総会(第30回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年6月10日(金)16:38~17:09
〇石会長
まず最初に、スケジュールの変更から申し上げたほうが混乱がないと思います。お手元に、「スケジュール(案)」と書いた1枚紙があると思います。実は21日に、今やっております二つ、つまり非営利と個人所得課税を一挙にまとめて公表と思いましたが、非営利のほうの議論が先に進められるような状態になってきました。つまり、それだけ早やまとめられということもありまして、それは17日(金)に公表したいと考えております。来週の今日ですね。非営利だけ先に、寄附税制も含めてやりたいと思っています。21日に残ったもう一つのパーツの個人所得課税、これを公表したい、こういうふうな段取りになりました。それだけ変更という形でお伝えいたします。
今日は、当然のことながら案文ができておりまして、二つのパーツにつきまして、文章に従いまして議論をいたしました。大体15~16ページから20ページぐらいのものであります。そこで、この案文の性格でありますが、非営利のほうは、一応「基本的考え方」とはっきり書いておりますように、ある程度方向性がにじんでいるという書き方にしておりますが、ただ、すべからく決め打ちには書いておりません。というのは、秋以降、今の話でいろいろ詰めなきゃいけないのを、今からそう断定的なことは言えないだろうということであります。それから個人所得課税のほうは、「論点整理」というようなタイトルにするかどうか、まだちょっと決めておりませんが、そういうことで、ちょっと取り扱っておりますテーマの性格が、両者違いますのでね。つまり、寄附税制も含めて非営利のほうはそれなりに、ある方向性は短期間で決まる話、個人所得課税のほうは、今後何年もわたってやらなきゃいけない話でありますので、そうある方向がピシャッと出てこない。そういう意味で論点整理したという性格がございます。
そこで、まず最初に非営利のほうの議論をいたしました。今回の議論につきましては、あらあらの主要な項目を並べたものを既にお渡ししてありますので、言うなれば、内閣官房でやっております新しい非営利法人のスキームに従って、その課税のあり方、あるいは寄附税制のあり方につきまして、議論をまとめていっているということでございますので、それなりに議論の流れはお分かりいただけようかと思います。
そこで両論併記という意味じゃなくて、まだ決め打ち的にどっちと言えない、そういう意味で選択肢を出しておこうというところが幾つかございますが、これはあらあら申し上げてもいいと思いますけれども、例の寄附金税制でいうならば、みなし寄附金の取り扱いとか、金融収益課税の取り扱いとか、あるいは33業種の例の収益事業課税を一体ネガリストでやるかポジリストでやるかというあたり、これはまだ決めておりません。それから個人の寄附金に関し所得税で1万円と10万円という適用下限について、所得税と住民税のその流れがございましたが、まあこれにつきましても引き下げる方向で考えるということをはっきり書き込んでございます。それからまあ、法人税について言うなれば、公益目的に出す寄附と一般寄附金、二つ並行してますが、事柄の趣旨から言えば、公益のほうの寄附金は大いに充実させるべきだけど、まあ屋上屋的な一般のほうは、それはいいんではないかというような話に議論がまとまっていくと思います。
そこで今日、読み上げるだけで40分ぐらいかかるんですが、その後、議論が幾つか出ましたけれども、地方の側からは、言うなれば、今回やっております民法34条の社団法人あるいは財団法人以外に、地縁団体とか地域特有の…、もう一つは何だっけな、言うなればそういう地域特有なところの団体について、共益的な組織であって、その会費以外にお祭りの寄附みたいなものもあったりして、一体全部課税の網にかけられたら心配だというような話とか、まあそういう点がちょっとございましたが、基本的には、この流れに沿って、今回の改正の趣旨、つまり民間が担う公共というのを強調して、寄附というものについて、今後、非常に重要になってくるから、それを税制面でサポートするというようないき方について、ある方向につきましては合意が得られた、このように考えております。
それから、個人所得課税のほうも、同じように40分から50分ぐらい、読み上げるとかかるぐらいな量でございますが、これも、もうあらあら、すべて主要な項目について、流れについてはご説明してあります。つまり、所得区分の話から始めまして、それから世帯とか、それから子育てとの絡みにおいて課税単位であるとか、それから控除の問題をどうするかという話。それから税率が低過ぎる、課税ベースが細っているというようなことも踏まえ、実効税率ベースで今後、法定税率と課税ベースを組み合わせた形の実効税率ベースでこれを議論しなきゃいけないだろうという点。
今回の大きな特色は、税務行政、税務執行面につきましても、納番も含めてかなり踏み込んだ議論をしているということであります。
それから、よく世間でいろんな問題提起をされることについても、一応答えを出したいと思いまして議論を展開したところもございます。例えば、納番を入れて自営業者、あるいは事業所得を捕捉できるということについては、我々も議論いたしましたが、それをはっきり、非常に難しいというようなトーンで一応文章に書いてございます。
そういう意味ではここでも、秋以降の話が本格化するときに出てくる論点を整理するという趣旨でありますので、はっきり決め打ちできない分は、決め打ちはしておりません。そういう意味で、国税としての所得税、あるいは地方税としての住民税も、今後どういう方向で議論を展開し、どういう形で控除なり税率を整理していったらいいかという形での議論を展開いたしました。
よく言われております給与所得、あるいは事業所得、あるいは退職所得につきまして、具体的にどういう方向で物を考えているかと。ただ、これは早急に来年からやれという話ではなくて、数年先の話になると思いますが、今後、税制改革をやるとき、個人所得課税の改革をやるときに指針になるような、ガイドラインになるような主要な論点は整理できたと思います。
またスケジュール感でございますが、今日、総会で一応いろいろな議論をいただきましたので、これを今からどういう形で修文に生かすかということを検討しまして、来週の14日(火)にもう一回、二回に分けて小委員会を開きまして、そこで最終的に一応整理して、17日には、非営利のほうだけ総会に諮ってまとめたい、このように考えています。冒頭申し上げましたように、2段階で公表したいというふうに決まったということであります。
何かご質問がございましたら答えますが、大体の今日議論いたしましたレベルは以上のようなことでございます。
それから、資料として個人所得課税と個人住民税が出ておりますが、今日は個人住民税のなかで直接議論しておりませんが、この個人所得課税の中で、これは前にもお渡しした資料かと思いますが、新しい資料が幾つか入っておりますので、もしかご興味があるところがありましたら、ご覧いただきたいと思います。以上です。
〇記者
本日の総会では二つのテーマについて、基本的に方向性は了承されたということでよろしいでしょうか。
〇石会長
と思います。
〇記者
あと非営利法人については、これは「基本的考え方」、個人所得課税については「論点整理」にとどまるというか、どんなタイトルになってますか。
〇石会長
今の案としては、個人所得課税に関する論点整理という感じなんですがね、それでいきたいと思う。つまり、論点整理という意味はいろんな問題があって、これから詰めなきゃならないさまざまな論点があるよと。これをある改革の方向の流れに添ってね、整理しておきたい、こういうことです。
〇記者
個人所得課税で控除の縮小、廃止について、なんか特に強い反対意見とかは出ましたでしょうか。
〇石会長
そうですね…、いずれにいたしましても、今回改めて問題提起したのは、世帯との関係、あるいは子育ての関係で、言うなれば個人ベースでやってきた所得税なのに、さまざまな家族、あるいは扶養ですね。子ども等々あって、そっちのほうに非常に多くの控除が使われてしまっているわけでありまして、例えば夫婦というのも、例えばこれまで…女性がいるからそう言っては怒られるかもしれませんが、どちらかといいますと、奥さんは一緒に生活していても、担税力の減殺につながるような発想で配偶者控除をつくってきたわけですよね。今やイコール・パートナーであって、そうでもなかろうと。要するに結婚したからといって担税力が落ちるのではなくて、逆に言えば、頑張る奥さんもいっぱいいるし、まあ個人課税でありますから、もう職業についてしまった奥さんは別の納税者でありますね。しかし、専業主婦等々であってもですね、まさにある意味では家事労働サービス等々を生み出している。そういう母体でもあってですね、単に担税力の減殺ではなかろうと。したがって、税制面から見ればですね、子どもとか身障者の方は多分、それは担税力を減殺していると思いますけどね、奥さんはそうじゃなかろうというような問題提起を今回改めてした。そういう意味で、配偶者控除というものについてはですね、いろいろ考えることがあるだろうと問題提起してますが、いろいろな意味でそこまでは詰め切れてないということですね。
いずれにいたしましても、退職金の課税につきましては、まあ将来の話もあってというような話とか、それから給与所得控除についてとか、ただね、今日は個々の所得控除の圧縮等々につきましてね、強い反対というのはそれほど出てこなかったと思います。流れ全体については見直すと。で、まだ幾ら幾らどうするという話までいってませんから、そういう議論でしたね。
〇記者
配偶者控除は、「縮小」なり「廃止」という文言は入らない可能性があるということですか。
〇石会長
ある個別のね、配偶者控除にしても、給与所得控除にしても、退職所得控除にしてもですね、来年度の税制改正、さらに次を含めてね、秋以降だと思ってるんですよ、我々。要するに、検討の材料にする項目は幾つかありました。それを「見直す」という言葉、「検討する」という言葉は縦横に入っていますが、それをどの程度とかですね、どこに優先してこっちがとかいう言い方には、今回論点整理でありますから、なっておりません。ただ、お読みいただければ、我々が考えております将来像というのは出てくるかなとは思ってます。そういう意味では、ちょっとご期待に沿えない面もあるかもしれない。
〇記者
全体としてですね、よく…、先生がおっしゃったことじゃないんですが、今度の税制の見直しというのは、社会の歪みにあわせて改めるんだから増税じゃないんだという言い方をする人もいなくはないんですけれども…。
〇石会長
うん、いっぱいいると思いますよ。
〇記者
その課税ベースを広げるということで、それ、よく分からないんですけど。
〇石会長
そこは、我々税調でも議論いたしました。これだけ財政赤字があって、財政再建が言われてるときね、所得税改革をやるといったときにはですね、とりあえずその増税というようなイメージがちらつく。だから、増税を第一義的にとらえれば、税率を上げたり、課税最低限を下げれば増税になりますよね。そういう増税のテクニックに今回の改革の案をつくってはいません。それで我々、ひずみ・ゆがみ、不公平、これは過去の相次ぐ減税政策等々に出てきたという見方をしてますから、それを改めるということ、つまりひずみを改め、不公平を改めるということは、課税ベースを広げざるを得ないんですね。したがって、そこの根っこにあります所得の区分、それから控除、それを、ゆがみ・ひずみをなくす方向でいけばですね、当然のこと、副産物的に増収になる、結果としてね。
だから、そのたたずまいというか、所得税の姿を本来に戻す過程においてですね、結果として増収策に結びつくというのが我々のとる方向ではないかと、こう思ってます。したがって、目的から言えば増収という方向を目指すということに多分なるでしょう。ただ、あくまで、何度も繰り返しますように、所得税自体の、本体がね、かなり傷んでるので戻したいということですね。
〇記者
分かりました。それと、先ほどは興味深いお話だったんですけど、専業主婦であっても、家事労働サービスですね、いわゆる昔で言った「シャドーワーク」みたいな。シャドーワークにも、やっぱり担税力があって、課税すべきだと…。
〇石会長
いやいや、そういう担税力があるから奥さんに税金、という話じゃなくてですね、元来、専業主婦というのはですね、「まあ収入も稼がないし、なんか重荷になるじゃない?」なんていう話をしてますが、考えてみると、奥さんがうちでやってくれたがゆえに、手伝いのパートの人を呼ばなくていいしさ、いろんな意味でのプラスを生んでるわけですよ、その主婦サービスという意味でね。そういう意味で、決してお荷物になってないよと、イコール・パートナーとして、新しい夫婦像から言えばですね、税制でことさら優遇することはないだろうと、こういう趣旨ですよ。
そういう趣旨で、それは女性の委員からは非常に評判がいい。それはそうでしょうね。いや、ここにいる記者の女性の方は知らないけど、評判いいでしょ、きっと、こういうことを言えば。だめなの?(笑)
それは、専業主婦を持っている方に言えば、私もそうだけど、なんかいろいろ意見があるかもしれないけど、ただ、それで急に経済力があるから云々かんぬんということにはいかないけど、税制でことさらね、ということですよ。理論としてそういうことです。
〇記者
非営利法人税制のほうですが、先ほど地縁団体ですか、お祭りの寄附みたいなものにも課税されてはかなわんという意見が出たというところに関してなんですけれども、今回、いわゆる第三者の委員会でその公益性を認められなかった非営利法人ですね。これは、いわゆる同窓会の会費みたいなものを除くと、まあ一般の法人と同じ扱いをすると。つまり、原則課税ということかと思うんですけれども、これ、例えば同窓会の会費みたいなもの以外にどういうものを非課税にするとか、細かいところというのはどの時点で議論することになるんでしょうか。
〇石会長
同窓会の会費、あるいはたまっているある余剰、これはまあ非課税でいいと、そこははっきりしてるんですよ。そうすると、共益ですよね、同窓会というのは。共益と公益のグループは非課税でいいと。ただ、営利のほうに近づいて、限りなくですね、一般の法人と同じような活動をする者が、まあ一般的な非営利法人という、届出をしてそこで認められるところがあるだろう。そこに関してはですね、何が出てくるか分からないと思うんです、まだ。具体例をね、議論の中で何かって聞きましたけど、もうさまざまな動きがあるようでありましてね、分からない。したがって、出てきたケース・バイ・ケースでね、それの対応をしなきゃいけないだろうと。そこは、我々としては、「例えば」という言葉を使わずに、あるいは使えずにですね、その対応を見て判断するという形にしてます。だから、おそらくそこは収益課税と同じような、あるいは営利活動をしている法人と同じような形でいくグループと、あるいは限りなく共益に近いグループと、さっき言ったお祭り云々の地域団体、あるいは人格なき社団みたいな話でですね。かなりはそこはバラエティが分かれるんだと思いますが、それはですね、ちょっと今、事務当局も実務的な目から見ても、ちょっとまだ判断がつきかねるという形で、決め打ちしてません。
〇記者
そうすると、年末の税調での議論マターでもなくて、国税庁通達みたいな、そんな形に…。
〇石会長
いや、これ、何年先にどうなるか分かりませんけれども、いずれにいたしましても、非営利法人の新しい制度設計は、内閣官房がつくっております法律で決まってきますね。それと同時並行的に、寄附税制も含めた課税は当然のこと含ませなきゃいけない。ということは、法人税と所得税と、それから相続税の世界で、この非営利法人関係の活動に関する税が入ってくると思うんですよ。ですから、年末の年度改正について、これが入るか入らないかというのも、先ほど申し上げた内閣官房のほうの制度設計と呼応する形ですが、あっちが順調に進めばね、それなりに税のほうも仕組まなきゃいけないと思ってます。仮に、来年4月からそちらの非営利法人がうまくスタートできるなら、税も今年、来年度にかけて議論しなきゃいけない。そのときに、今おっしゃっていただいたあたりをどう書くかというのが実務的な話としてあるんだと思いますが、ただ、これは税調としてどこまでその辺の情報を仕入れてですね、具体的に設計できるかというと、ちょっと今のところ分かりかねます。
〇記者
今後数年の議論の指針ということなんですが…。
〇石会長
個人所得課税のほうですね、そうです。
〇記者
「数年」というのは何年ぐらい…。
〇石会長
僕なんかは、人によっては違いますけど、まあ数年といったら、セブラル・イヤーズですからね、5~6年先を考えるかですね。つまりね、所得税の改革というのは、結構いろいろありますよ。例えば所得控除を見直すだけで、もう五つや六つ、すぐ出てくる話ですからね。で、それを一気にできるわけでもないし、それから今後のいろんな社会保障改革もあるだろうし、消費税問題もあるだろうし、他の要因との絡みでね、所得税だけ独走できなければ、それはもっと先になりますよ。
ですから、我々としては、今後まあ5~6年先か10年先か分かりませんけどね、そういう長い目で見て、ここが問題だということを出したという意味で、僕の意識はそのぐらい長めで見てますけど、もうちょっと短期でやろうという人もいるかもしれません。しかし、それは何度も言うように、消費税の問題あり、あるいは年金だなんだと改革の問題あり、ちょっとだれも、今のところ分からないんじゃないですかね。
〇記者
5~6年先の、まあ段階的な改革を視野に入れた…。
〇石会長
ということですね、ええ。一挙には多分できないでしょう。
〇記者
申しわけありません、ちょっと小さい話なんですが、個別で申しわけありません。給与所得の控除なんですが、必要経費。サラリーマンの人は非常に関心あるテーマだと思いますけど、確定申告しやすいようにするというと、まあ聞こえがすごくいいんですけど、今のざっくり部分をですね。ざっくり今、控除を引いてる部分をですね、どこからどこまでが経費に認められるかによってですね、先ほど私、言いました納税感というのが大きく変わってくると。
〇石会長
変わってくると思いますね。この給与所得控除は過大か、過小か、適正かというのは、税調でもすごくもめてます。例えば、サラリーマンの立場から言えばね、当然今のでいいというご判断でしょう。ところが、それでクロヨンの問題があるから、事業者あたりは非常に優遇されてるんじゃないかという指摘がありますね。ところが、また青色申告会とかですね、あっちの側から言いますとね、今、給与収入の約3割なんですね、28.何%で、まあ約3割ですね。それだけ一挙に引かれてるのは引き過ぎじゃないかということが、給与所得側じゃない非給与所得側にあるわけですよ。つまり、会社でやって、すべからくやってもらって、おんぶにだっこなのに3割も引いてくれると。片や、事業所得者は自分でリスクを冒して稼いで、そこからいろいろ積み重ねて3割も引いてもらってないじゃないかと。これが絶えずあってですね、いろいろあるように、実際に計算してます。今日はどこかの新聞に出していただいてますけど、実際に積み上げ計算すると1割もいかないだろうと。6~7%しか、今のサラリーマンの必要経費を積み上げればね。ただ、今は3割といってもね、大雑把に言うと、そのうち1割が必要経費で、残り2割をおそらくクロヨン対策の、所得のギャップ調整みたいな意味で説明してるんじゃないですかね。そのギャップ調整のところはね、もう最近、クロヨンという言葉もあまり使われないように、事業所得者のほうもですね、これから例の記帳義務を課したり、それから、何分にも益税対策で消費税の非課税水準3,000万円が1,000万円に、これが落ちてきますからね、それはもうだんだんしっかりしてきたんですよ。そういう意味でバランスのとれるような感じになりますと、今言った給与所得控除をこのままの形でいつまでも認められるかという問題があり、それだったら、課せられる人はどうぞ実額控除で、特定支出控除というのは今は10人しか出てませんが、あれもひとえに、3割をあらかじめ削ってくれるから実額で積み上げる意欲がないんでね。それは制度が変われば、特定支出控除でどんどんやって、アメリカ型に実額控除が出てくるかもしれませんから、そういうほうででも選択の幅を広げたいと、こういうことですね。
〇記者
そこはかなり、読んで分りやすく書いてあるんですか。
〇石会長
と思いますけどねえ、ええ、そこは。いや、給与所得控除に関してはそういう流れですね。今言ったいろんな所得区分のバランスを考えましてね、給与所得控除だけ、いつまでもこの制度ではまずかろうというような印象は持ってますね。
〇記者
先ほど、税調の女性のメンバーに評判がよかったというお話の…。
〇石会長
いや、たまたまそういう人がいたということで、全員が決をとったわけじゃないから知らないよ。(笑)
〇記者
まさに今回、子育て支援の方向を打ち出そうという話が出てる中で、配偶者控除の縮小方向というのが、その子育て支援と逆のベクトルなのかという意見は出てないんですか。
〇石会長
出てないですね、別に。それは、配偶者控除といってもね、まあある意味で基礎控除に振り替えるという話もあるだろうし、どちらかというとそっちの話があるかもしれないし、今の配偶者控除をばっさり、今の段階ですぐなくせるとも思ってないしね。ただ、事柄の性格として、従来の担税力の減殺で専業主婦を見るというのは、いささか時代おくれじゃないかと。ゆがみ・ひずみの典型じゃないかと思ってる…典型かどうか分からないけど、まあ典型ですかな、思ってるわけですよ。そういうことです。
〇記者
今のに関係するんですけれども、少子化対策のところは、まあ全体は5~6年だとしても、少子化対策の部分は先行して…。
〇石会長
先行することはあり得るでしょうね。
〇記者
かなり来年度改正を意識してやるということでいいんでしょうか。
〇石会長
うん、ちょっと秋の議論を踏まえないと分かりませんけどね。子育て支援ということは今、日本の国にとって全体として大きな問題になってますよね。税からも何かせにゃいかんだろうという話に当然なりますよね。まあそういう意味で、何回もご説明してますように、税額控除にするという形を提案したら、ある意味でこれは歳出と同じような扱い方になっちゃうんだよね、税額控除というのは。まあ補助金みたいなね。そういう意味で、今ありますよ、児童手当が。あれとの絡みもあるしね、トータルで見て、子育て支援に役立つような改革にしたいと思ってますね。したがって、幾つか増税項目が出てますけど、子育て支援については、それを支援する形ですから、減税の方向に動くと。
〇記者
そこのところは、ほかの控除の見直しと必ずしもセットじゃなくていいと、先行して実施することもできると。
〇石会長
あり得るかもしれません。ただね、今言った論点整理でありまして、どれとどれを組み合わせて、一体どのぐらいの金目になってどれだけ、だれがどのぐらい負担するかというあたりは秋の話かと思ってますんで、今回具体的に、その組み合わせ、あるいは数量的にイメージするようなことには多分なり得ないと思ってます。
〇記者
ちょっとこれもまた先の話になりますけど、今の時点で消費税の問題というのは、所得税改革の関連を、会長はどう考えているのか…。
〇石会長
いや、これはもうひとえに、小泉さん以降の、アフター小泉の問題ですよ。分かりません。
〇記者
社会保障制度改革のほうは先行して進むわけですよね。
〇石会長
進むわけでしょう。その後、消費税の話が出てくるのかもしれませんけどね。
〇記者
その消費税の問題が出てきたときには、やはり所得税改革のほうは少し待って取り組まなきゃいけないですね。
〇石会長
なるでしょうね。それは無理ですよ、ダブルパンチは。おそらくそれは無理ですよ。まあでも、年金のほうでね、それが安心・安全、買えればという議論はあるけど、今のままだと、年金給付を減らすのを、少なくする程度にしか安心・安全は買えないふうになればね、それはやっぱり先行き暗いからね。
〇記者
そういう意味では、現実的には社会保障と消費税の問題の議論のほうが先行するということですか。
〇石会長
いや、先行して続くということと、すぐ消費税をアップのほうに、すぐ政治的にいくかどうかはまた別問題でしょうねえ。ただ、年金改革とかなんかの中に、保険料だけの引き上げではできないというのは、もう明らかですからね。そうなると、税を入れなきゃならないというときに、何で入れられるかといったら、所得税か消費税かという議論になって、多分消費税というふうに話はいくんでしょうねえ、議論としてはね。
〇記者
子育て支援の関係で、私の知り合いの勤労女性は、多少のお金をつけてもらうよりも、職場復帰のほうだって言うんですね。子育て支援税制とかですね、言うためには、相当考えた内容でやらないといけない。その辺は、税調ではどうですか。
〇石会長
いや、子育て支援税制といっても、税制を使うときには納税者じゃないと意味ないんですよ。課税最低限をオーバーして、かなりの所得税を払ってくれてるから減税効果があるんであって、あらかじめ、ちょっと失礼だけど、非課税の低所得者層で子育て支援というのは、これはあり得ないんですよ。だから、税というのには限界あるんですよ。したがって、児童手当のほうはいいでしょう。それからおっしゃるとおり、保育所をつくったり、キャリアパスを阻害しないような企業の雇用関係であったり、等々のほうが僕ははるかに重要だと思ってますから、あくまで税でやるのは限界があると思ってます。それもはっきり訴えたいと思ってますし、何でもかんでも税制でと言われても、ちょっとこれは難しかろうと思ってますね。
ただ、何かやらなきゃいけないということになれば、ひとつ考え方としてはあるだろうということですね、税で。
〇記者
確認なんですけど、「見直す」とか「検討する」という表現でやっているということですけど、例えば配偶者控除なんかは廃止を含めとか、そんなような言葉で、表現としてはどうなんでしょうか。
〇石会長
表現としてどうだったかなあ…。いや、配偶者控除云々というのは、検討する必要があるという話ですねえ。まあ例の、例えばパート103万円の人だとね、自分で基礎控除を使いつつ、亭主のほうでまた配偶者控除を使うというのは、控除の二重使いなんですよ、これは。そういうのは問題を指摘してあったりですね、それからフランスのN分N乗がどうだとか、あるいはアメリカでやってる夫婦合算がどうなんてことを踏まえた、いわゆる配偶者、いわゆる世帯のあり方、配偶者の関係ですね、こういうことを言ってありますが、まあそういうことを踏まえて課税単位のあり方とかですね、それから夫婦の関係のあり方とか、とりあえず財産制度ね、これ、意外に面倒くさいんですよ、別産制と共有財産制があってね。そういうのを踏まえると、なかなか今ある制度をですね、ばっさり変えるのは難しいから引き続き検討と、これがあれですね、ご期待に沿うような文句では多分なかなか書いてないんじゃないですかね。
というわけで、来週の今日には非営利のほうは公にしたいと思います。
(以上)