総会(第3回)議事録

日時:平成18年12月1日(金)14時00分~
場所:総理大臣官邸大ホール

本間会長

時間がまいりましたので、税制調査会第3回総会を開催いたします。

お忙しい中をご参集いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、2つテーマをこの総会でご議論いただきたいと思います。1つは、「平成19年度の税制改正に関する答申」の最終的なとりまとめをお願いいたします。また、後半は、来年以降の税調の審議の進め方について議論したいと思っております。審議の状況によっては、若干の時間延長があり得ますことをお含みおきください。

それでは、「答案(案)」の審議に入ります。

お手元に置いてございます「答申(案)」と「その他の主な意見(案)」は、これまで皆様からいただいたご意見を織り込んで作成したものでございます。

昨日の企画会合において、最終的なご審議をいただき、ご一任いただいたわけですが、今総会では、「答申(案)」を事務局から読み上げてもらって、最終的な内容の確認をお願いしたいと思います。

それでは、事務局から、よろしくお願いいたします。

〔内閣府別府企画調整課長・答申案読上げ〕

本間会長

どうもありがとうございました。

それでは、原案のとおり、とりまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。

〔「異議なし」という声あり〕

本間会長

ありがとうございます。

それでは、「平成19年度の税制改正に関する答申」は、原案どおり決定させていただきます。

総理がお見えになっておられますので、この答申を手交させていただきたいと思います。

〔本間会長から安倍総理に答申手交〕

本間会長

なお、この答申の(案)がとれたものにつきましては、後ほど事務局からお届けさせていただきたいと思います。

安倍総理大臣、本日はお忙しいところ、まことにありがとうございます。

それでは、ご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

安倍総理大臣

税制調査会の開催にあたりまして、ひと言ご挨拶を申し上げます。

税制調査会の委員の皆様におかれましては、平成19年度の税制改正について、非常に厳しい日程の中、精力的にご審議を賜わりましたことを心から御礼を申し上げます。

この秋のご審議では、「成長なくして財政再建なし」の理念のもと、経済活性化にかかわる税制を中心に議論を行い、今後、議論を深めていく総合的な税制改正の全体像との整合性を考慮しながら、平成19年度の税制改正に関する答申をとりまとめていただいたと承知いたしております。この答申を指針として、税制改正を進めてまいりたいと考えております。

最後に、委員の皆様のご尽力に、改めて厚く御礼を申し上げまして、簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

本間会長

総理、どうもありがとうございました。

総理はご所用のため、ここで退室されます。ありがとうございました。

〔安倍総理大臣退場〕

本間会長

新体制で初の答申とりまとめをさせていただき、ただ今、総理大臣に対して手交させていただきました。

ここでまず、財務大臣からひと言ご挨拶をお願いしたいと思います。

尾身大臣は、租税教育の重要性についてご意見をお持ちと伺っております。それも含めてご発言いただけましたらありがたいと思います。

尾身財務大臣

税制調査会の委員の皆様には、19年度税制改正につきまして精力的なご審議を賜わり、心からお礼を申し上げる次第でございます。

この秋の審議では、「成長なくして財政再建なし」との政府の考え方に沿って、経済活性化と税制を中心にご議論をいただきました。そうした中で19年度税制改正に関しまして、国際的なイコールフッティングの確保の観点から、減価償却制度を見直すこと、期限を迎える証券税制の優遇税率について金融所得課税の一体化に沿って廃止することなどについて、答申をとりまとめていただきました。今後、この答申を指針として、平成19年度税制改正に取り組んでいきたいと考えております。

最後に、租税教育について、私の考えているところを少し申し上げさせていただきたいと思います。

18世紀後半のアメリカの独立戦争は、母国イギリスが行った不当な課税に納得できないということで始まりました。「代表なければ課税なし」という有名なスローガンは、イギリスがアメリカ東部の13植民地に対して印紙税を制定して増税を行った1765年に、ヴァージニア植民地の政治家パトリック・ヘンリーが主張したものであります。これは言いかえれば、「代表あれば課税あり」という考え方に通じます。アメリカでは、自分たちの力で国をつくり上げていく中で、市民の代表が国の支出のあり方を決めることの裏腹として、国を支えるお金を負担しなければならないという認識がしっかり浸透し根付いているように思います。そして、これが小学校や中学校でも丁寧に教えられているわけであります。

わが国は、封建時代には殿様が農民から年貢を取り立てるという慣行がありまして、それが明治の近代化になりましてから、いわば税という形に変わったという歴史がございます。そういうことを考えますと、まだまだいわゆる税というものに対する国民の意識が、お上から無理やり取り立てられるというような感覚で考えているのではないかという感じがするわけでございます。

今後、わが国におきましても、小学校、中学校の段階から、税の意義や役割についてしっかりと考え、かつ、学んでいただくことができるようにしていきたい、そういう意味で租税教育を一層充実させていただきたいと念願する次第でございます。

今後、この税制調査会では、総合的な税制改革に向けたご審議を進められることになっておりますが、そういう中で租税教育の必要性につきましても、ぜひご議論をいただければありがたいと思います。

本間会長

大変重要な論点をお示しいただきまして、ありがとうございました。広報・広聴機能を我々もしっかりと高めてまいりたいと思いますので、ご趣旨を踏まえながら検討させていただきたいと思います。

それでは、菅総務大臣、我々は地方分権の点につきましても書かせていただいておりますけれども、ご挨拶をお願いいたします。

菅総務大臣

新しい委員のもとに、非常に短い期間でありましたけれども、大変ご熱心なご審議をいただいて、本日ここに平成19年度の税制改正に関する答申をいただきましたことに、心から御礼を申し上げます。

本日の答申では、経済活性化と税制のあり方や地方税を含めて、当面対応を急ぐべき税制上の諸課題につきまして、適切な指針をお示しいただいたと思っております。総務省といたしましても、本日の答申の趣旨を十分に尊重して、平成19年度の税制改正に取り組んでまいる所存であります。

また、今回の答申は新しい税制調査会として初めての答申になるばかりでなく、今後、検討を深めていく総合的な税制改革の一里塚になるものと思っております。総合的な税制改革を推進するにあたっては、経済社会の活性化はもとより、社会保障等の安定的な財源の確保、あるいは地方分権を推進するための地方税源の充実など、非常に重要な課題に一体に取り組んでいく必要があると思っております。地方分権の大きな流れの中であるべき地方税制のあり方について、税制調査会といたしましても、引き続きご審議を賜わりますようにお願い申し上げます。

本間会長をはじめ、委員の皆様方の多大なご尽力に感謝申し上げます。ありがとうございました。

本間会長

どうもありがとうございました。

それでは、塩崎官房長官にご挨拶をいただきます。官房長官には、実は新体制発足にあたりまして、大変ご尽力をいただいております。よろしくお願いいたします。

塩崎官房長官

安倍内閣になりまして初めての政府税調の答申が、今日こうして、それこそ本当に短期間のうちにおまとめいただきまして、まずもって心から感謝申し上げたいと思います。

特に今回は、マクロ・ミクロにわたる専門的な分析もこれまで以上に加えていただき、また、国民的な視点からの検討も加えていただいて、今日のこの答申に至ったわけでございまして、本当に感謝申し上げたいと思います。引き続き議論は続くわけでございますし、体制を含め、そしてまた、今回試みられました新しい分析や審議の手法も、さらに精緻化していただいて、パワーアップを、事務局についても、それから皆様方のご審議をいただけるような環境についてもできればというふうに思っております。私も側面的な応援をさせていただいて、これからも頑張っていただきたい、このように思うわけでございます。

大事なことは、今、尾身財務大臣がおっしゃいましたけれども、政府というのは何だろうか、国家というのは何だろうかというときに、一番身近なものはやはり税であります。税を取られるという感覚が問題だというお話がありました。アメリカではスクール・タックスというのがあって、必ずしも行政区とは関係ない学校区があって、そこで税を取るという、きわめて税の原点を考えさせられるようなことがありますけれども、日本は先ほどのお話のとおり、お上から取られるということでありました。

ぜひ、政府税調の皆様方には、国民にとってわかりやすいご説明と分析を示していただいて、国民が考えるもとをいただけるように、そんな税調になっていただければありがたいというふうに思います。前に申し上げたと思いますが、税制改革はいつも何となく重たいわけでありますが、ぜひ明るく語れる税ということで、皆様方のご尽力をさらにお願いして、御礼のご挨拶にさせていただきます。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

本間会長

官房長官、どうもありがとうございました。

それでは、ここからは、来年以降の税調の審議の進め方について議論したいと思います。

議論に資するため、私の私案を会長メモの形でまとめましたので、後ほど皆様からご意見を承りたいと思います。

その前に、去る24日の経済財政諮問会議に出席し、税調の審議状況についてご報告をさせていただいた際、総理から、税制改革の基本的な考え方について、税調と諮問会議が連携して検討してほしい旨のお話をいただきました。

本日は、大田経済財政担当大臣にお越しいただいておりますので、大田大臣から、諮問会議としてのお考えをお話しいただければと思います。

それでは、大田大臣、よろしくお願いいたします。

大田内閣府特命担当大臣

大田でございます。よろしくお願いします。

このたびは、短期間の間に立派な答申をおまとめいただきましたこと、内閣の一員としてお礼を申し上げます。

11月24日の経済財政諮問会議に、本間会長にもお越しいただきまして、税制改革の議論を行いました。その中で、来年秋以降、本格的・具体的な税制改革の議論が始まりますが、それに向けて、諮問会議においても税制改革の基本的考え方を総合的・多角的に議論するということが合意されました。

また、来年6月にまとめられます「骨太2007」にその基本的考え方を盛り込むという観点から、来年4月頃に本間会長にまた諮問会議においでいただいて、それまでの間に税制調査会でなされた議論の状況をご報告いただく、そして諮問会議でも議論を行うということになりました。

それから、多角的な分析という点につきましては、データと手法の共有が必要ですので、諮問会議としても、税制調査会とよく連携を取らせていただくというとりまとめをさせてもらいました。

総理からは、次のようなご指示がありました。税調においては、マクロ・ミクロから議論を深め、分析し、専門家の皆さんにご議論いただきたい。税はまさに政治そのものですから、国民の皆様にわかりやすく説明できなければならない。そして納得もしていただけるように努力していく。そのためには、来年秋以降行う税制改革の本格的・具体的な議論に向けて、わかりやすい税制改革の基本的な哲学を、諮問会議と税調で連携して検討してほしい。来年前半には、そうした議論を踏まえ、骨太な基本哲学を「基本方針2007」に盛り込んでほしいというご指示がございました。

これからも経済財政諮問会議としましては、本間会長をはじめ税制調査会の皆様と連携を取らせていただいて、議論を進めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

本間会長

大田大臣、どうもありがとうございました。

それでは、せっかくの機会でございますので、大田大臣に対してご質問、ご意見がございましたら、お願いいたしたいと思います。どなたでも結構でございます。

佐竹委員、どうぞ。

佐竹特別委員

大田大臣がせっかくいらしていますので。実はこれは税だけで完結する問題ではないのですけれども、かつて明治になったとき、富国強兵ということがありました。明確な国家意識というか、目的があったと思います。私は技術系出身なものですからいろいろと心配するのでありますが、今まさに、かつてのプロセス・イノベーションからプロダクト・イノベーションという、技術の改善から新しい技術へ、そういう中で世界ですさまじい競争があるわけです。かつ、こういう分野については、世界中、国家戦略としてどういう技術を伸ばして産業経済の活性化に結びつけるかと。わが国はそういう状態の中で、ある意味では宙ぶらりんである。国家目標として例えば富国強産、産業をいかに伸ばすか。

国内での産業振興というのは、私ども小学生のときに習ったものと同じなんですね。物理的資源がありませんので、人材と高度な技術。そうなりますと、教育あるいは産業に関する目標と。日本の場合、すべて薄く広くという形にある。ここ数十年、何の技術が、どういう産業が日本を支えるのかというのをある意味ではきっちり見据えて、そういう産業政策、そしてまた税制、こういうリンクの中で考えていかないと諸外国に遅れをとる。貿易にしてもすべて、いろいろな面で既に日本は、先を走っているのではなくて、後塵を拝している。そういう大きな国家戦略、経済が一つあって、税があって、教育がある。こういうことを考えていただければ、我々地方自治体としても非常にやりやすい。

また、実態を申しますと、今、先端産業がかなり地方分散をしております。地方におきましても相当な設備投資が始まっております。実はこれを支えているのはほとんど地方であります。私ども秋田市レベルでも、そういう立地に対して既に10億、20億の金を投じて側面支援をしているということで、ある意味では自治体のほうがはるかに新しい産業の下地を支えている、そういう状況が出てきているわけですけれども、これは自治体では限界がございます。そういうことでひとつ、大きな形の中で産業政策、税制全体をとらえていただければ幸いでございます。

本間会長

大田大臣、何か。

大田内閣府特命担当大臣

重要なご指摘、ありがとうございます。日本はもっともっと生産性を上げられるはずだというのが安倍内閣の経済政策の基本にあります。諮問会議では、これから5年間を、新成長経済への移行期、そのうち足元2年間をそこに向けての離陸期間というふうに位置づけております。今、佐竹委員がおっしゃいました国家戦略というのに、今、ようやく取り組める状態になって、新しい可能性に向かってスタートしているところだろうと思います。そのために、例えばグローバル化を進めるとかと、人材をしっかり育てるといった、幾つかの重点的な課題に精力的に取り組んでいきたいと思っています。

実際、諮問会議以外に、「イノベーション25」ですとか、「アジア・ゲートウェイ構想」とか幾つかスタートしておりますので、そことも連携を取り、もちろん税については税制調査会のお力を借りながら、新しい成長戦略を描いていきたいと考えております。

本間会長

そのほか、どうぞご遠慮なく、ご質問ございましたら。

幸田委員、どうぞ。

幸田委員

特に具体的にはないのですが、一つ、ここのところの金融市場のことなど、ちょっと感想になるかもしれませんが。これはもしかしたら財務大臣なのかと思いますが、「貯蓄から投資へ」という流れがある中で、実態を見ていますと、個人金融資産が1,500兆円になっているという段階で基本的には半分は預貯金であると。それが結局は金融機関のところに、要は銀行にあって、それが国債のファイナンスといいましょうか、国家の予算の足りないところを担っている国債市場に流れている。そういう状況ということはつまりは、国全体がせっかく経済成長を、あるいは、さっき大田大臣がおっしゃったようにまだまだ成長余力があるというところを、実はギブアップしている部分があるのではないかという見方も市場の中ではあります。

私は、国としては経済成長を目指す上で、金融業界自体が世界で勝ち抜けるような「金融力」というものを持たないと両輪としてワークしないというところがあると思います。税制も含めてですが、国家戦略として、わが国の金融力をつけていくというほうにも目を向けていただきたいと私個人では考えております。

大田内閣府特命担当大臣

ご指摘のような観点で、今度、グローバル化改革の専門調査会というのを開きます。その中の一つのワーキンググループとしまして、金融資本市場のことを考えたいと思っております。国内外の投資家、もちろん今おっしゃった国内もそうですし、国外にとっても、投資する魅力のある市場に育てていくことをしっかりと考えてみたいと思っております。貴重なご指摘をありがとうございました。

本間会長

どうぞ。

大橋特別委員

今回のこの答申につきまして、本間会長からも十分なご解説があったと思いますけれども、一つだけ、私なりに多少触れさせていただきたいと思いますのは、消費税論議はほとんどここの中では触れられておりません。しかしこれは、各大臣がご認識いただいているように、大変短い期間で何とかとりまとめをする中で、経済の活性化を中心に議論をしたために消費税問題については十分に議論をする時間がなかったということでございまして、消費税問題を軽視しているわけでは決してございません。どちらかといいますと、消費税論議というのがここでシュリンクしてきて、ずっと先延ばしにしてもいいのではないかと。この政府税調の答申も、そういうことからこれに触れられていないのだというふうなご理解をいただきますと、将来に相当大きな禍根を残すのではないかというふうに私は実は個人的には考えております。

したがいまして今後の経済財政諮問会議の席上でも、あるいは政府のお考え方としても、直間比率をどういうふうに変えていくかという中で、消費税は決して避けて通れないのだという前提で、来年以降にどういうふうに進めていくかということをお考えいただければ大変ありがたいと思います。

大田内閣府特命担当大臣

しっかりと承りました。

本間会長

それでは、今の大臣のお話及び質疑の中でも触れておりますが、今後、我々はしっかりとお話を受けて、マクロ・ミクロの双方から税制が国民経済に与える影響について分析をしっかりしていこう。それから、それをわかりやすく国民に知らしめて、そして基本的な理解を深める、こういうことをやりたいと考えております。

それから、今後、税調と諮問会議がどのように協調して、来年の4月にこの議論を段取りとしてプロセス化をするか。これまた皆さんのご意見を伺いながら、大田大臣とも相談させていただきながら報告させていただきたいと考えております。したがいまして大田大臣からお話のあった部分について、我々としては前向きにとらえて、しっかり検討していく、こういう形でやらせていただきたいと思いますが、ご異論ございませんでしょうか。

〔「異議なし」という声あり〕

本間会長

ありがとうございました。

原委員、どうぞ。

原特別委員

国民にわかりやすい税の議論ということでありますけれども、私はこの「その他の主な意見」の2ページの上のほうに書かせていただいたような、財政健全化を達成した後に、わかりやすくて国民にとって大変魅力のある方針というのは、住民税にしても所得税にしても法人税にしても消費税にしても、あらゆる税目の税率が主要国の中で最も低い国。こういう国に日本を持っていこうという議論、こういう議論を中心にして言いますと、反対する国民はたぶんいないでしょうし、すべての事業体も賛同するでしょうし、世界的に見ても、こういった国に対しては直接投資を振り向けてこようということにもなるでしょう。少子高齢化はどんどん進んでいくわけでありますけれども、「魅力のある日本」ということで中長期的に位置づけていくためには、こういう政策を掲げるのは非常にいいと思います。

さらに、これを実行していくためには、佐竹さんも先ほど指摘されましたように、産業。この産業とは一体何かということになるわけですが、税調の報告書にも書かれていますように、基幹産業。現在の基幹産業はコンピュータ中心のIT産業、情報通信産業でございますけれども、40年前には別でありましたし、さらに40年前は繊維産業と、基幹産業はどんどん変わってきている。どの基幹産業も常に新しいテクノロジーを起こしています。コンピュータ産業を中心とするIT産業は、景気の循環でまた伸びていくというふうに思っておられる方もいるかもしれませんが、そうではありませんで、鉄と同じように、消えはしませんけれども、この次の基幹産業にはなり得ない。では、一体それは何なのか。

そういうテクノロジーの兆しというものは世界じゅうで起きてきていますから、こうしたものをさらにはっきりさせ、そうしたところに資金が流れていくような税制。これは答申の2ページ、(3)の中に「わが国の将来の基幹産業を生み育てるため、単なるマネーゲームにとどまらないリスクマネーの有効な活用方策の検討が課題である」と。ここも私もずいぶん強調させてもらいましたけれども、これは一体どういうことかというと、民間の投資家から見た場合、ヘッジファンド等の投機的な投資対象と、新しい産業を生み出す実業に対する投資対象と両方あった場合に、税制等も、これだけではありませんが活用して、民間の人たちの資金が新しい産業を生み出すところに自らの意思で資金を投資していく環境をつくり出す諸策をつくることによりまして、わが国の産業はこれからも発展していくと思います。そういう観点からも、経済財政諮問会議においてご議論いただければ大変ありがたいと思っております。

本間会長

猪瀬委員、どうぞ。

猪瀬委員

せっかく塩崎官房長官がおられるわけですから、道路特定財源の点を。税調のこの紙は、揮発油税、自動車重量税を入れた道路特定財源ということで、これは「納税者の理解を得つつ」というところが一つの重要な壁でありつつ、それを越えていかなければならないわけですが、納税者と言う場合に、納税者は国民ですけれども、業界が納税者の代表になってしまいやすいわけです。自動車業界、石油業界、あるいは地方業界と言っていいと思います。「納税者の理解を得つつ」というところは重要ですが、これは税調の答申として、納税者の理解を得つつ「やってください」という形になっています。もちろん、税調自身が理解を得るためのことを努力しなければいけないのですけれども、どういうふうに理解を得るのかというところをお聞きしたいと思います。

ひと言、提案させていただきたいのですが、暫定税率がつくられたのは揮発油税は1974年です。そのときに、車に乗っている人、運転免許を持っている人は10人に1人とか、そういう時代でしたが、今、30歳くらいだと10人中9人が運転免許を持っています。つまりトラックの運転手さんや何とか株式会社の車とか、そういうのが受益者ではなくて、国民が受益者。ほとんど全員が車に乗っているということで、昔の暫定税率をつくる頃の自動車の普及と現在は全く違う。そこのところを踏まえて、国民全体が受益者であるということで、業界が受益者ではないということです。この「納税者の理解を得つつ」というところを踏まえて、ぜひとも。

今日の新聞などを見ますと、重量税部分だけとか、1,000億円程度というふうに、やや業界の意見を反映した記事が多い。このあたりの塩崎さんのやる気というか、そういうことをここでご発言されたほうがと私は期待したいのですけれども、たぶん外に新聞記者がいっぱいいると思いますので、こういうところで言ったほうがいいかということで申し上げました。すみません。

本間会長

お願いします。

塩崎官房長官

昨日、経済財政諮問会議で来年度の予算編成方針を議論した際に、民間議員からこの問題についての問題提起がありました。私はちょっと不在でしたが、それに対して総理から、所信表明演説で約束した4つを述べられて、ただ1点、より具体的になったと強いて言えば、「揮発油税を含む道路特定財源を見直しの対象とする」、こういうことを総理は明確にされました。今日、これでやや大騒ぎになっているわけでありますが、今お話があったように、「納税者の理解を得つつ」というのは小泉内閣のときにも使われ、行革推進法でも入っているわけでありますし、安倍総理の最初の所信表明演説でも使っているわけであります。

今、猪瀬委員からお話がありましたように、誰を納税者と呼ぶのか。とかく業界等々ではないのかという今のご指摘がありますが、我々の基本的な議論のスタートは、実は免許保有者を見てみますと約7,900万人おります。ということは全有権者に近いというふうに考えるべきだろうと思っています。それから、道路財源を税として負担しているであろう自動車を、自家用車と事業用に供されている営業車と分けますと、自家用車、つまり白ナンバー、一部社用車とか入っていますが、それが約95%であります。残りが営業車になるわけであります。

こういうところを考えてみると、これはまさに国民の問題であるということで、昨日、総理は明確に、これは国民の立場から改革していかなければならない、道路特定財源を聖域なき改革の対象にしなければならない。その上で暫定税率というか、現行の税率は維持をして、さらに一般財源化の問題については、今申し上げたように揮発油税を含めて議論すべきではないか、ということを言っておられるわけであります。国民のための改革としてこれを位置づけてもらいたいという話があって、この上で我々としてはこれから与党とも議論をし、そして、政府の中でも議論をしていこうということでやっているところでございます。

今日、自民党の中でも議論が行われております。ことはそう簡単ではないのですが、地方の方々から大変な陳情もたくさん来ているわけで、我々としては、納税者というのは国民だという基本的な認識を忘れずに、これから約1週間の間に答えを出さなければいけないと思いますけれども、頑張っていきたい、このように思っておりますので、皆様方のご支援をお願いしたいと思います。

佐竹特別委員

ひと言だけよろしいですか。

本間会長

はい、どうぞ。

佐竹特別委員

この種のものは正しいことというのは幾つもあるわけですね。何が絶対正しいかということはないわけです。ただ、実態として財政再建をどうするのかというのは片方にあるわけです。硬直的な意見を言うつもりはございませんが、実際に我々が現場にいますと、いわゆる免許を持った普通の方々からの道路の要望が3分の1くらい。特に地方にまいりますと、お医者さんが地方都市にはいない。例えば秋田県では秋田市しかいない。バスは過疎地域はほとんどなくなる。鉄道はもう全然使いものにならない。その中で、一家に2台、3台、車がないと生活ができないという前提もあるわけです。しかも救急車も走らせなければいけない。

ですから、道路、これで全部つくってどんどん行くという話ではないのですけれども、道路を単に道路と見るのか、これからセーフティネットも含めてどうすべきかという本質論と両にらみでいかないと、この問題はなかなか解決しない。そういうことではなかろうかと思います。我々は、ただ単に道路をどんどんつくれと言っているわけではありません。地方も含めて、いかに国民生活を快適にして経済流通をきっちりするのか。この本質論を踏まえてやらないと国民の理解は得られない。今は、国民の理解というのは道路ではむしろ得られない方向になっている、そういう雰囲気がしますけれども、これ以上は話しません。

本間会長

どうぞ、官房長官。

塩崎官房長官

一点、大事なことを言うのを忘れましたが、昨日、総理は、真に必要な道路はつくっていくけれども、道路特定財源で自動的に道路ができてしまう仕組みというものを変えよう、こういうふうに言っているわけです。私も選挙区は田舎でありますから、道路が必要なことはよくわかっておりますが、この場合の議論で、財政全体の体質とか再建の問題とかいうのを忘れる傾向もややあって、道路は道路としてもちろん必要であるわけですから、5カ年計画とかいろいろなものがあると思います。

いずれにしても、真に必要な道路はつくっていくけれども、今の自動的に財源が道路になっていくという仕組みは考え直していこうではないか、こういうことでありますので、地方への配慮というか、要望があることは十分認識した上で、今回、この議論は当然なされていくものだというふうに思います。

本間会長

まだまだご議論の余地があるかと思いますが、時間が押しておりますので、この辺で大臣とのやり取りは終了させていただきます。

今後の審議の進め方につきまして、私のほうからメモを用意いたしております。そのメモに沿いながら説明させていただいた上で、ご意見がございましたら承りたいと考えております。

「今後の審議の進め方について(会長メモ)」を見ていただきたいと思います。これまで諮問の中にもございましたし、答申の中にも書いておりますが、政府税調のこれから果たすべき機能としては、調査分析機能、広報・広聴機能、この2つを従来にも増して強化していきたいと考えております。

この進め方については、下のポンチ絵的なものを見ていただきたいと思います。総会、企画会合の下に「調査分析部会(仮称)」、「広報・広聴部会(仮称)」、この2つをつくらせていただいて、それぞれの委員の皆様に入っていただき、広報・広聴的な部分のところは、役所、利害関係団体、一般国民、いろいろな層があると思いますが、それぞれタイミングを見計らってお話を伺う。それから、我々が出かけていって税をわかりやすく説明させていただく機会を持つ。こういう双方向性でやってまいりたいと思います。その際には皆様のご協力をよろしくお願いいたしたいと考えております。

それから、調査分析部会でございますけれども、これは総理からも諮問の中で強く要請されている部分でございます。ここにつきましては、全員、この部会にそれぞれご専門のところを中心にして協力していただくということと、その下に「作業チーム」、これは今、専門委員をお願いする人選リストをつくって、これが決定する段階までもう少し1週間くらいかけてやってまいりたいと思います。ここは経済学者あるいは税務の専門の方々に入っていただいて、マクロ経済の方にも入っていただいて、しっかりとしたタスクフォースをつくってまいりたいと思います。この作業チームに内閣府、財務省、そして総務省も調査部門のところをリンクして、効果が上がる体制をつくってまいりたいと考えております。

年明け以降の進め方でありますけれども、この点についてどのような形で調査分析を進めていくかということ、体制あるいはテーマについてもしっかりと固めた上でスタートを切ってまいりたいと考えております。

その上で、これはぜひ1月早々にやってまいりたいと考えておりますが、我々は11月7日に任命されて突貫工事で今年度の答申をまとめました。どんな領域の委員であるか相互に存じあげない部分もございます。したがって、汗をかく税調としてはまず我々委員が範を垂れて、自らの専門領域の中で税制との関係性についてプレゼンテーションをお願いし、相互の理解を深めていくということを正月明けから精力的にやってまいりたいと考えています。まず内輪を固めて論理構成をして、そして他の方々の意見を聞き、そのベースになる調査分析機能をその裏打ちとして強化する、こういう考え方のもとでやってまいりたいと考えております。

そして最後に、大田大臣に先ほどお話しいただきましたように、経済全体との関係の中で経済財政諮問会議と協調関係を組み連携を強めて、わが国が税制の面においてもしっかりとした体制の中で進んでいく。こういう流れをつくってまいりたいと考えておりますので、ぜひその方向性で進めたいと考えています。

調査分析をそのような形で進めますと同時に、広報・広聴部門では、先ほど財務大臣からお話がございましたとおり、税制は「民主主義の学校」という言われ方をしているわけで、小学校教育、中学校教育、あるいはその上の教育においても、国民の義務と受益という観点から、この面においても我々ができる範囲の中でしっかり推進していきたいと考えております。

私の考え方はこのメモに沿ってでございますが、これに対してご意見がございましたら、お願いいたしたいと思います。

はい、どうぞ。

横山委員

今の調査分析に関する件でございますが、大田大臣も、諮問会議と審議会のデータ手法の共有化が必要だというご指摘で、私は非常に重要なご指摘だと思っております。それで、これも先ほど会長のお言葉にあったのでございますが、内閣府、財務省、総務省それぞれに調査部門がある。ここの相互間のデータ手法の共有化、いい意味で知恵を出し合う、こういう仕組みをお考えいただきたい。

それから、経済財政諮問会議が抱えている問題やこの調査会が抱えている問題について、例えばそれぞれの調査部門あるいは研究所に特別のチームなり、研究課題をテーマとしたチームをつくっていただくことが可能なのかどうか。これは、予算やさまざまな研究所や調査部門のお考えはあるかもしれませんが、行政府内の調査機関であるとすれば、行政府が目指している方向性に対して、やはりすべてが一丸となって知恵を出し合うような仕組みをお考えいただきたいと思っています。

本間会長

ありがとうございます。

増渕委員。

増渕委員

ごく簡単な質問が1点と、若干意見めいたことが1点です。2つの部会というのは、特別委員はその両方に全員が所属するということなのでしょうか。それが私の質問です。

2つ目は、ここ数年の税収は当初の見積もりと実績がかなり乖離するといいますか、自然増収があるわけです。あるべき税体系を議論するときに、経済全体の姿がどうなるか、その中で税収がどうなるかということは実際問題として議論に大きく影響すると思いますので、経済財政諮問会議で描かれている経済の姿、財政の姿を十分頭の中に置いて議論する必要があると思います。本間会長は経済財政諮問会議で話をされる機会があるのは大変ありがたいことだと思いますが、それと同時に、いわばその逆方向の、経済財政諮問会議で実際にどういう姿が描かれているかということについての情報も、税調での私どもの議論の前提として教えていただければと思います。

本間会長

出口委員。

出口特別委員

広聴に関することでございますが、広聴のジレンマというのがございまして、これは、いろいろな方から意見を聞いた場合、利害の対立することがあって、聞けば聞くほどどちらかに決めなくてはいけないというときに不満がたまるという局面があるわけです。我々は何を聞きたいのか。つまりこの場でわからない情報、あるいは、我々がロジカルに考えたときに、現場に即したときにどういう影響があるのか。どういった点を集中的に聞くのかということを含めてぜひお考えいただきたい。この点は非常に難しい問題をはらんでおりますし、かつ、本間税調の一番重要なポイントだと思いますので、重ねてお願いしたいと思います。

本間会長

時間もございません。申し訳ございません。3時を過ぎているということもございまして、大田大臣、今、増渕委員から経済財政運営との関係、諮問会議の議論の内容、それを双方向でどうするかということでございます。お願いいたします。

大田内閣府特命担当大臣

来年1月に、今後5年間の経済財政の中期展望、中期方針を発表しようとしておりまして、今、その議論に入ったところです。その中で経済のあるべき姿というものを描いていきたいと考えております。この税調には毎回、渡辺副大臣も出席しておりますので、頻繁に、経済のあるべき姿と税の関係というような意見交換をさせていただければと思います。

本間会長

それでは、税調にかかわる問題について私からお答えさせていただきたいと思います。

横山委員が、調査分析機能を高めていくためには内閣府、財務省、総務省が持っている各調査機能と、我々がここで強化していく部分をどのように接合していくのか、あるいは、研究所等の今までの蓄積の部署をどのように活用するのか、こういうご指摘でございます。これについては整理をして、次の会合でもう少し具体的なやり方についてご相談させていただきたいと思います。

それから、増渕委員のメンバーの問題でございます。これは、全員が両方に入るというのはとても大変でございます。ただ、重点的にどちらかに入っていただきながら、場合によっては相互が協力して意見交換をしたり、あるいは広報・広聴機能のところで参加していただくという具合に実質の面でちょっと調整する形で、配属の部分については全員ということではない形で今のところ私はやりたいと考えております。そのメンバーのどちらに入るというようなことは、ご自身のお考えもあろうかと思いますが、相談させていただきたいと思っております。

それから、出口委員の広聴のジレンマ、これは大変重要な問題でございまして、私はこのペーパーでは書いておりませんけれども、インターネット等でもご意見を賜わる。そして、小泉総理時代のメルマガ的なものを解説的な部分を含めてやってまいりたいと考えておりますが、特定のところがギュッと集中的に来たり、どういう具合にそれに対して応えていくかというのは難しい部分もございます。したがってこの点については、その都度その都度、目的が何であるのかということを整理して、そしてその機会のときには、どういうことが主眼であるかということも皆様に意識していただきながら、広報の部分における効果と、その後のどういう形で扱っていくかということの難しさというものを、これはケース・バイ・ケースになるかもわかりません、アドホックベースになるかもわかりませんけれども、しかし、ぎりぎりのところで我々が一生懸命国民に訴えかけるというスタンスこそが重要だと考えておりますので、ぜひご協力をいただきたいと考えております。

そのほか、時間が押しておりますけれども、何か今の段階で。

はい、どうぞ。

原特別委員

この3番目の経済財政諮問会議との連携に加えて、政府税調で議論する内容は非常に重要でありますし、わが国の将来の戦略という基本の一つになっていきますから、ここで、与党の税調との連携、意見の交換等々に関して、いろいろな方法があると思いますが、ひとつご検討いただければと思います。

本間会長

その点につきましては、官房長官等も含めて相談させていただいて、どういう形でできるかということも皆様にお諮りさせていただきたいと考えております。そのポイントは大事だと思いますので。ありがとうございます。

ほかにいかがでございますか。よろしゅうございますか。

それでは、次の会合でこの問題について、今後の我々の活動あるいは調査会における進め方、これをもう少し具体的にご相談させていただきたいと思っております。その際にまたご意見をいただければと考えております。これは12月22日を予定いたしております。先ほどの原委員のご発言にもありますけれども、党の税調、あるいはそれをどのように予算の中で具体化したか、こういう報告もこの22日の会合ではしていただく、こういうことも考えております。

何かご質問ありますか。

大橋特別委員

22日については私たちは何も伺っていないのですが。

本間会長

それは失礼いたしました。今のところ、12月22日(金曜日)に開催する予定でございます。

大橋特別委員

時間は。

本間会長

時間はまだ確定していないそうでございます。申し訳ありません。

走りながらやっておりまして、私、最後に皆様に本当に感謝の気持ちをあらわしたいと思います。11月7日に発足して、新体制、これは内閣府の参加も含めて、大変ご心配をおかけいたしましたし、これからの税調の中長期的な課題等についてもご心配をおかけいたしました。しかし、何よりもこの3週間弱で来年度の税制改正に結びつけられましたことは、皆様のご協力なしにはできなかったことだと考えております。本当にありがとうございました。

今日は、これで終わらせていただきたいと思います。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。