総会(第21回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成16年11月18日(木)17:14~17:30
〇石会長
今、総会終わりまして、答申素案というものを検討してまいりました。これは2度ほど起草会合でやりましてまとめたものを、文章化したものをそこで議論しておったわけであります。残念ながらお見せするわけにはいきませんが、事実上、何か外に漏れているようなこともあるから、それはそれで注意を喚起しておきました、情報の管理に当たって。
そこで、どういう論議があったというと、今日は非常に、ある項目については激論が交わされたということもあります。後から申し上げますが、今回、答申でやりたいことは、これから数年間税制改革というのが行われる。それを視野に入れて平成17年度の税制改正の指針を出すということでありますから、今後の税制改正上の大きな問題の種をまいたという意識を持っています。つまり、これをやらなきゃいけないという形で、基本的な方向を我々として指し示したという形です。具体的に、時期とか、あるいは税率とか、数字は入り込んでおりませんが、各主要な項目について、今後日本の税制は何をしなければいけないかということについては、具体的な指針を書き込んだつもりであります。
そこで、一つ大きな目標、やはり財政健全化なり、財政破綻というのが当然心配されている中で、税負担というものを軸にして議論しなきゃいけないと。これに対してとなると、歳出面だけでもいいじゃないかという議論もございましたし、あるいは歳出削減なり行革なり、もっとしっかりやってという議論もございましたので、文章上はその辺のことを書き込みますが、ただ、税の負担を抜きにした議論はできないだろうというところで、ほぼ基本的合意があります。これもまだもう1ラウンド議論もございますから、最終的に反対の方々の議論はよく聞いてというふうに考えております。
それから、基本的なフレーム、特に所得税に関してでありますが、ご存じのように18年までに三位一体で税源移譲するという大きなフレームが外からボーンと来たわけです。したがって、17年、18年を視野に入れて税源移譲をやった中で、これは抜本的な所得税、法人税の改革になりますから、その前に定率減税の仕組みを廃止しておかなきゃいけないという基本的スタンスでありますから、18年には基本的にこの定率減税をやめると。しかし、18年度改正だけでは一挙にできないから、17年からやりましょうという基本的スタンスで、三位一体と定率減税の仕組みの見直しが一つセットになった、そういう書き方になったという点が一つ大きな問題ではないかと思います。
個人所得課税、消費税、資産税等々、各項目について書き込んだことにつきまして読み上げて、いろいろ議論がございました。特に議論になったのは二、三あるんですが、やはり三位一体の書き方で、これは税源移譲の中身の議論というよりは、そもそも三位一体の解釈で、例えば地方交付税を見直さなきゃいけないというときに、どういう視点でやるか、財源調整機能はもうなくてもいいじゃないかという議論もあるし、これこそ必要だという議論もあるし、メンバーの方を見ていただきますと地方の自治体の代表の方もいらっしゃいましたし、いろいろありまして、書き方としてどういう整理をしていくかという議論であろうかと思っています。
それ以外の所得税改革につきましては、ほぼ合意は得られたと思っていますが、三位一体のところの書き方、特に地方交付税改革のところの記述の仕方あたりでは、かなりいろいろやりとりがあったということであります。
もう1点、環境税につきましては、この間集中審議したとおりのようなことが書き込んでありましたが、ここもまた賛成、反対、激突しているところであります。今日は起草会合で実際に起草した委員の方がかなり学校の授業等々でご欠席の方もあって、総会との間の基本的なやりとりにおいて、今日決めるわけにはいかんだろうと考えました。明日起草会合を開き、水曜日に総会を開くという形になっておりますから、もう1回起草会合で、特にこの環境税のあたりの議論を整理しつつ、どういう格好でやるかという形にしたいと思います。つまり、何が問題になったかというと、時期的な問題でありまして、ロシアが批准し、京都議定書が発効するということは皆さん理解していただいているわけですが、3月に地球温暖化対策推進大綱かな、それがある種の、例の6%プラス7.6%かな、13.何%かのCO2の排出の削減のプランを政府として出すだろうと。それを受けてからやるべきであるという議論と、いや、それとは直接関係なくても、できるだけ速やかに議論をした方がいいんじゃないかという議論と、幾つかその辺の・・・。議論していけば、おのずから集約はできると思いますが、その辺の議論の進め方として意見が分かれたということであります。環境税そのものの議論というよりは、環境税導入の是非を議論するという形で今議論がまとまっていますので、それはそれで税調としてしかと受けとめた議論をしなければいけないかなと、このように考えております。
その他、消費税について、あえて何が議論になったかということですが、消費税は、我々としては極力単一税率を保つということとインボイスを入れるということと、それから将来、税率アップのときには福祉等々への説明を準備すると。それも基本的でありますが、消費税につきましても、やはり引上げ自体について国民的合意を得る中でどういう格好でやっていくか、つまりこれから消費税を中心にして議論を進めることについては、まだ早いのではないかという議論がないわけではなかったんですが、そこは少数意見だろうと思います。消費税、個人所得課税の本来の機能というのは税源調達機能であり、再分配効果ですが、それを軸にして進めるということで、消費税の話は一応整理がついたように考えております。
その他、資産課税、法人課税、特段問題なく、大体資産課税については課税ベースを広げていくということ、それから法人税については、これは中心的に例の租税条約の改定もございましたし、設備投資・研究開発減税もやってきましたし、そこそこやっておりますので、それについて新たに書き込むことは、今回、特にありません。
酒税についても、種類の簡素化を図って、そしてその間の税負担格差をなくすという、そういう視点で、トータルで酒税制全体について見直しをしたいという議論でこれから進めていくということについては、おおむね合意ができたと思っております。
したがって、今日、起草会合がつくりました答申素案について、詰めたいろいろな議論をしましたけれども、もう1回起草会合でやって総会でやれば、恐らくまとまるであろうと、このように考えています。
例年のとおり、本文に必ずしも盛り込まれていない論点につきましては、答申に盛り込まれていない主な意見という形で集約して、一応議論の中身をわかるように、外からわかるような形で公表したいと、このように考えています。
以上です。
〇記者
まず個人所得課税のところですが、三位一体をめぐる表現で激論があったと。もう少し具体的に・・・。
〇石会長
ご存じのように、三位一体改革というのは国庫負担金の改革と地方交付税の改革と合わせて税源移譲ですね。そこで、改革という文字よりは削減という言葉を使った方がいいんじゃないかという意見がありました。地方交付税を改革するときに何の視点でやるかというときに、財源保障機能を縮減する、あるいは廃止するという、言うなれば過度に財源保障しているから地方財政が放漫になって、言うなればモラルハザードが起こっているという考えの方と、それから地方自治体の方がそこに何人かいらっしゃるわけですから。そういうことではないと。税源移譲も完全に地方に来なければ、財源保障もしてもらわなければいけないという視点から、その辺の実態面のニュアンスで、それを落とすか落とさないかという議論ですよ。だから、地方交付税の改革の視点を明示するか、それとも漠として地方交付税の改革という格好で十分じゃないかというところのせめぎ合いで、これはこれからまた議論します。
〇記者
詰めるようであれなんですけれども、財源保障機能の縮小、廃止が・・・。
〇石会長
縮減、縮小。廃止までは書き過ぎだろうから、縮小という2文字のところをめぐってどうかという議論ですね。
〇記者
今日時点では、そこを残すか残さないか、結論が出なかったということですか。
〇石会長
はい。原案は残っているんですよ。それに対して、いろいろ注文がついたので、それはもう1回起草会合で、明日やりますから、そこで議論をまとめていきたいと思います。起草会合として、また従来どおりやるのか、受け入れて修文するか。ほかにもいっぱい修文の箇所がありますから、それはほとんどまとめられると思っています。
〇記者
地方交付税の財源保障機能以外では、ほぼ、所得税関係では合意が得られたということですか。
〇石会長
はい、得られたと思います。
〇記者
定率減税については、最終的にどのような。
〇石会長
定率減税につきましては、平成18年度には、さっき言ったように三位一体との関係がありますから、全廃する、やめるべきであると。ただし、平成18年度税制改正で一挙にやるわけにいきませんから、17年度合わせて段階的にやるということですね。段階的の意味がまあまあ、当然のこと半分ずつやる理解の人が多かったということでしょうね。
〇記者
三位一体の税源移譲の関係なんですけれども、この前、事務局から整理があったときに、いわゆるブラケットで5~10、13%という話です。5~10%については低所得者に対して一定の軽減策が必要だと。その13から10%に落とす場合に、所得税では税率構造とか控除とかについて・・・。
〇石会長
37%を3%上げて40%にするということはあり得るでしょうね。つまり、国税の方では所得税は最高税率を引き上げるという、そのバランスはとると。全体として10、20、30、40、50として、どうしても住民税のところの負担の解消があったら、例外的に5%を置くかというふうな、最低税率は10%だけれども、暫定的、例外的に5%を置くかというふうな書き方というのが今のところの常識的な判断じゃないかと思いますけれどもね。
〇記者
そういった考え方は、答申には入れられるんでしょうか。
〇石会長
読めばわかるんじゃない。
〇記者
数字は明示されないんですか。
〇石会長
数字は明示しません。フラット化という言葉をはっきり使いたいと思います。フラット化と言ったら皆さん十分でしょう。今さら、5%にフラット化とか、13%にフラット化ということは多分ないだろうから、それははっきりしているつもりです。
〇記者
環境税についてなんですけれども、会長、導入の是非自体を議論するとおっしゃっているんですけれども、環境税とは何かということについては、皆様でどういう認識に・・・。
〇石会長
環境税の本来の機能は、価格インセンティブ効果ですよね。つまり化石性燃料の消費抑制のために、化石性燃料の価格を上げるために環境税を入れるわけだから、問題は価格弾力性が短期的、長期的にどうなのかという議論はあるんですけれども、環境税の本来の役割は、税負担のところでCO2の排出を阻止するということである。どんな形であれ、集めたもので環境対策の歳出面でやるというのは、本来の環境税の役割じゃないんですよね、環境税だけ機能を全うさせようとすれば。そういう意味で、いろいろな選択肢が出てくると思うけれども、環境省案も一つの案かもしれないけれども、価格インセンティブ効果を高めるような方策として税率を設定することもあるかもしれないし、これからの議論です。
それから、そもそもそんな環境税は要らないよと。なくたってできるよという話ね。そうなると、民生、運輸、あれを一体、規制でやるのかねという議論が出てくるから、その辺のあたりを統括的に議論しなきゃいかんだろうと。いずれにしても、議論はしなきゃいかんということには皆さん合意に達しているんだよ。ただ、いつの時点で、どのぐらいの早さでやるかあたりで、言葉としてどうするかという議論は残っています。
〇記者
環境省案だと、かなり税を軽減する分野というのがあったと思うんですけれども・・・。
〇石会長
ああいうことも含めてね。つまり、環境税には賛成だけれども、環境省案じゃ不十分じゃないのというのが大体、トータルな意味での税調の集約だと思いますけれどもね。もちろん環境税そのものが必要ないという人もいますよ、それは。だから今日、あえて強引にまとめることはしなくて、もう1回わいわいと議論してみようと、こう思っています。
〇記者
酒税についてなんですけれども、例の第3のビールと言われているところについての増税の議論については。
〇石会長
ビールの「ビ」の字も出ていません。
〇記者
いろいろ、エンドウマメで……。
〇石会長
何か風評さくさくという感じですけれど、我々としては、あくまでトータルパッケージで、税の種類をまず簡素化して、その差をなくせというのは正攻法だと思っていますから、それでやりたいと思いますし、できたら年明けから早々にでも議論を始めたいと思っています。
〇記者
では、狙い撃ちするということはないんですか。
〇石会長
「ない」という考え方になっていますから、それでやるのが筋じゃないかと思いますけれどもね。そういうような記事もあったけれども、狙い撃ちはしません。
(以上)