第34回総会 議事録

平成17年11月15日開催

石会長

早速、始めたいと思います。

今日は、財務省からお二人の副大臣とお二人の政務官がご出席になっております。竹本副大臣と赤羽副大臣、それから、西田政務官と野上政務官でございます。よろしくお願いいたします。

今日は、11月8日と11日に基礎問題小委員会でいろいろ議論いたしましたものをまとめて総会にお諮りいたしまして、税調として最終的に決定したい、こう考えています。ぜひ幅広いご議論をいただけたらと思います。

それでは、お三方、新しくメンバーとして加わっていただいた委員の方がございますので、まず、冒頭にご紹介いたします。

お一人が、千速委員がご退任になりまして、伊藤忠商事の会長でいらっしゃいます丹羽宇一郎さん。何か一言あればお願いします。

丹羽委員

よろしくお願いします。

石会長

よろしくお願いします。それから、4月に吉岡初子委員が退任されておりましたが、今回、消費生活専門相談員をされております岡田ヒロミ委員が任命されました。

岡田委員

岡田です。よろしくお願いします。

石会長

よろしくお願いします。三人目は、草野忠義委員がご退任になりまして、新しく連合の会長になられました高木剛委員に新しく加わっていただきました。

高木委員

高木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

石会長

よろしくお願いします。お三方加わりまして、またフレッシュな気持ちでいろいろ議論できると思います。

それでは、今日はいっぱいテーマがありまして、3時間の予定でおります。途中でどうしてもご退席になられる方は、議題があとのほうにあっても結構ですから、ご発言いただいてご退席いただくというルールにしても結構だと思います。それから、3時間というのは何分にも長いので、途中で1回休みをとるように心掛けることにいたします。

では、順次、議題に沿いまして進めていきたいと思います。最初に個人所得課税。これは、税源移譲とか定率減税等が絡んでおります。国税、地方税に絡みますので、一課長の佐藤さん、市町村税課長の山根さん、お二人からご説明をいただきまして所得税の話を固めたいと思います。

では、佐藤さん、よろしく。

佐藤税制第一課長

それでは、資料「総34-1 個人所得課税」という資料をお開きいただきたいと思います。基礎小の資料との関連で申しますと、新しいQEが先週出ましたので、そのデータを入れているものですから、「総34」とさせていただいております。

まず最初のページ、税源移譲からご説明させていただきたいと思います。1ページ目をご覧いただきたいと思います。答申が掲げてございますが、税源移譲についてはかねてから当調査会でもかなりご議論をいただいておりまして、その部分の大枠がここに書かれています。これをもう一度ご確認いただきながら、最近の補助金改革の状況を併せてご報告申し上げるということで進めたいと思います。

まず、この答申でございます。第1パラグラフのところをご覧いただきますと、税源移譲、国・地方の三位一体改革の一環として、補助金改革とあわせ、平成18年度までに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を行うということで、概ね3兆円規模を目指すという形に現在なっているわけでございます。そこら辺につきましては、所得税法及び地方税法の改正による恒久措置、本法改正によって行うということでございます。

考え方としまして2つパラグラフがございますが、1つは、所得税と個人住民税の役割の明確化が課題であるというご指摘をいただいています。3つ目、最後のパラグラフですが、税源移譲に際しては個々の納税者に係る税負担の変動にも十分留意をすること。特に国と地方の間の、いわば割り振りの変更ということですので、この点については十分注意をせよ、こういう答申を既にいただいているところでございます。

引き続きまして、補助金については総務省からお願いいたします。

山根市町村税課長

それでは、最近の税源移譲に関する動きについて説明させていただきます。資料の2ページをお開きいただきたいと思います。まず、昨年の状況でございますが、「骨太方針2004」ということで、平成18年度までの三位一体改革の全体像を平成16年秋に明らかにし、年内に決定することになりました。税源移譲規模は概ね3兆円規模を目指す。それから、地方公共団体に対して、補助金改革の具体案をとりまとめるよう要請し、これを踏まえ検討するということが決定されました。

これを踏まえて、地方六団体から補助金改革案が示され、その後、政府・与党内で協議が行われまして、最終的に11月26日、「三位一体の改革について」ということで全体像のとりまとめが行われたわけです。この全体像の中では、3兆円の8割方、2.4兆円について決定された。もちろんこの中には、暫定として義務教育分も含まれております。

3ページでございます。今年に入りましてからの動きでございます。「骨太方針2005」では、これまでの政府・与党合意、基本方針を踏まえて、改革を確実に実現する。税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。それから、補助金改革の残された課題、これは平成17年秋に結論を得る。これの結果を踏まえまして、18年度税制改正において、所得税から個人住民税への税源移譲を実施するということが決定されております。この方針を踏まえましてさらに地方団体から、残り6,000 億円の税源移譲を実現するための改革案として、約1兆円の補助金リストが示されております。この中身につきましては、経済財政諮問会議において地方案が説明されまして、総理より、地方の意見を尊重してやるという方針が示されております。

その後、政府部内においていろいろな場で協議が行われております。地方団体案に対しては10月の半ばに各省から回答がありましたが、実質ゼロ回答ということで、各省に対して、とりまとめ案について具体的な金額を示して要請を行ったということでございますが、現時点では改革の必要な額を満たしているものはほとんどなくて、方向はまだ決まっていないということでございます。いずれにしましても、国庫補助負担金の改革案のとりまとめがおそらく今月の末くらいになるのではないかと考えております。

以下、資料がついておりますが、飛ばしていただきまして、8ページをお開きいただきたいと思います。8ページのこの図は、個人住民税と所得税の税率構造の絵です。それぞれの税の税率がこのような形になっております。一番左の下を見ていただきますと、住民税と所得税の始まりが少しズレております。人的控除が住民税と所得税で違いますので、このようなズレが生じています。このような2つの税の税率構造の差を前提に、今後、税源移譲を具体的に設計していくことになります。

9ページをお開きいただきたいと思います。9ページは税源移譲についての考え方ということでございまして、基本的な考え方は、所得税と個人住民税の役割分担を明確化するというのが方針でございます。所得税につきましては所得再分配機能を持つ。個人住民税につきましては、まず応益的な税にする、それから偏在度を縮小するということで、フラット化を図るということでございます。2つ目は、個々の納税者の負担の変動を極力抑制する。3つ目は、国・地方を通じる個人所得課税のあるべき姿との整合性という考え方に基づいて設計いたします。

主な検討項目ですが、下の個人住民税をご覧いただきますと、税率のフラット化ということで、3兆円ということであれば10%比例税率と考えております。一番下の行、低所得部分にかかる負担調整措置ですが、右の図をご覧いただきますと、住民税と所得税では課税最低限が違っている。特に270万円から325 万円、この辺は住民税だけを納めていただいているということですので、この負担を調整する必要がある。税率だけで調整し切れない部分につきましては、住民税の側で、合わせて負担増になる部分については税額から差し引くという調整をしたいと考えております。

佐藤税制第一課長

続きまして、所得税の部分でございますが、ご覧いただきますと、最低税率、最高税率、そのあたりが一つポイントになります。今お話がございましたように、住民税が例えば10%でフラット化という場合、所得税の最低税率をどうするかということですが、現在、ここに書いておりますように、所得税は10%、20%、30%、37%という4段階になっておりまして、この10%のところをどうするかということになります。そのままだと負担増になってしまうことから、負担を極力変動させない観点からこの10%を下げないといけないということで、10%より低い税率を設定することが考えられるわけです。

それから最高税率は、今、37%でございますが、例えば住民税が13%から10%に下がるという形になりますので、ここも負担変動を極力起こさないという意味においては、むしろ37%をその分上げる形になっていくのだろうと思います。したがいまして、仕立てとしましては、住民税が10%でフラット化する場合、所得税は従来の10%から37%という形から、10%よりも低い例えば5%からスタートして、上のほうは40%になるという、いわばツイストした形になるということで所得再分配機能を発揮するような形になっていく、こういうことが考えられるわけでございます。

いずれにしましても、ここに書いてございますような基本的考え方を踏まえまして、それから、税源移譲額が最終的に決まってくる状況を見まして、最終的な制度設計、この考え方に沿いまして技術的にさせていただくことになろうかと思います。

引き続きまして、定率減税にまいりたいと思います。次のページでございます。この図、定率減税前の税額と書いてございます。これは通常の所得税の計算をした金額ですが、それに対して一定率を機械的にカットする形で行われるものでございます。導入当初、平成11年度の答申では、所得税につきましては税額の2割、住民税におきましては15%ということで機械的にカットしたわけです。これはすべての納税者に対して機械的にカットしたということでございます。

平成11年当時、経済情勢が非常に悪い中で、緊急避難的な景気対策ということで導入されたものですが、昨年来の当調査会におけるご議論等々ございまして、昨年につきましては半減、半分を元に戻すという形になったわけです。残り半分をどうするかということが今回の検討課題ですが、それに関連しまして、次の11ページをご覧いただきますと、昨年、平成17年度の税制改正の答申において当調査会でご指摘いただいています点をご紹介いたします。

一番最後のパラグラフですが、「定率減税については、18年度までに廃止すべきである。その際、経済の動きを考慮すると、段階的に取り組むことが適当であり、平成17年度税制改正においても縮減を図る必要がある」ということでございました。これに沿いまして17年度は半分戻したということでございます。18年度については廃止すべきという答申をいただいているということで、どう考えるかということでございます。

この議論をする場合に経済が重要でございます。13ページ、14ページ、15ページ、経済情勢を書いてございます。定率減税導入当時と現在とを比較したものです。お時間の関係がございますので細かいところは省略いたしますけれども、13ページはGDPの動き、14ページはその内訳、民需がどういう形で寄与しているか、していないのか。15ページは設備投資の動き、最終消費支出の動きというあたりをグラフ化させていただいています。先週金曜日に出ました、7-9の第1次QEもここにあわせて掲載させていただいていますが、いずれもこのグラフの形状をご覧いただきますと、10年、11年当時と比べて格段の改善状況にあることはご確認いただいているのではないだろうかというふうに思います。昨年の答申をいただきました、18年度までに廃止というご指摘を実施する環境条件は整ってきているのかなという感じがいたすところでございます。

山根市町村税課長

続きまして、均等割について説明させていただきます。資料の17ページをご覧いただきたいと思います。このグラフは、均等割の平均税率の推移ということで、1人当たり国民所得等と比べるとなかなかその水準に追いついていないということで、これまでのご答申の中でも、引き上げる方向で検討する必要があると言われております。均等割につきましては、他の税制改正の動きも踏まえながら検討を進めていく必要があると考えております。

最後は、19ページをご覧いただきたいと思います。地方税につきましても徴収の効率化が必要だというご指摘はいただいておりますが、このテーマは、公的年金受給者に係る個人住民税の徴収方法でございます。現在、所得税については公的年金から源泉徴収を行っています。介護保険料についてもやはり天引きを行っている。一方、個人住民税については天引きの制度はございませんので、普通徴収を行っておりますが、こういったほかの制度との比較も考えて、個人住民税についても天引きを検討すべきではないかと考えております。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

今、国税、地方税2つの税につきまして、所得税、住民税をご説明いただきました。しばらく時間をとりまして、今のご説明に対してご質問でも結構ですし、具体的に改革をするわけですから、それについてのご意見をいただけたらと思います。どなたでも結構です。

井戸さん、どうぞ。何かあるでしょう。

井戸委員

ご指名いただきまして恐縮でございます。久しぶりにきましたので、何となくまだカンが戻っておりませんで、失礼いたします。

税源移譲につきましては、私どもも、2兆4,000億の差額の6,000 億余りが積みあがっていませんので、9,900 億の補助金等の整理案を地方六団体でまとめまして政府に提案させていただいております。これをベースにぜひ、補助負担金の整理・合理化と税源移譲を実施していただきたい、これが我々の全体の共通の願いでございます。ぜひご理解をいただきたいと思います。

この税源移譲を前提に、所得税から住民税への税源移譲の実施の仕方として、住民税は10%のフラット化、一律税率にしようという方向であることについては私ども賛成でございます。

併せまして、ただいま説明がありましたように、課税最低限の差によりまして個人の負担に異同が生ずることがないようにしようということで、この部分について具体的などのような調整方式をとられるのか。税率では難しいので税額控除か何かでやろうというお話がございましたけれども、具体的にどういうふうな調整をされるのか、ひとつお伺いさせていただけたらありがたいと存じます。

定率減税につきましては、経済状況等を勘案した場合に、この際、答申でもございますように18年度で整理してしまうという方向でいいのではないか、このように考えております。

石会長

では、税額控除のやり方のところ、山根さん、ご説明ください。

山根市町村税課長

9ページの絵を再度ご覧いただきたいと思います。この絵は下に注がついておりますように、「夫婦子2人の給与所得者の場合」ということでございます。このケースでいきますと、課税最低限が270万円と325 万円ということですが、この差はそれぞれの人によってすべて異なってまいります。例えば独身であると、この差は5万円とか、それぞれの人によってすべて違ってくる。したがいまして、個々の納税者についてこの人的控除の差を計算しまして、その差によって幾ら税源移譲によって負担が増えるかということを計算した上で、最終的な税額からは控除するというやり方をとろうというふうに考えております。

石会長

ほかにご意見ございますか。

高木さん、どうぞ。

高木委員

初めて出てまいりまして、いきなりこのようなことを申し上げていいのかどうかと思いますが、定率減税につきまして、経済の状況がよくなったというデータばかり、これでもかと出しておられるのですが、地方やら中小企業の実態等をどんなふうにご認識なのか。言われるほどいいところばかりではありません。それから、これは恒久減税というスタイルで実施されたものであり、草野委員も前からおっしゃっておられたと思いますが、法人税減税なり、所得税の特に税率の高いところの縮減等とセットでおやりになって、税制の抜本的な改革とセットで将来のことを考えるというお約束であったのだろうと思います。抜本的改革がいろいろあったのか。税源移譲の話とかがそれに当たるというお考えなのかどうか、いろいろご議論はあるだろうと思いますが、いずれにしましても労働者家計という立場で見ますと、可処分所得の目減りというのでしょうか、労働者家計の4分の1は貯蓄率ゼロみたいな実態の中で、この定率減税、来年1月から半分、今のご議論だと再来年の1月から全部なくすというご議論のようでございます。その辺、家計との関係等どんなふうにご認識になっておられるのか。

マスコミが基礎問題小委員会の議論を受けて、定率減税廃止が決まったような報道になっております。そういう報道を見た労働者からは、一体どういうことになっているのか、我々の家計のことに対して税調というのはどんなご斟酌があるのか、というような声もたくさん聞こえてきております。運営問題にもかかわるのかもしれませんが、一体何のための総会なのですかという議論にも及び、「基礎問題小委員会ですべて決まるなら総会なんかノコノコ出ていくな、みっともない」ということまで言われているような私どもの立場でございます。その辺どうするのか、どういうお考えなのか。自民党の政調会長さんが、「政府税調の答申は誠心誠意無視する」などということまで言っているという報道が出てきております。国民からも与党からも無視されるようなことでいいのか。ちょっと八つ当たりみたいな話で、いきなり出てきて早々で申し訳ありませんが、そんな声がたくさん寄せられておりますので、失礼ながら申し上げさせていただきました。

石会長

私、議事進行の立場上、お答えするべきところはお答えして、資料等に基づくところは事務局にもう一回説明していただきます。実は、税調と政府・与党との関係は意外に昔から軋轢があって、山中前々会長には「全く無視する」と言われたこともあって、政治的にそういうことを言われても我々はある種の免疫があります。

ただ、我々はこの税調というものの場を借りて、日本の税制のあるべき姿、特に中長期の視点からまとめていくという形でありますから、外でいかなるご批判があっても、右顧左眄せずしっかり議論したらいいだろうと考えております。それは政調会長が何かの事情で言われたのでしょうけれども、私、個人的には全然気にいたしておりません。

それから、総会と基礎小の関係です。これも従来から問題提起をされている委員の方がいますから、私の立場からお答えしておきますが、総会が最高意思決定機関でございます。基礎小で決めたものを今日覆してくださっても結構でございます、理論的には。ただ基礎小というのは、総会という大きな場で詰めきれないような技術的な問題とか問題点を議論して、基礎小案としていわゆる原案をつくっているわけです。基礎小の度ごとに記者会見をしなければいけませんから、私は、基礎小の案としてご説明するということは何度も言っております。ただ、「基礎小の案として」というのはマスコミ報道で飛んでしまいますから、いかにも税調全体が先走りして決めたようなとらえ方をしますが、ホームページで私の発言は出ておりますから、もしご懸念があれば、ぜひ開いて私の断り書きを再確認してください。

したがって、基礎小でやった議論ですべて決めるわけではなくて、今日のこの総会でいろいろご意見をお出しいただいてお決めいただければいいのでありまして、今、税調の流れとは別なご意見が高木さんから出ましたので、これを基礎小に持ち帰る。あるいは、今日ここでいろいろ他の人のご意見も聞いて決めたらいいと思っています。

定率減税については、景気の問題と税負担の問題2つの点からご指摘がございましたので、事務局からもう一回答えてもらいますが、これまでの税調の議論から言いますと、昨年の今ごろに比べると今の景気はダントツいいのです。ここに資料がございますから。そして、後半部分の定率減税を廃止するにしても、1年3カ月後の話、つまり2007年1月の話でありますから、景気のことにつきましては予測が完全にできない。したがって、もし景気が非常に心配だというのであれば、来年の秋ごろ、実際にやる数カ月前に再度議論をするのが筋ではないかと思っていまして、現段階で景気を理由にして「廃止」を中止する理由は全くないと思っています。

それから税負担の問題は、あくまで増税ではなくて、時限つきの減税をもとに戻すというふうに理解している委員の方が多いし、私もそう思っています。したがって、今の財政事情、あるいは少子高齢化を踏まえてのさまざまな税負担等から見て、とりあえずこれを直さなければいけないだろうというふうに税調はこれまで議論をしてきております。

ただ、恒久的減税でご指摘のように法人税の基礎税率を下げました。それから最高税率も下げました。これにつきましては当時の状況がいろいろ絡んでいると思いますので、当時の状況をもう一回、事務局からご説明いただけますか。

佐藤税制第一課長

2つに分けてお答え申し上げます。1つは経済状況でございますが、お尋ねの中で、地方、地域、あるいは家計の状況はどうかということでございます。今日お示しいたしましたのはマクロの数字でございますが、それについて補足させていただきます。

日銀の地域経済報告等々さまざまなデータを見ますと、もちろん、地域によりまして景気動向の状況について若干差はございますが、全体的に基調としては上向きであるという形で報告されているということが事実としてございます。したがいまして、若干の差があっても全体としてはいいということは、マクロで見てもいいし、そこそこの地域で見てもいいということでございます。

家計にとりましては、例えば稼得収入、要するに収入ですが、これの伸びが、平成17年に入りましてプラスに転ずるという形で、3期連続プラスになっているということで改善傾向も見られる。マクロ、ミクロそれぞれ、いろいろな見方はあるかもわかりませんが、基調的には平成11年当時に比べて格段によくなっているということについては、違いはないのではないかという気がいたします。

恒久的減税、恒久減税というお話、それから負担軽減法とのかかわりでございます。まず、定率減税が導入されたときの状況ですが、これは、平成10年、11年の非常に経済が落ち込んだ状況の中で、どういう形で景気対策をしていくかという観点が重要だったわけでございます。その場合に、いわば単発、1年ごとの単年度で景気対策をしていくということでは効き目がないほど非常に悪い状況であったものですから、複数年度、措置を続けていくという考え方で行われたものでございます。

ただ、先ほど制度を申し上げましたように、単純に税額を計算したものを一律カットするといった非常に荒っぽいやり方ですので、やはり未来永劫こういうやり方をするわけではないだろうということで、「恒久的」という位置づけで、いずれ景気状況を見ながら改廃については検討していくということで位置づけられたものであるという経緯がございます。

それから、負担軽減法の中には、定率減税の措置以外に例えば法人税の税率の引下げとか、所得税の最高税率の引下げとか、そういったものも当然含まれております。この整理につきましては、定率減税は、今申し上げたような意味における景気対策ということで明確に説明されております。一方、今申し上げました2つの法人税率等につきましては、当時の状況としまして、勤労意欲に対する配慮とか、国際化の進展の中で、わが国の経済構造が急激に変化しているというところで所得税も法人税も抜本的な改革をしていかなければならないということですが、非常に緊急性のある状況であったということで、恒久措置という位置づけでもって、一部先取り的に措置をしたというふうな経緯があります。この点は、当時の総理の答弁なり、最近の国会における質疑におきましてもやり取りがなされているという経緯がございます。以上のような仕分けになっているということでございます。

石会長

よろしゅうございますか。ほかにご意見ございますか。

では、丹羽さん、どうぞ。

丹羽委員

先ほどの石会長のお話できわめて納得できると思いますが、定率減税に関しましては、今おっしゃったようにこれから1年ちょっとあります。エネルギーの動向とか、米中の経済動向もいろいろありますから、最終の実行に関しては慎重に判断するというようなことを付記されるのがいいのではないかと思います。

石会長

付記につきましては、昨年も同じような議論をいたしました。そこで、例えばトリガー条項みたいなものはどうかというようなこともあったのですが、ただ、本当に不況になって定率減税を廃止なんかできないという状況になれば、おそらく来年の秋ごろ総合経済対策などが打たれて、その中で当然、政府全体として定率減税の廃止の見直しが迫られてくるはずでありますので、そういう形でいいのではないかと。あえて付記とか何か、制度的に担保するようなものは要らないのではないかというのが去年の話だったのです。それだけ今ご説明しておきます。私は個人的に、去年より事態は好転しているので、去年やったことを踏襲してもいいのではないかと思っています。

ほかにございますか。

高木委員

ああ言えばこう言うというご説明をいっぱいしていただいたような印象ですが、特に家計まわりの話は、もう少しいろいろな意味でデータもとっていただいて分析してほしいなと、そのことをお願いしておきたいと思います。

それから、地方の経済の問題、日銀のレポートを読んでおりませんけれども、私どもに伝わってくるいろいろな情報は、地方とりわけ中小企業は、深刻なところがまだまだたくさん残っておりますということをよくご配慮いただいた制度論をやっていただかないと、地方は置いてきぼりと。そのことだけ重ねて申し上げておきたいと思います。

石会長

立ち入った質問で恐縮ですけれども、そうしますと高木さんのお立場は、もっともっと景気がよくならなければ定率減税の廃止はできない、あるいは、定率減税というのは恒久化、このまま永久化しろというお立場ですか。

高木委員

負担増には違いないですね。

石会長

それはそうです。ただ、3兆3,000億円というマクロの意味のものがもう6年続いているわけです。20兆円ぐらい減税しているわけです。今、大ざっぱなほうと佐藤課長がおっしゃいましたけれども、所得税の中の税率をいじくって減税するとか、課税最低限を減税するというわけではなくて、きわめて異例な措置なわけです。したがって、いつまでも税としては放置できないだろうと私は個人的に思っているわけです。まさに税負担の問題は議論になりますので、おっしゃる家計なり地方なり、データがあればもう少し議論したいと思っていますが、とりあえず景気は昨年よりも圧倒的にいいので、この際いいのではないかという判断を基礎小の方はとっているわけです。

高木委員

お尋ねですから、素人の反論になるかもしれませんが、要はバランスよく負担するなら、する。公平に。そういう意味では労働分配率がものすごく下がり、資本分配率が上がりという中で、個人消費などに影響を与える個人の家計の状況、そんなものを大変心配しておりますということでございます。

石会長

村上さん、どうぞ。

村上委員

定率減税ですけれども、これは恒久的ということになっていますが、やはり緊急避難措置だった。当時、私はここで決めるときにいたわけではないのですが。そうすると、緊急避難措置というのはどういう状況になればやめるのかということになりますよね。そのときに、個人一人一人の生活を基準にして制度を決めるのは難しいわけで、やはりマクロの数字をある程度信用していく以外にないということ。それから、このときの条件がもう一つは所得税の抜本改革ということがありましたが、今度の住民税への税源移譲、これを契機に所得税の姿というのがすごく変わりつつあるという印象を持っています。つまり、今までは所得税もフラット化の方向だったものが、急激に累進度を上げていくのだろうということで、所得再分配機能という所得税の持っている本来の機能を回復していくのかなと。それは、先ほどから議論が出ていますように、税負担の公平ということでは非常に重要な部分だと思います。

もう一つ、こういうものは、ある一定の方向が出たら緊急避難措置はやめておく。また緊急避難措置が必要であればそのときにやればいいのではないかという、臨機応変にやっていくものではないかと思います。

もう一つの視点は、所得税も法人税もそうですが、1,000 兆に近い負債を抱えて、財政再建という立場からして一つのもので解決することはできないわけですから、複数のいろいろな税項目で少しずつ負担していくというのが一番無理のない方法だと思います。その場合に、所得税というのは今一体どのくらい負担しているのかというふうに考えると、例えば、年収500万円の人でも3%を切ります。1,000万円の人でも10%はいってないでしょう。そこから控除がいろいろありまして引いていきます。実生活からすれば負担は低いほうがいいに決まっていますが、やはり国の財政を支えていくという観点からすれば、一体所得税というのはどのくらい負担しないと国はもたないのだろうかという観点が重要だろうと。そういう意味では今回の定率減税の廃止は、このあたりでやむを得ないところかなというふうに思います。

石会長

ほかにございますか。井上さん、どうぞ。

井上委員

定率減税につきましては緊急避難ということで、もとへ戻すことは当然なことだというふうに思うわけですけれども、先ほど高木委員のお話があったように、やはりあくまでも景気の回復が第一である。中小企業、雇用の70%を抱えている中小企業がまだ水面下にあるわけです。それがあと1年で水面上になるのか。なっておればこれはやむを得ないだろう。しかし、なっていなかったときを考えると、秋の時点で再検討していただくことはぜひとも必要だろうというふうに思いますので、よろしくお願いします。

石会長

チェックを入れるということですね。

では、佐竹さん、どうぞ。

佐竹委員

今の定率減税の話で、地方の話というのは私がここで一番地方でございますけれども、私はこういう整理の仕方をしておるんです。地方の状態は、今、高木委員がおっしゃったとおり、いい状態とはとても言えない状態であります。ただ、税については、同じ所得であれば都市でも地方でも全く同じ、税という形の負担になるわけです。今、定率減税の問題というよりは、地方の経済基盤、税の問題ではなくて、むしろそちらのほうの政策判断というものが、最近の国の動向におきましてはそこがもっと大きなウエートを占めてもいいのではないか。そういうことによって解決するというのが、税の体系からすると本論ではないのかということで、またあとでそこは言わせてもらいます。

石会長

またよろしくお願いします。

どうぞ。

翁委員

景気の見方についてはいろいろございますけれども、今回は企業部門の収益が非常によくて、それが、これから家計にどのように広がっていくかという状況だと思います。一方でたしかにデフレも続いておりますし、その意味では万全かどうかという意見もあるかもしれませんけれども、平成11年度と比べると、マクロ的な指標で見ればこれだけ大きく変わってきているということを考えれば、これから実施するときの様子をよく見るということで、現在の状況を戻していくということでいいのではないかなと。注意深く見ながらやっていくということで。

石会長

どうぞ、秋山さん。

秋山委員

質問になるかと思いますけれども、9ページの図を拝見していて、タイトルが税源移譲ということになっているのですけれども、先ほどからご説明をいただいた中で、例えば個人住民税の13%を10%に落とす。これは比較的所得の高い人の部分を削る。その分を所得税に税率を上乗せしていくということで、所得税から個人住民税へ国から地方への税源移譲をするというところについてのバランスのとり方といいますか、実際の金額的なバランスをどのようにとるのかということについて。

石会長

3兆円の補助金をどう使うか。どうぞ、山根さん。

山根市町村税課長

まず、9ページの図の左側のマル、低所得部分と書いてございます。ここは大ざっぱに申しますと、住民税の5%が10%になる。これによる増収が実は3兆円を超えておりまして、ちょっと変動しますが、3兆4,000億円とかそのくらいの感じでございます。一方、13%を10%に落とす部分、ここは減収になります。これが4,000億円とかそのくらいになります。差引きして3兆円になるように具体的な設計をやるということでございます。

石会長

よろしゅうございますか。これは重要な問題ですから、時間をとってもいいのですが、また戻ってもらうという形でちょっと先へ行きましょうか。ただ、今の段階でぜひ発言しておきたいという方がいらっしゃれば。

では、井堀さん、どうぞ。

井堀委員

今の話と関係するのですけれども、最後に事務局で均等割を上げるオプションについて説明されました。仮に住民税の均等割を上げるとしたときに、税源移譲のこの9ページのシナリオとは独立に考えているのか。要するに均等割が上がればその分住民税が増えるわけですから、上げた分だけ所得税の税源移譲の確保を減らす方向でトータルで3兆円を維持するということなのか、それとは別にやっているのか。どういう感じなのですか。

石会長

これは初めての質問ですが、どうぞ、山根さん。

山根市町村税課長

まず、税源移譲は住民税で申しますと所得割の部分です。所得税と住民税それぞれ同じ額で移譲するということで、そこはマクロで大体税制中立でございます。均等割はこれとは別の話でございまして、地方税独自の問題として平均税率を上げることによる増収が発生するというふうに考えております。

石会長

少し先に進ませていただいていいですか。予定を時間を大幅に超過しています。ただ、これは非常に重要な問題ですから、今日、固めておきたいとは思いますけれども。

井上委員

37%を40%に所得税を上げるというお話が出ましたが、これはどういうことですか。所得税を上げて、それを地方税に持っていくということですか。

石会長

そうでしょう。往復あるんですね。

では、佐藤さん。

佐藤税制第一課長

現在、所得税は最高税率37%でございます。住民税が13%でございます。足して50%というラインになっております。これは、勤労意欲とかいろいろな問題で50%が適当であろう、こういうラインでございます。今度、13%から10%に住民税が下がった場合に、その3%部分をどうするかということになりますが、いろいろな意味で各層、所得変動をさせないということも当然ございますので、その分については、37%足す3%ということで40%。いずれにしても40%足す10%ということで50%というラインを考える。こういうふうな意味でございます。

石会長

納得されましたか。

井上委員

はい。

石会長

では、この問題は戻っても結構でございますから、次の国際課税に行きましょう。

大西企画官、よろしく。

大西企画官

それでは、お手元の「基礎小44-2 国際課税関係」の資料に沿いまして、4点ほどお諮りさせていただければと思います。

まず最初に、租税条約についてでございます。1ページ目をお開きいただきたいのですけれども、現在、日本が締結している租税条約ネットワーク一覧でございます。今年に入りまして、いずれも改定でございますが、イギリス、インドの2カ国と基本合意に達しております。

2ページ目に、今年7月に基本合意に達したイギリスとの新条約の概要を記してございます。先進国に対しましては、先般締結した日米新条約に沿った形で今後改定を進めていきたいと考えておりますが、イギリスとの新条約では、日米条約と同様、一定の親子間配当、金融機関等の受取利子及び使用料について源泉国免税を導入するなど、投資所得の限度税率の引下げを行い、一方で、条約の濫用を防止する措置として、特典条項、匿名組合への適正な課税の確保といった措置を導入してございます。

3ページ目は、つい最近、インドと基本合意に達しましたところ、その主な改定内容でございます。発展途上国につきましては、各種投資所得について相手国が一定の課税権を残したいとの強い要望があり、一気に先進国型のように免税まで合意することは実質的に困難でありますところ、各種投資所得の源泉徴収税率について一定の引下げを求める方向で進めておりますが、今回、配当、利子、使用料について10%に引下げを行うことで合意いたしました。日本企業がインド企業にソフトウェア開発を委託することも多く、日本企業からも使用料の源泉徴収税率の引下げ要望が出ていた、こういうことを踏まえた内容でございます。

また、今回、みなし外国税額控除を廃止することとしました。この2つの条約につきましては、粛々と法制局の審査を得て国会へ提出させていただきたいと考えております。

第2の点として、租税条約上の情報交換規定に基づく情報収集手段の拡充についてお諮りしたいと思います。4ページ目でございます。経済活動のグローバル化に伴いまして、税法の適正な執行のために国際的な情報交換がますます重要になってきております。

こうした中、OECD等の場におきましても、脱税等のいわゆる犯則事件調査のための情報交換の必要性が一層高まっております。いわゆる情報収集については大きく2種類に分けて考えておりまして、一つは、一般的な課税事案の調査を目的とした純然たる行政手続。もう一つは、脱税等の租税犯に対して刑事告発を目的として行う調査手続でございます。平成15年度の改正で、わが国に課税利益がない場合でも、一般的な課税事案の調査を目的とする場合には、条約相手国からの要請に対し、国内法上、情報収集ができるようように担保していただいたところでございます。しかしながら、犯則事件につきましては、その調査を目的として相手国からの要請があっても、国内法の規定がないため情報収集ができないという現状であり、こうした状況は、犯則事件に関する情報交換についての国際的潮流に反し、わが国当局に対する国際的信任が低下するおそれがあるのではないかと懸念している次第でございます。

5ページ目をお開きいただきたいのですけれども、情報交換規定に基づいて、相手国から当該相手国の犯則事件の調査に必要な情報の提供の要請があった場合に、日本の収税官吏が任意調査を行えるようにしてはどうか。また、実効性を確保するために、現在の国内での犯則調査手続と同様に、司法審査を経た上ですが、強制調査(臨検・捜索・差押)をできるようにしてはどうかと考えております。

なお、情報交換制度はいわゆる相互主義が前提となっていますから、そうした措置をとることにより、副次的効果として、今度はわが国が相手国に同様の要請をする場合にその実効性が確保されるという効果が期待できる次第でございます。

引き続きまして、第3の点としまして、非永住者制度の適正化についてお諮りしたいと思います。6ページ目でございます。非永住者制度は長い歴史の変遷があるものですが、居住者についての全世界所得課税の原則の例外となっております。すなわち日本におきましては、ちょうど表の真ん中のところですが、居住者の中に非永住者という区分を設けまして、国内に永住する意思がなく、かつ、現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人につきましては、国内源泉所得と、国内に送金等をされる国外所得のみを課税対象とし、海外で生じ、そのまま海外に貯められるような所得については日本は課税しないことにしております。

この制度を利用して不適正ではないかと思われる事例が生じております。7ページ目をお開きいただきたいのですが、まず事例1としまして、日本国籍を有する者が、海外勤務のあと日本の自宅から通勤している。しかし、永住の意思がないとして非永住者制度の適用を受けているようなケースがございました。

事例2ですが、日本で働く外国人で、1回当たり5年を超えない形で日本での居住と海外への一時的な帰国を繰り返し、結果的に5年を超える長期にわたって非永住者制度を受けているケースがございました。こうしたケースについてまで、非永住者制度の適用を認めることが適当かという問題意識を有しております。

第4は、最後の点でございますが、中期的に検討していきたい課題ということで問題提起をさせていただければと思います。8ページ目の、外国投資家に対する外国法人発行の社債の利子の課税の問題です。現在、国内法におきましては、日本支店に係るもの等にかかわらず、外国法人が非居住者に対して発行する社債の利子については非課税になっております。ちょうど8ページの上の傍線のケースでございます。一方、租税条約におきましては、下の矢印のケースですが、わが国で用いられた資金に係る利子についてはわが国で課税できるというふうになっております。

9ページ、最後のページをお開きいただきたいのですが、租税条約のない第三国居住者を利子の受領者、債券の購入者とすること、この図ではSPC2に当たるところですが、こういうものを設定することで日本での利子課税を逃れ、また、日本支店の課税所得を少なくするといったスキームが見受けられます。

ただし、こうしたケースにつきましては、現在、国内法人に認められている民間国外債、いわゆるユーロ債ですが、このユーロ債との取扱いとの整合性等の観点から、さらに当方で精査・吟味させていただき、またお諮りしたいと考えている次第でございます。

早口で恐縮です。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

4点ほど問題点を出されましたが、ご意見、ご質問ございますれば。この領域はなかなか難しい領域ですけれども、専門家もいますから。

どうぞ、上月さん。

上月委員

ちょっと教えていただきたいのですが、「犯則調査目的の情報提供要請に基づく情報収集手続の整備」というところで、「調査をなし得ることとしてはどうか」と書いてございます。現在は、ではこういう状況の場合は調査はできないということになっているわけでしょうか。

大西企画官

そのとおりでございます。現在では犯則事件調査を目的としたものについては、国内法上、できないことになっております。

石会長

ほかによろしゅうございますか。

水野委員

ちょっと伺わせていただきたいのですが、5ページの、今、上月先生も言われたところですけれども、この任意調査の考え方です。通常は罰則で担保されておりますけれども、わが国では強制的に帳簿などを持ってくることはできないことになっております。それで、条約相手国のほうで犯則調査の手続を持っていると。そこでわが国でもそういう整備を行う必要があるというご趣旨はよくわかるのですが、逆に、このまま任意調査という形で税務当局はやっていけるのかどうか。向こうから情報提供の依頼があったときに、やはり何らかの強制調査をせざるを得ないのではないかと思います。

簡単に申しますと、任意調査というのは罰則で担保されているということだけはあるのですけれども、何となく曖昧な形でございます。これが外国政府から来た場合に、「わが国は任意調査を中心にやっております」というこのセリフで理解できるかどうかということですけれども、これは整備ということで、これから規定を整備して一歩踏み出すということを意味しているのでしょうか。ちょっとそのあたりを。

石会長

つまり強制調査まで含めて議論しては、というご提案ですね。

水野委員

はい。

石会長

何かあれば、どうぞ。

大西企画官

5ページ目をまた開いていただきたいのですけれども、今回、2つのことを行わせていただきたいと思っておりまして、まず一つは任意調査でございます。もう一つは、こうした任意調査の実効性を確保するためにも、あくまで今の国内手続と同様に、司法審査を経た上でということですが、強制調査についてもできるようにしていきたいというふうに考えております。

石会長

秋山さん、どうぞ。

秋山委員

3番目の非永住者制度の適正化に関してですけれども、「概要と位置づけ」の3点目のところに、「勤務形態のグローバル化が進む中で、国外に拠点を有する外国人にある程度の配慮を認めることは、一定の意義がある」ということが基本スタンスであると。不勉強で申し訳ないのですが、この考え方がグローバルスタンダードになるのかどうかという点がポイントではないかというふうに思います。もし日本だけが特別な配慮をしているということであれば、むしろ今回のご提案より踏み込んだことを考えてもいいのではないか。例えば、先ほどの個人所得課税の資料を拝見しますと、所得課税については、国際比較をしたときに比較的日本は低いというデータがありますので、それに加えて特別な配慮をすることを意味しているのか。そうであれば、そうでなくてもいいのではないかということでございます。

大西企画官

まず世界の状況でございますが、イギリス、オーストラリアについては似たような制度があることは我々事務局でも確認がとれております。もっと一般的なのかと言われると、考え方、見方によるのかと思います。今回、お示しした特に2つの事例につきましては、制度の趣旨からもそもそもおかしいのではないかということで提起させていただいた次第でございます。

石会長

よろしゅうございますか。

それでは、次のテーマ、環境税と特定財源のほうに行きましょうか。

二課長の羽深さん、ご説明ください。

羽深税制第二課長

それでは、資料の「基礎小44-3」が環境税、「44-4」が特定財源関係でございます。まず、環境税から簡単にご説明させていただきます。

1ページをお開きいただきますと、これまでの経過でございます。環境税の議論が出てきた発端は京都議定書の目標達成のためのスケジュールということで、平成17年2月にロシアの批准に伴って京都議定書が発効しまして、その4月に「京都議定書目標達成計画」というのが閣議決定されて必要な温暖化対策などが規定されたわけです。注にありますように、2008年から2012年の5年間の温室効果ガス排出量の平均を、基準年(1990年)比マイナス6%にすることが決められました。この目標達成に向けてどのような施策、対策をやっていったらいいかということが議論になっておりまして、その一環として環境税が出てきているということでございます。

2ページをお開きいただきますと、この京都議定書の目標達成計画の中での位置づけでございます。第3章の「目標達成のための対策と施策」という中で、横断的施策として環境税が位置づけられております。ちょっとご覧いただきますと、二酸化炭素の排出量または化石燃料の消費量に応じて課税するものとして関係審議会等において論議されている環境税は、経済的手法の一つであり、価格インセンティブを通じ幅広い主体に対して対策を促す効果がある。もう一つは、いろいろな対策を実施するための財源としての役割等を狙いとすることもある。そういうものとして、今、関係審議会等においてさまざまな観点から検討が行われている。

したがいまして、その次の段落ですけれども、環境税については、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置づけ、その効果(どのような効果があるか)、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組み、ヨーロッパ諸国では炭素税とか燃料税という形でございます。こういうことを踏まえて真摯な検討を行っていくべき課題であるというふうに規定されております。

この仕組みを簡単にご説明するために6ページをご覧いただきますと、京都議定書目標達成計画の仕組みでございますけれども、真ん中に「温室効果ガスの排出抑制・吸収の量の目標」という表がございます。一番右、2010年度現状対策ケースという欄をご覧いただきますと、1990年が基準年でございますので、その基準から、一番下、合計▲6.0%にしなさいというのが目標でございます。そこへもっていくためには、現状の政策を続けていった場合に、2010年度の姿から結局12%のマイナスまでもっていかないといけないということでございます。すなわち1990年から現在まで、抑制はしてきているものの量が増えておりますので、その自然体で2010年の状況から目標まで届かせるには12%減らさなければいけないということになるわけです。

そのための方策として、エネルギー起源CO2ですとか、ここにある項目で温室効果ガスを減らす。あるいは、森林吸収源として対応を図る等々があるわけでございます。その中の温室効果ガス削減の一手法としていろいろな政策な考えられるわけですが、その横断的施策として、国民運動の展開等々の中にポリシーミックスの活用ということで、環境税もこの中に入っているという仕組みでございます。

3ページにお戻りいただきまして、こういうことを踏まえて環境省で環境税の案を出してきております。昨年も出たのですけれども、それを若干見直しまして今年の10月25日に発表されたものです。趣旨等々は省略いたしまして、課税の仕組みとしては、そこにあるようなものに課税をする。税率は炭素トン当たり2,400円、税収が3,700 億円。これはガソリンの場合に換算しますと、1リットル当たり約1.5円の課税になります。家計の負担ですと、世帯当たり平均年間2,100円(月額180 円)という水準でございます。ただし軽減措置として、国際競争力の確保とか、排出削減努力の奨励促進のために大口排出事業者についての軽減ですとか、そこにあるような軽減措置があります。

4ページです。使途としては一般財源ということになっておりますが、一般財源とはいうものの、温暖化という関係のもので幅広く拾っていくということで、森の再生、エコ住宅等々の用途があるのではないかということを掲げております。これによって4,300万トン程度の削減効果がある。それから、経済への影響等も計算されております。

その他のところで、地球温暖化対策の観点から、エネルギー課税等環境負荷に対する諸税の税率の水準、今、ガソリン等々にエネルギー課税が行われていますけれども、その水準については維持を要望するということ。それから、現在、特別会計・特定財源の改革が議論されているわけですけれども、その財源を地球温暖化対策にも充てることを要望するという、2つの要望が付記されているのが環境省の案でございます。

5ページに、昨年の環境省案との比較を簡単に載せておりまして、そこにあるような若干の違いがあるということでございます。

それから、特定財源につきまして資料「44-4」で簡単にご説明させていただきます。まず1ページで、特定財源の一覧を整理しております。エネルギー課税として8つほどありまして、それ以外に3つほどございまして、ご覧のようなものでございます。使途の特定の仕方として、特別会計等で使途を特定しているものと、税法で特定しているものがあります。特に国税・地方税の区別は書いておりませんけれども、地方道路税、軽油引取税、自動車取得税は地方の財源になっているものでございます。

2ページでございますが、各税目の中身を整理したものでありまして、課税対象、税率等が定められております。それから、税収の使途はどうなっているかというようなことを整理しております。

3ページが、道路特定財源につきまして最近議論がございます。その背景を簡単に説明しております。右側のグラフを見ていただきますと、17年度、歳出・歳入で約3兆5,000億円あるわけですが、本四債務処理とまちづくり等々、つまり使途拡大ということで道路以外にも幅広く読み込んでいるということでございます。下には注がありますように、18年度以降の本四債務処理残高約4,500億円ということで、18年度までは本四債務処理がありますけれども、19年度になるとこれがなくなってくるということで、いわゆるオーバーフローが生じてくる、これをどうするかという話で議論が起きているわけでございます。

4ページですけれども、道路特定財源の沿革を簡単に整理してみました。国の道路特定財源としては、揮発油税、石油ガス税、自動車重量税、この3つがあります。揮発油税については昭和24年に一般財源としてスタートして、昭和29年に道路の整備に使われるようになりました。49年に現在の暫定税率が定められて、石油危機を背景とした資源節約、環境保全の観点等々から税率の引上げが行われた。石油ガス税は、揮発油税とのバランスでLPG車にも課税するということで設けられました。自動車重量税は、昭和46年に社会資本の充実の要請からつくられた。広く自動車の使用者に負担を求めると。これは運用上、約8割を道路整備財源に充てられている。49年に揮発油税と同じように暫定税率が設けられています。

5ページですけれども、こういった過去の経緯等を踏まえて見直しに当たっての考え方ですが、基本的視点として、1つ目は、道路特定財源関係諸税の性格というものがございます。創設時は一般財源であったとか、税法上は目的税になっていないという経緯がございます。2つ目に、有限な資源(石油)の有効活用の観点からの、資源節約・消費抑制という観点もあるのではないか。3つ目は、自動車の走行がもたらす社会的コスト、これは騒音、交通事故、環境への負荷、景観等々の問題があろうかと思います。そういうものがかかっている等々の、そこにあるような論点がございます。

平成14年6月の政府税調の答申では、道路特定財源については、一般財源化を含め、あり方を見直す。エネルギー関係諸税については、国際的に高くない水準であること、社会的コスト、環境保全の観点に鑑みれば、税負担水準を引き下げることは適当ではないという答申をいただいております。以上です。

石会長

それでは、地方の特定財源につきまして、株丹企画課長からご説明ください。

株丹企画課長

お手元資料「総34-2 特定財源関係(地方税)」をご覧いただきたいと思います。基礎小の資料を若干アップデートしたり、補足を加えさせていただいたりしておりますので、総会の資料として整理させていただいております。

1ページでございます。地方の道路特定財源を一覧していただこうということで、上の2つが、軽油引取税、自動車取得税。それから譲与税が3つございます。いずれも法律で使途を明確に定めています。全体的には2兆2,000億円ほどになっております。

2ページに、道路特定財源創設時の事情を含めた沿革を整理させていただいております。創設の時期はそれぞれ違っておりますが、いずれも、創設当時から道路特定財源ということです。

3ページです。国も地方も基本的な考え方は大きく変わらないと思いますが、地方における道路事業の状況をご覧いただこうということで整理しています。上のほうの表は道路事業費に占める特定財源の試算をしたものです。右端が17年度ですが、事業費と今ご覧いただいた特定財源の対比でいくと、36%程度。道路だけに充てる臨時交付金を入れてカウントいたしましても、半分まで特定財源はいっていないという状況でございます。下のほうは道路の整備状況ということで、改良率で国道と地方道を比較しております。

4ページです。参考資料ですが、最近の時点のものに変えさせていただいたというだけです。

最後に、補足説明資料ということで5ページをご覧いただきたいと思います。これまでのご議論の中でご指摘がございまして、地方の関係、道路特財だけの資料でしたが、主な特定財源の一覧をお出しさせていただいております。左側、地方税(目的税)ということで、上のほうは法定税目、つまり、地方税法で具体的に税目が挙がっているもののうち目的税を挙げております。道路関係以外に、都道府県では狩猟税であるとか、市町村では入湯税、事業所税、都市計画税、こういうものがございます。

下に(2)法定外目的税とございますのは、個々の地方団体が独自の税を課税することができる制度が、地方税ではございまして、その場合はそれぞれの団体の税条例で使途が特定されるということで、上から2つ目、これは都道府県の税ですが、産業廃棄物税が、数字が16年度は12になっておりますが、現在はさらに増えている。こういう税がございます。

右のほうは地方譲与税で、それぞれの譲与税法で使途を特定しています。道路以外にも航空機燃料譲与税といったものがございます。この他、特定財源ということになりますと、注に書いておりますが、使用料手数料とか、地方債、あるいは国庫支出金というものもございますが、主として税、譲与税でまとめた資料でございます。

石会長

ありがとうございました。

環境税と、道路特定財源を含む特定財源、このご説明がございました。これもまた、今、非常に関心を集めているトピックスでございますので、ぜひ忌憚のないご意見を伺わせていただきたいと思います。

どうぞ、佐竹さん。

佐竹委員

環境税は、昨年も議論がありましてああいう形になっております。全体から見ますと、今年もこういう案が出てまいったわけですが、京都議定書の今年の4月のにもよりまして、中身は別にいたしましても、環境税の方向というのはそろそろきっちりした形を出すべきではないかということが一つです。ただ、内容について、例えば4ページに書いておりますけれども、例えばいろいろな技術開発、あるいは、そういうきっちりした数字であらわせる面の国全体として取り組む分と、消費者に対する意識の調整、そこは辺はほとんど地方でやっている。もう一つ、この森林吸収源対策は100%に近く地方の仕事ということで、先ほどの話にもありましたけれども、地方の経済基盤の問題も含めて、そういうものにもつながるような形の税制度をつくるべきではないのかということです。

もう一つは、道路特定財源の関係で、今の状況を正直に申し上げますと、地方団体、たぶん都道府県、市町村でも、秋田の場合は住民要望の7割~8割は道路要望でございます。ここに書いてありますとおり、都道府県と市町村道の改良済といっても、まだ50%ちょっと。ですから、実際にはまだ整備必要な道路はあるわけです。また一般国道におきましても改良率が90%となっていますけれども、最後まで取り残された部分。

ですから、一般財源化絶対反対という立場を私もとるわけではないのですけれども、目的税ではないと言いながらも、納税者の立場も踏まえると、必要な道路財源、何をもって必要かはまた別ですけれども、これをきっちり確保する形の中で全体を構成しませんと。全くこれを100%という形には多分ならないと思いますけれども、そこら辺は今地方が一番懸念しているところであります。これは我々行政執行者だけではなくて、住民も含めて、あきらめという非常に落胆している部分がありますので、必要なものについては必要だということはきっちり私は訴えてまいりたい、そういうことであります。

石会長

一般財源化を外してしまうと必要な道路に金がつかないというご心配ですよね。そうすると、一般財源化を外した先に道路財源を確保するような具体的なお考えはございますか。

佐竹委員

これを何%だとかそういう数字を出すのかというと……。また、まるっきりフリーな一般財源化なのか、先ほどもありましたとおり環境部分に対してある程度の幅を広げた解釈をするのか、ここら辺が非常に難しいのではないかと思います。やはり納税者の意識というのは非常に大きい。我々としても車に対して実際税金を払っていますのでね。

石会長

どうぞ、丹羽さん。

丹羽委員

地球温暖化対策について反対する人は多分いないと思います。経済界としても非常に重要な課題として認識して、自主的に取り組んでいるわけです。今回の新税、一体何のために新しい環境税の導入をされているのかというのは、少なくとも4ページを見る限り漠然として不明確であると思います。しかも、効果もきわめて不明確なものになっているということで、とにかく税収を増やそうとする意図で始まっているのではないかという気がいたします。京都議定書も、環境税なしでの政策決定は今年の4月に閣議決定されたばかりでありまして、経済界としては既に、産業、運輸、民生の各部門で自主的な削減がかなり行われているわけです。こうした自主的な活動に、むしろ追加の自助努力を阻害するような税を設けることはいかがなものかということでありまして、企業にとっては追加負担を強いるようなものになっているのではないかと思います。

もう一つは、適用停止というのが書かれております。やはり我々企業への課税を中心にされているのではないか。つまり、3,700億ほどの課税のうち企業関連で2,700 億です。約70%は企業への課税。特にLPGとか灯油は中小企業への負担もかなり出ると思います。先ほど出ていましたように、地方の中小企業とかまだまだ景気回復には万全なものではない状況です。それから、既に温暖化関連予算として相当額の予算があって、重畳的に化石燃料課税も存在しているわけでして、まず、それらの整理、効率化を図る。いたずらに行政の肥大化を招くことはやるべきではないのではないかと思います。

それからもう一つは、米国、中国もこのような税の導入見込みはないわけでありまして、世界一の省エネ国である日本の国際競争力を損なうのではないか、そういうふうにも思います。したがって環境税の導入については、私は、全く筋が通っていないということで反対したいと思います。

石会長

どうぞ、遠藤さん。

遠藤委員

道路特定財源のほうでちょっと教えていただきたいのですけれども、先ほど、国税の部分は税法上は一般財源になっているというご説明があったのですが、私は、地方の特定財源は地方税法上書いていたような記憶があるんです。「道路の特定財源として」と。国の場合は、税法に書いていなくてほかの法律で書いてあるわけですね。そうすると、税調で特定財源を一般財源化すべきだという議論をするのは、地方税の場合は税法上書いてあるから意味があるけれども、国税の場合は何か意味があるのですか。

石会長

要望なのでしょうか、主張なのでしょうか。ちょっと事実関連を総務省からご説明いただけますか。

市橋都道府県税課長

まず地方税につきましては、地方税法の中に個別の税目がそれぞれ入って一つの大きな法律になっております。軽油引取税、自動車取得税につきましては、地方税法の中に、目的として道路の整備に使う、使途はこういうことで使いなさいということが入っています。さらに譲与税につきましては、一つずつ譲与税法は分かれておりますけれども、それぞれの譲与税法の中に、使途について先ほど挙げた3つについては道路のために使いないということが入っております。

石会長

羽深さんのほうから説明はありますか。税で書いていないのになぜ税調で口を出すのか、というご質問が出ましたけれども。

羽深税制第二課長

税収をどのように使うかということについてのテーマでございます。それから、過去の税調答申でも、財政を硬直化させるという特定財源の問題があるというご指摘もありますので、税をどう使うかについて税制調査会が何も言わないということではないと思います。

石会長

遠藤さん、納得しましたか。

遠藤委員

わかりました。

石会長

宮島さん、どうぞ。

宮島委員

環境税で特定財源の議論というのは、去年もやったときにいろいろな議論があって、なかなかはっきりしないで終わったわけです。今回、環境省のこの案を見ますと、今ご指摘ありましたように、京都議定書の目標に対してこれがどういう形で具体的に貢献していくのかということについて、効果の見積もりですとか何かについて必ずしも十分ではないだろうということはそのとおりだと私も思います。ただ、京都議定書が批准されて以来、こういうかなり重い二酸化炭素の削減目標を負っているわけですから、あらゆる手段を組み合わせてとにかくそれを達成する努力をすることが、政府の政策としてもきちんと示す必要があると思います。あるいは、今回は税収と減税を組み合わせるという格好で、排出権取引と結びつける考え方もあると思いますけれども、基本的には日本がそういう政策に取り組むということは明確にすべきではないかというふうに思っております。

ただ、先ほどご指摘ありましたように、環境税の設計については、実際できるかどうかわかりませんが、上流に課税ポイントを持っていくことはなるべく避けて、できれば、例えばオフィスであるとか、家庭であるとか、運輸部門であるとか、実際に化石燃料を使用するポイントのところに持っていかないと、環境税の持っているもう一つの告示効果みたいなものが、条例で課税してしまいますと拡散して出てこない。そういう点では、産業部門の上のほうだけではなくて、できれば消費部門に近いところに課税ポイントを持っていく工夫をしないといけないだろうと私は考えております。

それから、今回の環境省の案を見ておりますと、現在の既存の化石燃料課税を前提に設計しているのだろうなという感じです。外国で見ても、別に環境税と名乗っていませんが、化石燃料課税というのはインプリシット・カーボン・タックスとかいう名前をつけていて、今日の中で触れてありますが、実質的な意味でのものと、上乗せするような環境税との間の全体の大きさはどうなのかということが問題だろうと私は考えております。

目的税か一般財源かという話は、この頃どうも目的税という意味がよくわからなくなってきて、一般財源と言いながら減税対象がかなり範囲が限定されているのが、一体これは何だろうかという気もしますし。たしかに一般財源化することが望ましい面もあると思いますが、例えば、具体的にこれがオーバーフローし始めたから、目的税としてむしろ財政の硬直化が問題になるというそういう個別の論点なのか、その辺の整理はしておく必要があるのかなという気がしております。

石会長

どうぞ、井戸さん。

井戸委員

環境税の問題、非常に難しいと思います。何かしなければいけないだろうなという思いと、しかし、これくらいの金額オンして効果があるのだろうかという思いと両面ありますし、制度も少し粗すぎるのではないだろうかというふうにも感じます。我々からすると、昔、地方で電気ガス税という税金をいただいておりましたけれども、そのときも、原料課税はどうだとかいろいろな議論がございました。あるいは、タックス・オン・タックスになってしまうことに対してどう考えるのかとか、いろいろな議論がありましたし、もう少し整理して議論していく必要があるのではないかと思います。

もう一つは、使途です。いかにもCO2に関係するような使途が並んでいますけれども、これは佐竹さんもおっしゃったように、我々が現実にやっている環境対策はこれだけの範囲では全くありません。例えば、私どもが悩んでおります国道43号線の公害問題の解消は、CO2だけの問題ではなくて、NOとかSOの対策も併せてやらざるを得ない。それが環境だと思いますので、こういう環境税の議論をするときにCO2だけの議論でいいのだろうかという思いもいたします。そのような意味でもっと吟味をきちんとしていく必要があるのではないか、これが環境税に対する私の意見でございます。

道路目的財源につきましては、幾つかの論点がございます。まず、オーバーフローしているという議論がありますけれども、これは、道路だけ特別扱いできないものだから、公共事業の全体抑制、横並びで伸ばしていないからです。財源との関係でオーバーフローした見かけができているということでありまして、その見かけをつかまえて、オーバーフローしているから一般財源化するんだという議論は少しおかしいと思います。

2番目に、道路の整備の必要性をどう考えるか。これは国の財政再建、地方の財政再建ももちろんですが、この絡みで考えてみた場合、「道路はちょっと我慢できるじゃないか」という主張ではないかと思いますけれども、770兆円まで積み上がってしまったものを一般財源化したからといって解消するわけでもありません。そういう意味からすると五十歩百歩の議論で、財政再建が重要だというのと道路整備が重要だというのと、どちらが天秤が高いのかというふうに比較したときに、なかなか結論が出ない話ではないかと思います。

3番目に、我々の県で統計をとってみました。昨年の決算で、道路整備財源と道路に関連した公債費の額に対して特定財源比率が何%かというと、兵庫県の場合、23%しかないのです。もし、いろいろな関係で国で使い残しが生じているならば、まず需要の高い地方の側に配分を増やしてくれというのが我々の率直な願いです。

それから道路の議論になりますと、整備の優先順位の高いところはどこかというと、人口が多くて物の流通の激しいところを整備してきたわけです。ようやく我々のほうに回ってくるかと思ったら、いやいや、もう重要なところの整備は終わったから地方のほうはいいぞ、というふうに言われているような気が非常に強くいたしまして、これもいかがかなと思っております。実態から言いますと、大都市は地下鉄とか鉄道を含めてマストランジットが非常に整備されています。地方は道路しかないのです。車で移動するしかないのです。そういう中で不便をかこっている地域がかなりあって、まだネットワークも完全にできていない。そういう状況の中で道路整備財源を単純に一般財源化してしまっていいのだろうかというのが、我々として非常に強い疑問です。

それと併せまして、道路で車を運行するしかない我々が営々と負担をしてきて、都会のほうにいわば財源移譲してきた、とまで言うとちょっと大げさになるかもしれませんが、ようやく回ってくる可能性があるなと思っているときに、ピンはねされてしまうのかという思いもあります。受益者負担をどう考えるかというのは非常に難しいところがありますけれども、現にガソリン税を含めた道路目的財源を負担している我々からすると、地方の特定財源比率を上げてくれたらいいのではないかと。では、その目標はどれくらいかと石会長から言われそうなので、先回りして言いますと、半分。

石会長

23%を半分(50%)に上げるという意味ですね。

井戸委員

そうです。今、地方全体では36%くらいですから、地方全体の道路の特定財源比率を2分の1ぐらいには上げていただく。それくらいのことを前提にしていただいた上で、財政再建に回すかどうかという議論をしていただくのも一つの筋道ではないか、こんなふうに思います。

石会長

関連ですか。どうぞ。

遠藤委員

井戸さんに反対するつもりはないのですけれども、基礎小でもちょっと申し上げましたが、なぜ道路だけが、特定財源というか目的税みたいなもので、税ですべてやらなければならないのかというのが私にはよくわからない。国も地方も公共事業でやっているものは非常にたくさんあるわけです。河川もそうだし、ダムもそうだし、農業・土木もそうだし、港湾もそうだし、漁港もそうです。これらは特定財源がないのです。国の場合はおそらく建設国債が発行されているし、地方の場合は、補助金の裏については公共事業債、要するに借金でやっているわけです。道路だけがなぜ税金でなければならないのか。道路を使っている人が負担をしているからというのは、道路が非常にまだ整備が悪いときならそうなんですけれども、ここまで来て、まだ全部税金でなければならないかというのは私にはよくわからない。

片方で赤字国債を発行していかなければならないわけです。国民の担税力が、自動車を運転している人については国税で言えば3兆5,000 億もあるということであれば、その分を一般財源化して、道路で必要な投資についてはきちっと査定して、建設国債を出せば赤字地方債はそれだけ減るわけですから、そういうことにそろそろ転換していかないといけない時期ではないかというふうに私は思います。

石会長

井戸さん、反論があろうかと思いますけれども、まだ手が挙がっていますから、あとで時間があったら。

では、菊池さん。

菊池委員

財政再建と道路、どっちに使ったらいいか。片方が700 兆円で片方が5兆円だから、しようがないだろうという感じはわからないではないのですけれども、今は金利ゼロですからいいのですが、いつまでもそうやっていられないと。金利がある世界になっていくと、国債というのはいかにも貧弱な金融商品に見えるわけです。あと2、3年もすれば、あんなものを10兆も20兆も抱え込んでいる人はいなくなる危険性はあるわけです。そうすると国債が大暴落するというのは、新聞記者としては楽しみにしているのですが、そういう世の中が来ないとは言えない。

国債というのは全部返そうというのは不可能な話ですから幾らあってもいいのですが、方向性として、毎年毎年出す分をちょっとずつでも減らしていくという誠意を見せないと、マーケットというのはいつ裏切るかわからないわけですから、道路をつくるか国債を大きな意味で減らしていくか、どっちをとるかという選択の問題では全くないと私は思います。ですから道路をつくるのは、別に特定財源だろうが何だろうがつくればいいのであって、それは借金ではなくて、どこかからそれなりのお金を持ってくればいいということではないかと思います。

あと、現実的に小泉さんが特定財源を一般財源化しろと言って、あの人が言った部分は100 %成就するのではなくて、かなり目減りして大体成就するわけです。全くそうならないということではなくて何か起きるわけですから、その場合に、趣旨が曖昧なところがありますから、上乗せ部分を要らないだろうといって、何か変えるときのサービスとしてそうなってしまう可能性はあるので、そこのところはせっかく払っているやつを返すなんていうのはとんでもない話ですから、何でもいいからキープする。

そのために使うのが社会コストと環境保全という理屈になっているのですけれども、5ページの、14年のあるべき税制の「環境保全」というときは、まだ環境税話がない段階の表現ですね。片方で環境省が、何でもいいから環境税という名前の税金をつくってちょうだいと言っているわけですから、そこのところでどうするのか。道路特定財源が一般財源化するときの上乗せ部分を環境税としてちょうだいといわれたときに、環境保全の観点に鑑みれば、税率を引き下げないようにする必要があると言っているのと合わせると、「しようがないな、そこのところを環境税にするか」となってしまいそうな感じもないではないわけです。でも、その理屈とは別に「環境税どうあるべきか」という理屈を考えると、道路の分を環境のほうに名前だけ変えますというのでは、何のことかわからない。そこら辺の議論が整理されていないまま、現実には年末に向けての翌年度予算を作る過程でバタバタバタとなってしまうような気がするものですから、そこら辺、税調として詰めるのか誰が詰めるのかわからない世界ではありますけれども、問題提起として。

石会長

今の話は菊池さんもまだ整理がついていないのですね。

菊池委員

ありますけれども、長くなるからやめます。

石会長

わかりました。

今の関連ですか。

尾崎委員

国債の話ですけれども、増税の話が出てくるとまず歳出カットからと言いますね。だけど、歳出の中で国債費というのは2番目に大きい項目です。その2番目に大きい項目をどうするのかという話、これはものすごく大切だと思います。一番大きい社会保障費や何かは一生懸命やっているわけですけれども、歳出の項目であることをどこか忘れてしまっているようなところがあるんですね。これは元本の返済とか利払いですから、過去に決めた元本の返済や利払いを実行しなければ、これは国が破産するということですから、そういうことはできません。そうすると、どうしても新たに発行する国債を減らすという迂遠な方法しかないわけです。だから、単に増税の話だけしているということではなくて、これは歳出の問題でもあることをきちんと認識しなければいけないというのは、今のお話との関連で申し上げたかったことです。

環境のことで一ついいですか。現実に京都議定書を発効して、今いろいろなことが世界で進んでいるわけです。この12月にも、カナダか何かで環境大臣がご出席になって会議があるようですけれども、この環境の世界は、先ほど丹羽委員からお話がありましたように、日本の企業は非常に進んでいるわけです。だから、世界でイニシアチブをとれる数少ない分野なのです。アメリカ、中国は横を向いているという話だったのですが、最近、急に中国はものすごく熱心になりまして、エナジー・セービングの話ですとか、設備そのものをどうするかとか、一種のコンサルタントの役割を日本にすごく期待しています。中国がそうなってくればアメリカも引っ張り込めるようになると思いますので、日本は、強力にこの問題をやるのだということを示す時期に来ていると思います。だから、一歩突っ込んだことを税調が言うタイミングではないかと私は思います。

石会長

その問題と今の環境税は絡むのですか、尾崎さん。日本が何かやらなければいけないという問題と、今、具体的に我々は環境税を検討していますけれども、これを引っかけて議論されているのですか、それともインディペンデントのほうがいいのですか。環境税を入れて日本の態度を鮮明にすべきとおっしゃっているのか、何か別な方法があるのか。

尾崎委員

環境税というのはEU諸国でやっていることですから、せめてそれくらいのこともきちんとやるべきだと思います。

石会長

わかりました。

では、井上さん。

井上委員

環境税というものをつくるべきだというお話もあるのですけれども、私は絶対反対です。こんな目的税と税を複雑化する、そういうことをやっていくことが一つの問題ではないのか。今、出てきた価格の問題にしても、非常に中途半端な1.50円ですか、そういうような少額では何の効果も出ないということであるわけです。そういうことをやって一般国民の認識をということですが、もう既にいろいろな市場でどんどん騒がれているわけでして、国民一人一人はみんな一応認識してきているというふうに思って間違いないと思います。企業も省エネはいくらでもできる。大手の企業さんなどは、ノルマをかけて省エネをやるという仕組みをもっと考えていくべきではないかと思うわけです。

ともかく16年度が1兆2,500 億円、温暖化対策予算というのが組まれている。それだけでも金が既に組まれているわけですし、一方、道路特定財源からももっと拠出すべきだろうと。揮発油税の中には「環境保全の観点から」ということも書いてあるし、自動車重量税でも「環境保全等の観点から」と書いてあるわけです。ここから回すのが当たり前であって、それを回さないで道路ばかりつくる。道路をもっと安くつくる方法を考えるべきであって、まだまだ安くできると猪瀬さんもよく言っていますけれども、測量してもGPSとかそういういろいろなものを使えば4分の1になるとか、いろいろな手法があると思います。そういうふうにして安くして環境のほうに回してやるべきだというふうに思いますので、よろしくお願いします。

石会長

環境税と特定財源については、今、お二人、林さんと高木さんの手が挙がっています。このくらいにして、一回とりあえず粗ごなししてから、戻る時間があれば戻りますけれども、今日はまだ半分も終わっていないのです。

では、林さん、どうぞ。

林委員

効果があるかないかというのは、税率の水準と代替エネルギーのコストがどうなるかということでものすごく変わってくると思いますし、効果がないという場合に、税率が低過ぎるという話なんですね。

石会長

何の効果ですか。

林委員

要するに環境に対するCO2の削減効果とか。これを高くすれば当然効果は出てくるわけで、そうなるとまたさまざまな問題が出てくる。ただ、昨年出てきた案に比べますと、昨年の案は、例えば電気に対しても電源構成にかかわらず同一税率であったわけです。それから、財源を社会保障財源に充当するとか、要するに「導入するために」というようなことがあったのが、ずいぶんシンプルになって、環境税的なものになっているというふうに私は評価したいと思います。

これが効果があるかどうかというのは、税率の水準とかさまざまな問題がありますけれども、やはりポリシーミックスの一つのポリシーとして検討する時期に来ているのではないか。たたき台としてなり得るものが出てきたのではないかという感じはします。以上です。

石会長

高木さん、どうぞ。

高木委員

例の道路特定財源問題です。これまた地方と都市の話になりますが、世帯当たりの車の台数は、皆さんご存じのように地方で圧倒的に多い。ここへ来て原油高騰の中でガソリン代も上がっている。車を持つことは、地方はそれが必需品なのでやめることはできないけれども、という意味での家計負担増のような問題がだいぶ聞こえてきています。そういう中で、特定財源で道路云々、少し余ってきたからそれは一般財源化というと、今までは道路のためにこの税金を払うという説明を受けてきて、余ってきたら、今度は下げてくれたらいいではないかと。暫定税率やら何やら。それなのに一般財源化というのはちょっと話が違うのではないかという、税に対する信頼性みたいなことを問う議論が出てきております。

それから、法律には書いていないというけれども、それならなぜ特定財源化ということを言ったのかという反論もあるでしょうし、先ほど、国際的に見て日本の車の所有コストは高くないみたいなお話がありましたけれども、今日、私は自動車総連で聞いてきたのですが、取得時の問題、その後ある一定期間所有し続ける段階、あるいは高速道路料金まで入れるのかどうか知りませんが、高速道路だって特定財源でつくってきた部分がいっぱいあるわけです。そんなことも含めて、国際的に見て日本は割安ですというのは、一回いろいろな観点から検証してものを言ってほしいなという感じがしております。

石会長

割安と事務局が言ったのは、ガソリンの税負担だけですよ。その他、維持費とか何とかは入れていませんから、ご提案のような形の別途コストは計算としてあるでしょうね。

村上さん。

村上委員

皆さん、地球温暖化対策、特に京都議定書の実効に関して一生懸命やっているというふうにおっしゃっているけれども、実績は逆のほうに向いているわけで、地球温暖化に対する姿勢はまだきわめて人ごとではないかと思います。それはきちっと取り組む必要があるわけで、そのために税を端から排除するというのはちょっと乱暴過ぎるのではないかと思います。

ただ、示されている環境省の案、4ページのところに「温暖化対策の減税財源に充てる」と。つまり一般財源であるといいながら、実は特定財源を目指していらっしゃる。しかし、温暖化対策の減税という案はまだどこにもあらわれていないのではないか。私たちの目には触れていない。つまり非対称の状態で税だけやろうと、こういう格好になっていますから、それを鵜呑みにすることは税調としてはちょっとしかねるというふうに思います。したがって、減税財源に充てるとおっしゃるなら、何に充てるのかということをきちんと示していただいて、そんなもので済むのですかということで、もう少しきちっとした案にしていただければというふうに思います。

石会長

まだあるかもしれませんが、ほぼ2時間たちました。頭がボーッとしてくると議論もなかなかしにくくなりますから、ちょっと休みましょう。

丹羽委員

一つだけ。

石会長

では、どうぞ。

丹羽委員

温暖化の話で、あまりやっていないのではないかというお話がありましたけれども、少なくとも我々の調査では、産業・エネルギー転換部門からのCO2の排出量は90年度と比べてマイナス3.8%でありまして、産業部門では相当努力をしているということを、ひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。

石会長

問題は産業部門ではなくて民生部門なのです。要するに民生部門は規制とかできませんから。家庭であるとか、マイカーであるとか、ここの議論なのです。いくら産業はやっているといっても、それなりに頑張っておられるといっても、そこは困るのではないかと思いますけどね。

丹羽委員

排出権の売買とか、CDRとか、いろいろな形のやり方がありますのでね。

石会長

民間の家庭にはそれが及ばないのですよ、排出権云々は。まあ、いろいろ議論しなければいけないと思います。

それでは、4時までちょっとご休憩ください。

〔休憩〕

〔再開〕

石会長

再開したいと思います。

まだ大ものが残っておりますが、先ほどの議論の延長でぜひ発言をというご希望の方がいらっしゃいます。井戸さん、どうぞ。

井戸委員

先ほど遠藤委員から、道路整備は税金だけでしなくてもいいのではないかというご指摘、私もそのとおりだと思います。ただ、我々の実態を言いますと、すでに道路整備財源を100としたときに地方債を37.3%活用しておりまして、道路特定財源が先ほど言いましたように23%。いわゆる税等の一般財源も20%入れている。こんな実情であります。ですから、国の場合と地方の場合とは実態が相当違うということをぜひご理解いただきたいと存じます。

石会長

また反論もあるかもしれないけれども、これは打ち止め。

それでは、次のテーマに移ります。法人課税と納税環境整備で、三課長の佐川さんと、一課長の佐藤さん、地方税では市橋都道府県課長、お三人からご説明を受けますが、時間帯がだいぶ混んできましたから、手短にやってください。

佐川税制第三課長

資料「基礎小45-1 法人税等関係」でございます。時間もありませんので、簡潔にご説明させていただきます。

まず、目次を開いて概要だけ見ていただきますと、1が、法人税の現状。2が、15年度改正で導入された政策減税のうちの研究開発とIT。3が、経済社会の構造変化への対応ということで、来年5月に施行になります新しい会社法に関連する取扱い等、法人税法関連で何点か。4が、租特の整理合理化ということで、先ほどのR&Dも含めまして、租特全体の整理について税制一課長から説明いたします。

なお、1の法人税の現状につきましては、税調委員の皆様に何度もご覧いただいている資料ですので、時間の関係もあって基本的には省略させていただきたいと思いますが、2の研究開発とITの説明の都合上、10ページと11ページだけご覧いただこうと思いますので、恐縮ですが10ページを開いていただけますでしょうか。

企業関係租税特別措置による減収額(17,510億円)の内訳と書いてございます。ここでご覧になっていただけますように、試験研究税制6,570億円、IT投資5,120 億円と、大変大きな租特がここにあるわけです。この試験研究税制の上乗せ分、約1,100 億円、それにこのIT等を含めまして、来年3月に1兆円超が期限が到来する租特ということになっております。

11ページです。ここに同じことが書いてございますが、減収額、15年度から大変膨らんでおります。1兆7,000億円のうち、注意書きにもございますように、1兆2,000 億円がその両方の減税の減収額の合計、こういうふうになっているのが整理でございます。

それでは、2ポツに移りまして、15ページです。平成15年度改正で導入された政策税制ということで、来年3月に期限が到来するもので金額の大きな研究開発とIT減税の2つについてご紹介いたします。その前に、この制度は皆さんご承知と思いますので、14年度時、この政策税制を政府税調としてどういう考え方、議論で導入したかということについてのみ簡単に見てみたいと思いますので、大変恐縮ですが、21ページをお開けいただきたいと思います。

21ページの上の黒い箱の中は、「平成15年度における税制改革についての答申-あるべき税制の構築に向けて-(平成14年11月)」の答申でございます。この頃は金融システムにまだまだ不安が残りまして、日経株価も8,000 円前後と、どこかで底が抜けてしまうのではないかといった大変厳しい、現在とは全く違った経済環境の中で改正した項目でございます。「二 法人課税 1.法人税」と書いてありますが、下のほうに「(2)政策税制の集中・重点化」とございまして、[1]研究開発税制。「厳しい経済状況の下、研究開発の分野でも合理化・効率化が進められる中で、研究開発支出が『増加』した場合に税額控除を行う現行制度が有効に機能しなくなっている面がある。このため、研究開発支出の『総額』の一定割合を税額控除する制度を導入する」。2行飛びまして、「制度の基幹的部分は期限を区切らない措置とする」ということで、上乗せ部分は3年でやめることになっております。

[2]設備投資税制ですが、「一般的な投資促進税制は、企業が過剰な設備・債務を抱え、キャッシュフローを借入金の圧縮に充てている中で、設備投資の増加につながるか疑問である。また、競争力を失う産業にも優遇措置を与えるため、構造改革に逆行しかねない。したがって、真に有効な分野に集中・重点化した投資促進税制を創設する」。その下の下線部分でございますが、「IT投資に対し、集中的に政策効果を高める観点から、期限を区切り、重点的な政策税制を講じる」ということで、これも3年間でもとに戻すという整理になっております。そして今や、過剰な設備、債務は解消し、企業の手元にある潤沢な資金で設備投資が伸びてきている、そういう現状になっているわけでございます。

それでは、15ページでございます。ここの制度の概要については説明するまでもございませんが、ここにございますように、左側の増加部分だけだったのを、右側の総額の試験研究費に対する税額控除にしたということが、今ご説明した税調答申のような考え方があるということでございます。

16ページにわかりやすい図がございますが、左側、試験研究費割合、縦軸に税額控除率があります。試験研究費割合が大きければ大きいほど税額控除率が高くなる、こういう制度になっておりまして、その上に3年間の時限で2%上乗せになっているというのが研究開発税制でございます。

17ページですが、設備投資税制の概要と書いています。左側がいわゆるIT投資減税で、取得価額の10%の控除、あるいは50%の特別償却ということで、制度の仕組みの(3)ですが、対象設備、複写機、ファクシミリ等々、幅広いものが対象設備になっているというのが現状でございます。

18ページです。民間投資の動向というのがございまして、研究開発投資あるいはIT投資ともここ数年伸びているという図がございます。当然、減税の効果もあったと思われますが、ほかにも海外の経済動向等、さまざまな要因が影響してこういうふうになっているのだろうと理解しております。

19ページです。たくさん資料はつけませんでしたが、この1枚だけ、現在の企業の利益がどうなっているかというのが19ページでして、経常利益から特別損益を処理した数字の税引前当期純利益です。平成16年度、33.0兆円ということで、ほぼバブル並みの水準に戻ってきているということでございます。この資料につけませんでしたが、これ以外でも経常利益はさらに大きく伸びておりますし、あるいは、内閣府の月例経済報告、日銀の短観等でも、企業収益の改善、設備投資の増加が確認されております。また、先日発表になりました7-9のGDP速報でも、民間設備投資は6期連続のプラスといったことが紹介されているところでございます。

政策税制は以上でございます。

その次、24ページですが、経済社会の構造変化への対応ということで、最近の商法等・企業会計・法人税法の主な改正の動向という項目がございます。これはご紹介でございまして、左側に商法等と書いてありますが、持株会社、株式交換、金庫株等々、商法等が改正されますと税法でもそれに対応して税制改正をしてきているということです。一番左下に、来年5月、会社法制の現代化施行予定と書いてございますが、そうしたものへの対応も含めまして法人税法に関する幾つかの動きについてご説明させていただきます。

次のページ、25ページでございます。これは会社法制の現代化の概要ですので、この場で詳しくご説明することは省かせていただきますが、右下に施行時期とありまして、平成18年5月。カッコ内に合併等対価の柔軟化については、平成19年5月と書いてありますので、これは後ほど2ページあとでご説明させていただきたいと思います。

この関連で26ページですが、役員給与の取扱いという問題がございます。一番上の箱に、税制に下線が引いてございますが、役員報酬は原則損金算入、役員賞与は利益処分でございますので損金不算入、こういう取扱いです。これまで商法でも、役員賞与については株主総会で利益処分の手続を処理してきましたし、企業会計でも同様の取扱いでしたが,今度会社法が変わりますと、箱の中の会社法制と書いてございますところに、「役員報酬・役員賞与の区別なく整理する」、企業会計も「同じく費用処理の方向」と。こういう方向に動いております。こうした動きに合わせまして、例えば業績連動型報酬の損金算入の要望なども出ています。したがって税法としても、どういう対応が必要かということはこれからの課題ではないかと考えております。

ただ1点、留意すべき点がございます。左側に過去の税調答申をいただいておりますが、一番下に下線を引いてある3行だけ読ませていただきます。「中小法人の場合には、決算賞与の支払いによって法人の利益を比較的容易に調整することが可能となるといった問題もある」、こういうご指摘をいただいているところでございます。同族会社等についてはそういう問題もございますので、課税の公平を保つためにも、恣意性の入るようなものにつきましては引き続き損金不算入という取扱いで対応したいと考えているところでございます。

次に、27ページです。ここのところは1点だけ、現行の組織再編税制と合併対価の柔軟化と書いてあります。右側の会社法のところで、「新たな会社法においては、消滅会社等の株主に対して、存続会社等の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することができる」ということで、下の例で三角合併と書いてございます。例えば、外国の親会社が日本に子会社を設立して、例えば、消滅会社のところの日本の企業を買収するようなケースです。今までは、子会社(存続会社)の株式を消滅会社の株主に渡していたわけですが、今度の会社法の改正で、ここは、合併対価の柔軟化と書いてございますが、親会社の株式を交付することもできますということになっています。ここが昨年来、いろいろなご議論がございまして、1年間、この部分だけ施行が延長されています。最近の企業買収の動き等もございますので、来年の新会社法後、採用可能となります買収の防衛策を日本企業が準備する機会を確保する、こういう目的で1年延長されているわけです。

現在、証券市場における公開買付けのルールとか、もろもろ規制のあり方の検討も当局で進められているようです。税制についても、19年の施行までに何か対応を考える必要があると思いますので、来年、また具体的にこの場でご議論いただきたいと考えております。

28ページですが、これは、合併税制と株式交換税制の整合性を来年度改正でとりたいということでございまして、恐縮ですが説明を省略させていただきます。

29ページです。これも詳しい説明は省略させていただきますが、事業形態の多様化という図があります。申し上げたいことは、これからどんどん事業形態の多様化が進んでいくだろうと我々は思っております。そういう意味では税制上の整理として、左側の組合に対する構成員課税と、それ以外の「人格のない社団」から右側にある法人課税についての整理として、収益や費用が初めから構成員に帰属する場合は構成員課税、一時的に事業体に帰属する場合は法人課税、こういうことを基本として整理していきたいと考えている、こういう図でございます。

30ページは、そうした事業形態多様化への対応の例として、こういうことも現在行っておりますという例です。

31ページは、以上のように事業形態に中立的な税制上の対応をしているわけですが、個人形態と法人形態の税負担の調整という問題はずっと残っております。上に留意点とございます。来年、新たな会社法ができますと、ここに何点か書いてございますが、一人会社の設立が簡単にできるようになります。あるいは、設立時の払込価額規制撤廃ということで、資本金の規制も非常に緩くなる。そういう意味で法人形態と個人形態の壁が大変低くなるだろうと考えております。

したがって、平成12年の税調答申でいただいているこの箱の中ですが、小さい字で恐縮です、「参考」のところで、「同族会社の課税制度-同族会社については、少数の株主が意思決定権を有するため、法人の所得を役員報酬などを通じて分割することや、所得を会社に留保することによって所得税の累進税率を回避することが可能となるといったことが指摘されています」とあります。現在、留保金課税制度の廃止のような要望も出ているところですので、私どもとしましては、下の下線部ですが、「留保金課税制度は、法人形態と個人形態における税負担の差を調整しようとするものであり、現行の法人税と個人所得課税の基本的仕組みを前提とする以上、今後とも必要な制度です」、こういったいただいた答申の線でやっていきたいと考えております。

次の32ページは留保金課税の概要ですので、省略させていただきたいと思います。

最後になります。33ページから3ページ、非営利法人の考え方ですが、今年の6月、ワーキンググループで報告をいただいているわけでございます。現在、内閣官房で法案作成の作業中でして、来年の通常国会に提出予定ということで準備が進められているところですが、なお詳細は年末までに判明するかどうか、ちょっとよくわからないところがございます。

したがいまして次の35ページに、いただいたワーキンググループの報告書の「結びにかえて 制度設計に当たっての要請」ですが、1行目の真ん中から、「今回の制度改革の成否は、『第三者機関』の公益性判断や事後チェックが、国・地方を通じ、制度・運用両面において継続的に適正かつ的確になされるかどうかにかかっている」、こういうことでございます。したがいまして、来年、制度設計が明らかになったところで、また税調できちんと議論をいただく課題だというふうに考えております。

私からは以上で、引き続きまして、租特の合理化について、一課長からご説明いたします。

佐藤税制第一課長

続きまして、36ページ、「租特の整理合理化」をご覧いただきたいと思います。全体、国税で3兆8,000億円ほどの減収額がございます。法人税関係1兆7,500 億円、所得税関係1兆5,000 億円、その他ということでございます。法人税関係はただ今お話がございましたような試験研究、IT関係が大きなものです。所得税につきましては住宅ローン控除、それから生・損保控除といったものがございます。その他というところで、カッコ内、不動産登記に係る登録免許税の特例というものも大どころでございます。

いずれにしましても、この租税特別措置については、累年、37ページに1例入れてございますが、当調査会におきましても、租特については税制上の特別の措置であるということですので、整理合理化をしっかりする。それから、必要なものに集中・重点化をしていくということをご指摘いただいておりますので、18年度におきましても、この方針で臨んでまいりたいと考えているところでございます。

その中で、15年度税制改正で取り上げられたということで、研究開発とITは先ほど見ていただきましたので、38ページあたりは飛ばしますが、40ページを開けていただきたいと思います。不動産登記に係る登録免許税についてです。これは、平成15年度税制改正時にかなり大きな見直しをいたしました。15年度税制改正前は、例えば所有権の移転のところ、売買5.0%となっておりますが、これについては土地の課税標準が3分の1になっているというようなこともございました。そういうあたりを全部整理いたしまして、税率を引き下げる形で、現行、本則というところ、新しく税率を張ったわけですが、その上で15年度税制改正においては、これを半減する、3年間の措置ということで、今の例で申しますと、2.0%を1.0 %に引き下げることをさせていただいたわけです。これは当時、資産デフレという状況の中で土地の収益性を上げることが喫緊の課題であるということでとられた措置ですが、IT減税と同じように、3年間の時限的な措置を前提として取り扱ったものです。減収額が欄外にございますが、2,600億円でございます。

現在の土地の状況、41ページ、土地白書から抜き出しをしてございます。ここに書いておりますように、土地の利用状況は非常に変わってきております。収益性が高いもの、利便性の高い地域では、土地取引が活発化するといった形で正常化しつつある状況ですので、こういう導入の経緯とかこうした土地取引の状況に鑑みながら、税の特別措置をもとに戻す方向で検討してはどうだろうかと考えているところでございます。

以上が、租税特別措置関係でございます。

引き続きまして、別冊ですが、「基礎小45-2 納税環境整備」をご覧いただきたいと思います。3つほどトピックを用意させていただいております。時間に限りがございますので、ちょっとはしょりながら恐縮でございます。1ページを開けていただきたいと思います。1つ目は、物納の関係です。相続税の納付方法をここに整理しています。本来は、原則として金銭納付、延納を認められておりますが、いずれ難しいという場合には、物で納めることができます。

ただし、何でもいいというわけではなく、要件の欄、3つ目のポツですが、「国が管理又は処分をするのに不適当なものでないこと」ということで物納が認められているという制度ですが、現実の動きをご覧いただきますと、次のページでございます、バブル期を経まして、かなり物納関係が増えて処理もしてまいりましたけれども、折れ線グラフですが、未処理件数、高止まりをしているという状況にございまして、非常に滞っている状況です。

どうしてこういうことになるのだろうかということで、国税当局、あるいは国有財産の当局とも研究してまいりました結果ということで、3ページ、現状の問題点を書いてございます。そもそも申請から許可まで相当時間がかかる。数年かかるという話とか、そもそもどういうものが許可されるのかはっきりしないとか、納税者は不必要なものから申請したがるとか、いろいろなことがあります。要はこの辺、手続が明確でないという問題が相当あるのだろうということで、一刻も早くそういう面での改善をしていければということで考えていきたいと思っております。国税庁、国有財産当局とも、ここは詰めてまいりたいということでございます。

4ページです。2つ目、公示制度についてです。現在、公示制度は、所得税、相続税・贈与税、法人税、それから欄外、注の3ですが、課税停止中の地価税、この4税目ほどございます。もともとの趣旨は、第三者の監視によって牽制効果を狙いとするということで、この表にございます3つの制度は昭和25年当時創設されたものです。公示内容、例えば所得税のところであれば、氏名、住所、所得税の額といったものですが、近年、目的外的な使用、例えばダイレクトメールが届くとか、下請企業への圧迫に使われているとか、あるいは寄附の慫慂であるとか、いろいろなご指摘がございます。犯罪等へのかかわりも指摘されているところで、本来の目的から逸脱しているのではないだろうかということがございます。

こういった点は税調でも何度もご議論いただいたところですが、例えば5ページには、いろいろご意見がございますが、廃止の方向で検討してはどうだろうかというご指摘もいただいておりますので、こういうことで考えてみてはどうだろうかというところでございます。

最後、6ページです。ちょっと違うトピックですが、現在、インターネット取引が非常に多くなってきております。インターネット取引、場所がよくわからないものですから、取引自体がわかりにくいということで、集中的に16年度に国税庁において調査いたしました。1,000件ほど調査いたしましたところ、申告漏れ件数が、ここに書いてありますように、1,100万円くらいの所得ベースの脱漏です。

それから、参考の4ですけれども、その1,000 件のうち約2割が無申告です。実例を7ページに書いております。これは省略いたしますけれども、いずれにしましても無申告というのは、申告納税制度にとりまして由々しきことです。できるだけ早期に対応する必要があるだろうということで、過少申告よりも罪はより一層重いということだろうと思います。6ページをご覧いただきますと、現行制度、無申告の場合でもペナルティーということで加算税制度がございますが、これをさらに重くしていくということだろうと思っております。

最後に、「総34-3」という1枚紙がお手元にございます。これは、前回の総会で宿題となりましたものを整理いたしましたので、ご参考に供したいと思います。

石会長

では、地方税をお願いします。

市橋都道府県税課長

「基礎小45-3 地方法人課税等関係」につきまして、ご説明申し上げます。

1ページは、地方法人課税の概要で、地方法人課税には法人住民税、法人事業税があるというものでございます。

2ページは、この両税の税収の推移、それから3ページ、4ページと、税率等の推移が書いてございますが、説明は省略させていただきます。

5ページをお開き願います。ここには、法人に限りませんが、地方税の主な非課税等特別措置による減収額の内訳を記載してございます。個人住民税について生・損保控除、法人住民税についてはIT投資促進税制、事業税については社会保険診療報酬の非課税措置、固定資産税については新築住宅等に対する減額措置が大きなものとなっております。

6ページは、これまで頂戴いたしました個人住民税に関する生・損保控除、法人事業税の社会保険診療報酬に関するご指摘、答申を記載しております。

7ページをお願いいたします。7ページからが、平成15年度税制改正において実施いたしました地方税に対する減税措置です。まず、3年間の時限措置といたしまして、一つは、不動産取得税の税率の引下げを行っております。注にございますように、住宅、住宅用地については従前から3%でしたので、それ以外のものについては4%だったものを3%という形での引下げを行っております。それから、IT投資促進税制等に関する法人事業税・法人住民税分がございます。またこの際には、特別土地保有税の課税停止、新増設に係る事業所税の廃止の措置も講じたところでございます。

8ページは、ただ今の不動産取得税の概要を載せてございます。税率の引下げ措置のほかに、6にございますが、住宅については課税標準の特例措置ということで、新築住宅1,200万円を控除する。また、住宅用地については税額の減額措置ということで、実質的には床面積の2倍に相当する面積(200平米を限度として)についての住宅用地については、不動産取得税がかからない仕組みとなっております。

9ページが、税率の引下げ措置の詳しい表でございますが、一番下の注をご覧いただきたいと思います。この引下げ措置による減収見込額としては1,031 億円と見込んでございまして、ちなみに17年度の不動産取得税の税収は4,473 億円でございます。

10ページをお願いいたします。法人関係の措置です。まず、IT投資促進税制といたしまして、地方税の減収額ということで、法人住民税、事業税について合計1,429 億円の減収と見込んでおります。また、試験研究費の総額に係る税額控除制度につきましては、これも下にございますが、法人住民税において中小企業のみに適用していまして、平成17年度減収見込額としては34億円を見込んでおります。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

盛り沢山なご説明を受けましたが、ポイントは、法人税ではIT投資減税あるいは設備投資減税は、今年度末(3月31日)に切れますから、それをどうするかという問題。それから公示制度の問題。地方税に関しましては、特例でやっております不動産取得税。また、国税の登録免許税等々、この辺の延長の是非をどう問うか。そのほかにもいろいろ問題があったと思いますので、時間が押してはおりますが、忌憚のないご意見をお寄せください。

どうぞ。

丹羽委員

それでは、研究開発促進税制とIT投資促進税制について申し上げたいと思います。企業の収益が大企業で改善していることは我々十分わかっておりますし、申し上げたいことは、従来のように単なる一時的な景気対策のものではないと思います。そういう意味では役割は終わったという意見もありますけれども、国際競争力を強化していくという問題ではまだまだこれからこの役割は大きいであろう。国際競争力を失わずに、高水準の研究開発投資、IT投資を持続的に進めていくことが必要でありまして、そのためにも税制のインセンティブは要るであろう。例えば「世界経済フォーラム」資料というのがありますが、技術力において順位が7位から8位と、韓国に抜かれるというようなことが起きております。一方では、本日の新聞にも出ておりましたが、日本がいよいよ貿易収支よりも所得収支が増えてきているということです。これは明らかに技術をベースとしたものと資本投資の利子というものがありますけれども、特許権の使用料においても1,400億ということで着実に増加しているところであります。

そういう意味から言いますと、この税制の導入がかなりの後押しをしている。産業競争力は世界的にかなり激化しておりまして、我々も企業の国際競争力というものを調べておりますけれども、例えばIT関連においては、GDP比でアメリカは6.7%、韓国は7.6%、日本は4.7%ということで日本がかなり遅れている。この国際競争力、特に技術面におきましてもやはり相手があることでして、相手の体調とか調子も考えて税制を考えていかないと、一人相撲を取るわけにはいかないだろうというふうに思います。

本日もIT関連の大企業の社長さんとお話をしたのですけれども、現場としては、この税制があるかないかというのは、国の方針として、技術立国として将来日本が成り立っていかなければいけないという後押しをする意味で非常に重要だろうと。もう一つは、心理的にかなりの影響がある。国の方針としても、技術を中心にして技術立国をこれから進めていくんだということを明確に打ち出す意味でも、対象分野を見直すことは必要だと思いますが、ある程度の税制の支援をやっていただく。あるいは、企業の後押しをして、スピードを上げて技術の向上を目指していくことが必要だと。例えばアメリカは2000年から3年間、240億ドル、バイオの研究に国家予算を投入するということをやっております。

私が申し上げたいのは、景気対策というよりも日本国家の将来の姿として、知的財産のインフラなのだという理解のもとで、ぜひ、IT研究開発促進税制を残しておいていただきたいというふうにお願いします。

石会長

基礎小でもこれはだいぶ議論いたしまして、国際競争力の視点も二、三、意見が出されました。そこで確認ですが、今回のIT・設備投資減税は景気対策のためにやったものですから、3月31日に切れます。それは一応切って、新たに国際競争力の視点から別途、新しい租特を要求するというような受けとめ方でよろしいですか。

丹羽委員

はい。ただし、1年間ちょっと休むよとか、それができるまではないよということではなくて、継続ということをぜひお願いしたい。

石会長

継続ですね。承っておきます。

どうぞ、井上さん。

井上委員

私も丹羽委員のお話に賛成でございまして、ともかくこれは継続をしていただく。一回切ってもまたすぐ続けていただくということで、お願いしたいと思います。

それから、中小企業にというのは、先ほども申し上げたように、水面下でありながらも、やっと少しずつよくなりつつある状況です。今はまだ設備投資ができる状況ではないということをもっと認識していただきたい。これからよくなって設備投資に向かおうというところであります。そういった点からすると、IT投資減税、それから中小企業投資促進税制、これは何としても継続していただきたい。

中小企業というものに対する皆さん方の見方が、中小企業を生かそうとするのか、もっとこれを大きくしていこうとするのか、つぶそうとしているのか。今これだけの雇用を抱えて、日本の大宗を担っているのは中小企業であるということに対して、どうも税調の委員の皆様方も認識がないのではないかというふうに私は思います。

それにもうひとつ、31ページにあります留保金課税、これも、「法人税と個人所得税の基本的仕組みを前提とする以上、今後とも必要とする制度」ということを5年前に答申をされていますけれども、「法人形態と個人形態の税負担の差を調整する」と。「調整する」というような時代はもう終わっているわけです。今、金融関係においても、スコアリングですべて金利も査定される状況になってきているわけです。やはり内部留保を何としても積み増して自己資本を充実させないと、中小企業というのはこれから生きていけない状況にあるわけです。そういった点からも留保金課税も絶対ここで廃止していただく。逆に廃止していただくということをぜひともお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いします。

石会長

前段は国際競争力云々ではなくて、今ある景気対策としてのものを残せということで、丹羽さんとはちょっとスタンスが違いますね。

井上委員

はい。

石会長

わかりました。確認しておきます。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、村上さん。

村上委員

研究開発税制、IT投資減税のところですけれども、この上乗せ部分は景気対策としてやったものですよね。したがって、これは多年度中立という考え方をやはりきちんと守るべきで、この上乗せ部分については廃止するのが適当ではないかと思います。その理由として、今までは研究開発税制は増加分だけだったものが、根っこからできるようにしています。これは非常に大きな変化で、相当のインセンティブになっているのではないかということで、上乗せ云々の問題ではないのではないか。それからIT投資は、17ページに書かれている、こういうものに適用しますというのは、ファクスでも何でも買えば税金をまけてくれるというものですから、これはいつまでやるのか、ということだと思います。

やはり問題は、先ほどから出ていますように、これで国際競争力を維持できるのかということと、情報化社会に向かってきちんとした対応ができているのかということで見ると、できていないのではないかと思いますので、組み替えて、そういうものをもう少しきちっとしたものを示していただければというふうに思います。

それから、先ほどの留保金課税の件です。これは2年くらい前ですか、自己資本比率を50%まで上げたことで実際上は相当適用されている、あれが減っているはずなので、例えば廃止すると、例えば所得税との関係はどうなるのかということを言いたくなってしまう。そこはバランスの問題があるので、制度として残ることはやむを得ないのではないかと思います。

石会長

ITはおっしゃったけれども、設備投資減税のほうはどうですか。

村上委員

設備投資減税は、3年間の時限の部分は一度は切って、そして組み替えていく。考え方をもう一回整理し直して出ていくということではないかと思います。

丹羽委員

今のお話、具体的にどういう分野かと。17ページはたしかにかなり古くなっておりますので、分野を見直すことは必要であります。特に連結経営下で、大企業と中小企業のネットワークシステム、あるいは最近の市町村合併で、情報システムのソフトの違いだけで合併が破談になるということも出てきております。そういうネットワークシステム、あるいはソフトの統一化、項目の統一化ということで、中小企業をはじめとして大企業でも、こういう後押しがないとヘジテーションが起きてなかなか進まないということがあります。そういう意味で、いろいろなITの効果はありますけれども、国際競争力にかなりの影響力があるということです。

石会長

高木さん、どうぞ。

高木委員

研究開発あるいはIT投資、いわゆる国際競争力ですか、これを言われますと雇用にすぐ影響いたします。そういう意味で、まあ、形が変わるのかどうかいろいろあると思いますけれども、こういった趣旨のインセンティブは研究開発投資に特に与えてほしい。これは雇用の側面からもそんな感覚を持っております。

石会長

ほかにどうぞ、井戸さん。

井戸委員

法人税の税収が、景気や企業収益の回復と反応しなくなってきているんですね。その原因は何なのかというのは、一つすぐに挙げられるのは繰越欠損金の問題だろうと思います。これは景気対策の観点も含めて7年に延ばしています。これをそのままにしておくのかという問題が一つあると思います。もう一つ、3年か4年前に景気対策という形で議論して特例措置を講じたものについて、期限が来たら今の時点できちっと再整理をしていく。議論をきちっとして残すべきは残したらいいですし、やめるべきはやめるというスタンスが必要なのではないかと思います。

それから私どもとしては、あるところが住民税の税源移譲に関連して、所得税の控除がきかなくなった分、地方税でも控除を認めろという話があるやに聞いたのですが。

石会長

住宅ローンですか。

井戸委員

はい。これはとんでもない話で、税源移譲の議論は、国のほうの補助金等を4兆円カットして、税源移譲を3兆円する。それに見合う仕事は残るのです。ですから、地方税のほうに控除等を移すなどという話になったら、その分だけ税源移譲してくださいという話になってきますので、その点の認識をきちっとしておいていただく必要がある。

それから、公示制度の見直しですけれども、私は、法人についての公示制度を個人の議論と同じにしていいのだろうかと思います。上場会社等はかなり情報が公開されていますし、それをベースにいろいろな議論が展開し得ると思います。例えば大会社も上場廃止をするところが出てきています。そういう動きを考えたときに、法人の透明性とか法人のウエートが非常に大きいですから、個人の議論と法人の議論と公示制度の検討の中で一緒にしていいのだろうかというのが私の疑問です。

それから、これはお医者さんからいつも怒られるのですけれども、事業税の非課税措置の中で社会保険診療報酬制度、全く非課税に取り扱われています。昭和26年からではなかったかと思いますが、なぜ事業税だけそのような特例を延々と続けなければいけないのかという思いがあります。これは見直していただいてしかるべきではないか、このように思っております。併せまして、税収が企業収益と連動しない原因を事務当局はどういうふうに見ておられるのか、お教えいただけるとありがたいと思います。

石会長

当然、繰欠の問題でしょう。それに、井戸さんは7年を5年に短縮するというご提案ですか。

井戸委員

そうです。原則に戻したらいいのではないかと思います。

石会長

事務局から何かございますか。5年、7年は時限でやったわけではないですね。パーマネントですよね。

佐川さん、何かあれば。

佐川税制第三課長

一点、まず公示制度の話でございます。たしかに個人情報保護という話から言うと、個人と法人の話は違うだろうという話はございますが、法人の問題は、先ほど一課長からご説明しましたが、そもそも寄附とかダイレクトメールという関係で、取引先との関係で支障を来すという話は少しは聞こえてきています。そもそも公示されたもともとの動機として、脱税の通報みたいな話があるのですが、そこの効果は相当限定的になっているという話もございます。

それからもう一点、最近の新しい動きで租税条約上の相互協議の話がございます。相互協議をやったあとに、日本の場合、公示制度があるおかげで修正申告が表に出てしまうというので、外国からやや懸念が示されている問題もあるというのが事実関係でございます。もう一つ言いますと、先ほどのディスクロージャーの話は公示の問題とは別だろうというふうに考えております。

石会長

では、上月さん。

上月委員

ほとんど出尽くしているし時間もありませんけれども、今、大企業の話とかいろいろな話が出ていますが、やはり税制というのは、ある意味弱者にやさしいという部分もないと皆さんなかなか受け入れにくいと思うのです。そういう視点がどうも抜けているように思います。今の設備投資の話にせよ、「選択と集中」と最近よく言いますけれども、そういうことが必要なのではないか。そういう配慮というものがないと、最近の政府税調というのはずいぶん批判されていますので、その点をちょっと配慮していただけたらなと思っております。

石会長

どこに集中するのですか。中小企業ですか。

上月委員

中小企業もそうです。要するに景気浮揚の問題と、今、雇用の問題がありますね。景気浮揚に資する項目とか雇用の増大に資する項目については、やはり税制も考えるべきではないかと思います。

石会長

どうぞ、井上さん。

井上委員

先ほど村上委員が留保金課税の問題について言われましたが、50%以下については留保金課税をかけないからいいではないか、というのはおかしいのではないかと思います。我々中小企業というのは右肩上がりによくなっていくわけではない。景気に左右されて、1年2年ですぐ赤字になる。その赤字になったときにどうされるか。金融機関から、もうこれからはスコアリングでやると。赤字になったら2年で要注意先になるわけです。そうなったら、10%、10何%の金利になってしまうわけです。やはり内部留保というのは充実していかなければいけない。そういう点からすると、どんなことをしても留保金課税をなくしてもらうことはぜひともお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

石会長

古くて新しい問題でありますから、慎重に検討しなければいけませんね。

まだあるかもしれませんが、酒税と固定資産税が残っております。

では、羽深さん、酒税のほうをお願いします。

羽深税制第二課長

それでは、「基礎小45-4」という資料をお開きください。

まず1ページ、2ページは、現在のお酒の分類、2ページがその税率を書いたもの、3ページがそれをグラフ化したものです。一見しておわかりのとおり、いろいろな分類があり、それぞれきめ細かく税率が決まっているという仕組みになっております。

4ページは、主な酒類の税負担額を比べたもので、一番上が度数当たりの負担、真ん中の欄が一定量に対して幾ら負担しているか、一番下は標準的な価格に対して幾ら負担しているかということで比べたもので、それぞれの見方によって凸凹があるということでございます。

5ページは、最近話題になっているビール類です。これはビールの350 ㎖缶の状況ですけれども、218 円に対してビールが77.70 円、発砲酒、それから、いわゆる第3のビールと言われている、我々はビール風酒類と呼んでいますが、そういうものが最近出ておりまして、その負担ということでご覧のような状況です。

6ページは課税額の動向ですけれども、課税数量は、最近、横這いないし微減ですが、課税額は少し減ってきているという状況でございます。

7ページです。内訳をご覧いただきますと、課税数量も課税額も両方ともビールと発泡酒で6~7割を占めるということで、あとはしょうちゅう、清酒等となっています。

8ページはその推移をあらわしたものですが、昭和40年代、左側ですけれども、この時期はビールと清酒で酒税の大半を占めておりました。ところが、一番右、平成16年をご覧いただきますと、非常に多様化しておりまして、ビールのほかに発泡酒というものが平成6年から出ております。この税率がビールより低いものですから、先ほどの課税額が横這いなのに税収が減っているというのは、発泡酒が増えてきていることが影響しています。それから、しょうちゅうと清酒は逆転しておりまして、しょうちゅうのほうが割合が高い等々の多様化の状況が見られるということでございます。

9ページですけれども、国際比較ということで消費課税の国民所得比を書いております。日本が約6.9%で、イギリス、ドイツ、ヨーロッパ諸国が14~15%という中で、下が付加価値税で、そのウエート。それから、個別間接税の中に、酒、たばこ、石油等々がございまして、ご覧のように酒税というのも各国それなりのウエートがあるということです。

10ページは、諸外国の酒税制度の概要ということで、各国、蒸留酒、ビール、ワイン、それから中間製品というのは、シェリーとかポートのような、ワインに混ぜたものですけれども、そういうものごとに定めています。それから近年の傾向として、ドイツ、フランスでは、お酒と清涼飲料を混ぜたものに対する課税なども行われております。

11ページは、その国際比較、ウイスキー、ブランデー、ワイン、ビールごとに比べたもので、これも各国によってまちまちで、それぞれ独自の状況になっています。

こういう状況を踏まえて、12ページですが、昨年の税制改正の答申では、税制の中立性や公平性を確保する観点から、酒類の分類を簡素化する。それから、酒類間の格差是正を縮小するという方向で、早急かつ包括的に見直すべきという答申をいただいているということです。以上です。

石会長

ありがとうございました。

ポイントは、12ページに、17年度の税制改正に書いたような一応の過去の経緯はあるのですが、これをベースにいたしまして、今年さらにまた議論を深めなければいけないという視点からご議論いただくといいと思います。酒税についてどういうふうに諮かっていったらいいかということですが、今までの資料等について、ご質問なりご意見ございませんか。

どうぞ、丹羽さん。

丹羽委員

簡素化そのものには私は賛成でありますし、税制が非常に複雑な中で、酒税だけ簡素化というのは疑問があると思いますけれども、全般に税制そのものを簡素化していくということでいいと思うのですが、同種・同等は同一税率と。何を同種・同等とおっしゃっているのか、何を基準にしているのかということが非常にわかりにくい。国民の納得というものがこれでは不足するだろうと思いますので、その辺を明確にする必要があるのではないかと思います。

石会長

それはまだ決まっていません。これからです。何をもって同種・同等か。つまり、第三のビールはビールと言えるのかという議論もあるわけですね。したがって方向は粗々に示しておいて、具体的・技術的等々は、この酒税の世界、業界の方々の意見もおそらくあるでしょう。これはやってもらわなければいけないと。

丹羽委員

様々だと思います。

石会長

様々なのです。それを今、基本の方針だけまとめたという段階です。

どうぞ、井戸さん。

井戸委員

丹羽委員のお話と意見は似ているのですが、税負担を考えるときに、例えばアルコール度数1度当たりの税額で比較するのが酒税として正しいのか、他のどんな尺度で酒税の税負担を検討するのが正しいのか。その辺、我々は素人すぎて、まず検討の前提をどういうふうに整理したらいいのか、私も十分に理解できないところがあるので、どういうふうに酒税というのは考えられているのか、教えていただくとありがたいと思います。

石会長

4ページに出ている3つのうちのどれを採るか、ということです。これは基礎小でもだいぶ議論しました。経済学的には、小売価格に占める税負担というのが一番すっきりしているのではないかという説と、それから、WTO等々の議論も踏まえて、度数というのが一つの尺度になるのではないか。これはどっちを採るかによってガラッと変わってきます。実は税調として、どこというふうにはっきり決め打ち的に議論をしておりません。したがってさっき言った括りの問題と、どこの基準で比較するかというのは、これからのご議論です。技術的な問題もあって、今、事務局にお願いして詰めてもらっていますが、具体的にこれぞということを出せるところまでは来ていない段階だというふうにご理解ください。よろしゅうございますか。

それでは、とりあえずひと通り終わって、また戻すという手もありますので、次、固定資産税をお願いします。

米田固定資産税課長

それでは、「基礎小45-5」、固定資産税関係資料で説明させていただきます。

まず1ページ目は、概要でございます。課税標準のところをご覧いただきますとわかりますとおり、価格を課税標準としておりますが、その価格は3年ごとに評価替えをやっております。これが18年度、来年度まいりますので、今回ご議論をいただく、こういうものでございます。

次、2ページをごらんいただきますと、固定資産税、市町村税収に非常に大きな税収割合を占めている基幹税ということで、全市町村では46%、特に町村においては55%ということで、非常に大きな税収を占めているものです。

次の3ページは、最近の税収の動向を示しております。マルを打ちましたところがピークの税収のところで、11年度、すべてで9兆2,400 億円ありましたけれども、土地、家屋、償却資産、それぞれ最近かなりの減収になっている。特に一番下、黒いところですが、土地につきましては、ピークからすでに4,000億円近い減収になっているというものでございます。

続きまして、4ページをご覧いただきたいと存じます。ここからは特に土地、その中でも宅地についての課税を考える資料です。固定資産税、財産税ですので、まず評価という行為が必ずございます。通常ですと、この評価額を課税標準額としてそのまま用いまして、これに税率をかけて税額を求める、こういうことになりますけれども、宅地の場合は若干異なっているというものです。下のほうをご覧いただきますと、まず評価ですが、平成6年度に、そこに書いてありますとおり、いわゆる7割評価、地価公示価格等の7割を目途として評価ということになりました。そういう意味で、これ以後は評価については全国的にばらつきがない状況になりました。

しかしながら、これをそのまま課税標準額という形で用いますと、従来の評価とかなり大きな乖離が生じるということで、いろいろな特例が設けられたわけです。一つは住宅用地の特例ということで、小規模住宅用地200平米までについては、従来4分の1とする特例を6分の1にする、このような特例がまず入りました。

もう一つは、固定資産税が毎年負担を求めるという性格から、税負担が急増するのは望ましくない、このような観点から負担調整措置というものが入りました。前年の税負担額よりもあまりに急激な上昇を防ぐ措置でございます。

入りました結果、7ページをご覧いただきたいと存じますが、これが、現行の商業地等にかかります負担調整の措置です。左のほうからご覧いただきますと、固定資産税評価額、これはすでに公示地価の7割の水準になっていますが、これを100 といたします。前年度、実際に税負担を求めるときに使いました課税標準額、これが今年度の評価額との関係でどの程度にやるか、これが負担水準というものです。したがって、負担水準が高ければ高いほど前年度の課税標準額の水準が高い、こういうものでございます。

そこでこの負担水準を用いまして、下のほう、前年度の水準が低いものについては、前年度の課税標準額に、例えば20~30のところですと、1.075 を掛けるということで今年度の課税標準額を求める、こういうものです。負担水準60~70のところは、前年度の課税標準そのまま据え置きです。さらにその上、70%を超える部分につきましては、すべて70%まで引き下げるという措置を平成9年度以降はとっております。さらに一番左、ちょっとおわかりにくいですが、囲いましたところ、条例減額制度というものがございます。法定では、今申し上げましたように引下げ70%ですが、市町村が条例で自らの判断でこの70を60%までの任意の水準で引き下げることができる、このような制度になっております。

ちょっと飛んでいただきまして、10ページをご覧いただきますと、現実どのような土地の状況になっているか、こういうものでございます。平成17年度の全国、右上のところをご覧いただきますと、現在、負担水準が高いということで税負担引下げになっているところ、70%以上のところ、これが47.8%ということで、半分くらいの土地がすでに引下げの対象になっているというものです。一番右のところは、負担水準が低いために前年度よりも課税標準額を引き上げているものです。これが15%を下回る水準になってきたということで、かなりの程度、負担水準が均衡化してきたということが言えるかと存じます。

次の11ページに、県別の表等を載せてございます。

12ページをご覧いただきますと、これは3年前の評価替えのときのこちらでいただきました答申です。今後の負担調整措置を考える上での留意点ということで、2点ご指摘を頂戴しております。一つは、固定資産税は市町村の基幹税ですので、安定的な確保が重要という視点。もう一つが、一番下に書いてございますが、さらにこの負担の均衡化を一層促進する措置をとる必要がある。この2点、ご指摘を頂戴しているところでございます。

なお、13ページは、評価の点、市町村がやるので見えにくいということもございまして、情報開示を推進している状況をまとめた表です。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

少しはしょってご説明いただいたのでおわかりにくいかと思いますが、やっと目標の「地価公示価格の7割」という点について、達成が目に見えてきたというところで、来年度また評価替えが来る、こういう現状ではないかと思います。

ご質問なりご意見、時間は延長になりますが、どうぞおっしゃってください。

林さん、あなたは専門家だけれども、7割という旗をあげて来たわけですね。もう一息なのかどうか、それについてコメントがあれば。

林委員

これは地価の動向に非常に左右されますので、早くもっとすっきりした制度になればいいなと。ただ、上がったときは負担軽減で、下がったときはという、そういう非対称的な議論だけはしないほうがいいなという感じです。

石会長

わかりました。

ほかによろしゅうございますか。井上さん、どうぞ。

井上委員

家屋の評価なんですね。それが取得価格、その家屋の評価。要するに、年々評価自身は落ちていくわけです。そうするとレンタル料も減る。それによって収入も減るわけだから、本来だったら税も下がらなければおかしいと。さもなくばミニマムの数字にするのか、取得価格全体にかけるような今の仕組みというのはどうも理解できないのですけれども。

石会長

でも、家屋は経年減価があるでしょう。

井上委員

それが非常に悪い。下がらないんですね。その辺、すみません、私が間違っているとしたら……。

石会長

米田さん、ご説明ください。

米田固定資産税課長

もう一度、3ページのグラフをご覧いただきます。これは、真ん中の白いところで家屋の税収でございます。これが如実にあらわれておりますとおり、前回の平成14年と15年の差をご覧いただきますと、実は15年が評価替えの年度です。先ほど言いましたように、家屋も3年に一度の評価替えでございます。評価替えでどのようなことをやっているかと申し上げますと、一つは、古びることによる経年の減価。もう一つは、建設物価によるインフレ、デフレの調整。この2つをやっております。そういう意味では3年に一度の評価替えにおきまして経年の減価を見ている。さらに、最近は若干のデフレ傾向ですので、両方でかなり大きな減収が立っている、こういうものでございます。

石会長

3年に1回、こういう減収などが起こるというわけで、井上さんのご不満は、毎年ではないか。欲しいということですね。

井上委員

本当はそうですけど。

石会長

よろしゅうございますか。長時間いただきましたけれども、5時になりましたので。

あと、どういうふうに進めていくかはまたお諮りしなければいけないのですが、今日は、一通り来年度税制改正の主要な項目をさっと説明していただきまして、ご意見を伺いました。

そこで、文章に落とした段階で再度、表現ぶりとか取扱い方についてご議論いただく作業が残されています。そのために今度の金曜日、18日に基礎小委員会のメンバーの方々に集まっていただいて、起草会合というのをやって文章化を図ってみたいと思います。それを受けて、来週の今日になりますが、22日、総会を再度開いてその文章を検討していただきまして、表現の強弱であるとか、自分の意見をどう取り上げたかというような説明等が必要だと思っています。

正直に申しまして、30~40枚、50~60枚という膨大な答申案をつくったことがございます。実際に書いてみなければわかりませんが、今回は、今日の議論でおわかりいただけますように、例年よりそう大部ではないというふうに、思っております。時間的にも、何回も重ねてやるというところまでやらなくても大丈夫ではないか。というのは、これまでずいぶん議論を繰り返してきたことの延長上にある問題がかなり多いのです。

ただ、今日またご意見をいただきまして、それをどう表現するか、これからの問題だと思いますが、税調には税調としてこれまでの基本的なスタンスがあって、それをベースにしておそらく議論はスタートするかもしれませんが、それに対して今の新しい視点、あるいは現状、景気の判断とかいろいろございますので、過去のままではしようがない、新しい視点も必要かと思っています。ただ、税調というのは、国家全体、国全体、マクロベースでも議論しなければいけません。今日、ネットの新しい増税の提案はなかったかと思います。つまり、期限つきの減税云々のところで、廃止すると増税になるという視点のご発言はあったかもしれません、環境税は別にしまして。そういう意味でこれから議論するときは、今の財政事情、今後の税制をちゃんとしないと、少子高齢化に耐えうる税負担を国民にはお願いできない面もあります。そういう視点も、今日はあまり表に出てきておりませんけれども、ベースにして議論しないと、個々のケース、負担が重い軽いだけでは議論は成立しないと思いますので、基礎小でもう一回その辺を整理して文章にしたものを今度の総会でお諮りして、最終的に我々としての来年度税制改正を決めたいと思っています。

22日にうまくまとまればのことですが、一応そういう線で整理しております。基礎小メンバーにお集まりいただく起草会合は文章を作成するので、非公開という形で、議事録の作成や記者会見も行いません。また、起草作業を開始した後の総会は、会議の公開は行わないこととし、記者の方々、あるいは各省の方の出席は例年どおりお断りしなければいけないと思っています。ただし、議事録は公開いたします。発言者の名前はつけないで後日公開したい、このように考えております。なお、本日は記者会見を行いますが、今日行いましたことは、記者の方々ご覧いただいていますから、どういうふうに説明するか難しいのですけれども、とにかく私の整理したことを申し述べておきたいと考えております。

そういうわけで、長時間ありがとうございました。今日は、いつもよりはるかに活発な議論が繰り広げられたと思っています。これも、新しく加わっていただいた方、それから、総会にご出席いただいた方の積極的なご発言があったからだと思っています。今後もこういう形で活発な意見の交換をぜひしたいと考えております。

では、どうもありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。