総会(第46回)・基礎問題小委員会(第55回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成18年6月2日(金)16:00~16:13

石会長

それでは、税調の総会と基礎問題小委員会の合同会議が終わりましたので、その中から今後どういう形で議論を展開させるかということにつきまして、二、三、ご説明をいたしたいと思います。

今日は法人課税と国際課税について議論しました。当初は個別間接税も予定していたのですが、ご出席の方はおわかりのように、大変議論が活発で、3番目のテーマは次回送りということにいたしました。正直申しまして、法人課税、国際課税の問題というのは、かなり専門的な、かつ、個人のベースというよりは企業のベースの議論でありますので、議論がどれだけ展開するか心配だったんですが、予想以上に議論が白熱したというふうに考えております。

法人課税に関しましては、これまでずっといろんな形で議論を積み重ねてきておりまして、それほど新しい展開はないかなと思っていたんですが、しかし、やはりいろんな角度から問題を出していただきますと、これから議論しなければいけない問題が幾つかあるなという感じをいたしております。

第1点は、やはり法人税率の引き下げについて、恐らく他の税目で所得税とか、あるいは消費税との関係もありますから、簡単に引き下げにいくのかどうか。これはまた議論の分かれるところだと思いますし、それと同時に、国際競争力という視点から、この法人の税率をどうするかという問題は大きく残されていると、このように考えております。そういう意味で、我々はこれまで過去の答申で、現時点の到達点のレベルでいいのではないかと書いておりますが、もう一回そういう視点も踏まえまして議論する必要があるかもしれません。私の個人的な考えでは、ここの点につきましては、さほど大きなドラスティックな改革というのは難しかろうとは思います。

第2の問題ですが、減価償却につきましては、今日ある方向として複雑だし、それから95%という、要するに100%対象になっていないのが問題であるとか、項目が多すぎて大変だとか、あるいは耐用年数が長すぎるというご指摘があって、これにつきましては大方の方が、やっぱり見直しの方向で論点を整理されているなという感じはいたしております。

それから、議論が白熱した第3の点は、例の欠損法人の比率。それから、ある意味では倒産率との絡みです。これはいろいろ解釈があり、これまで税調でも度々議論して参りました。確かに入れ替わり立ち替わり赤字になったり黒字になったりする企業が出てくるわけですから、一貫して赤字の継続ではないという意味から言えば、かつ、中小法人、零細法人の数が多いということで言えば、こういう実態があるのかなという印象でございます。かといって、これをまた別の視点から全く新しい尺度にするかというのも問題であると思います。もう少しこの中身について、他の国との比較も含めて、赤字法人の取り扱いをどうするのかという議論をやっていきたいと思います。

第4番目が、法人課税の世界で地方税、地方関連法人課税関係をどうするか。これは両方から議論がございまして、国際的に見て日本の法人税は高いという人と、いやいや、地方のやっている様々な公共サービスの視点から言えば、法人税は地方が担当してしかるべきだというご議論、あるいは法人も県あるいは市町村の住民としているんだから当然払うべきだという議論があり、これはなかなか根が深い問題であって、そう簡単には終わらないのかなと思っています。他の税もそうですが、一体この法人課税の問題は国と地方でどういうふうに分かち合うかという議論が、より大きいのではないかと、このように思っております。

その他、様々なパラダイムの変更を促すような議論もございましたけれども、法人課税の方向性としては、これまでの議論を踏まえてやっていく過程で、こういうものを吸収していきたいと、このように考えております。留保金課税の問題もありましたし、そういう意味では欠損法人の問題を巡る大きな問題が幾つかあるのかなという感じはいたしております。

それから、第2の大きなグループは非営利法人の問題で、幾つか議論も出されておりましたし、営業法人の取り扱いの議論も出てきております。何分にも明治二十何年以来の大きな改革でありますので、これに対する改革は非常に高まっていくと思います。ただ、今、非営利法人の法律が国会を通っただけでございまして、我々の出番であります税制の方、これは来年度以降になってこようかと思いますので、その時期になるとまた本格的にこの税制の問題、寄附税制の問題、この議論をしなければいけないという意味で、今日はこれまでの議論を整理したという段階で終わったかと思います。

それから国際課税、今日第3番目の案件でございまして、これはかなり専門的な分野にまたがっているわけですが、しかし、グローバル化された世界の中で、これから法人課税のあり方をどうすべきか。これは日本企業が外国に行くとき、あるいは外国の企業が日本に来るとき、いろいろな形で税負担を考え、かつ、その企業誘致なり、企業進出なりということと密に関係しています。特にアジアとの関係において、租税条約を結んでくれ、そういうことでないとなかなか企業進出が難しいだろうというご指摘もあったように、これからの一つの方向性だと思っています。外国税額控除の話、移転価格税制の話、租税条約の話と、様々なパーツ、パーツがあって、それについて今、日本の国際課税というのは幾つかの問題を抱えているようでありますので、それにつきましてこれから一つずつ議論は詰めていきたいと、このように考えております。

これが今日やりました幾つかの論点から、我々、特に私が会長をして個人的に汲み上げた点でございます。次回、6月16日に消費税と今日できなかった個別間接税をやりたいと思います。たばこ、揮発油税、環境税も含めてです。それから6月30日、7月に3回やる中で、まだちょっとテーマが確定しておりませんが、次第に議論を詰めて中期答申の作業にいずれ入っていくということになっていくのではないかと、このように考えております。以上です。

記者

最初、7月のスケジュールが聞き取れなかったので。

石会長

失礼しました。7月は個別に申しておりませんが、7月4日火曜日、7月14日金曜日、7月21日金曜日、3回を予定しております。いずれも2時-4時です。

記者

それと法人税なんですが、これまでの答申では、国税については税率を見る必要ないよということで方針が出ていたんですが、今回は地方分等含めると実効税率では、特にアジアを比較した上で高いのでというような、そういうような意見が散見されたんですけれども、これからの議論の方向性としては国税、地方法人税も含めて税率のお話が行われるのか、あるいは主に法人二税に焦点を当てた議論がなされるのか。

石会長

いや、それまだ固めきっていませんし、特に今日は法人税引き上げの論者からは、実は具体的な議論が出てきておりません。法人税につきましては上げる・下げる、両方あるんですけどね。それから、国・地方をどう分けるかという問題もあり、非常に複雑な様相を呈しております。我々として今の段階では幅広に議論をしていきたいと思っていますが、他の税の関係もありますから、一気にこれを大きく引き上げる、引き下げるかという方向で議論しにくい。これは国際的なつながりもありますから、アメリカがどうか、ドイツがどうかという話とも絡んできて、そう簡単に方向を見出すのは難しいと思っています。

記者

それと減価償却なんですけど、これは方向性としては、例えば残存額とか限度額というのは下げる方向であって、あとは制度全体的にシンプルにしましょうと、そういうふうな方向で。

石会長

これまでは本格的に議論しておりません。一人の経済人から強いご意見があったということでありますが、それに対して強い反応も出ていないということだし、私は個人的にも、今申し上げた、複雑である、耐用年数が長すぎる、あるいは95%しか認めない等々は、国際的な基準から言うとやっぱりちょっと考えてみる必要があるのかなと思っていまして、ちょっと議論を展開したいと思っています。

記者

今日、法人税の税率について、実効税率の問題を含めていろいろとアジアとの比較であるとか、経済全体の成長との関係という議論が出たと思うんですけれども、今までの法人税の議論と、それから今日出たような、ある意味、新しい視点になるのかもしれないんですけど、それを踏まえてこれから何か検討していく問題はありますか。

石会長

経済成長を十分念頭に置いて法人課税を考えるというのは、別に今日初めて出た議論ではなくて、過去の答申を見ていただきますと、そういうのを十分盛り込んでます。

ご存じのように、世界的に見て法人税はどんどん下げてきた経緯があって、これは国際的な協調として同じ方向でいくということだと思います。恐らくこれからの議論は、他の国の動向をにらみつつ、法人課税の落ち着き先というのを決めるような議論になってくるんだろうと思います。何分にも法人課税は複雑でありますから、法定税率のところだけいじくっても問題は解決しないかもしれない。それも国と地方の、例の実効税率の問題もあります。それから、政策減税であります租特の問題もあり、マクロで見た数字とミクロで見た数字、個別になるとこれはいろいろあるんですよ。今日、韓国のサムソンのことをおっしゃっていた経済人の人がいましたけど。業態によって違いますから。そういう点で少し基礎的な作業もしながら、議論をしたいと思いますが、従来から見て非常に大きな論点が展開されたとは、私は個人的に考えてません。

記者

1点だけ確認なんですけど、先ほどの減価償却、95%しか認めないというのは、これはそうすると経済界は100%認めてほしいというような声があるんですけど、その方向で…。

石会長

そういう要望に対してどうするかという議論をしていきましょうということ。資料を見ていただくとわかるように、日本だけが、対象範囲が95%で、つまり5%の残りはしないという話ですね。その辺の経緯、その辺の様々な経済的な問題を少し議論する必要があるかもしれないという問題提起です。

記者

そうすると基本的には議論の中で経済人の方がおっしゃっていたような方向で、3つぐらいの論点を言っていましたけれども、減価償却のところ。その方向で行くという感じに。

石会長

行くかどうかわかりません。とりあえず減価償却というのはかなり問題意識を持たれていて、累次の答申でもかなりそれは言っていますが、実際にまだ近年本格的な作業をしてませんから。年数の問題、それから300幾つかと言っていましたけど、非常に数が多い項目の問題、残存価額の問題、3つくらいが問題になるのかなとは思っています。これはもう少し、実際に中期答申を書く段階では詰めなければいけないと思っています。

(以上)