第29回総会 議事録

平成17年5月24日開催

石会長

それでは、皆様お集まりのようでございますし、時間になりましたので、29回目の総会を開催いたします。

お手元に、今日の議事の1枚紙になったメモがあると思いますので、ぜひご覧いただきたいと思います。4つほど案件がございまして、個人所得課税、非営利法人に関する税制、「財政の長期試算」、地方行革関係。前の2つは、2つの小委員会によって行いましたもののご報告という格好になろうかと思います。5月17日と5月20日に基礎小と非営利WGの合同会議を行いましたので、報告を兼ねて問題提起をいたしまして、皆様からいろいろご意見をいただきたいと考えております。

この4つの順番で今日は議事をこなしていきたいと思いますが、2時間でかなり盛り沢山の議題でございますから、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

それでは最初に、個人所得課税につきまして議論いたしたいと思いますが、永長さんから、資料に即してご説明をいただきまして、それから自由に討議をしたい、このように考えております。

では、税制一課長の永長さん、よろしく。

永長税制第一課長

お手元に「論点メモ」というのがございます。5月13日の「総28-3」という1枚紙です。会長がお話しになりましたように、17日に、論点メモで申しますと、「3.所得の種類と税負担のあり方」、「7.納税環境の整備」、ここをご議論いただきました。4、5、6につきましては、今週の金曜日にご審議賜る予定でございます。

早速でございますが、「主要論点メモ 総29-1」という全体で7ページの冊子をご覧いただきたいと思います。所得の種類と税負担のあり方ということでございますが、かいつまんでのご説明で恐縮でございます。

1つ目の給与所得でございます。ここに書いてございますのは現在の現状認識でございますが、近年において雇用関係の形態の多様化が進展し、また、給与所得者において自らの市場価値を高めるべく様々な自己啓発努力が行われている中、雇用関係、いわゆる私法上の労務提供契約と申しますか、こういう契約関係の有無だけをもって給与所得者と個人事業者を比較して、その立場の強弱を一律に論ずることは難しくなっているのではないかという問題意識でございます。たまたま例の公示のトップが今年はサラリーマンだったということもございまして、そういったお話も出てまいりました。

アンダーラインでございますが、サラリーマンについても経費が適切に反映されるような柔軟な仕組みを構築していくことが望ましいのではないか。

2つ目のマル、こうした考え方に照らせば、給与所得控除についてということで、これは従来から税調でもご審議賜っている論点でございます。

3つ目、高額の給与所得者についてでございますが、限界的な費用は限られているだろう。給与所得控除の一つの眼目である負担調整の必要性も減少するのではないか。現在、青天井でございますが、限度額を設定することも検討すべきではないかという問題提起を我々からもいたしました。

それに関連しまして、4つ目のマルでございますが、高額給与所得者の場合には、寄附や交際費といった出費がかさむことも忘れてはいけないというご指摘があったわけでございます。

2ページ、フリンジベネフィットに関してもご議論がございました。現在、いわゆる経済的利益、これは基本的には課税ですが、法令ないしは通達によってあえて課税しないことにしている分野が、限定的ではありますが、ある。これは、社会通念上やむを得ないものは課税できまいという整理を行っているわけですが、社会通念の変化を踏まえた的確な課税が必要ではないかというご指摘でございました。

退職所得でございます。退職金は、退職所得控除という控除をしたあと、課税ベースを2分の1に削りまして、分離累進、総合課税をする、このようになっているわけでございます。近年においては、給与水準を抑制する一方で退職金を厚く支給したり、退職金を支給しないかわりに在勤中の給与を引き上げる、といったように退職金の支給実態が多様化している。また、中途退職や転職の増加など、雇用慣行、雇用環境自体にも変化が見られる。こうした事態に対応し、例えば転職者が不利にならないように、外部拠出型の退職金資金、退職金原資の引継ぎ、ポータビリティーでございますが、こういったことを認める企業年金制度の改正も別途行われているわけでございます。

こうした中、退職所得控除をして2分の1課税する、この仕組みについては、モデル退職金で見た場合には、15年までの人にはかかっていないという結果になっている。また、20年という勤続年数を境として、先ほどの控除額が変わるというのもいかがなものか。さらには、短期間勤務に対しても2分1課税が適用される。例えば3、4年勤務して退職する、退職金が出る、そういった場合にも2分の1課税になるという問題もあるわけです。いずれにしましても、中立的な制度を目指すべきであるというご指摘がございました。

退職所得の3つ目のマル、退職課税、いろいろな見直しが可能でございますが、そのいずれの場合にありましても、ここにございますように、サラリーマンにとっては人生設定の大切なポイントなものですから、「期待権」を侵害してもいけない、こういう指摘もあるわけでございます。

事業所得でございます。これは後ほど納番のところでも出てまいりますが、アンダーラインでございます。売上げ、必要経費の正確な記帳に基づいて行う申告納税の趣旨の重要性を再認識する必要があるのではないか。これについては、横になっております「資料(個人所得課税)」をご覧いただきたいと思います。

これの6ページ、事業所得をどのように計算するかということでございます。実は左半分まではそれぞれ所得によって違うわけですが、右半分はサラリマーンも同じシステムが適用になっております。総収入金額、これはグロスのインカムですが、要は売上げでございます。そこから経費を差し引くわけですが、経費の中に仕入れ、棚卸資産を買う仕入れ、これの原価がございます。人を使っている場合には人件費、また青色の場合には、家族についても青色専従者控除が使われるわけでございます。減価償却費、そして、「その他」というところがなかなか難しゅうございまして、いわゆる間接経費、家事関連経費といったものがここに入ってくるわけでございます。例えばファミリーレストランに行ったときに、事業者が「上様」の領収書をあえてもらっているシーンを見るとか、こういったことを間接経費の世界で垣間見てしまう、これがどうしてもモヤモヤ感につながるということにもなろうかと思います。

今申しましたように、売上げから経費を差し引く、これが一番単純な計算なわけですが、売上げをどのように捕捉するのか、経費をどのように捕捉するのか、これは後ほど納番との関係でもご議論いただきたいと思います。いずれにせよ、売上げと経費をちゃんと記帳してもらう、帳簿、帳面につけておいてもらう、これが最も大切な作業になるわけでございます。これにつきましては記帳義務等々で後ほど出てまいります。

また横二段表に戻りまして、金融所得、これにつきましては、昨年の金融小委でのご報告にのっとって、現在、我々のほうで歩を進めようと一生懸命努力をしているところでございます。

譲渡所得、アンダーラインのところをご覧いただきますと、土地、株については既に分離課税になっているわけですが、その他の資産についてどのように考えるか。どうしても譲渡所得というのは納税者の選択による益の実現ということもございます。暦年単位で行う総合課税の枠にとどめておくことに一定の無理がないかどうかという論点も、税理論の立場からあるわけでございます。

次のページの不動産所得、一時所得、雑所得、この辺はややテクニカルになりますので飛ばしますが、不動産所得につきましては、実は、家族の資産所得合算課税制度があったときの遺物として残っている所得区分でございます。こういったものは既に要らなくなっているのではないか、本来どおり事業所得と雑所得に分ければいいのではないか。

一時所得につきましては、いわゆるアドホックに出てくる収入ですが、対価性があれば雑所得、対価性がなければ一時所得、こういう仕切りに今はなっております。対価性の有無をもって雑所得と一時所得を分ける。例えば懸賞金が当たりましたと。これは対価性がないので一時所得になってしまうわけですが、いろいろな観点から見ても、雑所得と分けておく必要があるのだろうかという議論でございます。

雑所得については、年金等の議論、資産運用関係の雑所得、この辺をご覧いただければと思います。

納税環境の整備でございます。これにつきましては、基礎小においては国税庁からもプレゼンテーションを行いました。一番最初に書いてある数行ですが、その執行にあたっては必然的に一定の困難を伴うがゆえに、適正な執行に対して国民が寄せる期待は大きい。課税当局においても、申告者の絶対数の増加、グローバル化の進展に伴う課税事案の複雑・困難化、定員増加の困難化といった状況の中で、IT化、アウトソーシング化の徹底による内務事務の見直しや調査事務の一層の効率化などの努力をしている。人と金があればもっといろいろできるのにという心をこめて、国税庁サイドのプレゼンがあったわけでございます。

制度面でございますが、納番です。納番につきましては、先ほどの横資料の14ページをご覧いただきたいと思います。これは基本パターンを書いてございます。納番というものが導入されると、ある種自動的に所得が捕捉されるというふうな期待を込めた誤解があるわけですが、基本パターンとして、納税者がおります。それに対してお金を支払った取引相手方がいるわけです。お金を支払った取引相手方が、幾ら幾ら彼にお金を払いました、これを情報として税務当局に提出する。お金を払った人が情報を提供する、お金をもらった納税者サイドが申告をする、この2つの情報の流れを税務当局ではマッチングするというところに事柄の本質があるわけでございます。

これを具体的にいろいろ当てはめたみた場合が15ページです。これをご覧いただきながら、横の二段表、メモのほうをご覧いただきたいと思いますが、(1)納税者番号制度、近年におけるIT化の著しい進展等々がある中で、納税者番号制度、納番導入についても従来以上に積極的な議論を行う必要があるのではないか。

さらに2つ目のマルですが、国民の利便性といった観点からは、税務行政にのみ活用される番号制度というよりも、税務も含め、広く行政全般に利用される番号制度として考えるべきではないか。税務だけというよりは、行政サービスをより便利に受けられる、そういった中の一環として考えたほうが国民の皆様にはわかりやすいのではないか、という指摘でございます。

さらに、番号が税務行政に活用される場合には、法律上の根拠が必要である。全国一連の番号によって、大多数の国民が二重付番なく生涯にわたってカバーされる。住所地変更等もちゃんと管理することが最低限必要ではないかということでございます。

さらに4つ目のマル、これが実は新しい論点でございます。諸外国の例、先進国アメリカでも、納番をワークさせているのは給与所得と金融関係の所得、利子・配当等でございます。これに使っているわけでございます。アメリカは、全部ひっくるめて総合課税、さらに自分で申告させる、これをバックアップする制度として納番があるわけですが、これを世界に先がけて事業所得についても適用できまいかという問題提起が、いろいろなところから行われているわけでございます。

マルに書いてございますが、税務当局が、個々の個人事業者の事業所得を正確に把握するためは、個々の事業者の収入(売上げ)や必要経費の額を把握する必要がある。これは先ほどポンチ絵で見ていただいたものです。その際、納税者番号付きで収集する資料の範囲についてどのように考えるか。なお、所得の間接的な把握に役立てるためには、金融資産に係る情報について税務当局が把握できる制度とすることが考えられるのではないか。

ここで、先ほどの資料15ページに戻っていただきたいと思います。事業者Aが卸業者、事業者Bが小売サービスでございます。そこから買った人はサラリーマン、主婦、いわゆる一般の消費者になるわけです。給料につきましては、勤務先からサラリーマンに給料が支払われる。それについて源泉徴収をこれだけしました。逆に言うと、サラリーマンCさんにはこれだけ給料を支払いましたよという情報が税務当局に行く。これは諸外国でもやっている作業でございます。さらに、銀行口座ABCDと、Cさん、Dさんが持っている口座から利払いが行われる。これについて情報が銀行から税務当局に行く。これも諸外国が行っている、納番を活用する事例でございます。

さらに加えてということで、AとかBの事業者、特にBさんをご覧いただきたいと思いますが、小売業者の所得を捕捉するための売上げを、納番を使って捕捉できないかというのが場面1でございます。売上bは、サラリーマン、主婦、一般消費者が買った額でございます。この売上bの情報を一般の消費者が税務当局に渡す。先ほど申し上げたように、お金を払った人が情報を出すというのが納番制度の本旨ですが、この場合、払った人は一般消費者です。例えば、魚屋さんでこれだけこの月は買いましたという情報を税務当局に渡すかどうか。これは、正直申し上げて、なかなか難しいかもしれません。

もう一つ、仕入aをご覧いただきたいと思います。これは事業者Aにとっては売上げ、事業者Bにとっては仕入れになるわけですが、事業者Bは事業者Aにお金を支払います。その支払った額についての情報、仕入aの情報をBから税務当局に渡す。Aは、幾ら幾ら売上げがありましたということを前提に申告を行う。ここでは納番を活用し得るわけでございます。事業者間での動きがある。仕入aがある種わかりやすくなることで、事業者Bの所得の捕捉にも役に立つのではないかという議論があるわけです。

さらに、間接情報、いわゆる口座A、B、こういった情報が、いわゆる金利課税自体が源泉分離で終わってしまうわけですが、口座そのものの情報として税務当局に行く。いわゆるたまりがわかるようになれば、所得の把握に一定程度、間接的に相当役に立つのではないかと。今申しましたように、事業者Bを主人公として見ますと、売上げが捕捉できないか、仕入れを捕捉できないか、さらにはBさんの持っている口座情報がわからないか、この3つの場面が関連してくるわけでございます。

次に、横紙メモの6ページ、1つ目のマルでございますが、納番でわかるのは金額だけでございます。金額の属性、中身まではわからない。さっきの事業者A、事業者Bの取引をご覧いただきたいと思います。ここで、仕入れというか、Aさんの売上げがあるわけですが、それが事業者Bにとって家事費の一環なのか、商売のためなのか、そこまでは納番を使ってもわからない。納番がわかるのは金額のみであって、その中身まではわからないんですよという、ある種念押しでございます。

納番の最後のマルは、官民双方にコストが発生するでしょう、コストベネフィットの観点からの議論も必要ではないかというご指摘を前回ちょうだいしました。

6ページの(2)記帳制度でございます。先ほど事業所得のところで申しましたが、横資料で言うと16ページでございます。

商売をやる以上、記帳するのは当たり前だということではあるわけですが、制度的には実は、前々年または前年の事業所得が300万円以上の人には、たとえ白色の申告者、青色申告でない人でも記帳しなさいと、あくまで確認のため規定を置いているわけでございます。逆に申しますと、300万円以内の人には記帳義務がかかっていないということでございます。記帳が全くない場合、どういうふうに課税すればいいのかというのが、実は国税当局からも悩みとしてプレゼンが行われたわけです。売上げがたとえわかったとしても、どこまでが家事費なのか、そうでないのか。横メモの6ページの(3)、立証責任というところをご覧いただきたいと思いますが、税務当局側が、いや、それは商売上のものではないということを立証しない限り、経費性が認められてしまうという問題があるわけでございます。

そこで、立証責任のところをご覧いただきますと、アンダーラインのところでございます。納税者が自ら説明責任を果たすことがふさわしいと思われる項目については、制度的な枠組みを整えて、立証責任を納税者サイドに持っていく工夫をする必要もあるのではないか、こういう指摘であります。例えば、長年記帳がない、ないしは正確な記帳がない。そういう中で経費の差引きをしたいという場合、それはできないというふうに法律で書いてしまう。引くならこういうことを立証してこいというふうに、納税者サイドに立証責任を移すことも考えられるのではないかということでございます。

6ページの(4)、源泉徴収・年末調整。これもかねてから、サラリーマンについても自己申告をする機会を増やすべきではないかというご議論でございます。

さらに、前回、公示が行われた翌日だったこともございまして、公示制度についてもご議論がございました。結論的に申しますと、個人のプライバシーへの配慮の観点から問題が多い、廃止が望ましいというご意見が相当ございました。ただ、一方で、公示される情報はデータとしても価値があって、廃止した場合でも何らかの統計は必要ではないか。ないしは、今年で言いますと、7万5,000人ほどの方々の納税額を公示したわけでございますが、トップ100ぐらいは出してもいいのではないかというご意見も出ました。

納税環境の整備、最後に「その他」でございますが、ペナルティ、罰則をもう少し強めてもよいのではないか、これも税務当局からの指摘があったところでございます。

私からの説明は以上でございます。

石会長

ありがとうございました。今、ご説明いただきましたのは、基礎小でやっています国税の所得税の改革の全貌でございまして、的確にご説明いただきました。とりわけご議論いただきたいのは、所得区分10種類、このままでいいかどうかの問題と、納税環境整備で、納番で事業所得の捕捉などという新しい視点の議論もいたしました。それから、記帳義務、立証責任、公示制度等々、ご関係の方もいらっしゃいますので、忌憚のないご意見をいただきたいと思います。

しばらく時間をとりまして、今の説明の個人所得課税の改革につきまして、ご意見をいただきたいと思います。

上月さん、どうですか。

上月委員

納税者番号制度については私もいろいろなところでお話しさせていただきますと、住基ネット番号にはすごく反発が大きいです。昔、国民総背番号制というのが出ましたけれども、あのときのいろいろな思いがありまして。私、前にご説明いただいたのですが、決してそんな心配は要らないということでしたので、もしそういうことであるならば、もう少し国民の皆さんにPRが必要なのではないかと思います。

それから、事業所得者にこれをということについては、皆さんにどれだけ理解が得られるのか、もっともっとPRが必要ではないかと思います。

石会長

理解云々の前に、技術的に問題はありませんか。事業所得のところで、卸と小売、Aさん、Bさんのあたりで納番を使って等々で、果たして税務行政上、実態面でどうか。この辺でご専門の立場からコメントをいただけたらと思いますが。

上月委員

相当な資料とかマッチングという問題で、そう簡単にはいかないように私は思います。先生方たくさんいらっしゃいますので、少しご支援いただいたらと思いますが、私自身は実務家としては、これは大変な問題であって、今、消費税のインボイスをどうするかというお話が出ておりますけれども、それ以上にこれは大変なことではないかと思います。

石会長

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、林さん。

林委員

ひょっとするともう既にご説明をいただいているかもしれないのですが、消費税の税務行政と、個人所得税の税務行政との関連、あるいはタイアップですが、今、徴税組織が少し変わって、法人税のところで法人の消費税をやる。それから、個人の所得税のところで個人の消費税をやると、私、そういう話も聞いたのですが、タイアップすればもちろん最終消費者のところの情報は入ってきませんけれども、そのあたり一体どういうようになっているのか、ちょっとお教えいただければと思います。

石会長

その問題もございました。インボイスが入って、業者A、Bという間の仕入れ、売上げのことがわかれば、まさに納番的な話なのですけれども、この辺について何かご説明いただくことはありますか。

杉江国税庁課税総括課長

今ご指摘のように、個人の調査をする場合には、調査対象が一緒でございますので、別々に2回調査をするということではなくて、1回の調査で消費税と所得税の調査をするようになっております。それから法人につきましても、法人税の調査と法人が支払う消費税の調査を一緒にやる。あるいは法人の場合ですと、源泉所得税というものも納税義務がある場合がございますので、そういうものも合わせて、できるだけ納税者の方にご負担をかけない形で、一回の調査でいろいろな税目を調査するという形で、今、税務行政をしているところでございます。

石会長

ほかにいかがですか。

どうぞ、辻山さん。

辻山委員

基礎小のほうで議論があったのかもしれないのですけれども、今回、基礎小の議事録等を拝見させていただきまして、個々の論点についてはわかったのですけれども、その中で所得税の累進の問題、それから、所得控除から税額控除へ移していく方向性等が議論されていたと思います。その場合に、課税の単位の問題をどのように考えるのかということが、この問題と関係してくると思いますけれども、望ましい課税の単位の方向性といいますか、今後の議論としてはいかがでしょうか。

石会長

論点メモという1枚紙がございまして、先ほど永長さんから3のポツと7のポツのご説明をいただきました。今ご指摘のように、控除、税率、課税単位の問題は実はこの金曜日に本格的にまとめようと思っています。ただ、おっしゃっておられますように、既にその問題意識を持っておりまして、各委員から出ておりますが、まだ議論が出されたというだけで、集約の方向、あるいは全体の方向をどうしようかという議論はまだ出ておりません。課税単位で、夫婦合算であるとか、検討したらどうかという議論もございまして、これは税調で古くからあって、古くて新しい問題なのですが、まだある方向性は出ていないのです。個人課税でいいかどうかの議論も踏まえて、今度の金曜日に本格的にやりたいと思います。

この点、一課のほうで何か補足的な説明があれば、どうぞ。

永長税制第一課長

今、会長のご説明のように、金曜日にさせていただきますが、あくまでも日本の場合は個人単位で課税をしている。実際にn分n乗、2分2乗という世帯単位でやった場合の課税の効果、これを分析いたしまして、どういう機能があるのか、これをある種分析的に見た上で、どちらにどういうメリット、デメリットがあるのか、こういうご論議をしていただければと思っております。予告編ですみません。

石会長

またまとまりましたら、総会でご議論いただきたいと思います。

どうぞ、河野さん。

河野委員

退職金のことで、この前、尾崎さんから公庫の話が出たのですが、考えてみると、国と地方の公務員というのは、終身雇用、年功序列の最たるものが厳然と残っているわけです。民間でも、そういう有力な企業もたくさんあるけれども、ずいぶん変わっているところもあります。これ、民間の話がベースになっているわけだけれども、これを財務省が問題提起をするとすれば、自分のところの国家並びに地方公務員の退職金のあり方についても、何か自己改革をする決意をもって出しているのかどうかということを、この前、聞こうと思ったけれども、聞かなかった。

もう一つは、国税庁の機能というのは、社会保険庁などに比べればはるかに数段上だという高い評価を得ています。それでもなおかつ、ここに書いてあるように、いろいろな仕事の量が増えてしまって、今の定員の中でこなせる範囲をはるかに越えているのではないかという気がします。それでアウトソーシングと書いてある。財務省、国税庁の役人を25年やると、自動的に税理士か何かの資格を得られる。そういう人がたくさんいらっしゃる。それを含めて、アウトソーシングといっても、できもしないやつに仕事を任せるのは具合悪いと思うけれども、よく知っている人が稼いでもらう分には一向に構わないと思うのです。具体的にそれをどの程度のことを考えているのか、少し聞かせてください。

石会長

国税庁のほう、何かありますか。

杉江国税庁課税総括課長

今ご指摘がございましたように、国税庁の定員は限られておりますので、限られた定員の中でいかに効率的に事務を処理していくかということで努力をしているところでございます。その中で、今、税務署の中で税務署員しかできないものはやはり税務調査でございますので、できるだけ税務調査に専念するような税務行政をしたいというふうに考えております。そういう点では例えば内部事務、コンピュータに入力するとか、申告書を整理するとか、そういうような公権力を行使しなくても済むような事務についてはアウトソーシングと。これは守秘義務の問題がございますけれども、できるだけ簡単なものはアルバイトあるいはアウトソーシングという形で、例えば税務相談につきましても、税理士さんが税務相談の仕事をしているわけでございますので、税務相談の一部を税務援助という形で税理士会にお願いする。そういういろいろな形でアウトソーシングを、今、検討しているところでございます。

石会長

それはあり得る話でしょうね。

河野委員

退職金の話は……。

石会長

退職金の話はご意見として伺ったのですが、聞きますか。我々税調として、退職金を出すときに、公務員の制度改革、今日、昨日とずいぶん出てますよね。ああいう問題から議論したいというご提案があったわけでしょう。そうではないのですか。

河野委員

今、このペーパーを書くにあたって、財務省の人たちは、自分たちの世界のことについては、今おっしゃったみたいに別のところで議論をやるから……。

石会長

今のようなご質問があれば、改めて福田局長に聞いてみますけれども。

河野委員

それを聞きたいわけです。

石会長

では、聞きましょう。どうぞ。

福田主税局長

どこまでお答えできるか、ちょっと自信がありませんけれども、いずれにしても大変難しい問題で、財務省としてどうするかというよりも--もちろんそれもありますけれども、まず、国家公務員全体の中でどうするのかというのが一つのポイントであろうかと思います。それから、同じ財務省の中でも国税職員が8割近い人数を占めていますので、それをどうするのかというのも一つの問題だろうと思います。

いずれにしても全体としては、変な話ですけれども、定年制が導入されて、定年が延長される方向が片一方にあるわけです。河野委員がおっしゃったように、終身雇用制的な世界では長くするという動きが一つはあって、片一方では、非常に流動化しているという要素があって、この間をどういうふうに整備するかということであるかと思います。財務省としてどうこうとか、国税庁としてどうこうするかとか、そういうのももちろんありますけれども、全体として国家公務員制度をどういうふうに維持していくのか、それとも関連してくると思います。

ここにありますように、前回、「個々のサラリーマンの人生設計上の『期待権』にも関わる問題であることには留意が必要ではないか」ということで、制度の見直しにあたっては影響も考えてやりなさいというご意見があったのは、そういうふうなことだと私は理解しております。

石会長

民間にもまだ終身雇用なり残っているわけですから、公務員だけというわけにはいかないかもしれません。今、たまたま公務員制度、いろいろな面が問題になっていますから、書き込むときにそういう配慮をするかどうか、またお諮りしたいと思います。

どうぞ、佐竹さん。

佐竹委員

「基礎小35-1」の15ページ、あくまでもイメージなんでしょうけれども、サラリーマン家庭が、事業者、例えばお店屋さんから買ったものをすべて……。これで見ると、非常に大きな図で描いていますが、こういうことが、理論としてはあるでしょうけれども、実際こういうことができるのかどうか。仕入aと売上bとすべてを突合する。その突合が、絶対突合できない数字になるのかなと。もし誤差ゼロだとすると、サラリーマンが紙1枚、鉛筆1本買うのにどうするのかという、非常に非現実的なものがここにポンと出ています。あくまでも勉強資料とするといいのですけれども、これがこういう形で出ていくと、逆に言うと、納税者番号制度を肯定する人も、こんな面倒なことあり得るのかということで、ここら辺はちょっとそんな感じがします。

石会長

永長さんは慎重にご説明をいただきまして、これはできないだろうという前提で議論をしているわけです。それはおわかりだと思いますけれども、毎日買物をしたものを我々消費者がすべて出すというのは難しい。したがって、仕入れのほうの情報が集まれば小売店のBも何とか類推ができるのではないかという程度の話ですよ。ただ、これはある意味でインボイスなどを入れたときに捕捉可能かもしれません。いずれにしましても、おっしゃるご心配は皆さん共有しているし、それはできないよというポイントで言っているわけでありますから、頭の訓練ですよ。ですから、このイメージからいくメッセージというのは、できるところはやってみたい。ただ、すべてはできないだろうと。そういう趣旨で受けとめたらよろしいだろうと思いますが、これ全体、またできるかどうかもわかりませんけどね。

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、村上さん。

村上委員

退職金ですけれども、ここに書かれているような話は、例えば転職、中途退職、雇用環境というのはたしかに変わりつつあるとは思いますけれども、就労者のうちどのくらいの割合でこういう現象が起きているというふうにとらえていらっしゃるのか、それを教えていただきたいのですが。

というのは、話としては面白いのですけれども、制度に手をつけるほどのところまでに来ているのかなと。それから、つい最近までは、いわゆる法人税では6年くらいかかって非課税枠を外してきましたね。それは企業、払う側からすれば相当のコスト増になっているわけで、それに伴って退職金制度をもうやめましたという企業が一体何割くらいあるのか。かなりのところがそういうふうになって、退職金というのは日本ではあまりやらないんだということになれば、それは制度が遅れているということになると思います。ちょっと先走りのような感じがしないでもないのですが、その点、どうでしょうか。

石会長

データの請求で今の段階でもし何かあれば。どうぞ、永長さん。

永長税制第一課長

関係方面で調べまして、またあれしたいと思います。

それから退職金絡みでございますが、これもデータをそろえて、後日、お示ししたいと思います。実は退職給与引当金がなくなった結果、外部拠出型に変わりつつある。退職金は払うのですが、外部拠出、そこで損金ができるわけです。外部拠出ですから、先ほどポータビリティと申しましたが、A社からB社に移った場合に、A社の抱えているお金ではないものですから、よそに預けているものですから、その権利を引き継いだまま次の会社Bに移れる、こういう制度を導入しているところが結構ございます。この辺のデータもそろえてお示ししたいと思います。

石会長

では、ぜひお願いします。

井上さん、どうぞ。

井上委員

給与所得者の控除の限度額という問題が最初に出ていました。これについて、限度額を設定することを検討すべきだということについて、私は、むしろそんなものは設定すべきではないのではないかと。やはり高額所得者の出銭というのも結構大きい、給与にしても。この下にございますけれども、それ以外にも、例えばベンチャー投資とかそういうことにしても、個人が投資する機会というのは非常に多いわけですね。逆に税制上のメリットというものは別にないわけですので、その辺も考慮するならば、むしろある程度所得を大きくしておいて、そういうものに金を使わせるというふうにすべきではないかと思います。

退職金の問題については、これから401(K)とかそういうふうになってくるわけですから、特別控除をする必要はなくなるのではないか。同時に、何回も退職しながらそこで特別控除を受けていくという必要はないだろうというふうに思います。

納番の問題については、社会保障から何から一元化するということは、ぜひとも、無駄な経費を使わないためにもお願いしたいということと、個人事業者の所得把握とかそういう問題にも納番が使われる、できればそういう仕組みはつくったほうがいいのではないかと思います。

石会長

では、草野さん。

草野委員

退職金の問題ですけれども、先ほどのご質問に対してデータを用意していただけるということですが、私ども現場で働いている人間から見ますと、賃金の仕組みというのはかなり大幅に変わってきていますが、退職金というのは改定が遅れているというのが今の実態だろうというふうに思います。将来の賃金、労働条件の改定の中で、退職金が最後まで残るのではないかという感じを持っております。

それから新聞で見ますと、石会長が記者会見で言われたのかどうか、ここにも書いてありますけれども、期待権の問題は慎重に取り扱っていただかないと、サラリーマンにとってはまさに最後の砦みたいなところがありますから、そこはぜひ配慮をお願いしたいというのが1点。

それから、今日の議論ではないと思いますけれども、サラリーマンの控除の問題がいずれ課税最低限の絡みで出てくると思います。ここに書いてありますのは、雇用形態が多様化して非常にいい方向に向かっているみたいな感じで--私のひがみかもしれませんけれども、そういうふうにとらえますが、やむを得ず二極化しているというのが実態です。したがって、200万円以下の年収の人が圧倒的に増えてきている、この辺の実態を十分踏まえて考えていくべきではないか、こういうふうに思っています。

退職金の問題に戻りますけれども、控除が20年を超えると急速に上がっていく、この辺の見直しはあってしかるべき、こういうふうに思っています。

石会長

ありがとうございました。いずれにいたしましても文章化した段階で、再度、中身を詰めなければいけないと思っていますので、またそのときにご議論をいただきたいし、残っている本体、控除あるいは税率、課税単位の話もしますので、そのときに併せてご議論をいただきたいと思います。

それでは、第2のグループの非営利法人の課税、あるいは寄附金税制につきまして、これから議論をしていきたいと思いますが、今日、ここの分野に関しましては、今まで出されました主な意見を整理した紙が出ております。それから、プレゼンテーションを受けましたので、その辺の報告もかねまして、佐藤さんと山根さんから、読上げの前にその辺の空気を若干ご説明ください。

佐藤税制第二課長

それでは、私から、5月20日・金曜日に行われましたプレゼンテーションの概要だけ申し上げたいと思います。資料「基礎小36-1」でございます。

プレゼンテーションにお越しいただきましたのは、東京大学の田中先生でございまして、社会システム論の中でいわゆる非営利組織というのはどういうふうに位置づけたらいいかというあたりの骨太の考え方のプレゼンをいただき、ご議論いただいたということでございます。お時間がございますので、細かい論点は省略しますが、幾つか拾って申し上げます。

このプレゼン資料の17ページ、18ページを開いていただきますと、「実像把握」のときにもございましたように、右肩下がりの時代になってくる中での社会システムをどう考えたらいいかという論点でございます。17ページにございますように、官に依存してきた役割から民へ移していく部分、そういう部分に非営利法人の役割があるのではないか。あるいは、受益と負担という考え方が重要になっていくのではないかということで、18ページのようなイメージが提示されたということでございます。

それから、そのような非営利組織の役割ということで、20ページ、どういう役割があるかということを図示したプレゼンもございました。ここにございますように、寄附のような形で得た資源を、非営利の組織を通じて市民のニーズに変換していく役割が今後担われていく、そのあたりのお話があったわけでございます。

ただ、非営利組織については、例えば23~24ページあたりで、それぞれの信頼性の問題がある。積極的な役割を担う一方で、影の部分としての信頼性の問題があるので、特に24ページに、非営利セクターについては、価格メカニズムとか、選挙のようなユニバーサルな評価システムがないという問題があるということで、何らかの社会的な装置が要るのではないかというお話があったわけでございます。

最後に、そういう非営利組織の役割を認めた上で、どのように機能的に生かしていくかということについての一つの考え方ということで、31ページの図がございます。例えば官の側で一定のルールセッティングをし、チェックをしていくといった、今の我々の議論の文脈で言いますと、第三者委員会のようなものの役割があるのではないか。それから非営利組織の側では、ガバナンスの問題とか、自らの評価、情報公開が重要ではないかというお話がございました。これから、私どもが最終的に基本的な考え方をまとめていくプロセスの中で、このようなご議論もたたき台になるのかなという印象を持った次第でございます。

以上でございます。

石会長

チャリティ委員会について、何か一言、二言ありますか。

佐藤税制第二課長

チャリティ委員会につきましては、第三者機関ということが、今回、民法改正上大きなポイントになっておりますが、それの一種のモデルような形でございますので、このような姿になっております。ちなみに委員が5名、うち2名のメンバーにつきましては、法曹資格を有する者が任命されておりまして、事務局600名弱の構成になっているということでございます。

石会長

ありがとうございました。

山根さん、お願いします。

山根市町村税課長

個人住民税の寄附金控除についてどうかということで、私のほうから前回ご報告させていただいております。「資料(寄附金控除((個人住民税))」でございます。

1ページにありますように、個人住民税の控除につきましては、これまで累次のご答申で示された基本的な考え方に従いまして、できるだけ限定して、特に国家的政策の控除については抑制してきたという経緯がございます。このような考え方に基づきまして、所得税のみにあって住民税にはないような控除、あるいは住民税で行う場合もその規模を限定しております。それは3ページに表としてまとめております。さらに、最近、財政面の地方団体の自己決定とか自己責任の強調とか、住民税のフラット化といった議論もございます。

こういうことを受けまして、具体的に住民税の寄附金控除はどういうふうになっているかということでございます。5ページをご覧いただきますと、寄附金控除につきましては、受益と負担の関係ということで、今のところ、県の共同募金、赤十字の支部といった、所得税に比べて限定的な制度となっているということで、その対比を6ページに示してございます。

地方団体が、実情に応じてさまざまなNPOに対する支援などを行っておりますので、これに関連する資料を9ページ以下に添付しまして、ご紹介したところでございます。

寄附金税制に対する基本的方向をご議論いただいておりますが、住民税の性格を踏まえまして、どのように考えるべきかということについては既にご議論いただきました。住民税についても何らかの工夫ができるのではないかというご議論も含めまして、次に出ます、「これまでに出された主な意見」の中で網羅されていると考えておりますので、個々のご意見については省略させていただきます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、読上げをしていただきましょう。そのあとで、今のお二人について関連の事項がございましたら、ご質問ください。

それでは、「これまでに出された主な意見」というのが「総29-2」にございますので、恐れ入りますが、事務局、お願いします。

〔事務局読上げ〕

石会長

ありがとうございました。

ご覧いただいておわかりのように、前回、基礎小で出しました同じ文章にさらに追加されておりますので、基礎小にご出席の方も、また新たな視点からこれをご覧いただきたいと思います。それから、意見がそんなに散らばっていませんから全体が流れていると思いますが、それでもよく見ていただきますと、対立した意見を両論併記的に書いてございます。

今日は、細かい字面をご議論いただくというよりは、今後、文章化していくときに、基本的な方向をこっちで書いていこうという視点から内容をご議論いただきたいのであります。例えば、みなし寄附金制度のところで反対方向の議論が出ておりますが、これについてどう考えるかとか、金融収益課税についてどう考えるかとか、意見が分かれているところについてご判断を仰ぎたいという趣旨もございます。ただ、ほかのところでもいろいろご議論があろうと思いますから、少し時間を割きまして議論いたしましょう。

どなたからでも結構です。

井堀さん。

井堀委員

私、これは今まで参加していなかったものですから。

石会長

どうぞ。

井堀委員

寄附金税制は、基本的には脱税等に悪用されない限りにおいて充実させるのが望ましいと思いますが、1つの点は、国税である所得税と地方税の住民税とで取扱いをどういう具合にするかということだと思います。この後半のところにも少し出ていますが、NPOの公益性の程度に応じて、役割分担を、国税での優遇と地方税での優遇は分けたほうがすっきりするのではないかと思います。要するに全国レベルでの波及効果の大きな、公益性の高いものに限定して国税の寄附金控除はやる。逆に地方税は、その地方公共自治体の中に公益性がはまるものに限定して対応するという形にしないと、地方税と国税の所得税なり住民税の優遇措置の役割というのははっきりしないだろうと思います。

今の説明では、住民税の中で日本赤十字に対する控除が認められているわけですけれども、赤十字というのは全国レベルの活動をしているわけですから、あえて地方税で優遇する必要はなくて、むしろ地方税で優遇するのであれば、地方公共団体がその地域の中で公益性が高いと認定したものに限って、その認定権も含めて地方で対応できるだろうと思います。逆に言うと、それは今の制度の中でも、法律を変えないで各地方自治体がやろうと思えばできることなのでしょうか。それとも、それはすべて国のほうで改めて税法の中に書き込まないとできないことなのでしょうか。

石会長

それは質問ですね。

井堀委員

はい。

石会長

できるのではないですか。

どうぞ、山根さん。

山根市町村税課長

現行の地方税法には不均一課税という制度がありまして、例えば税率のようなものについては、地方団体独自に定めることができます。控除のような課税ベースを変えるようなものについては、これに含まれていないというふうに考えておりますので、やるとすれば、地方税法を改正してそのような制度を設けることが必要になってまいります。

石会長

だから、地方税法を変えなければいけないということでしょう。勝手にやってはいけないということでしょう。

山根市町村税課長

そうです。やる場合は、地方税法を改正して、不均一課税と同じように独自の控除制度を可能にするような制度改正が必要になります。

石会長

どうぞ、遠藤さん。

遠藤委員

要するにこの問題は、官から民へというか、なるべく民間でできる仕事は民間でやってもらう。その場合に公益法人制度を有効に使ったらどうかと。その中でみなし寄附金の問題とか、一般の寄附金の国税、地方税の控除問題をどう考えるかという観点から見たらいいのではないかと思います。

そういう意味から言うと、みなし寄附金であれは2割ですか、制度であれしていますけれども、自分で稼いで、それをみなし寄附金として公益法人の収入に入れて、社会公共のために公益事業をやっていこうというのであれば、それは大変結構なことではないか。逆に言うと、民間から寄附金をもらってもいいわけです、その部分について。それを自分で稼いで自分でやるというのだから、限度を設けるかどうかというのは難しい話ですけれども、2割なんて言わないで、どんどん認めたらいいのではないかと思います。ただし、収益事業だから軽減税率を使う必要はないだろうと思います。

もう一つは、第三者機関で、おそらく国と、地方だけの場合でも、公益性の判断というのは基準は同じだろうと思うのです。国のほうが厳しくて、一地方だけのものは緩やかにするということではないと思います。同じ基準で公益法人であると認められた法人については、そういう公益法人について寄附金控除が認められるということであれば、国の公益法人であろうと地方の公益法人であろうと、国は全国、地方は一地方かもしれないけれども、公益性という観点では一緒なのですから、国税も地方税も寄附金控除の対象にすべきだと思います。ただし、地方税のほうは今までの経緯もあるし、どういう形にするかという議論はあると思いますから、そこのところはひとつ議論する必要があるのではないかと思います。

石会長

基本的には同じ方向だと思います。

佐竹さん、どうぞ。

佐竹委員

いわゆる世の中の流れからして、我々自治体においても、NPOも含めて、行政のサービスの部分ということで行政コストを下げると。そればかりではありませんけれども、全体として寄附税制というものの取り上げ方というのは大きくなってくるのではないか。

ただ、国税の場合と住民税の場合のもともとの税の仕組みというか、考え方の違いがあって、両方一律に論ずるわけにはいかないのではないか。我々、自治体の立場からしますと、わが秋田であれば、市なのか県なのかは別にして、その地域に全く関係ないものに対してまでと。そうしますと、仕組みのつくり方は大変難しいでしょうけれども、自治体に限定されるようなものについて、やはり自治体の関与というものを何らかの形で入れないと、すべてルールを国税のという話にはならないのではないか。そういう意味からしますと、我々はある意味では政策誘導的にもやれるし、それは条例の中である程度できるとすれば、議会あるいはそういうところの住民のチェックも受けるわけですので、そこの考え方は違わせるべきではないかという感じがします。何らかの形でやはり地方の関与と。範囲も含めてですね。

石会長

わかりました。

どうぞ、林さん。

林委員

寄附金をこれから拡充していかなければいけないということについては非常によくわかりますし、官から民へというのもよくわかります。地方がそういう意味でインセンティブをつけるというのは、これも非常に重要なことだろうと思います。ただ、所得税と住民税を同じように、自動的に所得税で寄附税制の対象になったから住民税もという議論は、これは受益と負担の関係からいくと望ましくないだろうと思います。というのも、現在、地方財政の問題というのは特に受益と負担が不一致になっていて、これを連動させるとか一致させるということにいろいろな知恵を出しているわけです。そういう中で、税制の中に受益と負担を乖離させるような要素を新たに持ち込むことが、果たして妥当かどうかという問題があります。

それから、全国レベルで公益性が存在するものと、時代によって変わってくるのと同じように、地域によって公益性があるかないかというのはその地域が判断すべきで、例えば国の政策でやるのだから減収分は交付税で見るとかいう話になっても、これはちょっと話が違うだろうなという気がいたします。そういう意味で住民税と所得税は別途切り分けて検討すべきだと思います。

石会長

出口さん、どうぞ。

出口委員

私、右耳が聞こえないのであれですけど、広域性と言ったのでしょうか、公益性と言ったのでしょうか。公益性に範囲がどうのこうのというのはちょっと私には理解できない話であって、例えば今のような話をすると、国立大学に寄附したときと県立大学に寄附したときとか、寄附者側のいわゆる社会通念上の感覚というものから考えて、どうなのか。また、企業が寄附したときはこれは損金算入になるわけで、地方のほうは、一切これまでこういう中で議論されない話があるのに、個人の寄附というのは、昨年、では何人、一体確定申告で寄附金控除をしているのかという実態を見ていただければ、今の話はあまりにも非常識な話だというのがわかると思います。

それから、日本の人というのは地方自治体への寄附というのが非常に多いんですね。地方自治体に直接寄附する人がいて、社会通念に合わないような寄附に対する税制で痛い目に遇った人というのは、私、何人にも会っていますけれども、その人たちは、もう二度と寄附するのは嫌だということを言うわけです。その辺を、今、官から民へという流れの中で、寄附にインセンティブを与えていこうという方向を考えていかないといけない。とりわけ兵庫県は、応益原則と言いますけれども、応援給水とかいって、いろいろな自治体から応援に来たところでもありますし、それから、兵庫県自体が今度の新潟でも応援しに行っている。そういういわゆる設置法を超えたところで公益があるんだというのが、この話のベースではないかなというふうに思います。

石会長

それは、国と地方で公益性を同じにしろというご主張ですね。

出口委員

当然そうです。

石会長

では、林さんとちょっと違うところですね。何かありますか。

林委員

公益性は同じだと思います。ただ、公益性の広がりは違うと思うのです。税も、国税と地方税は負担する主体が違いますから、そこはきちんと税の議論として考えないといけないというように思います。

石会長

では、田近さん。

田近委員

この問題、私は何回も出させてもらっているのですけれども、すぐれて政策的な話だと思います。非営利法人をどう認めるかという根っこのところから問題が起きたことからもわかるように、そういう意味では税調の議論では、貯蓄から投資へという一つの政策的な議論をずっとやってきて、今度、官から民へ、それから民間が担う公共ということで、ある意味で画期的なことをやっていると思います。

非営利法人のサービスがどれだけ地域に限定されるかというのは、やってみると相当難しいのではないかと思います。一橋大学というのは国立(くにたち)で、今、公園みたいになっていて、保育園の子供が毎日来て日向ぼっこして帰るのですが、ああいう人からも寄附をもらいたいなと我々は思うのですけれども、もらえるような形でやっていければ……。そのとき、国立大学というのは全国ネットだから、これは国税だとか言われたらかなわないなと。したがって言いたかったことは、税調の問題としてはケタの大きいというか、非常に大きな問題をやっているので、政策的な誘導というのは考えるべきかなと。

それから、地方の不均一課税でひとこと言いたいのですけれども、実はこの場所で不均一課税について1回質問したことがあって、それは、法人事業税とか固定資産税の一部が不均一課税になっている。ある法律に定められた目的で優遇したときには、その減収部分は交付税で全額措置してくれると。

ここは地方との関係では重要だと思いますけれども、寄附税制で生じた減収部分をどう補うか、尾崎さんと既に一部議論されましたけれども、そこはきっちりすべきだと。私は、減収すべきではなくて、何々市では寄附税制でこれだけこういうコントリビューションがあったということを、情報公開で出していけばいい。言いたかったのは、官から民への流れの中で、これはかなり思い切ったことをやるにふさわしい税だということと、それに伴う地方の減収部分は、そのまま交付税というのはやはり問題があるのではないかという2点です。

石会長

わかりました。

佐竹さん。

佐竹委員

不均一課税の問題ですけれども、これとはまた違って、地方の不均一課税の一番大きいのは全国の工業再配置です。その部分は法律的になくなって、今、ほとんど小さくなっている。そもそも工業再配置のときに、工業団地をつくって、あるいは工業開発をしながら、それに企業誘致をするためにということで、国全体の政策の中で不均一課税の分は特に交付税との関係は決まったわけですけれども、今はほとんどないということは確かです。ないことはないけれども、ほとんど残ってないです。

ただ、これは自治体の問題というよりも、当時の田中角栄さんがそういう形でどんどん推し進めるときに、ある意味では地方の判断でしょうけれども、そういうことで全体の国の判断でそれが残っているところはたしかにあります。ただ、今の寄附税制とはちょっと違うのではないですか。

石会長

何かありますか。

板倉自治税務局長

誤解があるといけませんので申し上げますけれども、地方団体が自分のイニシアチブで不均一課税をした、その不均一課税のマイナス分というのは基本的には交付税には算入されない仕組みでございますので、ご留意いただきたいと思います。ただ、一部、ほかの法律で交付税に参入するというか、補てんするという措置を講じているものがありますけれども、それは国の政策でやっているということであります。

寄附金の場合でも、例えばこういう場合には控除をしろというふうに法律で規定をすれば、それはある程度国の責任において見てあげる必要があるということになろうかと思いますけれども、独自の判断でということになれば、それは交付税には算入されない形になるだろうと思います。

石会長

皆さん、するなと言ってるわけですよ。国の施策で補てんはしないほうがいいだろうというご意見ですよ、お二人とも。

どうぞ、本間さん。

本間委員

80年代にチャリティコミッションとか、直接的に行って出口さんなどと調査をした者からすると、税調でこんな議論ができるというのは隔世の感があって、前進だという具合に高く評価をいたしております。

ただ問題は、今回の新しい制度の提案を、既存の制度とどういう具合に考えるか。つまり、画期的という言葉を使いましたのは、事前審査から事後審査に、公益性の判断のレベルというか、どこでやるかということを変えるというわけです。新しい部分のところは事後的に公益性を第三者機関でやるということですが、ほかの部分については依然として出自による。事前的な公益性の評価というのが同時にある。これを一体どういう具合に考えるかということは非常に重要なポイントで、今回はこれをやらないにしても、パフォーマンス・クライテリアでやるとすれば、ここは本来的に、第三者が洗いざらい公益性について統一的な見解をするというところまで理論的には考えていくことも考えられるわけでありまして、その点での整合性を今後どのように議論していくかということは十分考えなければいけないと思います。とりわけNPO法人との関係は、新たにできた制度とのすり合わせをどういう具合にしていくかということは、おそらく現場レベルでは相当混乱、あるいは選択の問題が出てくる、ここのところは留意すべき点だろうと思います。

それからもう一つ、国と地方の関係ですが、これは先ほど説明をしていただきましたとおり、私も自分の住んでいる市の市長さんから相談をされたことがあります。自主的にインセンティブを与えるために自分たちでやりたいというようなことを、これは旧自治省に相談されて、法律上は、先ほどご提案がありましたとおり、勝手にやることはできない、あるいは、勝手に今後やるにしても、地方交付税とのかかわりの中で制約があるということは事実だろうと思います。私は出口さんとは同志的な関係もあるのですけれども、公益性の定義は同じでも、公益性の範囲が違うときに、各市長さん、あるいは各市町村の方々が自らの判断において、これは国のレベルよりも手厚くしてもいいのではないかと思うような裁量制は、当然のことながら、あってもいいのではないか。そういう点での自由度は地方に与えておくほうが、ローカル・パブリック・グッズの供給に対してはいいということ、これが井堀委員が言った話にもつながっているわけでありまして、そこはそれほど神経質にならなくても、出口さん、いいのではないかというのが私の意見です。

石会長

では、奥野さん、どうぞ。

奥野委員

井堀さんとか林さんと、同じ経済学とか財政学をやっていますけれども、少し違う立場から私なりの意見を言いたいのですが、寄附金を増やしたり、あるいは、官から民へというのを進めるという理解で寄附税制を改正するのか、もう少し違う意味で改正するのかというところに、基本的な考え方の違いがあると私は思います。そういう意味で言うと、お二人は既存の税理論との整合性ということをおっしゃったのですが、基本の税理論というのは、人間はみんなエゴイスティックで利己的な考え方でしか動かないという仮定のもとで議論しているわけです。

ところが、最近、経済学の実験ということをやっていて、心理学もそうですが、実はその結果わかってきたことは、人間は決して利己的ではない。むしろ利他的な人たちがたくさんいるんだということがかなりわかってきたわけです。どういうことかというと、人間というのは社会をつくっているわけだから、人間が稼いだ金を社会のために還元しておかないと国とか組織は回らないわけです。利己的な人間ばかりいるのだったら、しようがないから税を取ってそれで国を回しましょうという考え方だったわけですが、利他的な人もいるのだったらば、税を取って国が社会に還元するかわりに、その人たちに代わりにやってもらいましょうという考え方だと思うのです。

もしそうならば、何も国だ地方だと分ける必要はない。まさに出口さんがおっしゃるとおり、公益は公益なので、政府の代わりに私はこういうことをやりたいというような人たちがいるのだったら、それをできるだけ優先して、あまり制約をつけないでやるということは本来的に望ましいのであって、問題が起きるのだったら、それはむしろ理論の側、制度の側で考えるべきであって、まさに地方交付税もそうですけれども、何らかの形で国税と地方税を調整する、そういう仕組みで対応したほうが私はいいと思います。

石会長

どうぞ。

本間委員

奥野委員に反論があります。寄附税制の理論というのは、私もペーパーで東大出版から書いたことがありますが、利他的な要素があるというのは当たり前の話ですよ。それでなかったら寄附税制なんかエンドースできませんよ。それがある上で、一体どのような控除あるいは税率をこの制度の導入によって、資源配分上、プラスアルファをつけるか、それが公益の代替に資するか、こういうことになっているわけでありまして、その部分のところでの公益性というのは、エクスターナリティあるいはボランティアなベースにおける利他主義というものが前提にある。その上で、国税レベルでやるときには、ユニバーサルなサービスとしてのピュアな部分のところがあるのに対して、地方税ではローカルな部分のところが限定されるときに、地域の人々の裁量制によってやってもいいんだというのが理屈だろうと思います。ちょっと今の奥野委員の議論は理解できません。

石会長

奥野さんの反論があると思いますが、ここは学会の討論会ではありません。ほかにまだ議論がいっぱいありますので、奥野さんはまた別の機会にでもご発言ください。

井上委員

出し手側から。

石会長

では、短く。

井上委員

非課税でなければ出しません。以上。

石会長

わかりました。それはそうでしょう。

それでは、残った時間がだいぶ減ってきましたけれども、あと2つ、ご報告を受けます。1つは、財政審でやりました「長期試算」の問題、もう1つは「地方行革」の関係でありまして、これは水面下でつながっております。時間の制約もありますので、10分ぐらいずつ各々ご説明を受けまして、残った時間で質疑応答に充てたいと思います。

田近さん、お願いします。

田近委員

利他的な精神で盛り上がったところで、財政赤字も、広い気持ちで解決できることを祈って報告しますけれども、お手元の「財政制度等審議会財政制度分科会」の資料です。

財政再建にかかわって、これは消費税に翻訳されるとどうなんだということで、新聞等でも記事が出ていまして、そこが出てきたので話が少しこんがらがったかなと。それで、3点書いてあると思います。

1つは、長期的な--といっても10年後、20年後の、長期的な財政の試算をしてみた。その中で着目したのは、社会保障をコントロールしていったらどのくらい財政赤字の解消に役立つのか。そしてそれを踏まえて、そこが議論がこんがらがったところだと思いますけれども、プライマリーバランス、基礎的財政収支を2015年に均衡させるには消費税の姿は、と翻訳したらどうかと。これでわかったことは、消費税云々と換算するといいますけれども、そこが結構難物だということです。

あとは、手早くしゃべれということで、本文のページ数をくくりながら行きます。そういうことで歳入・歳出を絡めた上で、日本の財政の長期試算と基礎的財政収支の均衡をやったものだということです。

2ページに仮定等がありますけれども、重要なのは平成23年以降の数字で、名目成長率が1.6%、長期金利が3%ですから、この時点で閉じていない、金利のほうが成長率より高いということは推計上重要です。これは厚労省試算と同じです。

社会保障については厚労省試算の値にして、それ以外の歳出は名目GDPの成長率ということで、その意味では厳しい仮定ですけれども、やってみた。それが3ページになります。2005年、2015年、2025年の一般会計、国の財政の姿が書いてあるわけです。見どころとしては、公債GDP比率が、今の105%から2015年には150%、2025年には221%に上がっていく。プライマリーバランス、金融的な要素を財政から取り払って、税収に対して歳出がどのくらい多いかというのが、足元、2005年で15.9兆円、2015年で24.9兆円、2025年で33.6兆円。

このペーパーがやろうとしているのは、ある意味で政策のターゲットとしては低めですけれども、ぎりぎりは2015年ですから、2015年を2010年代の初頭として、一般会計のプライマリーバランスの赤字である24.9兆円をバランスさせるにはどうしたらいいか。ただ、この時点で長期金利のほうがGDPの成長率より高いですから、これをバランスさせたところで、残高がコントロールできるわけではないということは重要です。

少し走らせていただくと、4ページ以降は、社会保障をコントロールしたらどうなりますかということで議論がされています。5ページに「前提」というのがあって、何が前提かというと、厚生労働省の試算の社会保障にかかわるところの伸び率が出ています。医療が1人当たり何%伸びるとか、特に介護は伸びていますけれども、それを6ページ、ある意味で乱暴というか、社会保障の支出を思い切った仮定で絞り込むわけです。

ケース1は、すべてGDPの成長率でいったらどうだと。あらゆる歳出項目がGDPの成長率でいく。ただ、年金などはもう抑えられていますから、そこはいいのですが、ポイントは医療費、介護保険、生活保護あたりが厳しくコントロールされる。

ケース2は、もう少しそれを緩めて、高齢者が増えるのだからと。しかしサービスを効率化しますということですけれども、ケース2は結果的には大した違いはない。時間がないので今日は触れません。

ケース1で、すべてGDPで増やしたらという結果が9ページ以降出ています。9ページは、今のまま社会保障をコントロールしなかったらどうなんだということで、その場合は、当然ですけれども、どんどん伸びますと。そして2025年には、NI比、国民所得比で負担率が28.5%、これに税等を入れれば50%を超えるという話です。

それを、カットするとどうなりますかというのが一連の話で、10ページをざっと見ていただくと、今、2015年をターゲットにしているわけで、2015年、総社会保障給付費が12兆円、NI比で2.5%ぐらい削られるよというようなことを言っています。これは簡単な仮定で、全部GDP成長率ですから、それ以降伸ばしてもGDPに対して比率は変わらない。

見どころは12ページになるわけです。コントロールすると公費負担が幾ら下がるのか。説明を省きますけれども、社会保障にいろいろな公費を払っていますけれども、社会保障給付に係る公費負担で、左側が2015年です。今、何もしないと、2015年に43.5兆円、公費がかかる。今言ったように、すべてGDP成長率で抑えるぞというと、ケース1ですけれども、7兆円カットできる。2025年はGDPの比率で考えると変わりませんから、推計的にはあまり意味がない。

今説明したことをかいつまんで言うと、2015年でプライマリーバランスを一般会計で均衡させるためには25兆円埋めなければいけない。社会保障で思い切ったコントロールをすると、公費で7兆円。これは地方分もありますから、国の部分を取り出すのは難しいですけれども、7割として大体5兆円。そうすると、2015年で25兆円埋めなければいけない。でも、社会保障でこれだけ思い切ってやって5兆円埋まる。したがって、あと20兆円、穴があるというのがこのレポートの基本的なメッセージで、13ページ以降の消費税に翻訳したらというところで、多少の混乱が起きて、結果的には消費税の問題というのは何なのかということで興味深いことになります。

今言った問題をもう一回復習すると、2015年で25兆円の穴を埋めなければいけない。13ページ、試算結果の総括のパラグラフの2ですけれども、歳出削減だと単に一律3割カットですよ、増税だけだと4割増ですよと。ここからなんです。仮に、2015年の一般会計の25兆円の赤字を消費税だけで埋めたらどうなりますか。そうすると消費税は19%ですよと。単に割っただけですけれども、そうなったわけです。

次のパラグラフで、では、社会保障の公費というのがありましたねと。2015年で36.5兆円。それが消費税負担で12%になりますと。19%とか12%というのは根っこの今の5%を含んでいます。したがって、今のままで消費税だけでいくと7%の増ですと。ところが、社会保障に係る公費負担部分の増税を消費税でやると、14%の増税が必要で、社会保障のほうを7%増やせば残りは7%ですねと。7%のうち、努力すれば社会保障が2%ぐらい下がりますから、残りは5%だと。

そういうことが出てきて、わかったようなわからないような話になった。なぜわからないのかというと、25兆円の穴を埋めるときに消費税というけれども、一般会計の穴を埋めるときに消費税を上げると、かなりの部分は地方にいってしまうわけです。仮に5%から19%に消費税を上げると、地方は今、プライマリーバランスは3兆円ぐらいの黒字ですから、ダバッと黒字になってしまう。社会保障の12%も、国の取り分いかんでは足りるか足りないかわからない。

そういうことで、2015年に一般会計のプライマリーバランスを均衡させるのはターゲットとしては決して高くない。社会保障をGDP並みに成長させるという非常に厳しいコントロールをしても、たかだか5兆円しかあがってこない。残りの20兆円の穴をどうふさぐかというのが基本的なメッセージです。

もう一つは、消費税換算するときには、実は、財政赤字のファイナンスとして消費税を使うときには国と地方の取り分の問題が本質的な問題になってくる。最終的には25兆円のうち5兆円しか埋められないということと、それを消費税で埋めるというけれども、そんな簡単な議論ではないという2点かなと思っています。

以上です。

石会長

ありがとうございました。急かしてすみません。

それでは、時間の都合がありますので、地方行革のお話をあわせてお伺いしたいのですが、今日は、総務省の山行政体制整備室長にお越しいただいております。これは我々としても非常に関心のある問題でしたので、わざわざお越しいただきました。

では、時間が切迫しておりますが、よろしくお願いします。

山行政体制整備室長

それでは、手短に「総29-4」という資料でお話し申し上げます。この資料は、地方公共団体が今どういう状況にあるかということがわかりやすく示せるように、行革の現状を、これからどうやっていこうかというスタンスでつくっております。

1枚目をご覧いただきますと、まず頭に置いていただきたいのが、この数年で基礎自治体の数が相当変わるということであります。私ども、よく3,300団体という言い方をしておりましたが、平成11年の3月に3,232あった市町村が、現在の合併特例法の経過措置期間が終了しますのが18年の3月31日ですが、それまで1,822にまで減るだろうということで、実に43.6%の団体が減少する。私どもは、地方分権の担い手となるための基礎自治体、経営がしっかりした自治体をつくるということでやっておりますが、これは行政改革という側面も有しておりまして、こういう前提があるだろうということを申し上げておきたいと思います。

2ページ目は、変化でございます。こんなに急激に市町村が減少したというグラフでございます。

3ページ目は、全国的におしなべて進んでいるというわけではありませんで、例えば愛媛県あたりは71.4%の市町村が減少していますが、北海道では15.1%ということで、基礎自治体の再編成が行われたところと、まだまだなところがあるだろう、これが次の5年間の新しい法律の課題になるだろうと思っております。基礎自治体を論じるときに、規模能力がかなり大きくなったところとそうでないところがある。逆に言えば、行革を進める余地がかなりできているところがあるということをご覧いただきたいと思います。

4ページ目は、これまで何をしてきたかという話でございます。これまでは、平成9年の自治事務次官通知に基づきまして、地方公共団体は行革に取り組んでくださいねということをやってきたわけでございます。

その中で、一番上のマルでございます。平成9年の通知では、都道府県とか市町村に、自分たちの行革を進めていくべき大綱をつくってください、その大綱には数値目標を設定して公表してくださいというふうにお願いしておりました。ご覧いただきますとおり、都道府県政令指定都市では100%、その他の市では67.5%、特別区では87.0%が、何らかの目標を持って公表して進めているわけでございます。ただ、町村でかなり割合が低うございますのは、先ほど申しました市町村合併をこの期間相当やっているという部分がございまして、まず自分のところの身の振り方を決めてからという部分があったことは否定できないと思います。

そこで次のページをご覧いただきますと、眼目でございます定員管理の状況。国家公務員のほうは制度改革をかなりしまして、郵政公社に行ったとか、独立行政法人で大学の先生方が公務員ではなくなったとか、そういう大きな改革がありますから、見た目の数字はかなり多く動いています。地方公務員はそういう制度改革を前提としていないのですが、この間の財政状況もなかなか厳しゅうございまして、平成7年から10年間連続して減少している、最近10年間で20万近くの人間が減少している、これは純減でございます。

そこで少し注目をいただきたいのが、知事さん、市長さん、なかなか大変な部分がございまして、6ページでございますが、例えば県をご覧いただきますと、ここに都道府県の職員が162万人と出ております。その中で教育関係が94万7,000人、警察の関係が27万人ございます。ご案内のように、ここは県知事がコントロールできない定数で、国のほうで決めている定数でございます。この間、治安の悪化もありまして、警官は増えている。それから、子供の数は減っていますが、教育環境を改善するという前提で、教育もなかなか減っていないという状況で、福祉関係を除きます一般行政職員21万2,987人の中から純減を生み出してきているということが実態であります。

それから市区町村は、ご覧いただきますと、教育と消防、介護保険以降、保育の話もございましたが、福祉関係が非常に多くなっておりまして、42万7,000人の一般行政の中から純減を生み出していくことが必要になっているという状況でございます。

こういう中で20万人近くの定数の減少をさせてきた。

次のページが、問題の給与でございます。最近では、国と比べているかどうかという話もございますが、昭和49年のグラフをご覧いただきますと、国の公務員の給与を100として地方が幾らかということになりますと、41.2%の地方団体がラスパイレス指数が105以上、5%以上給料が高かったわけであります。これから適正化を順々に進めていきまして、平成16年で申しますと、92.8%の団体がラスパイレス指数が100未満。平均値も97.9になっておりまして、おしなべて国よりも低いということになっております。

下のほうに書いておりますのは、人事院勧告は出ているけれども、あまり財政がきついので、組合交渉をして、人事院の勧告を守らずに独自に給与カットをしていますという団体が1,405団体ありまして、1,400億円の人件費を抑制している。例えば大阪府の昇給の24月延伸などというのは、単にカットしただけではありませんので退職金まで響いていく、回復しないような給与の抑制措置を行っています。

ただ、これで十分かという話になるわけですが、8ページをご覧いただきますと、私ども、これからの数年間が大事な時ではないかと思っているというグラフでございます。これは2年前の数字ですので、今は年齢が右に2歳ぐらい寄っていると思ってください。細い実線が国家公務員の年齢構成ですが、当時、28-31のところにピークがありまして、いわゆる団塊の世代のところは小さなピークであります。地方公務員のほうはさまざまな事情がありますが、団塊の世代のところが非常に大きいかたまりを有しているわけでございます。私ども、今まで社会の一線でご活躍いただいたこういう公務員の方々が定年をお迎えになるときまでに、どういう体制で新しい改革をしていくか、これが非常に大事なのではないかと思っている次第でございます。

そこで9ページ、今回、総務大臣が助言をいたしました。総務事務次官通知を出したわけですが、これが3月29日の「新地方行革指針」でございます。前文のところだけご覧いただきたいと思いまして、抜粋としてあります。

率直に申し上げまして、今年になりまして不適正な事例がいろいろ報道されました。そこで、傍線のところでございますが、総務省といたしましてはかなり異例の厳しい言い方をして、「地方行革の進捗状況に対する国民の視線は厳しい。特に、給与制度やその運用などについては、なお一部に不適正な事例も見受けられ、各方面の批判が向けられている。分権に関する共感と理解は到底得られず、もとより早急に是正される必要がある」というようなことを通知させていただいたわけでございます。

そこで、次のページをおめくりいただきますと、では、具体的にこれからどうするのかという話になります。今までの行革指針では、それぞれの地方自治体が地方自治の原則に基づいてやるんだよという建前がありましたから、行革大綱の期間とか、数値目標のとり方とか、設定期間というのは、私どものほうで特に申し上げているわけではありませんでした。

今回は、こういう大事な5年間、しかも、市町村合併によってできた新しい自治体が定着する5年間ということになりますので、その間に足並みをそろえて総地方団体で改革に取り組むことが必要なのではないかということで、「集中改革プラン」というものをおつくりいただけないかというお願いをしたわけです。ポイントは、目標を数値化することと、できるだけ住民の皆さん、国民の皆さんにわかりやすい指標を採用していくことでございます。17年度を起点としまして、概ね平成21年度までの5年間の具体的な取組みを公表してもらおうということでございます。これが3点目のポイントで、定員管理の適正化、平成22年4月1日における定員目標を明示ということでございます。この日は実は、地方公共団体の中でかなり大きな層を占めておりました方々が退職され終わるときでございまして、ここに向かって定員目標を明示して、退職者数、採用者数の見込みを示していったらどうか。

このためには、当然、事務・事業の再編・整理が要るだろう。市役所とか県庁がブラックボックスになってはだめだろう、この係で何の仕事をしているのか、何人張りついているのか、幾らお金がかかっているのか、こういったことをしっかりご覧いただいて、この係とこの係は一緒でもいいのではないか、もうやめてしまってもいいのではないか、あるいは、この係でやってきたことは民間委託をしてもいいのではないかと。ここに指定管理者制度と書いてありますのは、地方自治法を改正しまして、体育館とか図書館は純粋な株式会社でも管理ができるというふうにしました。そういったことをやっていきますと、仕事の仕方がだいぶ見直せるのではないかと思っています。そういうことをやりますと、今まで公の施設を管理するためだけに第三セクターがあったとすると、そのあり方も見直しができるだろうと思います。

それから、何よりも手当の総点検をはじめとする給与の適正化ですが、実は去年の12月に、私ども公務員部で特殊勤務手当の見直しを行いまして、今、見直しをしていただいています。それから、給料表の運用とか退職手当を住民の皆さんにご覧いただいて、そこで理解を得ていくしかないだろう。必ず総点検をして給与の適正化をしてもらいたいというふうにしております。こういうことをやっていきますと、経費節減等の財政効果が出てくるだろうと。

私どもとしましては、総務省で、都道府県指定都市に対して集中改革プランについて必要に応じて助言をし、できるだけわかりやすく公表しましょうということを考えています。もちろん、一部の地方団体の不適正な問題には徹底的に取り組もうということでございます。

最後のページに入れておいたのですが、では、最後はどうなるのかという話です。私ども、地方公共団体で集中改革プランをつくるときに、できるだけ民意を反映してくれ、比較可能な指標に基づいて自分のところの行革の成果を公表してくれ、住民等にできるだけわかりやすく公表してくれ、改革の推進力に住民になっていただく必要があるだろうと。

総務省は、必要に応じて助言をいたしますし、毎年度フォローアップを実施しまして、その結果を広く国民に公表する。今度は期間がそろっておりますし、数値目標のとり方が一定になっていますから、うちの県がどれくらい頑張っているか、うちの市がどれくらい頑張っているかということが住民の皆さんにも国民の皆さんにもわかっていくだろう。こういうことで、今、総力を挙げて改革に取り組む時期が来ているのではないかということで、取り組んでいるところでございます。

今まで結構一生懸命やってきていますし、また、市町村合併も進みましたが、これからもさらに地方団体の総力を挙げて改革に取り組むということで、現在やっているところでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。意気込みが伝わってくるようなご説明でした。頑張っていただきたいと思います。

最後、はしょってしまいましたが、2点ございます。ちょうど4時になってしまったのですが、若干延ばしてもいいと思います。特にご意見なりご質問、今のお二人の説明についてございませんか。よろしゅうございますか。

いずれにいたしましても、長期見通しの財政がどうなるか、あるいは、地方行革は歳出カットの一環でありますから、その視点からご説明いただきましたが、今日は、議論というよりは情報を提供していただくという面が多いので、皆さんから特にご質問がなければ、これで終わりにしたいと思います。

最後に、スケジュール表が配られていると思いますが、ご覧いただけますか。今週の金曜日に基礎小をやりまして、ここで所得税を全部まとめたいと思いますが、これは3時間を予定しております。6月10日の総会は非公開でやりたいと思っています。起草の文案等々が出てまいりますので、報道の方、各省の幹事の方も含めまして、申し訳ございませんが、傍聴の方にはご遠慮いただく。ただし、議事録はその後出したいと思っていますので、内容はいずれ明らかになると思います。

というわけで、21日は13時から17時まで、3段階の審議を踏まえまして、今回やっております所得税改革と、非営利法人を含めた寄附税制議論をまとめたいと思っていますので、ご協力をいただきたいと考えております。よろしゅうございますか。

では、長時間、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。