総会(第36回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年11月25日(金)16:44~17:09
〇石会長
本日、平成18年度税制改正をまとめてまいりました。そして、先ほど総理官邸に行きまして、首相に手交してまいりました。その時の結果からお話しします。
20分ほどお話しいたしましたが、雑談も交えて、総理非常にご機嫌でありまして、それなりの愉快な話をしてきたと思っています。こちらからお伝えしたかったことは、私は個人的に2点ございまして、1つは、今回はコンパクトに、来年度税制改正にフォーカスを当ててまとめてきたと。そして、いうなれば、今、日本の税制は構造的にいろんな問題を抱えているわけですから、それをとりあえず直す方向で、足元を固めるべきであり、恐らく近い将来、抜本的な税制改正があるでしょうから、それに対する足場固めをしておかなければいけないという趣旨のことを申し上げました。
それからもう1点は、これは要望なんですが、来るべき税制改革、将来、いつ起こるか分かりませんけど、まあ早晩来るでしょう。税制だけの議論ではどうしても部分的なところのみが問題になる。歳入歳出一体化の中で、税のパーツ、あるいは歳出削減のパーツ、あるいは社会保険料のパーツ、いろいろあって、その全体像の中で税制の果たす役割をしっかりまとめていただきたい。それは恐らく総理のイニシアチブによってやっていただくのが一番いいと思います。総理からは、歳入歳出両方やるなら財政審と税調を一緒にしたらいいじゃないかというようなご提案もございまして、現にそれをやっていると説明しました。そういうご関心もあり、一体化した上で税制改正を考える仕組み、そういうのは今度の6月以降の我々の税制改革論議に役に立つ、利用できるかなというふうに私も感じました。それが総理で、最後に、この答申の中で大いに改革のほうに向けていくのもあるし、残念ながらとれないものもあるよなんていうことをおっしゃっていらっしゃいましたが、これはいつもの話でありますから、そうですかと受け止めました。
さて、中身でございますが、昨日、恐らく事前の記者レクがあったと思いますので、私のほうからあえて細かく申す必要はないかと思いますが、税調の審議を踏まえまして、議事進行したという立場から得た、2、3の感想を述べておきたいと思います。再三言っておりますように、今回は例年より守備範囲を限定して、論点を絞って、いうなれば来年度税制改正に出てくるであろう、あるいはやるべきであるというものを拾い上げて、先ほどの言葉を使えば足場固めをしたということだと思っています。さはさりながら、幾つか、5ページほどの中にはかなりキーになる、税制改革の主要な論点になることは盛り込んであると思いますし、それから、ぜい肉をとって、筋肉質で書きましたので、一行一行にいろんな意味合いが込められているという感じの答申になっていると、このように思っております。
構造的に問題を抱えていると申し上げた最初が税源移譲の問題でありまして、3兆円の補助金の削減を前提にいたしまして、国から地方に税源を移譲するということにつきまして、具体的な詳細の設計は我々まだ3兆円分決まっておりませんからできておりません。方向として住民税のほうはフラット化する。それから、国税と地方税の役割分担をすると。片や応益原則、片や累進度を高めたうえで所得分配機能を強化する等々のことを書きました。
それから、定率減税、これはいろいろご議論もありました。ごく少数の方からは、定率減税廃止反対というご意見もございましたが、ただ、司会した立場から申しますと、ほとんどの方が定率減税廃止やむなしということで、意見は一致したと思います。そういうスタンスで書いてございます。理由は大きくいえば2つあるんですが、1つは何といっても設立の経緯からみて、景気対策として導入した、あるいは抜本税制改革までの時限的なものであると、そういうことがはっきりしているわけでありますから、廃止の条件がすべてそろったであろうと。ただ、景気に関しましてはまだ1年数カ月後、つまり2007年1月からでありますから、今から全部分かりませんから、来年の今ごろ、再度立ち止まって、景気との兼ね合いで決めればいいと。特に答申には書き込んでございませんが、皆さんの意向はそういうことだと思っています。それから、やはり今の時点だけ取り上げますと、ある意味では負担増になりますよね。増税になりますよね。それについて反対の方は指摘されておりましたが、ただ、今申し上げたように、過去からながめてみますと、これは期限付きの減税を廃止するということでありまして、通常の増税ではない。それと同時に、ここにも書いてございますように、見合いの財源なくしてこの巨額の減税を何年も続けてはいけないだろう。既にもう5年か6年やっていますから、20兆円近くの財源をすべて財政赤字、つまり赤字国債発行でやっているわけです。これはある意味で、すべからく後世代の負担にしているわけでありますから、我々現世代が後世代に負担を押し付けて、この減税の恩恵をいつまでも享受できないだろうということが、恐らく税調の皆さんの中にあったと思います。そういう表現が、この税調の答申の中に書き込まれていると思います。つまり、見合いの財源なくして何年もできないというのは、そういう趣旨であります。
それから、もう1つ、これは3つ目というべきでしょうか、研究開発、そして設備投資、つまりIT減税ですね、これも期限が来ましたので、はっきりやめるということで意見は一致しました。反対している人は、それに代わるものを見つけてくれということのご趣旨で反対があったんですが、ただ、今回これを一回切るということ。つまり、景気対策で入れたので、この際きれいに清算すると。その後、競争力強化とか、あるいは経済の活性化のために新しい視点から租税特別措置を再度創設するという議論、これはまた別な問題としてある。この辺の仕分けをはっきりつけたつもりでございまして、答申では一回切って、その後、新しい租特に関しましては再度検討するという視点でございます。租税特別措置は、我々一貫して課税の公平、中立、簡素の点から問題であると考えております。これに関しまして、とりあえずやっと1つなくなったところです。さらに、時間を置かずもう1つ付け加えるということについては非常に抵抗がございますし、その役割もじっくり議論しなきゃいけないという意味で、将来の課題といたしました。
それから、特定財源につきまして、今日総理ともだいぶ議論いたしましたけど、これは税調として、累次の答申で一貫して一般財源化しろと書いてございまして、その環境がさらに整ったという意味で、それをもう一度ざっと書き込んだということだろうと思っております。
とりあえず大きな問題は、この4つになり、この点を中心に書いたということです。そのほかに公示制度をなくすとか、あるいは酒税についてこういうスタンスでやるとか、環境税について引き続き議論しなければいけないとかという点は書き込んだつもりであります。そういう意味で、来年度税制改正について、我々として意見をまとめまして、議論の土俵を決めたと思っています。来週以降、党税調、あるいは与党税調で、実際に我々の提案した、いうなればつくった土俵、あるいは投げたボール、それを受け取っていただいて、来年の税制改正に具体的に制度設計をしていただけるものと考えております。例えば、所得税、住民税の税率構造を最終的に始める等々は、恐らく年末に向けて大きなポイントになると思っています。
今日の審議の最後に、少し申し上げましたけど、来年度以降、我々中期答申というのを6月以降をめどに書かなければいけませんので、1月後半ぐらいから税調を立ち上げて、その準備を始めたいと、このように考えております。
以上、答申をまとめ、総理に手交し、その過程で起きましたことをご説明をいたしました。以上です。
〇記者
まず今日の総理との会談なんですが、石会長の要望に対して、財政審と税調を一体化したらいいのではないかというような総理の発言があったということですか。
〇石会長
要するに、これは縦割りだなと。つまり、税だけやっていても議論が成熟しないと。やはり歳出面、あるいは社会保障の関連をいろいろ申し上げて、まあ財務省の中なんだから、財政審と税調が一緒にやればいいじゃないかというようなことをおっしゃいましたけども、現に、全員ではございませんが、代表選手同士を出し合ってやっているわけで、そういう事情もご説明いたしました。ただ、それはそれで、本格的に制度として合同会議、一体化するようなところまで話はいっていませんので、そういう情報を単にご説明し、かつ首相もそれを了解したということであります。これ以上は多分進まないと思います。ただ、私は、財政再建というのはいろいろな要素があるから、やっぱり総理のほうで責任を持って、できれば財政再建諮問会議みたいなものでやってもらうと一番いいですが、ということをちらっと申し上げましたが、それは経済財政諮問会議でやるというお立場でしょう。それはしっかりとやりたいとおっしゃっていました。
〇記者
1月以降の中期答申なんですが、これについて消費税、多分議論の対象になってくると思うんですが、具体的にどういったものを議論の対象に。
〇石会長
恐らく、歳入歳出一体改革というのは、骨太の方針で6月以降にまとまってくるんだと思っています。その中で、税の役割がどのぐらいあるかというのは、だんだん明るみに出てくると思うんですが、その段階で社会保険料、あるいは税で、どうやるか。それから歳出カットがどのくらいあるのか等々全体をにらんで議論すると。そういう意味で、税制改革も聖域なく、いろんな税について検討しなければいけないと考えておりますから、当然消費税も含んだ意味での税制改革についての提言を出し得ると思っています。今、具体的な中身はまだ分かりません。時期なんかも分からないですね、大体、いつ我々が中期答申をまとめられるかも分からないですよ。つまり、歳入歳出一体改革を含む骨太の方針が出て、それをベースにしてやるとなると、例年よりは遅くなると思いますね。
〇記者
酒税改正なんですが、今回は具体論に踏み込まないということなんですが、今後自民党の税調に移って、今年度で実現できるかどうかという石会長のご見解を。
〇石会長
全く分かりません。向こうに聞いて下さい。恐らくかなり政治的にいろいろな問題があるでしょう。業界との話もあるでしょうけど、私のほうでは、それは分かりません。
〇記者
税調の方針を出しました。土俵を提示して、ボールは党税調に投げられたとおっしゃいましたが、たばこ税だったり環境税だったり、党のほうが逆に税に関して主導しているというか、これからの方向性を主導してきている流れもあるのではないかと思うんですが。
〇石会長
結構じゃないですか、大いに。たばこに関していえば、この間ご説明しましたように、我々として時期が遅れてしまって、起草段階で起こった話でありますので、本格的に参画はできなかった。環境税については今申し上げたように、方向は決まりましたけど、どういう形になるかについては税調の中でも議論がまとまっていませんから、このぐらいの程度になったということで、政府税調が土俵を決めて、そこで党税調なり与党税調がそこの土俵の中でいろいろ議論を詰めてもらうというのは、いつものスタイルですから、一向に構わないと思っています。
〇記者
土俵でなく、土俵の外でやられているような感じが。
〇石会長
まあ、時々うっちゃりもありますから、土俵の外ということもあり得るでしょう。それはそれで、双方の役割が違いますし、それから、いろいろなものが出てくるタイミングの問題もありますから、それはそれでしようがないし、土俵の中から一歩も出てくれては困るなんていうことを我々は言っているわけじゃありません。それは自由だと思います。
〇記者
今日、総理と会われた時に、定率減税の廃止、それから法人政策減税の廃止について個別に総理は何か論評されましたでしょうか。
〇石会長
論評まではいっていない。これまでのいろいろな、要するに期限付きの減税でもありますし、それから、いろいろ抱えている税の構造的な問題をきれいにしておかなければ足元も固まってませんという形で、私の理解では、了承というか、当然だというふうなお考えじゃないかと思いますけどね。それを、はっきり僕が、どうですかと言って、向こうがイエスと言ったわけじゃありませんけどね。当然、この2つについては我々みたいな答申が出てくることについては特にアレルギーというか、反対はないという立場じゃないかと思います。ただ、分かりません。これはこっちの受け止め方ですから。
〇記者
所得税の税率が今度三位一体の改革が完了すると、5%から40%までの5段階という形になる可能性が高いと思うんですが、これが1つの行き着いた形とみるか、あるいは消費税の論議が控えている中で、ここもまだある意味暫定的にして、改革していくという感じなのかというあたりについて。
〇石会長
今の段階でどうとも言えませんけれども、強いていえば、固定したものではないでしょう。政府・与党は2007年度以降、消費税を含めた抜本的税制改革をやると言っていますから、その中には当然所得税も入ってくると考えるのが常識だろうと思っています。
〇記者
そういう中で、一部下回ったんですが、6月の論点整理でうたわれた控除の見直し等も中期的には実現させていくというお考えでしょうか。
〇石会長
今回は、3兆円を国から地方にしっかり移す。税率だけでやろうということに限定されていますから、住民税も所得税も控除の問題は今回は触れていません。いずれすぐ出てくるかどうかは別として、長い目で見たら、この控除の問題も避けて通れない問題であると思いますから、所得税の改革というのも、消費税とどっちが先か分かりませんけど、抜本税制改革の中で絵を描くということになってくると思っています。
〇記者
今回の審議とは直接関係ないんですが、年が明けると、いよいよ所得税、住民税の定率減税の半減があります。これは、個人的にはちょっと意外に知られていないなという感じを受けておりまして、実際に始まった時に、可処分所得の減少とか、あるいは心理面に与える影響はどうなのかと。このあたりは、会長はどのようにみておられますでしょうか。
〇石会長
そもそも知られていないかどうか自体、私、事実を把握していませんが、報道では、既にいろんなことがやられているんじゃないですか。逆に、知られてないということは、それだけの減税の恩恵も肌身で感じなかったのかもしれませんね。ちょっと、起きてみないと分からないですね、その問題は。おっしゃる通り、インパクトは非常に強くて、景気に悪影響を及ぼすという方もいらっしゃいますし、前半をみて、後半、その結果次第で廃止をやれという意見もございました、税調では。そういうことを踏まえて、定率減税の廃止がスタートして以降は、注意深く、景気の情勢等々をみていかなければいけないのかなと思っています。
〇記者
一方で、詳しい人は、これは恒久的減税ではなかったのかということで、まあ恒久的ではあるんですけれども、もっと続くんじゃなかったのかということをおっしゃる方を耳にしているんですけれども。
〇石会長
それは絶対間違いですね。今回税調でもそういうご議論が出て、当時の状況を、国会答弁も含めて、全部つぶさに事務局に調べてもらいました。つまり、当時景気が二番底ぐらいに落ち込んで、非常に景気が悪くなってきた。したがって、何かせにゃいかんという形で、臨時異例的、緊急避難的に所得税の減税をしたわけです。本当に減税を恒久にするなら、累進税率を緩和するか、課税最低限を引き上げますよ。これは全く臨時異例的だから税額控除を使ったんでしょう。減税の仕方からみていただいても分かるように、それははっきりしています。それと同時に、これは抜本的税制改革までの時限であるということもはっきり書いてありますし、景気のためにやるということもはっきり書いてあります。恒久的という、「恒久」という字がついておりますが、あの時、臨時異例的に定額減税があったり、数年前から、1年やってやめ、臨時でやってやめといったような腰の定まらない減税が様々繰り返されていましたから、総理としては、少しでも長期的にという意味で「恒久的」にしたんでしょう。恐らく恒久的減税にはもう一つ、所得税の最高税率の引き下げと法人税率引下げがありましたが、あっちはある意味では、早くから税調としても構造的にそういう方向で進めたいと思っていますから、あれは恒久的でしょう。この定率減税に関しては全くこの形態からみても、これは恒久減税ではあり得ないと、税調で議論いたしまして、それは皆さん了解していると思います。というふうに報道もお願いします。
〇記者
今年6月の論点整理をめぐって、相当世論のバッシングもあって、会長も多分いたたまれない、つらい思いをなさったのでないかと思いますが…。
〇石会長
いや、そんなことありません。全然ありません。
〇記者
それは失礼いたしました。それで、今回の答申は5ページという非常にスリムな形で仕上がったわけなんですけれども、改めて増税というものに対する国民のアレルギーというのがあると思うんですが、その所得税の抜本的な改正も含め、来年はいよいよ消費税についても本格的な議論をしなければいけないし、今回、具体的なところまで踏み込まなかった酒税なり環境税なり、そういった検討事項というものも次々と控える中、どうやって今後国民に理解を求めていこうとお考えなのか。来年、中期答申もお出しになるので、そこら辺、会長の気構えをお聞かせいただければと思います。
〇石会長
別に、ニュートラルでやっていますから、意気込んでいるわけではない。ただ、今日総理も、冒頭で増税は大変だなと、まず最初のお話がそうでしたから、いよいよ大変だというのはみんな分かってきたと思います。ただ、秘策も奇策もないですよ。これは正面から、今の国の財政事情、財政赤字は全部自分達の後世代の負担になるというような話とか、あるいは少子高齢化、その中でどうしても財源が必要だと。それに対して、国民の負担している税の割合が、歳出の中で50%程度と非常に低い。いろんなことを説明してやっていくしかないですよ。したがって、逃げ回っていてもしようがない。税調としては、愚直にもですね、その事態を正攻法で説明して、結局は、同時に増税なんてすべて一挙にできませんから、歳出削減との組み合わせ等々も含めて、やっぱり大きな視点からの仕組みをちゃんとつくって、それで選択肢を少し整理しつつ、国民の議論とですね、国民の参加と選択ですね、そういう形で議論を進めていくしかないと思っています。それは一審議会の力に余るものでありまして、我々、そういう意味で提案は整理いたしますけど、それは僕は政治の責任だと思っています。
〇記者
前回の会見とかでも話が出たんですが、竹中大臣が、一部の審議会の関係者が増税を口にしているのは抵抗勢力だという話をされたという質問をした時に、会長は、失礼だという話をされていたと思うんですけれども、今日、竹中大臣、隣に座られてちょっと会話をやりとりしていたと思うんですが、どんな会話をしていたのか。
〇石会長
まあ、彼とはもう、別に根に持つような話じゃないでしょう。要するに、あんなとこでけんか別れをしてもしようがないし、会えばまた昔の教える仲間ですから。それは確かにああいうことを、僕のいない、我々のいないところで税調全体を誹謗するようなことはけしからんと思っていますから、それはその通り申し上げましたけど、会えばあれをめぐって再度口論するというような大儀な事件でもないでしょう。彼は、あれ以降言ってないでしょう。何か今日はそういう意味でお話があったのかもしれないけど。
(了)