第36回総会 議事録

平成17年11月25日開催

石会長

それでは、時間になりましたので、総会を開催したいと思います。

今日は、前回ご審議いただきました「答申(案)」をここでお認めいただきまして、最終的に来年度税制改正の答申として、このあと小泉首相に手渡してきたいと思っています。

今日は、2時40分頃、谷垣財務大臣と竹中総務大臣にご出席いただきまして、ご挨拶をいただく予定です。我々の両脇があいているのはそのためであります。

それでは、これから「答申(案)」の審議に入りますが、前回皆さんから多数ご意見をいただきました。全部活かせればよかったのですが、極力活かしました。極力皆さんのご意見をと思って修文したのが今日の「答申(案)」でございます。そう言うわけで、ちょっと自分の意見がなどと思われる方もあるかもしれませんが、よく読んでいただきますとちゃんと入っているということでありますので、お聞きいただければと思います。

最初に、ここに出ております、「平成18年度税制改正に関する答申(案)」と「答申に盛り込まれていない主な意見」、これもまた少し追加されておりますので、この2つを事務局から朗読していただきたいと思っています。

では、事務局、お願いします。

事務局

平成18年度税制改正に関する答申(案)

一 基本的考え方

今、わが国は、先進国中最悪の危機的財政状況の下、少子・高齢化、グローバル化といった大きな構造変化に直面している。この中で、政府は、将来にわたり公正な社会を維持し、持続的な経済社会の活性化を実現するため、広範な分野の構造改革に取り組んでいる。例えば、近年、不良債権処理の促進や大胆な規制改革が進められ、経済の体質強化や民需中心の経済活性化が図られている。税制についても、新たな社会に相応しい姿に再構築するため、「あるべき税制」の具体化に向けた取組みを進めている。

厳しい財政状況に対する国民の将来不安を払拭し、経済社会の持続的な活性化を図るため、公的部門を持続可能なものにしていくことが極めて重要な課題である。このため、「三位一体の改革」を実現することに加え、給付と負担のあり方を抜本的に見直す社会保障制度改革、さらには歳出・歳入両面からの財政構造改革を断行していかなければならない。こうした歳出・歳入一体改革の土台固めを行う平成18年度予算において、政府は、一般歳出を平成17年度に引き続き減額するとともに、新規国債発行額についてできるだけ30兆円に近づけるとの方針で、予算編成に取り組むこととしている。

今後これらの改革を実行していくにあたり、まずはあらゆる分野で徹底した行財政改革を進め、公的部門の無駄をなくして欲しいというのが国民の声である。税制調査会としても、一般会計・特別会計ともに徹底した歳出削減や予算配分の重点化・合理化を実現し、聖域なき歳出改革が図られることが不可欠であると考える。

他方、高齢化の進展に伴い公的サービスの費用が急速に拡大している中、租税を含むわが国の国民負担は、他の先進諸国と比較しても低い水準となっている。歳出改革を断行しつつも、なお必要とされる社会共通の費用については、制度・執行両面の取組みを通じて、国民全体で広く公平に分かち合う必要がある。今後、所得・消費・資産等の課税ベースを通じてどのような負担を求めることが適当かといった検討も含め、税体系全体の抜本的改革を総合的に議論していかなければならない。税制改革は、種々の改革と密接に関連しており、今後歳出・歳入両面からの財政構造改革全体の姿を示し、国民の理解を求めていく必要がある。政府は来年半ばを目途に歳出・歳入一体改革の方向についての選択肢と工程表を明らかにするとしており、税制調査会としてもかかる諸改革の動きを十分に踏まえつつ、税制全体のあり方の総合的な検討を進めていきたい。

以下、平成18年度改正の主要な課題についての指針を示すこととする。

二 主要な課題

1.個人所得課税

平成18年度改正においては、国・地方の三位一体改革の一環として、補助金改革とあわせ、所得税法及び地方税法の改正による恒久措置により、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を行うこととされている。その実施にあたっては、個々の納税者における税負担の変動を極力小さくすることに十分留意し、個人所得課税体系における所得税と個人住民税の役割分担を明確化すべきである。具体的には、個人住民税については、応益性や偏在度縮小の観点から、所得割の税率をフラット化することを基本とする。一方、所得税については、所得再分配機能を適切に発揮させるように、より累進的な税率構造を構築し、国・地方を通じ全体として個人所得課税のあるべき姿と整合的な制度とすべきである。

定率減税は、経済社会の構造変化への対応といった観点とは関わりなく、専ら著しく停滞した経済活動の回復に資する観点から緊急避難的に講じられた景気対策のための措置であり、全ての納税者を対象に、一律に税負担を軽減するものである。経済状況が導入当時に比べ改善している中、この減税は見合いの財源なしに将来世代の税負担により毎年継続されてきている。こうしたことを踏まえれば、これまでの答申で指摘しているとおり、経済状況を見極め、廃止すべきである。

個人住民税均等割の税率は、これまでの1人当たり国民所得等の伸びを勘案するとなお低い水準にとどまっており、その税率を引き上げる必要がある。その際、基礎自治体である市町村を重視することを検討すべきである。

2.法人課税

経済社会の構造変化に柔軟に対応する観点から、新しい会社法制に対応する整備や株式交換等組織再編に係る税制を整備する必要がある。また、事業形態の多様化の動きについては、事業形態の選択に対する中立性を確保する観点から的確な対応が求められる。すなわち、わが国税制は、収益及び費用の私法上の実質的な帰属に着目して法人やこれに準ずる性格を有する信託等に対し法人課税を行っており、引き続きこうした適正な課税関係を構築していく必要がある。さらに、法人の設立が容易になる中で、個人形態と法人形態との税負担の差に由来する不公平は是正すべきである。

法人税率については、既に他の先進諸国並みとなっており、引き下げる状況にはなく、また、国際競争力維持の観点を踏まえれば、当面、現在の水準を維持することが適当である。

公益法人制度改革に対応する税制については、本年6月の「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」で示したとおり、「新たな非営利法人制度」の適切な制度設計が税制上の措置を検討する不可欠の前提である。当調査会としては、「新たな非営利法人制度」に関する法案の具体的な内容を踏まえ、改めて税制の具体化に向けた検討を行うこととしたい。

3.国際課税

租税条約は、国家間の課税権を調整し、国際的な投資交流を促進するための基礎的なインフラである。そのネットワークを拡充すべく、先般改定について基本合意された日英租税条約・日印租税条約の早期の実施に向け、努力すべきである。

脱税等のいわゆる犯則事件に関し、条約上の情報交換規定に基づく情報提供要請に応じての情報収集手段を拡充する必要がある。また、課税の適正化を図るため、わが国に短期間滞在する居住外国人の課税範囲を限定している非永住者制度を見直すべきである。さらに、条約上と国内法上との取扱いの差異を利用した国際的な租税回避の防止が重要であり、その方策について検討していく必要がある。

4.酒税

現行の酒税制度は、近年の酒類消費の多様化や製造技術の変革に必ずしも適切に対応したものとはなっていない。このような状況を踏まえ、税制の中立性や公平性を確保する観点から、酒類の製法や性質等に着目してその分類の大括り・簡素化を図り、酒類間の税負担格差を縮小する方向で包括的に見直す必要がある。

5.固定資産税

固定資産税は、どの市町村にも広く存在する固定資産を課税客体としており、税源の偏りも小さく市町村税としてふさわしい基幹税目であり、今後も本税の安定的な確保が重要である。

土地に係る固定資産税については、平成6年度以降いわゆる7割評価が実施され、評価水準は全国的に均衡化された。一方、税負担の急増に配慮した措置が講じられてきた結果、負担水準については依然としてばらつきが残っている。このため、今後、これまでの負担調整措置を基本に、負担の均衡化・適正化を一層促進する必要がある。

6.租税特別措置等の整理合理化

政策減税として平成15年度に導入された研究開発税制(上乗せ分)及びIT投資促進税制は本年度末に期限を迎えるが、この間に企業の研究開発や設備投資は総じて順調に増加した。平成18年度税制改正においては、研究開発税制の基幹的部分は期限を区切らない措置とされる一方で、前述の措置は3年間の時限措置とされたという経緯を十分に踏まえる必要がある。また、同様に3年間の時限措置として導入され、本年度末に期限を迎える不動産登記に係る登録免許税の軽減措置や不動産取得税の軽減措置についても、導入の経緯や土地取引を巡る状況を勘案しなければならない。したがって、これら現行の措置を延長する必要はない。

租税特別措置・非課税等特別措置を講ずるに当たっては、これまでの答申で指摘しているとおり、既存の措置について大胆な整理合理化を進めつつ、競争力向上等の構造改革や経済社会の活性化を進めるために真に有効な措置に集中・重点化していかねばならない。

7.特定財源

道路特定財源等の特定財源については、資源の適正な配分を歪め財政を硬直化させる可能性があることから、一般財源として活用していくべきである。

道路特定財源を含むエネルギー関係諸税等については、資源節約・消費抑制・社会的コストといった観点や諸外国と比較して税負担水準が低い状況にあること、地球温暖化対策が求められている中で税負担水準の引下げには問題が多いこと、さらには国・地方を通じた極めて厳しい財政事情等を考慮すると、当調査会がこれまで指摘してきたとおり、納税者の理解を求めつつ、現行の税負担水準を維持することが適当である。

8.地球温暖化問題への対応

いわゆる環境税については、国・地方の温暖化対策全体の中での環境税の具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組みの現状、さらには既存のエネルギー関係諸税との関係といった多岐にわたる検討課題がある。現在、関係省庁等において、これらの課題について議論が行われているところであり、その状況を踏まえつつ、総合的に検討していく必要がある。

9.納税環境整備

税制に対する国民の信頼を確保するためには、制度のみならず、所得捕捉等の執行面においても適正・公平な課税の実現に努めるとともに、まじめな納税者の視点に立って制度を改善していく必要がある。

公示制度については、第三者の監視による牽制的効果の発揮を目的として設けられたが、所期の目的外に利用されている面がある、犯罪や嫌がらせの誘発の原因となっている等、種々の指摘がなされている。また、これに加え、個人情報保護法の施行を契機に、国の行政機関が保有する情報について一層適正な取扱いが求められている。このような諸事情を踏まえ、公示制度は廃止すべきである。

相続税の物納制度については、物納の許可基準が明確でない、手続に長期間を要するケースが見られる等の指摘があることを踏まえ、物納制度に対する信頼を確保するため、手続の明確化・迅速化等の観点から制度を整備すべきである。

加算税制度については、近年のインターネット取引の急増等を背景に無申告事例が多発している状況等にかんがみ、申告秩序維持の観点からその割合を見直す必要がある。

個人住民税については、徴収の効率化を図る観点から、所得税や介護保険料と同様に、公的年金等からの特別徴収を速やかに実施する必要がある。

答申に盛り込まれていない主な意見

今回の答申の審議過程において、以下のような主な意見が出た。

総論

イ 財政事情が厳しいことや税負担水準が低いことを踏まえれば、景気のために緊急的に講じた措置を廃止することが必要。

ロ 緊急避難的に講じた措置については、財政収支というよりはむしろ税制のあり方の問題として、元に戻すことが必要。

個人所得課税

(定率減税)

イ 定率減税を見直す場合には、定率減税とセットで措置された個人所得課税の最高税率と法人税率の引下げも見直すべきではないか。

ロ 定率減税は廃止すべきでない。

法人課税

イ 中小企業支援の観点から、同族会社の留保金課税は廃止してほしい。

ロ 租税特別措置により、中小企業は同族会社の留保金課税を相当程度免れているのであるから、これ以上の措置は不要。

ハ 法人税だけでなく、それ以外の様々な税等を含め、日本の法人の税負担の水準を検討する必要がある。

酒税

イ 分類の簡素化そのものには賛成だが、何を同種・同等とするのか明らかにする必要があるのではないか。

ロ 負担格差といったときに、酒類の小売価格やアルコール度数など、何を基準に格差を縮小していくのか。

ハ 酒税の見直しを行っても、また発泡酒のような製品が出てきて、その度に議論が振り回されるのは問題。

租税特別措置等の整理合理化

イ 日本企業の国際競争力を強化する観点から税制の後押しは必要。

ロ 中小企業の状況には配慮が必要。

ハ 地価は一部では上昇が見られるものの、全体としてはまだ下落しており、登録免許税や不動産取得税の軽減措置について、中小企業については延長の必要がないとまでは言えないのではないか。

特定財源

イ 目的税についてはその経緯等から積極的な役割もあると考えられるので、その見直しに当たっては、その点も考慮しつつ議論すべき。

ロ 道路特定財源を一般財源化するときに、納税者の理解を得て環境税に組み替えることも考えられる。

ハ 世帯当たりの自動車保有割合が高く、家計の自動車関連の負担が大きい地域もある。道路特定財源が余っているのであれば一般財源化ではなく税率を引き下げるべき。

ニ エネルギー関係諸税等の税負担水準については、比較の仕方によっては、必ずしも諸外国より低いとは言えないのではないか。

ホ 道路特定財源の見直しに当たっては、国と地方は区別して、道路特定財源のあり方について考え方を整理し、議論すべき。

ヘ 道路特定財源の一般財源化の議論はあるが、地方にはまだ必要な道路整備もあり、必要な財源は確保すべき。また、地方の特定財源比率を高めるべき。

地球温暖化問題への対応

イ 京都議定書目標達成計画で、環境税なしの施策が閣議決定された。自主的に取り組んでいる企業に対し、追加負担を求めることには反対であり、既存の環境対策予算を効率的に使うことや、化石燃料への課税を整理することが先決ではないか。

ロ 環境省案は、財源確保に重点が置かれていること、税率が低く効果が不明であること、使途が明確になっていないこと等について疑問がある。

ハ 昨年の環境省案は、電気の税率が一律であることや社会保障財源に充てられるなどの問題があったが、今年の案は議論のたたき台になるのではないか。

ニ 環境税の使途については、地方で森林整備などの環境政策を行っていることに配慮すべき。

ホ 環境税の消費抑制効果を発揮させるため、できるだけ消費に近い段階で課税することを検討すべき。

納税環境整備

(公示制度)

イ 公示制度は、第三者監視による牽制的効果という目的が現在もあると考えられるため、匿名性が過度に強まっている現状を考えて、存続させてもよいのではないか。公示は、所得税だけでなく、法人税や資産税でも行われており、それぞれの必要性について検討すべきではないか。

その他

イ たばこの税金は低すぎる。大幅な税率引上げを検討すべき。

石会長

ありがとうございました。

今日はまだ時間的余裕もございます。皆さんにご議論いただく前に、どこを修文したか、今、サーッと最後の答申を読み上げましたので、おわかりにくいと思います。総務課長から、前回の総会からの主要な修正点、簡単にご説明いただこうと思います。

総務課長、よろしく。

永長総務課長

「答申(案)」の1ページ、「基本的考え方」のところでございます。ここは基本的にはラインは変わっていないのですが、例えば「あるべき税制」とか、「改革」とか、「国民の理解」という言葉がだぶっている、こういうご指摘がございまして、そのあたりを整理しております。基本的に第1パラグラフ、これは「今」から始まるところ、「取組みを進めている」という現状の認識。第2パラグラフが、「公的部門を持続可能なものにしていく」ということで、その土台固めということで18年度予算の基本方針が客観的な事実として記載されております。その次の第3パラグラフ、「今後これらの」というところです。ここが歳出削減のパラグラフでございます。「他方」から始まるところが歳入についての記述、このように整理した次第でございます。

次のページ、2ページでございます。「主要な課題」ということで個人所得課税。ここは内容は3つございます。第1パラグラフ、「平成18年度改正」から「整合的な制度とすべきである」、ここは税源移譲でございます。メッセージといたしましては、その3行目、「個々の納税者における税負担の変動を極力小さくする」、その次、「所得税と個人住民税の役割分担を明確化すべきである」、この2つのメッセージを頂戴しております。

2つ目のパラグラフが定率減税ですが、前回の案では、ここに個人所得課税の中長期的課題についての4行ほどのパラグラフが入っておりました。なかなか4行に書き込むのは難しいということもございまして、18年度改正事項に重点を置くということでそのパラグラフは落としてございます。

また定率減税のところ、3行目ですが、「経済状況が導入当時に比べ改善している中」ということで、定率減税廃止を提言する理由をこのように記述させていただいております。

次の「2.法人税」、これについては変更はございません。

3ページの「3.国際課税」、ここも変更はございません。

「4.酒税」ですが、「税制の中立性や公平性を確保する観点から」という前に言わずもがなのことが書いてあったということで、それをデリートしております。

「5.固定資産税」については変更はございません。

4ページでございます。「6.租税特別措置等の整理合理化」、ここの3行目、「研究開発税制の基幹的部分は期限を区切らない措置とされる一方で」、これを挿入しております。ご案内のように研究開発税制は基幹的部分は期限を区切っておりません。上乗せしている部分、これが期限切れが来る。ご存じの方はご存じですが、この基幹的部分、期限がないことをご存じない方もいらっしゃるかもしれない。そこは混乱が生じないようにということで、あえて記述してございます。

さらに、その次のパラグラフですが、「租税特別措置・非課税等特例措置」、ここは「については」となっていたのを、「を講ずるに当たっては」、このように変えております。さらに、「大胆な整理合理化」の前に「既存の措置について」を挿入しております。根雪という言葉もご意見として出ておりましたが、既存についてしっかり見直せというご指摘を頂戴いたしました。さらに「競争力向上等の構造改革や」というのを挿入しております。これについては、やはりいろいろな政策的要請はまだあるではないか、こういうご指摘を踏まえて挿入した次第でございます。

「7.特定財源」でございます。ここはおしりから2行目、「納税者の理解を求めつつ」というところを挿入しております。これについては一般財源としての問題、さらには、そもそもの税負担水準の問題についてご議論ございまして、いずれにしましても納税者の理解が必要であるというご指摘を頂戴して、これを挿入しております。

最後のページ、5ページです。「9.納税環境整備」、ここは1行目ですが、「制度のみならず、所得捕捉等の執行面においても」、このように書いております。実は1ページにも同じような文章が出てくるのですが、適正・公平な課税というのは、いわゆる所得捕捉の問題を除いては語れないというご指摘を頂戴いたしまして、挿入した次第でございます。

最後のおしりから2行目でございます。「徴収の効率化を図る観点から」という文言を挿入しております。特別徴収の提言の趣旨、これを書けというご指摘でございます。

さらに、「答申に盛り込まれていない主な意見」ということで、ここは番号だけで恐縮ですが、新たに挿入したところをご覧いただきたいと思います。

1ページ、「総論」で言えばイとロは新たにつけ加えさせていただいております。同様に「法人課税」のハ、次のページ、「租税特別措置」についてのロとハ、「特定財源」についてはイ、ニ、ホ。以上でございます。この辺が追加させていただいたものでございます。

石会長

ありがとうございました。前回の総会以降の直しも含めまして、最終的な案もお読みいただきました。そこで、今から時間をとりまして、この「答申(案)」につきましてどういうご意見があるか、特にご意見をお出しいただきたい、このように考えております。

どうぞ。尾崎さん。

尾崎委員

4ページの、「7.特定財源」から2行上ですが、「競争力向上等の構造改革」というのは、具体例はどういうことを考えておられるのか。

石会長

おそらく国際的な面の競争力もあるでしょうし、国内的には中小企業のご意見もありました。それ以外に、今2つが具体的に出てございますが、日本経済に即した意味で研究開発とか何か、さらに他にも何かあるのかもしれませんけれども、そういう意味で構造改革という形で漠と読んだのです。何か特に修文等々のご意見はございますか。

尾崎委員

構造改革というのが、競争力向上というのとぴったりかみ合わない感じの言葉なものですから。経済社会の活性化とか言うときに競争力向上だけでもいいような感じで、競争力向上のために構造改革をするというのが、具体的に一体何をするのかというのがないままで。そういう議論をやったでしょうか。

石会長

ええ。中小企業の話、国際競争力の話等々出まして、そこでこの辺で修文してくれというご注文があって。それで「構造改革」を入れたのがご不満だということですね。

尾崎委員

競争力向上もいいのですけれども、構造改革でやるというのがどういうことなのか。

石会長

構造改革の定義かもしれませんけれども、競争促進とかいろいろの中で構造改革という議論は必要でしょう。そういう意味で漠としてとらえたと。つまり、国際競争力なんていったら即構造改革につながる話ではないですか。そうではありませんか。

尾崎委員

今まで、むしろ租税特別措置とかそういうものであったわけですね。それで構造改革ですか。

石会長

租税特別措置を集中・重点化しようというのがここの文章です。ここはまさに。本来、税調はなるべく縮小・整理したいというのが長年の願望ですが、必要最小限のものはそのときどきの経済情勢なりタイムリーなものについてはという意味で、これまで研究開発とか設備投資を認めてきたわけです。それも今後やってくれというご希望はあったわけです、国際競争力の強化のために。そういう意味で、限定的ながら、その場その場において必要なものをやらなければいけないだろうという趣旨のことがここに書いてあって、それはどういう観点かというと、まさに経済社会の活性化であったり、構造改革であったりということで入れたわけです。尾崎さんのご指摘の点、文章上の点につきましては、クリアでないというご意見があることは承知いたしました。

丹羽委員

それに関連して、盛り込まれていない意見の中の租特のイとロ、これを尾崎さんは今おっしゃっていると思うのです。もう少しはっきりと、競争力だけではなくて「国際競争力」と書いたほうがよかったのではないか。それから、構造改革というのはやはり中小企業を対象にした話でしょうから、そういう文言をクリアに入れておいたほうがわかりやすいと思います。ということには私も賛成でありますが、今さらこれを直すわけにいかないでしょうから、そういう趣旨で会長にはご発言をいただきたい。

石会長

そのつもりで文章はつくったつもりです。つまり、幾つかあるやつをこの2つであらわしましたから、クリアカットでないというご不満が残っているのは重々わかります。

どうぞ。

中里委員

申し上げようかどうかちょっと迷っていたのですけれども、答申に関係なく、お願いなのですが、税源移譲で何%か国税から地方税に移りますね。両者の課税ベースが全く一緒ならそのままですけれども、国税から地方税に投げるとベースは広がる。そうするとその分、少しトータルで税金が増える。そこの説明、例えば寄附金控除とか所得控除とか、そういうふうになりませんでしょうか。

石会長

技術的な制度設計はまだやっていないのです。ですから、その類いのことは事実上出てくる可能性は十分あります。ただ、我々は今の段階でそういう制度設計ができなかったのは、そもそも3兆円の補助金のかたまりさえ決まっていない段階で基本的な方向を示すのみで終わってしまったので、おっしゃるとおり、これからおそらく税率をそもそも決めなければいけないでしょう、正確にしかるべきところへ。その中でさらに徴税の問題もあるでしょうし、中里さんのおっしゃったような意味での課税ベースが本当に移譲したあと、どうなのかという議論もあるでしょう。これはしかるべき場で議論してもらわなければいけないと思いますが、今回の答申にはそこまで盛り込めなかったということです。逆に言えば盛り込まなかったということです。問題意識はわかりました。

ほかにいかがでしょうか。菊池さん、どうぞ。

菊池委員

いいといえばいいのですけれども、盛り込まれないほうの意見の「総論」のイとロは、盛り込まれているのではないですか。

石会長

この主な意見というのは、100 %盛り込まれていないというだけではなくて、表現のし振りとかニュアンスとか、やや微妙なもので、ご発言の趣旨を紹介しておこうということもあるわけです。それで突っ込んだという意味で二重に採用されているとすればよろしいのではないですか。

菊池委員

だから、いいといえばいいと言ったのですが、そうだとすると、もっと入れてもいいようなものがいっぱいあったような気がします。

石会長

そうなんですよ。どこまで拾い上げるか、どこを捨てるか、これはかなり難しい。だって、皆さんいろいろな発言があったのだから。それで同じ発言をくくったわけですから、ニュアンスだって、俺の言っていることとこのものは違うとかいろいろあると思いますが、それは今の段階においてもう一回精査するのは難しいので、この辺については今後気をつけると。あるいは気をつけてもどこまでご希望に添えるかどうかわかりませんが、今のご発言、十分留意しておきます。

菊池委員

入れるのはいいと思うのです。だから、盛り込まれていないという部分をいまひとつ工夫すればいいかなと。

石会長

これはずいぶん考えた文章なのです、3~4年来使っていますけれども。具体的に何かありますか。

菊池委員

盛り込まれているかもしれない、という感じで。

石会長

ちょっと考えさせていただきます。この表題は本当に難しいのです。やっとここのところ落ち着いているので、再度そういうご希望が出れば、また次回のときにお諮りしたいと思います。わかりました。

井上さん。

井上委員

本文では、既存の措置について、大胆な整理合理化という形で租税特別措置の整理合理化の方向づけを明確にしてはいただいているのですが、医療制度改革等も議論されていることでもありますので、私は、事業税の社会保険診療報酬の特例の廃止を、何回も繰り返して申し上げていますし、せめてこちらの「答申に盛り込まれていない主な意見」に書いていただくとありがたいのですが。つまり単純な税制改正の議論だけではなくて、医療制度改革なども常にこの辺の議論をベースにした上で議論されてきますので、そのベースがいいのかどうかというのを問うているのだという意味で、ぜひ、主な意見という形で結構ですから、入れていただきたいと思います。

石会長

この項目は数年前以降、残っていたこともあったのです。ただ、毎年書いてはだめ、書いてはだめだというので、やや意気込みが削がれまして、今回は、来年度だけに限定してというきわめて限定的な項目のみ議論しております。来年大いにやるということならそれはそれでよろしいのですけれども、今のご提案、ちょっと受け取らせていただきまして、今の段階でこの中に入れられるかどうか。本文と違いますから可能かもしれませんが、印刷のこともあるので、そうなれば次回以降、ちゃんと頭に入れておきます。

すみません。まだおありかと思いますが、2時40分が近づいてまいりまして、両大臣そろそろお見えということでございます。お待たせするわけにもいきませんので、ここで、今のご意見等々打ち切らせていただきます。

それでは、前回、ご一任をいただいていたわけでありまして、今、いろいろなご注文もいただきましたけれども、今の段階でつけ加えたり削ったりということはなかなか難しいので、この「案」をとった形での答申でよろしゅうございますか。

〔「異議なし」という声あり〕

石会長

どうもありがとうございました。

それでは後ほど、表紙の「案」がとれたものを事務局から送らせていただきます。それをまたお使いください。

今日、たぶん4時頃になると思いますが、私、これを小泉総理に手渡してまいります。それまで記事は公にしないということですので、4時頃が解禁の時期のようでございます。

それでは、両大臣がお見えになると思いますので、ちょっとお待ちください。

〔谷垣財務大臣、竹中総務大臣着席〕

石会長

ただ今、谷垣財務大臣、竹中総務大臣、両大臣おそろいでございます。

今日、答申をまとめまして、今年最後の税調になると思いますので、両大臣からご挨拶をいただきたいと思います。

では、谷垣財務大臣から、よろしくお願いいたします。

谷垣財務大臣

税制調査会総会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと存じます。

税調委員の先生方には、平成18年度の税制改革に向けて熱心にご審議を賜りましたこと、心から御礼申し上げたいと思います。

今年は、所得税から地方住民税への税源移譲、あるいは定率減税、特定財源の扱い、こういうことをめぐりましてご議論をいただいたわけでございますけれども、本日いただきます答申を踏まえまして、平成18年度のよりよい税制改正の議論をしていきたい、取り組んでまいりたいと存じております。

また、将来にわたり公正で活力ある経済社会を維持するためには、歳出・歳入一体の財政構造改革を断行しなければならないとのご指摘もいただいたところでございます。この点につきましては、まずはあらゆる分野における行財政改革を進める必要がございます。平成18年度予算におきましては、医療制度改革や三位一体改革、徹底した歳出削減を行ってまいりたいと考えています。他方で、現在、国債依存度が40%に達しておりますので、歳出削減だけで財政再建を達成することは困難である、これは明らかであろうと存じます。社会共通の費用を広く公平に分かち合うという観点から、そして、持続的な経済社会を社会共通の費用を広く公平に分かち合っていただいて全体の活性化を目指していく。両方の観点を持ちまして、税制全体のあり方についても議論してまいりたいと考えているところでございます。

税制調査会におかれましても、引き続き、税制全体にわたるご審議をお願いいたしたいと存じます。

最後に、石会長はじめ先生方の多大なるご尽力に心から御礼を申し上げまして、ご挨拶といたします。ありがとうございました。

石会長

どうもありがとうございました。

それでは、竹中総務大臣、よろしくお願いします。

竹中総務大臣

竹中平蔵でございます。3週間前に総務大臣を命ぜられまして、初めてこの石税調に参加させていただくことになりました。36回目の総会だとお伺いしておりますが、常日頃、石会長を中心に精力的なご審議を賜っておりますこと、心より感謝を申し上げたいと思います。

私が直接担当させていただく地方税に関しましても、ご承知のような例の税源移譲の問題がございます。また、固定資産税等々についてご審議をいただいているというふうに承知しているところでございます。三位一体の改革については、昨日も今日も、そしてこの週末を越して、谷垣財務大臣とともに一生懸命汗を流させていただいております。どういう決着になるか、これからの議論でございますけれども、いずれにしましても、国と地方の関係を考える上で、今回の三位一体の改革というのは大変大きなステップとしての意味合いを持っていると思いますので、しっかりと谷垣財務大臣と力を合わせてこの改革をなし遂げたいと思っております。その結果を受けまして、税源移譲につきましては、この税制調査会の答申を踏まえて具体的な改正内容をとりまとめ、そして年明けの通常国会に法案を提出して成立させる、しっかりと対応させていただきたいと思っております。

税はまさにこの国のかたちであるというふうに思います。引き続き、石会長を中心に皆様方で精力的なご審議をいただきたい。そして、国から地方への改革について、私も一生懸命努力をしてまいる所存でございますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

本日の答申に当たりまして、お礼を兼ねてご挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

石会長

どうもありがとうございました。時間があれば、ここで両大臣と意見の交換があり得るのですが、両大臣、次の予定が詰まっておりますし、我々の予定した時間もそろそろ来ておりますので、今日はこれで終わりにしたいと思います。とりあえず両大臣をお送りしましょう。

どうもありがとうございました。

〔谷垣財務大臣、竹中総務大臣退席〕

石会長

我々も、今日用意いたしました議題はこれで終わりでございますので、解散いたしたいと思います。ただ、来年以降のことについて、皆さんのスケジュール的なことがあろうと思いますので、まだ決まっておりませんが、お話ししておきたいと思います。

18年度税制改正は、今日まとまりました。そして、我々が次の大きな仕事として持っておりますのは「中期答申」であります。税調委員の任期が3年目に達しますので、いつものことながら3年ごとにまとめます中期答申の作成がありまして、それがおそらく6月以降になると思っています。そのときのいろいろな事情がございますので、今、いつとは決めがたいのですが、いずれにいたしましても年明けからこの審議を始めなければいけないと考えております。国会の最中にどれだけできる等々の議論もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、1月後半、あるいは末になるかもしれませんが、キックオフをいたしまして、歳出削減の問題とか、社会保障の改革とか、歳出・歳入一体改革の中でどうあるべきかという議論も重ねていって、次第に税制改正のほうに論点を絞っていきたい、このように考えております。おそらく再来年度、2007年度以降は、税制改正、本格的に抜本改革という形になるのでしょう。我々の責任も重大になってくるかもしれません。

そういうわけで、年明けになりましたら再度お願いすることになると思いますが、日程的にまだ固めておりません。事務局からいずれご連絡をと思っております。

今年はこれで終わります。長い間、どうもありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。