総会(第4回)議事録
日時:平成19年1月22日(月)14時00分~
場所:総理大臣官邸大ホール
〇神野会長代理
定刻を過ぎましたので、ただ今から、第4回税制調査会総会を開催したいと存じます。
本日は、ご多用中のところをご参集いただきまして、本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げます。本間会長が昨年末にご退任されましたので、税制調査会令第2条第3項の規定によりまして、私がしばし司会を務めさせていただきたいと存じます。
本日は、お手元にお配りしていると思いますが、議事予定に従いまして議事を進めていきたいと思います。審議の状況によりまして、若干の時間延長があり得ますので、あらかじめご承知おきいただければと存じます。
本日の議事に入ります前に、委員に異動がございましたので、ご紹介させていただきます。
12月27日付で、日本経済研究センターの特別研究顧問をされていらっしゃいます香西泰委員が任命されました。よろしくお願いいたします。
〇香西委員
香西でございます。よろしくお願いいたします。
〇神野会長代理
それでは、議事に入らせていただきます。
まず初めに、税制調査会令第2条の規定によりまして、会長の互選及び会長代理の選任を行いたいと存じます。
会長の選出につきまして、ご意見がございましたら、お出しいただければと思います。
増渕委員。
〇増渕委員
今後、私どもとして、税制と経済財政、あるいは企業会計との関係を分析し、あるべき税制についての議論を行う上で、政策現場と学識の場の双方でこれまで多大な貢献をされ、経済全体に対して造詣の深い香西委員が会長に最適任と考えますので、推薦いたします。
〇神野会長代理
ありがとうございました。ただ今、香西委員を会長に推薦する旨のご意見がございました。ほかにご意見ございますでしょうか。
翁委員、どうぞ。
〇翁委員
私も、増渕委員と同様に、豊富なご経験に基づく、すぐれたバランス感覚をお持ちの香西委員が会長に適任なのではないかと思います。
〇神野会長代理
ほかにご意見ございませんでしょうか。
それでは、ご異議がないようでございます。皆様の互選によりまして、香西委員に会長にご就任いただくことに決定させていただきたいと思います。
それでは、香西委員には、会長席にお移りいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
〔香西委員、会長席に着席〕
〇神野会長代理
税制調査会令第2条の規定によりますと、会長代理は会長があらかじめ指名することとされていますので、香西会長から会長代理のご指名をお願いいたします。
〇香西会長
私といたしましては、これまでも会長代理をお務めいただいております神野委員に、引き続き会長代理をお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
〇神野会長代理
ただ今、香西会長より、引き続き私に会長代理をというご指名がございました。私の能力、その他を考えましても、本来は固辞すべきところではないかと思いますが、かえって混乱を招くことになるかと思いますので、お引き受けさせていただきたいと思います。皆様方にはよろしくご協力方、お願い申し上げます。
それでは、私の議事進行はここまでとさせていただきまして、これから後は会長の主宰によって議事を進めていただくことにいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
〇香西会長
ただ今、委員の皆様の互選により会長を拝命することになりました。まことに重大な責任を負ったものと重く受けとめているところでございます。よろしくお願いしたいと思います。
これ以降は私が議事進行をさせていただきたいと思います。
まず最初に、安倍総理大臣から、ご挨拶を頂戴する予定になっております。間もなくご到着というふうに聞いておりますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
〔総理入場〕
〇香西会長
それでは、総理がご到着でございますので、早速でございますけれども、総理大臣からご挨拶をお願いいたします。
〇安倍内閣総理大臣
税制調査会総会にあたりまして、ひと言ご挨拶を申し上げます。
昨年末、この調査会においておとりまとめいただいた答申を指針として、政府の税制改正案を決定することができました。まず、このことに関し委員の皆様に厚く御礼を申し上げたいと思います。
19年度政府予算案は、きわめて厳しい我が国の財政状況を踏まえ、成長力強化や再チャレンジ支援などにも配慮しつつ財政健全化路線を堅持したものといたしました。その結果、新規公債発行額について過去最大の減額を実現し、一般会計のプライマリーバランスも4年連続で改善し、その赤字幅は本年度の半分以下となっております。
税制改正については、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、我が国の成長基盤を整備する観点から、減価償却制度の抜本的見直しを行いました。また中小企業について、留保金課税を廃止することや住宅ローン減税の特例の創設など、国民生活等に配慮した、中小企業関係税制や住宅・土地税制等についての所要の措置を講じたところであります。
我が国の財政状況を踏まえれば、今後とも、歳出・歳入一体改革の議論に正面から取り組んでいく必要があります。税制面では、18年度決算の状況などを踏まえ、本年秋以降に本格的・具体的な議論を行い、平成19年度を目途に税体系の抜本的改革を実現すべく取り組んでまいりたいと考えております。また、この取り組みを円滑に進めるため、税制改革の基本的考え方について着実に検討を進めることが必要であります。
委員の皆様にも、新会長のもと、引き続き精力的なご審議を賜わりますように、よろしくお願いさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〇香西会長
ありがとうございました。
僣越ですが、次に私から、会長就任にあたってのご挨拶をひと言申し上げたいと存じます。
このたび、図らずも税制調査会の会長という重い責任を負うことになりまして、身の引き締まる思いでおります。皆様方のご期待に沿えるよう全力を尽くしてまいりたいと存じておりますが、何分にも税調委員としましては全くの初心者でございますので、皆様方のご指導、ご支援を賜わりますように心からお願いしたいと存じます。
昨年末、税調委員を拝命いたしましてから、安倍総理の諮問、あるいは年末にまとめられた「平成19年度の税制改正に関する答申」等を読ませていただきました。総理の諮問にもありますように、この調査会の使命は、少子化、高齢化、経済のグローバル化をはじめとするわが国の社会経済構造の変化に対応して、各税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体のあり方について、調査・分析、審議を行っていくことであると考えております。
このため、経済、社会、法律など幅広い分野における研究者、実務家、有識者の方々が参加されておられます。その専門能力を生かして、税制と経済、財政、企業、家計がどのようにかかわるのかといった調査・分析を行いながら、総合的な税制改革のグランドデザインを国民にわかりやすく示していく必要があると存じます。私自身は、内閣府の経済社会総合研究所におりましたときに、さまざまな構造変化を勉強する機会もございましたけれども、今後、税制調査会としても税制のあるべき姿を描いていく際に、そうした経験が少しでもお役に立てばというふうに考えております。
政府は、中長期的視点からの総合的な税制改革について、先ほど総理のご挨拶にもございましたが、本年秋以降、本格的・具体的な議論を行い、19年度を目途に実現するべく取り組んでいくというご方針を固めておられると承っております。今後、本調査会はこの方針に沿ってあるべき税制の姿を検討していくこととなります。これにつながる基礎的な調査・分析を、当面しっかりと行っていく必要があると思っております。その際、税制改革の前提となる経済や社会の構造変化、将来像について深く掘り下げながら調査・分析を行い、委員の間で共通認識を持つ必要があろうと思います。いずれにしましても調査・分析の項目や方法については、今後、委員の皆様のご意見を承りながら進めてまいりたいと思います。
また、「平成19年度の税制改正に関する答申」で述べられているように、国民に説明責任を果たすという観点もきわめて重要であると思います。国民にわかりやすい情報発信に努めると同時に、税制論議にあたって広く国民各層の声を聞いていく必要もあろうかと思います。
会長就任にあたっての考えをとりあえず述べさせていただきましたが、今後の進め方については、委員の皆様方のご意見を承りながら、相談しながら進めてまいりたいと思いますので、ご支援のほどを特によろしくお願いいたします。
以上であります。
日程のご都合もございまして、安倍総理はここで退場されます。お忙しいところを、わざわざありがとうございました。
〔安倍総理退場〕
〇香西会長
続きまして、財務大臣、総務大臣、官房長官からご挨拶をいただきたいと存じます。
まず、尾身財務大臣、よろしくお願いします。
〇尾身財務大臣
財務大臣の尾身幸次でございます。税制調査会総会の開催にあたりまして、ひと言ご挨拶申し上げます。
昨年12月、本調査会に「平成19年度の税制改正に関する答申」をおまとめいただき、その後、税制改正の内容を決定することができまして、次期通常国会に関係法案を提出することとしております。改めまして、皆様のご尽力に心から感謝を申し上げる次第でございます。本日就任されました香西新会長のもと、今後とも精力的なご審議を賜わりますよう、よろしくお願い申し上げます。
我が国経済は、公共事業に依存することなく、設備投資や輸出といった民間需要に支えられた景気回復を続けております。このところ消費は横ばいで推移しておりますが、雇用環境が改善して労働需給がタイトになり、企業部門の好調さが、賃金の上昇を通じて家計消費に波及するという好循環を期待しているところでございます。
他方、わが国を取り巻く環境を見ますと、高齢化、少子化、経済のグローバル化という大きな3つの課題がございます。これらの課題に立ち向かうためには、「成長なくして財政再建なし」との理念のもと、経済活性化と財政健全化の両立を目指していく必要があると考えております。このため19年度予算におきましては、税増収があっても歳出改革の手綱を緩めないとの考え方に立ち、財政規律を守り、財政健全化路線を継続いたしました。これによりまして、15年度には44.6%でありました公債依存度が3年連続して改善いたしまして、19年度は30.7%になりました。また、一般会計のプライマリーバランスも、15年度の19.6兆円の赤字から4年連続して改善し、18年度は11.2兆円、さらに19年度には4.4兆円の赤字にまで大幅に改善いたしました。
ただ、そうした中でも、安倍総理の言う「美しい国」の根幹である地域活性化、再チャレンジ支援、教育再生の分野に配慮し、政治の温かみを広く地域や国民の末端にまで行き届かせる努力をしているわけでございます。また、イノベーションを通じて成長に資する科学技術や中小企業の分野にも力を入れております。
税制面では、企業が国を選ぶ時代となった中で、国際的なイコールフッティングを確保する観点から減価償却制度の見直しを行っております。また、中小企業について留保金課税を廃止することや、住宅ローン減税の特例の創設など、中小企業や国民生活に配慮した施策も講じております。
このように19年度予算におきましては徹底した歳出削減を行い、国民負担の最小化を目指しておりますが、依然として我が国の財政状況は、債務残高の対GDP比が19年度末で148%になると見込まれるなど、主要先進国で一番の借金大国であります。それにもかかわらず18年度の国民負担率は38%と最低水準の国であり、「中福祉・低負担」の国とも言うべき状況にあります。
また、今後とも増加する社会保障給付や少子化への対応等に配慮することが必要であります。国民が広く公平に負担を分かち合う観点に留意しながら、基礎年金の国庫負担割合の引上げのための財源も含めて、安定的な財源を確保するため、抜本的・一体的な税制改革を推進し、将来世代の負担の先送りを行わないようにしていく必要があります。このため、本年7月頃に判明する18年度の決算の状況や、医療制度改革を受けた社会保障給付の実績等を踏まえて、本年秋以降、税制改革の本格的・具体的な議論を行い、19年度を目途に、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでまいります。
委員の皆様におかれましては、こうした方針に沿って、専門的な見地からあるべき税制のあり方についてご審議を深めていただきますようお願い申し上げ、簡単でございますが、私のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
〇香西会長
ありがとうございました。
次に、菅総務大臣にお願いいたします。
〇菅総務大臣
総務大臣の菅でございます。平成19年の年頭の総会にあたりまして、ひと言ご挨拶を申し上げます。
先ほど、皆さんの互選によりまして香西泰委員が新会長に選任されました。税制の課題が山積する中で、香西会長におかれましてはご苦労をおかけいたしますけれども、税制のあり方という国民に直接関係のあることでありますので、その方向性をできるだけわかりやすい方向として示していただければと考えております。
昨年末は、委員の皆様方には、非常に短い期間の中で「平成19年度の税制改正に関する答申」をとりまとめていただきました。その後、与党税制調査会における議論等を経て、減価償却制度の見直しをはじめとした19年度の税制改正の内容が決定されました。
今後、総務省といたしましては、所要の地方税法改正法案をとりまとめ、25日から始まります第166回国会において、年度内に成立するように全力で取り組んでまいります。
地方分権の推進という観点から、さきの臨時国会において関係各位のご協力をいただき、地方分権改革推進法案が成立いたしました。今後、国と地方の役割分担の見直しを進め、地方税財源の充実確保等の観点から、国庫補助負担金の廃止、縮小や税源配分等のあり方について政府一体となって取り組んでまいります。
また、本年は三位一体改革の一環として、所得税から個人住民税への3兆円の税源移譲が実施されます。税源移譲によって負担の増加が生じない、このことを納税者の皆さんに十分周知をし、そして税源移譲が円滑に実施されるよう万全を期してまいりたいと思います。
税制調査会では、本日より香西新会長のもとで審議がスタートします。総合的な税制改正を推進するにあたっては、経済社会の活性化はもとより、社会保障等の安定的な財源の確保や、地方分権を推進するための地方税源の充実などについて、大変重要な課題に一体的に取り組んでいく必要があると考えております。地方税制のあり方につきましても、地方分権の推進という大きな流れを踏まえ、引き続きよろしくご審議をお願い申し上げます。
簡単でありますけれども、本日の審議に先立ちまして、ご挨拶方々、私の考えを申し述べさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〇香西会長
ありがとうございました。
それでは次に、塩崎官房長官よりお願いいたします。
〇塩崎官房長官
官房長官の塩崎恭久でございます。税制調査会の総会にあたりまして、私からもひと言ご挨拶を申し上げたいと思います。
昨年の年末、総会に至るまで、皆様方には短期精力的に19年度の税制改正政府案につきまして、ご審議をいただいたわけでございます。それが決定されまして、いよいよ25日から国会が始まりまして、来年度予算の審議が行われることになりました。改めて感謝申し上げたいと思います。
安倍内閣になって、税制調査会のあり方というものについて少し新しい要素も加えていただければなということでございます。基本的にはこれまで税制調査会で行われてきたことでありましょうが、専門性を持ってご議論いただき結論を出していただくということと、国民にわかりやすく説明をしていただくという、この2つのニーズを満たす審議をしていただくと大変ありがたいと思っているわけでございます。特にマクロ・ミクロのさまざまな手法も活用いただいて、たまにはマクロモデルも回していただきながら、経済に一体どういう影響が出るのか、あるいは、国民生活にどういうインパクトが出てくるのかということを、専門的にぜひご議論いただいてご提示をいただければありがたいと思うわけでございます。
一方で、「わかりやすさ」というのも大事で、往々にして税の議論というのは、何となく重たい議論で、暗い話のように聞こえてくるわけでありますが、まさに生活そのもの、国の形そのものだろうと思います。そういう意味では町のおじちゃん、おばちゃん、若いお母さん、お父さん、あるいは学生に至るまで、もちろん高齢者、おじいちゃん、おばあちゃんもそうでありますが、税というものが自分たちの税なんだということがわかる、そんな議論をしていただくとありがたいと思うわけでございます。
香西新会長、私も経済企画庁時代から存じあげているわけでありますが、大変尊敬するエコノミスト、いわゆる官庁エコノミストの典型のような、尊敬をしてまいった方でございます。つい先だっても、「日本21世紀ビジョン」というのをまとめていただいたところでございます。ぜひ、これまでのご経験を生かしていただいて、この税制調査会における議論に新しい風を吹き込んでいただければありがたいというふうに思っております。
先ほど総理からお話がありましたように、この秋以降、抜本的な税の改革についてご議論をいただくことになっております。当然のことながら、世上いろいろ言われている消費税の問題も含めて議論をいただくということでございます。先ほど申し上げたように税はまさに国の形そのものをあらわすわけですので、先生方の専門的な知見によっていい議論をしていただいて、抜本的改革をお願いできたらというふうに思うわけでございます。
安倍総理は、「戦後レジームからの新たなる船出」ということを言って総理になったわけでございます。例えば教育基本法にしても、先ほど菅大臣からお話がありました地方分権推進法にしても、いわば国の戦後のレジームを変えるような大事な法律を臨時国会で通してきたわけでありますが、まさに新たなる船出をする際の税のあり方というものを、この税調でご議論いただきたいと思います。それもひとつ明るく議論をしていただいて、明るく国民に投げかけていただいて、国民が一緒に考えられるような、そんな議論を大いに期待いたしたいと思います。
今後とも、ひとつ精力的なご審議を賜わりますようにお願いして、私からのご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
では、次の議題に進ませていただきます。平成19年度税制改正案の概要等につきまして、財務省、総務省からご説明をいただきたいと思います。
主税局の永長総務課長、自治税務局の滝本企画課長、よろしくお願いいたします。
〇永長総務課長
それでは、お手元の「総4-1」から始まる資料に基づきまして、お時間の関係上若干駆け足になりますが、ご説明いたしたいと思います。
最初に「総4-1 平成19年度予算フレーム」という横表でございます。一番上のところ、税収ですが、前年の18年度当初予算、それから19年度、これが今回出そうとする新年度予算でございます。45.9兆円から53.4兆円ということで、7.6兆円ほどの税収増になっております。中身につきましては後ほどご説明いたします。
飛びまして一番下のところでございます。一般歳出、18年度が46兆3,000億円、19年度が46兆9,000億円、このようになっております。先ほどお話にございましたように、成長力強化、再チャレンジ支援、少子化対策等々、重点的な予算配分を行いつつ全体の増加を抑制するということでございます。
その差し引きが、中ごろちょっと上の公債金でございます。18年度当初が29兆9,000億円、19年度当初は25兆4,000億円余ということで、4兆5,000億円余の発行額を減額するということでございます。
次の「総4-2」でございます。縦表になって恐縮でございますが、税収の動向でございます。まず、前年度予算額という左半分をご覧いただきたいと思います。一番下の一般会計分計ということで、18年度当初予算においては45兆8,000億円余でしたが、それに約4.6兆円の補正増を行っております。その中身といたしましては、上から3つ目、カッコになっておりますが、所得税計、ここで約1.8兆円、法人税で約2.7兆円、それぞれ膨らんでおります。先ほど所得税と申しましたが、このうち大宗部分は実は配当から上がってくる所得税でございます。すなわち法人税の2.7兆円と配当から上がってくる所得税、これで実は4兆円近くの増になっております。この法人税等の見込みが見積もりのキーになるわけですが、今回から、実際出ております中間決算の数字を用いて推計しております。結果的には、14年度以降5年連続で2桁の増益、こういったことを見越して18年度の見積もりをしたわけでございます。
この18年度の予算額見積もり、これをベースに19年度の概算を出すわけでございます。これにつきましては政府経済見通し等々の数字を掛け合わせて、さらに定率減税等の廃止、こういった改正増減を足しまして、一番下でございます、53兆4,670億円、7.6兆円の対前年当初の増加となっているわけでございます。
次の「4-3」、これは予算のポイントということで、お時間の関係上、説明は割愛いたします。後ほどお目通しいただければと思います。
「総4-4」、税制改正についてでございます。基本的には昨年頂戴いたしました答申、その考え方に沿いまして検討したものでございます。一番上の箱の中ですが、「持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け」、こういう大きな流れの中で、19年度におきましては、「我が国経済の成長基盤を整備する観点から減価償却制度の抜本的見直しを行う」等々でございます。
早速、中身で恐縮でございますが、1つ目の減価償却制度、国際的な競争条件をそろえよという答申をいただきました。中身といたしましては、250%定率法を導入いたしまして、耐用年数経過時点に備忘価額1円まで償却できるようにする、このような措置を講じております。
中小企業関係税制、例えば1つ目では留保金課税でございます。中小企業の資本蓄積を促進せよ、こういう答申をいただきました。適用対象から中小企業を除外する措置を講じております。
4つ目でございますが、エンジェル税制。適用対象の企業の要件緩和。これは小売りとかサービス業、こういったものも対象になる措置を講じております。
はしょって恐縮でございます。2ページでございますが、組織再編税制・信託税制、これについてもいろいろご議論を賜わりました。1つ目の組織再編税制、例の三角合併のお話でございます。事業の継続の実態が認められれば課税の繰延べを行うという基本的な考え方に沿いまして、措置を講じつつ、国際的な租税回避を防止するための措置。例えばタックス・ヘイブンでのペーパーカンパニーに親会社を使う、こういったものについて対応する、このような措置を講じております。
2つ目の信託税制。これについてもいろいろご議論いただきました。信託法制の制度改革趣旨を没却しないような対応を行うとともに、受託者段階での法人課税を行う。例えば、重要な事業をカセットのようにして信託に外に出す。こういった場合は法人段階課税を行う、こういった措置も講じております。
さらに金融・証券税制でございます。上場株式等の配当・譲渡益に係る軽減税率の特例の適用期限を1年延長する。答申で留意事項としてご指摘をいただきました。市場の無用の変動要因とならない工夫とか、金融所得の損益通算の範囲の拡大の具体化、こういったことにつきましてさらに検討してまいりたいと思います。
住宅・土地税制、このあたりは国民生活への配慮ということでございます。税源移譲に伴いまして、国の所得税で行っております住宅ローン減税、これが空振りになる、そういうことに対応するための措置ということで、控除期間と控除率の特例をつくる。さらにはバリアフリー改修促進税制を創設する。こういった措置を講じております。
その他、例えば納税環境整備では、これも答申でいただいております、コンビニでの納税でありますとか、さらには、寄附金控除の現行30%の控除対象限度額を40%に引き上げる、こういった措置も講じているところでございます。
さらに、「総4-5」をご覧いただきたいと思います。先ほど総務大臣からもお話がございました。税源移譲が19年に行われるわけでございます。所得税は1月から、住民税は6月から。基本的には税源移譲によりまして、各個人の納税額は変わらないわけですが、そのタイミングがずれるということでございまして、国税につきましては1月の源泉徴収から既に下がっている。こういうことでございますが、その分は6月に上がる、こういうことでございます。現在、我々も一生懸命PRをしているところでございます。
以上でございます。
〇滝本企画課長
総務省の企画課長でございます。引き続き、地方税関係につきましてご報告申し上げます。
資料の「4-7」をお願いいたします。平成19年度地方税制改正の概要でございます。まず、国税におきまして減価償却制度が見直しになりますが、地方税での法人住民税、法人事業税などにおきましては、課税標準や所得計算を基本的に法人税等に準拠しておりますので、これら地方法人関係税などでも新たな減価償却制度が適用されることになります。
なお、固定資産税の償却資産につきましては、資産税としての性格を踏まえまして現行の評価方法を変えない、これを維持することにいたしております。
次に、上場株式等の配当・譲渡益に係る住民税の軽減税率3%の適用期限につきましては、国税と同様、1年の延長を図ることにいたしております。
めくっていただきまして、その他、住宅のバリアフリー改修に係る固定資産税の特例措置の創設、低公害車に係る自動車取得税の特例措置の見直しと延長など、政策税制関係の改正を行うことにいたしております。
次の「4-8」の資料は、改正の詳細でございますので、時間の関係で省略させていただきます。
次に、資料「4-9」をお願いいたします。これは19年度の地方税収見込みでございます。地方財政計画ベースで、右から3列目の一番下にございますように、約40.4兆円。昨年18年度は、左から2列目の一番下にございますように約34.9兆円。したがいまして、19年度の地方税収見込みが約5.5兆円上回って、15.7%の伸びとなっておりますが、そのうち約3兆円は、税源移譲や個人住民税の定率減税の廃止によるものでございますので、最近の景気動向などによる実力ベースの伸びは約2.5兆円増、6.5%程度の伸びとなっております。個別税目ごとには、最近の好調な企業収益などを背景にして法人関係税が高い伸びを示してございます。
制度改正に伴います減収額は、中ほど一番下、362億円となってございますが、次の2ページの右下にもございますように、平年度ベースでは2,522億円の減収を見込んでございます。そのほとんどは減価償却制度の見直しに伴うものでございます。
続きまして、資料「4-10」をお願い申し上げます。平成19年度地方財政対策のポイントでございます。一番上のマルですが、地方財政計画の規模は約83.1兆円。次に出ておりますように、公債費、借金返しの額を除きます地方一般歳出は65.7兆円、前年度に比較して1.1%の減となってございます。この一般歳出額の規模は、これまでの人件費の抑制をはじめとする歳出抑制によりまして、約15年前、平成4年度~5年度くらいの地方一般歳出の水準にまで下がってきております。
上から3つ目のマル、19年度の地方財源不足額は約4.4兆円。厳しい歳出抑制や、加えて地方税収が伸びたことなどによりまして、前年度・18年度の財源不足額から半減しておりますが、なお4.4兆円と相当の額にのぼっているところでございます。
主なポイントは、大体以上のようなものでございます。説明を終わらせていただきます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
この税調におきましては、19年度の改正のために大変集中的なご議論をされたというふうに伺っております。私はその場におりませんでしたけれども、ご努力に敬意を表したいと思います。
残された宿題も全くないわけではないかと思います。これにつきましては、また機会を改めてさらに議論を続けることもあるだろうと思いますが、今のご報告等について、何かご意見があればご発言いただいてもと思いますが。
猪瀬委員、お願いします。
〇猪瀬委員
新しい会長として大変だと思いますが、今までのご挨拶の流れでしてしまうと、国民に対する説明責任というものが、あまり果たされていないことにもなるかもしれないと危惧するわけであります。ちょっとしたエピソードが一つありまして、昨日、国立新美術館という、芸術文化振興のための日本最大の美術館が開館したわけです。これは敷地が1万坪ぐらい、建設費は350億円です。不粋なことを言うわけではないのですが、六本木ヒルズが3万坪ぐらい、防衛庁跡の東京ミッドタウンが3万坪ぐらい。あそこの空いている国有地がたまたま国立新美術館になったのですが、1万坪ありますね。今、土地がバブルで、坪単価は軽く1,000万円以上いっているでしょう。そうすると、あそこを売却したら1,000億円は下らないと思います。
ただし、もう既に新美術館ができてしまっているのでこれは後の祭りですが、上野に美術館があり、あちこちに国立美術館があり、都立美術館がある。六本木ヒルズに森美術館があって、防衛庁跡の東京ミッドタウンにサントリー美術館がある。美術館は全国に1,000あるわけですけれども、民間の美術館もたくさんある。そういう中で350億円投資して、しかも、国有財産を売却すれば1,000億円以上の収入がある。そういうものがいまだに新しくつくられていくことの中で、我々国民は、本当に歳出・歳入一体改革なのか、本当に歳出をカットしているのかと。もちろん、抽象的なレベルで、数字の上でいろいろな形でカットしていくのですけれども、目に見える形で本当にカットしているのか、こういうふうに疑うわけですね。
これはメディアも含めて、国立美術館ができた、よかった、よかったという報道がずっと行われているのですけれども、先ほど尾身大臣も、徹底した歳出削減をやっていきたい、こうおっしゃっているわけです。そういうことをつらつら考えながら、国の不動産だけで40兆円あります。これは、時価評価額をきちんとしておけばおそらく100兆円ぐらいになるでしょう。中には売却できないものもあります。ただし、東京23区で700棟の公務員宿舎があって、戸数にすると2万2,000戸です。
そういう問題は足元の問題であって、そして、それは非常にマイナーな問題であるような形で物事を考えていると、国民は、そこは違うぞというふうに見ているわけです。これは歳出・歳入一体改革とか、この辺の歳出の問題は、財政制度等審議会とかよそでやっているではないか、あるいは経済財政諮問会議でやっているではないかということになるのですけれども、しかし、やはり我々は税の仕組みを考えて国民から税をいただく立場にあるときに、国有財産をきちんと売却していくことを、税調でもう少し強調してもいいのではないか。今回の流れというのは、そういう足元のことについてわりと甘かったのではないかと私は思っているわけです。
国立新美術館の話は繰り返してもいいぐらいの話ですが、このぐらいにさせていただきますけれども、つまり、国民に説明しろ、国民に説明しろと言われても、なかなか説明しにくいところがあるということですね。何事もなかったようにこのまま、税調会長代わりましたということではなくて、そういうところに厳しい言葉が、先ほどの挨拶の中にもう少しあったらよかったなと、こういうふうに思った次第であります。
以上です。
〇香西会長
どうもご注意いただきまして、ありがとうございました。たしかに税調は、ある意味で納税者の近くにいるわけでありますから、政府の中で納税者の考えを代表してほかの審議会等に申し入れをするといったようなことも、場合によっては考えられるのではないか。その辺については、今後、具体的にケースに応じてご相談したいと思っております。
ほかによろしいでしょうか。またいろいろとご教授いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、第3の議題に移らせていただきます。若干の時間を使わせていただいて、今後の進め方について自由なご意見をお伺いしたいと思います。
最初に私から、先取りするようで恐縮ですが、申し上げたいと思います。
今回の諮問を拝見すると、従来はどうだったかよくわかりませんが、ごく素っ気なく税制のあり方如何というようなことではなくて、かなり大きな問題意識をぶつけられている、そういう印象を受けるわけであります。また、本年秋以降は本格的・具体的に税制全般にわたって考え直すということで、問題が大きく提出されている。それも、非常に大きく変化する経済社会構造の中でそういうことを考え直す、こういうことが課題になっていると強く感じております。もちろん政府からの諮問の問題意識が、それ自体もう少し考え直してほしいというご意見もあるかもしれませんが、それを含めて、やはり諮問の問題意識に大きく応えていくことが我々の課題になっているのではないかと思います。
年度後半は本格的な税制論議、前半は基礎的な調査・分析というふうに大きく割り振ることができるかと思いますけれども、調査・分析の場合であっても、やはり大きな問題意識につながる形で問題を立てて分析していただきたいと思っております。
先ほど官房長官は、「専門家として」ということを言われたわけでありますけれども、私自身はあまり財政が専門ではございませんが、専門家として加わっていただいている先生方に対しては、この機会に、一つは検証ですね。どういう形で税が経済に機能しているのかということを、できれば計量的な形も踏まえて検証して、しっかりエビデンスをつかんで、それで税制を考えるということが一つ課題としてあるのではないか。それは簡単なことではない。すぐできることではありませんけれども、「Evidence-Based Tax Policy」に一歩でも近づくことが一つの課題になっているのではないかと思います。
また、「わかりやすい説明」ということがございましたが、わかりやすい説明をするためにも、理屈といいますか、理論といいますか、そういうものをしっかり詰めて考えることも必要なのではないか。先ほどご示唆があったような形でやっていくことによって、この税調のあるべき地位もだんだんと固まっていくことになるのではないか。素人が勝手なことを言って恐縮ですけれども、私個人としては、そういうことを一つの夢として抱いているということを最初に申したいと思います。
それから、前会長のご辞任の後、少しの間、空白があったかと思いますので、当初考えられていた時間表からすればやや時間が迫っているということもありますので、できるだけ早く実行体制をとりたいと思います。組織をどうするか、部会を置くというご議論もあったように聞いております。例えば組織につきましては、総会を開いて決めることになると思いますけれども、それを待たず、2月には企画会合で全委員の参加する形で、分析等をどのようにやっていったらいいかといったことについてさらに詰めて、そして、ある程度案が固まったら、その部分からどんどん実際の仕事に着手していただく。走りながら考えていただいて、ある程度それが進んだところで、3月になりますか、総会で部会等の設置を正式に決めるというような手順も、もしここで特にご異論がなければ、そういうことも考えさせていただきたいと思っております。
具体的なタイミング等につきましては、今後のご相談ということでございますし、私、まだ初心者でありますので、いろいろトンチンカンなことを言い出すかもわかりません。そういったことも一応お考えいただいてご協力いただければ、私としては大変ありがたいと思います。
以上であります。
本日、私としては初めてでございますが、この際、時間を少し使っていただいて、ただし、なるべく多くの方からご自由に、こういうふうな審議のあり方が望ましいということを述べていただければ、大変ありがたいと思います。ご発言いただける方、どなたからでも結構です。
吉川委員、お願いいたします。
〇吉川委員
先ほど官房長官から、政府税調は、わかりやすさということも一つあるかと思いますが、もう一つ、専門性を発揮してほしいというお話がありました。我々としては、まさにそこに我々の責任があるだろうと考えております。
それで、税の影響ということについても追々きちんと分析しなければいけないのでしょうが、その前提となる幾つかの現状の把握というのでしょうか、それについてできるだけ早く調査をやる必要があると思います。幾つかの具体的な項目として、一つは所得分配の変化ということです。俗に言うところの格差論争、これに関係したことの実態調査。ジニ係数ということでは税の議論をするときには十分でないと思います。ですから、標語的に言えば「ジニ係数を越えて」ということになると思いますが、その実態が本当のところはどういうふうに推移してきているのか、現状どうなのかということは、税の議論をするときにきちっと詰めておかなければいけないと思います。
それから、例えば所得の捕捉の問題。これは、個人の所得税の問題、業態別の問題もあると思いますし、法人の問題もあると思います。日本全体の法人の中で一体どれだけが法人税を払っているのか。また、払わない根拠があるのかどうか。そうしたことも含めて、とにかく実態をきちっと詰めることだろうと思います。
ここら辺はほかにもあるかと思いますが、事務局にもぜひともご協力いただいて、また、全部自前でやることは不可能だと思いますし、既にさまざまな研究機関、経済学者等がやっているものの繰り返しではしようがない。具体的な作業としては、まずは事務方に頑張っていただいて、既になされている分析のサーベイといいますか、あまり古いものではなくて、直近の、比較的新しいそうした調査や研究のサーベイをまず確認して、それで不足だと思われるところについては自前でやってみるということだと思います。
2つほど挙げましたが、所得分配の問題、所得の捕捉の問題、そのほかにもいろいろなことがあると思います。とにかく実態をきちっと把握しておくというのは、税の議論を今後1年間、あるいはそれ以上先もでしょうが、進めていく上の第一歩ということになると思っております。
〇香西会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、お願いいたします。
〇出口特別委員
先ほど、戦後レジームの話がありましたけれども、ここ数年、大きな私法上の変化が幾つかございました。例えば昨年末、我々が議論した中には信託法制がございましたし、今、積み残している問題として公益法人改革の問題等もございます。こうした、ある意味では議事日程が決まっている内容について、私どもが専門性を発揮しやすい分野が、今すぐ議論すべき課題として各方面から期待されているものについてはしっかりと議論して、なおかつ、官房長官のお言葉を借りれば、これをわかりやすいメッセージとして出していくことが必要なことではないか、かように考えております。
〇香西会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
〇佐竹特別委員
新しい香西会長のもとで、これから進めるわけでございます。私は、住民に一番身近な場所にいるわけでありますが、これは言っていいのか悪いのか別にいたしまして、昨年末のいろいろな問題で、いわゆる政府税調に関する国民の認知度というのは非常に高くなっている。もう一つは、逆に我々は大変重い責任を負うことになりますけれども、税に対する政治行政のあり方に対して、これも非常に関心が高まっているわけであります。
そういう中で、会長にこれを言っていいのか、おこがましいのでありますが、どちらかというと一定の方向ありきで会長があまりリードしますと、世の中でいろいろな議論が出過ぎる場合があります。会長の職責というのは、一つは、議論を大いに沸かせて、その中からそれぞれ合意するもの、あるいは、合意できなくても一定の方向を導き出す。そして、さまざまな形でいろいろな議論が集約化された時点で、会長のご経験とご見識でこれを一定の方向にまとめる、そういうことであろうかと思います。
そういうことで、会長の好みと一つの考え方が最初からあまり強調されますと、非常に狭まった議論になる。特に専門性のところでも、最終的には国民の側から見てどうなのかということが一番大きな点であります。そういうことからして、専門的というところでも、常に国民のほうからどう見るか。この反復をやらないと、税調は机の上だけでものを考えると。そういう感じを持たれると困りますので、我々みんなの責任でそれぞれ努力をしなければならないということでありますので、ひとつ自由な雰囲気をつくっていただきながら、大変ご難儀をおかけいたしますけれども、よろしくおとりまとめのほどお願いいたします。
〇香西会長
どうもご注意ありがとうございました。ここで自由闊達な論議の場にしたいというのは、私の最大の願いでありますので、ぜひその方向で進めてまいりたいと思います。
〇高山特別委員
日本を美しい姿形にするというのが今回の内閣の最大のテーマでありますけれども、並んで、日本の財政もやはり美しい姿形にすることは大変大事だというふうに思っております。それをつくるために、我々はいろいろな形で努力しなければいけないというふうに考えております。
最近のニュース報道で、気になった点だけ一つ申し上げたいと思います。たしか先週の初めぐらいだったと思いますけれども、内閣府の経済社会総合研究所から発表になった、短期の日本経済マクロ計量モデルにおける分析結果であります。これは、主として金利の引上げを牽制する狙いのあるプレスリリースだという解釈が一部にあったのですが、その中に、消費税を1%上げた場合のマクロ的な影響というのが朝日新聞等で報道されておりました。1年目でこのくらいGDPを減らします、2年目、3年目というようなニュース報道があったんですね。
何をピックアップして分析するかというのは非常に大事なことだと思いますけれども、増税をしたら経済にマイナスの影響がある程度及ぶというのは常識だと思うのですけれども、なぜ消費税を1%上げたときだけの分析結果を発表したかということに、私はやや疑問を持っているわけです。仮に消費税1%増税するとなったら、1年間2兆5,000億円の増税ということになるのですが、例えばそれを所得税の増税でやった場合、あるいは法人税の増税でやった場合、社会保険料の引上げでやった場合、2兆5,000億円を確保する方法というのはいろいろあるわけです。それなのに、消費税だけやって増税の結果こうなりましたということでは、きわめてミスリーディングな情報だと思うのです。
仮に国家の財政収入を2兆5,000億円上げるとしたら、どういう選択手段があります。その中で、これをやったらこれだけのマクロ経済があります、こちらをやったらこういう効果があります。どちらがどういう形で違いが出てくるのか。その辺を明らかにしてから総合的な判断につなげることが大事であって、消費税の1%増税効果だけのニュースリリースというのは非常にミスリーディングだと私は思っています。我々は今後、税の議論を展開するときに、その点に留意したほうがいいのではないかというお願いを申し上げたいと思います。
以上です。
〇香西会長
大変ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、お願いします。
〇原特別委員
簡単なことから言います。日程をいつにするのかというのを早い段階で決めていただければ、出席をするのに私どもありがたいので、お願いしたいと思います。
それから、さっき猪瀬さんからもお話がありましたけれども、いろいろなテーマとも関連しながら税の議論が進んでいきます。例えば昨年度の道路の特定財源の話、これもこの調査会で議論がありましたが、一方、新聞等ではいろいろなお話を聞いている。こういったときも、こちらの調査会の議論と総理及び塩崎さん等との議論が、かみ合っていく形で展開していくことができれば、これも大きな説得力のある議論になっていくと私は思います。
それから、今日の尾身大臣からのお話にもありました、財政規律。財源は増えていけども、歳出面は、徹底して注意して中途半端に増やしたりすることのないようにしよう、プライマリーバランスをきちっと均衡をとっていこうと。それは2011年というふうに聞いておりますけれども、その前倒しもできるかもしれない。一方、新しい産業に対して活性化ができるようなタイプの税制改正にしようと。これは今年度でずいぶん織り込まれてきたわけでありますが、こういったようなことを簡単に言うと、歳出は注意をしていこう、そして歳入に関しては増やしていこう。これは新しい産業をつくっていくことによって増やしていこうと。
これを両方やっていきますと、歳出は減る、歳入は増える。これは国民から見てわかりやすい言葉で言うと、あらゆる税目で税率の安い国になるということになると思います。法人税も低くなるし、所得税も低くなる。こういうテーマを大きく掲げている先進国はヨーロッパ、アメリカの中にもありませんので、世界から見てもわかりやすいし、国民一人一人の立場からも、あらゆる税目が非常に低くなるということは、皆さん方自身にとってプラスであるというふうに考えるでしょうから、こういう大きなテーマというものを、2020年度以降の中長期ですけれども、掲げていく。これは、佐竹さんが先ほど言われた「国民の視点から」ということにもう一つつけ加えて、将来の国民の視点から考えた場合の税のあり方を我々は議論していくことが今年できれば、これは大変いいというふうに私は考えております。
〇香西会長
どうもありがとうございました。お話がございました点にも関連いたしますけれども、会議だけでご意見を聞くと、時間がなかったりすることもあるかと思いますので、今後とも、何かお気づきになったこと、後で思いついたことでも結構ですけれども、事務局に連絡をしていただく。メールでもいただくということにして、なるべく意見の交換の機会を増やしていきたい。その辺については、やり方等についてお願いすることにもなるだろうと思っております。
それから、会合の予定を早く言えと言われましたので申し上げますけれども、次回の企画会合といたしましては、2月9日・20日を予定させていただきたいと思います。そこでまた、どういうテーマをしっかりと勉強するかといったことについても詰めた議論をさせていただきたいと思いますが、開催場所等については、改めてご連絡させていただくことにしたいと思います。
また、いろいろな問題意識がたくさんありますが、例えば諸外国の税制改正といいますか、動向などといったものを、どういうふうに理解したらいいかというようなことも一応ちゃんと調べておけばいいと思います。実は私、グーグルを引いてみたら、アメリカのレーガンから始まってブッシュのパネルとか、いろいろな資料もダウンロードができて、私は初めて税関係の文献をそういうところで見たものですから、なかなか考えているなという印象も持ちました。そういったことも、わかりやすい形で論理を整理していく上でどれくらいに参考になるかといった点もあるだろうと思います。
それから原案として、広聴部会といいますか、そういったこともしたい、これはそのとおりなのですけれども、納税者というものに対する対応は、会社で言えば、PRというと大体会社の宣伝ばかりした。しかし、この頃はインベスター・リレーションズとなりますと、相当踏み込んで説明しないと株主はついてこないということで、大会社の社長さんは、アメリカまで行ってアナリストを相手にオープンなフォーラムで議論してくるといったようなことになってきておりますから、そういった形でなるべく密接な、質の高い交流を願っていきたい。私ども、理想論ばかり言っているのかもしれませんが、そういった点についても、ぜひいろいろな知恵を出していただきたいと考えております。
いかがでしょうか。
それでは、今日はこれで時間ということになります。また、個人的にもいろいろご意見を承りに伺わせていただきたいと思っておりますので、お願いした場合は、どうかいろいろなことを教えていただくようにお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。