総会(第1回)議事録
日時:平成18年11月7日(火)14時00分~
場所:総理大臣官邸大ホール
〇司会(内田内閣府事務次官)
内閣府事務次官の内田でございます。会長が互選されます間、しばらく議事進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、ただ今から税制調査会第1回総会を開会いたします。
このたび、お手元にお配りしてございます名簿のとおり20名の方々を税制調査会の委員といたしまして、また、18名の方々を特別委員として発令させていただきました。本来であれば、お一人ずつご紹介申し上げるところでございますが、時間の関係もございますので、大変恐縮でございますが省略させていただきます。
また、略式ではございますが、それぞれの皆様方の辞令はお手元に配付させていただいておりますので、ご了承いただきたいと存じます。
それでは、早速でございますが、議事に入らせていただきます。
まず初めに、税制調査会令第2条の規定によりまして、会長の互選、会長代理の選任を行いたいと思います。
会長につきまして、ご意見がございましたら、どうぞ。
〇井堀委員
これまで、経済財政諮問会議及び実際の政策現場やアカデミックな税制改革の場で、優れた貢献をされてこられた本間先生に会長をお願いいただければと思います。
〇司会
ありがとうございます。
どうぞ。
〇林委員
私も、井堀委員と同様、本間先生にお願いするのが一番いいのではないかというふうに思います。
〇司会
ありがとうございます。
ただ今、本間委員を会長に推薦する旨のご意見がございましたが、いかがでございますでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕
〇司会
ご異議ないようでございます。それでは、皆様の互選によりまして、本間委員に会長にご就任いただくことに決定いたしました。
それでは、本間委員には、会長の席にお移りいただきますようお願いいたします。
〔本間委員、会長席に着席〕
〇司会
引き続きまして、税制調査会令第2条の規定によりますと、会長代理は会長があらかじめ指名することとされていますので、本間会長から会長代理のご指名をお願いいたします。
〇本間会長
本日は大学の公務でご欠席されておりますけれども、神野委員に会長代理をお願いいたしたいと思います。
〇司会
ただ今、本間会長から、神野委員が会長代理に指名されました。
それでは、私の議事進行はここまでとさせていただきまして、これから後は会長の主宰によって議事をお進めいただくことになりますので、会長、よろしくお願いいたします。
〇本間会長
ただ今、委員の皆様の互選により会長を拝命することになりました。これから精いっぱい務めさせていただきたいと思いますので、よろしくご協力のほどお願いいたしたいと思います。
それでは、これ以降、私が議事進行をさせていただきます。
まず最初に、税制調査会における議事運営等の基礎となります「税制調査会令」及び「議事規則」等についてですが、お手元に資料をお配りしておりますので、後ほどお目通しいただければと思います。
総理の到着まで少し時間がありますので、今しばらくお待ちをお願いいたしたいと思います。
〔総理入場〕
〇本間会長
安倍総理がお見えになりました。
それでは、安倍総理からご挨拶をお願いし、それに引き続きまして諮問文の手交をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
〇安倍内閣総理大臣
税制調査会第1回総会の開催にあたりまして、一言、ご挨拶を申し上げます。
本日、ご出席いただきました皆様には、新しい税制調査会の発足に際し、委員のご就任をお願いいたしましたところ、快くお引き受けいただき、まことにありがとうございます。まずは厚く御礼を申し上げる次第でございます。
わが国経済は、注意すべき点はあるものの息の長い景気回復が続いており、新たな成長を目指すための基盤もしっかりしたものとなっています。一方、人口減少が現実のものになるとともに、都市と地方の間における不均衡や勝ち組・負け組が固定化することへの懸念、厳しい財政事情などの重要な課題に直面しています。今後は、活力に満ちたオープンな経済社会の構築、財政再建と行政改革の断行、健全で安心できる社会の実現に取り組んでいくことが求められています。
そうした中、歳出・歳入一体改革にあたっては、「成長なくして財政再建なし」の理念の下、イノベーションの力とオープンな姿勢により日本経済に新たな活力を取り入れ、経済成長を維持していくことが重要であります。こうした取組みの下、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出削減を徹底する必要があります。
税制については、わが国の21世紀における社会経済構造の変化に対応して、各税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体のあり方について検討を行い、中長期的視点からの総合的な税制改革を推進していくことが求められています。
こうした税制改革の中では、喫緊の課題として、わが国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資するとともに、歳出削減を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対する安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければなりません。また、子育て支援策等の充実、地方分権の推進といった政策目的にも応えなければなりません。
こうした税制改革の検討にあたっては、税制と財政、税制と経済、財政や企業会計とのかかわりという、マクロ、ミクロ両面からの分析を十分に行うことが必要であります。
このような基本的考え方を踏まえまして、私から税制調査会に対し諮問申し上げる次第でございます。
最後に、委員の皆様の熱心なご審議を切にお願い申し上げまして、簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〔安倍内閣総理大臣から本間会長へ諮問文手交〕
〇本間会長
日程のご都合もあり、安倍総理はここで退席されます。お忙しいところ大変ありがとうございました。
〔総理退場〕
〇本間会長
続いて、財務大臣、総務副大臣からご挨拶をいただきたいと思います。
まず、尾身財務大臣からお願いいたします。
〇尾身財務大臣
財務大臣の尾身幸次でございます。税制調査会第1回総会の開催に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
この度、皆様におかれましては、ご多忙な中、税制調査会の委員にご就任いただき、ありがとうございました。心からお礼申し上げます。
現在、わが国経済は長い停滞のトンネルを抜け出し、民間需要に支えられた景気回復を続けております。他方、わが国財政は、長期債務残高の対GDP比が今年度末で150%を超える見込みであるなど、先進諸国の中で最悪の水準にありながら国民負担率は38%と、先進諸国中、実質的に最低の水準になっております。すなわち、わが国は最大の債務国である一方、負担は最低水準の国となっており、財政の健全化が極めて重要な課題であります。
しかし、問題の大きさを強調するだけでは財政再建を成し遂げることはできません。かつてイギリスのチャーチル首相は、「ペシミストはすべての機会の中に問題を見出し、オプティミストはすべての問題の中に機会を見出す」という言葉を残しました。
私は、わが国経済、財政の問題点をしっかりと把握した上で、安倍内閣が掲げる「成長なくして財政再建なし」という理念の下、改革と成長の機会を積極的に見出し、子や孫の世代にツケを先送りしない財政を確立することができるよう、全力をあげて取り組んでまいりたいと考えております。
財政再建を行うに当たり、無駄や非効率な歳出を放置したまま負担増を求めるということになれば国民の理解を得ることは困難です。国民負担の最小化を第一の目標に歳出削減を徹底していく必要があります。こうしたことから19年度予算編成に当たっては、メリハリを効かせつつ厳しい歳出削減方針を貫き、財政健全化に向け最大限の努力をしてまいりたいと思います。
歳入改革については、このような歳出改革を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保するため、抜本的・一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。
現在の諸情勢を勘案すれば、19年度予算の歳出削減の状況、来年7月頃に判明する18年度決算の状況、医療制度改革を踏まえた社会保障給付の実績等を見る必要があり、これらを踏まえて、税制改革の本格的・具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えております。
いずれにせよ、財政再建の重要性にかんがみ、19年度予算につきましては従来の改革努力を継続し、徹底した歳出削減に取り組んでまいります。
委員の皆様におかれましては、この趣旨を踏まえて、中長期的な視点からの総合的な税制改革を推進していくため、専門的見地から、あるべき税制のあり方についてご審議を深めていただきますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。
〇本間会長
どうもありがとうございました。
次に、大野総務副大臣にお願いいたします。
〇大野総務副大臣
総務副大臣の大野でございます。菅総務大臣が国会用務のため出席できませんので、代わってご挨拶を申し上げさせていただきます。
まず、先生方におかれましては、ご多忙のところ、税制調査会委員への就任をご快諾いただきまして、厚くお礼申し上げます。
少子高齢化をはじめ経済社会の構造変化が進みます中、活力とチャンス、そして、やさしさにあふれた美しい国を築くために各般の改革を推進していく必要がございます。中でも税制は経済社会の基盤であり、経済や社会の持続的な活性化や国・地方を通じた財政の健全化に向け、あるべき税制の姿を描き、その実現を図ることが重要でございます。
地方分権の推進につきましては、「地方の活力なくして国の活力なし」との考え方の下に、魅力ある地方、自立する地方をつくるために国と地方の役割分担の見直しなどに取り組み、分権改革を一層加速させてまいります。そのための推進体制等を規定する地方分権改革推進法案は去る10月27日に閣議決定をいたしまして、今臨時国会に提出いたしたところでございます。
地方税に関しましても、国・地方を通じた歳出に占める地方の役割の大きさを踏まえまして、税制の抜本的な見直しや国と地方の役割分担の見直しを通じて、分権型社会の実現に向けた地方税の充実を図っていく必要がございます。その際、できるだけ偏在度の小さい地方税体系を構築するという視点が重要であると考えております。
また、いよいよ来年から、三位一体改革の成果として所得税から個人住民税への3兆円の税源移譲が実現いたしますが、その円滑な実施に向け国民の理解が得られるよう、関係機関及び地方団体とも十分連携して積極的に周知を図ってまいるところでございます。
委員の先生方におかれましては、地方分権の推進や、これを支える地方税の重要性に深いご理解を賜わり、あるべき地方税制に関して十分ご審議をいただきますよう、菅総務大臣に代わりましてご挨拶申し上げる次第でございます。よろしくお願いいたします。
〇本間会長
どうもありがとうございました。
それでは私から、会長就任にあたっての挨拶をさせていただきたいと思います。
ただ今、安倍総理から諮問をいただき、また、財務大臣及び総務副大臣からもご丁寧なご挨拶を賜わりました。改めて責任の重さを痛感するとともに、皆様のご期待に沿えるよう全力を尽くす決意でございますので、委員の皆様におかれましても、これまで以上、あるいは新任の方には、我々まさに税制調査会のミッションの問われる時期でもございますので、しっかりとサポートしていただければという具合にお願いいたします。
わが国経済社会がグローバル化や少子高齢化、さらには個人の価値観やライフスタイルの多様化の中で、税制そのものも根本から問い直されてきている時期にあろうかと思います。しかも財政健全化へ向けての努力も、世界に冠たる債務大国であるということも踏まえれば、しっかりと取り組んでいかなければならないと考えております。
総理の諮問の中にもございましたとおり、我々が、世界の中で成長力、競争力を再生し、その果実を税財政の中に取り込んでいくという好循環をつくっていくことが求められると思います。その上で、これからやらなければならない少子高齢化対策とか、社会保障の財源とか、さまざまな問題もございます。我々は税制調査会の原点に立ち返って、税が、経済や個々の家計、企業に対してどのような影響をもたらすのか、きちんと分析し説得する材料を持ちながら、真摯に国民に向かって負担を求めていくための前段階の作業をしていかなければならないと考えております。
税調はこれまで、どちらかというと来ていただいて大所高所からご指導いただくという形で進められてまいりましたけれども、ぜひ皆様におかれましては、個々の専門的な知識、あるいは広範な見識を踏まえて、汗を流す税制調査会でありたいという具合に、私、先頭になってやらせていただきたいと思いますので、よろしくご協力のほどお願いいたしたいと思います。
また今回、新体制にあたりまして、総理、官房長官及び財務、総務両大臣を含めて体制の強化をしていただきました。また、選りすぐりの新委員も選んでいただきました。これを生かすも殺すも私の努力次第にかかってくると思いますので、その辺のところもよろしくお願いいたしたいと思います。
また、財務省、総務省におかれましては、これまで以上に全力で税制調査会を支えていただきますことをお願いいたしたいと思います。
新税調は、当面、年末の審議を進めなければなりません。これは、来年度の税制改革を具体的に設計するという予算とのセットの作業であります。これにつきましては時間的な余裕もありませんので、直ちに審議をスタートさせ、12月初めを目途に年度答申のとりまとめを行いたいと思います。その際、通常の全体の会議に加え、例えば審議のテーマに応じてグループに分かれて議論を行っていただくなど、税制調査会の運営に新たな工夫をしてみたいと考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
また、答申のとりまとめにあたり、数名の委員の方に素案作成のお手伝いをお願いしたいと考えております。具体的な方法、日程については、後ほどになってまことに申し訳ございませんけれども、追ってご連絡させていただきます。
この年度改正に関する審議を終えて、来年の年明け以降、中長期的視点からの総合的な税制改革の審議を進めてまいりたいと思います。その際、先ほど申し上げました、冷静にしてきちんとしたマクロ、ミクロの分析をする、それだけではなく温かみのあるハートというものを大事にして、国民の負担を真剣にお願いする努力をしていかなければならないと考えております。皆様のプレゼンテーションもぜひお聞きいたしたいと存じますし、いわゆる広報・広聴の機能を重視して、広く国民各層、各分野の声をお聞きする機会を持ちたいと考えているところであります。
いずれにせよ年明け以降の税調の運営については、改めて委員の皆様のご意見を十分賜わりながら、じっくりと考えてまいりたいと思います。
最後に、重要事項を審議する総会等をはじめとして、税調の会議には、総理、財務大臣、総務大臣にはできるだけご出席を賜わりたいと思います。よろしくお願いするところであります。
以上、税調のあり方について、私の考えを申し述べさせていただきました。改めて委員の皆様のご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたしたいと思います。ありがとうございました。
それでは、ここで自由討議の時間を設けたいと思います。今、私からの挨拶で述べさせていただいた今後の税調のあり方など、ご意見、ご質問等ございましたら、ご自由に発言していただきたいと思います。どなたからでも結構でございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。時間は一応設定しておりますけれども、皆さんのご意見をしっかりと賜わりたいと思いますので、ぜひ積極的な発言をお願いいたしたいと思います。
佐竹委員、どうぞ。
〇佐竹特別委員
特別委員の佐竹でございます。秋田市長でございます。引き続きということで、またよろしくお願い申し上げたいと存じます。また会長には、この難しい時期、大変な舵取りということでご労苦をおかけいたしますけれども、ひとつよろしくお願い申し上げます。
実は、このような形で国の財政をつかさどる幹部の方、大臣がいらっしゃるわけでございまして、前回の最後の税調の際にもちょっとお話し申し上げましたが、国民負担の問題というのは一つは直接的には税という問題がございます。一方で、税の範疇に入らない介護保険だとか、国保税は税的な要素もございますが、そういう義務的な、税の範疇に入らないもの。
もう一つは、私ども地方行政で、私自身の思い込みかもしれませんけれども、いわゆる受益と負担の原則というものが果たして貫かれているのか。欧米諸国に比べますと、受益と負担の非常に細かいところもありますけれども、大きいところもございます。非常にわかりやすい例で言いますと、今の前提ではゴミ処理は税で賄われています。しかし、欧米諸国では税でゴミ処理を賄っているところはわりと少ないはずであります。各種施設の利用料など、こういうものについて我々は非常に問題意識を持っているわけでありまして、税と税以外の義務的なものと、任意税制調査会第1回企画会合(18.11.9)議事録のものでもゴミ負担という形の中に入る。それが適正かどうか、そこのバランスを全部一緒に議論しないと、なかなか税だけで離れては議論できないということがございます。
一説によりますと、そういう任意のものだけで数兆円の金額になると。私の立場といたしましても、市民に対してできるだけ受益者負担、使う人が払うべきだということでやっております。それは地方分権の中で自治体が考えればいいことだと言われればそれまでですけれども、実は国と地方自治体の法体系、制度体系がそもそもそういう形でできております。これは横の議論でございますが、やはりここら辺についても考えないと、税だけではなかなかうまくいかないのではないだろうか。そういうことでより広範な議論、あるいは資料を出していただきまして、幅広い議論を期待するものであります。
以上であります。
〇本間会長
ありがとうございます。
田近委員、どうぞ。
〇田近委員
今回、委員に任命されました一橋の田近です。
専門は財政学をやっておりまして、今度の新しい内閣で非常に重要なキャッチフレーズの一つは、「成長なくして財政再建なし」。私も、そういうことかなと。つまり経済でいろいろな問題があって、経済学をやっていて問題解決できるというのは経済成長するからだと。そうでないと、誰かが得して誰かが損をするというその問題を解かざるを得ないわけで、その問題を解くには、経済学が教えてくれるのはやはり経済成長なのだろうと。
その前の内閣が「改革なくして成長なし、成長なくして財政再建なし」と。ただ、その輪を閉じれば、財政再建と成長とはどういう関係があるのだろう、その輪も重要だろうと。ヨーロッパの諸国を見ていましても、EU諸国の規律が効いて成長が持続できているというのは、「安定成長協定」があって、それぞれの国が、毎年毎年の財政赤字は、金利も含めてGDPの3%の枠内、そして政府負債のGDP残高も6割までと。そういう縛りがあるから、世界的な信任を得て近隣もコントロールできて成長できている。
だから、改革なくして成長なし、成長なくして財政再建なし。だけど、それが一方に流れるのではなくて、財政再建があるから成長していくのだろうと。そのコンテクストで足元あるいは来年を見ると、景気がいい中で、景気というのはよくなったり悪くなったりするもので、財政にとって一番重要なことの一つは--いつでも重要なのでしょうけれども、言いかえれば、成長しているときに重要なのは、上がってくる税収をどうきちんと使うかだと私は思います。いずれまた、この景気が下がるときがあるわけで、下がるときに増税ということはあり得ないわけですから、この税調のミッションは、中期・長期の問題もあると思いますけれども、足元は、今年、来年の税収が上がるときにそれをどう財政再建にフィードバックして成長につなげるか。それがミッションだろうと思います。
以上です。
〇本間会長
ありがとうございました。
ほかにいかがでございますか。吉川委員、どうぞ。
〇吉川委員
東京大学の吉川でございます。
今、田近委員のお話を伺っていて感じたわけですが、現在の内閣、「成長なくして財政再建なし」、こういうスローガンを掲げられていて、それに私は全く依存はございません。「成長なくして財政再建なし」というのは、成長が財政再建の必要条件と、理屈っぽく言えばそういうことを言っているわけでございます。しかし、経済成長は財政再建の十分条件ではない。「経済成長なくして財政再建なし」というのが正しいステートメントなのですが、それは経済成長が財政再建の必要条件だということを言っているわけで、十分条件ではないと。
繰り返しましたが、したがって、財政再建については財政再建として正面から考える必要もあるという気持ちを込めて私も参画したのでありますが、今年の7月7日だったでしょうか、本年度の「骨太の方針」には歳出・歳入一体改革というものが盛り込まれております。税というのは広範な影響を与える問題でありますが、広い立場から広い視野に立って歳出・歳入一体に考えていくという、今年の骨太の方針に盛り込まれたようなことがやはり必要なのではないかと考えております。
この調査会でもそうした観点から意見を言わせていただければと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
〇本間会長
ありがとうございました。
ほかにいかがでございますか。林委員。
〇林委員
関西学院大学の林でございます。
実は先日、近畿の若い税理士さんから少し話をしてくれと言われました。そのテーマは、税制というのはどうやって決まるのだろう、税制改革はどうやって決定するのだろうというテーマでして、答えるのが非常に難しいテーマでございました。おそらく税理士さんたちが感じておられるのは、分析的でないといいましょうか、いろいろな要望が出てきても、それがなぜ取り入れられ、なぜそれが取り入れられなかったのだろうかということがきちんと説明できていないところが、私は一つの大きな不信感のような感じで受け取りました。
会長が言われましたように、税金というのは説得、そして一方で国民の納得というのが必要なわけで、そのためにも、なぜこの要望が取り入れられたのかということに対して客観的に分析を踏まえた説明ができないとだめだろうと。ただ、その分析も国民にわかりにくい分析ではだめなので、そういう意味では開かれた政府税調の中で分析も踏まえ、そして国民のよき理解を得ていくというような形で私も参画させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
〇本間会長
ありがとうございます。
ほかにいかがでございますか。女性の方からまだご意見を賜わっておりませんが、税理士のお話が出ましたから、上月さん、どうでしょうか。
〇上月特別委員
まさにどうやって税制が改正されて決まっていくのかというのは、いつも我々言われるところでして、18年度税制も16年度税制も突然に出てきたというようなことが、いろいろ理屈はあるのでしょうけれども、やはり納税者としては納得しにくいという点があります。できるだけ透明性を高めていただいて、できれば国民の皆さんが納得できるような形の税制改正をお願いしたいと思います。
〇本間会長
ありがとうございます。
幸田委員、いかがですか。
〇幸田委員
先ほどから何人も委員の方がご意見を述べておられますが、私も全く同感でございます。成長なくして均衡なしというのは、私、もともと相場の出身ですので、あえてたとえるとすれば、相場には順張りと逆張りとあるんですね。相場が上がっていくときに買っていくというのが順張りで、逆に本当は下がっていくときに買いというのが逆張り。単純に申し上げるとそうなのですけれども、成長にかけるというのはある意味順張りでトレンドフォロアーだと思いますが、それはいい回転がきいているときはとてもいいのですが、逆になったときはとんでもないツケといいましょうか、含み損を含めて抱えてしまうわけです。もちろん、増税なくして財政均衡が保たれればそれに越したことはない。
財政審の委員もさせていただいていますので、常に努力をして、歳出カットがいかに難しいかというのも身にしみて感じているのですけれども、さっき総理も何度も歳出カットのことを強調しておられまして、ある意味安心したところもあるのですが、成長をサポートするために、あえて財政規律を守られるような、前内閣のような方向性が変わっていくのかどうかというところがとても気になるところです。逆張りにならないといいましょうか、トレンドフォロアーであるときの回転がよければいいのですが、それが逆になったときに将来にツケを回さないように、田近委員おっしゃったように、成長時期の税収の使い方というのが非常に大事な時期であるというのも私はとても感じております。
ちょっとまとまりがつかないのですが、あともう一つは、どなたかおっしゃいましたように、どうしても成長を強調するということが、一般の方からは選挙対策ではないかというふうな声も現実に上がっているわけです。マーケットなどでも言われておりますので、実はそうではないと。あくまで成長を見越すといいましょうか、説得力のある説明といいましょうか、国民に向けてそれを伝えていかないといけないということで、国民との対話ということにも重要な力を配分としてやっていくべきかなと思います。
新人ですので、よろしくお願いいたします。
〇本間会長
ありがとうございます。
ほかにいかがでございますか。どうぞ。
〇大橋特別委員
このたび特別委員に任命されました大橋でございます。
先ほどから安倍総理や尾身財務大臣からもお話をいただきましたので、そういう方向でお進めいただけると思うのですけれども、今、景気が非常にいいというご認識の方もかなりおいでになると思いますが、つい2、3年前までは戦後最悪の不況期にございました。そこからどうやって這い出してきたかというと、結局、企業が徹底的なリストラをやりまして、その結果として体質、体力をある程度回復できた。それが起爆剤になった。
もう一つは、我々が予想していたよりは現在のところは円安が続いている。そのために輸出が非常に好調であるということでございまして、現在でも、これは私どもの業種ではございませんが、自動車その他をご覧いただきましても、国内の業績というのは決してそれほど楽観を許されるものではございません。
したがいまして、こういう企業の努力と国際的な為替問題から言いますと、若干ラッキーな面、こういうものに恵まれているのだということをぜひご認識いただきまして、これからさらにこの勢いを伸ばしていくために、税制で何をしていかなくてはいけないのか。税制というのは、これからの国家の思想と方向性というものを明確にあらわしていくものでなければならないということを考えますと、今こそ日本が世界の中での国際競争力をどうやって本当の意味で高めていくかということが一番重要ではないか。それがうまく進めば、それがまた歳入の増にもつながりますし、それが、先ほどから皆様方がおっしゃっている財政の再建につながっていくということでございますので、ぜひご議論の中心に、国際競争力の確立・強化というものを視点に置いてお進めいただければというふうに切にお願い申し上げます。
〇本間会長
大橋委員、ありがとうございました。
どうぞ、横山委員。
〇横山委員
中央大学の横山でございます。
2点申し上げたいと思います。1点は、課税哲学についてどういうふうに私たちは考えたらいいのか。優先順位ですね。ご案内のように税制というのは2つの役割があると理解できまして、財源調達手段、一定の税収を上げるためにこれはギブンで与えられていまして、どういう税制が望ましいのかという本来の税のあり方論みたいな話です。もう一方は政策税制的な観点で、望ましい経済社会を達成するためにどういうふうに税制が手段として使えるのかという、この2点だろうと思います。このときに、成長あるいは活力ということは望ましい経済社会の姿だろうと思うのです。そのために望ましい税制と、それから根源的に持っている税制の姿として、すなわち先ほど林委員からもありましたが、納税者が納得する公平という観点や、中立や簡素、あるいは収入十分性、そういう価値判断をどういうふうに調整していくのかということがかなり重要になってくると思います。したがって、どういうふうにバランスをとっていくのかということが大きな問題の1点目だろうと思います。
2点目は、今、格差社会と言われておりまして、どういうふうな状態を人々は格差と認識するのかということについて、私たちは注意深くあるべきではないかと思っています。(ジョン・)ロールズの「マキシミンの原則」ではないですが、一番虐げられている人々に対してどういう手当ができるのかという観点も税制について求められている可能性もある一方で、弱者に対して税を軽減する、あるいは負担を軽減することがどこまで社会として受容できるのかという、まさに価値判断の問題が問われてくる。両方ともその点で私は、哲学の部分、租税原則の優先順位についてどこかで議論しておかなければならないだろうと。とりわけ収入十分性という原則が、最近、忘れられているのではないか、この辺も私は指摘しておきたいと思っています。
以上です。
〇本間会長
どうもありがとうございました。
長谷川委員、どうぞ。
〇長谷川委員
東京新聞の長谷川でございます。初めて税制調査会に参加させていただきました。
私は国民の納得感という点がとても重要になってくると思います。成長なくして財政再建なし、成長が重要である、これは全く異存がございません。それから、企業の競争力向上、活力が大事であるということも全く異存はございません。
問題は、そうやって企業が競争力を向上し、活力を向上し、収益が向上していったその先に、普通の国民は、企業が向上した収益が自分たちの家計にどのように恩恵が及んでくるのかということについて関心があって、そこについての十分説得的な説明がないとなかなか納得感が得られない。言いかえれば、経済が成長すれば家計にも恩恵が及ぶということについての分析が必要だろうと思います。
そして、この「諮問」の中にもあるのですが、税制が企業や家計にどのようにかかわるか、マクロ、ミクロの観点からの分析が必要であると。先ほど林先生も強調されました。この点について、計数的なものも含めて、経済がこのくらい成長し企業がこのくらい収益を上げてくると、家計にはこのくらいの恩恵が及ぶのだということを説明していく必要があるだろうと思います。それは、必ずしもこの税調の税制ですべて家計について面倒を見きれる部分ではないかもしれないけれども、税制調査会が答申を国民に問うときには、必ず、「じゃ私たちの生活はどうなるの?」という話が来るわけなので、そこについての説明は、あえて我々の税調の範囲を超えた部分であっても丁寧に説明してあげる必要があるのではないかというふうに思います。
〇本間会長
ありがとうございます。大変重要な指摘でありまして、我々がこれまでテリトリーとしていた部分がちょっと狭過ぎたというご指摘だろうと思います。
ほかにどうぞ。佐竹委員、どうぞ。
〇佐竹委員
今の長谷川委員のお話のとおりであります。市民と住民と接する末端でございまして、今回の産業経済の成長というのは全くそのとおりでありますが、ただ、一般の国民を見ますと、企業の減税をして我々住民は増税になるのではないか、単純にそういう理論が巷にスッと広がる。これはやはり警戒すべきことであり、今お話ありましたとおり、経済成長というのは結局国民にとってもいいことだと。むしろ昔よりもここの連鎖が、今、いろいろな雇用形態などで弱くなっております。やはりそこは十分注意しながら我々は議論すべきだと思います。
〇本間会長
ありがとうございました。
井堀委員、どうぞ。
〇井堀委員
東京大学の井堀です。
財政再建と経済の活性化の2つが当面の重要な政策課題であるというのは、これまでもいろいろと議論されているところだと思います。そのときに税の観点から考えますと、経済成長が起きたとしても結果として税収が増えるので、それをどこまで自然増収なり足りないところを裁量的にどうするかという、税収全体のレベルの話が中心になると思うのです。
もう一つの観点は、財政構造改革で見られたように、歳出のほうは中身を徹底的に見直すと同時に、歳出のレベルを下げるというのが大きな政策課題だと思います。税の世界で言いますと、できるだけ税収を確保すると同時に、税の中身をより徹底的に見直して、一定の税収を上げるという制約のもとで、いままでの課税ベースなり、今までの各税収項目の比をあまり変えない形で議論するのではなくて、税のそれぞれの課税ベースについてより大胆に見直して、一定の税収を上げるにしても、より優れた税制に変える議論が必要だと思います。
それは、歳出の中での既得権を大胆に見直すのと似たような点があると思いますので、税に関しても思い切って--過去の経緯があって税制というのは形成されてきたわけですけれども、その過去の経緯についても、経済社会環境が変化したときに大胆に見直して税制をよりあり得べく方向にする。それを新しい税調の中でやることが重要かと思います。それには当然、マクロ、ミクロに関してのより強力な分析能力が必要になると思いますので、それは事務方等も含めて新しい体制でやっていただければと思います。
〇本間会長
ありがとうございます。
どうぞ。
〇江上委員
江上と申します。
私も井堀委員がおっしゃったことに大変賛成しております。今回、委員を初めてお引き受けしたのですけれども、今までの論点整理とか、16年、17年の答申などを拝見すると、個々の課税項目についてはかなり議論が出されている。それぞれ拝見すると、もっともだというふうな感じがするわけです。
しかしながら、部分最適のところの議論にかなりエネルギーが集中しているような感じがいたします。今、井堀委員がおっしゃったように、それぞれの課税項目の中身を大胆に見直していくということは私は大賛成でございまして、今、社会の構成主体、個人、家庭、地域、企業等々、果たす役割、構造、ポジションはかなり変わってきております。女性の働くということも含めて、少子化も含めて。そういう意味では全体最適のゴールをある程度、今回の税制調査会でイメージでも国民に提示することは非常に重要だと思います。「成長なくして財政再建なし」のいずれもこれはプロセスの戦術のことを言っているわけですね。ツール、戦術を話すだけではなくて、ゴールがどこなのか。今回の税制調査会で向かうべきゴールがどういう社会なのかと。税制のインフラという仕組みをわかりやすく提示するという作業をぜひしていただきたいし、自分も努力したいと思います。
〇本間会長
江上委員、ありがとうございました。
井上委員、どうぞ。
〇井上特別委員
今回、安倍総理が演説で「活力に満ちた日本経済は430万の中小企業の元気が不可欠である」ということを盛り込んでいただいた。中小企業にやっと目を向けてくれたのかなというような感じで読ませていただいたわけですけれども、どうも税制の面で中小企業に対する考え方というのは十分なされていないのではないか。例えば留保金課税の問題にしてもそうですし、事業承継の問題にしてもしかりですけれども、そういう面で中小企業をもっと元気にさせるための税制、頑張れる税制というものをやはり検討していただく必要があろうというふうに思います。中小企業の稼いでいる付加価値は55.2%あるわけです。雇用の面にしてもしかりです。
そういった点からすると、今、大手は非常に頑張って、この上半期でも16%の経常益増というように非常にいい状況にあるわけですけれども、中小企業はまだまだだと。どうしてなのかというと、いろいろな面で価格が転嫁できないとか、利益を確保できないとか、非常に苦しんでいるものもたくさんあるわけです。そういう点にも目を向けながら、ともかく中小企業の活力をどのようにして上げるかということについて、もっと重点を置いて検討していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
〇本間会長
ありがとうございます。
飯塚委員、どうぞ。
〇飯塚特別委員
税制というのは、国民の生活と経済を左右する非常に重要な制度だと思っておりますけれども、この2つとも国境というものにだんだん守られなくなってきている。要するに海外との熾烈な競争の中で企業経営が行われて、それによって成長が大きく左右されるということを日々強く感じています。今、欧米との比較も大切ですけれども、日本はアジアとどう組んでいくかということが極めて重要であります。これからは中国は明らかに日本を越えていく存在でありますし、我々はアジアとコオペレーションとコンペティションをどう行うか。そのときに日本のそういう足場が全く高さが違うという状況があるわけです。これが長年、是正されずに来たというのがビジネス界にいて強く感じているわけです。
先ほど、企業の収益と家計が直結云々という議論がありましたけれども、私は半導体とかエレクトロニクスの中におって、直結して皆さんがリストラの中で苦労しているのを見てきたわけですね。ここ十数年間、非常な苦戦をしてきて、先ほど来お話がありますけれども、リストラによって見かけ上の業績をよくしているだけにすぎない。ですから直結しているわけです。よくなればそれも必ずよい方向に直結するということを、きっちり説明していけたらなと思います。
日本はイノベーションに関してきわめて脆弱な国家になっているような気がします。米国では、大企業と大学、ベンチャーというのが両輪になってイノベーションをつくり出した。20年前からそのインフラができ上がっている。その中で日本は片肺飛行をしているわけです。ベンチャーも大学もいまひとつ機能していない。こういうものを促進するような、単なる減税ではなくて、方向づけをする税制を提案できたらなというふうに強く思っています。よろしくお願いします。
〇本間会長
ありがとうございました。
ほかにいかがでございますか。どうぞ、秋山委員。
〇秋山特別委員
特別委員を拝命いたしました、サキコーポレーションの秋山咲恵でございます。
この前の3年間、初めて委員を拝命いたしまして、その3年間の経験の中で私なりに課題だなというふうに感じておりました点が2点ございます。
1つは、先ほど来何名かの方がご指摘になっておられるように、財政再建を語るにしても経済成長を語るにしても、税、特に個別の税目についての議論だけではやはり片手落ちの部分があるのではないかと。そういう意味でなるべく有機的な議論ができればいいなというふうに思っております。
2点目は、やはり痛切に感じましたのが、ここでどれだけ議論しても国民にどれだけ理解あるいは信頼を得ることができるのかと。この課題に取り組まなければ本来の税制改革というのは進まないのではないかというふうに思っておりますので、こういった面で調査会の中での議論、それから調査会自体の運営、この両面でぜひとも前に進んでいけたらいいなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
〇本間会長
ありがとうございます。
ほかにいかがでございますか。どうぞ。
〇北村委員
新委員になりました中央大学の北村と申します。
私の専門は会計学ですけれども、会計学には会計基準というものがございまして、それが税の場合には税法という形になるのではないかと思います。会計基準にはやはりその根底に流れる理論というのがあります。最近の税制改革の結果を見ておりますと、私、初めてですので、その経過のほうはよくわかっていないのですけれども、以前は税は税の理論というものがあったのではないか。理論というほどオーバーなものでなくても、考え方というものがあったかと思うのです。
ところが、最近のを見てみますと、こちらの考え方とこちらの考え方とどうしてそんなふうに違った税になってしまっているのかということが感じられる部分があります。だから、これからいろいろと見直し並びにより発展的な議論が行われると思うのですけれども、そのときに、ここの場でとるところの考え方というものをしっかりと筋の通ったものを示していただきたい。もちろん、税ですから政策が入ってくることは重々承知しているのですけれども、その前には、やはりきちんとしたものがなければならないのではないかというふうに思っております。
〇本間会長
北村委員、ありがとうございました。
ほかにいかがでございますか。どうぞ。
〇永瀬特別委員
お茶の水女子大学の永瀬と申します。私、専門は労働経済学と社会保障論でございます。
今まで、国際競争力が大変重要という話がずっとございまして、私もそのとおりだろうというふうには思います。ただし、私自身は少子化の問題を大変重要な問題ととらえておりまして、国際競争の激化の中で逆に若い世帯の収入が不安定化しており、子供を持とうとしても経済的にも十分でないというような状況がでていると思います。このようなことはここの税制調査会だけで語れることではないかもしれません。しかし、税金も社会保険料も、あるいは社会保険からの給付や社会手当も、家計という目から見ますと実は一体のものでございまして、その辺を含めて広い視点で考えることが必要なのではないかというふうに考えております。
〇本間会長
永瀬委員、ありがとうございました。
ほかにいかがでございますか。今、各委員からご意見を賜わっておりますが、政府のお立場の中枢の方もいらっしゃいます。財務大臣、今までのお話を聞いて何かご感想等ございましたら、お願いします。
〇尾身財務大臣
私、財務大臣に就任してまだ間がないのでございますが、自民党の税制調査会の副会長も7、8年やっておりまして、毎年暮れになりますと税の議論をしております。私、本間会長にも申し上げたのですが、自民党の税制調査会というのは選挙がある人間が議論をしているわけでございまして、いろいろな税の提案あるいは税制改正をやるときに、有権者の皆様に納得していただけるかなということをかなり重点で考える。どういう税制が筋が通ったものかということももちろんいろいろありますけれども、公平、公正、簡素、あるいは活力というようないろいろな考え方がありますが、結局は、今、財政が非常に厳しい中で、どういう税制であれば有権者に納得していただけるか。これはある意味で言うと、有権者の理解と納得がない税制改正はできない、こういうことであります。そういう点で言えば理想的な税制のあり方ということもさることながら、納税者に納得していただけるということも大変大事だということを、いつも感じながら税制の議論をしているわけでございます。
そういう点でこの政府税制調査会は、どちらかというと、どれが公平か、どれが簡素、中立、活力かというような点で、純粋理論というとおかしいのでありますけれども、理想の姿を描いていただく。自民党の税制調査会のほうは、国民の理解と納得を得られるということをかなり意識の中に置きまして、いろいろな判断をしているということだと思っております。私は、どちらがいいとかいうことではなしに、今日初めて政府税制調査会に出させていただいて、皆様の意見を聞きながら、私自身はそういう点があるなというふうに思いましたので、何かの参考になればありがたいと思って申し上げました。
〇本間会長
ありがとうございます。
官房長官、いかがですか。
〇塩崎官房長官
今日からいよいよ政府税調が始まるということで、大変期待しております。先ほど総理からお話がありましたとおり、今までの税調から趣を変えてご議論を賜われればありがたいということで、今日、「諮問」の中身がございます。何となく税とか負担とかいうのは、国民にとってもあまりうれしく話すことでもなく、また、明るい話でもないというふうに思われておりますけれども、何のために税を払っているのかということを考えてみれば、当然のことながら、何らかの形で政府からサービスの提供を受けて、幸せな生活を送るということが前提で納税者は税金を納めていただいてくれているのだろうと思います。したがって、先ほど来出ていますけれども、国民の皆様方にわかりやすい議論と、それから、あまり暗いお話ではなくて、明るい税制改正論議を皆さん方にやっていただくとありがたいなと。その前提は、先ほど来たくさん出ていますけれども、国民の理解が得られるようなことであり、もちろん経済界もそうでありますけれども、生活者、そういった方々にご理解をいただけるようなことだろうと思います。
今、尾身大臣から党税調の話がありましたが、例えば、こういう減税をやったときにマクロ経済全体の伸びがオーバータイムでどれだけ伸びるのだろうかとか、そういう議論というのはほとんど党の税調ではないんですね。本来、税制改正をやるときは、生活にどういう影響が出て、あるいは経済全体にどういう影響が出るのか、コンポーネントごとにどういう影響が出るのかということを考えながらやっていかなければいけないことであります。どちらかというと、特に党はそうですけれども、ミクロの世界のパワーゲームのようなところで決まるところも結構あって、全体として経済にどういうインパクトがあるのかというのはよくわからない。
そういう中でやってきておりますが、この政府の税調はかなりレベルの高い知見をお持ちの先生方にお集まりいただいて、また、幅広いご経験の方々においでいただいて議論していただくということでありますので、ぜひ国民にわかりやすく具体的なイメージがつかめるような議論を展開していただいて、そして、国民が納得できるような形で税の体系というものを受け入れていただきながら、自分たちの生活へのはね返りを感じ取って、なおかつ生活現場で元気に、あるいは経済現場で元気に活動できる、そんなことに資する議論がされるとありがたいなと思っているところでございます。「言うは易し行うは難し」でありますので、本間会長の差配のよろしきを得て、何とかいい議論がこれまで以上にできることを期待したいと思います。
〇本間会長
ありがとうございます。
大野副大臣、いかがでございますか。
〇大野総務副大臣
先ほどもご挨拶で申し上げたのですが、三位一体改革で税源移譲をいたします。地方税に対して格別のご理解をいただいているわけですけれども、やはりこの説明がきちんと調和できないと税源移譲というのは無理だろうと私は恐れてもいます。今、総務省といたしましても県や市町村に対しまして、このたびの税源移譲、来年の6月に住民税が数字の上では上がるわけです。なぜ上がるかという説明ができないようでは、これからの議論は難しいと思っておりまして、その点も十分責任を私どもは感じながら、また、先生方のご協力もいただきたいと思います。
〇本間会長
ありがとうございます。
ぜひここでさらに意見を述べたいという委員がいらっしゃいましたら、お受けしたいと思いますが、いかがですか。よろしゅうございますか。いろいろな会がございますので、その際にまた積極的なご意見を賜わりたいと思います。
本日の総会は、時間もまいりましたので、この辺で終了させていただきたいと思います。
次回は、正委員、特別委員、すべてのメンバーで審議を行う会合ということで、早速でございますけれども、11月9日(木曜日)午後2時から4時まで、中央合同庁舎第4号館・共用第一会議室で開催いたします。お忙しいところをまことに恐縮でございますけれども、ご出席を賜わるようお願いいたします。
また、その後の当面の日程でございますけれども、19年度改正の個別項目の議論を始めなければなりません。11月14日(火曜日)午後2時から4時まで、11月15日(水曜日)午前10時から12時まで、11月21日(火曜日)午後2時から4時まで、開催を予定いたしております。議事の進行によっては、大変恐縮でございますけれども、30分から1時間の延長などもあり得る、大変な作業をしなければならないと思います。あらかじめお含みおきいただきたいと思います。
本日は、第1回の総会ということで活発なご意見を賜わりました。また、政府の関係者の方から有益なご示唆もございました。これを生かして具体的にどのように税制調査会で分析能力を高め、国民への説明責任を果たすかということを私も真剣に考えてまいりたいと思います。また、具体的なやり方についてはご相談させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございました。これで終わらせていただきます。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。