総会(第33回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年10月25日(火)16:07~16:31
〇石会長
今日、来年度税制改正の最初の、言うなればキックオフですかね、その総会を開きまして、2時間ほどたっぷり議論をいたしてまいりました。内容につきましては、皆さんご存じだと思いますので、今日、私の受けた印象と、今後どういうスケジュールでやるか、どういう点をこれから年度改正に向けて詰めて議論しなきゃいけないかという点につきまして、二、三論点を整理したいと思っています。
やはり最初は、歳出削減を中心とした財政構造改革というのが、何といっても税制改革の大前提であるということにつきまして、皆さん全部と言っていいぐらい、委員の方からご意見が出たと思います。ご発言のない方も、そういう意識を持たれたと思います。論点整理が所得税のみに絞って、いかにもそれが所得税増税に結びつくような、かつこの4月から全部やるようなとらえ方をされて、どうも我々の意図した方向には議論が向いていなかったということです。まあ反省をしたほうがいいというご意見もございましたけれども、それもそうだと思っています。あくまで中長期的な視点から所得税の論点を整理したというだけなのでありますが、それを踏まえまして、税調として今後どういう形で税制改正に取り組むかということに対して、いろいろな思いを述べていただいたんだと思っています。
今日新しく出た議論としましては、歳出削減も単に一般会計のみではなくて、やはり特別会計というところにまでその幅を広げて議論すべきであると。とりわけ、特別会計には税の目的税化したところのものを絡んでおりますので、そういう視点からいきますと、税調の役割というのも十分にあり得るのではないかと考えております。そういう意味で、諮問会議が公務員の人件費の抑制等々も含めて本格的に歳出カットの議論に切り込んできてくれていますので、まあそういうところとタイアップいたしまして、税制改革の議論をこれから深めていきたいとは思っております。
今日、もう一つ議論になったのは、2010年初頭のプライマリーバランス、これが今のところ国・地方あわせて一体化でやるか、あるいは国と地方ばらばらで、別々でやらなきゃいけないのかという議論が、おそらく諮問会議でも、あるいは財制審でも議論された中でちょっと分かれているような気もいたしますので、それは税調としてどう受けとめるかというのも、これから議論をしていきたいと思っています。
第2点は、これから議論するわけでありまして、まだすべからく結論は出てないんですが、今日、事務局からの資料をごらんいただくとおわかりのように、国税関係で五つ、地方税関係で三つ、具体的に検討項目をお出しいただいた、こう思ってます。国税では、三位一体改革との関連で税源移譲の問題ですね。第2点としては、定率減税、この後半部分、残り半分をどうするかという問題ですね。三つ目が、設備投資減税、研究開発投資減税のいわゆる政策減税を3月に期限切れになるのをどうするか、その問題ですね。四つ目が、道路特定財源の一般財源化、これをどういう形で処理していくかという問題。五つ目が、今日はお酒、酒税の問題が出ました。この五つが大体国税として、これまでの議論を踏まえて来年度税制改正で議論すべきであると。地方税のほうは当然、税源移譲と定率減税、これは国税とタイアップしたところでありますが、三つ目として、3年ごとの評価替えの問題で固定資産税の問題が出てきたということだと思っております。
そこで、今日いろいろ議論が出たんですが、ある基本的な方向につきましては、この八つの問題ですか…につきましては、税調はかなりこれまで議論してきたと思っております。そういう意味で、来月1か月かけて何をするかということですが、少なくも過去の議論を踏まえつつ確認をしなければいけないと思ってます。例えば定率減税について景気との関係で議論してまいりましたが、再度景気をどう判断するか、委員によって違う人もいるでしょう。あるいは、政策減税というのも期限切れになったから、もう役割は終わったという形でそのまま議論を進めるのか、あるいはまだやってほしいという声も一部ございましたし、そういう意味で一応既定の案件として処理できる部分もありますが、再度、もう一回、条件等々もにらみあわせまして、今言った国税で五つ、地方税で三つの問題を整理して答申を書きたい、このように考えております。
三つ目は、予定したもの以外に新しい検討をしてはどうかというご提案もありまして、例の特別会計にまつわる税の問題も一つなんですが、それ以外に環境税、この問題はどうするかという議論が出まして、環境省も新しく今年つくりました環境税の案があるとのことですので、それはいずれ、一回税調の場で議論して検討したいと考えております。あるいはお一人でしたが、たばこ税というのはどうかという議論、まあ個別消費税の世界で酒税が出て、ガソリン、いわゆる揮発油税が出ましたので、これはおそらく、来年6月以降に出すであろう中期答申等々あたりの問題として本格的に取り上げるにしても、今年度頭出しをしておくかどうかという問題ですね。あともう一つ、子育てと税制の問題も、まあ今年やるか来年以降やるかは別として、問題提起がございまして、そういう意味で今後の一つの重要なテーマになるかと思ってます。
以上3点、これが今日の議論を受けた私の論点整理でございますが、あとの審議の状況でありますが、来月1週目、2週目、3週目、火・金、火・金、火・金ございまして、1週目はちょっと連休が挟みますので2週目になるかと思いますが、そこから基礎小と総会を組み合わせまして計6回ございますので、6回あれば十分だと考えております。というのは、今申し上げましたように、これまで十分に議論を積んで、ある方向性が出され、基本的にある合意に導きやすいような論点、あるいは税制改正の項目でありますので、できれば来月末、11月の最後の金曜日にまとめまして、一応年度改正でございますので、答申という形にして世に公表したい、このように考えております。
それから先は、我々税調委員の3年の任期が来年10月にまいりますので、3年ごとに中長期的な視点から中期答申というのをまとめております。そういう意味で、その準備にいつごろから入れるかわかりませんが、年が明けてなるべく早い時期にその議論を始め、そして全般的な税制改正の見直しに着手したいと思っています。その段階では、できるだけ多くの税、あるいはすべての税といってもいいかもしれませんが、税制改革の方向と、我々のあるべき税制を、歳入歳出一体改革のモデルのなかで歳出カットとの関連も含めつつ議論していきたい、こういうスケジュールでおります。
最初のご説明は以上です。ご質問があれば。
〇記者
当面の課題である来年度の税制改正についてなんですが、定率減税の存廃についてなんですけれども、当然これからさらに議論を深めるということになると思いますが、現時点で、景気の現状を踏まえてということで、その存廃についての石会長のご見解をまずお伺いします。
〇石会長
今日、まだ議論が始まったばかりで、決定的なことを言うのは早過ぎると思いますが、昨年まとめた答申を見ていただくとわかりますように、平成18年度にやめるとはっきり書いてございまして、ひとえに景気の動向の判断によると思っています。それで、昨年も前半、半分をやめるときにも景気の話が出ましたが、いずれにいたしましても1年数カ月後の話でありますから今からわかりません、本格的な景気動向は。来年、やめるといたしましても、2007年1月ですか、1年数カ月後でありますので、とりあえず今の段階では、景気を理由にしてですね、定率減税の廃止を延ばすという根拠はない。という意味で、これから議論を詰めていきますけれども、従来の考えどおり、要するにこれは通常の増税とは違ってですね、6年前に景気対策として行われました期限つきの減税を取りやめるということでありますので、その減税を持続していく理由がない以上はですね、取りやめるべきだという議論になっていくと思います。
〇記者
所得税については2007年の1月から、個人住民税では6月からということですね。
〇石会長
はいそうです。
〇記者
当面の、来年度ということをちょっと越えた話になるんですけれども、2点目の質問ですが、消費税なんですけれども、政府税調の今後の議論の道筋という関係でお伺いしたい。というのは、昨日、自民党の消費税を社会保障目的税化すると。この目的税化という点をどうお考えになるかということも踏まえて、議論の道筋をどう考えていらっしゃいますか。
〇石会長
消費税につきましては、過去、そうですねえ、二、三年かけまして、例の「あるべき税制」の姿とか「少子・高齢化と税制のあり方」等々で議論いたしまして、我々としてはですね、基本的には今後の財政需要の伸び等々から2桁にならざるを得ないだろうということははっきり、一昨年かな、申し上げております。そこで今後、どういう形で議論していくかということでありますが、昨日出されました財政改革研究会の消費税と社会保障給付との関係で、まあ両者リンクをして結びつけて考えようという考え方、一つ提案があったわけであります。ああいう提案などがを幾つかのところからこれから出てくると思いますが、我々も、社会保障制度改革あるいは歳出構造改革の一環としてですね、税の問題を考えなければいけないと思います。そこで消費税というのは、やはり社会保障と密に関係がありますから、社会保障、特に年金・医療・介護等々の改革動向と見合わせてですね、これから消費税改革の具体化を図っていくということです。具体的には2007年度、消費税を含めて抜本改革をすると政府・与党は言っておりますので、来年の秋、本格的議論が始まると思います。その前にですね、我々、中期答申をまとめなきゃいけないので、どのぐらい今の段階で書き込めるかわかりませんけれども、消費税についてもですね、どのぐらいの規模になるのか、あるいは構造的にどういう格好にするのか。つまり、社会保障とどういう結びつきで説明するのか。あるいは軽減税率をどうするのか等々のことは、本格的に議論していきたいと思ってます、年明けてからね。
〇記者
今日、環境税の話が出ましたけれども、特定財源と環境税の議論というのは、分けて別々にやるのか、一つでやるのか、お願いします。
〇石会長
環境税の、まだ具体的なイメージといいますか、中身がですね、何もはっきりしてません。環境省のお出しになったのを即そのまま実現するということでもおそらくないんでしょうが、一つの重要な参考になると思いますので、議論していくつもりです。例の暫定税率のところが2008年ですか、切れるのは。その辺のところでおそらく本則税率と暫定税率の関係というのを一応再確認というか、再検討する日が来ると思います。環境税を道路財源の一般財源化と結びつけてというのは、税調でも昨年来かなり議論されておりますし、そういう意味で両者の関係を結びつけて議論というのは、当然起こり得るとは思ってます。ただ、環境税にとってあまり状況がよくないのは、原油価格がこれだけ上がってしまいましたからね、環境税の議論の仕組みの仕方としてどうするかという問題は、今後残るんだろうというふうに考えております。
〇記者
消費税に関してなんですけれども、2桁以上ということはまあ前回の答申でも出ていて、おっしゃっておりまして、2桁は10から20まであるんですが、石会長はどれぐらいの税率がふさわしいと…。
〇石会長
それはね、ひとえに医療改革、それから年金をさらにこれからどうするのか、介護をどうするのかという将来の社会保障の給付の水準との絡みが出てくるんだと思います。消費税をすべて社会保障に使ってというならそういうことだし、消費税は別に社会保障だけに使わんで、基幹税だからほかのもろもろに使えということも、当然議論があります。しかし、ひとえに社会保障を中心とした受益の水準をどれだけにするかによりますね。と同時に、今は1%で2.5兆円ですか、だから2%でも5兆円ですよね。これはおそらく日本経済の、そのときの状況でどれだけたえられるかという議論もありますから、そう一挙に、バババッというわけには多分いかないんでしょう。それで2桁という意味は、当面いつかわかりませんけれども、2桁の入り口であります10%には、しかるべき時期には、5から10の間におそらく何ステップかあるんでしょうけどね、やって、それから高齢化の動向であるとか、あるいは歳出構造の状況とか、あるいは社会保障の構造的な問題を踏まえて、その先は検討するんでしょう。
昨日の、財政改革研究会のは、あれは別に税率は出てなかったと思いますが、社会保障と結びつけて、社会保障給付がどれだけ削減するか、されるかによってですね、たしかあれ、10から15とか言ってるんですか、まああんな感じかなとは、個人的には思ってます。
〇記者
特定財源の問題なんですけれども、今年度の議論ではどの程度までまとめるつもり…。
〇石会長
道路ですか。
〇記者
まあ道路…、特定財源てまあいろいろあると思うんですけれども、道路財源だけにとどまるのか、それとも石特、電特も含めてやるのか、まずそれが一つ。それから、暫定税率の問題について、自工会なんかはこれを引き下げて、余剰分が出るんだったら引き下げるべきだと意見が出てますけれども、それについてどう思うか。まずこれが一つと、それから今年の6月に出された、まあサラリーマン増税とされる所得税制の改革ですけれども、これと消費税論議と、どちらを優先して今後進めるのか。同時並行でやるのか、消費税を優先させるのか。その2点をお願いします。
〇石会長
第1点はですね、おそらく特定財源といったときは揮発油税の例の道路特会のところで結びついていると思いますが、そこがまず優先された議論になると思いますが、ただ、オーバーフローが厳に起こるのはもう1年先ということなんでしょう。ただ、我々としてはですね、道路特定財源は一般財源化すべきということをもう十数年来言ってるわけで、方向は出ております。問題は、今おっしゃった暫定税率をどうするのか、本則税率の関係どうするかというところ、技術的っていうかな、その構造的な問題にどうコミットするかということですが、そういう具体的なコミットまで年度改正で書けるかどうか、私はちょっと難しいかなという印象は受けてますが、税調で皆さんのご意見を聞きたいと思ってます。
そこで、要はもう一度一般財源化の方向を確認するということをとりあえずやって、それ以降、中期答申あたりで、これをもう少し具体化するかという議論に結びつけるのが自然なような気もしますけれども、それを急いでやれという人が出てくれば、急がれるかもしれません。それから石特とか電発の話は、特別会計のまあ見直しと絡めてですね、これはもう少し大きな話になってきますし、歳出カット全体の話とも絡みますから、少し時間をとらなきゃいけないので、年度改正に即取り上げるのは難しかろうというふうな、今、私が議事進行する建前上、そのように考えてます。
それから論点整理は、何度も申しておりますが、中長期的な視点から現行所得税の欠陥なり問題点を整理したものでありまして、あそこに出ているものが、即この4月から増税しようという話は、初めから考えてないわけであります。さはさりながら、これからですね、今のままの所得税でいいかという議論は当然出てくるわけで、それは消費税との絡み、資産税との絡み、他の個別消費税との絡み、さまざまな税制全体の見直しと歩を合わせてですね、所得税もいずれ議論しなければいけない。おそらくそのとき、やっぱり基幹税という意味では所得税か消費税かということだと思いますが、議論としてはね、いつどっちが先に出るか、どういう法案をつくるかというのは関係なくですね、議論としてはですね、両者同時でもいいし、あるいは、この間6月に論点整理をまとめたので、今度は消費税を少し集中してやるかという選択もありますんで、いずれにいたしましても、税制改正の言うなれば、在庫と言っちゃあおかしいけど、いろんな具体的な案は絶えず我々としては繰り返し見直し、検討しなきゃいけないので、まあ議論ということになれば両方やってもいいし、それから実際にどっちからどうしようかというのは、それからの話なので、現段階ではちょっとわかりかねますね。
〇記者
総選挙が終わってから初めて石さんが総会に登場されたわけですが、今日の総会の中ですけれども、論点整理に関してやっぱり期待を持ってらっしゃったり、論点整理に対する期待をされていて、集中砲火を浴びている部分に対して委員の方からもいろんな意見が飛びましたけれども、石先生としては、6月の論点整理があって、自民党からもサラリーマン増税には反対ですと言われ、私たちからもたたかれですね、はたしてどういう気持ちでいらっしゃったのかなあという、そこのところをお聞かせ下さい。
〇石会長
まあいろんな意見が出てくるのはしようがない話だし、今日、ある人が税調というのはいつもですね、毅然とした態度で繰り返し自説を述べなきゃいけないということを言ってた委員もありますようにですね、まあ都議会選とぶつかっちゃったとか、いわゆる所得税だけ中心にやったとか、いろいろ反省事項はあるにしてもですね、我々のやった論点整理が全部ですね、政治的にも無視されたり、あるいは政策的に葬り去られたわけでもございませんからね、それなりの役割は十分果たしていると思います。まあその後いろいろ、今日、さまざまなご意見が出たし、僕は何も出ないとかえって困ると思ってましたけれども、皆さんがどういう意向をお持ちかということもわかりましたので、まあこれからですね、そういうことを少し参考にしてですね、議論を進めていくには十分に参考になったかと思います。
ただ、あえて私の個人的な感触を述べると、税制だけで議論するのはもう限界ですね、はっきり言って。要するに、税調というのは税制の改革をすればいいと言われてますけど、今、世の中で要求されてるのは、まさに今後の少子・高齢化も踏まえ、仮にですよ、財政需要に対して増税が必要だということにしてもですね、まず前提条件、歳出カットなり行革なりやって出てこいという話なのに、税の議論だけまとめてね、幾ら条件をつけて、これは後から出ますよと言っても、先に出たと思われますから、そこでいろいろご批判があったんだと思ってます。まあそういう意味で、経済財政諮問会議も本格的に公務員改革までいく、人件費抑制までいくし、政府系金融機関の改革までいく等々やっておりますので、これから財制審も含め、歳出カットの歩調が合うんだと思いますので、まあそれと呼応してですね、やるべきでしょう。ひとつ税制だけ飛び出てですね、世の中に議論を提示するというやり方はもう限界だと思ってます。私はできたらトータルでまとめる、要するに「財政再建諮問会議」みたいのがあればいいなと思ってまして、今回、財政改革研究会がああいうことをやってくれたのは非常にウェルカムです。あるいは諮問会議の方々がですね、歳出歳入一体改革の選択肢を骨太で6月に出したいと言ってますから、まあそういうのをベースにして、とりあえず税制のパーツがどれだけの役割を果たすべきかということをはっきり決めてもらわないと、税制改革の論議は難しいと、私はつくづく今回の一連の経験を踏まえて思いました。それが率直な感想ですね。
(以上)