総会(第31回)、基礎問題小委員会(第42回)・非営利法人課税WG(第6回)合同会議後の石会長・水野座長記者会見の模様
日時:平成17年6月17日(金)16:04~16:24
〇石会長
ただいま総会と、それから例の合同会議、二つあわせたものを行いまして、正式には「新たな非営利法人に関する課税及び寄附税制についての基本的考え方」、この基本的考え方につきまして、総会でもご承認いただきましたので、ここで正式に税調としてこの考え方を表に、公にしたいと思っています。
既に内容的には事前のレクもございましたでしょうし、いろんな形で皆さん勉強されてますので、いまさら私が申し上げることもないと思います。ただ、どういう姿勢で取り組んできたか、あるいはどういう議論があって、ここにこぎつけたか、二、三、今思い浮かぶ範囲でご説明したいと思います。
実は、昨年6月に「わが国の経済社会の構造変化の『実像』について」という報告書を出しました。その段階で、官と民の間にさまざまな新しい、我々の言葉で言いますと「民が担う公共」ですね、この活動範囲が非常に広がっている。そういう意味で今後、官のできないもの、あるいは民のできないものがこの「民の担う公共」で非常な勢いで伸びてくると考えておりまして、それをどういうふうに税制面でサポートするかという問題意識を持っておりました。
今般、内閣官房のほうから新しい非営利法人についての制度設計が出されまして、基本的に受け皿ができたわけですね。それに税の問題をいかに取り組むかという形で、水野さんが前にやっていただいたワーキンググループの延長上として、今回、基礎問題小委員会とこのワーキングとを合体させた形で、6回ほど審議を深めてまいりました。さまざまな議論があった中で、やはりこの基本的な方向につきましては合意ができておりましたので、あとは税をどういう形でここに入れ込むかということに、具体的な議論は煮詰まってきたわけであります。
それで我々として、公益性というものは一般的な非営利法人制度の中で第三者機関によって、まあ認知されれば、それを受けて税のほうも、税制の優遇、あるいは寄附税制等々、自動的に認めてもいいじゃないかというところが大枠であります。そういう意味ではおそらく、寄附税制に関して言えば、かなり対象は広がると思います。今、2万5,000ほど、財団法人、社団法人がございますが、その中の900程度しか具体的に寄附の税制の優遇を受けていないと思いますけれども、これが今度は、2万5,000がどれだけエントリーしてくるか分かりませんけれども、一応届け出をして、非営利法人の仲間に入って、その中で公益性のふるいにかけられて、それにパスすれば、この法人課税、あるいは寄附税制において税制で優遇を受けるわけでありますから、その辺におきまして格段の税政上の優遇が広がると思っています。
これに対しましては、実際のNPOあるいはNGO、あるいは財団関係の方からはいろいろご意見をいただきました。非常に口はばったい言い方をすれば、好評というか、それはそれだけ税制面で優遇を、あるいは特別な配慮をしてもらえるということは、おそらく予想外だったのかもしれません。そういう形で今回できたことにつきましては、税調並びに各方面からも一応の評価ができたのではないかと考えております。
今日は、これを全部読み上げまして、ご一緒の方もいらっしゃいましたし、どういう議論があったかはお分かりかと思いますが、二、三、あえてつけ加えておきます。やはり租税回避に気をつけろということが何カ所か随分書き込んでございまして、これについて、せっかく寄附税制も含め税制上枠を広げようというときに、この租税回避云々を拡大解釈すればかえって阻止になるから問題ではないかと。要するに、打ち消す方向に使われては困るというご意見もございました。ただまあ、こういう新しい試みの中で新しい仕組みを使って、やはり税の上で抜け穴を探そうという行為は、当然のことあり得るし、現にもうそういういろんな動きがあると聞いております。ここはしっかり書かなきゃいけないという意味で、租税回避につきましては、原文でも何回か断る。これがもしか壊れますと、今回の寄附税制も、あるいは非営利法人制度の法人課税も、かえってこの成果を悪いほうに使われてしまうのではないかという心配をしているわけであります。
それから、芸術とか文化とかいう控えめというか、あまり目立たないところにも、この非営利法人と課税の問題は十分に関係しているのだということを再度強調しておくという言葉がありましたね。
それからもう一つ出てきた問題としては、共同募金とかその辺が町内会等々で強制的に集められる、あれが本当の寄附かねという議論があって、これも今回の寄附と寄附税制の話が出てきたら、寄附文化の一環として、やっぱり見直しておいたほうがいいじゃないかという強いご意見もございました。
それから我々は、「第三セクター」という言葉も使っておりませんし、「サードセクター」という言葉を使っておりません。言っていることは、「民間が担う公共」という言葉でその辺を言い表しているわけでありますが、まああえてその専門家からは、第三セクターに役立つような税制という言い方はやめてくれ、あるいは寄附という言葉はやめてくれと。第三セクターというのは、ご存じのように、なんか赤字の列車が走っているようなイメージがある、あるいは地方自治体で失敗した事業があるようなイメージを与えて、それとは関係ないのだという意味で、その辺の言い方は十分気をつけてくれというご要望もございました。
そういうわけで、この「基本的考え方」がまとまった段階で、あとの作業は秋以降、税法にどうやって落としていくかという作業が残っていると思います。ただ、通常国会で内閣官房が出します新しい非営利法人のあり方なり、法律ができるんでしょうから、それを受けての税法の整備でありますから、少し遅れて後についていくという格好になるかもしれません。そもそも第三者による公益性の認定の機関をつくるまでにも結構時間がかかると思いますので、まだ時間的には2年ぐらいあるのかなあという感じはしておりますが、やっとこれで従来の懸案事項が解決できるかなという感じはいたしております。
水野さんのほうで何か、これまでの経緯、ある?
〇水野座長
特にないです。
〇石会長
水野さんには大変ご苦労いただきまして、前段のほうの、最初中断いたしましたけど、ワーキングをやっていただきまして、あのときは原則非課税、原則課税の問題がなにやら紛糾しちゃって、話がまとまりませんでした。今回は外枠がある程度ぴしっとしていただいたものですから、課税の問題もうまく落とせたなあという感じがいたしております。
以上です。
〇記者
非営利法人課税の信頼性を高めるためにはですね、そのチェック機能ですとか、適正に寄附が使われるルールづくりというのが大事だと思います。あと有識者会議の質の問題もあって、その点についてお考えをお願いします。
〇石会長
今回のこの基本的考え方の文章の中にも、「結びにかえて」で、集中的にまとめて強調しましたけど、第三者機関の重要性はですね、非常に重要であると。ある意味ではですね、ここにかかってるんですね、この寄附税制も、あるいは法人税の課税のあり方も。ここで、要するに公益性を認知されると、ある非課税の枠に入ってくるわけですから、ここが国民的に見て疑いがない、クリアカットである等々で納得がいかないと、非常に困る。また、一たん認めた後もですね、これだけの要するに課税上の優遇を受けるわけですから、国民に対しての説明責任が起こると思いますよね。したがって事後チェックもしなきゃいけない。そして、また第三者機関による再度のチェック機能を生かして、もしくはだめなら、その資格をとり上げるという、幾つかの仕組みができておりますので、そこをこれからどうやって仕組んでいくかというふうに、我々の関心はございます。
そういう意味で政府にしっかり頑張ってくれというメッセージも、我々の「基本的な考え方」の報告には盛り込んでございます。おっしゃるとおりです。
〇水野座長
今、石会長おっしゃいましたように、今度できる第三者機関ですね、それがやはり大事で、ちょっと前に戻りますけれども、前はどうしてうまくできなかったかと申しますと、いわゆる、従来、主務官庁が許可をしていたという、このシステムがよくないというので、それで準則主義に変えると。で、代わりに公益性の認定というものを行うということだったんですけれども、そもそもの問題として、一体公益性は何であるかという議論と、それからどこが判断するのかということが、結論のないような議論になってしまいました。さらに、それに加えて価値観ですけれども、できるだけそういうものを促進していくという立場と、むしろ乱用されないように制限するという立場と、そういう対立がありましたので、非常に議論が錯綜してしまいましたが、今回、非営利法人法制というもので、原案といいますか方針がきちっと出ましたので、税制もそれに対応してということができたのですが、先生おっしゃいましたように、本当に、さて、これから第三者機関、有識者の会議というのは、これは表で出ていただく事務局の体制、それから調査、あと事後的なチェックをどうするか。これは非常に大きい課題があると思います。
〇記者
課税事業の範囲ですけれども、これも随分大変な作業が予想されるんですけれども…。
〇石会長
収益事業の33種類の話ですか。これも現時点でどのぐらいの作業で、どのぐらいの深みがある議論になるか、分かりません。しかし、随分長い間、見直されてませんし、この収益課税というもののイメージは、しっかりしないと、今回の非営利法人の性格づけにも影響してきますから、これは慎重にやらなきゃいけないなと思ってます。ただ、ここは今回の考え方も両論併記的になっておりまして、33を増やしていくというふうに考えるのか、見直しつつ増やしていくと考えるのか、あるいはもっと全く発想をかえてですね、別のネガリストでいくのか。これはまだ決めておりません。これはこれからの作業の中で、実体的な調査を踏まえてやるべきことだと考えています。
〇記者
「民の担う公共」という言葉、一つのシンボリックなマインドとして出てきているかと思うんですけれども、別の見方をすれば、民同士で社会を支えるというような、そういう側面もあると思うんですけれども、そうすれば、すなわちこれまでは公共から受けていたサービスを、いわば民のほうからサービスを受けられるようになるということになれば、小さな政府を目指すような、政府にとっても、ある程度支出なんかを減らせるメリットもあるかと思うんですが、そういうねらいは今回のあれには含まれているんでしょうか。
〇石会長
ええ、やっぱり小さな政府論、それから小泉政権の、民ができるものは民だという発想ですね。それは延長上に色濃く反映されていると思いますね。やっぱり官だけですと縦割りもあるし、それから規制もあるし、やっぱり非効率という面で、できるものができない、そういう面がありますよ。それで、民は民でまたこれマーケットの原理で、どうしても利潤追求になるとですね、なかなかできにくい部分がある。そのちょうど間といいますか、中間的なところでね、NPOで代表されますようなボランティア精神でやっていただく方が出てくるということは、ある意味で経済の活性化にもつながりますよね。まあそういう意味でここをいかに税制面でサポートするかという点がひとつ我々の大きなねらいではなかったかと思います。昨年、先程申し上げた「実像把握」におきましてもですね、この分野が非常に広がってくるし、世界中をみても、この範囲が今後ますます重要視されるだろうという視点から、この税の問題と結びついてですね、ある方向を打ち出したんじゃないかというふうに考えてます。
〇記者
寄附文化のお話なんですけれども、こちらの考え方、文章の中にもですね、自ずと限界があるというようなご指摘もあるんですけれども。
〇石会長
税制で、ですか。
〇記者
税制で寄附文化を育てていくのは限界があるというご指摘があるんですが、民間の団体のほうからは、今回の寄附金優遇を大変評価する声もあって、会長として改めて、今回の税制優遇、寄附金税制の果たす役割を…。
〇石会長
寄附金を…、寄附を集めるという受け取る側の活動はやりやすくなるでしょうね。問題は、出し手のほうはですね、今まで税制が厳しいから、あるいは特定公益増進法人の枠で非課税をとっていないからという理由で払えなかったという、払わなかったという企業等々あったと思いますが、それがかなりなくなるでしょうね。今度は、もう公益的な非営利法人と認定されれば、寄附はかなり自由に集められるわけですから、したがって税を理由にして断られるというケースは、かなり減ると思っています。ただ問題は、出し手のほうとしてですね、アングロサクソン、あるいは外国で見ててですね、寄附というものが、言うなればいろんな意味での、宗教と結びつくから教会と結びつくとかいろいろあると思いますけれども、そういうふうな文化というような形で説明されるほど、まだ日本の社会には定着してない。これは今後どうなるか、それは見極めたいと思ってます。おそらくですね、これは税だけの問題でないという意味は、税を寄附を集めるように、集める側からいって優遇したけど、問題は、出し手のほうはですね、これは税と関係ない動機、あるいは考え方もおそらくあるわけでありますから、これにつきましては、しばらく時間をかけてですね、考えないといけないんじゃないかなと思いますがね。
僕はしょっちゅう例出すけど、ビル・ゲイツみたいに、もうすごいお金を毎年毎年、世界中の方に寄附として出しているとね、それなりに社会的に評価されるような、まあアメリカなんていうところはそれを表彰しますよね、顕彰しますよね。ああいう制度が必要なのかもしれないし、まあその点、日本がこれからどうするかというのは、注意深く見守っていかなきゃいけないかなと考えてます。なるべく寄附文化が根づくような方向で、この寄附税制あたりが有効に活用されればいいなとは思ってます。
〇記者
先程、水野先生がおっしゃった前回の議論に触れられたところでもありますが、価値観というところなんですけれども、いわゆる民が担う公益という動きをできるだけサポートしていこうという考え方と、それからいわゆる乱脈財団・社団に象徴されるような乱用は避けなければいけないという考え方ですね。これは、それぞれオール・オア・ナッシングではないかと思いつつ、どちらに軸足を置いて制度を考えていくのかというところは、やはり近くて遠い面があるかと思うんです。それぞれ水野さん、それから石さんにお聞きしたいんですが、ここ数年議論されてこられた中でですね、税調内あるいは世の中全体、大きく言うと二つの考え方がそれぞれどう、バランスといいますか変化の具合ですね、そのあたりをちょっと感じられるところを。
〇石会長
じゃあ水野さん、どうぞ。
〇水野座長
今回につきましては、やはり大きいのは、非営利法人についての法律的な仕組みというもの、基本的な方針が出されておりまして、いわゆる公益性とは何だという議論は、我々やる必要はなかったんです。前のところで問題になるのは、やはり公益性をめぐって、さらにその判断を誰がするんだと。で、そんなにきちんとできないだろうという意見や、あるいは大丈夫だと。そういうふうなところでの対立がありまして、基本的に見れば、話が各論から入っていったような感じで、いわゆる公益法人の中に、これはいわゆる公益を追求するきちんとした団体であるから、もっと増やすべきであるというご意見もあれば、こういうものは危ないから、できるだけセーブすべきだというご意見がありまして、その認識の上で議論が始まりましたので、なかなか収れんしなかったんだと思います。今回、枠組みができた上で、皆さんそれに則ってましたので、特に価値観を強く押し出されたような方もなかったと思います。
〇石会長
今回、やっぱり税調としてある決断というか、ある方向を取ったと思いますよ。今、二つ、相反する論点整理されましたよね。我々としては、民の担う公益活動の領域をですね、やはりサポートしたい、それを改めてプッシュしたい、促進したいという気があったと思いますから、租税回避という言葉で、極力その辺は問題視しつつもね、基本的には、非営利の活動を広げていきたいという問題であります。したがって、外枠で決まったことがすんなり受け入れられたと思います。で、それに対してですね、特に反対という意見もなくてですね、ある意味で税調で一致して、この寄附も含め、民の担う公共活動を支援したいという意欲には燃えていたと、こう思いますので、前の議論を完全にクリアしたと思いますね。そういうふうにご理解いただいて構わないと思います。
ほかにいかがでしょう。よろしゅうございますか。
じゃあどうもありがとうございました。あと、個人所得課税のほうは火曜日に公表いたしたいと思います。
(以上)