除の対象の上限を決めておりまして、個人住民税所得割の1割としておるところでございます。
また、適用下限額を5,000円に引き下げるということです。
所得税についても御指摘があるんですけれども、2ページをめくっていただきますと、国税と合わせまして、所得税におきまして税額控除方式に仮に改めるといったような場合には、それぞれ控除率を設定しまして、合わせて100%にする。
また、所得税において現行の所得控除方式を維持するというような場合には、適用下限額を超える部分のうち所得税の軽減額、寄附金額掛ける所得税の限界税率でございますけれども、それの残額を住民税から控除する。そこに例を掲げておりますけれども、仮に所得税の限界税率が10%の方ですと、寄附金額の10%分が税として軽減されますので、住民税で下限を超えた寄附金額の90%を税額控除するという仕組みを御提言されております。
なお、下に※がありますけれども、全額控除する上限というのは、先ほどもお話しさせていただきましたけれども、所得割額の1割。
また、上限を超えた部分につきましては、これまでと同等程度、個人住民税は、今、10%の比例税率でございますので、10%程度の軽減措置を受けられるよう所要の措置を講ずる。
そういう制度を御提言されまして、それを前提にした場合に、3ページで、税額控除につきましては、決め方なのでございますけれども、所得税において現行制度、所得控除を維持された場合のケース分けをしたものでございます。
なかなか、どこをとるかということ、また、寄附金額というのは非常に区々でございますので、多分、どこまで書いても切りがないんですけれども、一応、掲げさせていただいております。
一番上段に、給与収入が500万円、700万円、1,000万円。
それと、その方に対応する住民税所得割額がそれぞれ15万円、29万円、54万円。
その下に、先ほどお話ししましたように、今回の高率の税額控除をする上限を所得割額の1割に決めて提言されておりますので、参考までに、その1割、1万5,000円なりを掲げております。
寄附金額は、1万円、3万円、10万円、30万円ということで、人によりそれぞれでございますので、いろんなケースを参考のために掲げさせていただきました。
ちなみに、少しだけ御紹介させていただきますと、700万円の真ん中辺り、3万円という、まさに資料の一番真ん中辺りでございますけれども、2万5,000円という数字があると思います。これは700万円の方が仮に3万円寄附をされた場合には、結果的に所得税における軽減額が2,500円。それと、住民税における軽減額、上限額を下回っておりますから2万2,500円ということで、結果として、下限を超える2万5,000円が控除されておるわけでございまして、3万円全体に対する軽減割合というのは、計算の結果、83.3%となるわけでございます。
なお、その下を見ていただきますと、言わば上限を超えるような10万円の寄附をされたケースでございますけれども、この場合には所得税の軽減と住民税の軽減を、上限を超えた部分は10%の軽減効果ということを前提に計算いたしますと、寄附金額に対する、言わば税の軽減の割合というのは45.7%になるということでございます。
以上、ここは一つひとつ説明する時間もあれでございますので、一応、そこの部分だけ御紹介させていただきたいと思います。
4ページで、地方公共団体の寄附金を他の団体に対する寄附金と差をつけることはどんな考えかというお尋ねもございましたので、研究会の中では、真ん中辺りの[1]でございますけれども、地方公共団体に対する寄附というのは、行政サービスの財源に直接充てることが可能な一般財源。また、地方団体全体の中で歳入が増加するということ、歳入総額は減少しないといったようなことから、より高い公益性を有しておるという評価をされた上での結論でございます。
なお、現行の地方公共団体に対する寄附につきましては、その下の参考に掲げておりますけれども、地方団体に寄附を奨励することに対する必要性、緊急性。また、地方公共団体には相互に受益が認められるということから、平成6年に対象になっているところでございます。
5ページで、前回の企画会合の中で、この「ふるさと納税」の効果の調査なりはしていないのかというお尋ねがございました。実は研究会としては行っておりませんが、研究会の中で福井県の方から独自調査という形で、このアンケート結果というものが出されております。
真ん中の「『故郷寄付金控除』があれば寄付したいか」につきまして、半分近くの方が、できれば是非したいというお答えになっております。
「寄付をする額は、税金の何割ぐらいが適当か」というところも、1割、2割、3割、それぞれがそれなりのボリュームで、1割が一番多く、4割近くの方がお答えをされておるところでございます。
研究会としましては、この効果につきましては納税者の意思と選択に関わるものでございますので、特段、調査をしておりませんし、今後、そういうものを踏まえて、また検討を深めていくべきということになっております。
なお、資料は付けておりませんが、交付税との関係もお尋ねがございましたので、この「ふるさと納税」の影響を地方財政計画にどのように反映させるかにつきましては「ふるさと納税」の規模に関わるものでもございますので、現行制度との整合性も図りつつ、今後の具体的な制度設計と併せて検討していくことにしたいと考えておるところでございます。
私の方からは以上でございます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまので、どうぞ。
〇長谷川委員
ありがとうございます。私も実はこの研究会に参加させていただいて、議論に加わってきたんですけれども、前々回欠席して発言する機会がなかったので、この機会に一言申し上げたいと思います。
この「ふるさと納税」というネーミングが付いておりますけれども、これは税の制度というか仕組みから考えるとむしろ「ふるさと寄附」、納税というよりは、ふるさとに対する寄附と考えた方がすっきりするのではないかと思っております。
ただ、その寄附の対象は税額控除するということなので、でき上がりの結果的には納税というか、納める側から見ると、その分税金をまけてもらえるということなので、納税という言い方になっているということだと私は理解しております。
ここで申し上げたいのは、本文と資料もありますが、一番肝心の問題というのは、税の議論は往々にすると受け取る側、つまり国あるいは地方自治体の側の理屈で物事を考えがちなわけですけれども、実は納める側の我々の普通の市民から見ますと、税の問題で大きな関心事というのは、私たちが払った税金というのがどういうふうに使われているのか。このことはやはり重大関心事なわけです。
まして、これからいろんな増税の議論などをするときには、この問題は極めて大事な問題になるという流れの中で考えると、この「ふるさと納税」ないし「ふるさと寄附」というのは、私が応援したいと思っているふるさとに納めたお金がどういうふうに使ってもらえるか。私がこれを納めれば、多分このふるさとはこういうふうに使ってくれるんだな、あるいはこういうふうに使ってもらいたいよという、その気持ちをどうやったら税の制度の中で実現できるか。こういう議論だったと私は理解しております。
規模はわずかでもありますけれども、そういう納税者が納める側の立場に立って、どういうふうに生かしてもらえるか。あるいはこういうことで生かしてもらいたいよという趣旨を税の仕組みの中に一つの道具として埋め込んでおけば、税に対する意識が大きく変わるきっかけになるかもしれない。それが私は賛成している一番の理由でございます。
もう一つ、地方交付税のところで今、御説明がありましたけれども、実はこの研究会の中では地方交付税は「ふるさと納税」をもらった分だけ増えるわけだから、国からの地方交付税は、減少してはその寄附の志がなくなってしまうから、減少してはいけないよという議論が多かったんですけれども、私個人的には、そこは減少したっていいと思っております。
つまり手取りが増えた自治体はその分、国から差し引いて、総額でネットではゼロになるように調整してもいいかなと。国の財政の厳しさを考えれば、そこのところはそういうふうに考えても一向に差し支えない。問題はやはり志を生かす仕組みが税の制度の中で、どういうふうにビルトインされるか。その道具を今の段階で埋め込んでやるということは、今の地方格差、その他の議論がある中では、大事なことなのではないかと思いました。
以上でございます。
〇香西会長
田近さん、お願いします。
〇田近委員
「ふるさと納税」について、理解の確認と論点を少し議論したいんですけれども、勿論、長谷川さんの御意見と私も同じで、その寄附金を通じた、ふるさとを含めた個人個人の適格だと認められた非営利団体に対する支援というのは、私は非常に大切だと思います。それこそ成熟化した社会で本来あるべき姿だと前から思っています。
そこでどれだけの団体が非営利団体として望ましいかという線引きも非常に重要だと思いますけれども、やはりそれぞれの個人が公共に代わる行為をして、それを国地方が認めて支援していくというのが本来あるべきだということで、この寄附金税制も考えてきました。
今日は原田課長から3ページで、私もこれは今、見たばかりで、長谷川さんも研究会にいらっしゃったと思うけれども、この表は初めてだと思います。これを基に貴重な時間を使わせていただくので、2点だけ指摘させていただきたいと思います。私の理解が間違えていたら直していただくということで。
その700万のケースで、夫婦子ども2人で、1人が特定扶養のケースで、ふるさとへ寄附をしたらどういうことになるんだろうということなんですけれども、2点です。700万で、そうすると課税所得が296万、住民税が29.6万、その1割まで、つまり2万9,600円まで控除の対象になります。
私が指摘したいのは、この1万円と3万円の寄附額の場合です。説明はこの図は字がいっぱい書いてあるので、1万円のときには御本人で自己負担は5,000円です。3万円のときもその自己負担は5,000円です。それでよろしいですね。これが寄附金税制なんだろうかというのが、私の最大の疑問です。
この場合はたまたま住民税で税率は10%フラットですけれども、10%住民税を払っている。寄附金税制というのは、私はこういうことだと思うんです。5,000円はテクニカルなことなので捨象させてもらいます。
1万円払ったならば、その10%の住民税は肩代わりしてあげるよと。私は1万円しか寄附しないかもしれませんけれども、私が1万円を払えば、田近さんは9,000円払ってくださいと。そして、あと1,000円はあなたの税金が安くなります。そういう形で戻ります。3万円払ったならば、田近さんは2万7,000払ってください、3,000円は税金が安くなります。
私はこれが寄附金税制だと、ずっと考えていた。そうやった公共のものを救って、国や地方が受け取った税金を戻してあげる。こうやって助けるんですよと。したがって、1万円寄附すれば、この場合は9,000円が私のお金、1,000円が地方の金、これで1万円の仕事ができます。
ところがこの場合、1万円から3万円に上がっても、テクニカルな5,000円という議論を除けば、実は私は1円も払わない。これが寄附金なんだろうかというのが私の最大の疑問です。
つまり端的に言えば、数字的に言えば、3万円までは住民税を付け替えているにすぎないわけです。これ自身は私自身がどういう考えを立てようと、それは事実として合っていると思います。ところが10万円以上になると、今度は劇的に税が上がっていく。それ自身は寄附金の仕組みとしてあり得るのかなと思います。
つまり第1点は、ここで我々がずっと議論してきた寄附金税制というのは一体どういうものか。これに対して「ふるさと納税」は、税の付け替えというものが果たして成熟化した社会で、国民が公共財をみんなでつくっていくところであるべき税なのか。せっかくここまで一生懸命やってきた議論がどう続くのかということです。
第2点は、これは中里さんが質問されたので、国との関係です。そうすると、私が1万円寄附したときには、同時に国の方も寄附金税制として認めてくれる。この場合、国の税金は私は安くなるんですけれども、その安くなった税金は自動的に地方のふるさとの寄附に付け替えると理解していいわけですね。
つまり国で安くなる部分は私には還元されないで、そのまま寄附金として出ていく。その国の部分を今日はこういう場で余り時間をモノポライズしてはいけませんから、中里先生がそもそも提起されたものなんですけれども、私が提起したかったのは、やはり我々はこれだけ大変思い切った議論をやってきて、私も寄附金は重要だと思います。その中でふるさとへの寄附金をどう考えるかというのは、我々日本人が考える本当に基本的な問題だと思います。
それから、やはり今までこの改革に伴って、地方は寄附金の10万円を足切り、大変な改革をされたということを前向きにむしろ評価したいと思います。
以上です。
〇香西会長
事務局の方からいかがでしょうか。
〇原田市町村税課長
国税の付け替えというお話がありましたけれども、我々は所得税というものは、この3ページの表にありますように。
〇田近委員
国税の付け替えではなくて、住民税の付け替え。それ自身が合っているか、合っていないかというのを1万円、3万円のケースでお答えいただいてからの方がいいと思います。
〇原田市町村税課長
そこのところは、国税の今の所得控除を前提にしたときに、それとは別途また住民税の1割をやっておりますから、そのケースで言いますと、本来2万9,600円というところがある中で、頭打ちがありますから、住民税で国税分という。
〇田近委員
国税は一切関係ないです。時間も大切なことはわかっているのですが、私の言っていることは、非常に簡単で、7万の人が1万円を寄附したときには、自分のお金は5,000円で済んだ。3万円のときも5,000円で済んだ。つまりそうすると、残りはどうやったかというと、住民税を付け替えたと理解してよろしいですかということです。
〇原田市町村税課長
そこはまさに寄附の中で、高率の税額控除の仕組みをとったというところは、まさにそういう推進策をねらっているわけですから、誘導措置として、そういう仕組みを御提言されておるということだろうと思います。
〇田近委員
では、付け替えということでいいですね。
〇原田市町村税課長
はい。
〇香西会長
よろしいですか。ほかに御意見のある方はどうぞ。今の件でもなくても結構ですけれども、いかがでしょうか。どうぞ。
〇江上委員
私は詳細はまだ十分理解をしていないんですけれども、基本的に今、田近先生がおっしゃったように、寄附の根本的な理念の原則というのが何なのかを考えると、500万の給与収入の人と700万の給与収入の人が1万円寄附したときの控除額が違うということが、果たして本来の寄附なんだろうかという疑問点は払拭し切れません。
〇香西会長
いかがでしょうか。課長の方からお願いします。
〇原田市町村税課長
今のものは、先生の御意見ということでよろしいでしょうか。現実、控除の仕組み方によりまして、所得控除方式で行きますと、たまたま個人住民税は10%比例税率ではあります。
そういう意味では所得に応じて個人住民税の世界では一定の率で変わりませんけれども、現行の国税と地方税を併せたものになりますと、どうしても比例税率と累進税率の組み合わせになっておりますので、ここにありますように、その差はある程度出ているのは、現行制度としてはあるのは事実でございます。ただ、その寄附についてのお考えというのは、多分いろんなお考えがあろうかと思っております。
〇香西会長
どうぞ。
〇上月特別委員
寄附金税制を拡充するという考え方では非常に悪くないと思うんですが、ちょっとお伺いしたいんですけれども、現行制度は所得控除方式ですね。これを「ふるさと納税」だけではなくて、すべての寄附金をこういう税額控除方式にされるのかということと、地方は適用下限が今10万ですね。これはすべての寄附金について、5,000円に引き下げるということと理解してよろしいですか。
〇原田市町村税課長
私どもは今、この「ふるさと納税」の寄附金税制の議論、また一方で公益財団、公益社団の方の寄附金税制の議論の両方がございますので、我々はこれからまた研究会の報告書をいただきまして、具体的な制度設計をしてまいりますけれども、先ほどもお尋ねのように、例えば日本赤十字社とか共同募金会というものにつきましては、現在所得控除ということで、地方団体向けも所得控除でやっておりますので、それは制度の簡明さ、また事務処理等々を勘案しまして、その辺りをどう考えていくのか。むしろ税額控除という形の整理というものもあるかもしれませんし、そこはまた少しこの2つの中での議論を踏まえて検討してまいりたいと考えています。。
〇香西会長
よろしいですか。
今、この「ふるさと納税」は、研究会の報告書ができたという段階だとお話がありましたけれども、今後はどういう形で御審査なさるんでしょうか。
率直に言えば、今、出たいろいろな意見も、その席で是非検討していただきたいと思いますが、それはどういう形で御検討されることになるんでしょうか。
〇原田市町村税課長
今、勿論御指摘も幾つかいただきました。
それと「ふるさと納税」につきましては、先ほど御報告したような研究会の報告書をいただいております。
また、公益財団、公益社団の方の議論も、これからまた形がきちっと決まってまいりますので、そういう中でどういう制度がいいのかというのを内部的に議論をして、またお諮りをしていくことになるのかなということだと思います。
〇香西会長
それでは、また中でいろいろ御議論されて、何か進展がありましたら、またこの会でも御報告いただくことにさせていただきたいと思います。
ほかに御質問等ございませんでしょうか。
それでは、まだいろいろ御意見もあろうと思いますけれども、この辺で一応宿題返しは一巡したということで、問題が残っておりますけれども、今日はこれで先へ進みたいと思います。
本日の本題としましては、先ほど申し上げましたけれども、今までの議論を整理した上で更に議論をするということの第一歩を考えておりました。お手元に、これまでの企画会合で出された主な意見を整理したものを用意しておりますので、これについて事務局の方で整理をしていただいたものがありますので、事務局から説明をいただいて、その後、自由討議に移りたいと思います。
「総5-4」から始まると思いますが、財務省の方からよろしくお願いします。
〇川上調査課長
調査課長でございます。お手元の「総5-4」「総5-5」に従いまして、簡単に御紹介申し上げます。
これは各主査の先生方にも御相談させていただきまして、前回までの現時点での議論の整理ということで、とりあえずのものを御用意をさせていただきました。前回、直前に消費税の議論がございましたものですから「総5-5」ということで、ちょっと印刷の関係で別冊になってございますけれども、一体のものとしてご覧いただければと存じます。
後ほど、項目ごとに十分お時間をとっていただきまして、またご覧をいただき、御議論をいただく時間があるということでございますので、ここでは国税、地方税を含めまして、ざっとだけご覧をいただくということで御紹介申し上げたいと存じます。
まず「総5-4」の総論関係の1ページ目からでございます。
ここに「(1)税制改革の背景」ということで、これまでに御議論いただいたポイントを掲げさせていただいております。
我が国経済・社会の構造変化ということでございまして、例えば高齢化、人口減少、社会保障費の増大。
結婚、出産・育児等についての個人の選択の幅が広がりつつあること。
就労形態が多様化している。
グローバル化。
国際競争。
格差固定化への懸念。
財政の悪化。
将来への不安。
世代間の公平の確保の視点ということが、これまでの御議論の中では税制改革の背景として御意見をちょうだいしていると承知をしてございます。
2ページ目は「(2)税制改革の視点」でございます。
以下はかなり広範な御指摘をいただいておりますので、便宜、幾つか見出しを付けさせていただいております。
まず「(国民の安心)」ということで、2ページ目に少しまとめてございます。
持続可能な信頼できる社会保障制度の実現を支えるために、安定的な歳入構造を確立する必要という御指摘。
要素といたしましては、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げの話。
医療、介護等の社会保障の給付と負担についての試算の話。
あるいは少子化対策の財源の問題。
2011年度までに基礎的財政収支を黒字化する必要がある。
2010年代半ばまでに債務残高とGDP比を引き下げる必要があるという御指摘。
その安定的な歳入構造の確立に向けて、税体系全体のあり方を抜本的に見直すべきという御指摘。
負担増について議論をする前提として、歳出削減を徹底することは不可欠という御指摘等々をいただいております。
3ページは「(経済社会の活力・発展)」ということで、経済の活力、個人、社会の活力につながるものを併せて種々御指摘をいただいておりますものをまとめてございます。
成長を高めるような税制を議論することが必要という御指摘。
幾つか並んでございますけれども、金融所得課税の一体化、法人税負担のあり方、中小企業の活性化、国際課税のあたりは、言わば経済の活力につながるということでの御意見かと思っております。
それに加えまして、就労、婚姻といった個人の選択を阻害しないような中立的な個人所得課税のあり方でございますとか、あるいは民間の公益的な活動をいかに促進していくかという、個人、社会を含めました活力をどうつなげていくかという御指摘もいただいているところでございます。
4ページ目は「(納税者の信頼・公正)」というところで、ひととおりまとめさせていただいております。
納税者の視点に立った、簡素で公平な税制を目指すことが重要であるという御指摘。
いわゆる格差問題への対応が重要であるという御指摘。
所得税・相続税の再分配機能についての御議論。
各論といたしましては、電子申告・電子納税の関係でございますとか、納税者番号制度、罰則、あるいは税に関する広報、租税教育の重要性ということについても御指摘をいただいております。
5ページ目は「(地方分権の推進)」ということでございまして、地方分権の大きな流れ、あるいは特に地域間の財政力格差の問題についての御指摘。
その中で、地方法人課税の水平的な調整が必要という御意見と、地方の税目について、地域間格差の少ない税目に変えていくことが必要であるという御意見。
あるいは地方交付税のあり方と併せて議論をしていくことが必要という御指摘をいただいております。
6ページ以下は、それぞれ各税目ごとに整理をしております。かなり大部にわたりますので、特にざっと眺めていただくことにいたしたいと思います。
まず、6ページは個人所得課税の関係でございます。
「(1)個人所得課税の現状」ということで、現在の所得税はやせ細り過ぎているのではないかという御指摘等々がございまして、中段以下では、特に税率構造の関係についていろいろな御指摘をいただいております。
7ページは「(2)世帯構成と税負担のあり方」ということでございます。
ここでの論点は、1つは課税単位の関係。
配偶者の関係。
扶養控除のあり方の関係。
あるいは子育てについてどこまで税制で配慮するのか等々の問題提起をいただいております。
8ページは「(3)所得の種類と税負担のあり方」ということでございます。
ここで御議論がございましたのは、給与所得控除のあり方の関係。
所得捕捉の問題。
事業所得のあり方。
退職所得についてのあり方。
年金課税についてのあり方といったことについて、御議論を整理させていただいております。
9ページは「(4)いわゆる給付付き税額控除の議論」。これもかなり活発にいろいろ御議論をいただいておりますので、その御議論をここで整理をさせていただいております。
10ページは「(5)個人住民税」の関係でございます。これにつきましても、幾つか論点がございました。
前年所得課税の論点。
課税ベースの論点。
均等割あるいは寄附金控除等々ございまして、10ページの下の方から11ページにかけましては、今も御議論がございました「ふるさと納税」についてのいろいろな論点、御議論を整理させていただいております。
12ページからは、法人課税に関係でございます。
まず「(1)グローバル化への対応」ということで、このグローバル化への対応の必要性、あるいは国際的な整合性を図る必要性等々の御指摘をいただいております。
「(2)法人実効税率と実質的な企業負担」ということで、社会保険料も併せた実質的な負担についての御議論、あるいは企業立地にどういう要因があるか等々の御議論をいただいております。
「(3)経済活性化と政策税制」ということでございまして、この政策税制の効果の議論。
13ページにかけまして、研究開発等を税制で後押しする必要性についての御議論。
いろいろなもろもろの経済効果、家計への波及効果を含めた経済効果の御議論。
租税特別措置の整理合理化の必要性等々について、御指摘をいただいております。
「(4)地方法人課税」のところにつきましては、外形標準課税の議論。
法人税として法人に課税することの妥当性の是非。
14ページにまいりまして、税制を含めた誘致策の効果等について、これまでの御意見をちょうだいしております。
15ページは、国際課税の関係でございます。
我が国の適切な課税権の確保と経済の活性化とのバランスを保つ必要。
国際的な資金循環やクロスボーダーの企業活動に対して、税制が阻害要因にならないことが重要というような、総論的な御指摘をいただいておりますとともに、外国税額控除制度あるいは租税条約について、ご覧のような御指摘をいただいております。
16ページは、公益法人課税関係でございます。
これにつきましては、先ほども総論の中でも出てまいりました「民間が担う公益」を支える税制の構築の重要性という総論の御指摘に加えまして、それぞれ「(2)公益社団法人・公益財団法人に係る課税のあり方」「(3)一般社団法人・一般財団法人に係る課税のあり方」「(4)寄附金税制」をどういうふうに見直していくか。あるいは「(5)その他」租税回避等も含めまして、ご覧のそれぞれの論点について、御意見をちょうだいしているところでございます。
18ページは、資産課税の関係でございます。
まず「(1)相続税を巡る環境の変化と今後の方向性」ということでございまして、地価水準の下落。
高齢化の進展の中で相続人自身が高齢化をしている。
高齢者世帯の資産蓄積が進んでいる。
老後扶養の社会化という御指摘等々の相続税をめぐる環境の変化の御指摘をいただいておりまして、その中で基礎控除について、引き下げることが適当であるとの御意見でございますとか、基礎控除の構造も併せて検討すべきという御意見。
あるいは税率についても、格差の固定化の防止との観点から検討すべきという御意見をちょうだいしております。
19ページにかけまして「(2)相続税の課税方式」についても、いろいろ御議論をいただいております。
「(3)事業承継税制」について、拡充が必要、拡充が疑問という、拡充についての賛否の御意見もいただいております。
「(4)金融所得課税の一体化」ということで、一体化の意義についていろいろ御議論をいただいておりまして、20ページにかけましては、昨年度の変更に沿って対応することが適当といった御意見もちょうだいしております。
中段以下からは、特に配当への課税について、幾つか御意見をちょうだいしております。
「(5)固定資産税」の関係でございますが、地方の税源としての位置づけ。
21ページにかけまして、主として償却資産の関係で幾つか御意見をちょうだいしてございます。
22ページは、納税環境整備の関係でございます。
「(1)基本的考え方」といたしまして、国民の納得や信頼向上のために重要であるという基本的考え方のもとで、「(2)納税者利便の向上、課税の適正化」ということで、具体的には電子申告・電子納税の普及の関係の御意見。
住基ネットの活用の御意見。
事前照会に対する文書回答手続の改善についての御意見。
個人住民税の公的年金からの特別徴収についての御意見等々をちょうだいしております。
(3)以下におきましては「(3)納税者番号制度」「(4)罰則」の関係「(5)租税教育・広報」について、それぞれご覧いただきますような御意見をこれまでにちょうだいをしてございます。
引き続きまして、駆け足で恐縮でございますけれども「総5-5」でございます。先日の金曜日に御議論いただいたばかりでございますが、消費課税関係についての御議論も、こちらの方で整理をさせていただいております。
「(1)消費税」につきましては「[1] 社会保障の安定的な財源確保と消費税の特徴」ということで、まず社会保障の安定的な財源確保との関係におきましては、経済の動向が人口構造の変化に左右されないこと。
現世代の国民が広く公平に負担を分かち合うこと。
勤労世代への負担集中を回避することや、経済活動に歪みを生じさせない中立性や国際競争力の重視といったことを既に御指摘をいただいておりまして、これに対応した消費税の特徴あるいは役割の重要性といったことについても御指摘をいただいております。
「[2] 使途」につきましては、ここにご覧いただきますように、社会保障財源化の是非を含めて、さまざまな御意見をちょうだいしてございます。
2ページ目は「[3] 消費税と再分配」の関係でございます。
ここでもいろいろな御指摘をいただいておりまして、特に生涯所得の観点で見たときの御議論、あるいは社会保険料との比較における逆進性をどう考えるかという御議論。
他税目や社会保険料を含む制度全体での負担のあり方というものも考慮に入れる必要があるのではないかという御議論等々の御指摘をいただいております。
3ページに進んでいただきますと、ここで軽減税率について今まで御意見いただいたものを整理してございます。中段以下におきましては、インボイス方式についての御議論を含めまして、制度の信頼性、透明性を高めるための取り組みについて御意見を整理させていただいております。
4ページ目は、地方消費税の関係、道路特定財源の関係。
5ページ目は、地球温暖化の関係、いわゆる環境税の関係、その他ということで、個別消費税の関係で若干の御意見をちょうだいしておりまして、それぞれご覧のような御意見をちょうだいしているところでございます。
大変駆け足でございますけれども、私の方から以上、御紹介申し上げさせていただきました。
〇香西会長
それでは、自由討議に入りたいと思いますが、議論をなるべく効率的に進めたいと思います。今、御紹介があった資料は、事務局でこれまでの企画会合でのいろいろな発言を整理したものでありますが、それに関しては、テーマにごとに進行役を務めていただいた委員の方にもできる限り御相談して選んでいただいたということであります。
したがって、これが答申の一つの基礎材料ということになるわけですので、御意見があればこの機会に、あるいはその答申のなるべく早い時期に、こういうことが抜けているんではないかとか、そういった御発言ないし御意見をなるべく早く集めたいという気持ちでおります。これからどんどん活発に御議論いただくことが大事ですけれども、必要があれば、時間がなかったりすれば、あるいは今日全部終わるとは限りませんから、まだ終わらなかったものについてでも御意見があればメールその他で事務局へ御連絡いただくということを是非行って、その素材の方をまず整理したわけですが、その整理の仕方等について、あるいはその内容の足りないところについて是非御意見をいただきたいと思います。
そうはいいながら、ここではたくさんの項目があるわけでございますが、勝手なことですけれども、もう一回次回議論するということも考えておりますが、私の腹づもりと言っては申し訳ないんですけれども、時間的なことを考えますと、本日においてできれば総論、個人所得課税、法人課税、国際課税、公益法人課税ぐらいまでの議論が一巡して、残るのは消費課税、資産課税、納税環境整備ぐらいに今日議論が進めばありがたいと内心考えております。
しかし、これは私の希望でありますから、そうなるかどうかは御議論次第ということだと思います。
そこで、最初にまず総論の部分として、「総 5-4」の1~5ページまでについて、御意見を承りたいと思っております。いかがでしょうか。
出口さん、どうぞ。
〇出口特別委員
先ほど田近委員の発言に刺激されましたけれども、政府税制調査会の歴史を考えますと、今度の答申の意味合い、まさに政府税調の存在意義が問われるようなものだと思うんです。その点で、非常に大きな目玉が必要ではないか。偶然にも110年ぶりに公益法人改革があって、寄附金税制の議論があり、「ふるさと納税」という議論があり、この中で「ふるさと納税」という言葉がいみじくも意味しているとおり、我々は税制調査会として、これまで強制的に調達する税というものに沿った税を考えていたわけですけれども、歳入と歳出の一体改革プラスαとして、自発的な寄附というものも公共財供給に与える影響があって、ここの部分を生かすことが巨大財政赤字を抱える我が国にとって、極めて重要なポイントで、今度の税調の答申が、まさに従来の考え方を国税、地方税とも大きく変えるターニングポイントだという点を税制改革の背景に盛り込むことによって、非常に大きな税調の存在感を示せるのではないかと思います。
〇香西会長
今お話のあった寄附の問題というのは、今度の税制改革において重要な地位を占めるという点では、私も全く同感でありますが、これについてもまたいろいろ議論もあり得るわけですね。したがって、その辺、更にいろいろな方から御意見を承りたいと思いますし、ほかのことでも結構ですが、この総論の在り方、重点の置き方、何をキャッチフレーズとするかというとセールスマン型になりますけれども、何に重点を置いたかということは大事な問題だと思います。御意見があれば是非お願いしたいと思っております。
吉川委員、お願いします。
〇吉川委員
総論のところの目玉ということであれば、やはりキーワードは社会保障だろうと思います。ですから、いろいろな意味で、つまりは高齢化社会が更に進む、格差への懸念がある、そういうことを背景にして、やはり社会保障制度を持続可能なものにするということが、私は最大のポイントだろうと思います。
ですから、税制改革なんですが、社会保障制度の改革と一体的にそれを考える。社会保障制度を持続可能なものにするために税に何ができるか、あるいは何をやるべきかという辺りが、やはり最大の項目ではないかと思います。
〇香西会長
ほかの方の御意見も聞きたいんですけれども、非常に大きな問題というか、それが非常に重要な問題であるということは、おっしゃるとおりだと思います。
〇増渕委員
今、吉川委員が言われたことについては、全く同感なんですが、総論的なことを何遍も繰り返してもしようがないとは思うんですけれども、この税制改革を議論する背景として、グローバル化と少子高齢化の進展という、これはある意味先進国に共通の課題でもあると思うんですが、そういう予見がある。
日本固有の制約として、財政赤字問題への対応という点がある。その財政の問題については、どんなに工夫を凝らしても、社会保障費が増大することを抑えることは至難の技であるということが加わってくると思いますが、それに加えて、今、グローバル化と少子高齢化の進展という予見を前提にして、日本の将来を考えたときに、どうしても必要な視点はやはり地域の活性化という点ではないかと思いますので、総論的なところで社会保障への対応ということは当然なんですが、ややそれに対する、言ってみれば違う切り口からの視点として、地域の活性化という問題について、税制としてどう対応するのかということがもう一つ入ってきてしかるべきではないかと思います。
〇香西会長
ありがとうございます。
長谷川委員、どうぞ。
〇長谷川委員
私は、総論のところで、是非御検討いただきたいのは、税というと取られるものという観念がまだある。そうではなくて、税というのは、私なりの言葉で言うと、一旦国なり地方自治体がお預かりするけれども、お預かりしたものはやがて還元する。そこの関係のところを強く打ち出すべきだと考えています。
社会保障の年金のところで、たしか政府の掲げた原則の中にも、大きな政府には結び付かず、国民に還元するという言葉がどこかで入ったと思いますけれども、それは別な言い方をすれば、政府は一旦お預かりする。それは何年かのうち、あるいは翌年度予算という形で国民に対するサービスとか、あるいは社会保障となって国民に還元されるものなんだ。だから、取られるものではないんだと、取られるように見えるけれども、それは戻ってくるんだという点を強く打ち出す必要がある。
それとの関連でいうと、ともすれば議論が150%も国に財政赤字がたまっているとか、そういう足らず米の議論が出てくるわけですけれども、前回会長もおっしゃられたけれども、幾ら足らないからという議論を強く打ち出すと、それなら節約しろというのが国民の普通の感情なんです。そういう議論も一方ではあるけれども、そういう足らず米の議論に陥るんではなくて、一旦お預かりするけれども、これは皆さんのものなんですと。どのぐらい負担していただくか、あるいは将来自分がどのぐらい政府がお返ししてもらいたいと思っているか、その規模は国民が判断することなんだと。どちらかというと主権は国民の側にあるんだということを文章の裏にでも持っておく必要があると思います。
〇香西会長
いかがでしょうか。私も全くそのとおりだと思いますが、逆に言うと、これは単に預かっているものだというと、うそつけ、お前は俺のポケットからとっていったじゃないかという議論が国民の目線からは出てくる可能性が非常に高いわけです。理想的に言えば、それが民主主義であるということはよくわかりますけれども、そういう理想を実現するには、どういうことをやろうとしているのか。結局は何だかんだうまいことを言って持って行くんだろうという疑惑をどうやれば消していけるかということです。
前回も言いましたけれども、例えば新しく介護保険を始めるからお金出してくださいと言うならまだいいんですけれども、老人が増えてきたから、何もしなければみんなが悪くなる。だから、維持するためには増税したいということですから、返ってくるといって今から社会保障に金をつぎ込むとしても、一人ひとりの給付が増えるよりもたくさんの人が老人になってきたということで消えてしまうんです。少なくとも今回の改正について言えば。そういう中で、皆さんにお預かりしたんですということを言えるのかどうかということもありますし、例えばGDPの1.5倍にもなる国債は何で発行したんだと。預かっているものはどうしたんだと。今ごろになって請求されても困るという議論も出てくるわけです。
そういう中で、お気持ちというか、理想的には長谷川委員の言われたことは全くそのとおりなんですけれども、合意とか説得ということの論理としては、もう少し、これはいかにもお返しするものですという実績とか、既にこういう形でお返ししましたとか、何かないと、ちょっとそういう反発に対して突破できるかどうかということが問題になってくると思って、気を病んでいるわけであります。是非御知恵を。
〇長谷川委員
一言だけ。ですから、前回議論があったような社会保障財源の議論のところを、やはりクリアーカットにして、皆さんに御負担いただくものは、こういう枠組みの中で、いずれ皆さんに年金や医療保障のような形で返ってくるものなんだという点の説明をもっともっとする必要がある。ともすれば、私はメディアの人間で、これまでの議論を見ていると、やはり何だかんだいって150%、あるいは700兆円、800兆円たまっているから大変だという数合わせの金庫番の議論が真正面に出てきていて、そうじゃないと、これは結局皆さんのところに返るために必要な財源なんだという議論が、私のようなメディアから見ていても、まだまだ不十分だというのが私の実感です。
〇香西会長
おっしゃることはよくわかります。その点は十分やっていきたいと思います。
もう一つは、社会保障について、これはある意味で専門が違うといえば違う方も、社会保障について、税との関係から言って、何かそれがいかにも還元できるものであるとか、あるいは社会保険料よりも税でやった方がいい場合はこういう場合だとか、何か社会保障にやや踏み込んだ国民の幸せを増やすために、そういうふうになっていくんだということを言うか、言えるか、第一そういうロジックがうまくできるのかというのは、私は税も素人ですけれども、社会保障も素人で、どういうふうに解決すればいいのかはわからない点が多いので、その点少し検討してみる必要があると思っております。
どうぞ。
〇田近委員
社会保障と税のところですけれども、やはり税調のある意味で限界というか、歳出と歳入一体改革ということは重要だし、だから議論しているんですけれども、社会保障の公費の在り方をどうするかというところまでは触れられないわけです。強引にやっても合意は得られないだろうし、ある意味で、長谷川さんは非常に紳士的におっしゃって、ただ、現実的には今の形の社会保障で給付が、まさに数としての高齢化が増えていったときの帰結というのは、もうわかっているわけで、それは内閣府の諮問会議の2025年の推計でも出ている。そしてこの間の財政制度審議会の富田さんの御説明のところにも出ているわけで、社会保障は大切だと、今の在り方で国が社会保障を支えていく、そこに高齢化が加わる。勿論、医療等の技術革新も更に重なっていくわけでしょうけれども、その場合にはもうここは国民の皆さんどうお思いになりますかという数字を具体的に問いかけるということになると思います。
ただ、その場合にも、まだどこかカットできるだろうという意見に関しては、ここもさっき申し上げたように、税調が歳出のすべてを議論するわけにいかないので、どこかは前提としなければいけない。ただ、悩ましいのが、いつまでもこの議論が回るのは、どこを前提に議論していくかというところが定まらないからでしょうけれども、少なくとも我々の中で、どこを前提に踏み出すかという議論はすべきだし、大分その議論も進んだような気がしております。
〇香西会長
社会保障については、持続するということが最大の使命なんです。途中で消えてなくなったら、何のためだということになりますから、そういう点で持続可能性というのをしっかりと何とかしたいというのはわかりますけれども、私は素人だけれども、今の社会保障は本当に持続可能なんでしょうかという疑いを禁じえないわけです。つまり、社会保障によって所得が非常に分配されているというふうに、よく言われるんだけれども、先送りしてはならないということもあるんですけれども、今の社会保障は先走りというか、先払いなんですね。ちゃんとした基金もないのにどんどん払っていくのが、ペイ・アズ・ユー・ゴーのシステムですから、既にどんどん先食いしているわけです。
そういうもので、どんどん成長していく人口も増えていく経済ならそれで問題なかったのかもしれませんが、そもそも無理になってきているんではないかという気さえあるわけで、その点はもう少し社会保障を持続可能にするには、こういうことをやっていけば持続できるという説明ももう少しないと信じきれない人々が多いんではないかという気がしますが、それは私の個人のあれかもしれません。
それから、足らずどころばかりを議論していると言われたことについては、非常に私も同感というか、注意してやらなければいけないと思います。
山田委員、どうぞ。
〇山田委員
今回、結果として、増税基調にならざるを得ないというのは、避けて通れない話だと思うんですが、その際に、私としては今、会長がおっしゃられた社会保障ということと国の財政赤字の改善という、2つの大きな柱があるんではないかと思っておりまして、特に社会保障の部分が、言わば消費税という形で、そちらの財源化につながっていくことになるだろう。そこでの合理性というのは、やはりサービスの提供の維持ということで、結局は個人個人を取ってみると、先ほど個人個人にいいことがあるという話があったんですけれども、つまり数が増えることによる現状維持のための、余り後ろ向きなことを言ってはいけないんですけれども、結局は現状を維持するために最低限必要であるという事実はきちっと踏まえておく必要があるんではないかというのが、社会保障に関しては1点目です。
それから、国の財政赤字の改善というのは、結局は個人所得税辺りのところの見直しという議論につながっていくんではないかと思うんですが、ここはやはり後代につけを回さない。ないしは将来を見据えた国の在り方という観点から、同じ増税の中でも意味合いの違うものをきちっと書き分ける必要があるのではないかという感じがしております。
〇香西会長
吉川先生、秋山さん、井戸さん、伊藤さん、お願いします。
〇吉川委員
2度目の発言になって恐縮ですが、先ほど香西会長が社会保障について、かなりペシミスティックな御発言をされたので、一言、私としては、レターず・ルックアット・サプライサイドといいますか、いろいろ問題があっても、年金についても数年前の、いわゆるスウェーデン方式、マクロスライドを入れたわけですね。ですから、さまざまな問題を抱えながらも、努力をすれば私は持続可能なものになると思っているんです。ただ、大きな分かれ道は、当然のことですが、私たち税の世界を仰せつかっているわけですが、フィナンシャルにきちっとしなければいけないという要対応額が、今後の給付水準をどういうふうに持って行くかということに大きく依存することは当然のことであって、給付の方をどんどん削っていけば、これは必要な税金というものが小さくなっていくのは当たり前のことだと思います。これは内閣府から先日説明していただいたシミュレーションでも反映されてきている。
したがって、ここから先はある種の価値判断になるわけですけれども、私は個人的には、日本人の多くは現在の給付水準を、いわゆる日本型の社会保障を大枠としては守りたいと考えていると考えているわけです。私自身、個人的にはそういう考えを持っているわけで、したがって、年金にしても医療保険にしても、どんどん給付水準を削っていくということをしないとすれば、今度は私たちが仰せつかっている税の世界でも、やはりそれなりの対応をしなければいけないんではないかというのが大きな姿であって、そこから先は、決して私たちの守備範囲から外れない。まさに税調マターではないかと考えております。
〇香西会長
それでは、秋山先生からお願いします。
〇秋山特別委員
まず、総論部分についてのポイントということで、今、何が問題なのか、何が課題なのかということについては、十分これまでも繰り返し議論がされてきていると思うんですけれども、税体系全体の在り方を抜本的に見直すべきと、それでは、どういう部分が抜本改革なのかという点について、少しずつ輪郭を明確にしていく必要があるのではないかと思っております。
私自身、ここ何回かの議論の中で感じておりますことは、やはり幾つかの課題を解決するための一つの方向性としては、基幹税としての消費税の位置づけが、これからますます重要になることはもう間違いないのではないかと。そうであれば、基幹税としての消費税が持っているメリットですとか優位性のような部分をしっかり理論的に書き込むというようなことは重要なメッセージになると思います。
あともう一点は、確かに国民の税意識の意識改革というような部分で、何もないところになかなかべき論を言っても実感が湧かないというところが非常に難しい、歯がゆいところなんですけれども、私自身が期待を持っておりますのは、「ふるさと納税」のようなきっかけで、寄附金税制を見直そう。あるいは寄附金制度を活用していこうということで、何らかの形で国民が実感できる、こういった国民参加型の税制のようなものを積極的にバックアップしていくというか、こういうものもあっていいのではないかというメッセージもまた意義があるものではないかと考えております。
以上です。
〇香西会長
井戸さん、お願いします。
〇井戸特別委員
もともと税の在り方というのは、国も地方も通じてですけれども、国の在り方を問う課題なんです。国の在り方を問うということを考えたときに、21世紀に日本が大きな力を持って、これからも発展していこうとしたときに、どういう国の在り方を問うんだというと、成熟社会化で分権型社会を先進国と同じように目指していかなければいけないんだとしたら、今はどうかといいますと、逆に格差が拡大したり、一極集中が進んでいる。そういう現状分析を踏まえた中で、国と地方との在り方だとか、それを支えるための国税と地方税との関係をどう考えるのかというような、つまり財政再建だとか、特定の目的だけを取り上げていくことも必要ですけれども、もう少し基本的なところの論議を踏まえておく必要があるのではないか。
せっかく課税原則についても勉強したわけでありますから、そういう意味からすると、税全体としての課税原則はありますし、また地方税は地方税としての課税原則なども考えておかなければいけませんし、それぞれにふさわしい税体系というものがあろうと思いますので、そういうそれぞれにふさわしい税体系、国税・地方税を通じた税体系と国税の税体系、地方税の税体系というような意味での基本的な考え方を、抜本税制改革といったときに示さなくていいんだろうかというのが、私の疑問と提案なんです。
ただ、これはまとめるのが非常に難しいと、税制調査会でそういう国の在り方全体についてものが言えるかという疑問がなしとはしないんですが、そういうところまで踏まえた上での論議にしていかないといけないのではないかという思いを申し述べさせていただきました。
〇香西会長
伊藤さん、飯塚さん、お願いします。
〇伊藤委員
どうもありがとうございます。この税制調査会の答申に対して、国民が何を読みたがるのか、国民は何を一番不安に感じているかということから考えていかなければいけないと思うんですけれども、やはり大きな問題はこれから先本当に大丈夫だろうかということをみんな真剣に考えているんだと思うんです。それは社会保障の問題も大事だと思いますし、高齢化もそれに絡むわけです。
ちょっと乱暴な言い方なんですけれども、そういったときに答申としてスタティックな提言、つまり今どういう税制であるべきかというレポートと同時に、ダイナミックといったらおかしいんですけれども、3年後、5年後を見据えた方向性をきちっと出すような答申を書くことで、随分イメージが違うと思うんです。
例えば今日の絵の中にも、財政については保守的に考えるべきだというコメントがありましたけれども、これをもうちょっと好意的に解釈すれば、今、税制についてしっかりとした手を打たなければ、ひょっとしたら5年後に税制調査会を開いたときに、ものすごく我々は手足を縛られて、やれることが非常に限られてしまう可能性もあるわけです。
そういう意味で、5年後ぐらいを見据えたときに、一言で言うとどういうスピードでかじを切るのかということについて、勿論、具体的なことが書けるかどうかは別の問題として、やはりメッセージがないと、今年はこういう答申が出ました。では来年はどうですかというようなタイプの答申であると、今の我々の置かれている状況だと、はなはだ心もとなくて、これは言うのは易しくて書くのは難しいのはよくわかるんですけれども、恐らくそこのところを総論のところで書いていくことが重要なのかなと思います。
〇香西会長
飯塚さん、お願いします。
〇飯塚特別委員
日本は、今、三重苦といいますか、グローバル化とか、少子化とか、17年も放置してきたわけではないんですけれども巨大な赤字というのがあって、どうしても歳出を抑えて歳入を増やした暗い話にばかりなってしまうわけですけれども、小さくなったパイをどうやって奪い合うかという非常に細かい議論が、是非社会保障のようなものを含めて必要なんでしょうけれども、やはり明るさが必要ではないかと思うんです。
今日も福田総理が来られて、冒頭に3つぐらい言われて、最初に成長とおっしゃいました。その後に温かい制度、その後に若者が希望を持てると言われましたけれども、成長というのをただ総論でお題目で、具体論がどうなるかが議論になるわけですけれども、やはり成長を地方の成長とか、小さな新しい企業の成長とか、若者の挑戦に対する、ある種若者の成長とか、そういう何か明るさを持った具体論を引き出すような総論にしたい。明るい論調にしたい。
そうでないと、この前も申し上げましたけれども、破綻した企業の製品は買わないわけですから、やはり買いたくなるような、つまり納税したくなるような夢のある部分がないと、どんどん国境から外へ出て行くことになってしまうと思いますので、是非明るさを総論に更に強調していただきたいと思います。
〇香西会長
明るさが強調できるような材料を是非教えていただきたいと思います。
どうぞ。
〇神野会長代理
ちょっと長谷川委員のお話を拡大解釈するかもしれませんが、私は吉川委員がおっしゃったように、今回国民の安心というところが一つのテーマになると思うんです。そのときに、税の考え方も国民に負担させるとか、あるいは負担させられるという概念から、私の解釈で言えば負担し合うふうに変えていく。それは、ここで言えば安心を支えるというよりも安心を支え合うと理解する。
結局、確かに暗い話で、高齢者の数がどんどん増えていくというのは事実なんですが、それだからこそ支え合わないと、支え合わない場合どうするかといえば、当然若い人たちの家族などで激痛が走るような形にさせざるを得ないので、社会化して、すべての人で負担し合うために、多くの国民が負担しあってもらう税をつくっておいて、こちらに二之湯政務官も加藤政務官もいらっしゃいますが、ここのところ2年間でもって、医療と福祉関係は悪い方向に向かっていると思っている国民が急激に増えているんです。
ですから、これからも厳しくなって、低めになるから負担してくださいというよりも、負担し合っていかないと、これから家族だけでは無理ではないかということで、とにかく増税を正当化するということをしていく。
そういうお話として、つまり負担させられるというよりも負担し合っていくんだといとうことで理解して、まとめなければいけませんので、よろしいでしょうかと。
〇香西会長
どうぞ。
〇長谷川委員
今の神野先生のお考えに賛成でございます。もう一点だけあえて提起したいんですけれども、社会保障と税の問題を書き込むとなると、私は年金の記録漏れ問題、ここは視野に入れるべきだと思っております。というのは、先ほど会長もいみじくもおっしゃったように、皆さんの年金のためにお預かりしたいんですといったときに、直ちに返ってくる反応は、何言ってんだと、俺の年金の記録もしっかりつけていられないのに、そんな政府は信用できるかという話になるんです。今、残念ながらそれぐらい信用が地に落ちてしまった。ですから、この年金の記録漏れ問題の解決は、是非ともやらなければいけないということが1つと。
もう一つ、仮に3分の1から2分の1への引き上げの議論で、消費税増税を提起するのであれば、つまり半額税方式に変えるということを提起するのであれば、これは記録漏れ問題を解決する方向への、つまり税方式になれば記録漏れはないわけですから、その一歩にもなるかもしれないということも頭に入れておいていいのではないか。
いずれにせよ、普通の国民の目線で考えれば、皆さんに年金をお支払いするために必要なんですという議論を提起したら、直ちに、では例の記録漏れ問題はどうしてくれるんだという話が返ってくるので、ここについての目線というのは、私たちはしっかり持っておく必要があるということを言いたいと思います。
〇香西会長
高木さん、どうぞ。
〇高木委員
何か発言をしておかないと報告書にも書かれないような雰囲気だから発言させていただきますが、皆さんの議論が、所得再配分機能の劣化は放置するという議論のように聞こえてなりません。そうでないならいいんですが、消費税をベースにし、これは高齢化社会だから、どうのこうのといういろんな御論議がございます。
一方でフラット化だと、この議論は所得再配分機能のような税の役割をどんどん劣化させていく方向の御議論ではないかという印象が非常に強いので、所得再配分機能の議論もあきらめないでほしいということを強く申し上げておきたいと思います。
この5年間だか6年間だか、税、社会保険料等の負担増、それから、社会保障等の給付削減ということで、やはり家計サイドはかなり傷んでいる。こういうことだから傷んでもしようがないんだという御議論をされるならまた別ですが、それを少しでも緩和するという意味で税が貢献する世界がないのか。別の言い方をしたら、もう所得税だとか法人税の役割は、小さくなってもやむを得ないんだというスタンスに立ち、だから消費税だというところにやってしまうのか。そういう意味でのそもそもの税の根本に関わるところを、こういう世の中になってしまったから、今からそんなこと言ってもしようがないんだと、悪貨がここまではびこったから、いまさら良貨に戻せといったって無駄だという御議論で税の議論をされていくのか。
特に我々の感覚から言いますと雇用の世界、所得税の税収が減ったのがかなり影響を与えておりますのは、そもそも所得税を払うのに足らない所得レベルの人が圧倒的に増えた分が非常に大きいんだと思っております。いわゆる非正規雇用というのが3人に1人なった。
こういう世界を一方で是認する日本の社会でいいのかという、そんなふうにも思えてしようがない議論が今、続いているんではないかと思います。今、香西会長が言われたことに反論という意味ではございませんが、社会保障というのは今の延長では破綻だと。確かにそうかもしれないという御議論の方もおられるのは承知しておりますが、では社会保障のない年金の仕組みがきちんと担保されない日本でいいのか。そのために、どういう負担がどういうレベルで行われるかということが、国民が納得できるリーズナブルな説明なり訴えがあって、初めてコンセンサスというのが、先生には大変失礼な物言いで恐縮でございますが、そういうようなことも含めまして、御感想を述べられたんだろうと思いますが、そういう社会のありようと税がどんなふうに関わっているのかというスタンスが、余りにも一方的な議論の方に向いているように聞こえてなりません。
消費税に関わる議論は、また次回だそうですので、そのときにいろいろ意見を言わせていただきますが、ただ、この会議の設定が日程的に大変で、皆さんお忙しいのであれですが、私もなかなか出れませんもんですから、またペーパーでお願いするしかないかもしれませんけれども、そんなことも含めて感想みたいなことになりましたが、そういう意味では公正、公平だとか、世の中お互い支え合うという、ですから、この間も申し上げましたが、消費税を上げておいて法人税を下げろという議論をしたら世の中大変だという認識を我々は持たないといかぬと感じていることを重ねて申し上げます。
今、民のかまどの方を気を使っていかなければいかぬ状況ではないか。
〇香西会長
お気持ちは非常によくわかっているつもりでありまして、私は社会保障をつぶしてしまえと言っているのではなくて、これは何とかして残したい。残すには、どうすればいいかということをなしに、今の段階でこれでいいんですということは言えないのではないか。だから、そこは社会保障を改革してもらって、そして、これならやっていけるというめどをつけたい。それは私たちの仕事ではないかもしれませんけれども、それがないと、何となく、まただます方に入ることになってしまう。明るくしなければいけないんですけれども、明るくすることを合理化するための材料がもう少しほしいと思います。こうすればよくなるということのね。
〇猪瀬委員
今のことに関連してだけれども、消費税は逆進性があるという高木さんの言い方ですが、それは2分の1にしろ、民主党の言うように全額にしろ、消費税を基礎年金に充当することが前提であれば、逆進性とは言えないわけであります。消費税は、所得に比例して入ってくるわけですから、その部分については逆進性が薄いわけです。
問題は、昨日などは急に小沢さんが大連立するとかしないとか、そういう騒ぎになってきたりすることも含めて考えれば、先ほど福田総理大臣のご挨拶では、消費税という言葉は1つも入っていないんです。これからどうなるかわからないわけですから、きちんと言うべきことは言っておかないといけないと思うんです。
今は総論の話だけれども、むしろ、この辺りできちんと消費税の位置づけをしておく必要があるだろう。なぜならば、実は3週間ぐらい前まで消費税はタブーだったんです。全くここでもやっていなくて、新聞でも、政府関係者は消費税と言ってしまうといけなかったんです。安倍さんが選挙の前に言いかけて、すぐに引っ込めたりとか、そういう流れがあったんです。
振り返ってみると、多分そういう政局的な要素も含めていろいろあると思いますが、今、期待されている役割は、逆進性というか、最初に香西さんが言われたように、社会保障に対する不安です。それを埋め合わせるために必要だというメッセージをきちんと残す必要があって、ただ、前に税調で石会長が選挙の直前にサラリーマン増税などと言って、散々、税調は何やっているんだと与党に怒られたりしたこともあったわけですけれども、今、言おうとしたのは、大連立だとか何とかかんとか、いろんな政局もあるから、そういうことと関係なく消費税の議論をきちんと具体的に、どことどこにどう入れればどうなるのかという見通しをきちんと入れるべきだと思います。
〇香西会長
考えれば、消費税というのは福祉国家とともに発展してきた税なんです。
吉川先生からありますか。
〇吉川委員
高木委員の御発言を伺っていて、一言発言したいんですが、高木委員の御発言は、日本でいわゆる著しい格差がどんどん広がっていくことは好ましくない。社会として、しかるべき所得再分配をしなければいけない。こういう御指示だったと思うんですが、そうした考え方を、私は一委員として、100%共有しております。
その上で、今の日本で一番大きな再分配効果を持っている制度こそが社会保障であると思います。また、前回、私が発言したんですが、所得分配というわけですが、所得インカムが集まるところはお金ですが、より本質的には、厚生、ウェルフェアの分配の方が重要だということも発言いたしました。これはわかりやすく言えば、所得水準が全く同じでも、病気の人と病気でない人でウエルフェアの水準が違ってくる。これを手当するのが、いわゆる医療保険だということを言ったわけです。したがって、インカムディストリビューションは勿論重要なんですが、ウェルフェアまで踏み込めば、そこまできめ細かく手当するのは社会保障かなという気が私はいたしております。
もとより、高木委員は、しかし、税も再分配効果をもっと発揮しろということだろうと思います。しかし、この点でも、1つのネックは、いわゆる総合所得課税は、理想としての総合所得課税という理念があるわけですが、現実においては、それがさまざまな壁にぶつかるという問題点があるわけです。
したがって、そういう中で、税が更に所得再分配効果を働かすべきだということに、私は真っ向から反対しませんが、しかしながら、現実論として、また戻りますが、社会保障制度を盤石なものにするべきだ。そのためには、税が頑張らなければいけないんだ。
また、高木委員がおっしゃっている分配のところも、税だけではなくて、少なくとも社会保障と組み合わせて、社会と税を一体で、社会全体として、どのような再分配効果の機能が発揮されているか。こういうふうに考えなければいけないのではないかと思っております。
〇香西会長
翁委員、井戸委員、どうぞ。
当初、事務局から指示されていたのは、今ごろ休憩に入る予定だったんですけれども、私がうまくできなくて、休憩ができそうもない状況になっていますけれども、大事な問題ですので、お願いします。
〇翁委員
それでは、簡潔に申します。
私は税体系の議論は非常に重要だと思っていまして、やはり国民にとって、個別の税の話が出てきても、実態としてどうなるのかがわかりにくい。全体像が見えることが非常に重要だと思っております。ですから、消費税の位置づけ、所得税の位置づけ、今、吉川委員からも御議論がありましたけれども、所得税については、社会保障と一体で所得再分配を考える形で考慮していく。その結果、全体として、どういうふうになるのかという全体像がトータルに見えるような工夫が必要だと思っておりますのが、1つです。
もう一つは、社会保障のサステイナビリティーとか、非常に大きな債務残高の話で、この間、遅延コストの話がございましたけれども、必要な対応を先送ることのリスクを考えますと、やはり将来世代への責任を果たしていく視点が非常に重要なのではないかと思っております。
〇香西会長
井戸さん、どうでしょうか。
〇井戸特別委員
言い忘れましたので、補足だけさせてください。
今の時点で共通している課題は、やはり格差問題だと思います。ですから、格差に対して、どういうふうに税の立場でアプローチをしていくのかという姿勢が出てこないといけないのではないか。
1つは、セーフティーネットをどう張るかということとの関連で、社会保障あるいは高木会長が言われたような所得再分配などの議論が出てくると思います。
もう一つは、地方との格差で、それに対して、どのような振興策を講ずるかということが出てくるのではないか。格差についての位置づけが今の段階で何もない税調答申は、考えられるのかなという点につきまして、補足をさせていただきます。
〇香西会長
田中さん、どうぞ。
〇田中特別委員
今の税制改革の議論の中で、国民の安心という言葉がございます。国民の安心の一番の保障になるのは、経済の成長の維持ではないかと思います。そういう保障がなければ、この社会保障の問題等々の対応が議論されない。したがって、日本経済の成長促進を加速する税制の議論が、総論の中の幾つかのところに散見されますけれども、もうちょっとその点が強調されてもいいのではないかという気がいたします。
以上です。
〇香西会長
田近さん、どうぞ。
〇田近委員
大分意見が出てきたので、私の発言も一部繰り返しになるんですけれども、井戸さんあるいはほかの方もおっしゃったんですが、やはり格差問題に対して、今回の税調の答申がどこまで応えるかというのは、我々にとっても重要だし、国民サイドからも税調がどう考えているんだというメッセージは重要だと思います。
個人の所得の格差、地方の格差の両方があると思うんですけれども、個人に対して、今回は非常に重要なチャンスだと思うのは、あるべき所得税という議論で、やはり課税ベースを広げるというか、課税所得をできるだけ大きくする。逆に言えば、所得控除を整理するという議論をずっとしてきた。
でも、格差の問題に関しては、どれを減らすかということになるかもしれませんけれども、ここで我々は結構いい議論ができたと思って、給与所得控除の一番上の部分を見直す。あるいは特定扶養控除とか、もっとほかにあると思います。公的年金等控除も考えるべきだと私は思いますけれども、いずれにしても、それらを整理することで、実は限界的な税率が高い人が余計に払ってくる。そこで得られる税源を所得の少ない人たちに利用することになるという意味で、格差の問題に関して、今までこの税調でやってきた議論をもう一回訴えかけて、正当化できるチャンスなんだと思います。
地方の方については、また別の機会に議論すると思うので、それはそのときに発言します。
〇香西会長
井上さん、江上さん、どうぞ。それでは、レディーファーストでいきましょうか。
〇江上委員
全体の税体系のことについてですけれども、私もずっと議論に参加してまいりまして、消費税がこれからの大きな基幹税になるということは、大変理解できまして、それを今回大きく位置づけて出していくことは賛成です。
ただ、そのときにコンセプトに国民はこの1年間ぐらい、いろいろな政局の話も含めて、大変なスピードで大変な量の学習をしたと思います。ですから、これから何らかの形で税負担が増えていくことについては、かなり理解があると思います。それに反発するかどうかは別にしても、認識は高まっているのではないかと思います。税負担が多くなって、その先のゴールはどこなのかという、税体系を変えたところのゴールの姿が国民にリアルな形で見えてこない。それをメッセージすることは、とても期待されていると思います。
そういう意味では、先ほど神野会長代理がおっしゃっていた助け合うという概念は、非常に重要で、助け合い支え合う。それだけだと福祉になってしまいますから、力を発揮し合うというコンセプトを是非込めていただきたいということ。
もう一つは、持続的に社会保障制度を実現していくために理論立てていくわけですけれども、しかしながら、社会保障費がこれだけ増大しているのは、高齢化なわけで、劇的に出生率が下がっている原因を除去していく方向に、今回の税体系の変革は向かっているんだということも大きくメッセージで必要だと思います。
そういう意味では、少子化対策というところで、先ほど財務省の事務局から夫婦子2人の場合の子育て世代の税負担の国際比較表が出ましたけれども、こういったところをどうするかという検討を含めて、国民が安心して子を産み育てられる。そして、老後に安心して社会保障を受けられるという持続可能な社会をつくっていくメッセージを是非入れていただくといいなと思いました。
そこで、1つのキーワードなんですけれども、前回、内閣府から出された資料にワーク・ライフ・バランスというコンセプトがございました。今、ワーク・ライフ・バランスというのは、やや狭義な意味ですと、企業の人事管理、労務管理のようなとらえ方をされておりますけれども、第一生命の会長の森田さんなどが音頭を取って、経済界の生産性向上という観点からもワーク・ライフ・バランスが必要だ。
それから、地域の再生、教育、家族、個人、企業それぞれが、それぞれの場で生産性を高めていくといった非常に包括的な概念ですので、ワーク・ライフ・バランスというようなキーワードにも、少し留意してもいいかなと思いました。
以上です。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
井上さん、どうぞ。
〇井上特別委員
ともかくこれだけ債務残高があるわけですから、財政再建というのは当然必要なわけです。それには、どうするのかということから始まれば、やはり歳出の削減ということが、我々社会人から見ていくと、そういうものをまずやってもらわなければいかぬであろう。そうすると、行政改革ということになっているわけですが、最近はどうもそれも弱含みになってきている。本当にやるのかなという疑問を持っている現状なわけです。
ですから、問題としては、当面の税制というものはどうするのか。長期的な税制をどうするのか。先ほど飯塚委員からもお話が出ていましたが、その両方を併記していく必要があろうかなと思います。
まずは企業が成長しないことには、どうにもならない。先ほど高木委員が所得の再配分がどうのこうのとおっしゃっておられますけれども、やはり企業が成長しなかったら配分は増えないわけです。ところが、いまだデフレが続いている。中小企業は、今、低迷している。中小企業は、要するに付加価値を約55%、大企業よりよけいに生んでおる企業なわけです。だから、中小企業に対して、それをいかにして成長させるかという税制は是非とも必要だと考えています。そういう点に、強くこれからは盛り込んでいただきたい。今まで中小企業に対して、余り御関心がないと思っておりますので、そういう点は是非お願いをしたいということが1つ。
それから、消費税。これはもう当然将来的にはやらなければならない。社会保障費がこれだけ増えてくるわけですから、当然のことなわけですけれども、やはりその前にも、先般申し上げましたが、たばこの問題にしても、ここに書いていないわけですが、たばこ税は上げるべきではないかとか、済みません、書いてあるそうです。
それから、遊戯施設利用税なども廃止になっておるわけですけれども、そういうものなども再検討すべきではないのかということを前にもちょっと申し上げたことがあります。パチンコなどもギャンブルになっているということから考えるなら、そういうことも検討の中に入れていくべきだと思います。
やはり、中小企業に活力を与えるための事業承継の税制の問題も、ともかくしっかりと組み込んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
〇香西会長
どうぞ。
〇神野会長代理
1分だけですが、総論の1を今、御議論いただいたこと、これまで御議論いただいたこともほぼ同じような内容になっていると思うんですけれども、一応まとめとしてここに書いてありますように、安心そしてチャレンジ、活力。そして再分配、格差の問題もその後の信頼・公正のところに格差の問題。
それから、今、税の所得再分配機能は落ちているんですけれども、同時に強い歳出面の再分配とか、両方バランスをとるとか、再分配の問題はいろいろ議論があるけれども、これも考えなくてはいけないということも書いてありますので、一応この路線で今の御議論は入っているのではないかと思います。感想として、今、この形で徐々に今日の御議論を踏まえてまとめさせていただくということで進められるかなと思いますので、御協力いただけたらと思います。
〇香西会長
それでは、5分間休憩をいたします。休憩後は、所得課税についてという順番になります。6から11ページまでになりますので、意見があれば、5分の間によくまとめておいてください。3時10分に再開します。
(休憩)
〇香西会長
まだ、御着席でない方もいらっしゃいますけれども、そろそろ再開させていただきたいと思います。
ここ総理官邸は、私ども4時になると、引き上げなければならないことになっておりますので、後の時間は4時までということですから、そのつもりで議論していきたいと思います。
順序としては、個人所得税、6ページから11ページまでを25分間ということになります。その後、法人課税、公益法人課税、国際課税といったところを残り25分という形になりますので、非常に時間としては足りませんが、次回にもう一回あるということのほかに、先ほどお願いしましたけれども、御意見等どんどんメールで事務局の方に御連絡いただきたいと思っております。
それでは、6ページから11ページについて御意見のある方からお願いいたします。
〇神野会長代理
所得課税について御意見をいただければと思います。今、会長は洗面所にいらっしゃっていますので、代行させていただきます。
個人所得課税、6ページから11ページですが、ご覧いただいて御意見をいただければと思います。いかがでございましょうか。
高木委員、どうぞ。
〇高木特別委員
1つには、今、特に給与所得、サラリーマンの世界では、やはり定率減税は法人税あるいは所得税の中のいわゆる高額所得者の税率等、3つセットで行われていて、定率減税だけを廃止された。あのときに恒久的減税という表現を使われたわけですが、これについても完全に廃止されてしまいましたから、今更なんだということかもしれませんが、この廃止に対する納得性というんでしょうか、この議論はいまだにサラリーマンの中でかなり強く残っているということを、まず、冒頭申し上げたいと思います。
それから、先ほど田近委員からいろいろ各種控除のお話もございましたが、給与所得控除について言えば、必要経費という観念とともに、その捕捉率あるいは担税力の調整という意味があるんだろうと思っておりますが、また、最近所得捕捉率の格差が小さくなったとおっしゃる先生方もお見えだと聞いておりますが、その根拠は、もう一つ、私どもには納得ができないわけです。
先般、連合加盟の国税労組の皆さんに少し尋ねてみましたら、税務調査の方法を変えた。以前は事業者調査と事業所得調査、金融資産調査など、その都度ばらばらにやっていたんだけれども、最近は一括して横串しで刺すようにやっているという意味で追加申告が増えた。しかし、それをもって捕捉率が向上したということではないんではないか。全部さらけ出されているというよりは、やはり氷山の一角だけが出てきているという、その構図には余り変化がないんではないか。そんなことを言っておりましたが、それはさておきまして、給与所得控除の縮小は、いわゆる水平的公平に関わるものだと思っております。
勿論、1,000万を超える高額所得者の人たち、高額所得者の定義も、もっと何千万のことをイメージする人もお見えかもしれませんが、全部、一律5%の控除がよいかは議論の余地があると思いますが、水平的公平という観点からも、この問題は考えなければいけないものではないかと思っております。
それから、扶養控除を廃止して、児童手当型にするというお考えもございますが、その考え方に闇雲に反対するものではございませんが、何歳までを支給とするか等によりましては、空白ができる面もありますので、その辺いろんな配慮してやっていく必要があるのかなと、とりあえず申し上げさせていただきました。
〇神野会長代理
ありがとうございます。給与所得控除は、今は差別課税の点から給与所得控除を重視して守るべきだという御議論ですね。それと、縮小のときには、主として高額のアッパーを、上限をくっつけましょうという議論が多かったので、特にそういう意味で、高木委員がおっしゃっている、むしろ細分化的な要素を入れた意味での縮小論が割と多かったという印象を受けています。
〇高木特別委員
私は、所得税も高額所得者のところの税率は少し上げた方がいいと思っています。いろいろ御意見があると思います。
〇香西会長
どこの税ですか。
〇高木特別委員
最高税率、それからその次のカラムぐらいから、上げ方によると思います。
〇香西会長
今のは給与所得控除の天井なし、5%でいくのを、天井を少しつくろうではないかということですか。
〇高木会長
ものすごく高い人が給与所得控除なんかの概念が要らない、また、そういう人たちは別途の資産所得等もいっぱい得ておられる方が多いから、一方で10%の源泉課税みたいなことと絡む話ではないかと思います。
〇香西会長
続けてください。私がやると、また長くなりそうなので。
〇神野会長代理
今のは、必要経費の概算控除の性格というところに、もう一つ差別課税的な要素とか、脱漏のところ、ここでも議論に出ていましたけれども、そういうところもちゃんと配慮すべきだと、こういう御意見ですね。
〇高木特別委員
給与所得控除のところのそもそもの意味が必要な層と、べらぼうに高い所得の人には、そういう概念さえ、もう要らぬのではないかという面も含めてです。
〇神野会長代理
わかりました。
〇香西会長
それでは、ほかに御発言のある方、どうぞ。
では、原さんから、どうぞ。
〇原特別委員
増税の暗い議論もありますけれども、10年ぐらい先の話もちょっと考えて、政府の税調として、私は税調の委員の中で、恐らく一人だけアメリカやヨーロッパに住んでいる人間だと思いますけれども、そこから見ていて、日本の役割というのは、印、米、中国等々が台頭してきて、ますます落ちてきたというふうに思いますから、OECDの加盟の先進国の中で、2011年プライマリーバランスの均衡化を超えた10年ぐらい先のめどとして、世界の中で、主立った税目はすべて最低税率にするというふうな大きなビジョン、これは外国から見ても大変魅力的な、何という国に日本はなっていくんだと思うでしょうし、日本の国民にしても、そういう国だったらいいなと思っている人は多いと思います。
これを実行するのはどうやったらいいのかという話になるわけですけれども、これは税率を上げることを、税率を下げてもできるような仕組み、これをどうやるのか。
具体的には、幾つも方法がありますけれども、もう一つは、歳出をどうやって削減するか。今日、寄附税制の話が随分ありましたから、これをもう少し拡充して、例えば教育の分野ですとか、発展途上国に対する支援の援助の分野ですとか、こういう分野は、国民一人ひとりが、自分がこれにお金を使いたいと思うところに寄附をすれば、税額控除方式で税金を安くする。
同時に、これは、例えばODAに関したり、教育の予算に関したりすると、歳出の削減につながりますから、非常にダブルの効果があるようなものをねらっていく。これは、歳出の削減をしっかりやれるようなところに重点的な寄附税制のものを拡充していく。
また、法人税というものは、先ほどから随分いろいろと議論されているけれども、やはり企業がしっかりした業績を残していかないことには、その国はどこもだめになりますので、研究開発税制等々いろいろなものがつくられておりますけれども、最も重要だと思いますのは、コンピュータ中心にしたITの基幹産業の実態というのは、前にも申しましたように、もう成熟化した産業になってきていますので、この次の基幹産業をつくり出すようなテクノロジーを促進する中小企業に対する投資、これを投資減税といいますか、寄附税制と同等なような扱いにすることによって、そこに個人のリスクマネーがどんどん入っていくようなことを上限を決めて、例えば何百億円とか何千億円とか決めて、余り税収に影響しない限度の中で、お金を導いていくといったようなことは現実的に検討する必要があると思います。
そういうことを検討していくと、法人税率を下げても、実際の法人税収は上がる仕組み、下げるばかりでは話になりませんから、そういったことを真剣に考えて、特定の新しい、将来の法人税をつくり出すような小さな種のところにお金が入っていくようなもの、研究するようなことを政府税調の中でやろうじゃないかという提言をするのは、大変いいと思います。
こういうふうなことをすると同時に、先ほどから長谷川委員と何人かの方がおっしゃられたように、政府税調としては、税金を払った国民の方から見て、この税金はどのように使われているのかをしっかり監視し、報告する。人員が幾らあっても足りないでしょうから、ランダム調査のような形で、年のうち1つや2つや3つぐらいのところは徹底的に調べて、税が無駄に使われていないかどうかをきちんとする。会計検査院なんかは、そういう仕組みを持っているのかもしれませんけれども、このための目的をしっかり持った機関をしっかりつくることを政府税調が政府に提言しているんだといったことは、国民の人たちにとっては、非常にちゃんとやってくれている税調だと思うだろうと思います。
まだ、ありますけれども、以上です。
〇香西会長
では、出口委員、その後に幸田委員、どうぞ。
〇出口特別委員
細かなことですので、後でもいいですが。
〇香西会長
では、後でいいということなので、それではレディーファーストの方に行きましょう。
〇幸田委員
なかなか会議に出席できなくて申し訳ないと思っておりますが、その代わりといいましょうか、外の状況のさまざまな場面で歳出と歳入の関係だとか、財政の再建の必要性とか、あと税制の見直しの必要性だとかということを私なりに訴えているんですけれども、その中で、国民の社会参加としての納税の必要性、つまり税金を払うのがいいんだと、消費税の上げに関しても必要なんだねという声はかなり浸透してきていると思います。
ただ、先ほどから何人の委員からも出ていると思うんですが、使い方を国に任せられないんだというふうなことをおっしゃる方が非常に多くて、つまりは政府、政治に対する不信感ということが、最近ますます強くなっていると思います。
その意味も含めまして、あと、ネガティブな話が出ていると、どうしても口を閉ざしがちなんですが、さまざまなところで講演なんかをしておりますと、例えば中小企業の経営者の方なんかも、実は大きな声では言えないんだけれども、幸田さん、うちはすごくもうかっているんだと、ただ大きな声では言えないんだよ、何かお金をもうけることが悪いことで、税金はそのペナルティーであるかのような考え方も実は一方にある。これはやはり考えなければいけない点かなと思います。
そういう意味も含めまして、今回の税調の目玉ということもありましたが、寄附税制に関する、先ほど税率を下げても税収を増やす方法はあるんではないかということとも関連するかと思うんですが、払える余地があるんだけれども、結果的にそれが節税というか、インセンティブになるような、あるいは自分の社会参加としての思いを表現する方法の1つとして可能性があるような、そういった工夫といいましょうか、メリハリといいましょうか、そういったことを考えていくのは、まさに税調の役割ではないかと感じます。
決してお金をもうけることが悪いことではなく、税金はペナルティーではなく、社会参加であるということは、本当に高まっていると思いますので、それをいわゆるポリティカルタブーのように、せっかく税調で話されてきたことが、例えば法人税の下げで国際競争力を活性化しようということが気運として高まってきたのに、選挙になった途端にそれが何かトーンダウンしてきたり、あるいは消費税に対する議論も何となく後回しにされかけているような、政治家の方がその辺を強く認識してくださって、ポリティカルタブーにしないでほしいというのが私の希望です。
以上です。
〇香西会長
井戸さん、どうぞ。
〇井戸特別委員
1つは、やはり課税最低限の在り方というのをもう一度きちんと議論しておく必要があるんではないかと思うんです。生活保護費よりも課税最低限の方が低いという実態をどういうふうに国民に対して説明するのかということがないと、所得税に対する、ある意味で一種の信頼感が揺らぐんではないかというふうに心配をしています。
2番目は、所得税に対する期待は、もう既にペーパーにも書いてあるんですが、特に今の段階では、やはりかなりの所得を得ている人に対して、それなりの担税力に見合った負担をしてもらうべきだという意見なり、見方が強いと思うので、それに対する対応の線を出していかないといけないのではないか。
3番目は、子育てとか少子化対策に税制がどれだけ寄与し得るのか、これは扶養控除の拡充と配偶者控除との関係をどう考えるかとか、いろんな意見が出ていますし、技術的な説明の仕方によっては理解してもらえる部分がかなりあるのではないかと思います。
4番目は、寄附税制に、やはりこれからもっと活用すべきだと思うんですが、所得控除方式がいいのか、税額控除方式がいいのかというのは、もう一度原点に返って議論してもいいのではないか。
特に所得控除方式ですと、限界税率が適用されますので、どうしても高所得者有利、寄附をするのは高所得者であるというふうに決め付けて割り切るのも一つの考え方かもしれませんが、税額控除ですと、税制としての機能は、所得に煩わされないという面がありますので、貧者の一灯を評価するということになるんではないか。どっちがいいのかというのも原点に返って議論した方が望ましいのではないか。
私は、寄附税制をもっと活用しようと思えば、税額控除方式にした方が、全額控除するかどうかは別の議論で、一定の限界の中で税額控除にした方がわかりやすいし、寄附者にとってみても、自分の税金が生きたということになるのではないか。そして、そういう不公平感も解消できるのではないかというふうに考えております。
以上です。
〇香西会長
どうぞ。
〇出口特別委員
寄附金について、そういう税額控除、所得控除を議論すべきだというのは、大変いいことだと思うんですが、結論からいうと、私は所得控除の方がいいと思っているんですけれども、どういう感覚があるのかというと、社会のために使ったお金は、税金の前にあるものなんだという考え方と、税というのは取られるのを前提にして、タックスエクスペンディチャーとしての寄付金控除とか税額控除があるのかという2つの考え方があると思うんですが、寄附する側の感覚からいうと、やはり課税ベースの中に、これがどうして入っているのという感覚があるわけです。
例えば、こういうのは通常もらっているお金というよりも、非常に変動的な一時的な所得から寄附することがあるんですが、そうしたお金を寄附した後に、それが課税所得の中に入って、後から税金が来るということに関して、やはり相当政府に対する不信感ができてしまうという点が1つあろうかと思います。
それから、さっき伊藤さんがおっしゃったダイナミックスというのは、勿論マクロの話だと思うんですけれども、格差社会におけるボトム層のダイナミックスを考えてあげないといけないと思うんですけれども、彼らの最初の目標は何かというと、そこから抜け出して、稼得所得を得て税金を払うということなんです。
実は、そのときの税金を払う喜びを感じている人たちというのは、非常にいっぱいいて、その人たちがある意味では一人前になるというストーリーを、やはり税調でもつくってあげないと、みんなとにかく全部サポートされるだけで、ずっと沈殿しているような形というのは、いかがなものかなと思います。
それから、さっき細かなことと申し上げたのは、10ページでいろいろ書いてある中で、真ん中からやや下のところについて、個人住民税についても法人の寄附同様に、都道府県境を超えた給付も対象とすべきではないかというのを私は申し上げたんですが、このとき申し上げたのは、私はもう一個意見がございまして、現在の企業の寄附は、都道府県境を超えて、控除の対象になっているわけですが、これは受益と負担の考え方において、法人の控除をなくすという考え方もあるわけです。そのことは申し上げたと思うんですが、総務省さんにお聞きしたいんですが、法人寄附のこの制度については、受益と負担の原則の範囲内という御理解でよろしいわけでしょうか。
〇香西会長
どうぞ。
〇原田市町村税課長
ここの今の法人の部分につきましては、法人税額を課税標準にしておりますので、そこの中で自動的に入ってくるということでございます。
ですから、法人に関する受益、正確に説明できるかあれですけれども、そういう技術的な話になって取り込まれているんではないかと私は思っているんですけれども、そこは、もしあれでしたら、後でちょっと説明させていただきます。
〇香西会長
どうぞ。
〇上月特別委員
個人所得課税関係というのは、意見等というのは、すっかりまとめていただいていて、私も拝見していて、よくまとめていただいていると思うんですが、これは両論併記になっていますね。賛成、反対、これをどちらでなされるのかという意見を1つお聞きしたいということ。
それから、この中に公平という観点から見たときに、やはり少し問題になるところが抜けているのではないかという気がいたします。
例えば、課税単位の問題のところでも、私も前に言ったんですけれども、例えば配偶者控除なんていうのは、二重控除ということで不公平だという問題が1点ありますし、それから、今、所得控除、税額控除のお話でも、人的控除の場合に、所得控除と税額控除だと、所得の多い方、少ない方によって、負担の額が違ってくるという、これは公平という観点から見ると、そういう問題も出てまいります。
それから、退職所得の問題も賛否いろいろあるかもわかりませんけれども、例えば短期間で退職されたとすれば、確かに退職所得控除は少ないですけれども、2分の1になるというのは全く一緒なんです。これなんかも公平という観点から見ると、やはりn分のn乗とか、そういう形での見直しが必要なんではないかと思います。
それから、最後なんですけれども、所得の捕捉率について、高木委員がいつもおっしゃるんですが、両論併記でここに書いてありますけれども、現在、やはり納税者の方は、事業所得者が悪いことをしていると盛んにおっしゃるんですが、所得の捕捉率というのは、この前の税調にも資料が出ておりましたけれども、かなり消費税が入ってから、しかも1,000万円という控除を、課税最低限が1,000万になってから、そういうものはほとんどなくなっているんではないかと、多少漏れているのは何とも言えませんけれども、先ほど幸田委員がおっしゃいましたけれども、では、もうかっていてどうなのかというと、例えば相続税の問題、事業承継税制、これなんかでも例えば利益がすごく出ていると、株の評価がうんと高くなって、相続税が非常に高くなる。所得が上がることによって、今度相続が発生すると、その評価が高くなって、たくさんの相続税を払わなければいけないというような問題がございます。
ですから、そういうところも関連していますので、今、納税者権利憲章というものは我が国にもありませんので、実際の納税者というのは、調査があると本当に大変な状況でもありますので、一方的な意見だけではなくて、少し中小、零細企業の立場もお話をさせていただきたいと思います。
〇香西会長
どうぞ。
〇田近委員
1つ追加で、1つは新しいことです。法人税について指摘させていただきたいんですけれども、井戸さんが貧者の一灯ということで、税額控除は貧者に役に立つのではないかということでしたけれども、あるいは所得控除だと金持ち、限界税率が高い人が税額を出してもらう額も多いので不平等だと。でも逆なんではないかと思うんですけれども、税額控除だと、所得が高い人は、住民税の1割まで5,000円で付け替えられるわけですね。
ですから、さっきの例で行くと、仮に1,000万の家族2人、夫婦子ども2人、1人特定扶養者がいる場合、収入1,000万で、その人が3万円「ふるさと納税」すると、5,000円で済む。だけれども、500万の人はもっと払わなければいけない。ですから、むしろ私の理解ですけれども、要するに住民税の早い話は1割まけてくれるわけですから、所得の高い人の方が、そこまで5,000円で済んでしまうということで、それはメカニズムとして私の理解と違うなという感じはしました。
あと、答申で、先ほどずっと出ている意見は、抜本という意味はどこにあるんですかということですけれども、法人税で何が抜本なのか、いろいろあると思うんですけれども、おおざっぱに言えば、法人税というのは、国で30%、そして地方で10%程度、そしていろんな調整がありますから、結果的には大体40%。それを国際的にどう考えるかというのは、大きな問題で、抜本というときには、やはり国と地方を併せて、日本の企業の税負担を相対でどう考えていったらいいんでしょうと。
恐らく、今年になって急に盛り上がっている、地方の法人二税の在り方が重なる問題だと思います。
ですから、抜本というときには、1つは、やはり何人もの委員の方が、これから先10年、日本はどうなんだ、あるいは日本の企業が活力を取り戻す、あるいはより元気になるためにはというような議論。
そして、勿論、それが法人税の税率だけで活力が実現できるわけではないし、私自身は、それに対してはできるだけ歳入中立的な形でやるべきだと思いますけれども、いずれにしても、税率を、つまり日本企業が払っている全体の税率はどうなっているんだという視点は重要で、どこかで企業活力というところで、触れてもらえればなと思います。
以上です。
〇香西会長
どうぞ。
〇翁委員
いわゆる給付付き税額控除のところで少し意見があるんですけれども、やはりこれは社会保障と一体的に設計すると、非常に意味があるんではないかと思います。
先ほど井戸委員や出口委員から、生活保護と課税最低限が逆転する場合があるというようなことの御指摘があったんですけれども、この負の所得税というのが、やはり生活保護と課税最低限の間に、ちょうどそういった給付があるというような設計にすることによって、課税後の所得というか、給付を続けた逆転した後の課税後の所得をシームレスな形にしていって、就労のインセンティブを付ける、または就労インセンティブを阻害しないようにするという形で設計することが非常に意味があるのではないかと思います。
〇神野会長代理
時間の関係がありますので、法人課税を含めて17ページまでお願いします。
〇香西会長
増渕委員、どうぞ。
〇増渕委員
法人税のところにいついくのかなと思ったんですが、田近委員が発言されたので、それならと思ったんです。田近さんが言われたことと、そんなには違わないんですが、私は税目、個人所得税のところでもそうなんですが、とりわけ法人税の部分では、結果として法人の税負担、あるいは公的負担をどう考えているんだというクリアーなメッセージを出すことが重要だと思うんです。
個人所得課税のところについても全く同じことを感じたんですが、いろんな個別の論点はありますけれども、その結果として、今度は政府税調としては、個人所得課税について、トータルとしてどう考えているんですか。負担増を考えているのか、負担減を考えているのか、中立を考えているのか。
総論のところにも関係しますけれども、全体として今度は、いろいろ言うとしても、メッセージとして、税負担は増えざるを得ないというメッセージを出すとすれば、それは個々の税目に今度はどういうふうに関わってくるんでしょうか。恐らく、消費税のところに集中して、そういう話が出るんでしょうが、法人税のところについては、一方で経済の活性化といいますか、グローバル化の中で日本経済の将来を考えるときに、法人の公的負担というものを国際的な整合性を持たせていかざるを得ないという視点は、どうしても必要なんではないかと思います。
しかし、一方で、トータルの税負担は増えざるを得ないというメッセージを出す中で、そういうことをうたうことの難しさというのは、当然あると思います。
ですから、実際にどういうメッセージになるかは考えなければいけませんけれども、少なくとも方向として、そういう考え方がクリアーに出されるべきだと私は思います。
もう一点、これは非常に細かい点なんですが、11ページのまとめの(2)の法人実効税率と実質的な企業負担の一番最後のところに、企業立地や投資活動に関しては、法人課税等の公的負担よりも、むしろそれ以外の人件費や立地条件などのさまざまな要因が重要というまとめがありますが、私はここまで強い議論があったのかなと思います。
勿論、人件費や立地条件が企業立地の選択、投資活動に関して重要なことはそのとおりですが、法人課税等の公的負担は重要でないとは私には思えないのですが、そういうことも重要なので、どちらも重要なので、その上で、特に日本経済の将来にとって、直接的な資本投資を日本の中に呼び込むということが大変重要だと思いますので、そういうことも考えて、法人課税等の公的負担を考えていくべきだと、私は思います。ここまで強い議論があったとは、私は記憶していないです。
以上です。
〇香西会長
最後の点は、専門委員の報告の中に、これに似た表現があったように、私は記憶しております。そういう方がいらっしゃったことは事実でございますね。
〇増渕委員
もし、そうだとすれば、若干プロテストをしたいですね。
〇香西会長
このところは国際経済学と租税論とが両方重なっている領域なんですね。それについての報告で、こういうことが書かれていたことは事実です。
ですから、それを採用すると決めて、ここへ入れているわけではなくて、そういう議論があったということを考えています。
私がしゃべると長くなるから、今日は聞くに徹した方がよかったですね。どうぞ、もう時間が迫っておりますので、どうぞ。
〇原特別委員
先ほどの技術を生み出すような中小企業に対しての投資減税というものをすると同時に、財務省に考えていただいたらいいと思うのは、今までの法人税とは違うタイプの税金、新しいタイプの税金ですが、これはアメリカとかヨーロッパでも問題になっていますようなヘッジファンド、こういうファンドのもっている巨額なキャピタル・ゲインというものをアメリカみたいな自由な国でさえ問題になってきています。
ですから、こういうタイプの巨額なファンドが投機資金として商品や通貨と対象にキャピタル・ゲインを得た場合の新しいタイプの新税ですけれども、名前は何と付けたらいいかな、金融投機税みたいな、そういうふうな税金をもし日本が合理的な仕組みを提案できるのならば、これはヨーロッパなどもこうしたものに対して、いい形で反応してくると思いますから、こういう税目をつくって、今までとっていないところからとる。こういうファンドというのは、昔からありますが、アメリカにおいては、リミテッド・パートナーシップですとか、リミテッド・ライアビリティー・コーポレーションという形式をとって、パス・スルーのエンティティーとして存在してきましたけれども、特にノーベル経済学賞をとっている、マイロンショールズとか、ああいう金融工学の権威の人たちがつくったメカニズムで、おかしなぐらいゼロサムゲームのマネーゲームを行う人たちが増えてきている。ここに対する過大な所得の配分を少し是正してもらうようなものを日本が考えていくということを、是非税制調査会から財務省にお願いするというようなことを含めばいいと考えています。
〇香西会長
どうぞ。
〇山田委員
前回法人税の課税のときには、私はちょっと出席できなくて、意見を書面で出させていただいたんですが、それで直接法人税そのものの議論と、ちょっと視点が違うんですが、企業会計と法人課税の在り方という視点で申し上げたいんですが、端的にいいますと、例えば企業会計上は損益として認識しなければいけないものが税務上は損金にならないとか、そういう形での会計上の認識と税務上の課税所得との間に差異が生じることがある。
これは、現在でも有税償却とか、そういうような形で企業会計と税との間である種の関係が認識されてでき上がっているわけですけれども、私が1つ申し上げたいのは、今後、グローバル化という観点の中で、ここで言っている12ページの冒頭にあるグローバル化というのは、税率ないしは税の扱いのグローバル化だと思うんですが、もう一方で、企業がさらされているものとしては企業会計のグローバル化というものがありまして、そのグローバル化に対応しなければいけない状況の中で、実は法人税がグローバル化の足かせになるということがある。
例えば、典型的にあるのは、のれんの償却なんですけれども、企業結合の会計基準が、ちょっと長くなりますけれどもすぐ終わりますので、企業結合の会計基準をやったときに、日本だけが、世界的にはのれんというのは償却しないんですが、日本は税務上の営業権の償却という企業がメリットを得たいがために、のれんの償却というのを世界中が、実はその反対の方向へ動いているのにもかかわらず、会計基準としては残した。それが日本の会計基準の後進性という中で、非常に世界の中で逆の評価を受けているわけですが、今後、企業会計が国際的なグローバル化の中で、統合化を必要とされるときに、税がそれの足かせにならない。ないしは、その企業会計とは別の論理を税が持つのであれば、持つ必要があるし、これは短期的な答申という中では難しいかもしれませんが、長期的な課題として、企業会計と税の在り方というのをきちんと整理していく必要があるんではないかと、この前、そういうことを申し上げまして、今回、それを改めて申し上げさせたいと思いまして、意見を述べさせていただきました。
〇香西会長
申し訳ありませんが、55分には明け渡しをしなければなりませんので、本日は残念ですが、これで一応解散することにしたいと思いますが、いろんな御意見が出ました。ここで意見を闘わすことも非常に有意義だと思いますが、具体的な提案のメモのようなものをいろいろ出していただければ、それはまたそれで大変勉強になると思いますので、そういったこともお願いしたいと思います。
次回でありますけれども、大体今日は13ページの地方法人課税の前まで一応いったと考えておりますので、次回は11月9日午後1時30分から4時30分までということで、今日議論できなかったところを議論させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
また、9日以降の日程につきましては、事務局から改めて御案内をいたします。あるいは御相談をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
本日の総会はこれで終わります。大変長時間にわたりまして御議論いただいてありがとうございました。
ということで本日は解散いたします。どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。