第33回総会 議事録

平成17年10月25日開催

石会長

それでは、大臣がお見えになりましたので、今日の総会を開始いたしたいと思います。今日は大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

また、お忙しい中、谷垣財務大臣にお越しいただきましたし、今お見えですが、田野瀬、上田両財務副大臣、お見えでございます。それから、総務省から今井副大臣も来ていただきました。

さらに、財務省から事務次官の細川さんにも今日はご出席いただいております。

今日は久しぶりの総会ということもございまして、これまでいろいろなことが起きておりますので、国や地方の税財政の現状をひと通りご報告いただきまして、年度改正等についてどういうことを議論するかを、皆さんで自由にご議論いただきたいと考えております。

まず、秋の審議の開始にあたりまして、谷垣財務大臣と今井総務副大臣から、ご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

谷垣財務大臣

第33回の税制調査会総会が開催されるにあたりまして、一言ご挨拶申し上げたいと存じます。

まず初めに、石会長はじめ税制調査会の委員の先生方におかれましては、日ごろより、税制改革の実現に向けまして精力的なご議論を賜っておりますこと、まず心から御礼を申し上げたいと思っております。

先般の総選挙におきまして、小泉内閣の掲げる構造改革につきまして、国民の大きな期待と支持があるということが示されたのではないかと思っております。中でも、子供や孫の世代にツケを先送りしない財政体質を早くつくってほしいという声につきましては、私自身、今回の選挙戦を通じて肌身に染みて感じてきたところでございまして、国民の関心は非常に高い、このように感じているところでございます。

こういう国民の期待と関心に応えていくためには、郵政に続く最大の課題は財政構造の改革である、財政の再建である、こういう認識の下に私どもの課題、これは待ったなしだ、こういう気持ちで取り組みたいと覚悟を新たにしたところでございます。

このため、社会保障制度改革、三位一体の改革、こういったさまざまな制度改革を進めてまいりますとともに、歳入・歳出両面からの財政構造の改革に全力を挙げて当たらなければならないと考えております。来年半ばを目途に、歳入・歳出一体の財政構造改革についての工程表といいますか、目途を示すことになっておりまして、今後、基礎的財政収支の改善に向けて中期的取組に関する議論を進めてまいりたい、このように考えております。

特に小泉内閣の改革の総仕上げとなります平成18年度予算につきましては、そういう議論の土台となるような、足場固めができるような予算を組んでいきたい、そのために徹底した歳出改革に取り組みたい、このように考えているところでございます。そのために、一般歳出の規模を平成17年度よりもさらに圧縮したいということと、新規国債発行額につきましても平成17年度を上回る規模で減額したい、こういう2つの方針を掲げまして、歳出全般について従来にも増して大胆に見直していきたいと考えております。

他方、税制改革につきましては、社会共通の費用を広く分かち合っていただくということともに、経済社会の持続的な活性化を図らなければならない、こういう観点から、個人所得課税、消費課税、法人課税、資産課税など、税体系全体を総合的に検討して、国民的な議論を深めていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

平成18年度の税制改正におきましては、三位一体改革の一環といたしまして、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲が課題となっておりますし、また、定率減税の取扱いについては経済状況を踏まえて議論していく必要があろうかと思っております。このほか、平成15年度改正で実施しました政策減税の取扱いをどうするかといったようなことが、大きな課題となっていると存じます。

委員の先生方におかれましては、こうした課題につきまして、これまでの議論に引き続き、適切な指針をお与えいただきますように心からお願い申し上げる次第でございます。

最後になりましたが、石会長先生はじめ皆様方の多大なるご尽力に改めて感謝させていただきまして、私のご挨拶を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。

石会長

どうもありがとうございました。

それでは、今井副大臣、よろしくお願いします。

今井総務副大臣

今井でございますが、税制調査会の第33回総会にあたりまして、一言ご挨拶を申し述べさせていただきます。

平素より大変ご熱心に、石会長はじめ各委員の先生方にご指導賜っているわけでありまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。今日から、18年度の税制改正に関するご審議を開始されるとのことでございます。総務省が預かっております地方税につきましても様々な課題があるわけでございまして、どうぞよろしくご指導ください。

先日、郵政民営化法案が成立いたしました。いよいよ次は、国から地方への改革をいかに意義あるものにできるかが問われているところだと思います。当面、18年度の予算と税制改正で三位一体の改革を確実に実現させていただきたい、こういうふうに思っています。補助金改革内容のとりまとめでございますが、間もなく山場を迎えることになります。これにしっかりとした結論を出しまして、今回の税制改正で3兆円の税源移譲を行う法案を通させていただきたい、このように考えております。

先ほど谷垣財務大臣からもお話がございましたが、税源移譲の方法についてでございます。既に石先生の政府税調でも、個人住民税の税率をフラット化する方向で所得税から個人住民税への税源移譲を行うべきとのご答申を頂戴させていただいているところでございます。具体的には、個人住民税を10%、比例税率化することによって、3兆円の税源移譲を確実に実施したいと考えているところでございます。国・地方を通じた財政収支を改善しながら行政の質を高めていくためには、地方分権をさらに進めることが不可欠でございます。そのためには、分権時代にふさわしい地方税中心の歳入構造の実現が課題になるわけでございます。

今後の改革の目標でございますけれども、4点ばかり申し上げたいと思います。まず1点は、税源偏在の縮小、次に安定性の向上、さらには、地方歳入中の地方税割合の向上をぜひしていきたい。そして最後には、国と地方の税源配分の見直しなどをご議論賜りたい、ご指導いただきたいと思っている次第でございます。

さて、ご案内のように平成の大合併でございますが、平成11年には3,232 の市町村があったわけでございますが、今年度末で1,821 市町村になります。したがって1,411 の市町村が合併して、その町の名前がなくなる、こういうことになるわけでございます。集中改革プランに基づく地方行革の推進など、地方のスリム化努力は大きく進行しているところでございます。

一方で、少子高齢化が進む中、福祉、環境、教育、防災など、地方の役割はますます重要になってきているところでございます。各委員の先生方におかれましては、こうした地方行政を取り巻く情勢や地方分権の重要性につきまして、深いご理解を賜り、地方税をめぐる諸課題につきまして今後とも十分ご審議をいただき、ご指導賜りますように、心からお願い申し上げまして、ご挨拶にかえさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

石会長

どうもありがとうございました。今、財務大臣・総務副大臣から、決意表明を含めてご挨拶をいただきました。大変お忙しいとは思いますが、大臣には若干のお時間をいただきまして、せっかくの機会でございますから、税調の委員からいろいろご質問なりご注文なりあろうかと思いますので、一、二、質疑応答という機会を設けさせていただきたいと思います。

では、村上さん、どうぞ。

村上委員

谷垣大臣、先ほど、きちんと歳入・歳出両面からの一体改革の決意を述べられたわけですけれども、今日もそこでやっていますように、国民一般の受けとめ方はどちらかというと、まず初めに増税ありきだということだと思います。

しかし、選挙の結果などを見ますと、払うべき理由があればきちんと払うという賢い国民だと思うのですが、政府税調の側から見ますと、増税、増税という話が先に出るのでは審議は前へ進まないのではないか。やはり歳出について目に見える形で姿勢を示していただかないと、なかなか難しいのではないかと思いますので、改めて歳出についてのご決意を伺いたいと思います。

谷垣財務大臣

今お話がありましたように、私も全く今おっしゃったのと同じ感じを持っております。今年、一般会計予算が82兆2,000億円で、うち税収が44兆円ですから、これは税をいじらないと、どこかでそういうことは不可避であるという気持ちを私は当然持っておりますけれども、それをやるについては、相当歳出カットに踏み込んだなということがなければ、なかなか事は進まないのだろうと思っております。今までも選挙の最中に言っておりましたのは、公共事業に関しても4割ぐらい圧縮してきたし、また、全体では社会保障経費を含めて10兆円ぐらい削減といいますか、改革をやってきたということを申し上げているわけですが、なかなか胃の腑にポンと落ちたというふうにはなっていないのだろうと思います。

先ほど2つばかり、当面、予算編成を組んでいくときの目標を申し上げました。1つは、一般歳出を前年度より圧縮したいということでございます。もう一つは、17年度、2.2兆円、国債発行額を抑制したわけですけれども、来年度予算にはそれ以上の抑制ができるようにもっていきたいという目標を立てております。

率直に言いまして、相当きつい目標であるなあという感じも持っておりますが、何とかこれを達成して、歳入だけではなく、歳出のほうが相当先行して頑張っているという姿をつくりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

石会長

ぜひ、こちらもよろしくお願いします。我々だけ詳細なるものを先行して出しますと大体叩かれますので、今度は少しゆっくりという気もないではないのですが、先行部隊をいっぱいつくっていただかないと議論になりません。

まだお話を伺いたいのですが、谷垣大臣、今井副大臣、細川財務事務次官、ご予定があるということでございますので、またいずれこういう機会を設けたいと思いますので、今日はこれで。どうもありがとうございました。

〔谷垣財務大臣、今井総務副大臣退席〕

石会長

それでは、今日の審議に入る前に、委員と事務局に異動がございましたので、簡単にご紹介いたしておきます。

10月15日付で千速晃委員がご退任になりました。そのかわりに同日付で、伊藤忠商事の会長をされております丹羽宇一郎さんが委員として新しく加わられます。

それから、4月5日付で吉岡初子委員がご退任になっておりまして、今回、10月15日付で消費生活専門相談員をなされております、岡田ヒロミ委員が任命されました。

残念ながら、お二人、今日は所用の都合でお見えになっておりませんので、次回お見えのときにご紹介いたしたい、このように思います。

それから、事務局にもかなり異動がございました。最初にご紹介するのは、総務省の板倉局長が、今回、消防庁長官に転出され、その後任といたしまして、自治大学校の校長先生をされておりました小室さんが局長としてお戻りになりました。よろしくお願いします。

小室自治税務局長

小室でございます。また、よろしくお願いいたします。

石会長

主税局のほうでかなり大幅な異動がございまして、一々紹介いたしておりますと、5~6分時間がかかりますので、はなはだ失礼なのですが、一覧表にしてお手元に資料がございますので、「主税局異動状況」というのをご覧いただきまして、これにかえさせていただきます。ご挨拶をいただくことがなく申し訳ございません。

それでは、これから議事に入りたいと思います。

今日は、国・地方合わせまして、税制の現状と課題につきましてさっとご説明いただきます。また、国の財政状況につきましても、今日は主計局調査課長の岡本さんに来ていただいていますので、併せてご説明いただくという、事務局からのご説明を続けて伺ったあとで時間を割いて議論いたしたいと思います。

それでは、主税局総務課長の永長さんから、最初によろしく。

永長総務課長

お手元の「総33-1」という資料でございます。「わが国税制の現状と課題」という冊子がございます。

目次をめくっていただきまして、1ページでございます。まず最初に、足元の税収の状況でございます。この1ページ、16年度の一般会計税収決算額が出ております。これは確定した数字でございます。15年度、前の年の決算額との比較で表にしてございます。所得税、法人税、それぞれ伸びております。消費税も伸びている。一般会計分の合計で、対前年度で2兆3,000億円ほどのプラスになったわけでございます。

所得税、給与総額が下げ止まった、回復してきている、こういう状況もございます。ただ、なかなか就労構造等が激変いたしません。ドラスティックな回復というのはなかなか難しいかなと。最近の動きでは、配当からあがってきます所得税が伸びているという状況がございます。

その下の法人税でございます。ご覧いただきますように、伸び幅としては一番大きいものがございました。企業業績が回復してきているということでございます。

ただ、繰越欠損が、直近わかっている数字では15年分70兆円以上でございまして、当期利益のトータルの2倍程度あるということで、現在、法人税が回復してきていますのは、ここ数年間もちゃんと税金を納めていた、そこが納める税金が多くなった。今まで納めていたわけでなかったところがどんどん納め始めているという状況にはございません。ということで、たしかにボトムは脱したかなと思いつつ、法人税収も急に回復するという状況にはないということでございます。

消費税は、個人消費の動向に応じて着実に推移しております。

次の2ページ、3ページ、それから4ページが税目別でございます。

さらに、5ページをご覧いただきたいと思います。中期的な税収減の主な要因についてということで、先ほど申しました16年度決算、この下のほうに書いてございます、45.6兆円。今までのピークの税収であった60.1兆円、平成2年度でございますが、その差額を分析したものでございます。平成9年度で、株価、地価、こういったものを見ますと、大体バブル税収ははげ落ちたかなということで、平成9年度と平成2年度の差、6兆円余、これがバブル税収であった。さらに決算ベースで言うと、8.3兆円、税収が減っております。

9年度以降、いわゆるアジア通貨危機、わが国における金融不安等々があって、経済的なスランプがあったわけでございますが、それに対応するためにもということで減税をいろいろ打ってきた。この間やってきた減税、すべて足し上げますと7.6兆円。これは右上のところに書いてございます。減ったのが8.3 兆円で、そのうち税制改正、いわゆる政策的に行った制度改正等々、これが7.6 兆円ございまして、その残差が0.7 兆円。経済的要因等による減収、残差、これはだんだん小さくなってきている、こういう状況にございます。

次の6ページ、いわゆる租税負担率、国民負担率の議論がございます。もう既にご案内だと思いますので、割愛いたします。

さらに8ページからは、これも「実像把握」で何度もご覧いただいております。8ページ、9ページあたりが、人口減少、高齢化、さらには10ページ、社会保障の給付と負担の見通しということで、現行制度での今後の給付の見通し。さらに下側にはその負担の見通し。税金で賄わなければいけない公費負担の金額がどんどん上がる、これは人口減少、高齢化というところでございます。

11ページ、これも何度もご覧いただいていますが、右肩上がり経済が終焉した経済社会の成熟化というところでございます。

12ページが家族、それから13ページが雇用・労働のあり方の変化。何度もご覧いただいています。

14ページに、いわゆる「実像把握」のサマリー版でございます。先ほどざっと目を通していただいた、いろいろな社会経済構造の変化、それを税調でまとめていただいたものでございます。

そういったことをベースにいたしまして、15ページに、今年の6月に基礎小でおまとめいただいた、「個人所得課税に関する論点整理」の概要でございます。同じ税収を所得税でいただくにしても、中身として、世の中の動き、流れに即したものになっているのか、こういう問題意識を我々は頂戴いたしました。いろいろなご論議もございました。例えば、各種所得の中で給与所得控除、これを一律な形でいいのだろうか。むしろサラリーマンにもいろいろなタイプが出てきている。柔軟なものにするべきではないか、こういうご指摘も頂戴しておったのですが、この辺につきまして、いわゆるサラリーマン狙い撃ち、そういうことのないようにというご論議が各方面で行われたということでございます。

次の16ページは非営利法人、これも時を同じくしておまとめいただいたものでございます。

17ページでございます。ここからが18年度改正の主要課題でございます。

1つ目、「税源移譲」でございます。基本的な考え方は、過去17年度答申、16年度答申でもご指摘いただいております。アンダーラインのところを見ていただきますと、個人住民税の「所得割の税率のフラット化を行う」、所得税については、「所得再分配機能の適切な発揮を求める」。線を引いておりませんが、その2行下、「個々の納税者に係る税負担の変動にも十分留意する」。このように、税源移譲に関しましては基本的な考え方をすでにお示しいただいております。

現在、補助金改革の検討、先ほど総務副大臣からもお話がございました。山場を迎えております。来月中を目途に3兆円の税源移譲に裏付けされる補助金改革の姿が決まる。これを受けまして、事務当局におきまして具体的制度設計を行う、こういう運びとなっております。

18ページ、2つ目の課題といたしましては「定率減税」がございます。これにつきましても、これまでの答申でご指摘を頂戴しております。アンダーラインのところをご覧いただきますと、17年度答申では、「定率減税については平成18年度までに廃止すべき」。急にやるといかんということで、「段階的に取り組むことが適当」ということで、17年度に半分にさせていただいております。

こういう基本的な考え方は既にお示しいただいておりまして、あとは経済状況、この認識を政府として固めまして、年末に政府・与党で方針を決定する。そういう意味では、ボールは政府・与党に現在あろうかということでございます。

次の19ページでございます。「政策減税」となっておりますが、平成15年度税制改正におきまして、集中・重点的にということで幾つかの政策減税を行いました。

一般的な租税特別措置に関する言い方は、17年度答申、1つ目のところに書いてございますが、「有効な政策税制への集中・重点化を図る」、このようになっております。

さらに今回、15年度改正で入った、これが3年間の期限で15、16、17、これが今年切れるということで、その取扱いをどうするかとなっているわけですが、この導入した際の答申が下半分でございます。基本的には、「期限を区切り、重点的な政策税制を講じる」、こういうご指摘を頂戴したものでございます。

ただ、研究開発減税、[1]のところをご覧いただきたいと思いますが、4行目、「制度の基幹的部分は期限を区切らない措置とする」、このようになっております。R&D減税の本体部分は期限がございません。その上乗せの部分が期限が来る、こういうことでございます。

最後のページ、20ページ、「酒税」がございます。これにつきましても基本的な考え方は、アンダーラインをご覧いただきますと、「税制の中立性や公平性を確保する観点から適切に対応できるよう、酒類の分類の簡素化を図り、酒類間の税負担格差を縮小する方向で早急かつ包括的に見直すべきである」、このようにご指摘いただいております。

それから「道路特定財源」、これは実は再来年、19年度に道路財源がオーバーフローするという事態が招来いたします。こういったことを踏まえまして、総理から財務大臣に対しまして、この取扱いを今後どうするのか、年内に基本方針を検討すべしというご指示を頂戴いたしております。

この問題につきまして、14年6月、いわゆる「あるべき税制の構築に向けた基本方針」、ここでご議論賜っておりまして、ここもアンダーラインを中心にご紹介いたしますが、「特定財源等は、財源確保に有効な仕組みではあるが、一方では資源の適正な配分を歪め,財政の硬直化を招くおそれもあり、常にその妥当性を吟味」と。その2行下あたりですが、「歳出面を含めた基本的なあり方」、歳出のあり方についてしっかり議論をせいと。基本的には、「一般財源化を含め、そのあり方の見直しを行うべき」ということで、一般財源ということに軸足を置いたご議論を頂戴しております。

その下のアンダーラインですが、「道路特定財源等を含むエネルギー関係諸税等については、わが国の自動車に係る税負担全体が国際的にみても高くない水準にあり、自動車の社会的コストや環境の保全の観点に鑑みれば、その税負担水準を引き下げることは適当ではない」、基本的にはこのようなご指摘を頂戴しております。

いずれにしましても、来月に入りまして、これらの主要課題につきまして資料を整えましてご説明いたしたいと思います。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。ご質問はあろうかと思いますが、あとお二人、事務局側からご説明を聞きまして、一括審議いたしたいと思っております。

それでは、主計局の岡本調査課長、国の財政のほうの現状をご説明ください。

岡本主計局調査課長

主計局調査課長の岡本でございます。よろしくお願いいたします。お手元の資料「総33-2」と打たれました資料、「わが国財政の現状と課題~平成18年度予算編成の課題~」ということで、現在取り組んでおります平成18年度予算編成の課題につきまして、簡単にご説明させていただきます。

1ページ目に全体をとりまとめさせていただいておりますが、上の段は、言うまでもなく現在の財政の中長期的な目標ということで、2010年代初頭の国・地方を通じた基礎的財政収支の黒字化に取り組んでいるわけでございますが、一方、2005年度、国の一般会計で見た場合に15.9兆円の基礎的財政収支の赤字となってございます。これを財制審におきまして、この春、本日ご出席の田近委員他に試算を提出していただきました。そうした長期試算の中で、現在の財政状況をそのまま放置すると、10年後にはプライマリー赤字が24.9兆円にまで膨れ上がる。

また、この増加の最大の要因は社会保障なわけですけれども、仮に社会保障給付を、経済財政諮問会議等で議論が行われております、仮に経済成長率並みに抑制するとした場合におきましても、やはり20兆円にまで拡大するということでございます。

こういった中で、歳入・歳出一体の改革が必要だということでございますが、まずもってすべての歳出分野における歳出削減に取り組むという方針で、この18年度予算編成に取り組んでいるところでございます。

下のところ、1番目でございますが、先ほど大臣の挨拶の中でございましたように、まだ18年度予算編成が始まって主な話は全くこれからでございますけれども、厳しい目標を立てるということで、一般歳出につきましては、前年度に引き続き前年度より減額する。また、新規国債発行額、前年2.2兆円の減額を行いましたが、それを上回る規模で減額するという方針をあえて打ち出しております。

そういった中で大きな話としては、下の4つでございますが、まずは社会保障。これにつきましては、特に医療制度改革が今回大きな議論となります。先週、厚生労働省のほうからも改革案が示されましたが、その中で幾つかの選択肢、また、財務大臣から厚生労働大臣に対しまして、こういった点を検討してもらいたいといったような投げかけをしております。具体的な議論がこれから行われてまいりますが、診療報酬や介護報酬の改定といったようなことも含めまして、自然増の大幅な削減に財政当局としては取り組んでいきたいというふうに考えております。

また、三位一体改革につきましては、昨年に引き続きまして幾つかの大きな課題が残されてございます。補助金改革をしっかり進めるとともに、税源移譲をきちんとやるという問題がございます。また併せて、交付税の改革にも取り組んでいきたいということでございます。

また、総人件費の改革という問題がございます。財政構造改革を進めていく中で人件費の縮減に取り組むということで、これも経済財政諮問会議で基本方針をこの秋までに策定するということで検討をしていただいているところでございます。その後、この計画から、実行計画、さらには順次反映させていくということになります。

また、特別会計につきましてもさまざまな議論が行われておりまして、現在、財制審におきましても、事務・事業の徹底した見直しと、また、特別会計・勘定の統廃合といったことも視野に入れた検討を現在行っているところでございます。

主なことにつきましてはこのようなことに取り組んでおりまして、2ページ目は、18年度予算の概算要求基準のときに示された姿でございます。一番左側の年金・医療、これがこのままですと、約8,000億円、自然増がある中でございますが、まず概算要求段階で2,200 億円の削減合理化を織り込んだ要求をしていただくことになっております。ただ、さらなる削減が必要ということで、先ほど申し上げたような課題にこれから取り組む中でこの圧縮を図っていく。

また、概算要求段階で、右側の裁量的経費、公共投資関係費につきましては、対前年度3%のマイナスという枠の中で要求をしてもらっております。ただ、それに加えて要望額ということで、2割増の上乗せの要望額がございます。これで全体の要望額は、一番右角下の約50兆円ということになっておりますが、これを、概算要求額の真ん中にあります、対前年度2,599 億円、この枠の中におさめるのは当然のことながら、さらに、これを前年より下回るところまで歳出削減に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

4ページでございます。近年の歳出削減の努力の中で、主要経費ごとに、特に小泉内閣になって以降の歳出改革の中で、全体的に歳出削減に取り組んでいるところでございますが、どうしても社会保障につきましては、高齢化に伴います増がある中で、社会保障以外を13年度から17年度、これは当初予算比でございますけれども、全体で13%以上削減している中で、社会保障が伸びるということで、全体としての削減はどうしても小さくならざるを得ない、こういう構造にあるわけでございます。そういった中で特に今回の医療改革というのは、非常に大きな課題として取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

最後、5ページでございます。大臣のご挨拶の中にもございました、今年の「骨太方針」におきまして、おおむね来年の夏ごろを目途にということでございますが、下のほうにアンダーラインを引いているところでございます。「支出規模の目安や主な歳出分野についての国・地方を通じた中期的な目標、さらには、歳入面の在り方を一体的に検討し、経済財政諮問会議における議論等を通じて、改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにする」というふうにされております。

年が明けて、次はこういった大きな議論が行われるということでございますので、まずは18年度予算におきまして、まさにこういった議論につながる土台固めといたしまして、先ほど申し上げたような大きな課題にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

それでは、地方税関係、株丹さん、お願いします。

株丹企画課長

税と財政、二人で分担いたしまして、ご説明させていただきたいと思います。「総33-4 地方税制の現状と課題」をまずご覧いただきたいと思います。

目次の次、1ページでございます。平成16年度の地方税の決算、まだ見込ということでございますが、こちらに16年度の数字、Bのところですが、33兆5,000億円ほどで、その次のところに前年度との対比を入れています。8,500 億円ほどプラスです。主な税目、上のほうに内訳を入れていますが、プラス分のほとんどが法人関係の税です。全体の伸びとしては2.6%となっています。所得税と個人住民税というふうに、同じような課税標準なり、似たようなものを採用しているところではあるのですが、ちょっと伸びが違います。国税と若干違いますのは、年度区分等の関係で違うところがあるということです。

2ページ目に、国税と地方税、税の構成をご覧いただくということで図を出しています。ご覧いただければと思います。

3ページは、さらに詳しい内訳です。都道府県と市町村の内訳を見ればどうなるだろうかというものを入れています。

4ページにまいりますと、これまでの地方税収入の推移。ちょっと個別の税目で見づらい部分もございますが、これまでの税収の推移です。

5ページ以降に、今後の課題と関連します資料を幾つかつけさせていただいています。1つ目が、5ページですが、歳入総額に占める地方税の割合です。過去には40%を超えるようなときもあったわけですが、直近では35%を下回る程度です。私どもとしては、もう少し地方税中心の財政運営とすべきであると考えますと、このパーセンテージを何とか充実を図っていかなければいけないのではないかということです。

次、6ページをご覧いただきたいと思います。何度もご覧いただいている表だろうと思いますが、国と地方の財源配分ということで、国民から租税として負担いただいているもの、国税と地方税で内訳を見ますと、国税が58.1%、地方税41.9%、他方で国民へのサービス還元というところで、純計ベースで見ますと、そのウエートがちょうど逆転をしている。38.0%、62.0%というウエートになっている。もう少し直接的に地方税でご負担いただくことも含めて考えてはどうか、こういうことでございます。

それから、7ページです。ちょっと左側の端の字が小さいですが、左のほうから地方税全体、それと地方税の基幹税につきまして、人口1人当たり税収額を全国平均を100 とした場合に、市町村の税金も入っていますけれども、それを区別せずに、都道府県単位でもって比較したものです。いわば税源の偏在の度合いがどの程度あるか、こういうことでございまして、どうしても経済活動等との関係があって特定のところに偏在している。その中で、個別の税目で見ますと偏在度の低いものもある、こういうことでございます。こういうことを踏まえて、税源偏在の縮小を図っていかなければいけないということです。

8ページに、地方分権の推進と三位一体の改革ということで、これまでの経緯を掲げてございます。先ほど総務副大臣のお話にもありましたが、現在は、3兆円の税源移譲のいわば前提といいましょうか、国庫補助負担金の改革の非常に大事なところに来ているということです。一番下のところに地方6団体、6,000 億円、残る部分の改革案というものに対応する改革案をもう一度出していただいたということで、現在、これの調整を政府部内で懸命にやっていただいている、こういうことでございます。

9ページに、関連しての資料をつけさせていただいております。税源移譲につきましては概ね3兆円規模を目指すということで、その手法につきましては、すでにここで.でるお話があったわけでございますが、「所得税から個人住民税へ」、そして「所得割の税率をフラット化することを基本」ということが「骨太2005」に書かれております。

10ページ以下に、18年度の地方税の主な論点ということで整理をさせていただいておりますが、10%は税源移譲でございます。先ほど国税のところでもお話がございました。内容は同じですので、省略させていただきます。

11ページが、2つ目、定率減税です。これも所得税とともに、地方の個人住民税につきましても同一の課題がございますので、11ページに整理させていただいております。

12ページです。固定資産税の答申、これは3年前の「あるべき税制の構築に向けた基本方針」を参考までに掲げさせていただいておりますが、固定資産税につきましては、3年に一度、評価替えをいたします。その際に今後の税制のあり方をご議論いただいて、決めていくことをお願いするということになっています。基本的な論点としては3年前と大きくは変わっておらないということで、参考として出させていただきますが、固定資産税につきましては、税源の偏在も少なく市町村税としてふさわしい。ただ、現在はまだ負担を調整する最中にあるということで、その点をさらに促進するべきではないか、こういう論点でございます。

地方税につきましても、今後、さらに深めてご論議をいただければと思っております。

石会長

それでは、財政のほうをお願いします。

佐藤自治財政局財政課長

お手元の資料の「総33-5」でご説明を申し上げます。

1ページですが、地方財政は大変厳しい現状にございます。まず、毎年度10兆円を上回る大変大きな収支の財源不足が生じております。そこにございますように、通常収支の不足で7.5兆円、それから、恒久的な減税によるものとして3.5 兆円弱ということで、大きな財源不足が毎年度生じているということです。

この不足を補てんするのにやむを得ず地方債などで手当をいたしていることもあり、地方債の依存度も高い水準で推移しておりまして、17年度では14.6%になっております。

こうした補てん策、あるいは景気対策のための公共投資の追加などの要素で、地方債をはじめとした借金で対応せざるを得なかったということもありまして、借入金残高も平成17年度末で205兆円にまで達するようになっております。

3点目に、個別地方団体の財政状況も一段と硬直化し、厳しい状況になっております。経常収支比率などの財政構造の弾力性を示す指標が、10年前と比べて著しく悪化しているという状況にございます。

2ページですが、地方財源不足の経年の変化と主な要因を分析したものです。折れ線グラフが財源不足の変化で、平成5年度はほぼ収支均衡の状況にありましたが、平成6年度以降、大きな財源不足を生ずるようになり、平成17年度で11.2兆円という額になっているということです。

棒グラフはその要因を示しております。すなわち歳出の増要素と歳入の減要素を分析したもので、平成5年度との比較においてどうなっているかを示したものです。歳出面におきましては、大きなものは一番下の黒いところです。これは社会保障関係費の増です。それから、一番上の少し薄く塗ってあるところ、これは公債費の増で、景気対策として地方債を活用して公共投資を拡大してまいりました。その元利償還金が大変大きな負担になっているということでございます。それから、中ほどの斜線と薄く塗ったところは、歳入面の減要素としての減税と景気低迷による減収、それぞれ大きな要素となっております。

近年は、歳出面について大変厳しい抑制をしてきておりますために財源不足は縮小する方向にはありますが、なおかなりの額になっているということでございます。

3ページをご覧いただきますと、これは歳出の抑制の状況を示すものでございまして、公債費を除く一般歳出の状況を示しております。ここ数年、大きく減少させておりまして、平成17年度で見ますと、ほぼ平成5年度の水準ぐらいまで下がってきております。この歳出の抑制は、先ほど申しましたように社会保障の増などの増分はありますが、主として人件費や、地方が単独で行う施策の抑制を図ることによって、こうした全体としての抑制の姿を打ち出してきたということでございます。

4ページは、ストックとしての借入金残高の状況でございます。平成17年度で205兆円ということになっていまして、平成3年度の約3倍の水準にまで増加いたしております。

次に5ページですが、今後も我々は地方財政の歳出の抑制に努力する必要があると考えておりまして、そのうちの一つの例として人件費の抑制についてご説明したいと思います。国・地方を通じて総人件費の抑制が今後の大きなテーマになってきておりますが、地方公務員308万人おりますものですから、これについても定員と給与水準の両面からの改革が必要だろうと考えております。

このページの一番下に書いてございますが、今年の3月に我々は「新地方行革指針」というものをつくりまして地方団体に示しました。今後5年間の「集中改革プラン」を全団体で策定してもらいますが、特に定員については数値目標を明確にしてくださいということをお願いしています。その目標として示しましたのが、過去5年間、地方公務員は4.6%の純減をしておりますので、今後の5年間においてもそれを上回ることを目指してほしいというお願いをしております。

実はこれ、地方にとって大変厳しい目標になっております。といいますのは、上の左の円グラフをご覧いただきますと、308 万人、地方公務員はいるわけですが、このうち国が法令などで職員配置の数とか基準を定めているもの、教育、警察、消防、こういったものが半分以上あります。したがって、こうした国の規制といいますか、そういった縛りも緩和してもらう必要があると思いますが、そうしたものも含めて何とか達成できるように努力してもらいたいということで、今、地方団体を督励しているところでございます。

もう一方で6ページですが、給与水準のほうです。ラスパイレス指数で国家公務員給与と比較することを行ってまいりましたが、右側のグラフを見ていただきますと、平成16年で100を切りました。97.9という水準になっています。左の棒グラフですが、すでに9割以上の団体では国以下の水準になっております。

この夏に人事院から給与構造見直しの勧告が出されまして、地方も、当面これに準じて見直しを行ってもらいたいということを申しておりますが、これによって6,000 億円程度の人件費を削減する効果が出てくるだろうというふうに我々は思っております。そういったものも含めて、今後、抑制に向けた努力を地方団体に求めていきたいというふうに考えております。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。今、国と地方、財政と税制2つに分けまして、事務局からご説明をいただきました。残り70分ほど時間がありますが、今日はキックオフでございまして、来年度の税制改正に絡めてどういうテーマをどういう形で審議するかということが大きな狙いでございます。国税で5つ、地方税で3つ、事務局から検討すべき課題を出してもらいました。それ以外にも委員の先生方から見ると何かあるでしょうし、これから自由に、どういう問題をどういう形で取り上げるかということにつきまして積極的なご提案をいただきたい。それを受けて来月に入りまして、基礎小と総会、いつもの順を追った討議を経まして、来月末に答申をまとめたいというスケジュールを持っております。

そういう意味で今日は最初の日でありますので、問題設定におきまして重要でございますので、なるべく多くの委員の方からご発言をいただきたい、このように考えております。国・地方、財政、税制、どちらの話でも結構でございますから、自由にご検討ください。

島田さん、どうぞ。

島田委員

先ほど会長が大臣に言われた点で、税調がサラリーマン狙い撃ちのどうのこうのという批判がずいぶんありましたけれども、政府は節約を全力でやっているということを前提にしないと、税調で増税路線と言われるようなことを実現するのは非常に難しいというポイントで、私も大賛成で、そこのところは強調してもし過ぎることはないと思います。

そこで、さっきのご説明の資料「わが国の財政の現状と課題」の1ページを開いていただきたいのですけれども、「平成18年度における歳出改革路線の堅持・強化」。これは、大変努力していることはよくわかります。歳出全体の圧縮、社会保障、三位一体、総人件費。その中で特に社会保障で一つお伺いしたいのですけれども、医療制度改革です。医療制度改革について総額の数値目標といいますか、経済の長期展望あるいは高齢化との関係でこんな数値が必要だということ、経済財政諮問会議のほうで、なるべくそういう指標に沿ってやらなければいけないと。

厚労省はずいぶんそれに対していろいろな注文をつけているわけですけれども、私も精査していないのでよくわからないのですが、ちょっと教えていただきたいのは、医療制度は主体があるわけです。例えば患者さん、お医者さん、病院、製薬メーカー、それぞれがある制度のもとで合理的に行動しようとすると、医療費を抑制するように行動せざるを得ない仕掛けというのはあり得るんです。一つの例を言えば、患者さんについて償還払い制度みたいなものはフランスで前にやったことがあるようですけれども、とりあえず全額を取っておいて後で償還払いをするというと、かなりインパクトが強くて、節約しようという動きが国民のほうに出る。あるいはお医者さんについて言うと、包括標準日払い、これは一部日本でやっていますけれども、そういうのをしっかり入れると、お医者さんはいたずらに高い医療費は使わないようになる。

そういうインセンティブが働く仕掛けというのは幾つもあり得ると思うのですけれども、ちょっと教えていただきたいのは、今の議論の中でマクロの数値目標、気持ちはよくわかるのですが、そこへ収れんさせていくために、個々の主体が合理的に行動すると医療費を節約せざるを得なくなるようなインセンティブを入れるという動きは、どのくらいあるのか。諮問会議の議論を見ていてもちょっとよくわからないのと、厚労省の提案を見てもよくわからないのですが、そういうインセンティブに訴える仕掛けというのはちゃんと議論されているのですか。

石会長

では、岡本さんと、何だったら本間さんからも補足してもらいましょうか。

どうぞ岡本さん、先に。

岡本主計局調査課長

今の島田先生のご質問の中で、一つは、数値目標というものを経済成長を見ながらするべきだという議論があります。何らかの目標のもとではめ込む、そういったものを設けるべきだという議論をしておりますが、現在のそういった議論の中では、そういったものに向けて個々の具体的な改革をきちんと積み上げることは、現在、まさに予算編成の中で行われております。

その中で、先生のご指摘にピタリとあれするかどうかというのはありますけれども、例えば一つ、薬でいきますと、今、例えば非常に高い先発品が出ているとそちらをどんどん使うような仕組みになっている。それを、そうではなくて、むしろ安いものをできるだけ使うような仕組みにしたほうがいいのではないかとか、そういったようなこともございます。

あと大きな話といたしましては、高齢者の医療費がどんどん拡大している中で、高齢者を一律に弱者ととらえて非常に低い負担にするのはいかがなものかということで、ある程度の負担というのをバランスをとってやるべきではないか。そういった中で、過剰にサービスを受けるようになっている状況をむしろ改めるようにしていく方向での改革、そういったものを積み上げていかないと、どうしても医療費全体の給付そのものが落ちないという意識でさまざまな改革に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

石会長

本間さん、諮問会議でやられている議論で何か補足的にございますか。

本間委員

諮問会議では、マクロ的な経済状況といかに医療費を調整していくかということを、メカニズムとして設計できないかということで議論を進めてまいりました。島田委員がおっしゃるとおり、マクロで数値目標を設定してそれが実行できなければ意味がないわけでありまして、いかにインセンティブをつけていくかということが重要なポイントになるのだろうと思います。2001年から我々は初年度に、医療のミクロ的な部分につきましては医療効率化プログラムというものを提案いたしまして、今、島田委員がご指摘の、例えば、今、出来高払いになっておりますけれども、これを、包括的な形での支払い形式は一体どうあるべきかとか、様々なやり方についてミクロで提案をしているわけであります。しかし、現実の動きは、厚労省の施策のスタンスが必ずしも十分に対応してこなかったということもございます。

昨年から我々は、マクロ経済とリンクさせながらミクロを追い込むというインセンティブをつけていこうと。しかし、このマクロ的な目標というのは、決して数値目標として厳格なものであるということではございませんで、例えば5年間ぐらいの経済成長率、とりわけ名目成長率と医療費を定期的に比べながら身の丈に合うような状況をつくっていこうと。そのやり方について、厚生労働省から医療の構造改革の試案が中期答申として--これは宮島先生にお話しいただいたらいいと思いますが、いくぶん負担の部分だけにアクセントが置かれた中間報告が出ておりまして、今、島田委員がご指摘の、供給側に対するインセンティブをどのようにスキームとして入れ込むかというようなことは、今後の課題としてあるのだろうという具合に考えております。以上です。

石会長

まだあるかもしれませんが、医療はそれにして、では、河野さん、それから遠藤さん。どうぞ。

河野委員

さっきの会長の話で、1カ月くらいの間に答申を書けという話ですね。

石会長

年度改正です。

河野委員

主なテーマは説明がありました。その後のテーマをずらっと見れば、我々は、去年あたりを最終年にして5、6年さかのぼって見れば、大議論をやった結果、あるときにはきわめて明快なる線を出した。あるときはまだおぼろげな線しか挙げていない。2つありますけれども、いずれにしてもその間に事情の変化があるかもしれないので、それを含めてあと1カ月でものを書けというわけです。今、話を聞いていて私がざっと考えてみて、今まで出した税調の答申の基本線を変える必要はほとんどないだろう、アバウトですよ。それから、変えるべきでもないと思います。

第1に、定率減税の話があります。今、世間、マスコミも含めてそうだけれども、定率減税をこの税調はどういう議論をするのだろうかと。一番基本的なことは、これはマスコミ諸君にも良識を持って判断してもらいたいけれども、これは負担増ではあるけれども、増税の話ではないんです。増税の話は、我々が6月に出した、所得税をどう合理化するかという話で、これは長い時間をかけてぼちぼちやっていく話です。

今度の話は、小渕内閣時代に日本経済がぶっ倒れる寸前だという認識をみんなが持ったときに、異例のことをやったわけです。それが時間がたってみて去年あたり議論してみたら、もういいのではないかという話になって、はっきりやめるべきだと書いた。1年後の今の状況は、株からどこから全部突っついても、ここでやらなかったらもとへ戻すチャンスなんかありませんよ。これは異論のないところだと思います。いろいろなことを言うエコノミストはいるかもしれませんけれども、そんなことは大きな意見にならない。だから、これはこれできっちりと決まった線で粛々と議論すればいい。大きな声を出す必要もない。

2番目に、さっき大臣がちょっとおっしゃっていたけれども、この前の6月の我々の答申が批判されたわけです。石さんは増税の親玉みたいなことを言われて、政府税調というのは一体何考えているんだということを一般的に言われて、しかも総選挙の中で言ったから、選挙になれば政治的な発言は不規則になるんです。誰も非難しようと思いませんよ、自民党がマニフェストに何を書いたということは。考えてみれば、我々もこの話についてはずいぶんいろいろなことを言いたいけれども、まあまあ考えてみて政府税調には反省すべき点はあったかもしれない。それは、大きな税体系の中での役割を消費税から何から全部やるんだということは何べんも書いてあるけれども、世間の受けた印象は、所得税で真っ先にサラリーマンをいじめるのかというふうにとられてしまった経過があるんです、明らかに。これは2割3割の反省をしておかなければ我々も具合が悪いんです。

しかし、選挙が終わって、今日の新聞を見たら、与謝野さんが中心になって党のほうで財政の歳出から歳入に至るまで、しかも消費税も全部込みで、次の総理大臣を狙う人たちがもっとしやすいように全部プランを出してきたのです。あれは選挙で大勝したということで余裕があって、本当のことを言い出したということですよ。向こうは頑張って出ているのに、政府税調がシュリンクする必要は全くないと思います。ただ威張ることもないし、突出することもない。だけど、シュリンクする必要は全くないです。堂々と言うことを言わなかったらだめなんですね。

3番目に、三位一体。これは前から議論して決まっている話で、補助金をどう削減するかが政治的プロセスの最中にあるだけで、我々はそれは関知しない。しかし、3兆円はやることは決まっていて、しかも、財務省と総務省の間で綿密なテクニカルな調整が99%でき上がっているんです。みんなわかっている、そんなことは。これも大した議論にはならない。

ただ、この前の増税論議を見て思うことは、どこかの細かいところで非常に負担が変動するという層が出てくる可能性があります。これは小さいことかもしれないけれども、そこに本当に配慮が行き届くということをしっかりやらないと、そこで大きく問題を提起する人がいるかもしれない。

4番目に、道路財源の話。これは、小泉さんが元気いっぱい登場した頃にこれをやろうと言ったわけです。我々もそれにのっかって議論してみたけれども、総理は途中でおりてしまったんです。しかし、大勝したからもう一回繰り返してきたわけです。しかも今度は、構造改革全体に幅を広げた大議論をやろうというわけです。私は大賛成なんです。思い出してみれば、あのときにはこの税調の中でいろいろな議論があったけれども、そんなに簡単に一般財源化なんかできるかという議論もずいぶん多かった。そういう意見もあったけれども、「一般化に臨み」と書いてあるんです。文章を読んでみれば書いてありますよ。今になってみれば、もっとはっきりものが言えるようになりつつあることは間違いないです。ただ、特別会計をどうするかという議論についてはいろいろな選択肢があるわけで、税調はその議論をやっていません。今度だって党のほうはどこまで話が行くか知りませんけれども、少なくとも今までの大ざっぱな話よりも、これこそ踏み込んだ判断を示さないといけない仕事かなと。真面目に考えれば。

最後に政策減税。これは、過去十数年間の間でやった政策減税の中で一番有効であったと総理も考えて、みんなほめたという経過があります。しかし同時に、3年たったら見直すと明確に書いてあるわけです。この差はこうだから2兆円減らせとか、そういうふうに言われていると財務大臣はおっしゃったから、そういうこともあるなと思ってね。とにかくどういうふうに考えるか。しかし、時限的にやったということは事実なので、それを踏まえた上でどんな議論をやるかということはこれから課題だと思います。

石会長

ありがとうございました。何かもう結論が見えてきたようなご議論をいただきましたけれども、これから我々は、河野さんの意見も一つの参考にしていろいろ議論をという段取りかと思います。

では、遠藤さん、どうぞ。

遠藤委員

ぎりぎりで入ってくるときに、入口でアナウンサーが「いよいよ大増税時代の始まりです」とやってましたよ。マスコミはそういう目で見ているわけです。本当に税が足りないときに国民に負担していただくというのは、それはいいと思うのです。だけど、そういう状態であるのかどうかということをきちんとしなければいけないだろうと思います。

そこで、2つお伺いしたいのですが、一つは、主税局が出してくれた資料の5ページに、表の右側に経済要因等による減収が0.7兆円と書いてあります。その前の4ページに、法人税のピークが平成元年に19兆円あって、現在11.5兆円ということで8兆円ぐらい減っているわけです。何かで聞いたのですけれども、19兆円ぐらいあるときの企業収益が30数兆円だったというんですね。今、過去最高の企業収益で40数兆あるということで、何でそんなに過去最高の企業収益がありながら法人税収が少ないのかという理由がよくわからなかったのですが、話を聞いたら、繰越欠損が70兆円あるからそうなんですというお話ですけれども、繰越欠損がなくなってくれば法人税収が増えるわけです。そうすると、40数兆ある法人収益で繰越欠損がない場合、全然ないということはないでしょうけど、バブルの時代でもあったのでしょうが、その程度になったときに法人税収というのはどのくらい戻ってくるのか。19兆くらいではなくて、法人税率が少し下がったのかもしれませんけれども、20数兆になるとか30兆になるという話であれば、これは根本的に話は違ってきてしまうと思うのです。それが1点で、それがどの程度になるのかということをお聞きしたい。

もう一つは、主計局が出してくれた「参考資料」の1ページにも、経費区分の一体化ということで、従来の経費区分を年金・医療費等を除く義務的経費、裁量的経費、公共投資関係費を一体化するということですが、これはぜひやめてもらいたい。なぜかというと、私は前から言っているのですけれども、裁量的経費というのは義務的経費ではないわけです。ここのところがなぜ減らないのかというのがよくわからない。地方公共団体で、言ってみれば税を増やさなければいけないというような時代ですから、国の財政は財政再建団体なのです。そのときには裁量的経費なんていうのは徹底的に削り込まなければいけないわけです。いつまでたっても6~7兆円の裁量的経費は減らないわけですが、なぜ減らないのか説明してもらいたい。その2つです。

石会長

以上、2つにつきまして、まず永長さんから。

永長総務課長

ただいまご指摘の、主税局(資料)「総33-1」の5ページでございます。たしかにピーク時税収というのは18兆円、19兆円、法人税はございましたが、これはいわゆるバブル税収が含まれておりまして、その真ん中の9年度くらいで、地価の動き、株価の動き等々を見ていまして大体バブル税収はなくなったかなと。そのベースで申しますと、法人税収は13.5兆円でございます。そういう意味で、20兆円近くあるというのはかなり膨れ上がった数字ではなかろうかと。この13.5兆円から、16年度決算で言えば11.4兆円に2兆円ほど減っているのですが、税制改正自体、税率を下げたりした部分が3.5兆円ございまして、減収が2.1 兆円なのですが、それを上回る減税をしている。この差額は、むしろいったんへこんだものが戻ってきている。

さて、繰欠がなくなったときにどうなるかと。なかなか難しゅうございます。当期利益自体が課税ベースそのものではないわけですが、例えば40兆円の当期利益であれば、3割掛ければ12兆円。3割というのは今の法人税率が30%でございますが、そういう意味では10兆円ちょっと上回るというのがある種巡航速度になっているのかな、こんなふうに思います。

石会長

では、岡本さん。

岡本主計局調査課長

先ほどの資料の1ページにあります、経費区分の一体化の趣旨でございます。これは委員ご指摘のとおり、まず裁量的経費の削減というのがあるわけでございますが、加えて、義務的経費のところも見直して削っていかないと、そもそも根っこは減っていかないということがございます。ここの一体化といいますのは、どちらかといいますと義務的経費の見直しをよりやってもらえるようにしようという趣旨から行っていることでございます。裁量的経費の削減がより必要だというのはおっしゃるとおりでございまして、ちょっと上に書いておりますように、むしろ昨年までは裁量的経費はマイナス2%という形でやっていたのを、今回は裁量的経費も含めてマイナス3%という形にしてございます。当然のことながら、公共投資関係費、裁量的経費、こういったものの削減はより必要だというふうに考えております。

遠藤委員

主税局の説明はあまり腑に落ちてないのですけれども、一遍、企業収益と税収との関連を数字を出して教えていただけますか。

主計局に対しては、やはり項目が分かれていたほうが国民はどこがどれだけ減ったかということがはっきりわかるわけです。ですから、それは分けて出していただいたほうがいいのではないかと思います。

それから一言だけ言いますと、国民に税負担を求めるときは各省がパニックに陥るくらいに歳出を切らないと国民が納得しませんよ。国家公務員はみんな、ちょっと予算は落ちたけれども何とかやっていけるというような程度で消費税を上げるという感じにはならないのではないか。そこが心配でそう言っているということで、ご理解ください。

石会長

菊池さん、どうぞ。

菊池委員

一つは質問で、プライマリーバランスを均衡させるというのは国の分だけでやる。それであるがゆえに非常に緊張感があって、国税、ゼロにしようかとかそういうことだったと思うのですが、今年は国と地方合わせて黒字化するということになっている。そうすると何かボワーッとしてしまって、誰が責任を持つんだ、という感じになるような気がしましたので、いつからそれが変わったのか。何ゆえに均衡ではなくて黒字というふうになったのか、そこら辺が一つ質問。

あとは、マスコミが大増税時代と、言うことないから言ってるんでしょうけれども、ものすごい税調に協力的な立場をとっているんですよ。

石会長

誰がですか。

菊池委員

マスコミが。

石会長

そうですか?

菊池委員

きっと。いや、私はああいうのはおかしいと思っているんですよ。だけど、大増税なんて言っていないのに、そういう時代が来たと一生懸命言ってくれるわけですから。その中で、今度のが年度改正だろうが何だろうが消費税のシの字もやらないわけですね。そうすると、「何だこれは」というふうに、やはり所得税だけ増やしてくるのかと、とらえられるかもしれないという危惧を最初から持ちます。だから消費税を上げろと言っているわけでもないのですが。

もう一つ、河野さんはああいうふうにおっしゃいまして、そういうことではあるのですけれども、そうは言っても所得税の論点整理を出した。これは別にやろうというのではなくて、こういう問題がありますよということで出した。そうすると世間では、ああ、やる気なんだろうと。それをやる気なのだからサラリーマン増税に違いないということになって、それに対して自民党が選挙の公約として、そういう税調の考え方は取らないとはっきり書いたわけです。それならいいというので、みんなマルを書いて投票してやったわけですね。

それに対して、選挙が終わってしまったからあれは何でもいいんだ、あんなもの気にしないで、サラリーマンしか住んでいないわけですから、そこから所得税を上げますということで、その間に何の不都合もないままそっと乗ってしまっていいのだろうか。一応民主主義のもとに住んでいるわけですから、選挙民が嫌だと言ったことに対して政府税調は、うるさい、俺のほうが正しいんだと言うだけでいいのか。諮問されているわけですから、この前のあれはごめんとか一言ないと。マニフェストにはそう書いたけれども、あれは選挙用ですからごめんなさいと。何もなしで知らんぷりというのはちょっとどうかなという気がします。

あと、道路特定財源は今度の目玉で面白いかなと思います。それで、環境税が出てくると思うのですが--こなくてもいいんですけれども、私は、無謀ではありますが、この道路特定財源を全額環境税に切りかえてしまうというようなことをやると非常に人気が出るのではないかなと思います。

石会長

最初に、プライマリーバランスが国・地方一緒になるのはいかがなものかという質問に対してまずお答えください。

岡本主計局調査課長

お手元、「総33-3参考資料」の4ページに、政府の中期的な目標といたしましては、国・地方を通じたプライマリーバランスの黒字化を2010年代初頭に達成するということで、これはもともとこういった目標になってございます。ただ、こちらの下にありますように、今、国・地方合わせたところでGDP比4%の赤字ということになっておりますが、国・地方に分けますと、国が4.5%の赤字で、地方が現在0.5 %の黒字になってございます。そういったことから、国のプライマリーバランスを回復していかない限りこの目標達成は無理ということもございますので、ここでは主に国につきましてご説明させていただいておりますが、政府の目標自体はこのような形になってございます。

石会長

要するに国と地方一体化で、地方の黒で、国の赤を消す、トータルでという話はたしか内閣府の資料にも出ていましたね。それでいいかどうかというのは財制審でも議論になっていたのです。ただ考えてみれば、国が本来プライマリーバランスを黒にすべきですね、議論としては。そこをいいかげんにしておいていいかというのはまさに菊池さんのご提案だろうし、それはトータルで考えたままでいいのですか。

本間さんのほうはどういうような……。では、本間さんから。

本間委員

経済財政諮問会議は、もうずっと、国と地方の合算したプライマリーバランスを2010年超で解消する、こういうことで進めてまいりました。ただ問題は、国と地方の財政状況等の中で、今後の三位一体改革も含めて財政収支の収支じりの問題について一体どう考えるかというときに、国と地方のそれぞれの収支じりというものを考えるか否か、こういう問題が潜在的にあり、そのことを一つ表すために分離をしている、こういうことが今出てきていると。

さらに言えば、プライマリーバランスをわが国は国と地方と言っているわけです。そのやり方というのはずっと整合的にやってきたわけですが、おそらく今後問題になりますのは社会保障基金、これが今まで黒であったということが、財政状況というものの真の姿をあらわすのにあまり適切ではないのではないかということで、特別会計ということもあって外してきたわけですが、今後、一般政府レベル、国・地方、社会保障基金、これを一体どうするかということは高齢・少子化の進展の中では考えなければならない新たな課題だろう、こういう具合に考えております。

石会長

今の点、これから議論になると思いますけれども、15.6兆円の一般会計のプライマリーバランスをどうするかという議論は残るのだと思います。ただ、諮問会議でトータルでやるという一つの方針を出されています。ただ、個別に見ていくのか、トータルか。ケース・バイ・ケースで分けてやるしかないと思いますけれども、我々はやはり一般会計もプライマリーバランス、すっきりしてもらいたいと思っていますので、それはそれで、今、議論として押さえておければいいと思います。

それからもう一点、菊池さんがお出しになった自民党のマニフェストと、我々の俗に言われるサラリーマン増税云々の話は、これは政党が出したマニフェストですから我々がとやかく言う筋はない。また、私は税調の会長として、一言もサラリーマン増税という言葉を使ってもいないし、かつ論点整理にも書いていないのです。したがって、サラリーマン増税と言われてもカッコ付きですね、出てきたのは。したがって何だかよくわからない。あえて言えば、サラリーマンに該当する給与所得、退職所得のみを対象にした所得税の増税かもしれない。

そんなことは我々は言っていませんし、自営業も含め、金利生活も含め、公的年金生活者も含め、トータルで所得税の納税者のことを我々は議論したつもりでおりますので、私は個人的に、サラリーマン増税と言われても違和感があります。したがって困ったなとは思うけれども、さて、マニフェストに言われているのが我々とどれだけ関係があるかよくわからないと私は思っていますので、ここはそう目くじら立てて何かかんか言う話でもないと思っています。皆さん、いろいろご意見があると思います。あったら言っていただけたらと思います。

今の問題、何かありますか。佐竹さん、どうぞ。

佐竹委員

6月の論点整理でしたけれども、私などは、その後の市議会でサラリーマン増税に手を貸す市長だということでだいぶやられました。ただ、外に向かって伝わっていく行き方がどうしようもない場合もあるんですね。そこで、論点整理とは何ぞやということで議会の席上でも延々とやりました。納得していただいたのかどうかは別にいたしまして。そのとき私は、非常に自民党はけしからん、人にやらせておいて何だという形で言ったのですけれども、定率減税の問題も、これは最終的に政治決断でしょうが、我々の立場としては一回ああいう形で議論したわけですので。

もう一つの歳出削減の面、これは我々の立場から言うといろいろあるでしょうけれども、私などは市民に向かって言っているのですけれども、節減しながらサービス水準を保つなんてことはできないわけです。ですから、あるものはもうサービスをやめよう、あるいは半分にしようと、はっきりそこまで言わないとずるずるずるずる……。どうしても政治の立場になりますと、最大の効率を上げてサービス水準を守るといっても、例えば病院などは看護師さんを減らしてできるわけがないわけです。ものによって、特に裁量的なところについてはやめるものはやめるというのは、自治体のレベルではそこまで切り下げております。私どもは17年度予算は裁量的なところで12.8%ぐらい下げているわけです。道路財源のところがちょっと立場は違うと思いますけれども、むしろ公共投資はきっちりしながら、バブルのときにいたずらに膨らんだソフト的な--これは実は国がソフトということで、それに引きずられて地方がずいぶんいろいろなことをやっている面もありますけれども、今、そこを全部整理しているわけです。

ですから、道路財源の一般財源化も一方で議論はあるでしょうけれども、きっちりやるべきところはやっていかないと。そういうことで全体のボリュームを少なくする、むしろそういうことではないのかなという感じがいたします。

石会長

田近さん、どうぞ。

田近委員

今日から始めて1カ月後に答申を出すということですね。短期決戦で何を議論するかというのが問題だと思いますけれども、90年代のあの不況の中で、99年の定率減税とかいろいろなことをやってきた、それの見直しは必要だろうと。法人税のIT減税とかもしかるべき見直しはする。だけど、この短い期間に、来年度あるいはその先に向けて何ができるかという目、それをどう考えるかということで、いろいろ所得税の見直しもやってきた。私は重要だと思うのは、子育てと税に関してメッセージ的なものが出せないかと。

というのは、いろいろこのテーマで話を聞いたりしていても、ものすごく重要なことが起きてきたと思うのは、90年代、いろいろ経済が変わってきて、非常に流動化して国際競争力も激しくなってきて、雇用がかなり非正規化してきた。そうすると、所得が低い層というか、賃金が非常にフレキシブルになりましたから、2人でいれば生活はいいけれども、子供が産めない、産んだら生活できなくなってくるという状況も出てきている。それはおそらく日本で初めての状況だと思いますけれども、そういうところを考えると、税額控除でやるのか何でやるか知りませんけれども、子育てに関する問題というのは新しく出てきているのではないか。1カ月でどれだけできるかわかりませんけれども、将来に対するつなぎとしては、例えば子育てと税。

第2点は、歳出カットでスペシフィックにやるとすれば、特別会計の改革と税調がどう連動するかということだと思います。どちらかではうまくいかない。もちろん道路財源もありますけれども、電源開発促進税とか、その他、エネルギー関係の税が、使途を含めていろいろ問題がある。多少次への射程ですけれども、目的税にしたときに、道路、道路だけではなくて、もう少し幅広く見て、趣旨は特会改革のほうを税調としてもサポートする。両方がサポートし合う体制だと。

最後は、遠藤委員がおっしゃった、今、法人税は繰越欠損金が多いから税が伸びない。幾ら伸びるのかと。逆に言ったら、それだけ税が伸びたら法人税をカットすればいいと私は思います。90年代の不況を通じてやはり日本を原動力として引っ張ってきたのは企業セクターですから、その時点になったら我々は初めて本格的に法人税の議論もできるということで、それは増税の候補ではなくて、やはりこれから企業課税を見た抜本的な改革のチャンスだと私は思います。

石会長

確認ですけれども、最初に2つ言われた子育て、特別会計、これは年度改正の中に入れてもいいし、あるいは1月以降の我々の中期答申に向けた議論の中でやってもいい。双方だということですね。

田近委員

ただ、小渕内閣の税の清算だけでは、税調が出すメッセージとしては息苦しいかなという気がします。

石会長

わかりました。それはこれからの議論で、皆さんのもう少し幅広いご議論を聞きましょう。

草野さん、お待たせしました。

草野委員

サラリーマンの立場から申し上げたいと思いますが、6月21日の中間とりまとめの日に私は3点だけ発言させていただいたと思います。1つは、どうすかしてみても取りやすいところから取るというペーパーになっていますねということ。2つ目は、クロヨン、トーゴーサンピンという不公平税制の是正には全く手がついていませんねということ。3つ目に、私が出ている範囲内ですけれども、所得税の最高税率は一気に下げ過ぎたのでもう少し回復すべきだという意見と、いやこれでいいんだいう意見と両方ありましたけれども、私の記憶では、下げすぎたという意見のほうが多かったと思いますけれども、中間とりまとめでは、これは妥当であるという結論になっている。この3点から見て、やはりサラリーマンからみるとこれは大変な問題ですねということを提起したと思うのですが、結果から見ると、まあ、選挙もあったと思いますけれども、そういうふうな状況になってしまった。そう受けとめられてもしようがないのではないかというふうに私はサラリーマンの立場から思います。これからどういう議論になっていくかわかりませんが、私は、資産税とか、富裕税とか、金融税も含めて、トータルとして考えていかないとだめではないかというのが一つです。

2つ目に、結論がもう出ているとおっしゃって、さっき河野さんは、定率減税の廃止・縮小は増税ではないのだと言いましたけれども、取られているほうからみれば増税であることは間違いない。しかも、社会保障の保険料負担、その他、サラリーマンにとってはものすごく増えてきていますから、これ以上まだやるのかということに対してはきわめて大きな不満があるということは、ぜひご理解いただきたいと思います。なおかつ、あのときも申し上げたと思いますが、定率減税は最高税率の問題と法人税の問題とセットだったはずです。これをトータルで見直すといったときに、その2つは横に置いておいて1つだけやるというのは約束違反、ルール違反ではないかというふうに思います。

長くなりますが、3つ目。最初に村上委員が言われたように、税を国民に求めるためには歳出削減をきちっとやるべきだというのは言うまでもないことですが、ここで見ますと、ペーパーとして特別会計のところが一番最後に出ています。私は、一般会計も大事ですが、やはり特別会計にどういうふうに踏み込んでいくかということをしっかり示さないと、たしか純生で208兆円ぐらいあると思います。そこをどうするかというのは国民はしっかり見ていると思いますので、そこはきちんとメッセージを出していく必要があるのではないかというふうに思います。以上です。

石会長

出口さん。

出口委員

6月以降、私、今日ここに相当の覚悟をしながら出てきたのですけれども、先ほどの石会長の発言を聞いて、やや愕然とした正直な思いを申し上げたいと思います。石先生、大変偉い方なので、どなたもおっしゃらないのかもわからないのですけれども、河野さんの発言とか遠藤さんの発言も含めて、かつてない財政危機の中で、今後、かつてない税制改革をしていくときに、いろいろなことの大きな議論を今後していかなくてはいけない。その中でどうやってしかるべき議論をして、それをどうやって伝えていくかというところまで含めて考えていかなくてはいけない時代に入ったのではないかなというふうに非常に強く思うわけです。

これは「実像把握」のときに何度か申し上げましたけれども、実像把握というのは非常によくできていて、それと所得税の論点整理が連動していて、人々のライフスタイルが変わってきた中で新しい形での所得税を考えようということに相なったわけだと思うのです。それと同時に税調自身も、インターネットで公開しているとか、議事録を公開しているとか、だから議論さえ専門的に正しければ超然としていればいいのだということで、この財政危機の時代を果たして乗り切っていけるのかということを含めて、我々の責任が従前の政府税調に比べるとやや重くなりつつあるのではないかというふうに非常に強く思っております。

その点で定率減税は、これは釈迦に説法で申し訳ないのですけれども、サラリーマン以外のところにも広くかかわる問題ですので、サラリーマン増税とは関係ないというメッセージ性を端的に出していかないと、審議が非常にやりにくくなるのではないかというふうに老婆心ながら思う次第でございます。

石会長

愕然としたところの愕然はどこですか。ちょっとお聞きしていてわからない。私が、サラリーマン増税というのは論点整理から一言も出てきませんねというので……。

出口委員

論点整理の中で出てきているのは1カ所だけ、源泉徴収されているという部分です。それ以前の案ではもう1カ所出てきました。税調の中の議論でその部分が1個は消えたわけです。それで記者発表があってああいう格好になって、その経緯の中で誤解が生じたことは事実だと思いますけれども、誤解が生じた場合に、マスコミが誤解したということだけで、河野さんの言葉を借りれば、多少の反省をする必要があるのではないかというところをもう一度きちっとしていかないと、今日のマスコミのこのカメラの入り方から何からして、今日のこのあとの記者発表、極端に言えば非常に重要な記者発表だと思うのです。今回の税調の議論も大事ですけれども、このあとの記者発表、非常に重要な中で、やはりそこのところはうまく考えていかないと、今後、非常に大きな人々に影響を与える税金を議論していかなくてはいけないわけですから、税調全体が信頼を失うようなことがあっては大変なことになるだろうということを老婆心ながら……。

石会長

ありがとうございました。ただ、私、依然として出口さんの真意をはかりかねていますが、税調がずっと政府の諮問機関として40年以上の歴史を持って税制改正の論議をリードして、それなりに論点を整理して世の中に出したという事実は残っておりまして、その役割が昔と比べてこれから大変になるとか、そこでガラッと変わるという意識を私は全然持っていないのです。

それどころか、長い目で見ると政府税調というのは、党税調が出てきたり、他の省庁がいろいろな税制論議をするので、独占的に我々だけがやっていて、我々が決めたことですべて決まるなどという話ではなくて、役割も次第に変わっていきつつあるのです。経済財政諮問会議もできましたし。したがって、この間の6月のところで、河野さんが言ったように、あそこだけ突出したということはあるかもしれません。そこで特に身構えて、これからどうだこうだという意識を私自身は持っていないのです。でも、いまのご心配はまた改めて個人的にお聞きするとして、それなりの対応は十分、心してやりたいと思います。

ほかに。上月さん、どうぞ。

上月委員

論点整理で皆さんにずっとご説明させていただきまして、皆さん、多少増税の覚悟はできたのかなという感触はありますけれども、その場合でも、歳出カットはもちろんのこと、先ほどから草野委員が力強くおっしゃっていただいていますが、特別会計のところにずいぶんお金があるとか、国のバランスシートですると、財政赤字ばかり言っているけれども実際はどうなんだというような質問がずいぶん出てまいります。私自身もその辺はちょっとわかりませんが、その辺を少し掘り下げてというか、突っ込んで、税調の文章の中に少しでも取り入れていただけたらなと思います。

石会長

今度の年度改正の文章ですね。

上月委員

はい。

石会長

わかりました。

どうぞ、本間さん。

本間委員

今の出口委員の点にかかわるのですが、与党で財政再建に向けてかなり強いメッセージが出されたわけです。あるいは、今、出しつつある。その中で税調が一体どういう具合に行動をとるかということに関して、マスコミも含めて息をひそめている。あるいは息をひそめずに、もう大増税路線だということを言っているときに、我々はいろいろ課題を出すときには、その背景説明も含めてきちんとやっていくことは戦略的に非常に重要なのだろうと思います。しかも、小泉内閣では消費税の増税はやらない、検討はいいと言っている段階の中で、我々諮問会議は、聖域なく、総人件費の問題、特別会計の問題、資産・債務の管理の問題、これをずっと問題提起させていただいて、対GDP比に対してどうだというようなところまで突っ込んで言っているわけであります。政府の中における二大審議会が共同歩調をとりながら、それに向けてどのように国民の合意を取りつけていくかということは、ぜひご考慮いただきたいという具合に思います。

第2番目の問題で、今年度1カ月ちょっとでこれをまとめていくときにおそらくポイントになりますのは、減税の部分をどういう具合に処理していくか。しかも三位一体の関係の中で、所得税と住民税の関係が税率変更を含めて行うということでありますから、そこがおそらく最大の焦点になるだろう。そういうときに、控除水準のありよう、住民税と所得税のありようについて、メッセージを通じてこういう考え方の中でやっていくんだということを出しませんと。その問題が、単に部品、部品の考え方の中で議論を--来年度ではありますけれども、これから影響を及ぼす話につながってまいりますから。

例えば所得税のところで、再分配機能をどういう具合に持っていくんだという議論は、住民税がフラット化していくということになりますと、他の条件が一定であれば累進性の緩和という方向に働くわけで、そのような事態に対して所得税の将来の役割を一体どう考えるか。ここらあたりもきめ細かく議論しておきませんと、1カ月だからどうだと、そして、特別減税の部分のところをやめてしまうというだけの話では済まない部分があろうかと思います。ぜひその辺のところについても、来年度の本格的な答申に向けての布石をここでどういうように織り込むかということが非常に重要だと思いますので、よろしくお願いいたします。

石会長

おっしゃるとおりです。今、技術的というか、所得税と住民税のチェンジしたあとの姿形を検討してもらっていますね。いずれ具体的に数字が出てまいります。そうなりますとイメージもわいてくると思いますし、増減税のデコボコがどうなっているかということもおそらくチェックできると思いますので、その段階で所得再分配機能云々の話をぜひしたいと思っています。

本間委員

それからもう一点、特別会計の問題は税調はもう少し踏み込んでいただけないか。我々諮問会議で特別会計の問題を提起いたしておりまして、その際に、資産と負債のバランスシートが一体どうなるか、キャッシュフローが将来に向けてどうなるかということを問題提起しております。これは、道路関係を入れれば50兆円以上の黒になっている状況の中で、資産の保有の形態も含めて、あるいはこれから入ってくる、出るものについての、税ももちろんそうでありますけれども、利用料等も含めて、どう考えていくかということは非常に重要な問題であります。今までタッチーな問題として扱ってこなかった問題も、それぞれ税の立場から一体どう考えるかということをご検討いただきたいと思います。

石会長

わかりました。田近さんがおっしゃったように、例の目的税化しているところと特別会計との関係もございますから、少し範囲を広げます。ただ、諮問会議ほど方々に自由に手を出せないというところも我々の制約でありますので、それはこれから少しずつ浸食しましょうかね。

では、どうぞ、井上さん。

井上委員

政策減税の問題です。先ほど河野さんからもちょっと話が出ておりましたけれども、定率減税、これは景気がよくなってくればもとへ戻すということはやむを得ない。それは安いに越したことはないわけですけれども、やむを得ないことだろうというふうに思うわけです。ただ一方において、設備投資減税とかそういう絡みについては、あとの波及効果というものを考えてよほど慎重に考えていくべきだろうと。特に中小企業はまだ景気は回復していない。原材料等が上がり、一方において売値は抑えられるということから利益が出てこない。そうすると設備投資になかなか走れない。しかし仕事はあるということであるわけです。そういった点からすると、設備投資減税というものはもうちょっと延長して続けるべきではないのかというふうに思っております。

それから特定財源の問題は、道路財源なんていうのは一般財源化すべきであろうと思うわけです。例えば北海道あたりは道路ばかりつくって何をやっているんだと、私から見ると不満だらけであるわけでして、そういう点ではもっと一般化すべきであって、目的税化で行くべきではないというふうに思います。

一方、私はいつも言っているのですが、たばこの税金、これはあまりにも安すぎるということであります。今、いろいろな官庁にしてもどこにしても、鳥小屋みたいなところに入ってたばこを吸っている。非常にみっともないわけでして、あれを高くすればいいわけです。禁止税ということを会長はよく言われるわけですけれども、500円までは上げても大丈夫だというふうに思うわけです。1本1円上がれば2,000 億あがるわけでしょう。どうしてもっと早くこれに手をつけないのか。癌になる人は女は1.9 倍、男性は1.6 倍ということからすれば、医療費も削減できる。そういうところにも全部つながるわけです。それなのに何で上げないのかということを私は不満に思っているわけです。ぜひともこれは検討していただきたいというふうに思います。

石会長

来年度なのか今年度なのか、いずれ仕切りはつけなければいけませんけれども、検討課題に取り上げたいと思います。

秋山さん、どうぞ。

秋山委員

お話し申し上げようと思っていたことはもう本間先生がずいぶんおっしゃっていただいたので、一部繰り返しになりますが、先生が戦略的というふうにおっしゃったのがまさに的を射た表現かなと思うのですけれども、6月の論点整理、これについては私自身は非常にバランスよくまとまったいい答申だったと思っております。いろいろな個別反対をおっしゃる方のご意見もよく理解できますけれども、よく読んでいただければ、非常にバランスがとれているというふうに読んでいただける方とも、実際には私もたくさんお話をさせていただいております。

ただ一点、現在の政府税調の議論は財政構造改革という大きなテーマのもとでやっているということで、税制の部分だけを語ることでどうしても片手落ちな感覚が拭えない部分について、最初にどなたかが、強調してもしすぎることはないというふうにおっしゃっていましたけれども、そのあたりをしっかり答申に、毎回しつこいくらいに盛り込んでいただきたいというのが、すみません、繰り返しになりますけれども。

あと、説明的な部分についてはもう少し広報的な機能を強化したらどうかなというふうに思えてなりません。いつも会見は石先生が代表して受けていただけるのですけれども、委員が全員必ずしも公の場でそういうことをお話し申し上げる機会に恵まれているわけでもありません。そういう意味では事務方の皆様にご協力いただいて広報的な機能をもう少し強化していただきたい。いろいろご意見が分かれるということはあると思いますけれども、少なくとも誤解はないようにしていただきたいというふうに思っております。

石会長

後段の広報活動につきましては、広報担当の企画官等が、それについては個別に質問が来ればお答えしていると思いますが、それについて何か事務局からございますか。広報について、もしあれば。

永長総務課長

現在、この総会の様子もネットで生中継されております。さらに議事録につきましても、この議事録がまたいろいろな波紋を呼んだりいたしましたけれども、それくらいきわめて率直に公開いたしております。あとは、むしろどのようなメッセージをこの税調の総会でおまとめいただいて、それをいかに効率的に世の中に伝達するか。今まで先生方のご議論もそのとおりだと思います。広報企画官のお名前が出ましたが、彼も一生懸命やっております。何かお知恵があれば、今後ともよろしくご指示、ご示唆くださいますようにお願いいたします。

石会長

中里さん、お待たせしました。

中里委員

シャウプ勧告や、昭和37年でしたか、税調答申を読むと、襟を正した形で読むという、税制を専門とする人間として心が引き締まるような格調の高いものが出ていたわけですね。その伝統を引き継いでここで議論しているわけです。ただ、税制は複雑で技術的ですから、同じ文章を読んでもいろいろな誤解もあるし、場合によっては曲解もあるかもしれません。例えば、論点整理の中には不公平税制の是正というのがもろ出ているわけです。サラリーマンの給与所得控除を圧縮し、他方で白色の事業者は記帳義務を強化する。これは長年、総評等で主張なさっていたことではないかというふうに思います。これは見方で、それでは不十分だとかいろいろなことがあるのかもしれませんけれども、一応出ている。しかし、それが100%通じないというところがありまして、技術的なことであるがゆえに100 %ご理解いただくのはなかなか難しいところは当然ある。それは税制の宿命だと思います。

したがって税調は、私は超然としていなければいけないというふうに思います。そのときどきの政治の流れでフラフラ動くのではなくて、国家百年の大計のために毅然とやるべきことを言うし、批判も甘んじて受けて言うべきことを言う。存在意義はこれしかないのではないか。我々は民主的に選ばれた機関ではありませんから、専門家の立場から客観的に現時点で我々が正しいと思うことを、思い上がりとかそういうことではなくて、きちんと言っていく。それ以外に私たちに課せられた使命はないのではないかと思っております。

石会長

だいぶ時間がなくなってきました。あと10分ほどですが、どうぞ、佐竹さん。

佐竹委員

聞くところによると、今日、環境税の案がまた出るようにちらっと聞きましたけれども、これが一つ議論になるのかどうか。

もう一つ、これは市長会の立場ですけれども、先ほどの所得税と住民税のフラット化によりまして住民税は増税になるわけです、住民税だけで見ますと。それに伴って我々地方の住民に対する説明責任は非常に大きくなって、そこのところをきっちり国税と地方税を地方分権のことも踏まえて説明しなければならないということで、どういう形でそこがまとめられるか。我々市長会のほうでも、自分たちがどういう形で住民に説明するかという大変大事なところですので、そこはひとつよろしくお願いしたいと思います。

石会長

おそらく総務省のほうでは十分考えられると思います。環境税は、修正版が今日あたり出ているようでありますが、いずれにいたしましても環境省がまとめてきて議論してくれという話になっておりますので、来月の審議の中でしかるべき時期に一回、環境省案を含めて環境税の議論はしたいと思っています。ただ、それをいつ頃どういう形で実現の方向に持っていくのか、税の段階に行くのか、はたまた、今、原油価格がえらく上がっています。そういう突発的事項もあったりしますので、それはここでまた情報を出して皆さんのご意見をお聞きしたい、このように思っています。

神野さん、どうぞ。

神野委員

今の会長のご説明で尽きているのですが、私としては、毎年度、毎年度のこういう税制改正でも、長期的なビジョンなり見通しなり、税制の方向性などを見定め、国と地方、社会保障負担、個々の税目についても見定めた上で、部分的に今年はどこをやりましょうかということで議論を進めていくべきだろうと思います。内容についてはこれから進めていく話でしょうが、そういう意味で長期的に課題になり、かつ今年、実現するかは別として、議論しておくべき論点として抜けているのに環境税があるかもしれないというのを指摘しようと思ったのですが、すでにそういうお話であれば別にそれは。

石会長

上野さん、どうぞ。

上野委員

今年の年度改正の議論として幾つかの項目が示されていますけれども、消費税の議論に真剣に取り組めないという状況下におきましては、抜本的な税制全体の改革、そういう大きな取組みはこの時点ではなかなか難しいというふうに私も思います。したがいまして、ここに載っているようなことをやっていくということだと思いますし、その過程で特定財源の話、特別財源の話や何かも必要があれば触っていくという程度の話なのかなというふうに思います。

その過程で、ちょっと話が出ていました特別会計を税調でも取り組むというのは、私はちょっと勉強が足らないのですけれども、我々の取り組み方は一体どういうような具体的な切り口になるのか。特別財源、特定目的財源で徴収されるというのは、それは税収に代わるものだというような考え方でいろいろ議論をするのか、その辺の、特別会計を取り上げるといったときの具体的な取り上げ方がちょっと私にはわからないので、そこは方法論としてもちょっと勉強する必要があると。少なくとも個人的にはそういう気がします。

もう一つ、順不同で大小取り混ぜた議論になりますが、2010年代初頭のプライマリーバランスを国と地方の合計で図るんだというのは、私はどうも理解しにくいなと。といいますのは、税の制度に手を入れるということは、もう2010年も目の前に来ているわけですけれども、当面何年かの間の話ということではなくて、それを超えた先の例えば国の債務をどうするかというようなことにも関係があると思うのです。国と地方両方の債務残高をどうするかということにももちろん関係があるということなのですけれども、国は国、国税を考えるというときには、国債の残高ということがやはり頭に入らざるを得ないのではないかということで、分けて考えるということに当然なるのではないかという気がします。

あと、税調の役割論については、そのときどき、いろいろな世間の状況で取り扱われるというのはやむを得ないところだと思いますので、粛々とやっていくということですけれども、タイミングなどは十分に考えてやったらいいのではないかというふうに思います。以上です。

石会長

特別会計の取扱い方につきましては、皆さんから初めて具体的にご提案がございましたので、どういう形で議論にのせられるか、私のほうに引き取らせていただきまして、事務局と相談いたしまして、来月以降の議論の中で具体的に提案いたしたいと思います。

辻山さん、どうぞ。お待たせしました。

辻山委員

大きな問題については委員の中から出ましたので、個別の問題について、今回、特にサラリーマン増税ということで、この考え方の中には一部誤解、定率減税の廃止とかですけれども、サラリーマンだけに限って見ても、具体的には給与所得控除の問題と、退職金の2分の1課税の問題があると思います。給与所得控除については、なぜ現在のような率になったのかという歴史的なサラリーマン訴訟がありますし、退職所得の2分の1課税についても、累進税との関係の中でいわゆる税率の平準化という議論もあったわけです。

それを今回変えることについては、今日のこのペーパーを拝見しますと、退職所得の2分の1課税の見直しについては短期間勤務となっていますけれども、ここはやはりポイントだと思うのです。どこで線を切るのが現在の雇用形態の変化に対応したものになるのか。すごく急いでいるようなので、もし喫緊にこの結論を出すのであればもう少しデータをいただきたいというお願いでございます。

石会長

喫緊にと言われて、4月以降の議論にはならないと思っています。論点整理はあくまで現行の所得税の問題点や欠陥等を整理して、中長期的視点から河野さんはぼちぼちやればいいという言葉でおっしゃったけれども、要するに、これから他の税制の見直しも含めていろいろな兼ね合いで所得税もやらなければいけないときに、あの論点整理が実は有力な指針になると思っています。そのとき、実額控除を含めての給与所得控除とか、2分の1のところも含めて、あるいは短期の退職所得も含めて議論が出てまいりますので、その次の段階、報告書に載せるかどうかの段階になったときには、その点は事務局に資料も用意していただいて十分議論したいと思っています。論点整理があって答申があって税法があるのでしょうから、まだ入口のところであります。いつやるとか、これをずっと追求していくかというところまで、その段階ではありませんので、まだ用意しておりませんが、その問題意識は十分持っておりますので。

さて、時間が来てしまいましたが、ぜひともという方、菊池さんが手を挙げていましたね。では、最後に。

菊池委員

職業柄というか、誤解、曲解の件ですけれども、あれは深く考えると、誤解、曲解しているのはこっち側で、あっち側が正しく理解しているという理解は……。

石会長

あっちというのはどっちのことを言っていますか。

菊池委員

ここにいる人、マスコミのほうが実は正しく理解しているという理解も私はできると思うのです。というのは、大きい流れでいけば税金を増やすぞと彼らは言っている、それは嫌だぞとマスコミが言っている。それに当たった一番わかりやすいところが出てきたから、そこを叩けということですから、そういう意味では誤解ではないかなとも私は思うのですが。

石会長

いや、誤解ではなくて戦略的に取り上げられたということですよ。

菊池委員

こっちもそれに乗っているわけだから、あんまり誤解というのは……。

石会長

わかりました。その辺の解釈はいろいろあって、今日のテーマでありますが、結論は出ない議論になると思います。

よろしゅうございますか。予定した時間がちょうどまいりまして、あとの段取りをご説明して今日は終わりにいたしたいと思います。大変久しぶりの総会ということもありまして、多くの人からご意見を賜りましてありがとうございました。これを整理いたしまして、11月以降の本格的議論に向けていきたいと思います。

二、三、お伝えすることがございます。

1つは、国民の方々から郵送や電子メールでご意見を伺っていますが、それを1年分まとめたものが冊子として入口に並んでおります。税制全般に関してどんなご意見を国民の方がお持ちかということがわかりますので、折りに触れて機会を見つけてご覧ください。これは大体700件ほど出ているそうであります。入口にあるので、お帰りに時間がありましたらぱらっと見ていただきたいと思います。

それから、財務省にホームページがございまして、そこに各省庁からの税制改正要望が事項として並んでおります。総務省のホームページも間もなくこれを掲載する予定だそうですが、ここで一々、各省庁の要望事項をご説明する時間もございません。ぜひホームページを開いて、どこの省が何を言っているかということも頭に入れていただけたらと思います。

今後の予定でございます。予定表が1枚の紙に載っていると思いますが、11月は火・金、火・金、火・金と2回ずつ3回やりますから、6回やる予定でございます。お忙しいとは思いますが、あらかじめこれをテイクノートしていただけたらと思います。

それから、中期答申に向けまして、あるいは年度改正に絡めてもよろしいのですが、今後、どんな税制の検討課題があるかということを、税法と財政学の関係の先生方にお集まりいただいて、ご意見を聞きたい。勉強会みたいなものをやりたいと思っておりますので、それを近々やりまして、どういうことがあったかということは、いずれまた機会を見つけてご報告いたしたいと思います。

では、どうぞ今後の予定、案ではございますが、ほぼ確定しておりますので、これに従って来月以降、週2回というハードなスケジュールになる方もいらっしゃいますけれども、よろしくお願いいたします。

今日は長時間、どうもありがとうございました。これにて散会いたします。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。