総会(第29回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成17年5月24日(火)16:06~16:19
〇石会長
今日は四つのテーマを取り上げました。あとの二つは、つまり財政の長期試算と地方行革の方は、一応、報告的に扱いましたので、前段の二つが今日の主要なテーマだと思っております。そこで、既に議論をいただいたところをさらったわけでありまして、皆さんもお聞きになっていたと思いますが、特に目新しい点はなかったかと思います。ただ、三つ四つ、今日議論した中で、今後それをまとめていくに当たってのポイントだけ申し上げます。
やはり退職金をどうするかというのは、今日、総会のメンバーの方も含め、かなり大きな問題になったと思います。公務員に引っかけてもご議論をいただきましたが、退職金というのは広く民間の従業員の方にも関係している話でありますから、そう公務員に引っかけることもないと思います。ただ、長期的な期待権というものがある話でありますから、一気呵成にはなかなかいかないだろうと。それから、15年以上勤めませんと、実際のところ、退職金には課税が行かないといった、今の大きな控除があるとか、連合の方が言っていましたけれども、20年を超えて控除が非常に変わってしまうあたりはどうかといったようなあたり、やはり幾つか問題が出ていると思います。そういう意味で、もう少し情報を集めながら、退職金を使えるような仕組みについての外枠の条件を少し固めなければいけないかなと思っています。
それから、納番が二つ目の大きな問題であって、今回、新しく事業所得というものについて、捕捉・把握が納番によって可能かどうかということを原理的に詰めてもらいました。原理的といった意味は、今日の図のおわかりのように、小売業者の方々を我々消費者まで巻き込んで納番というのを使ってその小売業者の所得を捕捉するというのは、これはちょっと事実上難しい。と同時に、銀行口座の情報まで全部集めるというのは難しいと思いますが、ただ、今後、年金・介護を含めて、自営業者の所得捕捉というのが本格的に問題になったときに、我々の問題提起を受けとめてもらって、もっとしかるべきところで、税以外の世界にも納番は絡んでくる話でありますので、議論するような場ができれば、積極的に納番の活用というのをもう少し議論したらいいと思っています。単に、金融所得の課税上の名寄せ以上に税務執行の適正化という視点から、納番の利用価値はますます今後高まると思いますので、ぜひやっていきたいと思っています。
それから第3、今日非常に活発な議論を呼んだのが新しい非営利法人の制度の仕組みと課税上の問題ですね。皆さん、方向については異論がなかったと思います。ただ、懸念を示された方は、第三者機関が本当にこの新しい非営利法人の仕組みを完全に把握できて、完全に制度として機能させるだけのパワーがあるかどうかというあたりが一番の問題だと思っております。議論が若干分かれた点では、みなし寄附金のところをどうするかとか、あるいはそもそも国と地方の寄附金税制、違ってもいいんじゃないかという議論と、同じ方向でできるだけ動かしたらいいじゃないかという方向と、意見の微妙な違いはあったかと思いますが、さはさりながら、地方が条例を持って、地方分権ですからやるべきであるということについては、さほど大きな異論はなかったかと思います。地方がそれだけ自分の方で寄附金によってレベニューロス、歳入ロスができても覚悟の上でやるなら、地方の議会で決めればいいことだし、地域住民が覚悟すればいいことだろうと思っております。そういう意味で、さほど大きな食い違いはなくて、この辺はまとめられるのではないかと思っています。
そういう意味で、非営利法人と寄附税制の方は、ほぼ今日お出しいたしました主要論点メモ、あれはボキボキと言っておりますが、それを文章化することによってまとまっていくというふうに思います。ちょっとした対立点は、その中で解消できるものと思っております。
問題は所得税の方で、まだ税率とか控除とか、それから住民税そのものの改革の詳細につきましては、今度の金曜日に議論するという中で、何が出てくるか、もうちょっと議論してみなければわかりませんが、まとめるところでより苦労があるのは所得課税の方ではないかと、このように考えています。
今回、かなりテクニカルに、例えば10種類の所得区分をどうするかなんていうあたりのテクニカルな話も大分出てきておりますし、納税環境の整備という意味で、従来そう深く突っ込んだ議論でない記帳義務であるとか、立証責任であるとか、公示制度であるとか、いろいろ出てまいりましたので、それをどういうふうにこれから整理していこうかという問題は残っているのかと思いますが、これも大きな幅の中に議論が入っていると思いますので、そう対立点が荒々しく出ておりませんので、まとめられる方向でと思っています。
今日、スケジュール表をお渡しいたしましたように、逆算して6月21日に一応整理したいと思いまして、それまでに二つある小委員会をフルに活用いたしまして議論を整理したいと、このように考えております。
以上、中身についてのコメントというよりは、三つほどの感想を述べたということであります。
あと、財政の長期試算の方、残念ながら時間がなくて、意見は求められませんでしたし、地方行革の方も、いろいろご意見があった人もいたのかもしれませんが、いずれまた別な機会に意見があれば受けとめたいと、このように考えています。以上です。
〇記者
退職金のところなんですけれども、まず退職金、非常に過大に優遇されているのではないかという問題意識から入っていって、ただ、その一方で、それを利用して、外資系なんかが退職金制度を利用しているということもあると。利用とかは短期的に確保していかなくてはいけない問題ではあると思うんですけれども、例えば短期的に、今年の税制改正のところでやっていかなくてはいけないところと、あと長期的にやっていかなくてはいけない、その辺の問題の整理を…。
〇石会長
おっしゃるとおりでしょうね。先ほど期待権と申しましたけれども、やはり長期的な面というのは、人々が長い間積み重ねてきた、言うなれば労苦に報いるという点でもありますから、そう簡単に一挙にはいかないでしょう。ただ、今既に悪用というか、乱用というか、そうされている面ですね、ごく短期に勤務しただけで、この退職金制度を利用して2分の1課税の適用を受けるといったあたりは、できれば恐らく阻止できるようなことになるのかどうか、ちょっと議論してみなければわかりませんが、そういう意味では、できることを短期ということならば、その辺の議論はできると思っています。
〇記者
そこら辺、例えばどんな方法論が考えられますか。
〇石会長
方法論というのは、退職金というのはそもそも、ある年限以上勤めなければ、そもそもが退職金の適用を受ける資格がないとなれば、5年とか6年とか短いあたりで退職金の一番いいところ、おいしいところだけを取ってしまうというのはおかしい。それはそれで、これからの議論次第でありますが、直す方法はあるんじゃないでしょうかね、そこは。と思います。ただ、まだこれ、税調の中でも具体的に今言った問題を議論しておりませんから、しなければいけないと思っています。
〇記者
非営利の所得税と住民税のところ、結構今日……。
〇石会長
ありましたね、議論がね。
〇記者
ちょっともう一度、今日の議論を整理して、石会長の考えをお聞かせ願えますか。
〇石会長
要するに、これまで住民税というのは、できれば寄附金税制の適用を受けたくないというのがあったでしょうね。というのは、やはり住民税というのは、そもそもが応益原則に従った税で、会費だと言う人がいますから。その辺まだ屋上屋的に寄附で、その辺に金を集めたものを減税の対象にしようというあたり、おかしいと思っている人もいたんでしょう。したがって、10万円以上じゃなかったら対象にしないというふうな、ある意味で全く個人が寄附して、寄附税制の適用を受けさせようという発想は住民税になかったわけです。国税の方もそこそこ、1万円以上については25%、これは30%に上げましたけれども、国税はそれなりのスタイルがありました。ところが、最近、官から民へとか、第三セクターの活用であるとか、NPO法人も含めて、政と官の間に落っこちて大いに活躍するのを支援しなきゃいけないというので、寄附税制が出てきたわけです。したがって、国税については、大いに前向きの議論があって、国税に言うなれば寄附税制の枠を広げよういう、言うなれば追い風が大分吹いてきて、それに従って、今具体的に申し上げた1万円をどう見直すか、あるいは25%から30%に上がったけれども、さらにもうちょっと上げてもいいんじゃないかとか。それから仕組み自体も、もうちょっと、何かスムーズにできないか、とかいろいろ問題意識がある。それにつられてと言ってはあれですけれども、住民税もそれに引っ張られて、少なくとも寄附税制という部分について、もうちょっと積極的にならないといけないんじゃないかという視点ですよ。
それで、どこまでできるかといったときに、住民税は住民税の固有の制約があって、地域間の受益と負担の問題があるから、そこで野方図にはできないだろうということと、国が一律に決めていいかねという点で、今日も随分議論になりましたけれども、地方固有の事情からの公益性があるんじゃないかとか、これについて否定した人もいましたけれども、異論があるという形で、僕は、条例でやるというのは一つの方法で、これは大体反対もないので、地方は独自に寄附税制に積極的に取り組めと。ということは、取り組む県と取り組まない県が、多分ばらついて出てくるでしょう。これも地方分権でいいじゃないかと思っています。そういう整理でありますので、どっちも寄附税制については、かなり前向きに取り組むと。ただ、地方については、地方独自の判断に任せると、僕はこれでいいのではないかと、こう思っています。個人的には、国税の1万円の壁と30%になった個人の所得の枠と、この辺はもうちょっと広げてもいいんじゃないかと、寄付をやりやすくするという方向でね。それから、地方は、今言ったように地方独自でやるというところでボールを投げて、お手並み拝見という言い方はおかしいけれども、やってもらうのも一つの手じゃないかと、このように思っています。
何かありますか。いずれにしても、金曜日に所得税を本格的にやった後、全体像がわかってくると思います。金曜日にもう1回整理したいと思います。
〇記者
スケジュールなんですが、そうすると、答申の総理への手交は21日ですか。
〇石会長
それは、まだ確定はしていないんですけれども、これは総理から出された諮問に応えているというわけじゃないんです、必ずしも。したがって、主要論点を整理したという意味で、多分、総理に持っていかないという選択肢も十分あり得ると思います。来年度の税制改正については当然のこと持っていきますけれどもね。というふうな判断をしておりますので、必ずしも21日に持っていくという判断では今のところありません。それは一応、私はそう理解しています。
(以上)