総会(第2回)議事録

日時:平成18年11月22日(水)14時00分~
場所:総理大臣官邸大ホール

本間会長

それでは、時間がまいりましたので、ただいまから税制調査会第2回総会を開催いたします。お忙しい中ご参集いただき、まことにありがとうございます。

本日はこれまで精力的に行ってまいりました審議の状況について、その概略を報告し、その後、ご議論をいただく予定でございます。「平成19年度の税制改正に関する答申」のとりまとめも念頭に置きながら、有益な議論をしたいと考えております。

さて、本日は、7日の総会でご都合によりご欠席されました菅総務大臣がお見えでございますので、議事に入る前にご挨拶をいただきたいと思います。

大臣、よろしくお願いいたします。

菅総務大臣

ご紹介にあずかりました総務大臣の菅でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。前回の総会の際には、国会の都合で出席できませんでしたので、改めてこの場をおかりしましてご挨拶をさせていただきます。

新しい内閣のメンバーのもとに、新しいメンバーで税制調査会が発足したわけでありますけれども、これまで税の問題に関しては、国民の実感として、納得できる説明がないとか、あるいは複雑でわかりにくい、そうした面も多々あったように思っております。

新しい税制調査会では、中長期的な「あるべき税制」の全体像、さらには個々の政策課題に応じた税制改正等について、ご審議をいただくわけでありますけれども、わかりやすい言葉と、そして、明快な説明で国民にメッセージを発していただきたいと思っております。

その際、税制調査会の運営方法も含めて、これまでのスタイルや枠組みにとらわれることなく、斬新かつ戦略的な発想を期待いたしておりますので、ぜひともよろしくお願いを申し上げます。

特に当面する課題につきまして、2点申し上げさせていただきたいと思います。

第1点目は、経済活性化の重要性であります。企業の国際競争力を強化するなど、成長力・競争力の強化により、持続的な経済成長を実現し、改革の先にある展望を示すことが政府の最も重要な課題になっております。ご承知のとおり、我が国経済は、平成14年を谷として、民間需要中心の経済成長を続けております。今後ともこの成長を息の長いものとしていくとともに、大企業から中小企業、都市から地方、そして、企業から家計へと、その成長の波を広げていただきたいと思っております。

税制調査会では、すでに3回にわたり専門家・実務家によるグループ・ディスカッションを行い、平成19年度税制改正に向けた主な事項について、掘り下げた議論が行われていると、このように伺っております。本日の総会からは、いよいよ19年度税制改正答申に向けた議論の集約が行われますが、経済社会の活性化に向け、制度インフラとしての税制のあり方や、当面する税制上の諸課題について、十分なご審議をお願い申し上げたいと思います。

そして、第2点目は、地方分権の推進と地方税の充実についてであります。魅力ある地方、自立する地方を作るため、分権改革を強力に進めていく必要があると思っております。当面、地方分権改革推進法案を今国会に提出をされておりますけれども、関係各位のご努力をいただいて、何としても成立をさせていただきたいと思っています。

地方税はそうした地方分権の基盤となるものであり、引き続き地方税の充実を図り、地方団体の歳入構造というものを、地方税中心のものにしていかなければならないと思っております。

経済財政諮問会議におきましても、私から、国と地方の税収比というのは1対1にしたいという具体的な数値目標や、偏在度の小さい地方税体系の構築等について、提案をさせていただきました。住民が身近なところで税を納めて、そして、その使途をチェックすることによって、効率的な行政の実現や地域の活性化につながっていくと考えております。

税制調査会におきましても、地方分権や、これを支える地方税の重要性にご理解を賜りながら、抜本的な税制改革の中で、あるべき地方税というものを十分ご審議をいただきたいと思っています。

簡単でありますけれども、本日の審議に先立ちまして、私の考え方等を述べさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

本間会長

菅総務大臣、どうもありがとうございました。

それでは、本日の議事に入ります。

これまでの審議の状況等については、お手元にお配りしております日程表にまとめてございますが、当調査会は、7日に第1回総会を開催し、総理より諮問を受けた後、9日には企画会合を開催いたし、審議に当たっての視点等について議論いたしました。

また、19年度税制改正の答申の策定に向け、限られた時間で充実した議論をするため、14日、15日、21日と3回のグループ・ディスカッションを開催し、設定したテーマに沿って、集中的な審議を行ってまいったところでございます。

それでは、審議の状況につきまして、まず、私からご説明させていただき、その後、各グループ・ディスカッションについて、各主査等からご報告をさせたいと考えております。その後、自由討議を行うことにいたしております。

それでは、私から、これまでの総論的な部分についての要約を、まとめてお話しさせていただきたいと思います。

税制調査会の使命につきまして、まず意見を賜りました。

新しい税調には、我が国の21世紀における社会経済構造の変化に対応した総合的な税制改革の審議を行うことが求められているところでありますが、その際、議論の透明性を高め、国民に対する説明責任を果たしていく必要があるといったご意見や、広報広聴の機能の充実が重要であるといったご意見がございました。

また、税調に求められる重要な役割は、経済・財政との関係というマクロ的な視点、企業や家計との関わりというミクロ的な視点の両面からの調査・分析があるが、この調査・分析機能の強化を図るべきとのご意見が多く出されました。

さらに、個別の税目だけを論ずればよいのではなく、税制全体、さらには社会保障制度などの関連する諸制度とも関係づけた有機的な議論を行っていく必要があるというご意見もありました。

こうしたご意見を踏まえ、税調においては、調査・分析・議論を基礎に、総合的な税制改革のグランドデザインを、国民にわかりやすく示していくことがその使命であると考えております。その際、政策論議の透明性を高め、国民に対する責任を果たす観点から、広報広聴の果たす役割を重視し、情報発信の強化とあわせて、広く国民各層・各分野の声を聞いていきたいと考えております。

次に、総合的な改革に向けての視点でございます。諮問にある総合的な税制改革に向けて、今後我々はどのような視点で議論を行っていくべきかについて、ご意見をいただいたところでございます。

「総合的な税制改革」の審議の際に最も留意すべきことは、少子・高齢化、グローバル化がさらに進む21世紀半ばの我が国経済社会を見通して、「成長力・競争力の強化」「財政健全化」「健全で安心できる社会の実現」という相互に関連する改革に一体的に取り組んでいくということが肝要であると考えます。

この点について、成長の持続や財政規律の維持が重要といったご意見や、様々な与件のもとで長期的な持続可能性を維持できるよう、税制をバランスよく議論する必要性があるというご意見がございました。

まず、税制を議論する際に、財政全体にわたって、政府がこれまでどう取り組み、今後どのような方針で臨むのかを委員の間で共有しておくことは重要であると考え、私のほうから審議に当たりその概略をご説明したところであります。

まず、これまでの取り組みとして、「改革なくして成長なし」の考え方のもと、構造改革と財政健全化に取り組み、民需主導の景気回復を実現し、平成13年度からの第I期で、歳出で6兆3,000億円、歳入で9兆円、合計15兆3,000億円のプライマリーバランスを改善したところであります。

今後の取り組みとして、プライマリーバランス黒字化のため、平成23年までの第II期で、歳出の削減及び歳入の増による「歳出・歳入一体改革」を行っていく必要性がございます。

その際、政府の取り組みとして、第1に、国民負担の最小化として歳出削減を徹底すること。第2に、成長力・競争力にしっかり取り組むこと。この2本柱で取り組んでいくこととしているところでございます。

後者に関しては、いわゆる7つの分野での改革(グローバル化改革、労働市場改革、生産性改革、地方分権改革、社会保障政策、政府改革、税制改革)に取り組んでいくという方針であります。

この報告を受けて、委員間でこの認識のもとに議論をスタートしたところであります。

引き続きまして、経済活性化と法人税制についてであります。

経済が活性化することによって、現役世代や高齢者など、国民各層にどのようなメリットがあるのかや、労働分配率や付加価値配分の状況などの影響を示すことが必要である、との意見があり、関連して法人課税の実効税率については、法人課税の負担の国際比較について、実効税率での国際比較、国民所得比での国際比較だけではなく、税率に課税ベースを合わせた企業の実際の負担の比較が必要であること、また、法人所得課税のみならず、賃金税などほかの税、さらには社会保険料も含めたトータルな負担で比較すべきこと。こういうことが意見として多かったということでございます。

以上のような国際比較、企業部門への活性化が雇用や所得を通じて、経済全体にどのように波及するかといった効果についての調査・分析を行い、バランスのとれた税体系全体の中で、しっかりと検討を深める必要性があろうと考えております。

第3番目は、総合的な税制改革の大きな流れの中での平成19年度税制改正であります。当面、我々は平成19年度税制改正に取り組まなければなりません。1ヵ月足らずの短い時間で、その考え方をまとめていかなければならないわけでありますが、これまで申し上げたような今後取り組む総合的な税制改革の検討の視点との整合性を考慮しながら、速やかに対応すべき課題にはしっかりと答えていくという考え方で議論を進めていかなければなりません。

審議した項目の詳しい議論紹介は、この後、各主査より報告をお願いしたいと考えております。

以上、税制改革の使命や総合的な税制改革に向けた視点など、総論的な議論を中心に紹介をさせていただきました。

これから各主査から審議の状況の説明をお願いしたいと思います。

それでは、国民生活関連をテーマとしたグループ・ディスカッションについて、翁委員から報告をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いをいたします。

翁委員

今日は井堀主査がご欠席ですので、私のほうからご報告させていただきます。

第1回のグループ・ディスカッションにおきましては、「国民生活に関連する税制」について議論が行われました。19年度税制改正に向けて取り上げる課題としては、金融証券税制等、個人住民税、納税環境整備の3つについて、集中的に審議を行いました。

まず、金融証券税制ですが、この背景について簡単にご説明いたしますと、少子・高齢化の進展を背景にいたしまして、貯蓄率が低下する中で、今後の人口減少社会においては、個人の金融資産を効率的に活用していくことが、今後の経済の活力を維持するための鍵となります。このため、近年、金融商品間の課税の中立性を確保して、簡素でわかりやすい税制にしていくということで、分離課税制度を基本として、課税方式の均衡化、源泉徴収のみで申告不要とする仕組み、繰越控除制度の導入など、金融所得課税の一体化に向けた様々な措置が講じられてきました。

今回議論になっております株式等の配当や譲渡益につきましては、原則20%の分離課税とされています。これらの措置は、「貯蓄から投資へ」の政策的な要請というのが背景でございます。

19年度改正につきましては、このような近年の金融所得課税一体化の流れの中で、19年度末に期限切れとなる上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率10%について、これを期限の到来とともに廃止して、20%に戻すかどうかということが一つの議論の焦点になっております。

議論の概要につきましては、お手元の資料にもございますが、簡単に申し上げますと、まず、今後とも金融所得課税の一体化は進めていくべきであり、その方向に沿って優遇税率のあり方についても検討するべきである。その際、「貯蓄から投資へ」を引き続き進めていくというメッセージは、明確に打ち出していくべきである、というご意見がございました。

次に、金融証券税制の優遇措置につきましては、10%の優遇措置を期限の到来とともに廃止し、本則の20%に戻すべきという意見が多数ございました。

その意見の背景としてありました主な意見をご紹介いたしますと、株式市場の活性化、不良債権問題の正常化など、経済状況は大幅に改善し、優遇税率導入時の異例な経済状況はすでに終了している。

それから、臨時異例の緊急措置である優遇税制は、20%に戻すべきである。株式保有は高所得層に多く、国民の公平性の観点からも、優遇税率の廃止は理解が得られる、といったご意見がございました。

他方、20%税率への復帰は時期尚早というご意見や、20%税率に戻すに当たって、市場への影響をどう考えるのか、というご意見もございました。

次に、個人投資家の投資リスクを軽減し、リスク資産への投資を促進するため、金融所得間の損益通算の範囲を拡大することを検討すべきである、というご意見がございました。その際、金融番号制度ですとか、資料情報制度、特定口座の利用といった税の執行面についての検討が必要である、というご意見がございました。

また、配当の法人段階・個人段階での課税に関する調整について、どう考えていくのか。日本の将来を支える実業や技術育成に資金が供給されるように、リスクに配慮した税制上の優遇措置が考えられないか、というご意見もございました。

納税環境整備につきましては、こちらにも書いてございますが、制度の矛盾などがあれば直すなど整備を進めるとともに、納税者の利便性の向上に資するようにしていくべき、というご意見がございました。

個人住民税につきましては、3兆円の税源移譲に伴って、所得割が10%比例税率化され、応益性が明確になることも踏まえ、その充実を図るべきとの観点から、均等割の税率を引き上げることが必要である。所得割について、個人住民税の課税ベースの拡大について、本格的に議論すべきである、といったご意見がございました。

また、納税環境整備の観点から、公的年金受給者の利便性向上等を図るため、個人住民税の公的年金からの特別徴収を早急に導入することが必要である、といったご意見がございました。

さらに、そのほか税源移譲に伴う所得税及び個人住民税額の変動理由について、税負担増と誤解されないように、様々な工夫をしていくことが必要であるというようなご意見もございました。

以上、簡単でございますが、第1回のグループ・ディスカッションの報告とさせていただきます。

本間会長

どうも、翁委員、ありがとうございました。

次に、「新しい動き」への対応をテーマとしたグループ・ディスカッションについて、中里委員からご報告をお願いいたします。

中里主査

第2回のグループ・ディスカッションにおいては、最近における経済法制の整備などの「新しい動き」への対応をテーマとして議論をいたしました。また、あわせて中小企業関連税制についても議論を行いました。

このテーマにつきましては、19年度税制改正に向けて取り上げる論点として、三角合併の解禁への対応、信託制度の抜本的見直しへの対応、リース会計の見直しへの対応、国際課税、留保金課税、事業承継、これらについて集中的に審議を行いました。

それでは、議論の概要についてご説明いたします。

まず、第1に三角合併でございますが、これは信託制度の抜本的見直しとともに、昨今、会社法や信託法といった経済法制を現代化し、制度の自由度を大幅に高め、経済主体の選択肢を拡大する方向で見直しが行われている中の一環として捉えることができるものでございます。

グローバル化が進み、経済環境の変化に迅速かつ柔軟に対応した企業経営を行うことが必要とされる中で、会社法の施行により、三角合併が来年5月から可能となり、企業の組織再編のための選択肢が拡大されます。

三角合併は、合併の結果消滅する法人の株主に対して、合併法人ではなくて、合併法人の親会社の株式を交付するものでございますけれども、これが会社法上認められるようになった結果、合併法人の親会社が海外にある場合でも合併ができるようになります。したがって、これまでは認められていなかったクロスボーダーでの組織再編が認められることになり、対日直接投資の促進にも資するものと言われております。

一方で、三角合併を解禁しますと、敵対的買収が増えるのではないかといった懸念も指摘された結果、会社法本体の施行よりも1年おくれて平成19年5月に施行されることとなりました。したがって、三角合併に対応する税制につきましては、平成19年度の改正で適切に対応を検討することが求められており、こうした背景を踏まえて議論を行いました。

グループ・ディスカッションの議論においては、中堅企業が外資に買収されるといった懸念などから、三角合併自体や、それに対応する税制の整備に慎重なご意見もございましたけれども、日本経済の成長を促すため、M&Aの活発化が重要であり、また、三角合併が租税法で事実上禁止されるようなことになれば、海外投資家に悪印象を与えること、それから、三角合併の解禁については、すでに法律で定められていることから、租税制度においても、課税繰延べを基本的に認める方向で、現行税制と整合的な形で整備を図るべきである、といったご意見が多かったように思います。

また、三角合併を利用した国際的な租税回避の防止についても議論がなされ、制度が濫用され、将来我が国の国庫に入るべき税収が外国に流れていってしまったり、あるいは、タックスヘイブンにある子会社を利用した租税回避が起こってしまうことのないよう、租税回避の防止策を講ずる必要がある。この点につきましては、概ねコンセンサスが得られたのではないかと思います。

次に、信託制度につきましては、社会経済活動の発展や多様化に対応し、経済主体の選択肢を拡大する観点から、その抜本的見直しが現在国会において審議されており、信託法の改正が成立すれば、信託の利用が大幅に多様化されることになります。

例えば、信託の新たな利用形態の一つとして、信託制度が事業を行う一つのツールとしても活用されるようになり、これにより、我が国経済における事業形態の多様化がさらに進められることになります。こうしたことから、税制においても、新たな信託の利用形態に応じ、課税の中立・公平に即した適切な対応が求められております。

今回の議論におきましては、事業を行うためのツールとして、信託が利用されるような可能性が開かれてきた中で、例えば、会社が事業の一部を信託した場合に、現行信託税制のままでは法人税が課税されないといった問題点に対応し、実体として事業を行っている信託には法人課税を行うなど、課税の中立・公平の観点から、法人課税が必要であるといった意見がございました。

次に、リース会計基準につきましては、取引の経済実態をより正確に反映させる観点から、会計基準の変更の議論が予定されております。税制上の取扱いにつきましては、企業のコスト負担とならないよう、会計基準の変更とあわせ、取引の経済的実体を反映させた取扱いとすべきといったところが、大方のご意見の集約であろうかと存じます。

さらに、国際課税につきましては、移転価格税制について、企業の予測可能性を確保するため、取引価格の算定方法について、税務当局が事前に確認を行うところの事前確認制度を十分に活用していくべきである。あるいは適用基準の明確化をさらに進めるべきである。また、国際的な税務当局間の協議(相互協議)を迅速化すべきである、といったご意見がございました。

また、現実に独立企業間価格の確定までに一定の期間を要していることから、二国間の協議で合意が得られるまでの間、二重課税に伴う負担を軽減するため、納税を猶予する制度を導入すべきであること。この点につきましては、特にご異論はございませんでした。

さらに、外国子会社の合算税制について、グローバルな経済環境の中での企業の活動実態を踏まえ、合算対象子会社の範囲の見直し等の適正化を随時行っていく必要がある。この点についても特にご異論はございませんでした。

さらに、留保金課税でございますけれども、これにつきましては、まず、少数の株主が支配する同族会社について、租税負担の回避が行われる恐れがあることを考慮したこの課税制度には、長年の議論の蓄積がございます。こうした課税制度の一環として、給与所得控除や、所得税と法人税の税率格差を前提とした課税の仕組みである留保金課税の制度を残すべきであるとのご意見がございました。

他方で、中小企業の育成の観点から、中小企業にとって必要な自己資本の充実を図るため、創業初期の企業に対する支援など、企業家の視点に立った政策的な見直しが必要であるというご意見もございました。

中小事業者の事業承継に関する相続税の特例措置につきましては、拡充すべきとの意見がある一方で、ベンチャー企業と従来型の同族企業とでは、性格が異なる側面もあり、こうした点も含めて、基本的な考え方の整理を行っていく必要があるのではないかと考えております。

第2回のグループ・ディスカッションの報告は以上でございます。

本間会長

中里委員、ありがとうございました。

引き続きまして、「経済全体の活性化等」をテーマにしたグループ・ディスカッションについて、田近委員からご報告をお願いいたします。

田近主査

それでは、昨日ですけれども、第3回のグループ・ディスカッションを行いました。その概要を説明させていただきたいと思います。

まず、今、会長から説明がありましたように、第3回のディスカッションでは、「経済全体の活性化等」をテーマとして議論を深めました。また、あわせてこれまで審議において取り上げられた法人税関係の基礎的な論点についても議論がありました。

このテーマについて、19年度改正、税制改正に向けて取り上げる論点として、減価償却制度の見直し、地方法人課税、道路特定財源、環境税、企業関係租税特別措置について、集中的に審議を行いました。

以下、それぞれについて説明いたします。

まず第1に、減価償却制度ですが、これは経済全体の活性化等に向けた喫緊の課題として、企業の国際競争力を強化するため、国際的なイコールフッティングの観点から、早急に見直しに取り組むべきだという指摘がなされているものです。

具体的にはどういう問題があるかということですけれども、取得価額の95%までしか償却できていないという償却可能限度額についてどう考えるか、法定耐用年数についてどう考えるか、償却カーブの傾きについてどう考えるか、といった論点が指摘されています。したがって、減価償却制度については、平成19年度税制改正において、適切な対応を検討することが求められており、こうした背景を踏まえて議論を行いました。

グループ・ディスカッションの議論においては、国際的なイコールフッティングの観点から、償却可能限度額は撤廃すべき。つまり100%まで償却すべき。

産業構造の変革により、償却のスピードが速くなっており、現行よりも加速的な償却を認めるべき、といった意見が多く出ました。

また、特例措置としてではなく、本則として減価償却制度の見直しを行うべきということについて、概ねコンセンサスが得られたのではないかと思います。

また、償却制度の見直しと企業会計の関係については、利益操作可能な任意償却は問題であるという意見がある一方、中小企業の収益を確保するためには、任意償却を維持することが必要だという意見がありました。

減価償却制度の見直しと固定資産税の評価との関係においても議論しました。

これについては、費用計算の問題である法人所得課税と、課税対象の評価の問題である固定資産税は、性格が異なる。

外国の例を見ても、法人所得課税と財産税は償却方法が異なっている。

固定資産税は、応益原則に立った税であり、使用している限り課税すべき。

市町村への財政上の影響も考慮する必要がある。

といった意見があり、固定資産税については、現行評価方法を変更する必要はないとの意見が多かったかと思います。

一方で、これに対して、固定資産税の評価と法人課税上の減価償却とで違った扱いをしていいのか、という議論もありました。すなわち、性格が異なるものとして理論を整理できるのか、執行上の問題がないのか、といった意見がありました。

以上が減価償却についてです。

次に、地方法人課税については、外形標準課税について事務局より説明があり、これについて議論を行いました。

特に外形標準課税は、資本金1億円超の法人のみが対象となっていることから、資本金を減らす、減資により資本金を1億円以下にしている法人が見られるという問題が生じています。これについては、資本金の操作により課税を逃れている実態は問題であり、手当てが必要である。将来的には外形標準課税そのものを拡充すべきではないか、といった意見もありました。

次に、道路特定財源についてです。道路特定財源については、行革推進法で現行の税率水準を維持する。一般財源化を図ることを前提に、納税者の理解を得つつ具体案を得る。ということとされています。

総理の所信表明演説においても、こうした基本方針のもとに、年内に具体案をとりまとめることとされています。

グループ・ディスカッションの議論においては、税調としても一般財源化を強く打ち出すべきという意見。

そして、これまでの税調答申で指摘しているように、現行税率を維持し、暫定税率を本則化すべき。

あるいは、地方をはじめ道路が足りないとの主張があるが、道路建設の費用対効果を分析すべき。

あるいはまた、地方の道路特定財源については、道路整備の要望が強い一方、道路事業に占める特定財源の割合が低く、オーバーフローが生じていないことなどを踏まえ検討すべきだという意見。

そしてまた、地方の道路整備は、高齢化対策や医療対策といった側面もあり、非常にニーズが高いことを考慮すべき。

といった様々な意見がありました。いずれにせよ、国・地方を通じた現下の厳しい財政事情などを考慮すると、先ほど申し上げました基本方針のもとで、道路特定財源の見直しの検討を進めていくことについては、概ねコンセンサスを得られているのではないかと思います。

次に、環境税に移ります。これについては、一昨年、昨年と政府税調でも議論してきました。今回もグループ・ディスカッションにおいて議論し、日本人の環境意識は高いが、なかなか行動に移せないため、それを後押しするための環境税を創設すべきではないか。

あるいは、環境税に消費抑制効果はなく、環境税の導入には反対である。その効果は疑わしいという意見ですけれども、といった意見があったように思います。

今回の議論であったように、環境税をめぐる議論については、その創設・導入も含め、関係者間でも様々な意見があり、環境税の温暖化対策全体の中での具体的な位置づけやその効果等といった点を踏まえ、今後も総合的に検討していく課題であるかと思います。

次に、企業関係の租税特別措置ですけれども、まず、租税特別措置については、整理していく必要があるとの意見がありました。

また、企業の子育て支援に関する税制要望について、事務局から紹介がありましたが、それに関係して、子育て支援について意見がありました。すなわち、我が国の女性就労が欧米諸国と比べ抑制されている実態を踏まえ、中低所得の夫婦世帯に対する支援措置が必要である、といった意見がありました。

さらに、特定資産の買換え特例については、地域格差の税制に資する面もあることから、延長すべき、といった意見もありました。

最後に法人実効税率ですけれども、法人税だけでなく、他の税目で社会保障負担も含めた国際比較が必要だと。

あるいは、法人税をEU諸国に合わせて国際並み標準にするならば、消費税についてもEU並みにすべき、あるいはそういう検討が必要だという議論もあってもよいのではないか、というご意見がありました。

19年度改正での対応は、総体的に時間的に難しいかもしれないが、法人の実質負担を国際的にイコールフッティングにするという方針を答申に明記すべきだという意見もありました。

そして、製造業の国際競争という観点からは、アジアとの比較も重要、といった意見もありました。

法人実効税率については、年明け以降、引き続き様々な角度から調査・分析を進めていくことが課題になっていくと思います。

以上、第3回のグループ・ディスカッションです。

本間会長

田近委員、どうもありがとうございました。

それでは、今までの説明を踏まえて、答申のとりまとめを念頭に置いて議論をしたいと考えております。

配付資料として、「項目」という1枚紙を用意させていただきました。これはただいま我々が報告した項目を整理したものでございますが、私としては、これらの項目を頭に置いて、答申をとりまとめていきたいと考えております。お手元に置いて参考にしていただければと思います。

また、出口委員から信託税制に関して資料が提出されております。こちらについては、後ほど自由討議の中で出口委員からご発言いただきたいと思います。

それでは、自由討議を行います。どなたからでも結構でございます。ご自由にご発言をいただきたいと思います。

どうぞ、江川委員。

江川委員

第2回のディスカッションの時に、信託税制のお話があったかと思うのですけれども、自己信託などで法人同様の事業を行う信託が創設された場合に、それが課税回避に通じるかもしれないので、信託そのものに課税すべきではないかという意見が出ていたのではないかと思います。ただ、信託のそもそもの目的ということを考えた時には、ある目的のために、それ以外の債権債務関係から隔離をするということが一応原則なので、信託の税制というのは受益者に課税するというのが原則だと思いますので、そのために原則を曲げてしまうのは、問題があるのではないかということで、発言させていただきました。

私の理解するところでは、現行の制度でも、例えばある事業部門を信託銀行に信託してしまうと、結局、今想定されているのと全く同じ結果が生じて、その場合には信託銀行に課税されるのではなくて、受益者に課税されるというのが現行制度の関係ですし、それが一応信託の原則というふうに理解しておりますので、自己信託に限って信託そのものに課税するということですと、それとの齟齬が出てくるという問題もあるのではないかと思います。

それから、事業部門を自己信託することによって租税回避につながるのではないかというのが、本当にそこまで心配すべきものなのかということに関して、私は個人的に疑問に思いました。というのも、大きな事業部門を信託にするというのは、相当大きな企業の意思決定ですので、例えば取締役の決議ですとか、株主総会の決議ですとか、そういったことがどうしても必要となりますので、単に課税を回避するというような目的のためにそれを行うというのは、実質的に難しいのではないかと思いました。

本間会長

ありがとうございました。

今、江川委員のほうから信託税制の問題が提起されましたので、ここで出口委員にペーパーを用意していただいていますので、お願いします。

出口特別委員

それでは、お手元に、まことに僭越ではあったのですが、やはりこれからは、委員自らポンチ絵を描いていくということをしていくべきだろうと思って書かせていただきました。基本的には事務局が用意したものとほとんど一緒なのでございますが、本間会長が第1回目の時に、「温かい心で」、Warm Heartの日本語訳を使われたと思うのですが、そういったことも考慮しながら、今の点も含めて信託法を考えていかなければいけないかと思います。

お手元にありますとおり、今の委員の方のご発言がありましたとおり、通常は、一番上の図に描いてありますとおり、受益者がいて、受益者課税を原則としている、発生時受益者課税でございます。信託というのは、いわば導管である、パイプであるという信託導管論というのが今ご指摘になった点ではないかと思うのです。

これに対して、大正11年以来初めての大改正で、自己信託、事業信託、目的信託等があるということで、国会等でも租税回避に対する強い懸念が出されておりまして、これも今、会長が言われました、速やかに対応すべき課題というものをどこまで考えるかということに相なろうかと思うのですが、私が申し上げたい点は、大改正、信託法理論の根幹にかかわる大議論でございますので、どんな頭をもってしても、一度に100点満点の答えが出るわけではない。こういうものは税も法制も文化によるものでございまして、ある程度徐々に実態を見ていきながら、解決策を探っていかなければならないのかなと思っています。

私が申し上げたいのは、次の目的信託でございます。これも事務局のほうから出ていた図を使わせていただいております。下の表を見ていただきたいのですが、実は目的信託というのは、公益信託と非公益の信託がございます。今回新たに作られるようになりましたのは、この非公益の目的信託、表ではシャドウを打っている部分でございます。

現行ではどうなっているかというと、公益信託は3つに分かれているのでございますが、そのうち70%を占める普通の公益信託、この中には例えば信託を解除できない規定があったり、あるいは信託終了時、国に帰属するものであったり、さらに、信託管理人を置いて、それから運営委員会を置いて、言ってみたら委託者が全く手をつけない公益的なものもあるわけでございます。

これが何年かたったあとに、相続人が受託者に行っている信託財産を相続税に加算されて相続税を払わなければいけないという形が原則になっておりまして、これはそこに書いてありますとおり、応益も応能もない者に納税義務を負わせるというような租税理論上極めて大きな問題を抱えるようなことも出てくる話でございます。

このように信託に関しては、受託者と委託者の関係、様々なものがあり得るわけでございます。例えば、横に東大教授の中里先生がいらっしゃいますが、私が東大教授の子育て支援信託というものを仮に作れば、これは必ずしも公益とは言えない目的信託、今度の目的信託になるわけですね。ところが、中里先生が自分の相続税の回避のために、東大法学部の子弟の子育て信託を作って、なおかつ、中里先生のお子さんがそこにいらっしゃるような場合、これはやはり租税回避と見られるという、各事例をよく見ていかないとわからない問題である。

では、どういうふうにしていくかということで、法制審の信託法部会でこの辺がどの程度議論されているかというと、かなり突っ込んだ議論がされておりまして、法制審の信託法部会では、私はよくわかりませんが、限りなく公益に近くて、非公益目的信託というニーズはあるのだということになっておりまして、これがあるかどうかはよくわかりませんが、それとともに、一番下に書いてありますとおり、今年は信託法ばかりではなくて、民法が110年ぶりに改正するという司法上の大きな変化で、財団法人、社団法人が公益財団、一般財団というのに、これは公益認定等委員会というものが認定するような形で分かれてきております。

法制審の議論では、この一般財団に対応するような形のものとしての目的信託というのがある得るのだというようなことで議論がなされているわけでございまして、ある意味で、先ほど申し上げたように、速やかに対応すべき課題としてどこまで行うのか。

それから、これは机上の空論であれこれやっていくものなのかどうか。実際にとにかく、片や80年ぶり、片や110年ぶりの改正でございますから、朝令暮改と言われようと、少しずつものを見ていくのかというようなやり方もあろうかと思います。

例えがいいかどうかわかりませんが、例えばがん細胞がある。これは租税回避をするようなものですが、それに租税回避の形の強烈な税を作る。これは放射線治療をするような例だとお考えいただいたらいいと思うのですが、その場合、健康な細胞まで死んでしまうということもあり得るわけであります。したがって、医者はそういうのを治療する時に、まず、とにかくがん細胞を殺してから、ほかの被害が及ばないようにするという方法もあるでしょうし、それから、健康な細胞を重視した形でやっていくという方法もあるでしょうし、いずれにいたしましても、いかなる能力をもってしても、一発で回答ができる問題ではない。ただ、租税理論その他を含めて、十分に今後とも、仮に来年度税制改正である対応をしたにしろ、この種の問題が信託税制には多々残るのだということを詳しく納税者に伝えていくことが、我々に課せられた義務ではないのかなと思って、まことに僭越ではございますが、ペーパーを出させていただきました。

本間会長

ありがとうございます。

お二方に信託税制の問題についてご意見をいただきました。これに対して反論あるいは賛成がございましたら。

中里委員、どうぞ。

中里特別委員

反論ではございませんで、コメントですけれども、英米法で信託について習うと、コモンローとエクイティーの対立の中で、信託というのはどうやって出てきたかというと、少なくとも日本は全く違いますけれども、イギリスでは課税逃れのために出てきたという出自がございまして、例えばカナダは、信託に対して個人納税義務者とみなして課税しているという例もございまして、日本は今まで信託制度は極めてまともに適正に運用されてきたと思いますので、日本とイギリスを比較するつもりはないのですけれども、今後、自由な利用が行われるようになってくる場合に、どのような利用がなされるか。それは今、出口先生がおっしゃったことが全く当てはまるのですが、わからないということなんですね。わからないから放っておいていいかどうかというのは、これは高度の政策的な問題ですけれども、やはり一応租税制度というのは、全部が悪人だと思う必要もないでしょうが、全部が善人だと思ってもいけないという微妙なバランスのところがあるので、一口に信託といっても様々なので、一律の対応をするということではなくて、例外的な何か、あくどい利用の仕方とかが仮に出てきたらいけないから、それに対して、なるたけそういう例外を拡大しすぎないようにしなければいけませんけれども、一定の対応措置をとっておくということは、必要なことなのではないかと思います。

調べてみたのですけど、経済成長戦略大綱というのが財政・経済一体改革会議で出されて、その中に、三角合併や信託制度について、三角合併といっても様々、信託といっても様々なので、「利害関係者の保護を図りつつ、適正な規律のもとで有効に活用される制度となるよう取り組む」というふうに出されていまして、適正な規律のもとで、なるたけ活用を拡大していくという、そのバランスの問題ではないかと思いますので、一律全部OK、一律全部だめ、というどちらの考え方もよくなくて、例外的な場合に対する備えはできる限り、あまり広くなってはいけませんが、置いておくということなのではないかと思います。

ほかに。田近委員、どうぞ。

田近委員

この問題は非常に重要な問題だと思うのです。まさに経済活性化と税という観点から重要だと思うのですけれども、根っこというか、問題の背景は非常に広くて、今、信託ですけれども、事業体の問題ともかかわってくる。つまり一言で言うと、構成員課税にするか、あるいはその前の段階、法人なり信託の段階で税をかけるかというのが問題の姿だと思うのです。

それで、活性化、経済成長との関係だと、少し大きく話をさせていただきますけれども、企業がダイナミックに変わっていかなければいけない。その時には連結もしなければいけないだろう。その時に一々連結した時に持っている株の益を実現していたのではたまらない。簿価で繰延べして、どんどん再編していくようにしましょうよということで、基本的には課税繰延べという形で問題に対処してきた。

一方、やはり法人税率が高いという現実では、ダイナミックに企業は変わっていきたい。それで会社法も変わってきた。また法人税率も高いという中では、やはり法人段階の税をパスして、構成員に課税するようにしてもらいたい。それは当然の要求だと思うのです。その段階では、合同会社というか、Limited Liability Companyというのもあるし、Limited Liability Partnershipもある。いろいろなことが出てくると思うのです。たまたまLimited Liability Companyだからそれは法人税である、Partnershipだから構成員課税にするのだ、という形で切り分けてきているのですけれども、私の考えは、どこまで信託税制がそういう大きなフレームワークと関わるか。それは私の考えなのですけれども、やはりそうした中で企業が事業の一部を自己信託して信託する。信託で得た所得等は、それはパススルーで構成員に課税する。そういう考え方があってもおかしくはない。

ただ、問題は、中里さんが言われたことは、僕は非常に適切だと思って、税でどう対応するかということだと思うのです。全部はつぶしてはいけないし、だから、今たまたま信託のいくつかのことで議論していますけれども、この瞬間にもおそらくパススルーの課税で、法人あるいは信託段階の税をパスしたいというスキーム、考え方も考えている人がまさにいるような問題だと思います。

実はアメリカでチェック・ザ・ボックスということで、事業体は法人か、あるいはパートナーか選べるようにしたら、今、現実段階で、なんとパススルー事業体の所得のほうが法人の所得よりも大きくなっているという現実があります。だから、そのぐらい大きな問題で、私はこれはパンドラの箱だと思っています。それはネガティブに言っているのではなくて、ポジティブにもネガティブにもなる。

したがって、今回の我々の仕事との関係ですけれども、実質的に3回の討論をして、この問題にどう答えを出すのだということで、私流に言わせていただければ、まあ、これはこの段階では、そういういろいろな問題が潜在的にあり得るのだから、信託段階でかけるのもやむを得ないだろうなと。ただ、これは全体のピクチャーから言えば、私は大きな問題を持ち越しているという理解でいます。

本間会長

この問題にぜひというお方はいらっしゃいますか。どうぞ、お願いします。

山田委員

今回初めて参加しますので、過去の議論を十分わきまえていない部分があって、場合によっては的を外れているかもしれませんが、今回の信託をめぐる問題に関しては、現在の制度でも信託段階法人課税というのが行われていて、資産流動化の特別目的というような目的を非常に限った範囲で信託段階の課税というのがされていると思うのですが、今回の信託制度そのものの見直しが経済の活性化につながるという中で、先ほど中里さんが言われたことに全く同感なのですけれども、基本的にはバランスの問題、ないしは課税するとすれば、私は、信託の本来の日本での考え方というのは、導管論ではないかと思って見ているのです。

その中において、もしもある種の信託段階の課税をするとすれば、そこには明確なロジックを述べる必要があって、先ほどどなたかが言われましたが、まだ制度としてこれから始まろうというところですので、現在の段階では、大まかなものを捉えておいて、これの成長というか、展開を見ながら、ロジックを明確にしていく必要があるのではないかと。

その中で、すでに考えるべき、構成員課税なのか、こういう途中段階の課税なのかという道具は、基本的にそろっているのではないか。あとはそれと実態との絡みの中で、もう少し時間をかけながら、それから、先ほどおっしゃられたほかの合同会社の課税の公平性という問題ももう少し考えなければいけないので、今手を打てることは、非常に対症療法的なことにならざるを得ないのではないかという印象を持っています。

本間会長

ありがとうございました。

今、山田委員から総括的なコメントをいただきました。我々としては、新しい枠組みが公益信託も含めて、この社会の活性化のために貢献するということを主たる目的としておりますから、それを最初から税の面であまりネガティブに取り扱いをするということは、趣旨に反するということもございます。しかも、我々、十分にこの点について議論を深めていないということもございますので、今の皆様のご意見を踏まえながら、答申の中でこの部分については記載するということで、今の段階ではこういう形で収めてまいりたいと思います。

ほかの点につきまして、どうぞ、増渕委員。

増渕委員

第1回のグループ・ディスカッションの際には、私、途中で退席を余儀なくされたものですから、金融証券税制についての議論の関係で、ちょっと確認をさせていただきたいのですけれども、昨日のグループ・ディスカッションでも、終わりのほうで、複数の委員から、配当の二重課税の問題について、問題提起があったように記憶しております。このグループ・ディスカッションの概要によりますと、配当、二重課税の問題は、20%分離課税であるということで割り切るというか、それでいいではないかという議論が大宗だったのでしょうか。もしそうだとすると、それは諸外国との比較で、そういう話になるというのは、ある程度理解はできるのですが、日本の現実の中で、他の金融所得、預貯金の利子とか、社債の利子との実質的なイコールフッティングというのはとれているのだろうかということについて、若干疑問がなくはないなという気がするのですが、その点はどうなのだろうかということが1点です。

もう1点は、「あるべき税制」というのがどういうものか、これは人によっていろいろな考え方があるでしょうが、将来の方向としては、私は、広い範囲で損益通算を認める金融所得の一体課税ということが、経済活性化という観点からやはり望ましいのではないかと思っておりますので、現在の優遇税率をどうするかという話は、特例期間が切れることに伴ってという面があることはわかりますけれども、しかし、その間、ずっと問題提起されながら、金融所得の一体課税という話が進まなかったということもありますので、年明け以降の話ということになるのでしょうが、ぜひ金融所得の一体課税の具体化に向けた理論的な議論が、スピード感をもって進められるということを期待したいのですが、この第1回のグループ・ディスカッションでは、大体そういう感じの話であったというふうに理解してよろしいのでしょうか。この2点を確認したいのですが。

本間会長

これは、翁委員から、まずグループ・ディスカッションの状況を。

翁委員

配当の二重課税の問題については、複数の委員から問題の提起がございまして、やはりこれは中長期的に、今回20%という形で統一をするとしても、この問題というのは残り続ける。ですから、この議論を引き続き続けていく必要があるというご意見が多かったと思います。特に成長という観点からこの問題をどう捉えるのかというご指摘もあったように思います。

本間会長

配当の二重課税の問題については?

翁委員

二重課税についての意見、私の意見も申し上げてよろしいですか。

本間会長

どうぞ、どちらでも結構でございます。

翁委員

次からは私の意見でございますけれども、私も20%に統一するというのは、簡素でわかりやすいという点では、金融所得課税一体化という点でわかりやすいと思うのですが、本当にニュートラルか、中立的なのかというと、やはり配当に関してこの問題というのが残り続けているし、成長に関して密接に関連していると思っております。配当の支払いが企業のコストとして扱われないということでございますので、トータルで法人と個人を通算した場合には、利子より配当のほうが課税が重い。このため企業が新規投資に当たって、株式で調達するのか、それとも借り入れをするのかという判断の際には、やはり税というのが非常にこれに影響を与えてしまうというところは残ってしまいます。

今回、設備投資を活性化していくということを考えますと、これを例えば国際的に比較してどう考えるのか、先進国の動きはどうなのかというようなことも見ながら、やはり配当の二重課税の問題、成長ということと密接な関わりがあるということで、議論していく必要があるのではないかと思っております。

本間会長

ありがとうございます。

この点について、井戸委員、どうぞ。

井戸特別委員

この問題は古くて新しい問題で、引き続き議論しなくてはいけないとは思うのですが、2つの次元をきちっと整理しておく必要がある。今、議論がありましたように、配当を受ける個々人の単位でどのように考えるか。この場合に、今の状況を考えた場合には、利子と配当と、株主サイドからすると、意識の差があるのか。大株主が自分の会社を所有している場合とは全然異なる。という意味からすると、個々人の場合については、金融資産の一本化・一体化という議論は、十分そういう観点を重点に考える必要があるのではないか。おまけにもっと遡りますと、総合所得課税との関係をどう考えるのかという議論をやはりきちっとしておく必要がある。

一方で、企業のサイドからすると、今ご指摘のように、資金調達の形態の一つというふうに評価してしまっていいのかどうか。配当というか、つまり出資を受けて、それに対する報酬を出すという行為と、お金を借りて利子を払うという行為とは、同じなのだというふうに評価していいのかどうか。そこのところを2つのサイドからの十分な検討が必要なのではないか。単に国際競争力だから云々だけで議論してしまうと、本質を間違える。だから、国際競争力も必要ですが、あるいはイコールフッティングというような議論も必要ですが、そういう基本的な枠組みの中でどう考えるかということが必要だ。このことを申し上げておきたいと思います。

本間会長

どうぞ、松田委員。

松田委員

今、ドイツが法人税の改正を検討中だそうで、その中で、ごく限定的とは言われていますけれども、支払利息の損金不算入という制度も入るみたいで、そういう解決の仕方も逆にあるのではないかなという気がします。

それと、二重課税ということで響きが悪くて問題になっているのですが、二重課税ってそんなに悪いことなのかなと。僕らは給料で所得税を払って、それで物を買う時に消費税を払っているわけですね。これは明らかに二重課税で、誰もそれに文句を言っていません。それは税金が違うから話が別だといえば、給料で貯蓄をして、その利子もやはり税金を払っていて、私は全然それが悪いことだとは思わないですね。それから、同じ消費税の中ということでいえば、例えばガソリン税などは、ガソリン税がかかった上で消費税もかかっている。二重課税だといけないと言い出すと、切りがないような気がします。

神野会長代理

ちょっと細かいことですが、今、言い間違いをされたのではないかと思います。つまり、最終的にはどうなるか、ドイツの改正はわかりませんが、11月2日案では、法人税の課税対象に支払利子を加えるので、損金算入ではない。

松田委員

損金不算入と……

神野会長代理

あっ、「不算入」とおっしゃったんですね。じゃあ、いいです。僕は「損金算入」というふうに聞こえたので。かつ、ドイツの場合には、個人ベースのほうでキャピタルゲインも総合合算、累進でやる。それから、配当も総合合算、累進でやっちゃうと、こういう案だと思います。

本間会長

ありがとうございます。

横山委員、どうぞ。

横山委員

第1回のグループ・ディスカッションでも、課税哲学のお話をさせていただいたのですけれども、中立的課税の意味づけで、最適課税論の考え方をとっているのか、ファーストベストの古典的な中立課税を言っているのかということは、ちょっとどうなのでしょうかと。石前会長時代の税調の検討してきたことをどうやって理解し直して、どこまで引き継ぐのかということを、見直しの中に、中立課税という言葉が二通りの意味合いがあるのが十分理解されていないのではないかと。言いたいことは、本間会長はじめ井堀さんもそうですけども、最適課税論の、オプティマル・タクゼーションの考え方で言えば、逃げ足の速いような課税ベースには軽課するということが、デッドウエイトロス、社会全体が税支払い以外に負担しなければならない厚生ロスを最小にするという税としては望ましいと言われているわけですよね。この辺でいくと、差別的課税が認められる、いわゆるデッドウエイトロスの重さに応じて課税することが望ましい。ただし、公平の観点からはまた別ですけれども。

その一方で、同じ均一税率でかけることが中立という議論がもう一方であるわけですね。ここをどうやって理解したらいいのかということについて、私は質問を申し上げて、ただ、今までの議論では、金融所得課税の一本化ということを通奏低音として、石会長時代、その前からもずっと古典的な意味での中立課税、差別課税しない均一課税こそが望ましいという形でずっと来ていますが、成長とかそういうことを考えた時に、そのところをもう一回確認する必要があるのではないかと、私、11月14日の時にもお話しさせていただいたわけです。

もう1点お話をさせていただかなければいけないのは、やはり成長という観点の中に、グローバル化ということももちろんなのですけれども、そのグローバル化の意味合いがどこにあるのかというと、欧米諸国との比較だけではなくて、アジアとの比較というのが、かなり法人税の時のご議論やほかのご議論でも出てきているとすれば、金融課税についてもそういう観点があるのかどうか、この辺は議論されていないのではないかと。

だから、課税哲学の話のもう一回確認を、古典的な意味での中立課税が望ましいとする根拠づけをもう一回考える。その時に最適課税論の考え方は、この中立という原則では考えないのだということの確認も必要なのではないか。この辺のところの整理が必要なのではないかということを申し上げたいと思います。

本間会長

ありがとうございました。

今、本質的な議論になっておるわけですが、先ほどの井戸委員の総合所得課税という問題と、今、横山委員がおっしゃった最適課税論的な議論、分離課税的な議論、どのようにこれから新しい税調が考えていくのか。現実はその中間にあるわけでありまして、これは石税調会長の時もそうでございましたけれども、金融課税小委員会というのが、私が小委員長を仰せつかってやったところと、それから、金融問題の委員会というのを東大の奥野教授が小委員長をされた部分がございまして、その流れというのは、金融に対して、勤労所得と分離しながら考えていこうということで、この問題はスタートしたわけでありますので、論点自身、新しいメンバーになりましたので、もう少し確認しながら、そして、中立性の意味でありますとか、あるいはそれと公平性との関係をどう考えるのだというようなことも、来年の1月からしっかりと勉強をして、世の中に活性化が何か逆進的な意味だけを与えるということも、我々のスタンスとしてはまずい部分もあろうかと思いますので、説得をしていくために、どのように論理づけをわかりやすく提示していくか。これは新税調の宿題になろうかと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

金融課税の問題、証券税制の問題は、大臣、いかがでございますか。今のやりとりについて、よろしゅうございますか。

それでは、ほかの問題でも結構でございます。吉川委員、どうぞ。

吉川委員

すでに会長が総括されたあとでちょっと恐縮なのですが、金融所得に関して、20%に戻すかどうかというような問題は、来年度ということで、喫緊の課題としてあるということですよね。20%で並ぶという一つの根拠は、簡素というところにあると私は理解していたのですが、もちろん中立性ということももう一つあるかもしれません。すでにもう何人もの委員が指摘されたわけですけれども、また会長も今総括されたとおりに、中立性のこととか、活性化への影響ということを言い出すと、当たり前のことかもしれませんが、答えはすぐに出ないですよね。つまり、結局のところ、先ほどどなたかが、利子でも配当でも、個人が受け取るというので同じだという、これは違うと思いますね、リスクが全然違うわけですから。当然、リスクが違ういろいろな金融商品があって、資産保有者はいろいろな金融資産を組み合わせるポートフォリオを持つ。そういう中で、所得税なら所得税の税率が何かある。それをどういうふうに設計するか。結局のところは、いわゆる資本コストがそれによってどういう影響を受けるか。理想的にいえばそれが下がるということで、経済は活性化される。

しかしながら、今度は投資をする投資というのは、リアルなインベストメント。工場を造るという意味ですが、そっちのほうになってくると、今度は資本コストが下がったら、どれぐらい設備投資が本当に伸びて、この税調あるいは現在の政府の経済政策運営上大変大きなテーマにしている、いわゆる活性化にどれぐらい資するかというようなことは、そういうことまで言い出すと、答えはちょっとすぐには出ないだろうと思うのです。

もともと資本コストがどれだけ下がるかというのでも、例えば日本人とアメリカ人でリスクに対する態度が仮に違ったとして、アセットのリターン、リスクに対するプリファレンスが全然違うということになった時に、税制を変えてどれくらいディストーションが小さくなって、資本コストが下がるかというようなことを計算するなんていうことになると、私の知る限りではあまり見たこともありませんし、そんなことがすぐにできるのかということで、議論すればするほど、中立性ということ、あるいはさらに活性化に資するその程度ということは、わからなくなっていくところがあると思うのです。

ただし、だからといって、何にも結局はわからないというのでは困るので、先ほどの信託の問題ともちょっと似ているのかもしれませんが、あまりに大きいテーマということで、そういう中で、先ほど横山先生もおっしゃいましたように、金融所得がいわゆる足が速いというようなこともあるでしょうし、総合課税とは少し違った、分離課税もすでに認めようという、ある意味での現実論だというふうに私は理解していますが、そういう中で、簡素というのがやはり一つ非常に重要な論点なのではないかなと。

しかも、並ぶということが、税率が同じということが、本当にディストーションが小さいという意味での中立性にどれだけ資しているのかというのは、今申し上げているとおり、正確にはわからないのですが、しかし、直感的には、税率がそんなに違っていなくて、しかも、非常に簡素な税率で並んでいるというのは、ディストーションが小さい、もたらされるゆがみも小さいだろうという直感は働くということで、私としては、そういうようなことを考えていて、現実論としては、会長がお考えのことと最終的には変わらないのですが、やはり簡素というのが一つの重要な論点なのではないかと理解しております。

本間会長

山田委員、どうぞ。

山田委員

一言だけ。私も多少金融商品の課税の議論に参加した経緯からいきますと、今回、20%にするという私にとってのいいことというのは、少なくとも最近の金融技術の発達を見ますと、デリバティブ等を使って、利子と配当の間の区分というのが、実質的に変更できるわけでして、その最終的な形だけを見て、そこに税率が違っていると、いろいろな金融技術を組み合わせることによって、逆にそこにゆがみというか、課税をいろいろな形で調整することができる。それを少なくとも中立というか、排除するという意味において、金融商品の課税において、ある種一律の税率というのは、望ましいのではないかという理解をしております。

本間会長

ありがとうございます。

今、山田委員と吉川委員のお話は、重要な論点だと思います。税率を統一しておいて、例えばリスクによって損失相殺をどういうぐあいに認めるかとか、あるいは課税の二重性について、どのような措置をとるのか。ここはいろいろご議論の余地があろうかと思いますが、今、山田委員のほうからお話のとおり、デリバティブ等、金融手法は相当発展しておりますので、方針としては、我々としては、これまでの議論の中でも理解が得られたと思いますので、税率の部分のところについては、我々としては統一化に向けてスタートする。こういうことで……、はい、どうぞ、幸田委員。

幸田委員

すみません、蛇足になるかもしれませんが、ご承知のように、株式市場はきのう下落しております。日本の独歩安と言われております。それはとりもなおさず、この税調の影響だというふうな理解が多いかと思いますし、あとは海外投資家の安倍政権への不安感を象徴するというような声も実は上がっております。市場の動きは、それぞれかなりオーバーシュートもしますので、いつもいつも見ることもないでしょうし、その影響を受けることもないかと思いますが、私自身の考え方としましては、本来、市場というのは、ある意味、政権のチェック機能と申しましょうか、少なくとも、例えば財政規律が守られないというような見方が出た時には、例えば国債が売られて、警鐘を鳴らすなり、今回のことも何かのリアクションがあったことは事実ですので、国際競争力とか、あるいは日本の経済をグローバル化させていくという方向を考えるのであれば、日本の金融市場の国際化とか、実際現実に海外の投資家の保有率とかも、このところかなり上がっておりまして、例えば3市場の現物の売買だけですと、コンスタントに40%を超えていると聞いております。海外の投資家の保有というのもここのところずっと上がっておりますので、市場の国際化とか、あるいは日本の金融業界の国際化・国際競争力ということでも、一応、考慮の一つに加えていただきたいと、私自身は思っております。

大橋特別委員

単純に申し上げます。今の金融所得課税の一本化というものの考え方については、やはりこれは一つの思想として、こういう形で進めていかれるというのは、一つの見識だろうと思いますし、これはそれでよろしいのだろうと思います。

ただ、問題は、今、7,000円台から1万6,000円台ぐらいまで大体戻ってきたということが、本当に証券市場の活性化という意味では、もう回復がなったというふうに考えていいかどうかということになると、まだやはり相当日本の経済、あるいはそれに伴う証券市場については、不安があるというふうに私は実は考えております。したがいまして、ここをあまり大きな動揺を与えるということは、やはり好ましくないなということがございまして、私は証券市場に身を置く者ではございませんけれども。

一つ、「貯蓄から投資へ」というのは、これは一つの考え方として、もう皆様がコンセンサスがある問題だと思うのですが、そうすると、この一本化ということと、「貯蓄から投資へ」ということの整合性と、それから、それをやるために、一体それでは政府税調としてどういうことをやっていこうかと、それをやることによって、大きな問題を起こさずに、現在の10%から20%へ一つの一本化を図っていくのだというところまで、ある程度お示しをいただくことが、やはり国民の理解も得られると思うので、その辺をぜひ次のシナリオをお考えいただいたほうがいいのではないかと思って、発言いたしました。

本間会長

では、原丈人さんから。

原特別委員

私は新しい委員で原丈人と申しますが、今年、来年ぐらいは、経済活性化に向けた税制上の仕組みで議論をしていくわけで、それは「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」という中にも入っておりますけれども、財政の健全化はまず2007年から10年ぐらい第2期として行う。そのあとに財政健全化の第3期というのが来るわけですけれども、もっと長いスパンで見た場合、その次に、世界の中において日本はどういう魅力のある国かということを考えていくと、あらゆる税目の中で、すべての税目において、先進国の中で最も税率の低い国にしようということを、今後30年後、20年後に打ち立てていこう、ということがもしできれば、そういう議論を進めていくということは、私は非常に重要だと思います。

ただし、先進国の中で最も低い税率といっても、税率は低くなるけれども、絶対税収額が増える仕組みをつくる。これはどうやればいいのかということになるわけでありますが、これは2つしかない。1つは収入を増やすということと、もう1つは支出を減らすということであります。支出を減らすほうは、公共投資とか社会保障費ですとか、いろいろなものがありますけれども、効率のいいスペンディングのほうの税調のほうからも、国の諸機関に対して提言をしていくような仕組みを作るとともに、収入を増やすほうについては、メリハリのある税制、これもいろいろな税目について個別の意見を私は持っておりますが、今までの議論を聞いていますと、金融所得課税の特例を廃止して20%に一元化するという中においても、例えばその中でもインデックスというものを取り出して、投機的資金が集まるようなファンド、いわゆる金が金を生むようなファンド、こういうものに対する金融課税は、何も20%にとどまらず、もっと増やしてもいいぐらいだと思います。

一方、このグループ・ディスカッションのまとめにもありますような日本の将来、また世界の将来を支えるような実業やテクノロジーに対する投資、こうしたものに対する金融所得に関しては、損益通算を金融所得間のみならず、アメリカでは金融所得間以外、たった3,000ドルですけれども、米国の例をはるかに超えるような特例といいますか、それを一般化させて、損益通算を認めるということをすれば、これは諸外国の人たちも、日本に資金を持ってきて、新しい実業の分野に資金を出したいと思うでしょう。

また、こういう実業やテクノロジーの分野に関するキャピタルゲインに関しては、10%といわず5%、なしにしてもいいというぐらいに、メリハリのある税率の仕組みを作っていきますと、私が今申し上げましたように、財政再建のあとに、非常に税金の低い国でありながらも、財政規律の維持ができ、そして、産業がしっかりと起こっていくような国家が生まれてくると思います。

こういうふうな議論、長い話でありますが、今後3年間、こういう税調の議論があるわけでありますから、私はこういう議論を、今日は総論ですが、方向性だけの話ですが、できましたら、最初の会長のまとめの中に、今年の12月の冒頭の中にも含んでいただければいいかなと思っております。

本間会長

ありがとうございました。

飯塚委員、どうぞ。

飯塚特別委員

今、国際競争力と言われた場合、非常によい表現があったと思うのですが、国際から見て、海外から見て、日本がどれだけ魅力的かというふうに言い換えたらいいと思うのですが、対内投資が極めて貧弱な国ですよね。それがすべてを物語っている。証券市場だってそれを表しているだけにすぎないと思うのです。その辺をぜひ議論してほしいなと思う。ずいぶん議論が出ているので、私はもう明白だと思うのですが、そのことを繰り返すよりも、このいくつかの項目の中で、1つ大きく抜けている項目があって、ぜひ申し上げさせていただきたいのですが、国際競争力、イノベーションという中で、一番私の頭の中に浮かぶのは、やはり創業の割合と廃業の割合が劣悪な国だということを、ぜひ思い出してほしいなと思うのです。要するに、中小企業というよりも、ベンチャー魂を持った創業をどれだけ増やすかということを、国際比較していただきたい。世界で38とかそういう数字もあります。39と。そういう環境を税制の上で何ができるか。

税率で、高いものですから米国と比較されて、どうだ、高くてもいいだろうという議論がよくあるようなのですが、ぜひ、エンジェル税制のようなこともきっちり比較してほしいですね。日本ではエンジェル税制という、似た名前のものはあるのですが、残念ながらほとんどそれが使われていない。ベンチャーというと、最近の事件で非常に卑猥な矮小な活動ととられているのですが、実は日本が失われた10数年を体験した理由の1つは、そこにあると私は思っているのです。

米国は1980年代に非常に苦労しました。米国はずっと大企業を中心とした総合研究所のイノベーションの時代から、1980年代に車の両輪のように、ベンチャーと大学というのを活性化することに成功したわけですね。1980年代以降は、苦しみの中から米国はすさまじい強さを取り戻してきた。

ところが、日本は1990年になって行き詰まるのですが、残念ながら片肺飛行のまま、飛び立てないでいるんですね。大企業が世界で比べると大変苦労しているわけです。日本の企業は大変苦労している。その辺には、やはり次の勝ち組のソリューションをどうやって見つけるかという仕組み、トライアンドエラーしかないのです。机の上でいろいろな議論を立てて、それも役に立たないとは言いませんが、やはりトライアンドエラーをローコストで行っていくことが必要なわけですね。その回数を増やすためには、ローコストにしなければならない。そういう仕組みをつくらなければならない。ところが、日本はない。だからベンチャーもなければ、大学発のベンチャーもまだ育たない。したがって、大企業も、電気メーカーに私も長いことおりましたけれども、そこだけではなくて、薬を作るところも、いろいろなところが、海外に求めているんですね。海外で間に合えばそれでいいのですが、それはそれでいいという理論もありますけれども、やはり日本の中で本当のイノベーションというのは、もっと小さなお金、たくさん最初の芽を出すところでそれを支援する、いわゆるエンジェル税制ですね。これを真のエンジェル税制にしていただきたいなと、そういう議論が今回抜けているなと思っているのです。

昔から日本に「たにまち」という言葉もありますけれども、そういう文化、DNAは必ずあると思いますので、ぜひ税制の上で手当てをしていただけると……。これは税収を増やそうという議論はたくさんあるのですが、そうではなくて、もっとお金を使ってもらおうと。我が国は国民のアクティビティーをこっちの方向に期待しているのだよという非常によいメッセージで、コストはかからない。ゼロとは言いませんけれども、そういうものだと思うので、ぜひその辺の検討と推進をお願いしたいなと思います。これは経済同友会でも非常に議論を深めまして、そういうことをお願いしたいということを、私個人ではなくて、そういう意見も背負っておりますので、ぜひご検討をよろしくお願いしたい。

本間会長

ありがとうございます。

どうぞ、高木委員。

高木特別委員

先ほど来からのご議論を聞いておりますと、ここは税調なのか、ビジネス戦略会議なのか、その趣でお話が聞こえてくるように思えてならないのですが、多様な所得がある中で、多様な所得間の課税のバランスといいますか、公平性といいますか、そういう視点も当然必要なわけでして、株式市場の動向がこうだからという、そういったファクターを全然無視していいとは思いませんが、また、外国からのいろいろな資金の流入の問題、投資の問題、そういったことも十分意識したらいいと思いますけれども、例えば国民負担率なんていう議論をいろいろする中で、今、一番負担率が少ないのは誰かといったら、証券市場に関わっている人、あるいは配当所得のみで所得を形成している人、こういう人たちの負担率が一番低いわけです。そういった世界も含めて税の議論を闘わせていくべきではないかなと。

今までのここ30~40分の議論を聞いておりまして、そういったスコープもぜひお忘れなくということだけ、一言申し上げておかなければいけないのかなと。ちょっと水を差すような話で恐縮ですが、そんな感じがいたしました。

それから、発言の機会をいただいたので、ついでに2、3点お願いをしておきたいと思います。

1つは、第3グループの議論の概要のペーパーだったでしょうか、一番最後のページに、2つ目の丸で、19年度改正での対応は難しいかもしれないが、法人の実質負担を国際的にイコールフッティングにすることを目指すという方向を書き込むべきというのを書いてありますが、こんな議論は一切まだしていませんから、こういうことを書き込むのはいかがかと。こういう意見がおありになるということですが、こういう意見には賛同できないと私は思います。

本間会長からも、運営について、こういう運営だということで冒頭いろいろご説明がありましたが、こういう運営の考え方でお示しいただいたことからいっても、もっといろいろな部分、イコールフッティングにすること自体も、そういう必要性があるのかないかも吟味しなければならない話だろうと思っておりますので、目指すという方向を書き込むということには賛成できない。

いやらしいことを言うついでにもう一つ言わせていただきますと、今、日本経団連が法人実効税率10%ぐらい下げるべきだということを、オフィシャルにおっしゃったのかどうか、私、確認はできておりませんが、そんなことが新聞紙上で伝えられております。本間会長もマスコミの方とのやりとりの中で、あのお話を聞いておると、35%ぐらいまでは考える必要があるのではないかなということをおっしゃっているように記事では読めるのですが、税調会長のお立場は、社会的に与える影響が非常に大きい。そういう中で会長がそういうご発言をなさるというのは、やはり世間に予断を与えることにもなりかねないのではないか。そういう意味では、この辺のご発言については、きちんと吟味をした上で、順番順番に、我々をリードしていただくという意味も含めて、適正にお願いを申し上げたいと、そのことをお願いを申し上げておきたいと思います。

それから、最後に、道路特定財源のことがこれにも触れてあります。これも第3グループのページの2番目の一番下、維持すべきという意見があり、また本則化すべきという、全然合わない意見が両方書いてあります。ということは意見の羅列だということだろうと思います。「骨太の方針」等でも、「広く国民の理解を得つつ」という文言が入っておったはずで、この一般財源化について、国民の理解が十分得られているというふうには私どもの感覚では思えない状況かと思っております。そういう意味では、暫定税率を本則化、こっちの議論こそ先にあるべきであり、それを暫定税率を継続したまま一般財源化ということに、税調がそういう意見を出すことについては、いかがなものかと、そんな意見でございます。どうぞよろしくお願いします。

本間会長

ありがとうございます。

高木委員のご指摘も十分踏まえながら発言をしたいと思いますが、労働と資本の関係について、対立概念でいくのかということが、おそらく高木委員のお話の背景にはあるのだろうと思っておりまして、活性化という観点は、法人をどう捉えるかという基本論が存在しておりまして、その生み出した付加価値をどのように分配していくかという問題と、経済を強くしていく問題は、両輪の問題でございまして、強くするべき部分のところについて、議論は税調がやるべきでないというご発言であれば、これまでの議論とは幾分違うトーンで、その扱いについてどういうぐあいにしようかということは、また表現のところでご意見をいただければと思いますけれども。

高木特別委員

労働と資本が対立するとか、資本が機能的に動いて、付加価値を稼いでくれなければ雇用の安定もないという意味では、多分、会長のおっしゃっていることと私の思っていることは、そう違ってはいないと思います。ただ、付加価値というのは誰が稼いだのだと。経営者の皆さんも一生懸命知恵を出して頑張った。けど働いている者もそれにかかわっているわけで、そういう中で適正な分配とは何ぞやとか、税収が増えたから少し戻してやるのだという、そう軽々に議論しないでくれという思いはあります。

本間会長

国際的な議論の流れの中で、我々がどういうぐあいに法人税制を位置づけていくかという問題もございます。そういう意味で、今のご指摘、労働分配率の問題も含めて、しっかり議論しなければならないと思っております。ここでも19年度改正では難しいという議論がありまして、しかし、アジアとの比較であるとか、ヨーロッパとの比較であるとか、そういうものを考えていくと、この経済の活性化において、中立的な税制を構想すべきではないかというご議論があって、ここで先ほど田近主査からご報告をいただいたということでございます。

またその点についてご異論等がありましたら、表現の部分のところでどのように工夫をするかということは、皆さんと調整をさせていただきたいと思います。

この問題について、どうぞ。若林委員、ほかの点でも結構ですが、どうぞ。

若林委員

今回の議論は、企業に活力を与えて、税収増をもくろむ税制改正論議が中心になっているようなのですけれども、財政再建のためには、いずれ消費税の引上げをせざるを得ない。700兆円も800兆円も子や孫に残すということは、極めて無責任なことだと私は思っています。いずれそういう国民全体に大きな負担を与える前に、その地ならしという話ではないのですけれども、筋は違うのですけれども、どこから見ても常識的に首を傾げざるを得ない不公平税制、そういうのが残っていると、やはり国民は消費税を上げる時に納得しないだろうと思います。

例えば、きのうのグループ・ディスカッションで、社会保険診療報酬に係る事業税の特例措置というのが、不公平税制として挙げられたと思うのですけれども、それなどは過去何度も答申で撤廃しろというふうに出されながら、なぜか撤廃されずに残っている。そういうのを残しておいて増税をいずれするというのは、やはりおかしいと私は思います。過去どれぐらい不公平税制があるか知りませんけれども、これまで答申があって、実行されていないやつは、この際、早急に、速やかに撤廃していただきたい。従来、本間税調はそれぐらいの意欲を持った強い税調だという感じで、ぜひ取り組んでいただきたいと私は思います。

本間会長

ありがとうございます。しっかりと今のご意見を……。

どうぞ、長谷川委員。

長谷川委員

今の高木委員と本間会長のやりとりのところ、やはりとても重要な点が出たなと思うのです。つまり、いずれ法人税の実効税率の引下げの議論みたいな方向を出すとなると、必ず家計への均てんがどうなっているのだという議論がやはり出てくる。19年度の税制改正のところで表現ぶりを考えなければいけないという本間会長のお話でしたが、まさにそこでありまして、表現ぶりでなくて、やはり足元の景気回復で、つまり経済が成長してきて、私たちの家計はどのぐらい今よくなっているのかというようなことを、ラフでもいいから、数字で出したらどうかと思うのです。

たまたま今ここに、ある役所からもらった、実は経済産業省ですけれども、資料があるのですが、これによりますと、平成15年から17年で、従業員の給与が12.9兆円増えているのです。それから、個人株主への配当金が5.3兆円増えている。合計しますと、18兆円強ぐらい増えている。働いている人が6,000万人だとすれば、18兆円を6,000万人で割ると、単純計算でいっても30万ぐらい1人当たり増えている。というようなことがあると、にわかに家計が、経済成長すれば給料が増えるということを実感できると思うのです。そこら辺の家計への均てんのところは、この間も申し上げて、何度も申し上げているようで恐縮ですが、この先、来年以降のことを展望しますと、この間の総務省の資料にもあったように、1月には所得税は減りますけれども、6月には住民税が増えて、6月という時点で家計の負担は増えるわけです。そういう中で法人税を下げようかという議論をすることになってしまうので、そのことを考えあわせれば、今の我々の12月に出すところから、よくよく家計がどうなるのかということについては、しっかりと頭に入れておく必要がある。そうでないと、やはりこれはなかなか飲み込みがたいということにもなりかねないと思いますので、私は高木さんと必ずしもすべて論点が一致しているわけではありませんけれども、高木さんのご指摘になったことは、とても重要だということは同意いたします。

本間会長

どのように説得するかというのを、今年度で数値的にもどこまで是正するか、あるいは構図的にも、表現を工夫をしなければいけないと思っております。今のご意見等も含めて、しっかりと対応するような準備をいたしたいと思います。ありがとうございました。

ほかにいかがでございますか。どうぞ、田近委員。

田近委員

手短にしゃべりますけれども、法人税率の引下げについて、今、いろいろ議論があって、そのよしあしというのはともかくとして、方向的には必要なのだろうなと私も思います。

ただ、重要なことは、法人税というのは、別に税率を下げたら減るわけではなくて、何が言いたいかというと、課税ベース、課税所得をどう計算するかということになるわけです。税率も影響するし、今日議論した減価償却も問題になるし、あるいは税額控除もなるし、損金にどこまで範囲入れるかということですから。

たまたま、僕も調べていませんけれども、ドイツで改正する。あるいはアメリカでも議論しているという時に、やはり重要な問題は、課税ベースをどこまで広げるかということだと思うのです。そうすると、支払利子を控除するかしないかというのは、非常に大きな、本質的なというか、今言った課税ベースを広げるということのさらに次の問題にかかわってくるようなものだと思いますけれども、それもイシューとしてはあり得る。ただ、この議論をしていけば、すぐに出てくる問題の一つは、きのうやったIT減税だとか、あとR&Dの話とか。例えばR&Dというのは、特別措置等をやっているのをやめて、そのかわり税率を下げる。

その時に一体どういうふうに考えるのかということですけれども、今、非常にイノベーティブな企業がいろいろある。その時に何が重要なのだろうか。あるいはベンチャーもある時に、何が重要なのだろうか。その時に、R&Dのほうで課税ベースを小さくすることなのか、あるいは課税ベースを広くして、税率を一律に下げることなのか。答えはこれからでしょうけれども、申し上げたかったのは、税率を下げるということが先行していますけれども、それによって税収が上がるか下がるかわからない。ただ、活性化して上がるというような言い方は多少危険だと思うのです。そうではなくて、課税ベースを配慮して議論するということで、単にそれで税がぺしゃんと下がってしまうわけではない。だから、その辺の配慮というか、議論は重要だと思います。

本間会長

ありがとうございます。

今の田近委員のポイントは確かに重要でございまして、アメリカのレーガン税制の時に、いわゆるレーガン・マーク2という時には、租税特別措置を大胆に縮減をして、それで税率を下げる。こういうような手法もとったわけでありまして、そういうようなことも含めて、財源をすぐに、「法人税の減税分消費税」というような紋切り型の整理もありますけれども、そういうことではないということをしっかり説得しながら、分配に対してのインプリケーション等も、今、高木委員がおっしゃったような点も含めて、丁寧に説明をしていく必要性があるのだろうと思っています。

ただ、活性化・成長の問題が、今年度の少なくとも我々の一つの課題になっておるということは事実であるわけですから、法人税制の抜本的な見直しをスタートを切ろうよと、こういうような意味合いの中でご理解をいただければと思います。その点での、これから最終的に文案を作って、皆さんとまたご相談させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

吉川委員、どうぞ。

吉川委員

すでに何人かの委員の方が発言された点と私も同じなのですが、法人税関係の議論をしていくというような場合でも、とりわけ活性化、それが所得分配とかそういうものに与える影響、そういう視点を持っていないと、世の中には受け入れられないのではないかと考えております。

前に部会でも発言したのですが、私自身は、経済が活性化する、逆に言えば、長期的に停滞する。経済の長期停滞というのは逆進的ものだと考えております。それは一つ大変重要な視点だろうと思うのですが、政府税調ですから、事務局がバックアップの実証分析として、少しそういうようなことをいろいろ調べていただけないかという、これはリクエストです。

具体的には、例えば、日本の府県別の平均所得水準というのは、これはもちろんすぐわかっているわけで、有効求人倍率と比べてみれば、それはほとんど正比例ということなのですが、府県別のジニ係数か何かが計算されているか、あるいはできるのではないかと思うのです。都道府県別のジニ係数、それと平均所得水準の比較といったようなものを、もしそう大変な作業ではなくてできるのであれば、していただけたらと思います。

いずれにしても、我々政府税調としては、そういうような周辺のいろいろな事実というのを、きちっと確認しておくべきことだと思っています。

本間会長

わかりました。答申までに今のリクエストに対してお答えできるかどうか、ちょっと自信もないところもあるのですけれども、今後、そういう問題についてしっかりと対応していく。

吉川委員

来年に向けて。

本間会長

わかりました。

どうぞ、江上委員。

江上委員

企業の成長力ということでずっと議論が進んでいるのですけれども、その成長力を左右する一つには、やはり人的資本の強化ということが非常に今重要になっております。私、たまたま鉄道会社で研究開発上預かる立場にしばらくいまして、研究開発の優遇税制は大変貴重に活用できました。その結果、様々ないろいろなものができてきたのですけれども、今、人的資本を強化するということでいえば、今まで日本の企業は企業内の教育に力を入れて人を育ててきたわけですけれども、ここのところ、ずっとアウトソーシング、業務委託、派遣というような形で、非正規社員が拡大して、正社員を少数に絞っていくという、こういう企業行動で来たのですが、現在またこの問題について揺り返しが来ておりまして、やはり能力開発は企業内で行うほうが、長期的に見たら、人的社員の能力の強化につながるというようなところに来ているわけです。

今日の報道にも出ておりましたけれども、あるアパレルメーカーが、6,000人のパートタイマーから5,000人を正社員に登用することを決定したんですね。今そういう動きが出ておるのですけれども、そういう考え方や哲学をとる企業は、そういう企業行動ができているのですけれども、実際はまだなかなかというところが実情です。

そういう意味で、安倍政権の再チャレンジとか、格差是正に寄与する政策的なインセンティブを与える政策的な一つの税制の時限立法の案として、今後非正規社員を雇用するということに対して、何らかの減税措置を与えるとか、そういうことが結果的には単なる救済策ではなくて、企業の人的資本を強化する策につながるのだという視点で、今後少しご議論や視野に入れていただきたいなと思います。

本間会長

ありがとうございます。

猪瀬委員、どうぞ。

増渕委員

前回の減価償却の見直しの中で、耐用年数が388ぐらいあるという話が出ましたが、それを当然簡素化していくということなのですけれども、昭和30年代の償却制度であるから、その時の機械の水準とかそういうことで考えると、欧米並みということで、簡素化するということなのでしょうけれども、その流れの中で、中里委員が任意償却のことをちょっと提案されました。要するに期間配分だということであれば、操作できるのはおかしいのではないかという話が出ました。その話が尻切れトンボで終わったような気がするんですね。あるいは一方で、つまり欧米並みにしようという時に、我々はアジア的であるのかどうかわかりませんが、日本的なのかもしれませんが、その部分がすっきりしないと、近代的というのは変ですけれども、簡素化するということにならないのではないかというか、説得力が弱いのではないかというふうに思うのですが、そのあたり、誰か代わりに説明できる人がいるのでしょうか。

本間会長

中里委員、お願いします。

中里特別委員

商法は相当の償却を毎年計上しろということですね。租税法のほうは、任意償却ですから、今年減価償却費を積まなければ、減価償却費はなかったものとして、その分、簿価はそのまま次の年まで引き継がれるということです。例えば、繰越欠損金が今年で切れてしまうというような時に、今年どうしても黒字を出したいという時には、減価償却を停止して、黒字を出して欠損金使って、次の年にまた1年後れで同じ額で減価償却ができるということで、まあ利益操作なんですね。商法違反なのですけれども、法人税法上はどういうわけかOKになっていて、私、助手論文で、それは違法だからおかしいと書いたのですが、それはまあどうでもいい話です。

本間会長

猪瀬委員、今のでいいですか。

猪瀬委員

商法や企業会計のあれと税法とで、そういう齟齬を来たしていることがよろしいのであるかどうか。よくないというような意見もあったわけですね。その点については、やはりよくないんじゃないですか。法律上できているんですけれども、極めて日本的な慣習なのでしょうか。つまり、例えば秋山委員が、アジアと闘わなければいけないとおっしゃっていた。アジアと闘わなければいけないという時に、アジアがきちんと法治国家である、税法上きちんとやっているかどうかという問題があるわけですけれども、そういうところは、イコールフッティングという場合に、我々がどのぐらいそれをきちんと制度的に踏まえているのかということは大事だと思うのですが。

本間会長

山田委員、その辺どうぞお願いします。

山田委員

私も任意償却のところについては、かねがね税の恩典だろうというふうに理解しております。企業会計は北村先生がご専門ですけれども、私も担当している国際的な企業会計のところでは、企業は一旦減価償却の方法を定めたならば、それを基本的には毎期会計方針として継続する。しかも、私がやっています国際会計基準のところでは、毎期末に償却の方法及び償却の年数が、経済的な実態を反映しているかどうかを見直して、経営者は償却の方法をきちっと決めるべきだということになっておりまして、そういう意味では、税と会計はある意味では離れております。特に日本では耐用年数表で一律、課税の公平というのか、そういう形になっておりますけれども、少なくとも国際会計基準のレベルでは、減価償却については、耐用年数表なるものは一切存在せずに、今のような経済実態を反映した、しかも経営者が見直すことによって、特に償却の年数についての妥当性を評価するというのがルールになっております。

実はそれに関連して、今回のグループ・ディスカッションの概要の中で質問があるのですけれども、今、一律に決めている耐用年数表と、それから、1ページ目の2つ目の丸のところにある加速的な償却を認めるというところなのですけれども、どういう形での、例えば企業の選択によって、一旦経営者が合理的な年数というのを決めれば、それによって耐用年数表とは別なものをできるような仕組みを考えておられるのか。しかも、次の黒丸では、期間配分の適正化、それは特別措置なのかどうなのかということも議論するということなのですけれども、会計的にいいますと、減価償却というのは、固定資産のある期間における期間配分、しかもそれは使える期間に対する配分ということですので、もしもそういうルートをとるとすれば、それは特別措置というよりは、合理的な経済実態を反映するという意味では、何らかの恒久的なものでなければいけないのではないかなと思うのですが、その辺の議論がどういうふうに行われたのか、ないしはその方向性ですね、もう少し教えていただければと思います。

田近委員

今のご質問ですけれども、ここはまず、これが提言とかそういうのではなくて、いろいろな議論があったということですけれども、今、減価償却でここでイシューとして取り上げている問題というのは、ある意味でメカニカルな話で、償却可能限度額あるいは残存価値の評価をどうするかというところを取り上げて、日本の償却可能限度額95%というのはただしましょう、つまり100%にしましょうねというような議論で、これ自身は特別措置でもないし、法人税の本則としてやりましょうと、そういうことです。

ただ、法人税における償却をどう考えるかという点については、踏み込んだ議論はなかったわけですけれども、方向として、議論として出たのは、コストリカバリーというか、償却資産をある程度グループ化して、償却資産額に対して一定の割合で償却させていくというふうな考え方をとる方向もあり得るというような話も出ました。

私が今申し上げたいのは、そういう議論自身は今言ったことですけれども、加速償却等をどうするかということは、我々は、きのうここでは一切議論をしていなかったということです。

本間会長

任意償却の問題について、実は井上委員のほうから、これは企業の裁量性として残すべきという議論と、それは認めるべきでないという議論がございまして、これは結論が出ていないところであります。

上月委員、どうぞ。

上月特別委員

現場にいる者から申しますと、今、繰越欠損が7年間という問題がまずございますね。そうすると、結局はそこで欠損を出してしまうと、いつか消えてしまう可能性があるということが1点あります。今、減価償却の問題だけではなくて、確定決算主義というのがぼつぼつ乖離してきておりますよね。この辺もしっかりと、確定決算主義をやるのであれば、例えば実務的に言うならば、それは税制としては別に何らかの形で手当てをして、認めるということができれば、また今のような任意償却の話ではなくて、今、会社法もきっちりできていますし、会計基準の問題もしっかり整っていますので、中小企業も会計指針というのができていますので、これに基づいた決算をきっちりして、税制のほうでは、繰越欠損を認めるのが7年間で終わってしまいますので、その辺のフォローをしていただくことができれば、それはきっちりいけると思うのです。その辺をちょっとご議論いただけたらと思います。

本間会長

よろしいですか、山田委員。

山田委員

今の議論は理解しました。ただ、一つ確定決算主義については、ここではどこかで議論する予定になっているのでしょうか。

本間会長

今までは全然出なかったということでありますけれども、一つの問題点の指摘だと思います。今後は、今の問題は大変重要な問題でございますから、根本論として今後議論しなければいけないテーマだと思っておりますけれども。

山田委員

今のここのテーマとは別に私がちょっと思っていますことは、企業会計の適正性と税務会計との間において、どういう関係を構築していくのかというのは、非常に大きなテーマでございまして、特に今の確定決算主義というのは、役割をもう終えたのではないかという感じを私は持っているわけですけれども、その辺の議論をどこかでやらないと、会計というのが国際的に今グローバル化をしなければいけないとすると、会計基準はかなり速いスピードで国際的なものに合っていく可能性があるのですけれども、そうすると、税のほうがそれと同じペースでいかないとすると、やはりその問題がかなり将来大きな問題になるような認識をちょっと持っております。

本間会長

根本論として、その問題について重要性というものを我々は認識を共有しながら議論を深めたいと思っております。

どうぞ、北村委員。

北村委員

確定決算基準について、私、きのう少し申し上げましたように、やはり外国においては確定決算基準を外しているところが多いというところですから、やはりきちっと議論したほうがいいのではないかなと思っています。

それから、もう一つ、本間会長のもとで法人税制についてのこれからの方向性というのは打ち出されていくと思うのですけれども、同じ所得課税である所得税について、どのように考えていくのか。やはり19年度税制改正の中に少し織り込んでおかないと、法人税だけ考えて、所得税はどうなるのかと。これだとやはり国民はなかなか納得できないところではないかなと思うのです。確かに先ほど、所得が上がったのだから、可処分所得が増えているというようなデータがいろいろあるから、出したほうがいいと。確かにそうだと思うのですが、やはりそれだけではなくて、いろいろと諸控除というのが削られてきている現状ですので、そういったものについてどう考えるのかとか、今、議論する時間がありませんので、非常に残念なのですけれども、その辺のところもちょっと踏み込んで述べていただきたいなと思っています。

本間会長

ありがとうございます。非常に重要な論点だと思いますし、庶民感情からすると、その辺のところについて、十分な説明ぶりというのは求められると思います。

ただ、今ご指摘のとおり、本質的な問題と年度改正の問題が、しかも新税調はスタートしたばかりで、幾分混乱ぎみみたいな状況の中で、皆さんにご苦労をおかけしているわけですけれども、できる範囲の中で今のご指摘の部分のところは取り入れたいと思っています。よろしくお願いします。

どうぞ、横山委員。

横山委員

「成長なくして財政再建なし」ということについては、何回も確認をして、共通認識を持っているわけですが、成長の中身について少し偏りがあるのではないかと。グローバル化の観点での成長力・競争力強化ということは、目配りができつつある。それはわかるのですが、グループ・ディスカッションの時の補足資料にもありますし、また、これまでの競争力や成長力の強化の柱立てとして、国際競争力の強化以外に、ご案内のように、生産性の向上、地域中小企業への活性化、改革の断行、新たな需要の創出、5番目として生産性向上の5つの制度のインフラというようなことが言われている。とりわけ地域経営の活性化とか中小企業への目配りは、留保金課税の話とか、様々なところでなされつつある。そうすると、今、夕張の問題をはじめ、地域によって強弱が出てきている。私、減価償却の話をした時に、租税特別措置のような形での位置づけがあるとすればどうなのかということでも指摘させていただいたのですが、そうした地域の活性化ということについて、今回は触れられていないのではないか。これが1点です。

それから、あと成長との関係や競争力との関係でいくと、環境というと、すぐ温暖化問題というような形で結びつけられることが多いのですが、いわゆるポーター仮説というのでしょうか、ITに力を入れるということのほかに、やはり環境技術立国というような観点もあろうかと思う。この辺のところになると、個別の、先ほど会長が言われたように、レーガン税制改革の時もそうでしたが、特定の部門に恩恵なり特別の措置をとるという活性化の仕方と、広くインフラ整備のような形で税率を下げるとか、そういうところであまり政策的な強弱をつけずに、民間の発意に任すような活性化の仕方と、両方あると思うのですが、地域の今の強弱の差と、それから、今後の方向性の中で、ITと同じように、ハイブリッドカーにしてもそうですし、様々な環境技術ということでいえば、かなり日本は競争力を持っている。となると、IT以外にもほかに力を入れるべき産業があるのかもしれない。この辺のところの目配りも必要なのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

本間会長

今、問題提起ということでご議論がございましたけれども、この点について何か。はい、どうぞ。

松田委員

政府が、これが成長分野だと決めつけるのは、僕は不遜だと思います。すべてマーケットで考えればいいことであって、そこに誘導するというのは、特に税を使って誘導するというのは、やってもいいかもしれないけれども、効果はないし、僕はやるべきではないと思います。

横山委員

もちろん、それは非常に重要なご意見だと思います。そうすると、IT産業だけに関してなぜやるのか。普遍性の原則からして、そういうふうな議論もやはりしかるべきなのではないか。だから、基本的には今のご意見のように、政府は中立で、なるべく民間活力の出るような形で、差別的な取扱いをしないということが重要だというふうに私も認めていますが、ある産業に対してだけ力を入れるというのは、一つの国の政策としてあるとすれば、そこについての合理的な説明も必要なのではないかということです。

本間会長

議論の整理としては、将来、それが国家的な基盤を形成して、死命を制するような重大な部分が幼稚産業として位置づけられているような時に、それをどのような形でしっかりと大きな装置にしていくかという議論の流れの中で、例えばITなども出てきているのだろうと思います。その意味で、松田委員等のご議論、これからもおそらく、個別対応型なのか、一般型なのかという議論は、法人税制の中においても、租特の扱い等においても非常に重要な論点だと思いますし、先ほど高木委員がおっしゃった部分で、資本の部分のところと労働のコスト、社会保障のコストも含めてどう考えるか、この辺の整理の仕方が重要なポイントになろうと思います。そのことがいわゆるトータル・ファクター・プロダクティビティーというような全生産性要素での付加価値をどのように高めていくか。このバランスある形での議論をぜひお願いをしたいと思います。

田近委員

若干関連しますけれども、先ほど北村委員の、所得税のほうはどうなのかというところに少し戻したいのですけれども、お隣の高木さんとはいろいろなところで議論していて、さっきも、「おまえ、いつまでも弱い者いじめばっかりするなよ」と釘を刺されましたけれども、個人所得税のところで、19年度改正ですから、そして総理の諮問というようなところで、「成長なくして」というフレーズが来ているわけで、経済活性化というのは一義的な19年へ向けての税調のミッションでしょうけれども、やはり個人所得税はどうするかというところで、今まで税調はそれなりに課税ベースを広げてきて、恒久的減税、定率減税も2年かけて廃止した。そのほかやってきた。ある意味でそれが今税収にも効いているのだと思いますけれども。

ただ、もちろん、議論を十分、あるいはほとんどしていない中で、どう書くかというような問題なのだと思いますけれども、私がこういう問題は重要だろうな思うのは、結局、所得が低い層は、原始的にいえば控除額もあるし、個人所得税の負担はそんなにない。だけど社会保険料は根っこから来ますから、それがかなりある。そして、目には見えませんけど、社会保険料は労使折半だと言いますけど、その帰着というか、使用者側の部分が実質的に労働賃金が下がったので、「ああ、負担している」ということまで考えると、それは相当なものだと。

働いている、特に若い人というイメージでしゃべっているのですけれども、あまり所得がない。その人たちが社会保険料で払っている部分は、今言った、見かけの部分と、あと見えない部分も含めるとかなりになる。実際統計でもそうです。それが現実的には賦課方式というか、多くの部分は高齢者に向かっている。そこは喫緊に近い問題だと私は思っています。

じゃあ、それを税制でどう手当てするか。控除を広げるといっても、そもそも所得税を払っていない人に控除を広げたって、何の意味もない。むしろ控除を使いこなしていない層なわけです。だから、税でやろうとすると、やはりその部分に対して、税額控除的なものをやらざるを得ないなと。それは難しいことはわかっていて、マイナスの税までやるのかということをいつも言われますけれども、これは今度の税調には書けないと思いますけれども、仮に、社会保険料までは事業所で源泉で取っていますから、社会保険料までは戻してあげるというような考え方に立てば、それは何も社会保険庁を壊して歳入庁にしてという議論までしなくてもできるかもしれない。それは背後にある私のアイデアですけれども。

だから、個人所得税の部分では、我々としてどこに目配りしているのかというのは重要だと。そして、私が今申し上げたところは、望むらくですけれども、多くの人々が共有してもらえるところかなと思います。

本間会長

どうぞ、永瀬委員。

永瀬特別委員

私も今のご意見に賛成でございます。経済成長がないと豊かにならない。これはもうどなたもそうだと思うと思うのですけれども、でも今の日本の実態を頭に思い浮かべると、企業が成長しても、今増えているのは非正社員の雇用でありまして、正社員の雇用はあまり増えておりません。ヨーロッパなどとは労働法の組み方もまたずいぶん違っていると思います。また最低賃金に関する考え方も違っていると思います。そういう意味で、たとえ経済成長がどんどんしたとしても、低賃金の層だけがどんどん広がっていくことになるとすれば、それはあまり納得の得られるものではないのではないかと思います。

子どもを産む前には、女性でもパートで大体7、8万円ぐらいは低い層でも稼いでいるわけですけれども、子どもを産むと仕事を失うということが大変多くて、そこに不安定がある。そこをどのように考えるのか。負の所得税も含めて考えるべきことなのではないかと思われます。

また、この間、事務局から出てきた保育所に関する減税等ですか、そういったことも含めて、企業減税等も含めて、この辺についてはぜひ幅広く議論していただきたいと考えます。

本間会長

年度改正の問題に我々ちょっと関心が行きすぎて、私自身は相当そこをまとめなければいけないという意識があって、本質論のところからなかなか掘り起こせない形になっているわけですけれども、問題点の所在というものは、少なくとも書いておくということでこの部分のところを対応し、しかも、1月からしっかりとその点について、根本論に立ち返ってやりますというメッセージを答申の中に盛り込んで、今のご意見を反映させたいと思っています。

大橋委員、どうぞ。

大橋特別委員

若干国家の思想みたいな話になって恐縮でございますけれども、先ほども国がある産業を育成することを決めるのは僭越だと、むしろそれはマーケットが決めていくのだと、そういうご意見もおありになろうかと思いますが、私はやはり、税制というのは、国家の戦略と方向性というのを本当に決めていく非常に重要なシステムだろうと考えておりまして、そこに今度の安倍政権の思想と考え方というのがあって、それをどうやって税制に反映させていくかということがないと、本当に税制を我々が考えていく意味がないと思うのです。

ですから、そういう意味では、例えば先ほどもお話が出ました研究開発税制、こういうものが、基本的にはITが主体になっておりますが、そのために日本の技術というものがこれだけある程度強化されてくるということがあれば、これは非常に税制として成功して、一つの国の方向性を決めてきているのだと思います。

例えばシンガポールみたいに、日本よりもさらに極端に、国土も小さい、人口もない、あるいは資源もない、こういう国がどうしてあそこまで来たのかということを考えますと、やはり税制を含めて、国家の戦略というのが李光耀のもとでしっかりしていたということだろうと思いますので、そういう意味では、ぜひここでの議論というのは、ある意味では国家の戦略を本当に決めていくのだという、我々が自覚を持って進めていただければと考えています。

それから、全く別な問題で恐縮でございますが、きのうの環境税制の時に、私は途中で退席してしまいましたので、発言をする機会がなかったのですが、ここにも出ていますように、確かにこの問題というのは、国民的な関心事になっております。しかし、一方で、そんなことを言ったって、石油がこれだけ高くなっても、ちっとも消費が減らないじゃないのと、こういう問題もございます。

ただし、とにかく、現実には産業界は非常に各業界とも真剣に取り組んでおりまして、自主行動計画で、90年比6%をとにかく下げようということで必死になっているわけですね。これが実現するかどうかというのは、これからの推移なのですが、いずれにいたしましても、多少技術的になりますが、生産量に占める原単位を下げていくことによって、CO2の削減、温暖化ガス削減をやっていこうということについては、各業界ともかなりいいところへ来ております。私ども化学業界なのですが、方向としては、90年度比6%ということですが、もう10%を切ったところの、目標を上回ったところまで進めております。そういう意味で、産業界はこの問題についてはかなり真剣にやっている。

問題は民生でございまして、先ほどの議論にもありますように、皆さん環境というと非常に聞こえがいいし、一生懸命やろうということはあるのですが、現実に一番増えているのは家庭なのです。民生のところが一番問題なのです。そこが増えていて、結果的に下手をするとこの目標が達成できないということですから、税金の問題というよりも、国民運動としてこれをどうやって本当に真剣にやっていくかというところがキーになりますので、税金の問題でこれが解決できるという考え方は、私はちょっととれないと考えております。

本間会長

ありがとうございます。

どうぞ、吉川委員。

吉川委員

先ほどの横山先生のITに関連した減税ですけれども、いわゆるIT減税は投資減税で、ITを作っている産業の幼稚産業保護ないしは産業育成的な観点での減税措置というのではないと思うのです。つまり、ITの投資をしたユーザーのほうで、IT産業自体はそれなりにもうすでにエスタブリしているということで、その意味で幼稚産業保護的な減税ではなかったろうと。一方で、ITの効率性に対する貢献というのは、アメリカでも日本でもそれなりに確認済みで、それに基づいてユーザーを応援しようと、そういう減税だったということだけはコメントさせていただきます。

もう一つは、いずれ起草チームの方がいろいろ書いてくださるということなので、自分が発言したところの関連なのですが、先ほど本間会長からご紹介のあった「税制調査会 第1回総会及び企画会合の概要」というこのサマリーで、2ページ目の一番上の丸なのですが、たしか以前の会議で私が、ほかの方もあるかもしれませんが、私もこういうことを発言したものですから、日本語の表現ぶりとして、ちょっと修正させていただきたいと思うのです。要は、「経済成長は財政再建の必要条件であり」云々かんぬんとなっているのですが、ポイントは、「必要条件ではあるが十分条件ではない」と、それを申し上げたので、そのニュアンスは必ずしもこの文章だと伝わっていない。「必要条件ではあるが十分条件ではない。したがって、財政再建についても正面から議論すべき」というのが申し上げた時の趣旨ですので、このサマリーでも矛盾はしていませんが、やや日本語を明確化させていただきました。

本間会長

後ろの「正面から議論すべき」のところに、十分条件ではないということを、整理する段階では考えてやったのですけれども、今のご意見を受けて、正確にサマリーしておきます。

長谷川委員。

長谷川委員

お隣に座っている方に反論するのも心苦しいのですけれども、先ほど増えているのは非正規雇用だというお話があったので、私の記憶では、最近の新聞では、正規雇用の増加率のほうが非正規雇用の増加率を上回っている。それは景気が回復しているからだというのが私の認識でありまして、景気が悪かったために非正規雇用が増え、格差が拡大したのであって、やはり景気がよくなってきたから、今、正規雇用の増加率が非正規雇用を上回るようになって、格差が縮小に向かっているのではないのかなというのが私の認識であります。そこは分配の問題と関係がありますので、一言だけコメントさせていただきます。

本間会長

大体、労働のデータなどは、実は2004年ぐらいのデータまでしかないのです。したがって、そこは今、長谷川委員がおっしゃったとおり、景気が悪くなって、かなり深刻な状況がそこで実は顕在化をして、2005年、2006年になると、景気のよさがずっと反映してきているような状況がございますので、これはマスコミの報道ぶりなども、データのずれが影響しているような部分がございます。

永瀬特別委員

その点は存じ上げておりますが、この間、事務局から出た資料にも、最近は正社員と非正社員で見ると、増加幅が正社員が増えているというのは出ておりましたが、でも、世界的な傾向として、非正社員が増えているというのは、どこの先進諸国で見てもありまして、長期的に正社員社会になっていくとはちょっと思いがたい。ここのところで団塊世代の定年もありますし。

本間会長

永瀬委員のご意見に反論するということではなくて、我々、アジアが近くにいるということもあって、雇用面で企業の対応がヨーロッパにいるよりもずいぶん難しい側面がありますから、そういう面で、きちんとデータを押さえながら、これからしっかりと論点整理するということでお願いしたいと思います。

どうぞ、井戸委員。

井戸特別委員

きっと答申を書くという立場になられると、非常に悩ましいのだと思うのですが、私はやはり今回は、時間も短かったし、検討すべき分野をすべて網羅しているわけでもありませんので、そうだとすると、税というのは、やはり所得・消費・保有のバランスがとれていなければいけないのだとか、あるいは、中立だとか簡素だとか公平だとかという観点で、総合的な検討が必要なのだというようなことを明確に言った上で、それで、しかし当面の19年度改正については、こういう視点がとりあえず必要だから検討していったのだというような入り方をしていかないと、例えば所得税についてはほとんど議論していませんので、議論していないことを答申で書くわけにもいかない。ですから、会長が、課題は挙げられるかもしれないけれども、それについてもどうかなというような感覚でお答えされているのは無理がないので、その辺はぜひ起草委員会のほうでご工夫をいただきましたらありがたいなと、こういうように思っております。

それと、言わずもがなを追加するようなのですが、配当の優遇税率は5年間の時限なのです。ですから、期限が来たらなくなるというのは織込み済みで皆さん行動されているはずなので、織込み済みをあえて変えなければいけないのだとすると、変えなければいけないほうに立証責任があるので、なぜ引き続き変えなければいけないのかということを、明確に論証していただかなければ、やめるのは当たり前ということなのではないか。私はそのように思っております。一言、言わずもがなでございました。

本間会長

ありがとうございます。

ずいぶん活発なご議論をいただきました。技術的な問題も含めて、事務局から何かコメント、今までの議論、それはちょっと誤解がとか、そういう話はありますか。レベルが相当高くなったという感じがしているのですけれども。

石井主税局長

特にございません。

本間会長

そうですか。では、引き続き。ご発言なさっておられない方、いらっしゃいませんか。指名して恐縮ですが、どうぞ、田中委員。

田中特別委員

よく言われているように、日本は資源のない国でございますので、今後、経済発展を維持するためには、よく言われているように、科学・技術立国、あるいはものづくり立国ということを表に出していかなければいけないと思います。もうすでにお話に出ましたように、そういう観点からすると、R&DとかITの特別税額控除というのが直近の景気回復にはかなり大きな貢献をしたのではないかなと見ております。したがいまして、この法人税率自身の削減も、我々にとっては大変ありがたい措置でございますけれども、それにあわせてR&DとかITの現状の維持あるいは拡充ということで、この表現に租税特別措置については「整理」というふうに書いてございますけれども、整理というのは縮小ということではなくて、うまく取捨選択していただいて、非常に有効なものについては、さらに拡大・拡充をしていただきたいと思っております。

本間会長

我々が一般的な形で負担を軽減して、活性化に結びつけるのと、今、ご指摘のように、スペシフィックな目的に対して、課税ベースの調整という形でそれに対応するのか、ここは古典的な問題がございまして、しっかりこれから詰めていかなければならないと思います。そして、それと同時に、財源の問題を法人税内でやるのか否か、こういう問題も出てまいりますので、来年になりましたら、これは幾分技術的でありますけれども、租税特別措置の包括的な検討をして、本当にこれは効果があったのかどうか、時代後れになっているのではないかとか、特定の先生が言うから継続しておこうかと、こういうような向きもありますので、我々としてもしっかり物申すような形で、そこは今後検討しなければならないと思っております。

しかし、戦略的に、今、田中委員ご指摘のとおり、そういういわゆる短期的な効果も含めてどのように考えるかということは、論点としては十分理解できますので、整理をしながら進んでいくということでやらせていただきたいと思います。

井伊委員、どうぞ。

井伊特別委員

先ほど社会保険料の話が出ましたので、今回の答申に向けてというよりは、今後の課題として議論していただきたいこととして意見を述べたいと思います。

私、医療経済学を専攻にしていますと、医師会ですとか医療関係者の人たちと議論をすることが多いのですが、今後増えていく社会保障費をどういうふうにファイナンスするかといった時に、税か、保険料かというと、彼ら、医療関係者の人たちは、保険料を増すべきだという意見が非常に多いです。その中で、特に企業が負担をするべきだと。アメリカのGMなどが高齢者の医療費を抱えているということを大きく報道されましたし、日本はまだまだ企業が負担をする余地があるべきで、とにかく、今後増える医療費というものは、企業の保険料でというような意見が非常に多く聞こえます。経済学者からすれば、結局、それは消費者に転嫁されるわけですので、非常にナンセンスな議論だなと思うことが多いのですが。

先ほど田近委員からもありましたけれども、非常に保険料負担が増えていますが、実態はかなり税に近いものになっている。そうしましたら、形式的にも年金や医療の基礎的なことは税でみるとか、社会保障税、社会保険税のような形でみていくべきではないかとか、そういった議論もやはりぜひ今後していただきたいと思います。社会保険庁と国税庁の話なども今別途議論されているようですし、そういった議論もぜひしていただきたいと思っております。

本間会長

ありがとうございます。

田近委員、どうぞ。

田近委員

全然出ていない議論で、外形標準課税ですが、19年答申にそんなに書き込める話ではないと思うのですが、1つだけエピソードをお話ししたいのです。10月にたまたま仕事プラスで石垣島へ行って、竹富島というところまで行ったのですけれども、そこに碑があって、人頭税廃止の碑というのがあって、竹富島の人たちは、人頭税でいかに苦しめられてきたかと。かなり、明治維新のあとぐらいになってようやくなくなったという碑なのですけど。

それで、考えてみると、外形標準課税って人頭税に近いわけですよね。1億円以上は外形標準で、以下は所得課税で、減資がいろいろあったと。考えてみると、やはりこれは非常にペインフルというか、払うほうにとっては非常に苦痛な税なんです。付加価値割というか、付加価値でかけた時に、当然問題になるのは、要するになぜ付加価値で取れるかといったら、労働所得にかけるからで、したがって、今度の仕組みでも、労働賃金部分が75%、かなり多いところは少し免除しましょうと。そうすると、おそらくその辺でまたいろいろ工夫することもある。だから完全には人頭税にはなっていないのですけれども、竹富島の場合は、たまたま布を何反織るとかいうことで苦しんだのですけれども、だから当然、減資をするだろうなと。あと賃金のところもやりとりするだろうなと。まあ細かなことは言いませんけれども。

だから、そこは企業サイド、特に中小企業がこれだけこの税に対して強く不平を言ってくるというのは、我々は考えなければいけない。それで、1億円減資したからけしからんというのは、少し企業サイドに対して配慮が不十分ではないのかということで、竹富島に行った時のエピソードであります。

猪瀬委員

僕はそれはちょっと違うんじゃないかなと。外形標準課税のプロセスは、僕は記憶していますが、やはり税の公平性みたいな、当然ながら法人地方税を払わないと、そういうことになったらこれはおかしいわけであって、今の人頭税の話は薩摩藩ですよ。むしろ外形標準課税と人頭税は違うというふうに考える。むしろ全く違うものでしょう。

先ほどの任意償却の問題もそうですけど、やはりどこかに誠意がなければいけないわけで、法人税を減税すると、そうしたら、きちんと貫くものは貫かなければいけないわけで、そういう公平性みたいなものをきちんとやっていくことが必要で……。

ちょっとすみません、ついでながら、最初の「第1回総会及び企画会合の概要」というものの2ページ目の上から丸4つ目で、「税制の議論をするに当たっては、歳出削減を徹底するとともに、その取組を国民に分かりやすく示す必要」と、こう書いてあるのですが、これを本間さんにお願いしたいというか、書きぶりですけれども、今、社会保険庁の話もちょっと出ましたけれども、国民の不満というのはけっこうたまっていますよね。この部分をきちんと、税は税ですけれども、道路特定財源の一般財源化もそうですが、ここをきちっと通り抜けないと、また地方の話をしましたからあれですけど、僕はあちこち行きますと、人口10万ぐらいの地方都市で、10階建ての市役所が標準ですね。1万、2万の町でも大体5階建ての役所が標準ですね。こんなことをやっていたら、過去の話ですが、今そういうものがいっぱい遺産として残っていて、そこに国民が税を納める。意識は高まってきていますし、交付税も減りますから、何だこれはとみんな思い始めているわけですね。そういう時に、うたい方としてきちんとこの部分をうたわないと、やはり企業減税だけ何でやるのだと。僕は成長のためにやる必要があると思っているのですが、そういうところをきちっと通り抜ける必要があると思うのです。

本間会長

実はあとで報告しようと思ったのですが、24日に私、経済財政諮問会議に税調の会長としておじゃますることになっております。その点について、しっかりと今の猪瀬委員の発言を踏まえながら、発言を向こうでしたいと思っております。

井戸委員、どうぞ。

井戸特別委員

外形標準課税と人頭税を一緒にされては、あまりにも税の議論として乱暴すぎるのではないかと思いますし、それから、外形標準課税の導入自身の経過と効果については、いろいろ検証も必要になるのかもしれませんが、少なくとも地方の行政サービスと企業活動との応益関係を前提にして、どのような税負担関係を作り上げるのが適当なのかという中から出てきて、それで所得課税だけではいかがだろうか。そういう意味で、加算型の付加価値に対して、やはりある程度の税負担を求めるべきだというところから、この外形標準課税の議論が進んだと思っておりますので、一緒くたにされては困るなと思いましたので、この点はぜひご理解を賜りたいと思います。

本間会長

田近委員の発言は、経済学者として、頭数としてやるのは究極の外形標準だという意味ですから、今の外形標準課税の論議に対して、ある種の積極的なインプリケーションがあって発言されたのですが。

田近委員

基本的に、たまたま座長をしていましたから、発言できなくて……。経済活性化という観点で議論していますけれども、外形標準、企業でやっているのはアメリカのミシガン州のシングルビジネスタックスというのと、ドイツの営業税とフランスの職業税。何で職業税と訳すのか知らないですけれども、英語ではビジネスタックスなのですけど、やはり国際競争力がある中で、外形に企業がかけられることはものすごく嫌うわけです。特に外国から来てもらいたいなんていう時に、何で俺の会社が1億円なら余計な税を払うのだと。また、直接的に付加価値にかけられた時に、それは自分の国に帰って外国税額控除を引かないかもしれないじゃないかと。いろいろあります。

だから、この数十分の議論でセトルできる問題ではないと思うのですけれども、実は経済活性化で法人税の負担を下げようという時に、国税は30、10は地方、そして、地方の半分以上だと思いますけれども、それは法人事業税がかかっている。それを外形にしたら法人負担がなくなるのか。そんなことはあり得ないわけで、だから、我々のミッションの深いところで、非常に僕は深いと思うのですけれども、地方部分の法人課税をどう考えるかという問題が――当然、井戸さんはじめ地方の方々は、私に対して、今言ったように「何言ってるんだ」と。それは当然そういうお考えだし、私も非常にこれは大きな問題なのだと。だから、経済活性化の時に、全体のスコープの中でどう考えていくかという問題だということを申し上げたかったわけです。

井戸特別委員

経済活性化について議論する時に、地方が税負担を求めるのがある意味でおかしいのだ、地方の税負担は企業にとっては余計ものなのだというふうな発想がもし根底にあるのだとすると、それは企業側として、企業活動というのは東京だけで存在しているわけじゃないですから、それに対してきちっとした見解をお示ししていただかないと困るなと思いますし、我々だって、いろいろな意味で、例えば社会資本整備は何のためにしてきたかというと、企業活動が潤滑に行われるようにしてきたので、どちらかというと、道路の整備だとか、鉄道の整備だとか、港湾の整備だとかいうのに対しては、住民生活の向上というのももちろんありますけれども、社会経済的な活動の活性化をどう基盤整備をすることによってするかというようなことで力を注いできたのであって、そういう意味での応益性というのを十分に踏まえた上で議論していただかないと困る。単なる国税と地方税の分捕り合戦だとか配分争いをしているのではないことを、ぜひご理解いただきたいと思います。

本間会長

ありがとうございます。

出口委員、どうぞ。

出口特別委員

最後に申し上げてもいいのですが、ほかに議論がなければぜひ申し上げたいことがあるのですけれども、委員の中から、時間がなかったからとかという発言がございました。私、常々考えますに、私は2期目なのですけれども、前期は大変誤解を受けていたと思います。その点でインターネット等でスタイルが変わってきていますので、ぜひ強いメッセージを出していただきたいのは、我々は納税者の視点をまず第一に考えて議論をしてきたという印象を私自身持っています。これは発言が出なくても、ある前提があるわけですね。どういう前提かというと、当初予算に対して10%の税収増があった。補正予算に対しても4%ぐらいの税収増があった。こういう流れの中で、「成長」ということをキーワードにすることによって、それは幅広く納税者全体に関わる話であって、この納税者の視点を第一に置いた議論が今なされているのだと。これを単に、話を聞いていたら何か、法人だけがどうなのかとか、そういうような議論として誤解されるのではないかと思うのですけれども、少なくとも税調委員として連続した目から見ると、納税者の視点というものが非常に置かれた議論がなされていたのではないかなと。

さらに言えば、時間がどうのこうのというのは、納税者に関係のない話でございますので、これはそういう誤解が私はなかったと思います。個人的な考え方からしても、特に前から委員になっている方は、皆同じ感想だと思うのですけれども、相当十分な議論をした。その上で来年度税制改正に速やかに対応する課題だけを中心に今度答申に書いて、なおかつ、メッセージとしては、財政の規律、つまりプライマリーバランスの黒字化という明確なゴールのもとで、これも忘れてはいない議論、話はなかったけれども、この議論が相当背後にあったのだと。ここのところで間違ったメッセージを、ぱっと聞いただけでは、どうしても受け取ってしまうのですが、ずっと委員をやっていて、私が感じるところでは、これは非常に明確にあったということをちょっと申し上げて、まず誤解のないようにしたいと思っております。

本間会長

ありがとうございます。非常に重要な論点だと思います。

どうぞ、原さん。

原特別委員

先ほど横山さんがおっしゃられた観点、あと飯塚さんもおっしゃられたと思いますが、特定の分野を税制上優遇することによって、そこに民間の資金が入っていくような方針というのは、非常に有効だと思います。例えば、具体的に納税者のほうの立場から見て、ヘッジファンドだとかインデックスファンドだとかいう、こういう投機的な資金に投資をしてお金を儲ける。しかし、そこでは多額の税金がかかる。しかし、一方、横山さんや飯塚さんの言われているような分野に投資をすれば、キャピタルゲインもないのだというふうになれば、一般の人たちはそちらに資金を投資するでしょう。そうすると、国の財政の歳出のほうから見ても、そういった分野に特定の財源を充てて歳出をする必要がなくなりますから、民間の資金が民間のところに入っていくというようなことで、これは非常に有効な方針だと思います。

また、先ほどの研究開発等に関する優遇措置等、これも有効ではありますが、片や私もアメリカに、またヨーロッパにおりますけれども、最近の国際会計基準等のいろいろな時価会計とか減損会計、これは20年に1回ぐらい、棚卸ということで不良債権をきちっと見極めるという点では重要ですけれども、これを毎年毎年四半期ベースでがたがたやられたら、中長期の研究開発は全くできません。2年間たっても、3年間たっても、4年間たっても、お金ばっかりかかって、赤字、赤字、赤字というものが、公認会計士が来て減損して、損として落としなさいというふうになりますと、どうしても我々企業家のほうは、1年から2年間ぐらいの研究開発をやったあとに、もうすぐ儲かるようなテーマにいかざるを得ない。国際グローバルスタンダードがどうこうであろうと、これは間違っているというふうに私は思っています。

ですから、やがてアメリカ合衆国のほうも、例の悪名高いサーバンスオックスレー法なんかも緩和していくと思いますけれども、こういうようないろいろなところについて、まずアメリカが気づいて、アメリカが変えて、また日本がそのあとを追いかけていくというふうなことをやるのではなしに、どうせこういうおかしなものは変わるのだから、それを世界で先取りするというようなことをやっていくのが非常に重要だと思います。

そこで、大企業の中で、今の研究開発の資金を、もう株式を公開している会社ですから、今のところ、どうあがいても減損会計、時価会計から逃れることはできない。これは株価に反映していく。そうなりますと、飯塚さんの言われている会社の対象ですとか、あと秋山さんもおっしゃっていたと思いますけれども、こういうベンチャーの中でも、特にテクノロジーを作っていくようなタイプの会社に対する大会社からの投資は、設備投資資金と同様に、大企業にとっては、またはお金を出すほうにとっては、最初に減損できる。最初にほかの所得と通算で、損金として落とすことができる。一方、もらったほうは、これに対しては投資勘定にお金を置いて、長期間にわたって研究開発を行っていけるという、これはアメリカにはないですけれども、こういうふうな形をとることによって、特にテクノロジーや技術革新で時間のかかるものに対する誘導ができると。こういうことをやっている国は今アメリカにもヨーロッパにもありませんから、こういうことをすれば、欧米の投資家や企業も日本のほうに来るであろうと思います。

本間会長

ありがとうございます。

ほかに、どうぞ、上月委員。

上月特別委員

時間がありませんから、手短に言いますけれども、納税者の視点というお話が先ほど出ましたけれども、移転価格税制の時も出ていましたけれども、移転価格税制だけでなくて、いろいろな税制について、予測可能性の観点から、やはり税法というのは明確性というのですか、納税者がよくわかるような税制というのですか、明確性が必要だという、そういう視点が必要だというメッセージをぜひ書き込んでいただけたらなと思います。

本間会長

租税法定主義的な考え方も含めて、今のご指摘は重要なポイントだと思いますので、ありがとうございます。

山田委員

原さんが国際会計基準とかと言われた中に、若干誤解があるので、本論とは関係ないのですが、ちょっとだけ補足させていただきますと、国際会計基準では、研究開発費につきましては、研究段階のものはすべて費用処理をし、プロットタイプの製品ができた後のコストについては、開発費という形で資産計上しますが、上限は将来その製品を売って回収するキャッシュフローの現在価値までという一応ルールになっております。

問題は、会計のそういうルールが税務上の損金とうまく連携するかどうかというのは、ちょっと違う論点として一つあるのではないかということ。

それとあと減損につきましては、アメリカとIFRSではちょっと処理が違うのですが、いずれにしても、四半期で落とすというようなことではなくて、やはりある程度の悪くなった実態があって、初めて落とすということになりますので、一応、正確のためにちょっとだけ補足させていただきました。

本間会長

ありがとうございます。

どうぞ。

原特別委員

今おっしゃられたとおりだとは思いますけれども、投資をした場合、例えば新しい会社を作るベンチャーに投資をした場合の投資している資金の価値、これは2年も3年も4年も5年もそこから利益が生み出されてこないとか、また、その会社のバランスシートを見れば、もう債務超過に近くなっているというふうな状況の時には、公認会計士がこれを減損して、価値を限りなくゼロに近くするような指導を我々は受けています。ですから、こういうふうなタイプの中長期の多額の資金を要するベンチャーには、なかなか投資ができない。こういったところに投資をしにくい環境が起きてきているのは確かです。

本間会長

山田委員、今の点について何かありますか。

山田委員

それは、ちょっと状況によってですが、あくまでも投資については、その投資が将来のキャッシュフローで見積もった時に、予測される価値以下になった場合には、減損するというのが現在の国際的なルールになっております。そういう意味では、言われたとおりだと思います。

本間会長

大分時間が迫っておるのですが、ここで黙って我慢していただいている神野代理にちょっと発言をお願いします。

神野会長代理

熱心にご議論いただいて、活性化という観点から税制を改正するということにしても、ビジョンを描いていく必要があると思うのですが、これについても、今ご議論いただいたように、様々な観点で議論すべきことが非常に多いわけですね。また、何が活性化をもたらすかということについても、様々違うと思うのです。先ほどの例をとらせていただければ、人頭税というのは、最も中立的で効率的な租税なわけですね。市場の選択について、一切いかなる選択をとろうと、負担は変わらない。しかし、ワット・タイラーの乱を引くまでもなく、何よりもアダム・スミスが『諸国民の富』の中で、これは中立的だけれども最悪の租税であると、こういうふうに言っているわけですよね。

ですから、私などは効率を考える、活性化を考える上でも、公平性というのは片一方で勘案しておかなければならないだろうと思っておりますが、そのほかにも、今日出たように、様々にいろいろな問題を取り上げていかなくてはならないということは事実ですし、私たちが改正の第一歩を踏み出す時にも、何らかの方向性を示して踏み入れなければならないということも事実なのですが、当面、タイムプレッシャーの中でやらざるを得ないとすれば、おそらく、「川は皆海に流れるけれども、海は満つることがない」ごとく、様々な問題をこの税調は取り上げていかなければならないということを前提にし、方向性はいろいろあるかもしれないということを前提にした上で、とりあえず私たちは当面の第一歩を踏み出すしかないかなと、年度改正はとにかくやらざるを得ないのでという、先ほど井戸委員が集約していただいたようなことを申し上げたいと思います。

本間会長

どうもありがとうございます。少し気が楽になりました。

時間が迫っておるようでございますので、特段ご意見がなければ、終わらせていただきたいと思うのですが、事務局に、党の税調の審議が始まったと聞いておりまして、党の税調で扱って、ここで全然扱わないようなテーマがあると、ちょっと間が抜けているなと。審議のずれがこういう危険性を生み出す余地があるわけですけれども、例えば外形課税で、海運業界の要請というようなものがあるというぐあいに私は認識をしておるのですが、そういう問題が抜け落ちている部分を、海運業界は外形課税、そういうような問題が一つテーマになっているとか、幾分挙げ方が恣意的になっているのではないかと。ここは、今年はしようがないけれども、しっかりとポイントになる部分のところは平仄を合わせておくということが必要なので、ぜひちょっと情報も含めて出していくということはお願いをしたいと思います。

それで、今までたくさん有益なご意見をいただきまして、これから起草委員を中心にして文章化をさせていただきたいと思っております。ぜひご意見がございましたら、先ほどのお話の中にも少しあったのですが、税調委員の専用のメールのポストを作るということは、皆さんいかがでしょうか。そこでダイレクトに意見を言いたいと――先ほど時間がどうのこうのと、そういうことで我々が、まさにタックスペイヤーを第一に考えるというスタンスからすれば、そんなことを理由にしていたらいけないわけで、ぜひ議論で自分がここの点は言いたいと、あるいは考慮すべきではないかというようなご提案を、メールでやりとりするような現代化をもうしたほうがいいのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。

では、これは技術的に内閣府等で、また財務省、総務省と調整させていただきながら、どこにどのような形でやるかということは、お知らせいたしたいと思いますが、よろしくお願いをいたします。

高木特別委員

事務局はどこがやられるのですか。

本間会長

これは形式的に内閣府ですから、内閣府がしっかりと連絡させていただきます。それでいいですね

猪瀬委員

メールは字数制限したほうがいいと思いますよ。

本間会長

コンパクトによろしくお願いします。エッセンスをよろしくお願いします。読むのに苦労しちゃったりすると大変ですから。

出口特別委員

「成長なくして……」ですから、規制はあとから考えたらどうですか。まず規制をかけるのではなくて、言いたいことがある人は、どれだけ長いのでも出すという、それでちょっとキャパシティーを超える時に規制を考えるというのがやはり税の理論とも一貫する。

本間会長

それは確かに出口さんのおっしゃる部分もあると思うのですが、じゃ、項目でも、柱立てぐらい、ぱっと読んだら何を言いたいかというぐらいの工夫はしていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

猪瀬委員

A4、1枚以内でいいと思いますけどね。

本間会長

それでは、そういう形でダイレクトな意見をぜひお願いいたしたいと思います。答申の素案を作成して、また皆さんにご相談して、ご議論いただきたいと思います。

今後の予定をお伝えすることですが、先ほどちょっと申し上げましたけど、24日に経済財政諮問会議で私が出席させていただいて、我々の審議状況、及び先ほどは歳出カット等の問題をご指摘いただきましたので、しっかりと我々の立場からの意見も述べさせていただきたいと思っております。ご了解いただきたいと思います。

そして、予定でございますけれども、11月29日、午前10時から11時まで、答申素案審議のための企画会合を中央合同庁舎第4号館で開催いたしますので、よろしくお願いをいたします。この1時間で間に合わない、あるいはいろいろな議論が出てくる可能性もありますので、追加的なことも可能性があるというお含みおきをいただきたいと思います。11月29日、午前10時から11時までやらせていただきたいと思います。

高木特別委員

いただいた日程、全部出れないので、さっきのメールのところにいろいろ意見があったら入れておけばいいわけですね。

本間会長

ちょっと直ちには難しいということを今の判断では言っておりますので、紙で出していただきましたら……。どこにペーパーをいただけるかということを連絡させますので。

高木特別委員

どこに出したらいいか教えてください。

本間会長

はい、すぐに連絡させますので。

吉川委員

我々の意見は今のでともかくとして、第一次案、ファースト・ドラフトみたいなものは、我々はいつ見せていただくのですか。我々がまず出さないと、ファースト・ドラフトも出ないという、そういう理解、どういうことなのでしょうか。ファースト・ドラフトのロジというのは、今後1週間どういう感じですか。

本間会長

今、起草委員の方々にお集まりいただいて、ドラフトを今準備をしようとしているのですが、休みなどもありまして、起草委員会の素案が出てくるのが、27日にやることになっております。

吉川委員

ということは、それこそメールで28日にはファースト・ドラフトをいただけると、そんなようなことでしょうか。少なくとも29日の午前中よりは前ということは、29日が午前中であれば、28日までにはいただけるという、そんな理解でよろしいのでしょうか。

本間会長

今、事務方からご疑問の点、確かにすぐに29日で1時間なんていうのは無理だというような状況もあると思います。可能な限り28日の時点でお送りして……。そして、ぜひ情報管理の点をしっかりしていただきたいと思います。それが途中で出てしまいますと、大変なことになりますので。

出口特別委員

この点、大変大事な点でもございまして、第1回目ということもございますので、電子的な方法等を含めて、私は会長にご一任したいと思います。情報の公開と、ある種のやりとりの中で、何でもかんでも一気にやってしまって、収拾がつかないということになると、これは大変なことになりますので、ちょっと私はそういう提案をさせていただきたいのですが、いかがでしょうか。

本間会長

ありがとうございます。今のお話と、吉川委員のおっしゃるポイントも重要だと思いますので、事務方とちょっと調整をして、すぐに皆さんにどういう形でやるかということを……

吉川委員

私は29日より前にファースト・ドラフトをぜひ見せてくれという、そういう議論ではなくて、ただ、そこら辺のロジだけは知っておきたいという、ロジに関するリクエストです。

本間会長

わかりました。ただ、29日でも、私も感覚的に、ドラフトをぱっと見て、1時間で集約させられるというのは、ちょっと問題があるなと考えております。先ほど予備的に予備日もあり得るべしということを申し上げたのは、その背景があるわけでありますので、その辺のところ、また皆さんにご苦労をおかけすると思いますけれども、今年はちょっと異例な事態の中で進行しておりますので、ぜひご理解をいただきたいと思っております。

それでは、11月29日に企画会合という形で、答申の素案を正式に皆さんにお示しをして、ご議論いただく。それを受けて、速やかに起草チームが同じ日に文案を修正できれば、それで終わりたいとは思いますけれども、なかなか難しいかなという感じもしますので、その際には、11月30日に改めてやらせていただきたいと考えております。

大変なスケジュールでまことに申しわけないと思いますが、今の段取りはそういうことだということで、ご了解をいただきたいと思います。

それでは、大変長く今日は恐縮でございました。精力的なご議論、ありがとうございました。これで終わらせていただきたいと思います。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。