第18回総会 議事録

平成16年10月26日開催

石会長

今日は、場所が変わりましたから、勝手が少し変わったかと思います。

それでは、事務局の方、全部はおそろいでございませんが、説明をしていただく課長の方々は全部おそろいでありますし、今日はいっぱいテーマがありますから、始めましょう。

前2回にわたって基礎問題小委員会は、法人課税、国際課税、資産課税、金融所得課税と4つ主要なテーマを議論してきましたので、今日は、それを順次こなしていきたいと思います。したがって、4つセクションがあるというふうにお考えください。

では最初に、法人課税につきまして、佐藤税制第二課長と、自治税務局株丹都道府県税課長から、おのおのご説明いただいて、その後、討論することにしましょう。

佐藤さん、どうぞ。

佐藤税制第二課長

それでは、私から、「法人税関係」という資料に沿いまして、ご説明をいたします。

まず、1ページ目をご覧いただきたいと思います。ここのセクションでは、法人税の現状ということで、税収を中心に見ていただきたいと思います。法人税収、右側の棒グラフでございますが、15年度の決算ベースで10兆1,000億円、16年度では、予算ベースでございますが、9兆4,000億円ということで、10兆円前後の規模でございます。上の折れ線グラフ、23.4%、22.5%と書いてございますが、これは、一般会計税収に対する法人税収の割合でございますので、23%くらいということになります。一般会計80兆円の予算の中で40兆円が税収でございますので、40兆円のうちの10兆円でございまして、税収という意味におきましては、重要な柱の一つかなと思われます。

この推移でございますけれども、目を左のほうにやっていただきますと、平成元年、2年のあたりがピークでございまして、19兆円前後の数字になってございます。それと比べまして、約9兆円ばかり税収が落ちる、半分になっているというのが達観した感じでございます。その原因でございますけれども、2つほど挙げられると思います。

一つは、90年代からのバブルの崩壊とか、経済の低迷による影響でございまして、このグラフでいきますと、平成2年の18兆4,000億円から平成9年の13兆5,000億円、引き算いたしますと、4兆9,000億円ほど△が立ちますけれども、これに当たる部分かなと思われます。

もう一つ、減収要因といたしまして、法人税の減税が行われたということでございます。上の3つの吹き出しに書いてございますけれども、合わせて約3兆4,000億円~5,000億円という減税が行われております。これは平成10年以降3回にわたって行われていて、平成9年度の13兆9,000億円、平成16年度の9兆4,000億円、これを引き算しますと4兆1,000億円になりますが、そのうちの3兆4,000億円が減税によるもの、こういう姿かなと思います。

なお、足元の数字で、14年度と15年度、9兆5,000億円から10兆1,000億円ということで、6,000億円ほど増えております。これは、企業収益の改善の影響によるものではございますけれども、10兆円台を回復したというレベルの話であります。

お時間の関係で少し飛ばしまして、4ページをあけていただきたいと思います。「所得金額と繰越欠損金額の推移」と書いたもので、先ほどの法人税収の裏にある実態でございます。この上側、黒いバーで書いたものが所得金額でございまして、一番右側の棒グラフ、平成14年分で見ますと、32兆8,000億円でございまして、これが法人税収のベースになっている所得金額で、平成2年の50兆4,000億円と比べましても、3割から4割落ちているということでございます。

それと軌を一にしまして、下側に出ている棒グラフが繰越欠損金額の推移でございます。14年度分で見ていただきますと、70兆4,000億円という繰越欠損金がございます。この推移も平成12年あたりがボトムになりまして、現在、少し回復基調にあるという流れではございますけれども、70兆4,000億円という大きな欠損金が繰り越されておりますので、景気の回復がございましても、この分がいわば引き算になるということで、税収に必ずしも直ちにははね返らないという状況が見通せるのかなということでございます。

続きまして、6ページをあけていただきたいと思います。6ページ以降は、最近の法人税にかかる改正の動向をトレースしてみたいということでございます。

この表は、上の段が、法人税改正の主なポイントを時系列で入れてございます。下の段が、それを取り巻くいろいろな状況、次の7ページは、「実像」把握を6月にしていただいたときに出された資料の一部でございますが、グローバル化が進んできたと。この辺を合わせて見ていただくと、ご案内のとおり、80年代と90年代、企業を取り巻く環境が大きく変わっておりまして、冷戦終結以降、グローバル化、IT化、世界の市場化が進んで環境が激変した。バブル崩壊後の経済低迷で、企業自体あるいは社会全体の構造改革が求められる、そういう文脈があったということでございます。その中で、一番下の欄でございますが、商法、企業会計などの見直しもさまざまな形で行われて、時代に対して対応していく流れができ上がってきたということでございます。

上の段でございますが、税におきましてもさまざまな取組みが行われてきております。98年以降のアングルでは、企業の国際競争力の強化、産業の構造改革の促進、このあたりを念頭に置きまして、かなり総合的な改革になってきたのではないかという気がいたします。ちなみに法人税率でございますが、平成10年に37.5%の基本税率を34.5%に下げ、続きまして、翌年それを30%まで下げておりまして、先進国並みの水準にしたわけでございますが、2年間で都合2割カットという流れでございます。

それから、法人税率の引下げとあわせて、中立性という観点から、課税ベースの適正化を累次進めるという流れもございます。

それから、企業組織関連という3つ目のボックスは、商法の改正など、いろいろな形でインフラ整備が行われていく、その税制版という形で対応した部分でございまして、企業の組織再編にかかる税制の創設、連結納税制度にかかる創設、こういう形のものが行われるということでございます。このあたりは税率そのものではございませんけれども、国際競争力に資していく、いわば質的な対応をしていっているという評価ができるのではないかと思われます。

それから、真ん中の課税ベースの欄の平成15年あたり、研究開発・設備投資減税の集中・重点化等書いてございますが、この段階では、今まで申し上げたものに加えて、競争力あるいは産業構造を促進する、加速するということもありまして、戦略的な分野の成長を支援していこうということで、研究開発減税に集中投下していくことも行いましたので、税率、課税ベース、研究開発減税、企業税制といった、四点セットの形で、90年代後半から大きな法人税改正の流れができ上がって今日に至っているということでございます。

関連の答申等ございますが、これは飛ばしまして、11ページをご覧いただきたいと思います。これは税率でございます。若干の確認ですけれども、平成元年前後、42%ございましたが、それが37.5%に下がりまして、平成10年に34.5%、11年に30%ということで現在に至っているわけでございます。37.5%から34.5%に引き下げましたときには、課税ベースの適正化と同時実施という形になってございますが、34.5%から30%に下げましたときには、引下げを先行する形で、その後、課税ベースを拡大していくという、いわば時差を設けた形での税率の引下げが行われたということがここにはございます。

12ページ、国の法人税率の国際比較でございます。日本の現在の位置を確認していただきたいと思います。右側ですが、30%ということで、先進国並みないしそこそこの水準でございます。このグラフの全体としては右下がり、要するに引下げのトレンドでございますが、特に80年代から90年代半ばにおいては、課税ベースの拡大とセットの形で引下げが行われてきたという流れもわかります。90年代後半はやや落ちついた動きということかと思います。

先ほどのは国の法人税率でございますが、13ページは、国と地方を合わせたものとして、便宜、表示したものでございます。黒い部分が国の分、白い部分が地方の分でございます。日本は合わせて39.54%、横に見ていただきますと、アメリカ、ドイツ並みで、イギリス、フランスは地方税がないということもございまして、ちょっと低めになっております。

特に地方税の扱いについて、課税自主権を背景にさまざまな形の地方税の体系があるだろうということで、国際比較、グローバルな視点からの比較の面におきますと、国の法人税率のレベルを比べるほうが意味があるのではないかというご指摘も、基礎小ではあったことを申し添えておきたいと思います。

14ページ、15ページは、課税ベース関係の適正化の動きでございますが、項目だけ掲げております。個々の説明は省略いたします。

16ページ以降、企業関係租税特別措置に関するデータを入れてございます。企業関係租特につきましては、整理合理化を進めるという流れがもちろんございますが、一方で、真に政策的に必要という場合には重点化する、選択と集中という考え方がございます。

真ん中の整理合理化項目を見ていただきますと、廃止、縮減合理化はそれなりの規模でかなり行われてきているわけでございますけれども、一方、創設という部分もございます。特に最近では、先ほど申し上げました研究開発減税もございまして、ネットで見ますと、右から2つ目のコラムでございますが、少しずつ項目数は減ってきておりますが、減収額そのものは若干減ったり増えたりしながら動いているということで、全体として整理合理化が進みながら、大口といいますか、一つ一つが重点化していっているという流れが読み取れるのかなと思います。

次の17ページは、16年度の1兆7,000億円という減収額の内訳でございます。試験研究税制、IT投資促進税制を合わせますと、1兆2,000億円ほどになりまして、1兆7,000億円の約7割がこういうところに集中投下されている姿が見てとれるかと思います。

研究開発減税等について若干触れたいということで、18ページに移っていただきたいと思います。国際競争力の原点は、知的財産、知財戦略だろうということを頭に置きながら措置された位置づけかと思いますが、従来ございました増加試験研究費制度という、増加分に対しての税額控除をいたします制度と選択適用ということで、根っこから税額控除ができる仕組みを行ったわけでございます。右側のボックスですが、総額の8~10%を税額控除するということです。当初3年間はさらに2%上乗せして、10~12%にするということでございますので、恒久的な部分が根っこにあるということです。税額控除自体を根っこから、しかも恒久部分を大部分含んでいる、そういう措置だったということでございます。

次の19ページを見ていただきますと、その点が明確になります。左側のグラフは、横軸が試験研究費の総額が売上金額に占める割合でございますが、それが大きくなればなるほど税額控除率を大きくするということで、インセンティブ措置の形にしてございます。いずれにしてもシャドーのところが恒久的な部分でございますので、減税効果が継続していきますし、企業サイドから見ますと、中期的な研究開発が非常にプランニングしやすい、キャッシュインを織り込めるという話があるのだろうと思います。

その上に「2%の上乗せ」と書いてございます。18年3月までの3年間の時限措置ということで、経済情勢等々を勘案しての上乗せ措置という形になっております。中小企業につきましては、右側にございますような、根っこが12%でフラット、3%上乗せ、こういう形になっております。

この税額控除につきましては、法人税額の2割を上限とするということで、最大限利用できる企業においては、上に書きましたように、最大6%の税率カットの効果があるという形になっておりまして、実質的には相当効いているという評価を聞いております。

20ページは設備投資税制でございますが、IT投資促進税制ということで、先ほどの研究開発減税と合わせて講じられたものでございます。次の21ページ、22ページあたりには、講じられました措置についての効果が、サンプル調査でございますが、出てきているということが掲げられているわけです。我々もこのフォローアップをしていきたいと思っておりますが、さまざまな声の一つとしてよく聞きますのが、投資効果があるだけではなくて、企業の立地戦略にもいい影響がかなり出ていると。研究開発減税を機にいたしまして、R&Dの部門あるいはそれに関連する工場を国内立地させるシフトが起こってくる。そういう影響も出てきているようでございます。併せまして、もう少しウォッチングしていきたいということでございます。

23ページ、24ページは、研究開発減税を行いましたときの、当調査会でのご議論の抜粋でございます。24ページを見ていただきますと、法人税率を一般的に下げるのがいいのか、研究開発減税のような、いわば重点化的な措置がいいのかというご議論がありましたが、そのときの一つのよりどころとして、グラフをご覧いただきますと、企業部門がいわば金あまり状態にある中で、本当に有効な施策をどう考えたらいいかというご議論がありまして、研究開発減税のほうを選んできた流れがございますので、このあたりの動きがどうなるかということも、今後注目すべき点かなと思うわけでございます。

駆け足で恐縮でございますが、25ページ以降は、企業組織関連のインフラ整備系の税制改正について掲げてございます。25ページは、会社合併・分割等をスムーズに行えるような形の税制改正がなされたということでございます。

27ページは、平成14年度に導入された連結納税制度でございますが、企業グループの一体的経営という流れを背景といたしまして、実質的に一つの法人と見ることができるグループを考えて、それを一つの納税単位とする形に制度をつくり上げたということでございます。

29ページは、今後の課題でございます。90年代後半から、かなりの改革・改正が行われてまいりましたが、法人税におきましては、大から小までさまざまな課題があると思いますけれども、大きなところについて、平成14年の答申、あるいは15年度の「中期答申」の2つで整備されておりますので、大ぶりなところをご確認賜りたいということで見ていただきたいと思います。

29ページの真ん中あたりに税率についての記述がございます。「累次の税率引下げにより、国の法人税率は既に先進国並みの水準となっており、開発途上国の水準を念頭に置いて、これ以上の税率引下げを行うことは適当ではない。今後の法人税率の水準については、わが国の租税負担全体の水準や税体系全体のあり方との関連、更には先進国との税率のバランスを踏まえて検討していくべきである」、このような形で記述されております。

30ページが15年の「中期答申」でございますが、(2)でマルが4つございますが、ここで課題が再整理されてございます。[1]は、税率の関係でございますので省略いたしますが、[2]のところでございます。経済活動のグローバル化、金融自由化等々、いろいろ世の中が変化するということに対応して、アンダーラインでございますが、「多様な形態による事業・投資活動が円滑に行われるよう、適正な課税のあり方を検討していく必要がある」、そういう指摘がなされております。

[3]は、NPO等の民間非営利活動に関連する部分でございますが、アンダーラインのところ、「透明性を確保しつつ民間非営利活動が円滑に行われるよう、寄附金税制も含め適正な課税のあり方を検討していく」。

[4]は、「公益法人に対する課税のあり方については、現在行われている公益法人制度改革の検討を踏まえ」--ここはあとでご説明いたしますが、「適切な情報公開の下、適正な課税を確保する必要がある」ということで、[3]、[4]は公益法人課税絡みの課題という整理でございます。

31、32ページは、6月におまとめいただきました「実像」の関連部分の抜粋でございます。ちょっと目を落としていただきますと、「量的拡大」志向の限界ということで、社会の「活力」をどう維持、確保していくかが重要な課題となる。技術革新による生産性向上、人的資本の質の充実といったことが鍵になるということで、研究開発減税あるいはヒューマンキャピタルというアングルもここで提示されております。

32ページは、先ほどの公益法人の絡みと関連する部分でございます。上の部分で、今までは「公私二元論」が支配的であったけれども、今後は、「政府が担う公共」とは異なる、もう一つの「公共」、すなわち市民活動から企業の社会的責任に至るまでの「民間が担う公共」というべき領域が存在するということで、それの重要性が指摘される。このような指摘もあったところでございます。

33ページから35ページは税率絡みのところでございます。33ページは再掲でございますので飛ばしまして、34ページ、税率を議論いたしますときにしばしばアジア諸国との比較がなされますので、データとして掲げさせていただきました。日本は、現在、国の法人税率は30%でございますが、中国以下アジアの国の税率を見ていただきますと、30%を超えるところ、30%、あるいは30%を割るところ、さまざまあるということでございます。3つ目のコラム、法人所得課税の負担率を見ていただきますと、対GDP比、日本は1.9%という数字でございますが、他のアジア諸国はそれよりも高い水準にあるという見方でございます。一つのご参考ということでございます。

35ページ、立地という形でのご議論もよくございますので、アジアの主要都市における投資関連コストの比較表ということで、税率だけではなくて、賃金とか、さまざまなインフラコストの比較も掲げてございます。ご参考賜ればということでございます。

36ページからは、公益法人制度改革のお話を申し上げたいと思います。公益法人制度の改革といいますのは、平成14年3月に閣議決定がございました。公益法人制度自体がかなり古くなったので、見直してはどうかという話がもともとあったわけでございまして、平成14年11月から翌年にかけまして、行革担当大臣のもとでの専門家の懇談会を置きまして、そこでさまざまなご議論がされたということでございますが、議論が収束しませんで、いわば途中で頓挫した形になったという経緯がございます。

当調査会におきましても、それと並行いたしまして、非営利法人課税ワーキング・グループというのをつくって、税制の検討も並行してやっておったわけですが、母屋といいますか、根っこのところが途中で終わってしまったものですから、現在はそれは様子見の状態でございます。

そこで、平成15年6月に仕切り直しということで、閣議決定が一本なされてございます。それをご覧いただきたいと思います。38ページでございます。「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」ということで、現在のいろいろな作業はこの新たな閣議決定をベースに行われているということでございます。

お時間の関係がございますから、細かいところは省略いたしますが、ここの議論では、民法34条に基づく公益法人を主軸といたしまして、その制度の見直しを行っていくという形になってございます。一番下の「2.新たな非営利法人」の(1)一般的な非営利法人制度の創設、次のページの(2)非営利法人における公益性の判定、どういう判断主体が判定をするのか、その辺をもっと詰めていこうではないかという閣議決定がなされておるわけでございます。

一番下のスケジュールというところが重要でございますが、この作業におけるスケジュールといたしまして、「内閣官房において上記の新たな非営利法人制度の検討を進め、平成16年末までを目途にさらに基本的枠組みを具体化した上で、所管省において税制上の措置に関する専門的検討を進めることとし、平成17年度末までに法制上の措置等を講ずることを目指す」、こういうふうな流れになっております。

まず、内閣官房におきまして非営利法人の制度の枠組みをつくるということで、これにつきましては、有識者会議というものを新たに設置いたしまして、現在、内閣官房のもとでご審議されております。私どもとしては、それを踏まえた上で税制上の問題を検討する、こういうミッションの明確な切り分けが行われた上で、17年度末、すなわち再来年3月末が目指すべきターゲットになっておるわけでございます。

次の40ページは、今申し上げました有識者会議の概要を書いてございます。平成15年11月にスタートいたしまして、既に20数回行われておりますが、全体の取りまとめは、来月中旬を目指してやっているというふうに伺っております。今後はそれをもとに、内閣官房のほうで、新しい法人制度のスキームの骨格を決めていくという流れがあるわけでございます。

税調といたしましては、今見ていただきました閣議決定のスケジュールをベースといたしまして、今後、新しい法人制度に対する課税のあり方を考えていくということだと思います。先ほど読み上げましたいろいろな答申の中にございましたように、課税の適正化、公平化という視点ももとより重要でございますけれども、民間非営利活動の円滑化という観点も大変重要であろうということでございますので、法人の活動実態などを総合的に勘案して、新たに検討を仕切り直していくことが今後求められるのではないかと思います。いずれにいたしましても、これは18年度税制改正のマターということになろうかと思いますので、お含みおきを賜りたいと思います。

以下は資料でございますので飛ばしまして、46ページ、会社法制の現代化という話でございます。先ほどの法人税の改正の経緯をご説明申し上げましたときに、商法の世界でもさまざまな改革がなされたと申し上げましたが、これは、いわばその集大成ということで、今、法制審議会で議論されているものの項目でございます。これはまさに審議中でございますので、必ずしも全体としては定かではございませんけれども、現代化要綱というものが、来月中旬頃にまとめられるということを聞いてございます。それを踏まえまして、新たな会社法というものを法案化するという流れがこれから出てくるかと思います。

当調査会といたしましては、その流れ、あるいはその法案等々を見まして、法人税制へのはね返りという部分があるのかないのか、はね返りがあるとすれば、ある種の見直し、検討が必要となるかのどうかというあたりを、今後、見定めていかなければならないということになろうかと思います。これは、いずれにしましても18年度税制改正マターということで、来年の今頃ご議論を賜っている話かなということでございます。この会社法の施行も目指すは18年4月でございますので、その時点をターゲットとしてのご議論も、場合によっては当調査会でも必要になるのかなというイメージでございます。

以上でございます。

石会長

それでは、株丹さん、お願いします。

株丹都道府県税課長

お手元の「基礎小23-2」、地方税の地方法人課税関係の資料をご覧いただきたいと思います。やや基本的な資料も入っていますが、適宜、ご説明したいと思います。

1ページ、地方法人課税の概要です。法人二税と言う場合もありますが、地方税で法人課税という場合、法人住民税と法人事業税の2種類があります。

2ページに、税の内訳を帯グラフで示したものがございます。一番上の帯が地方税全体です。黒い部分が地方法人課税で18.1%、次が都道府県の税収に占める割合で、直近14年度では30.3%です。かつては、これが40%を超えている状況もありました。都道府県の税収の変動が大きい理由の一つが、この辺にあると言えるかと思います。市町村税につきましては、黒の地方法人課税の部分は9.6%になっています。

3ページに、地方法人課税の税収の推移を出しています。先ほどの国税と基本的に類似した変動を示しています。平成元年度から3年度の頃がピークでして、この当時には10兆円を超えておったわけですが、直近は6兆円前後という水準です。

こういうふうに下がってまいりました原因は、先ほどもございましたが、4ページに、地方税の税率の推移を出させていただいております。事業税と法人住民税で課税標準が違いますので、両方をセットしてご覧いただくということで、上のほうの折れ線グラフですが、実効税率でもって税率の推移を掲げております。62年度以降、基本的には税率を下げてきているという状況です。

5ページは、国税でも触れましたので省略させていただきまして、6ページ、法人住民税の概要です。個人の住民税もあるわけですが、地域社会の費用につきまして、法人も構成員であるということで、個人と同様に幅広く負担を求めるという課税の趣旨です。市町村、都道府県の両方が課税するのも個人と同じです。その内訳につきましては、下にありますように、資本等の金額等に応じての定額負担の均等割と、法人税額に応じた法人税割、この2種類からなっております。

7ページの税収のところは飛ばしまして、8ページをご覧いただきたいと思います。法人事業税の概要です。事業そのものに対して課税される、事業を行う者に課税するということです。個人についての事業税というのも併存するわけでございますが、考え方といたしましては、法人が事業活動を行うに当たりまして、地方公共団体の各種の行政サービスの提供を受けるということで、必要な経費を分担すべきである。応益原則の考え方に基づいての課税です。

事業税は、事業所等を有する法人に対して、事業所等が所在いたします都道府県が課税するということになっておりまして、現行の課税標準は、これまでは所得あるいは収入金額に対する課税であったのですが、資本金1億円を超えます普通法人に対しまして、いわゆる外形標準課税の導入ということになったわけでございます。

その点につきまして、10ページをご覧いただきたいと思います。外形標準課税の導入につきましては、当調査会でもたびたびご指摘をいただいたところでございますので、詳しいことは省略させていただこうと思いますが、改正前・後と下のほうに四角い図を出しています。右側の改正後、平成16年4月1日開始の事業年度から、この形での課税といいましょうか、施行がされております。実際に確定申告がこの形で行われますのは、ほとんどの場合は来年5月以降です。いずれにしましても新たな課税の仕組みですので、これを定着させていかなければいけないと存じております。

11ページ、12ページは、そのうちの付加価値割あるいは資本割の仕組みの資料ですので、省略させていただきたいと思います。

13ページです。これは、必ずしも地方に限定した資料ではないわけでして、地方税全体で主な非課税等の特別措置の減収額が9,590億円ある。その内訳を示しています。その中で事業税につきまして、社会保険診療報酬の所得計算の特例というのが固まりとして1,110億円ございます。

14ページはその内容です。特に、1の社会保険診療報酬につきましては、収入からも必要経費からも落としてしまう、算入しないことに今なっておりますので、実質的に非課税になるということです。なお、医療法人に対して法人事業税の税率が軽減されているものもあるわけですが、いずれにしても、事業を行っていくという点では、ほかの法人と特に変わらないという点から考えますと、負担の公平という点でこのような措置はいかがか、ということがあるわけです。

15ページに参考として書いていますが、この措置自体は、議員提案でもって昭和20年代後半から現在まで至っています。

16ページあるいは17ページに、これまでの当調査会の答申を出させていただいております。これまでずっと、見直しを検討すべきとのご指摘をいただいてきておるわけですし、地方団体からも強く是正を求められているわけですけれども、なかなかその宿題にお応えできない状態が続いています。

18ページ以降は、別な話題で、地方の法人課税の独自の論点として今後起こり得るのではないかという趣旨でございます。「地方法人事業税の分割基準(概要)」とさせていただいておりますが、先ほど申し上げましたように、事業所所在の都道府県が課税権を持って法人事業税を課税いたしております。必ずしも特定の都道府県の区域の中で、法人の活動が終始しない、いろいろなところで事務所、事業所を持って活動するという大企業がかなりあるわけでございまして、そういう場合に、関係する都道府県の間で、法人に対しての課税をどういうふうに調整するかという問題がございます。その際に用いる基準を分割基準と呼んでおります。

その考え方ですが、下のほうに書いていますように、一つは事業税の性格、応益課税ということがございます。各都道府県内での事業の規模あるいは活動量を的確にあらわすものにしなければいけない。もう一点は、分割基準については、実際には法人に課税標準を都道府県に分けていただく作業をお願いすることもございます。税務実務上、できるだけ単純かつ明確である必要がある。

そういう趣旨でこれまで分割基準というものを考えてきているわけですが、現状につきましては19ページでございます。左のほうに事業として幾つか書いてございますが、分割基準は、事業によりまして必ずしも同じではないわけで、多くの場合は一番上のパターンになるわけです。つまり多くの事業におきましては、各県ごとの従業者数を算出して、それで都道府県間の課税標準を分ける。本社管理部門あるいは製造業の場合の工場の従業者数、こういう部分についての計算の特例もあります。そのほかの事業については、物的要素を重視する分割基準となっているものもあるわけです。

20ページに、これまでの改正の経緯、かなり大きな改正を含めまして、過去何回か行ってきてございます。これまでの考え方は、社会経済情勢の変化を踏まえまして、応益原則に基づいて、税の性格にふさわしい基準となるよう改正されてきているということですが、直近では平成元年度に改正されて現在に至っています。

21ページに、法人事業税の都道府県別シェアという形で、上の半分が、まさしく分割基準の結果といたしまして、都道府県別の法人事業税のシェアが決まってくるわけでございまして、大都市部の都道府県シェアが高くなってきて、これは直近の数値しか出してございませんけれども、最近の傾向としては、一極集中の度合いがむしろ高まってきている状況にございます。下のほうは、あくまでも参考でございますけれども、各県が毎年度算出している県内総生産の数値をもとにいたしまして、そのシェアを出しています。県内総生産、必ずしも事業活動の付加価値と完全にイコールというわけではございませんけれども、一つの参考になり得るのではないかということで、前回の改正から相当年数を経過している中、現状のような分割基準のままでよろしいかどうかということでございます。

22ページは飛ばさせていただきます。

恐れ入ります。「総18」という1枚紙の資料を出させていただいてございます。これは、前回、基礎小でのご議論の際に、不均一課税によってどの程度税収のロスが起こっているのか、こういうご質問がございまして、お答えができなかった点に関する資料です。

平成6年度から10年間分の減収額を出させていただいております。「注」にありますが、いずれも地域振興立法の種類のもので、その枠組みでの減収額でございます。年度によって差はございますが、100億円前後という数字になっております。法律に基づかないで、企業誘致等のために、都道府県が条例を独自に設けるという例も出てきておりますが、数値としてはこちらの資料には入っておりません。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

今、お二人の課長から、国と地方の法人課税、現状と問題点を整理していただきました。今年、来年度税制改正にまるごと入れるというような大きなテーマはなさそうでありますが、しかし、長い目で見ますと、法人税は非常に重要ですし、過去のいろいろな経緯を踏まえまして、今後、どういう形で法人課税を考えたらいいか、いろいろご議論を賜りたいと思います。

時間も押しておりますから、どうぞ積極的にご発言ください。

どうぞ、出口さん。

出口委員

法人税に限らず、全体の税制の中で議論させていただいてよろしいですね。

石会長

どうぞ。

出口委員

前回ありました、消費税、その他のことですけれども、消費税は一番大事な議論で、例外をつくりたくないということについては私は大賛成ですが、デメリットをどうするかという大問題のときに、非営利セクターの役割は非常に重要だということでこれまでも答申が多々出ております。さらに、各国とも財政赤字の中で、歳出を減らしながらパブリックニーズをどうやって満たしていくのかというところで、この部分の制度改革にかなり積極的になっているところから考えますと、現在行われています公益法人制度改革というのはきわめて重要ではないかと思っております。今の話で、これは閣議決定があってちゃんと日程が決まっているという中で、有識者会議の結論を踏まえて、新たに税制の検討を仕切り直ししたいということでございますので、白紙に戻して議論していくことについては大変結構ではないかというふうに思っているところです。

ただ、今の有識者会議の議論が、現在の公益法人と中間法人をくくるということで進んでいますから、特定非営利活動法人をどうするのかというところの問題を、来年度税制改正にどこまで踏み込んで入れるかという問題は、ここできっちり議論しておく必要があるのではないかと思っているわけです。公益的な寄附金というのは、考えようによっては社会に対する自発的な納税みたいなものですから、これが活発化することは重要なことでもありますし、「実像」の中には「民間が担う公共」ということが書かれてありますし、前回の千速さんのご発言にもありましたが、企業が今、社会的責任ということで、環境問題をはじめいろいろなところで努力されていることも評価しつつ、来年度税制改正に特定非営利活動法人の寄附金税制をどうするのかということを、ちょっと考えていただきたいなというふうに思っております。

そこで質問があるのですが、現在、特定非営利活動法人が幾つあって、そのうち、いわゆる寄附金控除対象になる認定特定非営利活動法人が幾つあるのかについて、お答えいただけたらというふうに思います。

石会長

今すぐ出ますか。どうぞ。

佐藤税制第二課長

今のお話でございますが、まずデータです。NPOの制度ができましたのが平成10年でして、現在、認証数が約1万8,000でございます。その中でいわゆる認定NPO法人という位置づけのものでございます。これは、NPO法人の中で一定の要件を満たすものについて寄附金に対する税制上のメリットが受けられる、そういう法人の類型でございますが、この制度が発足しましたのが平成13年10月からで、まだ2年ないし3年でございますが、数としては25法人という形になっております。制度自体まだ若いものでございますから、数的にはまだこれからということかもしれません。

ただ、制度改正という面からいきますと、認定NPO法人の制度が発足したのが平成13年ではございますけれども、14年度、15年度とかなり大きな認定要件の緩和をやってきたのもまた事実でして、当面は、この制度の定着あるいは活用を見守っていく段階かなというふうに思っている次第でございます。

ただ、先ほど資料の中でご説明いたしましたけれども、NPO法人に絡みます、「民間非営利活動の円滑化等についての重要な」というようなお話、あるいは、そこに伴う寄附金を含めた適正な課税のあり方は、中期的に大事な課題だということも指摘されているわけですので、当面云々ということではないにいたしましても、今後とも重要な検討課題だという位置づけかなというふうに思います。

石会長

今の出口さんの問題提起、受けとめましょう。

井戸さん、どうぞ。

井戸委員

今の説明にもありましたように、認定NPO法人の数がべらぼうに少ない。なぜかということを考えてみましたときに、非常に実績を問われるのです。NPO法人法自体が平成10年からしかできていない。NPOの活動それ自体も、阪神・淡路大震災のあと非常に大きくなってきた。そういう実態の中で実績を問われてくると、なかなか認定を受けられないということがあるのです。そういうことを考えたときに、NPO法人の趣旨とか、目的とか、組織の内容とか、どのような活動をするんだとか、そういう点を踏まえた上で認定NPO法人に認定していくという姿勢がないと、これは全く活用されていかない。どちらかというと、そういう姿勢に欠けているのではないかというのが私の率直な意見です。

もう一つ、NPOは、今、そういう意味では団体の維持そのものにも困っています。具体的に財源をどういう形で求めて活動を展開するかというので、非常に窮屈な思いをしながら意気込みだけで頑張っているNPOが非常に多いのです。そういう実態も踏まえて、「育てていく」という方向で議論をぜひ展開していただきたい。このように思っています。

あと2つだけ、質問させてください。

1つは、この間たまたまヨーロッパへ行ったときに『フィナンシャルタイムズ』を読んでいましたら、北欧諸国の企業が非常に元気だと。なぜ元気なのかというと、所得課税、消費課税は重いけれども、法人課税については非常に軽減をしている。だから、法人の企業の活発な活動が展開されているのだ、それがカギなんだということが言われていたのですが、そういう現実があるのかどうか。法人課税の比較表では北欧諸国との比較が出ていないものですから、お教えいただいたらと思います。

もう一つは、WTOとの関係で法人の政策税制です。法人の政策税制というのはWTOとの関係でどの程度まで許されるというふうに理解したらいいのか。これは、政策税制の位置づけを考えていくときの一つの大きな枠組みとなると思いますので、お尋ねしたいと思います。

石会長

北欧も20%台ですよね。そんなに大きく下回っていないと思いますけれども、何か資料がありましたら、どうぞ。

佐藤税制第二課長

手元にすぐ出ませんので、また調べましてご報告させていただきます。

石会長

わかりました。では、その資料は後ほど出しましょう。WTOの話も含めてお願いいたします。

もう一つぐらいにしたいのですが、どうぞ、佐竹さん。

佐竹委員

今の、特定NPO法人の関係も含めてですが、市町村の現場で今一番の課題は、特に市町村の場合は大変小さな住民利便施設というものがございます。そのほかに今の地域福祉という流れの中で、そのような形で、社会コストといいますか、行政コストを下げるための大きな目標になっているのがこの分野でございます。行政体に対する直接の寄附というのはいいわけですけれども、それ以外の、今、井戸委員からお話があったとおり、住民の意識は進んでいますけれども、実際、寄附控除の問題等で資金難である。ここら辺は、自治体も一緒にNPO法人等とうまく組み合わせることによって、行政コストを下げながら、かつ、企業の公的な貢献と。地域によっては企業貢献に対する積極的な企業もあるわけでございまして、そういう意味では、地方の行政コストを下げるための一つの手法ということでも大きな柱になり得るのではないかという感じがいたします。

石会長

では、手短に。どうぞ。

田近委員

今日、最後にご報告いただいた「総18 法人事業税の課税免除等による減収額」。私がお願いしたものですけれども、法人事業税のいわゆる不均一課税等ですけれども、減収額が100億円ぐらいある。この額自身、多い少ないということも一つあるのでしょうけれども、指摘したいのは、実はこの額が、地方交付税措置されて、地方が企業を誘致したり、低開発地域等に誘致したいと。それは当然あってもいいし、一般会計から誘致するためのいろいろなことはしていいのですけれども、私のポイントは、これが地方交付税措置されて減額した部分を地方に戻している。それは仕組みとしておかしいのではないか。こういうことをするならば、補助金であげるならいいけれども、減額していた部分を交付税で国から地方に補てんするという仕組みは改善するべきだという主張だったのですが。

石会長

そうなっているのですか、制度的には。

株丹都道府県税課長

この減収額全体が交付税措置されるというわけではございません。実際には法人事業税などの場合ですと、3年間に限っての措置ですが、今ですと、減収額のうち100分の75の部分が言われるところの減収補てんがされるということになります。

石会長

今の田近さんの意見に対してはどうなんですか。全額ではないけれども、4分の3くらいを戻しているわけですね。

株丹都道府県税課長

この制度自体はそれぞれの地域開発立法の中で位置づけをされた国の政策として行われているもので、その中でこういうものの減収については、交付税の交付団体が全体として負担し合おうという趣旨でのものであると理解してございます。

石会長

そうですか。

さて、まだ問題があるかもしれませんが、まだ残った問題がいっぱいありますので、これまでにしたいと思います。いずれにいたしましても、NPO法人の寄附金絡みのところで幾つか問題点を指摘されましたので、今後のフリーディスカッション等で詰めていきたいと思いますが、問題の重要性は皆さん把握していただいたと思います。

では、国際課税、武内さん、ちょっと早めにお願いします。

武内国際租税課長

お手元の資料、「基礎小23-3」に基づいて説明させていただきます。

国際課税は、今年の6月の「実像」でどう書いてあるかだけをご覧いただきたいのですけれども、2ページ目でございます。グローバル化の進行ということをご指摘いただいた上で、税制などの制度設計に当たっての視点、「グローバル化を活かす」ということで、一文を書いていただいてございます。読み上げさせていただきます。

「第四に、人口減少、家計貯蓄率の低下等、わが国経済社会の構造変化が著しく進む中、グローバル化の動きをどのように活かすかが重要な鍵となる。その際、アジアとの相互依存関係を踏まえ、海外の人材や資本の活用などを含む戦略的な対応が不可欠となろう」ということで、グローバル化の中で、人材や資本の活用などに向けて、税制がどのような貢献ができるかということを、国際課税を考えるに当たっても考えていく必要があろうかと思います。

以下、租税条約ネットワークの拡充の観点からと、国際課税の現代化の観点からに分けてご説明させていただきたいと思います。

まず、租税条約、租税ネットワークの拡充の観点でございますけれども、8ページをご覧いただけたらと思います。グローバル化の進行ということで、グローバル化の動きを活かしたわが国の経済社会の活性化に向けて、さらには、国境を越えた経済活動についてのわが国の課税権の確保、国際的な二重課税及び二重非課税の排除ということが求められるわけでございますけれども、租税条約の見直しは、そういった中で、国際的な投資交流の促進を促すとともに、租税回避行為の防止という役割を果たすわけでございます。

現在、日本がどのような国々と租税条約を結んでいるかでございますけれども、10ページをご覧いただけたらと思います。45条約、55カ国との間で租税条約を結んでございます。このように租税条約を結ぶことによって、投資交流の促進、課税権の配分、二重課税・非課税の排除、相互協議等を通じた国際協力をやっているわけでございます。

これだけの数の条約があり、また、まだ条約を結んでいない国がある中で、どういった国々との間の条約の改定、あるいは新しい締結を図っていくべきかという、優先順位づけをするに当たっての判断材料を12ページに掲げさせていただきました。まず、これらの事項については、それぞれ、後ろのほうのページに参考資料をつけてございますけれども、時間の関係で、12ページをご覧いただきながら、ポイントだけ説明させていただけたらと思います。

わが国との間の投資交流の頻度、わが国が相手国にどれぐらい直接投資をしているかでございます。トップテンを読み上げますと、アメリカ、イギリス、オランダ、パナマ、オーストラリア、インドネシア、ケイマン、香港、中国、シンガポール。こういった国々が直接投資額では多いわけでございますので、こういった国々と租税条約を結ぶことはそれなりに意義があろうかと思います。

それから、2つ目の投資所得の限度税率の水準でございますけれども、租税条約を結ぶことによって、お互い、掛ける税率を低くし合うことができます。わが国の場合には、先般来ご紹介させていただきましたように、日米租税条約を通じまして限度税率を思い切って引き下げることといたしました。使用料については免税、利子についても、基本10%、金融機関等が受け取る場合には免税、配当については、一般10%、親子会社間では場合によっては免税、場合によっては5%ということで、最高でも10%まで下げたわけでございますけれども、わが国が残している租税条約、ほかの国々との間ではまだまだ高い水準のものがございます。先進国との間でも、日米租税条約をベースに、こういった限度税率の引下げに努めてまいりたいと思いますし、アジアの国々との間でも、20%、25%といった限度税率が残っている国との間では、できるだけ早く引下げ交渉に当たりたいと思っております。

また、租税条約を結ぶに当たりましては、その国々がほかの国々との間でどのような限度税率を結んでいるのか、日本の企業に対してよりも低い限度税率を課すこととしている場合には、日本の企業がその国で活動する上で不利に当たりますので、そういった国々に対しては、租税条約改定の交渉をもちかけたいと思っております。

このほかにも、今の租税条約の中には、例えば匿名組合制度が思わぬ形で節税に使われている可能性があります。そういったものにつきましても、租税条約改定交渉が必要となりましょうし、みなし外国税額控除という制度もございますので、そういったものの見直しにも努めてまいりたいと思っております。

そういったことを通じまして、地道にネットワークを充実させていきながら、わが国の投資がいろいろな国に均てんするように、それから、いろいろな国からわが国に投資が来るように働きかけてまいりたいと思います。これが租税条約を通じたグローバル化の進展かと思っております。

もう一つの大きな柱でございます国際課税の現代化につきまして、21ページをご覧いただけたらと思います。グローバル化の進展の過程で、企業の活動につきましても多様な形での経済活動が行われるようになっております。複雑化もしております。そういった中で、企業の実態に即した制度の見直しも必要でございましょうし、果たして本当に経済活動に対する課税の中立性、公平性が確保されているのかという観点からも、絶えず見直しが必要かと思っております。そういった意味で、国際課税の現代化、適正化ということで、複雑化、多様化に対応しつつ、租税回避行為への対応、あるいは多様な事業体への対応を考えてまいりたいと思っております。以下、3つ、例を挙げさせていただきたいと思います。

一つは、26ページをご覧いただけますでしょうか、外国子会社合算税制というものがございます。これは、本邦企業が税負担の著しく低い海外子会社に留保された所得、日本の場合は25%以下しか税を負担していない国に所得を留保した場合、本邦の親会社の所得に合算して課税するという制度でございます。これは、あえて海外に子会社をつくってそこに所得をプールすることによって、課税の繰延べを防止するためでございますけれども、他方、実体のある事業を行っている場合につきましては、もちろん合算することをいたしておりません。

外国子会社合算税制も久しく根づいているわけでございますけれども、グローバル化の進展に伴いまして、海外企業の実態、こういったところに海外子会社をつくることが果たして正当な理由があるのかどうか、そういったことについての見直しも進めてまいる必要があります。さらには、子会社ではなくて、例えば外国信託を使った場合にはとり漏れている場合があるのではないか、そういったことについてもきちんとまた検討したいと思っております。

2つ目は、外国税額控除制度というものがございます。31ページをご覧いただきたいのですけれども、この制度は国際的な二重課税の排除のための措置でございまして、日本で税金をお納めいただく際に、すでに外国で税金をお納めいただいている場合には、外国でお納めいただいた税金をわが国で納付すべき法人税額の範囲内で控除することを認めるという、二重課税排除のための措置でございます。これにつきましても、グローバル化に伴いまして、見直さなければいけないものがあるのかもしれないと思っております。

例えば34ページでございますけれども、外国で、所得100、それに対して税金を50納めている所得がありました。これだけを見た場合には、日本でお納めいただく税金というのは30でございますから、外国税額控除をお認めするにしても30までにとどめるべきでございますけれども、この企業がほかにももう1種類所得がございまして、その所得につきましては10しか税金を納めていらっしゃらない場合には、今の制度のもとでは、50納めた税金プラス10納めた税金、トータルで60納めています。トータルで日本国内でお納めいただく税金に見合う額だから結構ではないかということで、外国で50も納めていただいている税金全部について、日本で面倒を見ているわけでございます。これを我々は控除額の流用と申し上げているわけでございますけれども、果たしてここまで一括して扱う必要があるのかどうか、見直ししていく価値はあろうかと思っております。

最後に、もう一つだけ例を挙げさせてください。36ページでございます。法人税のいろいろな課税の過程の中で、団体レベルでは課税せずに、構成員レベルで課税したらいいではないかということで、そういう形で課税する事業体の創設が議論されているわけでございます。企業の使い勝手ということで、いろいろな議論がなされることは結構でございますけれども、国際課税の観点から申し上げますと、構成員段階で初めて課税するような場合に、課税が果たして確保できるのかということをいつも問題意識として持っております。構成員が国内居住者でいらっしゃる場合には、国内の税務署の方がそれなりにトレースできるとは思いますけれども、構成員が海外にいらっしゃって、事業体から海外にいらっしゃる構成員に収益が直接配られてしまう場合、どこまで課税が確保できるのか。そういったことにも目を配らせて、税制の公平性が確保できるように努めてまいりたいと思っております。

国際課税の国内税制の面におきましても、グローバル化に追いつきますよう、これからも不断の努力を行ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

手際よくご説明いただきました。急がせまして、すみません。

今のご説明、これはまだ資料がずいぶんありますから、ご関心の方は、ほかの部分も触れていただいて結構ですが、何かございませんか。

どうぞ、水野さん。

水野委員

簡潔にご説明いただいたのですけれども、非常に興味を持ったのは、13ページの海外への直接投資額を見ますと、アメリカ合衆国は、当然としまして、そのあとにオランダ、パナマ、ケイマン諸島といった、いわゆる税金のない国、少ない国、タックスヘイブンなど出てくるのですが、この辺が一つ気がかりです。他方で、先ほど法人税のときにご説明いただいた中に、たしかカナダの税率が20%に法人税がなっているのですが、そうすると、カナダもタックスヘイブンに入ってしまうようなことになりますが、このあたり、いろいろな国の税制が動いているということですけれども、今後、タックスヘイブン対策税制、これをどういうふうに持っていかれるのか。税率の関係ですけれども、何かお教えいただければと思います。

それから、時間の都合があるので両方質問させていただきますが、21ページに、「実像」のところから「多様な事業体への対応」というのが出ています。すでに日米租税条約に事業体に対する取扱いが入ったのですけれども、典型的には匿名組合がありますし、あるいは組合ですが、これについての課税関係です。事業体それぞれいろいろな形態ですけれども、通達の中に規定を置くだけでいいのかどうか。これは国際租税だけの問題ではないと思いますけれども、今後の方針についてお聞かせいただければと思います。

石会長

では、武内さん、どうぞ。

武内国際租税課長

最初の点でございます。まさにおっしゃられるとおりで、かつてはわが国もタックスヘイブン税制ということで、ある国の税率に着目して、その税率が高いの低いのとやっておったのでございますけれども、いろいろな国がいろいろな税制改正をしますので、それでは追いつかないということで、今では、ある子会社なら子会社に着目した上で、その子会社の税負担が25%なのか、以下なのかどうなのかということで線引きしてございます。

ただし、その実体が外国に子会社を置く正当な理由がある場合、いわゆる適用除外基準でございますけれども、そういったものを満たす場合には合算しませんので、そこは適用除外基準というものを常々見直して、果たしてその国に子会社をつくることが真っ当な理由から来ているのか、それとも所得の留保のためにやっているのか、そういう点でいつも洗い直していきたいと思っております。

石会長

当然、カナダとケイマンは違うわけだね。

どうぞ、事業体のほう、もしか何かあれば。

小原企画官

事業体関係、任意組合や匿名組合の制度についてということでございました。先生のお話にもございましたように、現行、通達をもとに一応の整理というのをしているところでございます。したがいまして、これで対応できないところは、例えば取扱いに応じて考えるとか、いろいろしていくことになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、租税回避的な行為に対しては適切に対応していかなければならないのではないかというように考えているところでございます。

石会長

よろしゅうございますか。あと2つ大きなものが残っているので、まだ幾つかあるかもしれませんが、またの機会を設けたいと思います。

それでは次に、資産課税に移りたいと思いますが、長谷川さんと米田さん、おのおの、国と地方につきましてご説明ください。

では、長谷川さん。

長谷川主税企画官

お手元の資料「相続税・贈与税関係」と題した資料に基づきまして、ご説明したいと思います。

表紙と目次をめくっていただきまして、まず、相続税の現状からおさらいさせていただきたいと思います。1ページですが、相続税の意義ないし課税の根拠です。平成12年の答申で整理していただいておりますけれども、基本的には、遺産の取得(無償の財産取得)に担税力を見出して課税するもの。所得の稼得に対して課される個人所得課税を補完するもの、という位置づけでございます。さらに累進税率を適用することにより、富の再分配を図る役割とか、また最近の議論といたしまして、老後扶養の社会化との関係で、老後扶養が社会化されますと、資産が従来ほど減少しないということで、資産の引継ぎの社会化を図っていくことが適当であるとの観点から、相続課税の役割が一層重要になってきている、という議論も紹介されております。

2ページでございますけれども、相続税の課税方式につきましては、遺産課税方式と遺産取得課税方式、2つございます。遺産課税方式は、遺産全体に担税力を見出して課税する方式で、アメリカ、イギリスで採用されておりますけれども、相続財産のうち、あらかじめ相続税を遺産管理人なり遺言執行者等が納付して、その残りを相続人ごとに分割するという方式でございます。

これに対して、わが国やドイツ、フランスで採用されている遺産取得課税方式は、まず、相続財産を相続人に分割したのち、それぞれの相続人が取得した財産に見合った相続税を納付する。これは、いわば相続人の無償の財産取得に担税力を見出して課税する、こういう考え方でございます。

3ページは、両方式、長所、短所がございますけれども、例えば遺産課税方式につきましては、下の特色のところに書いてありますけれども、遺産全体に課税いたしますので、遺産分割の仕方によって税負担の変動がない、したがって税務執行が容易であるとか、あるいは仮装分割による租税回避が行われにくいという長所がございます。

他方、[3]に書いておりますけれども、財産取得者の個人的担税力に則した合理的な課税を行うという点で、やや劣るという短所がございます。逆にその裏腹といたしまして、遺産取得課税方式は、財産取得者の個人的担税力に則した課税ができる。他方では、遺産分割の仕方によって税負担に差異を生ずることから、事実と異なる申告が行われやすいという短所がある。そういう長所、短所がございます。

わが国の場合は遺産取得課税方式を基本としておりますけれども、さらに法定相続分課税方式というものを導入しておりまして、実際の遺産分割のいかんにかかわらず、民法の法定相続分で相続したと仮定して相続税の総額を計算いたしますので、相続税の総額は、遺産の分割の仕方にかかわらず常に一定であるということで、遺産取得課税方式の欠点を補って逆に遺産課税方式の長所を取り入れている。いわば両方式の長所を兼ね備えているということが言えるかと思います。ただ、短所といたしましては、これによってやや制度が複雑になっているということでございます。

4ページ、具体的にわが国の相続税の仕組みをご覧いただきますと、左から、まず、遺産総額から非課税財産とか債務を引きまして、正味課税遺産に相続開始前3年以内の贈与と一定の贈与を加えまして、合計課税価格を計算いたします。これが課税ベースでございます。ここから基礎控除を引いた残りの課税遺産総額について、実際の遺産分割にかかわらず、法定相続分で仮に按分いたします。したがって、実際相続を放棄する方もいるかもしれませんが、とりあえず法定相続人で相続したといたしまして、それぞれに超過累進税率を適用して、税額を出して、その合計額として相続税の総額が出てくる。ここまでは実際の遺産分割いかんにかかわらず一定であるということでございます。そこから実際の相続割合で按分して算出税額を計算し、それぞれの相続人ごとの実情に応じた税額控除を適用して各人の納付税額を計算する、こういったやり方になっております。

5ページでございますが、相続税収の推移です。平成5年度がピークでして、約2.9兆円ございました。その後、バブルの崩壊による地価の下落とか、累次の減税によって税収が減ってきておりまして、16年度では約1.1兆円で、国税収入に占める割合は2.6%になっております。2.9兆円との差が1.8兆円ですけれども、このうち減税要因がおおむね0.7兆円、残りの1.1兆円が地価の下落、その他、経済的要因によるものでございます。

6ページは、最近における相続税の主な改正を掲げております。昭和63年12月の改正、平成4年度、平成6年度、平成15年度と、主に4回大きな改正がございます。63年12月、これは消費税導入を含む税制の抜本改革でありましたけれども、抜本改革の前と比較いたしますと、最高税率で75%から50%に引き下げられております。また、税率の刻みも14段階から6段階ということで、簡素化、フラット化されております。また基礎控除についても2倍強引き上げられておりまして、現在では、5,000万円に1,000万円×法定相続人数を加えたものになっております。また、配偶者に対する最低保証額とか、小規模宅地等の課税の特例等の制度につきましても、累次拡大されているところでございます。

7ページでございます。こうした減税、あるいはバブル崩壊による地価の下落によって、相続税の課税割合が年々減少しております。例えば昭和62年を見ていただきますと、死亡者100人に対して課税割合は7.9%、100人中7.9 人でしたが、累次その割合は減少しておりまして、平成14分で見ますと4.5%になっております。また、被相続人1人当たりの合計課税価格、遺産額でありますが、かつてバブルのときは3億円超えておりましたが、現在では2.4億円を下回っている。また、被相続人1人当たりの相続税額もかつては6,000万、7,000万を超えておりましたが、現在では3,000万円を下回っていますし、合計課税価格に対する相続税額の割合、すなわち負担割合で見てみますと、かつて2割を超えていたのが現在では12%ということで、負担割合のほうは減少しております。

8ページは、平成14年分、課税価格階級別で具体的な課税状況を見ていただきますと、先ほど申しましたように平均1人当たりの課税価格は2.4億円ですが、2億円から3億円の階級のところを見ていただきますと、件数で累積比81%、納付税額の累積比で20.6%になっております。すなわち、下から数えて8割ぐらいの方が納付税額全体の2割を納めていただいている。逆に、上から数えて2割ぐらいの方が全体の8割を負担していただいている、こういうような姿になっております。

9ページですが、地価の動きでございます。棒グラフは上から、三大圏商業地、三大圏住宅地、全国・全用途となっておりますが、昭和58年を100といたしまして、ピークが平成3年。現在は、平成3年をピークに減少しておりまして、いずれもバブル発生前のレベルに落ち着いております。特に三大圏商業地で見ますと、昭和58年の100に対して70.6ですので、7割ぐらいに落ち込んでいるし、また平成3年と比較してみますと、平成3年は336.8 ですので、平成16年はその2割くらいというところまで落ち込んでおります。

10ページを見ていただきますと、東京都区部のケースですけれども、特にピーク時からの地価の下落が大きうございまして、上は千代田区外神田三丁目の例でございます。事業用土地が200平米、その他の財産が1億5,000万円弱ですが、そのケースで、その他の財産の価格は一定としまして、地価だけが下がったという仮定で相続税を試算いたしますと、路線価が8分の1に下がった上で、減税効果がありますので、相続税額は平成3年に対して平成16年は24分の1にまで負担が軽減されております。下は住宅地で世田谷区成城六丁目の例ですけれども、同様に試算いたしますと、路線価が3分の1に減少し、これに減税効果が加わって相続税額は10分の1に下がっております。

11ページ以降は、諸外国との比較でございます。まずマクロ的に見まして、租税負担率で見ていただきますと、個人所得課税なり消費課税につきましては、ご案内のとおり、日本はほかの国に比べて半分以下のレベルではございますけれども、相続税・贈与税につきましては、フランスはやや高いですが、おおむねほかの国々と同じレベルかなという感じでございます。

12ページですが、主要諸外国との比較でございます。これは、課税方式が違うということもありまして、単純な比較はなかなか難しゅうございます。13ページを見ていただきますと、相続税の実質的な負担率を比較したものでございますが、配偶者と子供3人で3億円で相続した場合、日本は諸外国の中では大体同じくらいのレベルにあるのかなという感じがいたします。

14ページ、15ページでございます。相続税にかかる諸控除、所得控除なり税額控除なり特例措置です。詳しい説明は省略いたしますけれども、一つ、事業承継関係につきましては、3つ目の箱にありますように、小規模宅地についての相続税の課税価格の特例がございまして、事業用の宅地については事業継続を前提に400平米まで8割を減額するという特例もございます。

16ページ以下は贈与税でございます。贈与税の仕組みは基本的には暦年課税をとっておりまして、1年間の贈与により取得した財産の合計額から基礎控除等を控除して、税率を掛けて税額を計算いたします。この税率はかなり高い税率になっていますけれども、一つには、第三者からの無償の財産取得に重い負担を求めるという趣旨がございますし、また親子間の贈与につきましては、相続税の課税回避を防止する観点から比較的重い負担になっているという趣旨もございます。

この点につきましては、18ページですけれども、当調査会の14年6月の答申におきまして、相続税の課税回避を防止する観点も重要だけれども、他方で、高齢化の進展に伴って相続による次世代への資産移転の時期がより後半にシフトしているということで、資産移転の時期の選択に対する中立性を確保することも重要になってきているのではないか。高齢者の保有する資産がより早い時期に次世代に移転することになれば、その有効活用を通じて経済社会の活性化に資するのではないか。こういった観点から、生前贈与の円滑化を検討すべきであるというご指摘をいただきまして、これを踏まえて、平成15年度の税制改正におきまして、いわゆる相続時精算課税制度というものが創設されております。

19ページはこの制度の概要でございます。詳しい説明は省略させていただきますが、下に例がございます。3,000万円の生前贈与を受けた場合に、非課税枠を越えた500万円について税率を掛けて税額100万円をまず贈与時に納付していただいて、相続時には、その贈与財産を相続財産に加えて税額を計算する。その相続税額αが100万円を下回った場合には、その下回った分について還付、また、100万円を上回った場合には上回った部分について相続税として納付していただく、こういう制度でございます。

20ページは、相続時精算課税制度、平成15年分から適用されておりまして、本年2月に初めて申告がございました。その活用状況について実態調査をいたしました。その概要については別冊で「参考資料」としてつけておりますが、お時間のあるときにご覧いただくといたしまして、ここでは3点ほどポイントを申し上げたいと思います。

1つは、適用者数でございます。7万8,000人ということで、これは贈与税申告人員全体の18%強でございました。この方々の贈与を合わせて1.2兆円の贈与ということで、1.2兆円にのぼる新たな資産移転効果があったのかなというふうに思っております。また、1人当たりの平均受贈額も前年の4.2 倍で、1,485万円にのぼることが判明いたしました。

住宅取得資金にかかる特例につきましては、金額ベース、適用者数ベース、いずれも全体の3分の1程度、また、受贈者数の65%が20~30代ということで、若年層を中心に住宅取得促進に寄与しているというふうに思っております。

また非上場株につきましても、1人当たりの平均受贈額は前年の16.5倍、3,800万円強ということで、非課税枠を越えて積極的な活用がなされたということでございます。これは、相続のときになってあわてて事業承継を考えるのではなくて、生前から計画的に本制度を使って事業承継を準備されたということなのかなというふうに思っております。

以上を踏まえまして、初年分から高齢層の資産を早期に次世代に移転させ、資産の有効活用を通じて経済社会の活性化に資するという所期の効果は十分発揮し得たのかなというふうに考えております。

21ページ以下は、今後の課題でございます。例えば15年6月の答申におきましては、下線部ですけれども、「個人所得課税の累進構造のフラット化の進展、将来の消費税率の引上げを考慮に入れると、相続税の持つ再分配機能が一層重要となる。また、高齢者を取り巻く状況を見ると、より社会全体で老後扶養の負担を支えるようになってきている。このような老後扶養の社会化の進展に伴い、相続時に残された個人資産に負担を求める必要性が高まっている。こうした点を踏まえて、相続税について、従来より広い範囲に適切な税負担を求めるねらいから、課税ベースの拡大に引き続き取り組む必要がある」、こういうご指摘をいただいております。

23ページは、「実像」との関係でございますけれども……。

石会長

ちょっとこの辺は少し省略してくれませんか。議論の時間をとりたいですから。

長谷川主税企画官

わかりました。

ここでは、社会的流動化のトレンドが鈍化してきているということをご指摘いただいております。

24ページでは、資産保有の状況を見ると、高齢者層ほど保有額が大きくなる中で、高齢者世代内においてその状況は多様な姿を呈しているということで、特に25ページを見ていただきますと、ネットの金融資産は高齢者層のほうが若年層に比べて圧倒的に多い。しかも、89年、94年、99年につれて高齢者層は増加している一方で若年層は減少している。

26ページは、いわゆるストック化の状況が、特に最近、歴然としてきております。折れ線グラフを見ていただきますと、フローの雇用者所得の伸びに比べてネットの家計資産のほうがそれを上回る伸びを示していることが指摘できるかと思います。

27ページは、こういった全体の資産が増えてきている中で、平成15年を見ていただきますと、その大半が60歳以上の高齢層に蓄積されていることがこれによってわかるかと思います。

最後に29ページですけれども、「実像」の中でもご指摘いただいておりますのは、世代内の公平だけではなくて、世代間の公平に留意する必要があるという点。それから、家族やカイシャが果たすケア機能が低下していて、裏返してみますと、扶養の社会化が進んでいる。こういった中で国民の受益と負担のあり方が問われなければならない。税の面で言うと、所得・消費・資産等の多様な課税ベースに適切な税負担を求めていくことが課題となる、こういったご指摘をいただいております。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

では、固定資産税につきまして、米田さん。

米田固定資産税課長

「基礎小24-3」の資料で説明させていただきます。

1ページですが、概要を載せてございます。ご覧のとおり、課税客体、土地1億7,000万筆、家屋6,000万棟を毎年課税しているわけでございます。なお、標準税率1.4%でございまして、制限税率は従来2.1%でしたけれども、今年度の改正によって廃止されております。なお都市計画税につきましては、都市計画区域を有する市町村、現在、767 団体が市街化区域内の土地と家屋について課税をしております。

続きまして、2ページをお願いいたします。これは、市町村税収に占める固定資産税の割合でして、全市町村で見ますと、固定資産税46%、都市計画税が7%ということで、50%を超える水準になっております。

次の3ページですけれども、最近の税収の動向でございます。固定資産税収も平成11年をピークにして漸減のような状況になっております。中でも、土地と償却資産につきましては平成11年度、家屋につきましては平成14年度がピークの年でございます。

続きまして、4ページです。市町村民税と固定資産税を合わせてみて税収の推移がどうなっているかということでございまして、従来は、個人と法人を合わせた市町村民税が固定資産税をかなり大幅に上回っていたわけですけれども、一方で、市町村民税の減収が続いていることもありまして、平成10年にこの割合が逆転しているというものでございます。

次の5ページは国際比較ですけれども、これは省略させていただきます。

6ページをご覧いただきますと、固定資産税、中でもバブルの前後を通じまして、急激な地価の上昇・下落を経験してまいりました宅地につきまして、税額算定の流れ(イメージ)をつけてございます。そこの左からご覧いただきますと、財産税でございますので、資産の価値を金銭表示をするという意味で、評価額の算定というのがまず入ります。続きまして、それをそのまま課税標準額で使うわけではなくて、さまざまな特例があるということを載せております。これに税率を掛けて税額を算出するわけですが、具体的なものといたしまして、7ページをご覧いただきたいと存じます。

少し歴史的な経過をご説明いたします。平成5年度におきましては、評価は各市町村、各土地等の間でその評価水準にかなり大きな格差がございました。全体的に見ますと、その水準が相当低下している。地価に比べて相当低い水準であったというふうに言われております。一方、課税につきましては、評価替えの翌々年度、次の評価替えまでの間に、課税標準額が評価額に追いつくような負担調整額を入れておったわけでございます。

次に、平成6年度~8年度というところをご覧いただきますと、平成6年度に大きな制度改正があったわけで、まず評価につきましては、公的土地評価の均衡化・適正化という観点から、いわゆる7割評価というものが実施されました。下のコメ印に書いてございますけれども、従来、各土地間に評価水準の格差がありましたけれども、この7割評価という形で全国的に具体的な目安が入りましたので、評価におきましては全国的な統一がなされたというわけです。

一方で、この7割評価に伴ってかなり評価額が上がったということですので、これをこのまま課税標準として用いますと、従来の税額がかなり急上昇するということを踏まえて、下の課税のところですけれども、一つは、ゆるやかに課税標準額を上昇させる負担調整率というものを採用いたしました。評価額が例えば3倍になりましても、税額の伸びは1年間で5%、3年で15%というゆるやかな伸びになるような措置を入れたわけでございます。

一方で住宅用地につきましては、住宅用地の特例、従来、課税標準額を4分の1に圧縮する措置を、6分の1に圧縮する形のものをここに入れたわけでございます。結果的に、評価額については全国的に統一されましたけれども、課税標準額と評価額のかなり大幅な乖離がここで生じてきた、こういうことになったわけでございます。

続きまして、平成9年でございます。先ほど相続税でもございましたとおり、平成3年をピークにいたしまして、地価が今度はかなり大幅な減少に転じました。そういうものを受けまして、評価のところの[2]ですけれども、従来3年に一回評価替えということで、これは原則としてそのままですけれども、据置年度におきましても比較的簡易な方法により評価額の修正を行いまして、評価額を年々下げるという形にいたしました。一方で負担水準の均衡化の措置ということで、負担水準がかなり高い土地につきまして、これを一律に引き下げる措置をここでとったわけです。平成9年から11年までは、評価額の80%、現在、平成17年までにおいては、評価額の70%まで税額のほうを引き下げる、そのような負担水準をとったわけでございます。次の8ページにそのポンチ絵が出ておりますので、ご参照していただければ幸いでございます。

9ページにつきましては、今申し上げました住宅用地の特例、さらに10ページにつきましては、負担調整措置、商業地の例でございますけれども、その例を掲げさせていただいております。説明は省略させていただきます。

11ページにつきましては、今年度、平成16年度の税制改正におきまして、負担調整のうちで負担水準が70%から60%にかかる土地についての条例で、市町村が特例を入れることができるというものをつくりましたので、それを紹介させていただいております。

以上、まとめましたものを12ページに掲げておりますが、これもパスさせていただきます。

結果的にどうなったかということでございます。13ページをご覧いただきますと、さまざまな負担水準の土地があるわけですけれども、平成9年から平成15年にかけまして、一方で負担調整措置、もう一方で地価が下がったことに伴いまして、評価額がかなり下がってまいりました。そういうことを受けまして、税負担を引き下げる土地--現在ですと、負担水準が70%を超える土地ですけれども、その割合が平成9年が11.8%に対して、現在38%ということで、ここのところの土地がかなり増えてきたわけでございます。ここの土地につきましては、評価が下がれば税負担が減少する、こういうものでございます。

そういうことを受けまして、14ページに、大都市における土地の税収がかなり大幅に下がってきたということをつけてございます。

15ページは、税負担の負担水準が、各都道府県で平均してどの程度にあるかということを掲げさせていただいております。

そこで、16ページでございます。これまでの歴史的な経過も踏まえて、16ページの左側に負担調整の措置を掲げさせていただいております。例えば上のほうですが、負担水準が70%を超える水準では、現在、土地が38.7%ある、こういうものでございます。これは先ほどご説明いたしましたとおり、評価額の70%の水準に課税標準額を引き下げるということをしております。

ところが一方で、例えば真ん中あたりに、負担水準が30%から40%の土地が現在も3.2%あると載せてございますけれども、こういう土地につきましては、毎年5%、課税標準額をアップさせる、このような負担調整措置をつけてございます。このような負担調整ですので、なかなかすべての土地が60%から70%、いわばターゲットゾーンのところに行かないという現象が、今、生じているわけでございます。そういうことですので、右に書いてありますとおり、同じ評価額の土地であれば同じ税負担という課税の公平の観点から、負担水準の均衡化が必要になってくるというご指摘を、当調査会でもたびたびいただいております。

最後に17ページですけれども、固定資産税における情報開示、これまでも調査会においてたびたびご指摘を受けております。最近、このような制度が整ってまいりましたので、そのことを紹介させていただいております。例えば一番上、個別の土地、家屋の評価額などを記載した縦覧帳簿を、市町村内の納税者に対しては他人のものについても開示をする、このような縦覧制度が最近できてきていることを紹介させていただいております。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。2つ異なる資産課税のご説明をいただきましたが、若干時間をとりましょう。

ご質問なりご意見があれば、どうぞ。

村上委員

相続税ですけれども、15年度の答申にある線で、積み残しというか、実施されていない課税ベースの拡大という課題があると思います。消費税の議論が深まるにつれて逆進性の解消策の問題が出てくるし、定率減税をいじる場合にも中堅どころに増税の影響が出てくるのではないかと推測します。そういう意味でも、相続税の課税ベースをもう少し広げておく必要があるのではないかというふうに思います。

石会長

資産の段階での再分配効果という意味ですね。

村上委員

はい。

石会長

どうぞ、井上さん。

井上委員

まず相続税、これは1ページに出ていますけれども、「累進税率を適用することにより、富の再分配を図るという役割を果たす」ということですけれども、何ゆえに富の再分配をしなければいけないのか。すでに税金を払って蓄積された資産というものについて、それを相続するときにまた相続税を払うことに一つ問題があるのではないか。特に中小企業の場合ですと、個人の資産というものは非常に大事である。要するに、資産というものを担保にして金融を得ている。金融を得るというのは、今、無担保・無保証ということがよく言われますけれども、それは非常に金利が高くなるわけです。そういった点からすると、どうしても担保を提供せざるを得ない。そうでないと企業運営ができないというのが現況なわけでして、そういうことから言うと、資産をある程度蓄えていくことが非常に大事なことなわけです。やっとたまった資産、そして事業というものは、中小企業の場合には事業ではなくて家業だと。家をよくしていくことによって、事業展開を大きくしていくということしかないのではないか。そういうことから言うと、まだ日本の場合には累進税が高い。50%という率も非常に高いというふうに思います。

たまたまこの間ロシアに行ったときに、所得税が13.5%一律だという話を聞いて、どうなっているのかなということで、ロシアの相続税をちょっと調べてみました。10%から30%ということでして、それから、相続税資産額の最低月額賃金の850倍までは非課税だと。これを計算してみますと、9,000万円ぐらいになるんですよね。日本の最低賃金ということを計算すると。そこまでは非課税だというようなことを言うと、何か共産主義国家というものがよほど資本主義国家ではないのかな、ということを感じて帰ってきたわけですけれども、そういった点で、すべて富の再分配ということに問題があるのではないか。と同時に、事業承継税制の問題ですけれども、企業というものはやはりゴーイングコンサーン、継続していくことによってそこで利益を得て税を払うということなわけですから、そういった点からしても継続させるためにも必要だということではないか。

もう一点、株の問題です。非上場株式というもの、これはもう紙っぺらなわけです。財務省でもこれを担保にとらない。買取保証をしなければ担保にとりませんよということが現状であるわけですから、それほど価値のないものだと。それから、会社というものが解散したときにそこの価値が出てくる。それまで保留したらいいのではないかということを考えるわけでして、ひとつその点もよくご考慮いただきたいということでございます。

石会長

日ごろの不満が何か一斉に出たような感じですね(笑)。学界的なご説明になるけれども、所得で取られて富で取られるから二重課税だと言いますけれども、富の段階までの所得の段階では完全に取ってないという発想ですよ、特に金融所得は。それがたまっていくわけですから、精算しないと社会的不公平が起こると。これは誰しも考えることです。

それから、機会の平等か結果の平等かありますけれども、親父さんが稼いだやつを息子にまるまるやってしまうと、これは社会的公平として大きな問題ではないかという問題もありますよね。そういうことがあって、今の問題はいずれここで根本的に議論しなければいけない。今日はちょっと時間が足りませんけれども、おそらく税調としても、資産段階の再分配、これを強めようという意見が前から出ていますから、井上さんがそれに対して真っ向からご批判があるのは当然だと思います。また議論しましょう。

ただ、ロシアと一緒にされるとちょっと困るんですがね、全然違いますから。でも、それもまた一つの視点だと思います。

もう一つぐらいどうですか。どうぞ。

井戸委員

資料で27ページで「世帯主の年齢階級別貯蓄の現在高」。平成9年の60歳以上の割合が47.5%が平成15年で54.6%。6%上がっているんですね。これをどう見るのかなというのが私の疑問で、一つは介護保険制度ではないか。介護保険制度で、本来もっと負担しなければいけない人たちが、負担しないでも済むようになってしまっているのではないかというふうに見るのかどうか。これは私の感想だけ述べさせていただきます。

石会長

介護保険が入ると高齢者の貯蓄が高くなる……。

井戸委員

例えば、特別養護老人ホームなどに入りますと、食事などのサービスを受けるのですが、それが、自分一人で暮らしているよりも安くて済むんですよ。だから貯金がたまるのです、年金など。

石会長

それだけで全部説明できるかどうかわかりませんが、そうですね、調査課長、少し研究しておいてください。今みたいな質問が出たから。

井戸委員

つまり、ここのところをきちんとしておかないと、高齢者に対する課税の強化をしていいのかどうかとか、その辺の議論が明確にできないのではないかと思うのです。

石会長

なかなか興味深い問題提起ですが、今日、すぐさまお答えできるかどうかわからないけれども、皆さん考えてください。だんだんその年になりますからね、我々も(笑)。

すみません、もう一つ大きなイッシューが残っておりますので、少し先に行かせていただきます。金融所得課税でありまして、税制第一課長の永長さんと、山根市町村税課長から、おのおの、手短にご説明ください。

永長税制第一課長

「基礎小24-4 金融所得課税(国税)」という資料でございます。1ページ目、2ページ目にございますような状況のもとで、3ページ目のような、いわゆる制度の簡素性に軸を置いた改正を行いました。

4ページ、5ページにあるような状況でして、改正税法・税制度、マーケットさらにユーザーにスムーズに受け入れられているかなと存じます。

6ページ、7ページが現行制度でございますが、課税の一体化ということで8ページ、今年の6月に金融小委で報告書をまとめていただきました。我々、これを憲法のように思っておりまして、それを踏まえて、9ページ、10ページ、具体的に課税方式の均衡化、さらには、番号を使った損益通算を現在制度設計しているところでございます。説明をはしょりましたが、制度の信頼性も大切でございますし、さらには、実際関係方面のコスト、ユーザーのニーズ、こういったものを踏まえまして、現在、検討している。適宜、その進捗状況についてはご報告したいと思います。

以上でございます。

石会長

検討の9ページあたりをさらっとご説明ください。初めて聞く人はわからないかもしれないから。

永長税制第一課長

さらっとし過ぎまして、すみません。課税方式の均衡化、今、それなりに揃えてはきていますが、まだ細かなところで均衡化が十分でないということで、一つは公社債の譲渡益でございます。これを20%申告分離にしたいということです。ただ、課税のグループに入れますと、支払調書、こういったものを出していただく必要があるということでございます。

さらに、配当。原則総合課税を、20%申告分離にしたい。これにつきましても、例えば、事業所得性を踏まえて現在措置されている負債利子控除・配当控除、こういったものをどのようにすればよいのか。さらに利子所得、これも今、一律源泉分離課税になっているわけですが、少なくとも損益通算を適用しようとする方については、選択して20%の申告分離課税。申告ができるようにしてやる必要がある。これも支払調書、先ほどの配当もしかりでございますが、システムの構築が必要になってくるということでございます。

外貨預金の為替差益、現在総合課税になっているものも、金融関連だということで20%申告分離にいたしたい。ただ、為替差益を出すためのレートをちゃんとわかるようにしてもらう必要があります。また、変額保険等、金融所得類似の保険収益、これについても関係方面との相談が必要。

次のページは、何回かご覧いただいています。次の11ページの具体的なポンチ絵で見ていただきますと、番号を納税者の申請に応じ、場合によっては納税者自身に番号を言っていただいて、二重付番になっていないかというチェックだけを当局がすることも含めたいと思っております。実際、取引の相手方から情報資料が出され、申告で出てくる情報と税務当局において突合する。その場合に番号を使わせていただく、こういうことでございます。

最後、10ページの一番下でございます。これは金融小委報告でも出ておりますが、損益通算の限度額。まだ「〇万円」となっております。諸外国の状況、ほかの控除との均衡、こういったものと現行を考えて決めてまいりたい、このように考えております。ちなみに、引ききれなかった分については繰越しができるようにしようと。こういった議論もしているところでございます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

では、山根さん、さらっとお願いします。

山根市町村税課長

最後の資料、「金融所得課税(地方税)」の1ページをご覧いただきますと、住民税の所得割以外の金融課税でして、これは道府県民税ということになっておりまして、さらにその収入の一部を市町村に交付するということでございます。現在3種類ございまして、利子割、配当割、株式等譲渡所得割。下の2つは15年度改正で導入されまして、今年から収入が始まっております。

2ページは省略しまして、3ページをご覧いただきますと、利子割の仕組みということで、利子につきましては金融機関の所在地で課税するということでございます。

4ページをご覧いただきますと、残り2つの配当割、株式等譲渡所得割の仕組みでございます。こちらにつきましては、住所地の都道府県で課税することと、一定の場合には申告不要の選択が可能というような仕組みになっております。このような課税の仕組みの違いを、今後の金融所得課税の一体化の中でどのようにしていくかというのが課題になってこようかと思っております。

以上でございます。

石会長

ちょっと急がせ過ぎまして、すみません。金融所得課税の一体化、今後、いろいろな意味で問題を持ってくると思います。何かご意見を伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ、佐竹さん。

佐竹委員

損益通算の件で、〇万円という設定です。この制度自身、本質的には「貯蓄から投資へ」という政策要請だと思いますけれども、本格的な形でそうするとすると、例えば効果的な額はどのぐらいだというシミュレーションか何かあるのですか。

石会長

たぶん、腰だめになると思いますけどね。アメリカが3,000ドルなんです。ということは、30数万円という感じですね。それくらいが一つの参考かなと思うけれども、それをどのくらい上回るのか下回るのか。そんな100万も200万もという感じではないですね、感じとしましては。何かご意見ございますか。よろしゅうございますか。

ほかにいかがでしょうか。草野さん。

草野委員

ちょっと勉強不足で申し訳ないのですけれども、私どもは総合課税化ということを一貫して言ってきましたし、そのために納税者番号制等も含めて早期に導入しようという主張で来たわけです。ここで「金融所得課税の一体化」という言葉を使われていますけれども、よく見ると、総合課税から分離課税にということがあちらこちらに出ているのですが、この辺はどういうふうに考えたらよろしいですか。

石会長

逆に草野さんにご質問したいのは、総合課税はそのとおりアメリカみたいにやっていますから、実例はあるのですが、最高税率がまだ50%ですよね。そこで金融所得まで全部入れ込んだ総合課税というのは、なかなか難しいのです。というのは、税引き後の手取りが半分になってしまいますから。そういう中で総合課税をやるのだったら、最高税率を下げるとか、すべからく連合あたりは、すべての所得を入れてそれで50%かけろというご主張ですか。

草野委員

50という税率は別にしまして、考え方としては、すべての所得を、金融所得も資産所得も、いわゆる給与も含めてやるのが本来の筋ではないかということです。

石会長

それは戦後一貫して議論してきましたけれども、さはさりながら今言ったように、金融所得、資産所得というのは、結局、キャピタルフライトみたいなものが起こってくるという形で、ある意味で知恵なんですよ、分けてかけようというのは。ただ、今みたいにばらばらの金融所得の分離を、やはり一本化しようというので総合課税の方向なのです。だから総合課税に向かっての一歩。ただ、最後までやらないというあたりがミソなんですけどね。これは、つど議論しなければいけないと思いますが、ご意見はわかります。

尾崎さん、どうぞ。

尾崎委員

金融課税というより貯蓄の話ですけれども、「実像」把握で検討をしてきまして、年功序列制とか終身雇用制とかが崩れていくという話がありました。これは、高齢者ではなくて若い人に有利な話です。それが「実像」ですね。高齢者と若い人の所得の差が縮まっているという話。現に球団を買うような人は若い人ですよね。

ところが、実際には金融資産というところで見ても、高齢者のほうが増えていますよ、こう言っているというのは何なのでしょうか。ちょっと「実像」把握で言っていた話と違うことで、何かとらまえ方に問題があるのか、「実像」把握がおかしいのか。それとも、年寄りはちまちまと貯めて、若い人は大いに使って、結果として高齢者に課税せよと、こう言っているのか。どれなのでしょうかね。

石会長

いやあ、難しいですね。どこの層の誰に……。例えば、楽天だ、ライブドアみたいな人に目をつけるのか、それとも別なところに目をつけて、フリーターとか何かに目をつければまた話は違うでしょうしね。今の尾崎さんの問題提起は面白いけれども。

引き続きこれを研究課題とするような意図はありますか。そういう問題を出されましたから、みんなで少し考えてみましょう。難しいですね。

どうぞ。

長谷川企画官

1点だけ、相続税・贈与税関係の資料の24ページをご覧いただきますと、これは「実像」からとってきたものです。下の左側の表は「実像」そのものをとってきたものですけれども、それで見ていただきましても、やはり高齢層ほど、実物資産、金融資産というものが多く蓄積されている。ただ、バブルの崩壊で、89年、94年、99年と見ますと、どの世代も徐々に資産は減ってきておりますけれども、傾向としては、高齢層がなお蓄積はあるということが「実像」でも指摘はされているところでございます。

石会長

これ、20代と60歳代以上のフローはたしかに年寄りのほうが多いよね、ここに出ていないけれども。そういう意味では私の印象では、尾崎さんがおっしゃるほど若者が頑張っているとは思っていないのですけどね。その辺、もう少し整理してみましょう。いろいろな論点があります。

どうぞ。

井戸委員

私も去年6月のときに申し上げたと思うのですけれども、ここの金融番号についてのイメージを見ますと、我々、答申を出したときは何も税務当局が付番するというところまで決めてなかったはずなんですね。この資料を見ますと、「金融番号(イメージ)納税者の申請に応じ、税務当局が付番」と書いてあります。まあ、税務当局が付番してもいいのですけれども、税務当局が勝手な番号をまた新しくつくるのだろうか。せっかく住民基本台帳ネットワークシステムができて、住基コードというのもつくられているにもかかわらず、それをあえて使わずに、税務当局が付番を、あえて無駄な仕掛けをどうしてつくるのだろうか。

しかも、納税者から番号の選択はできないと言われますけれども、住民基本台帳コードも番号の選択はかなりできるのです。だぶってなかったら、いくらでも選択できるわけです。これは実を言うと税務番号でも同じことなので、だぶっていたら選択できないという話と全く同じですよね。なぜ、そういう無駄な仕掛けをつくらなければいけないのか。私、全く理解できないです。これは、この間も強く指摘した点ですが、どうして社会資本全体として合理性のあるシステムを採用しないのか。それは非常に強く主張したいと思います。

石会長

ご指摘いただいたあと、金融所得課税を基礎小でいろいろ研究した中でこれが出てきたわけです。それでは、永長さんから直接説明していただいたほうがいいですね、事の成り行きは。

永長税制第一課長

少なくとも現行の住基番号制度は、民間が使えないという問題がございまして……。

井戸委員

法律を変えればいいんですよ。

永長税制第一課長

私は今、「現行の」と申し上げたのですが。

井戸委員

使おうという意図がないから使えないと言っているだけであって、そもそも金融番号制度だって法律の中で位置づけるのでしょう。だから法律を変えればいい話だし、それで位置づければいい話。今の話は全然聞こえません。

石会長

簡単に変えられますか。いろいろ反対の市町村とかありますよね。

井戸委員

それは議論をしていかなければいけない。

石会長

いや、だいぶ議論して、我々、住基番号は……。住基番号をネットワークとして使えるかどうか、それは法律の問題を改定すればいいのでしょうけれども、ちょっとそれを心配しているのは事実です。ただ、これはごく小規模の、本当に何百人ぐらいまでしかカバーしきれないような。本格的な住基番号みたいなイメージではないんですよ、これは。

永長さん、何か続けることありますか。

永長税制第一課長

住基番号制度についての議論はここではなかなかしにくいかなということもあって、現行の制度では使うことができないということでございます。我々、このシステムをなるたけ早く導入したいという気持ちもございまして、今、会長がおっしゃったように、そういう緊要性もあるということで、ここではイメージということで税務当局が付番している。そういうイメージでおるということでございます。

石会長

ただ、腰引けてますよね。

井戸委員

私は、だからこそ逆に、こういう便宜を与えようとしているときにそういうシステムを活用していくのだということでいかないと、そもそも納税者番号制度なんか議論できなくなってしまうのではないでしょうか。それでいいのか、ということも言いたいところなんですね。

石会長

おっしゃるとおりです。これはまたこの時点で議論しなければいけないと思います。

井戸委員

それともう一つ、住民税をどうするかということとの関連もありまして、住民税での管理を考えたときは住民コードを使ったほうがよほど効率的なんですね。そこも考えておく必要があると思います。

石会長

ただ、私のところにも膨大な資料、反対の、プライバシーだ何だかんだというものがいっぱい来ますよ。

井戸委員

それは私のところにもいっぱい来ます。ただし、我々は去年、条例改正をしまして、税でかなり利用するようなことを踏み切ったのです。ですから、どういう利便があるんだ、どういうメリットがあるんだ、何が問題なんだということを明確に説明していかなければいけない。田中知事のやり方というのは、要は内部管理者になって、そこに侵入したから侵入されたんだというような、でたらめな実験を当たり前のように言われていますから、そんなためにする議論で惑わされてはいけないのではないか、こう私は強く主張いたします。

石会長

わかりました。この点、重要だと思いますから、何か続けてご意見ございますか。

どうぞ。

佐竹委員

住基関係は、私、市町村ですから。実際に最初の取っかかりのところで、今、井戸委員がおっしゃったとおり、やや科学的でない、感情的な議論、国民の間にそういうイメージが植えついたということ。

もう一つは、なかなかこういうことは言いにくいのですけれども、私もたまたま住基カード導入のときに、記者会見で、技術論的に言いますと侵入されないネットワークはあり得ない。100%安全だということ自身が非科学的であって、問題は、ネットワークがある意味で通常の状態でない、あるいは侵入され、個人的な損益がいろいろ発生した場合の保障補償措置をきっちりしたほうが、はるかに論理性があって説得性があるのではないか、と。マスコミはみんな、全くそのとおりだ、100%安全と言ったから我々はそれに対抗しているのだ、と。そんな感じがやや見えたのですけれども、この問題は、相当技術論的なことをきっちり踏まえて科学的にやらないと、今、井戸委員がおっしゃったとおり、あれは今のままでは全く使いものにならない。

井戸委員

そんなことはない。使えますよ。

佐竹委員

使いものというのはそういう意味ではなくて、今のままでは有効活用されていない。ですから、今お話があったとおり、それを有効活用するような形の政策誘導は必要ではないかということです。

井戸委員

我々だって、現実にちゃんと使っているんですよ。使おうとしないからいけない。

石会長

いずれにいたしましても、これは、来年4月から番号まで入れて強引にやろうという話ではありません。番号をバックアップするにはどうしたらいいかという話ですが、せっかくある番号を使ったらいいではないかというのも一理ありますし、これに対して非常に恐怖感を覚える人もいるかもしれない。そういうことを踏まえて、今、事務当局は、いろいろな金融機関や何かの意見を聞きながら話を進めておりますから、番号制に対する感覚のほうも少し情報を集めてもらって、我々として番号についてしかとしたスタンスを……。そのときはぜひ兵庫の実例も踏まえて、もう一回ちょっと具体的に、どうやって法律をクリアできるか等、あるいは皆さんの反応を。番号についてはかなり税調でも関心をお持ちだと思います。

それから、この間、財制審で私は税調の報告をしてきましたが、なぜこんな及び腰の番号を入れるのだという声も結構あったりしまして、これは我々として悩ましいですけれども、これから議論しましょう。よろしゅうございますか。

どうぞ、千速さん。

千速委員

先ほど尾崎さんがご指摘になったのと同じだと思いますが、24-1の資料、27ページの「世帯主の年齢階級別貯蓄の現在高」という表があります。平成9年、平成15年。それと24-4の1ページ、「家計貯蓄率及び65歳以上人口の割合の推移」という表があって、これをどう理解したらいいのか、今度教えてくれませんか。次回で結構ですから。

石会長

どの辺が一番問題とされているわけですか。

千速委員

高年齢の60歳以上の方の貯蓄が急激に増えているんですね。

石会長

先ほど井戸さんがおっしゃったことですね。

千速委員

ええ。一方で、24-4の資料の1ページで見ますと、ご承知のように、65歳以上の人口は増えてはいますが、家計貯蓄率はどんどん下がる。これ、65歳以上ではないと思いますが、家計貯蓄率はですね。

石会長

こちらはフローですね。片や現在高ですから、ストックでたまっている部分ですね。

千速委員

ええ、片一方はストックだと思いますけれども。何となくよくわからない。後日で結構でございます。

石会長

わかりました。何か補足の資料がありましたら、ご用意いただくとして。ただ直観的には、相対的に貯蓄残高を持っているご老人がどんどん増えてきて、それが社会にたまっている。

どうぞ。

永長税制第一課長

今おっしゃったように、フローとストックでございます。こっちの表はフローでございまして、要するに、貯蓄取崩し世帯が多くなれば貯蓄率も下がる。右肩上がり経済でなくなったので、貯蓄率も下がる。そういうフロー。年々、資産の純増分がだんだん減ってきたという、そういう数字でございます。片方、こちらはストックでございます。もちろん、お年寄りの方が増えれば、この一番黒いところもストックとしてシェアが増えていくということもあろうかと、こんなふうに思います。

石会長

まだおありかと思いますが、だいぶ時間も過ぎました。ここで終わりにしたいと思いますが、今日の反省は、ちょっと消化不良の面もある、あるいは、議論の時間が十分に確保できなかった面もあるので、今後、いっぱい同時にテーマを扱うときは、もう少し事務局のほうで、さらりとし過ぎないで、コンパクトに、重点的にということと、スピーカー相互のアロケーションが公平になるとか、いろいろ工夫を。私も責任上、事前に調整をいたしまして、次回以降有効に使いたいと思います。

あとの予定を申し上げて散会にしたいと思いますが、総会は11月9日(火曜日)になりますが、3時から行いたいと思います。所得税、法人税、審議を行いたいと思いますが、実はその前に基礎小をやってこの辺の論点を整理して、それを総会でという形なので、基礎小の方は、申し訳ございませんが、2ラウンド、1時から5時になるかもしれませんので、時間をあらかじめご予定ください。

その前に、基礎小は2日(火曜日)午後2時から、フリーディスカッションで、来年度税制改正を含めて今後の税制のあり方を自由に討論して骨格を決めていきたいと考えております。これには、これまでの主要な論点を整理したような資料を出してもらいまして、それにつきまして整理をしつつ総会の論点をまとめていきたい、このように考えております。

では、今日は活発なご意見をいただきまして、ありがとうございました。これにて終わりにしたいと思います。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。