総会(第18回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成16年10月26日(火)16:11~16:28
〇石会長
総会終わりまして、皆さんご出席のことと思いますので、詳細は触れませんが、今日でほぼ主要な論点を整理いたしました。総会で皆さんからのご意見を聞いたという形で、ある程度個別の、税の中で何が問題かというのは浮かび上がってきたと思います。それで、今日の議論を踏まえまして、今後特に気をつけなきゃいけないというか、あるいは論議を整理しなきゃいけない点、3つあったと思います。
1つは、NPO法人の寄附税制、それからNPO法人をどう育てるかという視点で、ある方向では育成しようという姿勢が足りないとか、あるいは1万8千もあるNPO法人の中で25しか認定されていなくて…これはまあ、寄附金等々で優遇されるということでしょうけど、制度が浅いということで説明は大分つくと思います。今後、このNPO法人の活動をどういうふうに税制面から支援していくかというのは、寄附金税制と絡めて大きな問題になると思いますので、これは来年度税制改正ですぐというわけではないとは思いますけれども、われわれの問題意識としては、これを生かす方向で議論していかなければいけないと、このように考えています。
それから第2点はですね、今日意見が2つ極端な形で出ましたけど、相続税の再分配効果のところですね。税調では、私もここで何回か申し上げましたが、フローの段階での再分配機能が衰えているから、ストックの段階でそれを補うような形の方策が必要だということを繰り返して申しました。そういう意味では課税ベースを広げるというご議論があったんですが、中小企業等々、実際にご苦労されている経営者の方からいうと、富の再分配なんてとんでもないと。おれたちが自力で積み上げてきたものをなぜそういう形で還元せにゃいけないかという発想もおありと思います。これももう少し中身に沿った議論をする。あるいは、今回の、例の相続時精算課税制度の税制にどういう意味を持っているか、今日のところは議論できませんでした。いずれにいたしましても、相続税というのを今後どう税制改革の中で位置付けるかというのが2番目の大きな論点だったと思います。
3番目は、最後の段階でにわかに議論が激しくなりましたが、納番ですね。金融所得課税の中で独特の「金融番号」という形で整理するのか、あるいは既にある住基番号。それから今日は年金番号のことを言う方はいらっしゃいませんでしたが、それは厚労省のOBの方がいなかったということですから、いらしたら必ず言ったと思いますね。そういう意味で、既存の番号、それと新たに、まあ言うなればソフトランディングさせるような意味での金融番号、この辺の議論というのは少し本格的に集中審議をしなきゃいけないかという感じはいたしております。住基番号は確かに導入の価値はあると思うが、その一方で、まさに全国一律にすべての人をとらえる番号制の意味、総背番号のイメージを与えるかもしれないし、ただ、もう一つ番号制度を入れるコストを考えるとどうかと。それから、年金番号のほうもあるでしょうから、その辺は、幸か不幸か金融所得の課税の一体化が少し先に延びると思いますので、それとの兼ね合いで少し議論しなければいけない。今日のところは、原案として提案した、つまり基礎問題小委員会で原案として提案した「金融番号」の代替というか、選択肢としてこれがあるんじゃないかという議論が出たということで受け止めておきたいと、こう思っております。これが3つ、感想でございます。
あとは、基礎小を2日、9日と二度やってですね、そこで来年度税制改正に関する骨格を固めていきたいと考えております。当然のこと、これまでの議論を事務当局に整理してもらっていますから、メジャーポイントですね、これについては各税項目、あるいは税体系の中で幾つか出てきておりますので、例年のとおりそれを中心に意見を交わしていて、言うなれば骨太のある線が出てくる。これに賛成、反対、いろんな議論が出てくるとは思いますが、やっているうちにおのずから多数派というか、マジョリティの意見に集約されていくとは思っていますので、それを9日の総会の日に出してということを考えております。いずれにいたしましても、12日頃に、そろそろ出てくると思いますが、環境税の議論も一回集中審議したいと思っていますから、それを踏まえた後で起草会合に移るというようなストーリーで、できれば11月末、24~25日頃には最後の整理をして、答申にしたいと、このように考えています。以上です。
〇記者
総会の中であった議論で、会長のほうから若干コメントがあったその番号の、通算できる金額についてなんですけど、アメリカを参考に30万円と…。
〇石会長
ええ、30数万円が一つの発射台か、あるいは目標か分かりませんが、一つの参考にはなりますね。それで質問は、そうですかという確認ですか。
〇記者
議論を踏まえてというふうに、この前おっしゃっていたんですが、参考にということをはっきりおっしゃっていたので、そこの辺が参考にされると考えてらっしゃる理由というのは…。
〇石会長
何もないんですよ、参考にするのが、ほかに。あれ以外に。大体参考にするものがなくて、白紙で書くというのは非常に難しいですよ。だから、そういう意味では、損益通算についても先輩格ですよね、アメリカというのは。総合課税をやっていまして。そこで現にやっていること、これについてはある意味で敬意を払っても悪くないんじゃないかと思いますけどね。そういう意味で参考にしたいと。だから、あそこが大体アバウトの数字と見るか、まあ、最低あそこぐらいだと考えるか、これから議論します。
〇記者
今日の議論とは直接は関係ないんですが、先週の金曜日の諮問会議で、総理のほうが三位一体に絡んで、地方の、税調でもいつも指摘している課税自主権の強化という問題をご指摘されていたんですけれども、「それは非常に大事なのでしっかり検討しろ」って、まあいつものようなフレーズなんですが、これについて会長として、改めて来年度改正とか、そういったものに何かお考えはないでしょうか。
〇石会長
小泉さんがしっかり検討しろというのは、どっちのことを検討するのかな。何か変なものが出てくるのは困るという意味で検討するのか、それをもっと自主性を生かして、どんどん拡大しろというのかね、どっちですか。
〇記者
後者のほうですね。
〇石会長
そうすると、この間の例の放置自転車税等々も、もっと自由にやらせたらいいじゃないかというふうにいくのかもしれないしね、それは分かりません。分かりませんけど、本来、われわれ税調としては何度も課税自主権と言っているのは、そう言っちゃ悪いけど、珍奇な税を作るというのではなくて、本来、地域住民が自分の担税力において負担して、公共サービスの受益を得るというのが本来の課税自主権の意味です。よそ者、外から来る人にのみ税負担するとか、企業だけ狙い撃ちするとかというのはけしからんと言っているわけですよ。そういう意味で課税自主権をもっと検討というのは、大賛成ですね、そういう意味なら。そういう意味の方向での議論が、多分われわれとしてはまとまると思います。
〇記者
これも先週、ここの場で会長に質問が出た話なんですが、特別法人税について、今日も経団連と自民党が会合をやって、特別法人税を撤廃してほしいだとか、ちょうど会見当日にも経済団体で撤廃を求める決議をしたりしていたんですが、それ以降、会長として何かお考えがありますか。
〇石会長
実は今日ね、経済界の代表の方から法人税の時に出るかと思ったんですが、ただ、あれはどっちかというと、年金課税のほうの話であって、ちょっと性格が違うんだよね。いずれにしても、来年の3月に今凍結しているやつが解除になると復活しますからね。そういう意味で何か議論しなきゃいけないということだと思います。ただ、これはやっぱり年金課税全体の中で議論すべき話で、単発でね、それだけ取り上げていいとか悪いとか、凍結だとか解除だとか廃止だとかいう話ではないと思います。つまり、これ3階建ての企業年金の話で、入り口と出口とその真ん中という形の議論ですよね。今、たまたま運用利回り等々低いから、あれは要するに、課税の遅延ですよね。利払いに当たるところという話なんでしょうけど、これはやっぱり年金課税全体として議論したいと思っています。そういう意味で、来年3月に氷が融けて、すぐさま復活するかどうかね、これについてはそれぐらいの議論をしておかないといけないと思っていますので、フリーディスカッションのところで少し議論になってくるかもしれません。まあ常識的には、融けちゃって、またすぐ復活するというのがあるのかどうか。幸いに今、利子収入がそんなに出ていない話なんだけど、しかし、整合的に議論するなら、やっぱり年金課税の出口、真ん中、入り口の議論の中で位置づけないとだめだよね。そういう真っ当な議論をしたいと思っています。
〇記者
今の特別法人税の絡みなんですが、年金課税全体の出口論、入り口論の中で議論するということは、今年の特別なテーマに挙がっていませんので、抜本的な見直しは来年度以降の議論という理解でいいんでしょうか。
〇石会長
僕は、1階建て、2階建て、3階建ての年金改革という中で、3階建て部分というのはこれから税絡みで非常に重要になってくると思っているんですよ。そういう意味でこの特別法人税の問題というのも関連してきますよね。そういう意味で、税でもってどれだけ私的年金を支援しようかなんていう議論の時には必ず出てくる話ですから、その中でやるべきだと思っています。
〇記者
金融番号についてなんですが、今日いろいろ議論は出ましたが、既存の番号を使う際の問題点について会長はどうお考えになっているんでしょうか。
〇石会長
まず、日本は2つ異なる番号を持っておりまして、そのどっちを使うかなんていうことから、そもそも中央省庁の争いになる可能性が十分あり得ますよね。いずれにいたしましてもカバレッジがね、全国民を相手にしているわけですから、既存の番号を入れた時には総背番号のイメージを何となく与えがちになる。番号にきわめてアレルギーのある人から見ると、この金融所得課税の一体化自体が吹っ飛んじゃう可能性も、心配なくはないということですね。ただ、逆に言って、番号制によっていろんな意味での課税の精度を上げようという議論というのは残っているんだよね。だから、その辺の大きなビジョンと、今すぐさまやらなきゃいけない、今の金融番号的な、特別な扱いの番号との調和ね、これは考えなきゃいけないと思いますね。要するに、今日、井戸さんのほうから住基番号というお話が出たけど、それは兵庫県はうまくいっているのかもしれないけど、あれを全国津々浦々、ああいう形ですぐ使っていいよ、法律変えていいよというふうになるかどうか、もうちょっと今度は、井戸さんのほうの話もお聞きしてですね、番号制の適用のフィージビリティというかな、可能性というかな、これちょっと検討しないと、やにわに、すぐさま使っていいよというふうになるかどうか。それから、やっぱり年金番号の話も聞かないとまずいと思っているんですよ。普通は、アメリカ、カナダで年金番号、ソーシャル・セキュリティナンバーをタックスペイヤーナンバーにしているわけですからね。そういう意味で言えば、それなりのルートも一つ残っていると思いますから、番号制の導入については、第3の番号が出ましたけど、第1と第2番があるわけですから、それぞれをちょっと調整なり、可能性を探ってみたいと思っています。まあ、いずれにしても難しい問題ですね。
〇記者
一つ、環境税。12日にやるということですか。
〇石会長
大体、その辺ぐらいに間に合うんじゃないかと。
〇記者
1回でということですか。
〇石会長
時間取るよ。だって、1回以上取る時間ないですよ。1回でも大体分かるじゃない、言わんとすることは。12日、金曜日のようです。
(以上)