総会(第4回)終了後の香西会長記者会見録

日時:平成19年1月22日(月) 15時30分~
場所:中央合同庁舎4号館共用第一特別会議室

司会

ただ今より、税制調査会総会終了後の香西会長会見を行います。

まず、本日の総会において新たに会長に就任されました香西会長より、会長としての抱負を述べていただきたいと思います。

それでは、香西会長、よろしくお願いいたします。

香西会長

本日は、総会が開かれまして、その席で会長に互選されました。私、そのことについては、大変な役に就いてしまったものだと思って、改めて非常に緊張しているところであります。

本日の総会では総理からご挨拶がございましたが、今回の税調については、総理の諮問にもありますように、調査会の使命は、少子化、高齢化、経済のグローバル化をはじめとする大きな経済社会の構造変化に対応して、それぞれの基本的な税の税目が果たすべき役割を見据えて税体系全体のあり方を詰めて議論するように、そのための調査・分析、審議を行うようにということで、それが課題であると私も考えております。今回の諮問は、紋切り型の税制如何というようなことではなくて、問題意識をかなり織り込んだ諮問になっておりまして、とにかくそれをこなしていくことが非常に大事なことであろう。欠けているものがあれば、それはもちろん足さなければいけませんけれども、そういう問題提起が既に総理からあったわけですので、他の問題も含めて、それに対して十分応える体制をつくっていきたいと思っております。

したがって、この方針に沿ってといいますか、その問題意識を満足させる形での税制、課題はそれだけでないかもしれませんけれども、少なくとも問題があると諮問されたことも含めて、そういった大きな税制について問題意識を持ちながら、基礎的な調査・分析をしっかりやるということも大事なことであると思っております。調査・分析というと、どうしても専門的になって細かい話になりがちですけれども、絶えず大きな問題への関心というものを強く持ちながら、調査も行い、分析も行い、それから、いろいろな意見を交換していくことが必要だろうというふうに思います。

もう一つは、「平成19年度の税制改正に関する答申」、これは私は審議に参加しておりませんけれども、現委員の方々の大変な努力でまとめられたものと聞いております。税調としても、国民に説明責任を果たすことが重要だと言われています。私としましても、今日、官房長官も言われましたけれども、やはり国民にわかりやすい説明ができるようにしてほしいということがありましたが、広くそういった国民の期待に応えることが必要だろうと思っております。

自由討議をさせていただきまして、部会の設置等についても、調査・分析のテーマ等についても何人かの委員からご発言がありました。会長が独走しないようにというご注意もいただきました。こういった点については、2月にも企画会合を開く予定にしておりますけれども、具体的なテーマやその方法、メンバー、誰が分担するかといったことは、これから相談して決めていくということで考えております。

記者の方々にも傍聴していただいたかと思いますので、その議論の内容について紹介はしないで、とりあえずそれだけのことを申し上げておきます。いずれにしても、初年兵が急に会長になってびっくりしているわけですけれども、委員の皆様方の意見を十分聞いて、それをとりまとめていくことに努めてまいりたいと思っております。

とりあえず以上ですが、よろしくご指導をいただきたいと思います。

司会

ありがとうございました。

それでは、ご質問のある方は挙手をお願い致します。

質問

前会長のときに出た昨年の答申で、基本的な考え方としては、まず経済の活性化を重視するという考え方がありまして、その中の特徴として、法人実効税率の引下げについて今後の検討課題として問題提起されたということですけれども、新会長も、これからの議論の中ではこの路線は基本的に引き継いでいくお考えなのでしょうか。

香西会長

私個人は簡単に言えば今まで経済評論家でしたから、自由自在に議論させていただいていたのですけれども、現在は、まだ1時間半もたっておりませんけれども、一応会長ということでありますので、そういったことについても、委員の皆さんの流れといいますか、そういうものの中で決めていきたいと思っております。法人税の実効税率について議論をする必要があるということは、ほぼそうなるのではないかと私も思っておりますけれども、どういうふうにやっていくかというところまで、今、考えているわけではありません。今日も、会長が思うように、あまり独走しないようにというご注意もいただいたばかりですので、その点は慎重に皆さんのご意見も聞きながら大きな問題を取り上げていく。

しかし、「企業に国境なし」という時代でもあるというご指摘もあったわけですので、一つの話題になり得る可能性はあると見ておりますが、今すぐどうこうしたい、これをここへ落ち着けたいというようなことは考えておりません。改めて税調のご議論を静かに聞いて流れを探っていきたい、こういうことであります。

質問

もう1点ですけれども、消費税の問題です。以前から安倍総理をはじめいろいろな政府の方が、秋以降、本格的な論議に入るということをおっしゃっています。一方で、昨年、経済財政諮問会議では、4月頃までに政府税調から大きな方向性を税制について示してほしいという要請もありましたし、6月頃にできる「骨太の方針」の中でも何らかの形で言及することになると思いますけれども、消費税の問題については、今年の前半、どのような扱いをお考えなのでしょうか。

香西会長

これは今のところ、とりあえず実質的な勉強といいますか、今日は、実態の把握から始めてという意見もありましたが、大きな問題については調査をしながらこなしていく。そして、その中でだんだんと流れが築かれるであろう。官房長官からも言われたのですけれども、専門家として判断するということで、それは単に理屈ということだけではなくて、私の考えでは、いろいろな検証をする必要もあると思っております。そういったことを進めながら考えていくことになるだろうと思います。

前半は調査・分析を中心にやって、秋以降、全体の税体系の問題をしっかりと具体的に議論するというのは、政府の方針として国会答弁でも行われていたのではなかったかと思います。つまり、政府としてはそういう方針を固めておられることは念頭に置いて、それに間に合うように、ということになろうかと思います。

司会

ほかにございますか。

質問

去年の年末に、前の会長の本間さんが官舎の入居問題で辞められましたけれども、そのことをどう受けとめているのかということと、それで政府税調の権威も傷ついたという指摘もありますが、これについて香西会長は、どのように取り組んで回復していきたいとお考えになっているのか、お聞かせください。

香西会長

前会長がご辞任された経緯、その他について、私はあまり詳しく存じているわけではありません。しかし、個人的に言えば、学者としての本間先生の業績やご努力、信念、その信念を生かそうとする情熱、実行力、これはすばらしいものだったので、大変尊敬しておりましたけれども、一身上の事情で辞めざるを得ないということになられたのは、私どもにとっても非常にショックでありました。

一つには、私が会長になったからますますそうかもしれませんが、やはりそれによって若干の時間を費やしてしまって、大変忙しくあるべきときに遅れたということは事実で、これをまず軌道に乗せて、審議態勢を早く整えることが私の第一の任務であると思います。

もう一つは、本間先生が辞任されたのはあくまで個人的な理由ということになると思いますけれども、そのことによって、ご指摘のあったように、政府税調としてのあり方等が厳しい目で見られるようになったことは事実かもしれません。私どもはこの経験を踏まえて、租税の議論でない場面においても、つまりそういった個人的な事情についても、国民の納得を失うことがないように自戒していきたい。いずれにしても精力的にといいますか、ある限りの力を利用して税体系の問題を詰めていく。つまり、本来の税調の役割に徹して献身するといいますか、そういうことが一番大事な信頼回復の道になるのではないかと考えております。

質問

1つ前の質問のところで、秋以降の議論に備えてそれに間に合うようにというご発言があったかと思います。スケジュール的に例えばどのようなタイミングで、税調としての考え方をとりまとめるであるとか、その際はどういう税目がテーマになるのであるとか、今年の前半あたりのスケジュールを教えていただけますでしょうか。

香西会長

まだ私、言い訳するわけではありませんが、2時間前まではなかったポストに就いているので、私が突然そういうことを全部取り仕切るというわけではない。これは、流れができてきて初めて言えることであると思います。前会長も、先ほどちょっとお話になった、諮問会議に出てどういうふうに説明してくれとか、そういうことに対して何ができるか、そのときにならなければ実はわからないので、それを一生懸命やって、その段階でできることしか言えない、というふうに言っておられたということも聞いております。とりあえず私としては、調査・分析、意見の交換、これをしっかりと軌道に乗せていくことが当面の課題であります。2月にもそのために会合を開きますけれども、そこまでまだ十分な見通しは、率直に言って持っていないということです。

ただ、問題がそこにあるというか、どういう問題があるだろうかということははっきりしている面もありまして、大きく言えば、全税目といってもそれはたくさんありますが、将来の日本の税制の中で基本になる税についてはひと通り議論していくことは絶対に必要なことです。これは一つの税だけではなくて、その組み合わせということがやはり重大な問題でありますので、基本部分についてはとりあえず何とか詰めて検討しておく必要があるだろう。それが間に合うかどうかというのは、今のところ、ハラハラしながらとにかく歩み出そうという状態であると、ご了解いただきたいと思います。

質問

税目の議論をする際に、消費税以外の所得税や資産課税については、消費税を引き上げる場合と引き上げない場合と、議論の方向性あるいは税目の見直しのあり方は大きく変わってくると思いますけれども、議論するにあたって消費税問題をどのようにとらえていくのか。それから、法人税の引下げについても消費税とリンクして考えるのか、そうではないのか。また、これまでの税調では「中期答申」という形でまとめていたと思いますけれども、そういった問題をこの秋以降に、そういう中期的なあり方としてまとめるのか、それとも19年度改正の年度答申としてやるのか、その辺のお考えをお聞かせいただけますか。

香西会長

これは、まだはっきり言えないといいますか、そこまで詰めて構想を固めているわけではありません。しかし、おっしゃることは確かに非常に大事なことで、消費税をどうするかによって、他の税への影響ということももちろんあるだろうと思います。また逆に言えば、例えば資本の移動が激しくなってくる中で、金融関係の税金とか、これは法人税にもそういう動きが出てくるかもわかりませんが、そういう中ではどういう税制が必要なのか、そういう論点もあるかもしれないと思います。海外の税制改正などを見ていると、そういったような議論をしている国もあるということですから、必ずしも消費税とか法人税とかに限らないで、将来のグローバリゼーションなり、それから、今日もちょっとお話が出ていましたけれども、法律改正も非常に盛んで、信託課税、新しい信託とか、そういうふうに制度自体がどんどん動いているという点もありますので、その辺の流れも見ながら考えていくということで、必ずしもすべて消費税と何かというふうに、それだけで議論することはできないのではないか。

そういう点では、世界的な税制改正の流れとか、日本の会社制度あるいは社会保障制度がどっちへ動くのか、かなり幅広い論点から議論しなければいけない。そうなると税調だけの仕事でなくなってくるわけですけれども、私としては、その中の一部を占めて、政府全体のバランスも考えながら落ち着くところへ落ち着けていくように努力したい。こういうことで、今の段階できれいなマップができているというわけではない。申し訳ありませんが、そういう状態であるということです。

質問

今回、内閣府が参考試算で「中期経済見通し」を出されています。歳出・歳入一体改革を考えた場合に、前提とする不足分がどれだけあるのかによって税制議論というのをかなり大きく左右すると思うのですが、もともとマクロ経済の分析では香西さんは専門家であるので、この辺と税制との考え方についてはどういうふうに見ていらっしゃるのか、お願いします。

香西会長

この間、諮問会議の「日本経済の進路と戦略」を拝見しましたけれども、税制についてもそこに触れられております。税制のあり方はどうあるべきかということが書いてあって、その中身は、目先のプライマリーバランスをパスするということだけが目的ではないというか、それで完成ではないということです。それとは別に、少子化、社会保障、年金等、その他も含むのでしょうが、そういったことについての対応が安定した財源で賄われることが必要だというふうに、あそこにも書いてあるわけです。したがって、短期の景気循環の予測とは違った形で将来の税制は計画されていくことが必要だというふうに、大体そういうニュアンスが読み取れるように書いてありますから、景気だけで棚ぼた式に税金が入ってきてくれることは大いに嬉しいことですけれども、それは一方では、安定的な財源を求める必要があることも認識されている、そういうふうに理解しております。

質問

安定的財源が必要というのは、例えば大田大臣がテレビ番組で増税必要なしというような発言をされて、撤回されることになりましたけれども、もっと長いスパンで見れば何らかの増税は必要なんだ、というのが香西会長の考え方になるわけでしょうか。

香西会長

増税しなくていいような成長が実現すれば非常にありがたいことですね。もちろん、その中でもいろいろな税制は変えていかなければいけない。例えば国際的な関係で国際課税をどうするかとか、そういった問題はこれからもどんどん深刻な問題として起こる可能性がありますから、そういったことはやっていかなければいけないわけです。単に金さえあればいいということでもないと思いますから、それは、将来の成長戦略が成功するかどうかにもずいぶん依存していることだと思います。

質問

まず1点目ですけれども、調査・研究、広報・広聴の部会を置かれると。これは本間前会長の路線の継承と考えていいのでしょうか。それから、香西会長ご自身が独自でカラーを出していく点はありますでしょうか。

香西会長

まだ独自色を出すほど時間がたっていないと思いますが。本間路線と言われますけれども、本間先生が会長になられて、本間先生もちゃんと委員の発言を踏まえておられたと理解しておりまして、独裁的に本間先生が何か推進していたということではないだろうと思っております。そして、全体として与えられた課題として、活性化が必要だとかそういうことは諮問の中に既に書いているわけですから、それを取り上げるのが本間路線だと言うにはあたらないというふうに思います。

調査・分析については2つのことが必要で、1つは、検証するということをもう少しできないものかと思います。つまり、税が本当にどういう影響を与えているかというようなことです。そんなことができるかどうかは別ですが、法人税についても、法人税を上げたら価格を上げたかもしれない、そういう議論もあるわけです。誰が法人税を払っているかというと、例えば下請けを叩いたかもしれないとか、その影響というのを把握するのはなかなか難しい話ですけれども、そういうことについても若干の研究は国際的にいろいろなところで行われてもいるわけですし、そういうものをうまく使って税の効果をもう少し明るみにできないか。

勝手に名前をつけているのであれですけれども、医療経済学で「Evidence-Based Medicine」という言い方があります。それをあえて気どって名乗れば、「Evidence-Based Tax Policy」が、すぐできるとは言っていないですが、どんどんそういう統計技術は発達しています。なかなか簡単に結論は出ないと思いますが、少しはそっちの方向に動いていくことが、税の議論を整理する上でも役に立つのではないかというのが私の密かな希望です。これは、すぐそうなるとか、すぐできるとかいう問題ではないわけです。

しかし、そういう方向に議論を持っていくことを政府税調がするとすれば、ほかの税の議論をされるところはいろいろあるわけですから、政府税調の一つの機能として、そういう方向への道を探っていくこともあっていいのではないか。それですべて税制がきれいに割り切れるなどとはとても言えない状態です。それはオモチャの鉄砲で戦争するようなことになりますから、言えませんけれども、しかし、そういう試みをやっていくこと自体は、私は、ぜひやってほしいというふうに思っております。

それから、広報・広聴について言えば、会社でもPRというと大体、説得、宣伝になるのですが、最近は、企業はIR(インベスター・リレーションズ)という形で、もっと高度な、例えばアナリストなども含めた相手といろいろ討論をする。大会社の社長さんなどはアメリカへ行って英語でしゃべって、結構辛辣なアナリストの質問をかいくぐって、そこで社債が発行できるというような形になっているわけです。そういうインベスター・リレーションズという形があります。単にお知らせする、悪く言うと上意下達ということだけではなくて、お互いに対話していく形の中で、もう少し質の高いタックス・ペイヤー・リレーションシップが築ければいいなと。これも私の夢でありまして、すぐできるということではありませんけれども、そういう方向に向かないかなという個人的な希望は持っております。これはいずれにしても、各委員からご意見を聞かなければいけないことだと思います。

税の決め方については、既に憲法に納税の義務があって決められていて、あとは法律で決めるということになっているわけです。そのプロセスは民主主義の大原則というか、基盤ですから、それはそのままでいいのですけれども、税の制度を考える人間とタックス・ペイヤーとの間の意見交換といいますか、情報交換といいますか、そういったものをもう少し質を高めていくことはできないだろうかということを、あくまでも素人として--これは会長になったその日だから勝手に言えるので、やってみたらどうなるかわかりませんけれども、そういう望みを持っております。

質問

本間前会長は、調査・分析の方法として、若手の学者を専門委員に登用されていくという方針を示されていました。この点をどうされるかという点と、もう一つ、総会でおっしゃっていました、ほかの審議会との連携です。具体的には特に年金や社会保障、これが大きな問題になるかと思いますが、この点をどのように連携していくのか、その辺の道筋を教えてください。

香西会長

専門委員については、2月に企画会合をやりますが、その席でももう一度しっかり議論してやりたいと思います。全部が全部、調査会の中でやるということではなくて、そういった研究をしている専門家の方に、いろいろ既存の研究などを提供していただくことも十分考えられると思います。したがってどういう形が一番いいのかは、私の腹の中では、何人かの委員の方にいろいろな問題について責任分担をしていただいて、その方の手元にいろいろな過去のエビデンスを集めていただくとか、新しい調査を考えていただくとか、新しい分析を考えていただくとか、そういうことをお願いしたい。そして、その方々が必要であれば、専門委員という形で協力を得ることにしたいと思っております。

もう一つは……。

質問

ほかの審議会との連携です。

香西会長

これは私どもとしては、必要があれば、ほかの審議会にこちらの考えていることをお伝えする。向こうからも、こういうふうに考えられないかというようなことがある程度出てくる。それが政府の中で出てきて、例えば諮問会議を通じていろいろな意見が交換されることになるのか、実際のネットワークとしてどういう形になるか、これは私だけで決めることではありませんが、税制改正、社会保障改革、地方と中央の関係の改善、いろいろな改革を進めております。お互いの主張がどこかでは調整される必要があるので、私どもとしても、税の立場、納税者の立場、税のあり方の立場から、主張すべきことは主張していくことが必要だろうと思っております。

質問

ちょっと確認ですけれども、先ほどの総会の場で、会長はたしか、2月に企画会合をやって、3月に部会の設置を正式に決めるというようなお話をされていたと思います。この部会のテーマはどんなものを具体的にイメージされているのか、改めてご説明いただきたいというのが1点です。2点目はまた後でお伺いします。

香西会長

その点については、今日、吉川先生からご質問があって、吉川先生は現状をちゃんと把握することも必要だと言われましたけれども、吉川先生が取り上げるべきだとおっしゃったような問題は当然含まれているというふうにお考えいただければ、一つのイメージになると思います。あのときは3つぐらいお挙げになったわけですね。所得分布の問題、税の負担の分布の問題というのも一つありますし、法人税の話もありましたし、そういったことはやる。それから、新しい法律が出てくるときに対応するということについては、至急何か考えたほうがいいではないかというご質問もありました。あれも含まれていると思います。

3月にといいますか、私が言いましたのは、2月中にどんどんできるものから、チームというのか研究者を委員の間で分担するならするで、スタートしてほしいということを言いたかったわけです。総会には全員が出ているのですから、繰り返す必要もないのですが、総会が開かれているときがあれば、それをまとめてフォーマルにきちんとするということで、実際の仕事は2月から始めるようにしてほしいというふうに希望しております。ただ、これはそううまく行くかどうかはまだわかりませんけれども、流れ解散ではなくて、流れ出発みたいな形で早く軌道に乗せたい、こういうことであります。

質問

それともう1点です。ちょっと違う話なのですが、従来の税制の政策決定のプロセスについて、会長のお考えをお尋ねします。従来ですと政府税調が年度答申というものを出して、大まかな方向性のようなものを決めた後に、自民党の税調、特にその中でも専門知識を持っている一部の有力な議員の方を中心に、個別の中身について詳しく詰めていくという、役割分担といいますか、事実上、自民党の税調が決めているというのがこれまででした。本間前会長はこのことについて、透明性にやや問題があるのではないかみたいなことをおっしゃっていたと思いますが、この点について会長のご意見というのはどのようなものでしょうか。

香西会長

私、実はそういう経験が今までないものですから、従来がどうであったかということ自体、あまりよく承知しておりません。体験しておりませんから、承知しておりません。しかし、先ほどもちょっと言いましたが、納税の義務は憲法に書いてあって、税法というのは国会で決めることになっている。これは民主主義の基本原則だろうと思います。議会政治ですから、その中で政党というものが大きな役割を演じている。それが今の仕組みだろうと思います。もちろんその際、いろいろ意見が食い違うこともあるだろうと思います。それについては、最後の結論は法律を通すことで得られるわけであって、しかし、主張としては主張して、その年に実現しなくても次の年にという形で従来もやっておられたのではないかと思っております。

それから、トランスペアレンシーのほうは私にはまだ経験がないので、何とも申し上げられませんけれども、政党のほうも結構情報は発信しておられるような印象で、例えば政調会の議論など、誰が何を言ったかというのはわりに記者会見でも……。昔のことですけれども、私は元役人だったものですから、聞いていると、ずいぶんあけすけに、何先生がこう言って、何先生がこう言ってというようなことを言っておられたような記憶もありますので、実はどういうところに不透明性があるのかということは、私からは、経験がないので感想を言うことはできないと思います。

質問

それでは、政府税調の使命といいますか、役割ですね。最終的に確かに議会制民主主義ですから、政党が決める。租税も法律主義でやるというのはもちろんそのとおりだと思いますけれども、では、そういう中での政府税調としての使命、役割はどのようなものだととらえていらっしゃいますか。

香西会長

実は今日、官房長官が言われたことは、別に談合して挨拶していただいたわけでは全くありませんけれども、私個人としては、よくぞおっしゃっていただいたという気持ちでおります。専門性を持っているということと、国民に対してわかりやすい言葉で説明する責任がある、この2点はほかにもあると思いますけれども、政府税調として非常に重要だと私も内々思っておりました。今日の官房長官のご指摘に対しては、吉川先生も、これは我々の責任であるというふうにおっしゃって受けておられたのですが、そういう気持ちが非常に強いということです。今日のところは、それでやはり頑張ろうという気になったということであります。

司会

ほかにございますか。

質問

先ほどの「進路と戦略」の関係です。戦略の中では、基礎的財政収支が黒字化するのは最善のケースだけなんですけれども、会長のお考えでは、最善のケースでさえも、将来の社会保障とか年金のことを考えると、安定的財源として増税の可能性を検討しておいたほうがいいというお考えなのでしょうか。

香西会長

最善のケースというのがどういうケースかわかりませんけれども、それは予測の問題なんですね。つまり、成長率がどれで行くかという予測の問題ですから、その予測によって結果が異なってくるということになります。しかし、安定した財源を持たなければならないということは、最善であろうと最悪であろうと、とにかく安定した財源がないと少子化も乗り切れない。そういう意味では常に必要なことです。それが、うまく自然増収の範囲でとか、現在の税制を変えないでそうなれるかどうかということは、一つは経済の見方の予想の問題で、今の段階でどっちかの予想にだけかけて結論を出すということではないと思います。

例えば社会保障を、保険料を取って国民負担にするのがいいのか、別の税金を投入してやっていくのがいいのか。そういう問題は制度の問題で、成長率によって急に変えるわけにいかない制度の問題でもありますので、そういうときに税の体系はどうあるべきかというのは、常に議論していかなければいけないことだというふうに考えております。必ず増税しようとか、しないで済むだろうとか、今の段階で私は予言する自信はないということです。

司会

ほかにございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、ご質問がなければ、これで会見を終了させていただきます。

香西会長

どうも、これからもよろしくお願いいたします。ご指導いただきたいと思っております。(了)