総会(第23回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年11月25日(木)16:18~16:57

石会長

今日、税調総会でまとめたものを先ほど首相官邸で小泉首相に手交いたしましたので、その辺の事情と答申の中身につきまして、考えていますことをご説明いたします。

1時から2時まで総会をやりまして、昨日までまとめましたことにつきまして「答申案」を読み上げまして、まとまりました。そこで、3時50分から首相官邸におきまして、10分から15分、直接総理にお目にかかりまして渡してまいりました。極めて今日はご機嫌でしたね。何か三位一体でいいことがあったのかな、よくわかりませんけれども。

私から2点申し上げました。1点は、我々税調でしかと議論して、今年も含め数年先の税制改正の言うなれば骨格を決めてきたので、ぜひ政治的に実施に移してほしいということを申し上げました。もう一つは、来年早々から幾つかの懸案事項があるので、議論を再開したいと。とりわけ社会保障の財源問題については、やはり税でやるか、保険でやるかも含めて議論しなきゃいかんだろうという形で、またその辺の音頭取りもしてもらいたい趣旨のことを申し上げました。あとは雑談の中で、非常に今日は、何というか元気いっぱいでいろいろなことをおしゃっていましたが、一つは、納番というのもしっかり税調で議論せいということと、更に揮発油税の一般財源化なんて大いに議論してもいいじゃないかと、環境税にひっかけておっしゃっていまして、幾つかご関心をお持ちのようでありました。

本論の方に戻ります。今日は、「平成17年度の税制改正に関する答申」という本文と、「答申に盛り込まれていない主な意見」という二つ冊子がございます。両方合わせていただきますと、税調としてどういう議論をしてこの答申にたどり着いたかということがお分かり頂けようかと思います。これは、一応数年先、数年というのは4年ないし5年ぐらいのタイムスパンだと思いますが、それを見据えて、来年度税制改正で何をするかということに対する指針を決めたということでありまして、私の感じでは、今後起こり得る非常に重要な税制改革の種をまいたと。これから数年かけてこれが実り、収穫を上げるという、そういうふうな初年度であるというふうに位置づけても構わないと思います。

それでは基本的スタンスとして2~3申し上げたいんですが、今回の答申は、財制審の建議にもございましたけれども、やはり財政の危機的な状況について一段と危機感を深め、財政再建というよりは財政規律、財政健全化、こういうものについて、やはりこれからしかと取り組まなきゃいかんという点を強調してございます。増税という言葉を使ってもいいんですが、我々の感覚では受益と負担のギャップを縮小したいということであります。つまり、国民から見ると、公共サービスで受け取る受益があり、それを賄うための負担、税でやるか、保険料でやるかもありますけれども、これとのギャップが大きく開き過ぎてしまった。よく言われるように一般会計で82~83兆円ある歳出に対して、半分ぐらいの41~42兆円しか税収が集まっていないということ自体、このギャップが財政赤字なんです。これを埋めないことにはどうしようもないだろうという意味で、本腰を入れて健全化に向けてスタートを切るべきであると。税負担増というのは避けて通れないということをはっきり明確に書いてございます。

二つ目は景気との関係で、これまで幾つか議論がありました。我々の頭の中では選択肢が二つあって、景気が完全に回復する、それを待って本格的に大きな規模での税負担引き上げをやるか、それとも今後の日本経済の先行きを見通して、そういう大仕掛けなことができるような景気が本格的に来るかどうかわからないし、また判断が難しい。そういう意味で、負担を平準化させて、毎年できる範囲で景気とにらみ合わせてやっていくというスタイルの方がいいんじゃないかと。後者の方をとっているというのが今回の基本的なスタンスであります。というのは、年金・医療・介護等々含めて、国民の不安、不信は非常に高まっています。政府が本格的に財政再建、財政健全化に乗り出して、そういう将来の年金等々についても責任を持って対処するということのメッセージが恐らく国民の安心・安全を高めて、それほど可処分所得が減ったことによる短期的な個人所得の落ち込みとはまた違った意味で安定した形での需要が賄われるのではないかと、こういう印象であります。

第3は、これから恐らく税制の骨格は、国税で言うならば所得税と消費税にならざるを得ないと思っていますので、これは同じような形で地方税に移せると思いますが、この二つを基幹税として税制の体系というのは構築されるというふうに考えております。つまり、所得税に関しては抜本的改革を通じて、本来の所得税の機能というものを持たせる、それから消費税については、後から申し上げますが、いろいろな構造的な変革を踏まえた上で税率を引き上げざるを得ないだろうと。そうしないと、冒頭申し上げた財政規律なり、財政健全化というものが保てなくて、いつまでも放置しておけない。放置しておくことによって、後世代に負担がどんどんしわ寄せが行く、あるいはマクロ的に見て、この財政が非常に悪い影響を与え出しているということをやっぱり我々としてしかと受けとめなければいけないというふうに考えています。

あと、見ていただきますと、後半の方には個別の税制に関して幾つか方向性を書いてございます。2~3挙げるならば、やはり一番大きな問題は定率減税の廃止・縮減だと思っています。これは、ここでも何回もこれまでご説明いたしましたように、来年度税制改正では段階的に見直すと。あるいは段階的に縮減するということをはっきり書いてございます。と同時に、平成18年度には全廃したいと。したがって、2年に分けてやると。平成18年度に一挙にというよりは、17年度から段階的に執り行うということを書いてございまして、これが基本的なスタンスであります。となると、景気はどうなるのかという話が当然出てくるかと思いますが、確かに今足元の景気が、今日の麻生大臣のご感触にあったような形の厳しい見方もあるかと思いますが、足元の景気も今少し、やや控えめになってきましたが、平成11年度の定率減税を入れたときに比べれば、私は非常によくなっていると思いますし、何分にも、何回も申し上げますように、2006年1月から入れるならば、まだ1年数カ月景気の動向を見極める時期がある。したがって、今から定率減税、いろいろなものが景気が悪いという形でこの議論をストップさせてしまうほど問題であろうと思いますので、制度は制度として仕組んで、その発動に当たっては一国の経済政策との絡みでそのとき判断すればいいと思っています。それは恐らく諮問会議なり、竹中大臣のもとでのいろいろな議論がそのときあって、どうしてもできなければ、それは延長したり、凍結したりということはやむを得ないと考えています。と同時に、この定率減税をなぜやらなきゃいけないかというのは、18年度までに三位一体のもとにおける税源移譲がございますから、これは所得税、地方住民税の本格的な本則に基づく改正になりますから、抜本改革ですね。したがって、定率減税は抜本改革までのつなぎであるという性格でいいますと、当然、定率減税はやめるべきであるし、景気も景気対策として打たれたわけでありますから、その景気に対してある程度効果が、景気に対してそれほど配慮しなくていいということになれば、当然のこと、存置する理由は減ってくる、なくなってくるだろうと考えております。そういう意味で、税源移譲と定率減税につきまして、はっきりした姿勢を出したと思います。

消費税につきましては、いずれにしましても、2006年9月、小泉首相の退陣までは実施することもないし、今日も小泉さん言っていましたが、幾ら議論しても、まだ2年先になるのは当然であると。そういうことだと思いますので、仮に2007年度から入れるとしても、この2年間について、幾つかの構造的な問題をしかと審議しておく必要がある。一つは、仮に2桁の税率になったときに、軽減税率を入れるかどうか、食料品に対してですね。それについては、極力単一税率が望ましいという形で答えを出し、しかしまだ検討の余地はあるだろうという余地は残しておりますし、それからインボイス、これは仕入れ控除の関連でぜひ必要だと思っていますので、このインボイスについても言及していますし、そのとき福祉目的税なのか、福祉目的化なのかわかりませんけれども、福祉との関連をどうつけるか。我々としては、一般財源であるということをはっきり書き込んでいますから、そこは一般財源で行くべきである。ただ、福祉との関係というのは、国民の皆さん、非常に関心持っていますから、どう説明をつけるか。福祉目的化という現状でやったような話が一番いいのかなという感じはします。

それから、その二つの基幹税を支える意味で相続税を中心とした資産課税が重要であると考えております。課税最低限を引き下げるという格好になると思いますが、資産再分配の強化という意味から、相続税をもう一段と対象者を広げて、今100人で5人ぐらいしか払っていませんが、もうちょっとそのカバレッジを多くするということは十分あり得ると思っていますので、そういう意味でフラット化が行われた所得税、それから逆進性と呼ばれる消費税を補完する意味で資産課税、相続税の強化というのは避けて通れないという感じであります。

酒税、これも次の個別消費税の中で大きな問題になると思いますが、一貫して酒類の数を減らし、酒類間の負担の差を縮めていくという抽象的なことで書いてありますが、意図するところは明々白々だと思います。同種・同等で負担が違うというのは問題でありましょうし、何分にも今10ぐらいある酒類の数が多過ぎる。そういう意味で、できれば大くくりにして、トータルの面での酒税の改革を考えたい。「早急かつ包括的」という字が入っているのはそういう意味でありまして、これは年明けから早速議論の対象になる、この間申し上げたとおりです。

環境税、今日、小泉さん、俄然関心をお持ちのようでありましたが、いずれにしても、環境税もやれよというふうなことでございます。答申に書いてございますように、3月までに地球温暖化対策推進大綱の改定がございまして、そこで税制との絡みが明らかになると思いますが、その時期になると思いますが、税としてどう仕組むか、どういう役割があるかというのは、税調としても議論をしなければいけないと、このように考えております。

主要な税で主要な論点はそんなところですが、最後の法人税につきましては、既に過去数年間、ある意味では法人税を中心にしてさまざまな税制改革を行ってきましたので、主役足り得るとすれば、商法の改正の見直し、それから公益法人の絡みでその税制がどうなるのかといったあたりが話題になり、基本税率の引き下げ等々については、各国の状況を見なきゃいけないので、どちらかといいますと、質的な側面での改革になると、このように考えております。

以上が大体強調したい点でございまして、答申に書いてあります。

今後ですが、先ほど首相のところで申し上げましたが、年明け、できれば1月中旬以降、勉強会という形でまた税調を再開して、とりわけ社会保障財源の側面から年金・医療・介護みたいなものも議論したいと思っています。税でやったらいいのか、あるいは保険料でやったらいいのか、これも議論のあるところであります。いずれにしましても、税源移譲の規模が多かれ少なかれ決まってくるんだと思いますので、早急に所得税、住民税の形・構造、3兆円なら3兆円を移した後の前後における変化をどういう形にするか、これはやっぱり議論しなければいけないと考えています。金融所得課税の一体化という絡みで納番を掲げておきましたが、納番を大いに議論してくれというふうに今日は首相も仰っておりますので、納番だけ議論するという余地があるのかどうか、これはある意味で年金とも絡むわけですよね。そういう意味で、そういう議論もしなきゃいかんかなと思っています。

いずれにしましても、冒頭申し上げましたように、今後を見通して、主要な論点についてはかなり重点的に論点を整理したつもりです。時期とか税率等々の数量は入ってございませんが、今後、日本の税制改革にとってどこが必要かという点については十分に我々として議論をし、書き込んだつもりであります。それを我々も一つ一つ取り上げてこれから議論していかなきゃいけない。これから党税調に議論が移る、あるいは政治的にいろいろな形を経て法案ができ、国会に行くと思いますが、それについては、ぜひ実現のことに尽力してくれということを今日は小泉さんにも言ってきました。以上です。

記者

答申のまとめの日ですので、必ずしも税制に詳しくない国民の方を念頭にお答えいただければと思うんですけれども、来年度の税制は、今まで減税が続いてきた中で、大きく増税に踏み出すかなという印象を持たれる答申でもあります。国民に対して、なぜ今増税が必要なのかということをお願いします。

石会長

冒頭申し上げましたように、やはり我々国民の側から見て、公共サービス等々で受け取っている受益と国民が負担しなきゃいけない、特に税で負担しなきゃいけないものとのギャップが余りにも開き過ぎました。その結果、財政赤字がどんどん膨らんで、これはすべからく後世代の負担になっていますから、いつまでもこの状態を放置できない。そういう意味で、歳出を削るということと税負担を引き上げるということと両方相まって、このギャップを埋める。そういう意味で、私は増税という言葉でも一向に構わないんですが、受益と負担のギャップの縮減とか、あるいは借金の程度を縮小していくとかという言葉の方が中身としては適切だと思います。つまり、増税と言うと一方的な方向だけの議論がしがちでありますが、やはり歳出面での切り込み、あるいは削減ということが前提になっての増税でありますから、そういう意味では、そのギャップをどうやって縮小するかと。これをいつまでも放置しておきますと、日本はますますいろいろな意味での重荷を背負い込むことになります。そして、先送ればするほどこの負担は膨らんでいきますから、後世代も含めて、国民の負担感というのはもっと大きくなると思います。幸いなことに、経済がある程度持ちこたえてきましたから、先ほど申し上げたように、負担が平準化する形で毎年やっていくというふうなことの方がいいだろうという判断に立っています。そういう意味で、減税続きということをおっしゃいましたが、確かにこれまで減税をやってきましたけれども、これからは減税という行為は恐らくそうないと思いますね。少なくとも定率減税を維持してくれということは、反対の議論に行くなという意味では実質増税反対なんでしょうけれども、少なくとも減税の維持ぐらいで、新規の減税というのはないと思いますから、これからは国民の方々の判断、政府がお願いして増税するんじゃなくて、国民の側から見て、自分で負担しない限り、この日本国は持たないよというような感じができれば一番いいと思っています。

記者

つまり、今の税収でも、とてもではないが賄えないということでよろしいですか。

石会長

そういうことです。それは明々白々でありまして、資料も幾つか出ていると思います。財制審でも出ていましたように、このまま放置しておくと、2025年かな、21%の消費税率とか、一般歳出を3割削らなければいけないとかという大きなことが出ておりますから、そういう数字もぜひ議論の中に入れて、単に願望とか願い事だけでは、この議論、今言った状況は救えませんから、具体的に国民各自が考えて行動していただくしかないと思います。

記者

お話にも出た定率減税ですけれども、これも導入のときの特例だったというようなニュアンスの意味で、なぜ今、廃止の必要があるのかということを教えてください。

石会長

確かに恒久的減税、「恒久」という字がついていますが、あれはその数年前から、1年限りでやめてしまうような特例減税とか、一時的にあったものですから、少しの間延ばして使えるような意味で恒久にしたんでしょうけれども、あの条文を読んでいただくと明らかのごとく、景気が悪いから景気刺激のために入れるよということと、所得税を中心として抜本改正までのつなぎであるとはっきり導入の時点で断っています。その二つの条件を今から見ると、定率減税をずっと続けていくだけの根拠がなくなってきたと思います。景気もあの定率減税を続けなきゃ支えられないということでもないでしょうし、三位一体の税源移譲という抜本改革が目の前に来ている以上、それをやるためにも定率減税をなくせという当初の縛りがあってということです。

したがって、あれはある意味で当然のことながら、所得税をいっぱい納めていた中高所得者層に減税の幅が大きい、はっきり言って。中低所得者の方の減税幅は少ないから、逆になくしたとして、中高所得者の方に負担が行くと思います。つまり、金持ち減税という言い方はよくないかもしれないけれども、中高所得者中心の減税であったと。したがって、課税の公平とか中立とかという点から見ると、やっぱりあの制度は税制の理屈としてもおかしいと思っています。

記者

酒税ですけれども、おっしゃるように、それぞれの分類の大きさ、それぞれの格差というのが問題になっていると思うんですが、それとは別に、酒税の税収そのものが落ちているという現実もあると思います。今後見直していく上で、素直に高い税率のものを引き下げて、低い税率のものを引き上げるというような方向と思っていいのか、そうは言っても、トータルとしてやはり税収を上げていくという方向を考えていらっしゃいますか。

石会長

酒税というのは、20~30年前に比べると、税収の中に占める位置が非常に落ちていますよね。それはしようがないと思いますけれども、例えばビールを見ても、ビール、発泡酒、それに似たような類似と言っていますが、それを入れると消費量はトータルで変わらないんですよね。中で入れ替わっているだけですから、安いビールをいっぱいつくって、それで本体のビールの方の消費を減らしては、かえって売り上げによくないでしょうね。それから、何といっても税の節税商品的な色彩が強いので、税の仕組み、酒税の仕組み自体が問題あると見ています。そういう意味で、大きくくくれば、類似のものを全部くくれば、当然のこと、一体化した税であれば、高い方が下がって低い方が上がるという意味の格差縮小というのは当然あり得ますから、おっしゃるようにそういう方向で行くと思います、議論としてはね。だから、税収確保のためではないということです。

記者

消費税に関しまして、会長はどの段階、今の政権の後ということにはなると思いますけれども、早急に引き上げるというふうなお考えでしょうか。

石会長

小泉さんのようなお話もさることながら、やっぱりこれで思い切って、5%からどこまで行くかわかりませんが、税調では欧州の先進国並みの2桁と言っていますから、少なくとも10%は入っているわけです。5%から10%になるにしたって倍ですから、そうなると、やっぱりインボイスの問題であるとか、軽減税率、食料品だけ残していいじゃないかという、そういうご意見も税調でも強いし、何やかんや言っても、福祉との関係をどうするのかというふうな議論を整理しておかないとできませんから、小泉さんの任期のことも絡めるけれども、1~2年じっくり議論するということは必要だと思いますね。そういう意味では、常識的に考えれば2007年度以降でしょうね。そのときに一挙に倍にするのか、あるいはその中間なんかを置くのか等々は、そのときの政治的な判断だろうと思います。

記者

消費税なんですけれども、答申の記載をほじくるようで恐縮なんですが、8ページにあります2段落目に「国民の理解を得る努力を払いつつ」という表現にこだわるんですが、努力を払っていれば、理解が得なくても引き上げていいと。原案ではたしか「国民の理解を得つつ」となっていたと記憶しているんですけれども、この辺についてはどういうふうに理解すれば・・・。

石会長

私、消費税導入の時点からずっと研究者とし、あるいは税調の一員として見ていますが、竹下さんが入れた消費税、1989年、あのときの状況と比べますと、差があると思っています。それは、昨年、一昨年、20何回全国をめぐって対話集会を開きましたけれども、今のような状況を説明し、そして特に若い世代は、もう生まれたときから消費税が入っているという世代がいるわけです。物心ついて、10歳ぐらいのときに消費税導入の人が20歳になると、消費税なるものにどっぷりつかって生活してきましたからね。私どもの世代に比べると、全然アレルギーがないような印象を持っています。ただ、やっぱり増税は増税だし、毎日が言うなれば税負担との感覚がありますから、反対が多いのは十分わかっています。どこまでいって理解を得たかとか、どこまでやれば満足だという指標はないと思います、具体的に。ただ、私の経験からいっても、10年、国民に対しての消費税に対するアレルギー、それから何が何でも反対だということは、僕はなくなってきたと思いますので、また再度、対話集会みたいなことを積み重ねようと思っていますが、努力はします。ただ、あるところへ行ったら、それは国民投票するわけでもありませんから、それは政治的な判断、あるいは我々の判断で決めるしかないと思いますが、最低限、そういう対話を重ねながら議論を深めていくということ、それはマスコミの方にもお願いしなきゃいけないけれども、その努力を通じていく中で、国民の、あるいは世論調査でもしてもらうといいと思いますけれども、国民の間で税率引き上げやむなしという声が出てくることを密かに、あるいは明らかに期待しています。僕は、そうならざるを得ないと思っています、ちゃんとまともに議論していけば。つまり、代替案を示していただいて、そうでなくてもいいよという案が出ればまだしも、なかなか出ないだろうと思っていますから。努力しようということです。

記者

総理の発言をどう理解したらいいかということなんですけれども、まず納番についてなんですが、これは要するに金融一体課税の中でやれという話なのか・・・。

石会長

総理の話はもっと単純明快ですよ。国会でしょっちゅう議論の種になると。特に民主党が納番をやると非常に言っているわけでしょう。それで、私も関心があると。ついては、税調でもしっかり議論せいと、どの番号を使うかも含めてね。金融番号、つまり金融所得課税一体化の話と引っかけて出てきた話ではありません。総理の発想はですよ。だから、どこまでそれの実態面に密着したところで議論するかは別として、ただ議論はしてくれということでした。

記者

もう一つの揮発油税の一般財源化、道路特定財源をどうするかという話ですが、これは環境税とリンクした話なんでしょうか。それとも……。

石会長

リンクした話です。環境税はどうかという、僕の話でそっちの話に行ったからリンクしているんですよ。一般財源化は、税調でも数年来、ずっと前から言っていますので、我々としては道路特会の一般財源化は前から言っていますから、その方向での議論というのは、私は違和感はありません。

記者

そうすると、道路特定財源の見直しの話は、会長がおっしゃった環境税を年明けから議論する中で、当然エネルギー諸税等の見直し、関係整理ということもありますので、議論をしていくという理解でよろしいですか。

石会長

いいと思います。タブーなく、いろいろな形の選択肢を探っていく中で、当然、今の問題は避けて通れないでしょうからね。

記者

定率減税の見直しとか、国の財政が非常に危機的な状況にあるとか、5年前に比べれば景気の状況は格段によくなっているとか、そういう個々に見た場合は理由が明確でわかると思うんですけれども、それ以外にいろいろな保険料の負担がこれから増えるとかということもあるし、所得税もこれからまだまだ見直しがあるし、その辺の国民の不安に対しては、これからどれぐらい増えるのかという全体像みたいなものが見えにくい部分があると思うんですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。

石会長

示しにくいですね、非常に。やっというかな、財制審が消費税の税率でやったり、あるいは歳出カットでやると一般歳出をさらに切らないといけないという数字が出てきましたよね。あれはほんの一端ですよね。そういうんじゃなくて、今おっしゃったような意味で、今後どのぐらい増えていくかということ、保険料も含めて、青写真を描くことは恐らく必要でしょう。ただ、それはあくまで国民が受益の方でどのレベルまで、例えば年金・介護・医療等々でどのぐらいのレベルまで政府に期待するかにもよってくるわけですよね。マクロ的な指標で言うなら、一番いいのはやっぱり国民負担率でしょう。国民負担率50%、これも潜在的に国民負担率だと思いますけれども、あの中には財政再建の努力をどこまで入れ込むかですけれども、仮に完全に財政赤字を消して、ネットで社会保障と税だけ、例えば35.5%ぐらいが50%ぐらいになるとすると、15~16%上がるんですよね。これは非常に大きな数字ですから、逆に言えば、過去に余りにもその辺の配慮がなくて、減税、減税を積み重ねてきたし、社会保障の給付の方も過大にどんどんやってきたというところが出てきているので、1回数字をばっと出してみると、その大きさに多分たじろがざるを得ないんでしょうけれども、そこで再度国民負担ベースで一体どこまで持っていくかというふうな議論をしないといけませんね。つまり、国民負担50%の中身の中で、どのぐらい財政赤字を消すかという議論もあります。それから、税と保険料でどれだけやるかということもあります。それはどこかでやらなきゃいけないし、我々としても他の機関と力を合わせて、できればその辺の青写真もつくっていきたいと思いますが、かなり精度の高い議論をしないといけないでしょうね。恐らく内閣府もその辺の議論をこれから始めるし、厚労省も始めるだろうし、これはほかの機関でやったらいいと思います。

記者

最初に答申についての説明をいただいた中で、年金・医療・介護全体を見直していく中で、可処分所得が落ち込むということに対するショックは一時的なもので、全体像が見えれば不安がなくなるだろうとおっしゃったんですが、今のお話だと、今後どんどん増えていくということを見せていくと……。

石会長

どんどん見せておいて、結局、年金とか医療とか介護の制度をしっかり国として責任を持つという形の受けとめ方をしてもらわないと、一方的に負担だけやったんじゃたまらないよね、こっちはね。北欧がなぜあれだけの高負担に耐えているかというのは、反対給付がしっかりしているからですよ。つまり、25%の付加価値税を払って、所得税の半分ぐらい税で持っていかれて、国民負担率70数%でしょう。あれで国民が耐えているのは、やっぱり年金・介護、少子化の手当云々でちゃんとした、目に見えるメニューで返ってくるからですよ。それが日本人の場合には、比較的そこら辺が不透明ですよね。だから、これから負担を上げざるを得ないというときには、その見返りとして何が来るかというのをちゃんと提示しておかないと、我々としても、何かまた払った分だけ飲み食いに使われているとかそうなったら困るので、いろいろな意味で無駄遣いされても。それが今後、この税負担を引き上げていく決め手だと思います、僕は。そういう意味で、長期的にしっかりした青写真をつくって、国民に訴えて考えてもらうという作業をすれば、ごく短期的な意味からとりあえず減税しろ、公共事業を増やせという形で景気の刺激を図ってきたやり方と別な手法ですけれども、これを非ケインズ的手法と言っていますけれども、長期的に行動的にじっくり考えるという方に軸足が移ったんじゃないですかね。したがって、今、景気も小泉さん流に言えば、構造改革をやっていて、何もしないで景気が浮上してきたと。その絡みで言えば、今言った負担もちゃんと国民に訴えて、長期的に見て不安感を取り除くという方向も一つの方法だと思っていますけれどもね。ただ、それを長期的に見るか、短期的に見るかで大分話が違ってくるから、不安の程度はどっちが大きいかですよね。どっちですかね。短期的に税負担増というのは、懐にもろに響くから嫌という人もいるでしょう。ただ、政府がちゃんとこれから本格的に財政を建て直して、年金制度なり医療制度をやってくれということの安心感で見れば、それほどマイナス効果は出ないだろうという判断を私どもはしています。

記者

全体として財政のところにかなり軸足を移して、負担増……。

石会長

財政健全化の方ね。

記者

はい、それはあるとして、その上で、定率減税はいろいろ理由があって、この18年度が出ていますけれども、この順番という理由は、例えば中高所得者のところを戻す、それでその後、消費税があり、また相続税のところも課税ベースの拡大とかそういう話があると。順番として、どうする方がいいのかという議論というのは、逆に言うと、この答申の中でよくわからない部分でもあるんですが、その辺はどういう……。

石会長

そこは明確に書き込んだつもりですけれども、つまり18年度までに税源移譲しなきゃいけないと言っているわけですよ、三位一体で。税源移譲というのは、抜本的な税制改革ですから、税制改正ですから、それをやるためには、定率減税みたいにアドホックで、二次的に入れて、税の構造上、やや異質なものを含んだままで抜本的構造改革はできないんですよ。そういう意味で、所得税を抜本的に構造改革しようというなら、ああいう巨額な塊を税額控除の形で放り込んでおくというのはよくない、税の仕組みの上で。毎年3兆何ぼという巨額な税収減になってもう5年間やっていますから、16~17兆円の減税を繰り返していて、それは余りにも税収の中での歪みになっていると見ています、負担感から等々いいまして。そういう意味で、受けている人から見れば、あれを取られてしまうのは、はたと気がつくと大増税であるということになりますよ。それは。それはしようがないんだな。そういう歪みを直してから所得税の本格的な税源移譲なり、改革なりが行われていきます。順番はそれが一番先です。それからあと順番としては、消費税があるんでしょう。税源移譲、財源移譲という形で。その絡みで、できたら資産課税みたいな議論もした方がいいと思います。ただ、何度も言うように、やっぱり景気の問題というのは、多分背後にちらつくんでしょう、毎回。だから、どの程度の規模で、どのぐらいの早さでやるかというのは、幾ら国民に安心を与えると言いつつ、やっぱり直近の、短期的な面での配慮も欠かせないと思いますから、現に税調では従来どおりの財政出動的な発想をお持ちの方もいて、今、景気がよくないと言って、主張されて、やるなという方もいらっしゃいますので、それはこれからの議論だと思っていますが、我々としては企画・立案、シナリオを書くというのが我々の主たる任務でありますから、とりあえずしかとした方向性と具体性を持った案を示して、実施の段階ではいろいろほかの分野の経済政策と合わせてすればいいんだと思っています。

記者

法人事業税の分割基準の見直しについて、少しコメント欲しいんですけれども。

石会長

数行書いてございますが、恐らく税源移譲というのは、実際に行われたときに、仮に所得税でやったときに、極めて大きな額が大都会、東京都あたりに行くのは目に見えていますよね。したがって、今ある法人事業税の分割基準を変えることによって、その大都会に集まる分を地方に均てんするという作業が多分できるはずでありますから、そこで法人事業税というのが浮上してきたということであります。話はそういうことです。三位一体とか何か引っかけないで書いてありますから、分かりにくいと思いますが、心はそういう税源移譲と引っかけて議論が成り立つと、こう考えています。

記者

その件で、東京都知事はけしからんという話で……。

石会長

けしからんと言うでしょうな、あの人は。怒りますよ、それは。

記者

それについては、コメントはないですか。

石会長

それは当然、今度の税源移譲の最大の問題は、個々の自治体ごとのばらつきで、またいろいろ戦争が起こるんじゃないかと思っていますけれども、ただ、三位一体で税源移譲というのは、それは当然含めた話でしょう、極端な場合はしようがないけれども。前と後で全く100%動きがなかったら、余り意味ないよね。そこは、私など個人的に割り切っていますが。

(以上)