総会(第17回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成16年10月15日(金)16:11~16:28
〇石会長
もうお聞きのとおりでありますから、私のほうからもう一回云々かんぬんという話はないんですが、後でご質問があれば、Q&Aの時間にしても結構です。そうは言っても、僕がどういう感想を持ったかということを少しお話しするのも筋かと思いますので、二、三、今日の審議を踏まえまして、今後どういう形で進めていくかということにつきまして、考えたことを申し上げます。
資料のことを説明しますと、マクロ的な視点から、国がいかに大変で、税収がいかに集まってないか、これは危機的な状態だと、こういう話ですよ。これはもう当然の話として税調もしなきゃいけない。ただ、受けとめる側から言うと、家計は、つまり担税者あるいは納税者の視点からみると、当然大変だというイメージがつくわけですね、国のほうの借金を直すということになると、やっぱり増税というイメージでいきますから、そこの、言うなれば直截的というかな、感情的に大変だということ。それから、やっぱり技術的にみて、あるいは冷静にみて、これからの議論をするというと、この辺のギャップがすごくまだあるんですよね。おそらく、その受益と負担のギャップを解消するというような視点からだんだん詰めていかなきゃいけないと思いますけど、まあ税調として、その辺をどういうふうな形で今後具体的に議論を進めていくかということは難しい問題ですけど、やらなきゃいけませんね。で、端的な例が軽減税率ですよね。あそこのギャップはですね、もうちょっと情報が必要ですよね。例えば、まあ今日はたまたまコメなんていう話が出て、生活必需品の例を出されたんですけど、コメというのは今はそれほど消費量多くないと大宅さんが言ってたけど、まあめん類とかパンなんだよね。それも一つの例ですが、実態面として、食料品の区切りの仕方なんてそう簡単じゃないんですよ。それを我々は知ってるから、技術的な面のほうが頭にきて、負担軽減に使うっていうほうは極力背を向けがちなんですが、そうは言っても、今日は何人かの人からご指摘がございましたように、国民的な感情からいってね、毎日毎日の食べ物についてまでどうじゃという議論になったときには、ある程度の、それを拒むにしてもですね、しっかりした議論、しっかりしたデータが必要だと思います。最後に事務局にお願いしたんですけど、まあその辺の情報を、各国は幾つかの経験を踏まえてますからあるんですよね。例えばスウェーデンへ行ったら、こんなに厚い軽減税率、食料品の定義をしたような、大きな冊子のマニュアル本みたいのがあってですね。大変なコストだと言ってますから、まあそれを踏まえてまでやるというのなら当然やるべきでしょう。だから、そういう意味で少し我々としても、もう少し実態面に即して、我が国のカルチャーに即した形で議論し、かつ軽減税率の食料品というのは3割ぐらい、課税ベースに占めてますから、それを軽減税率にしますと税収が上がってこない世界で今後、少子・高齢化の財源としてどうかこうかの議論がそこは出てきますので、しかとその辺はこれから議論したい。
それから、今日、歳出のほうの目安についても幾つか議論出ましたけど、大胆な見直しといったときの「大胆な中身」は何だということも、折りに触れて議論しなきゃいけないと思ってます。佐竹さんのほうから社会保障費じゃないかという話が出、かつ井上さんのほうから人件費だという話も出ましたように、まあ幾つか項目が出てくれば、それなりに大胆な見直しの視点というのも固まってくるのかなと、このように考えております。
それから環境税、残念ながら少し時間切れになりましたけど、これまた真っ二つに分かれておる議論でございまして、今日はまだ前哨戦であって、本格的に土俵にのぼって、賛成・反対の各論者が議論を展開してませんけれども、まだこの時点で本格的にというよりは、ちょっと先だと思いますけれども、いずれまた議論はしなければいけないかと思ってます。
今日はお聞きのとおりでありまして、初めは議論が少し少ないかなと思いつつも、後半は大分盛り上がりまして、特に総会のみにご出席の委員からは、基礎問題小委員会でやりました議論とはまた変わった視点からの議論があって、非常に生産的であったと思います。これをいかにこれから税調の議論としてまとめていくかというのは、これからの仕事だろうと思ってます。大変だとは思いますが、やらなきゃいかんなと思ってます。
というわけで、それは感想でありますので、あとなにか個別のことについて、税調どう考えてるんだということがございましたらお答えします。
それから、今後の日程等々の日程表もお渡ししましたし、やるべきこともお話ししましたから、ご説明することないと思います。あとは小委員会を2度、それから11月初めぐらいになると主要な税の論点はもう出揃いますから、いずれ中旬ぐらいにはもう起草会合をつくって、来年にかけての税制改革・改正の答申をつくれる段階にいずれくると思ってますので、そういう段取りであります。以上です。
〇記者
今、会長さん、ご指摘があったように、軽減税率等のギャップが相当あったということで、今後そのギャップを埋めるべく情報をもっと集めなきゃいけないと。具体的にどういった情報が必要なんでしょうか。
〇石会長
軽減税率を言うときの一番のコストになると思ってるのが、やっぱり納税者側、事業者側の、要するに納税事務ですよ。今は単発で5%でポーンと納められますけどね、これが各段階で、例えば2段階になり、3段階になったとき…まあ2段階にしてもいいですよね、その各税目ごとの商品のくくりから、これさまざまな面倒くさい煩雑な事務が入ってきてます。それから、さっき言ったように、これは例えば低いほう、これは高いほうという仕切りね、これはそう簡単でないこともある。それは、マクドナルドを中で食うとレストラン並み、外で食うと食料品というか、軽減税率だというような話の一例で分かりますようにね、さまざまな便法というか抜け穴が出てきますよ、それをやると。それから、もちろん一番の気になる点は、この間ちょっとマスコミの人が言ったけど、新聞を入れろとか、軽減税率にね。テレビの放送料だとか…テレビは放送料払ってないか。あるいは広告はどうだとか、まあさまざまな形でどんどん出てくる。例えば売上税で中曾根さんのときに挫折したときは、例えば非課税品目は最初、7つか8つだったのが51か52に増えちゃったんですよ、そのいろんな交渉によってね。それで挫折したように、そういうことになりかねない面も、どうやって防ぐかと。それは面倒くさい点なんです、そこはね。
だから、まあ高くなれば配慮という議論をこの前、基礎問題小委員会でしましたけど、次の上がるような予想される幅のなかでまでやる必要があるかって、これから議論を呼ぶと思います。今言ったようなコストがどのぐらいかかって、それを乗り越えてもやるべきかどうかの判断をしたいと思います。
〇記者
そうすると、財務省なり税調から、そのコストは大体どのぐらいかかるかという数字みたいのを出すんですか。
〇石会長
難しいですね。そういうコストじゃないよ、僕が言ってるのは。それは出るかもしれませんよ、計算すると。でも、「コスト」と言ってる意味は、今言った「食料品」の仕分けにかかる労力と時間とエネルギー、これらは計算不可能なほどのコストがかかってるという判断ですよ。それから事業者のほうもね、単一税率の時と比べて、複数税率になったときにはおそらく数倍、いろんな労力がかかるだろうっていうのもコストだけど、これまたあらゆる業種を全部束ねて、何百億円なんて計算できませんからね。まあそれはある意味で定性的になると思いますけど、実例を挙げていくとかなり大変だなということが分かってくると思います。それを乗り越えてやるか、当面ちょっと見合わせるかぐらいの議論は十分出来るだけの資料は集めたいと思います。
〇記者
委員のなかから、食料品を上げることは納得出来ないと…。
〇石会長
ああ、上げたときね。ああ出ましたね。当然ですよ、あれは。出てくる話ですよ、それは。
〇記者
ええ、まあ当然だと思うんですが、その辺、やや感情的なところというのはどうやってこれから…。
〇石会長
だから今言ったように、大変だよと、実例を踏まえていって、これを乗り越えてまでやりますかというところで納得が得られるかどうかじゃないですか。おそらくその資料がないとね、議論は成立しませんから、少しテクニカルな意味で、事務当局に問題を整理してもらおうと思ってます。なんだったら、またその辺でどれだけの時間、エネルギーを使っているかなんてことを、海外の実態から見てもらってもいいと思ってます。
〇記者
所得税の控除の話ですが、いわゆる事業者、サラリーマン、給与所得者と事業者の不公平感、まあ古くて新しい話ですが、ここも同時にやっぱり見直すべきだということが出ましたたが。
〇石会長
ありましたね。このクロヨン、トーゴーサンを含めての、このクロヨン、トーゴーサンという言葉はだんだん死語化してますが、それだけやっぱり関心もなくなってきし、実態面も昔に比べれば改善されてるんだと思いますけどね、ただ、税理士の方から、事業者を面倒みてる人から言うと事業者はそれほど漏れてない、それよりも3割も給与所得控除で引いちゃってるサラリーマンのほうが引き過ぎじゃないかっていう意識を持ってますよね。で、逆は逆なんだよね。やっぱり自営業者の人の、プライベートなものまで公でやってるのなんかをみてるとどうかねという議論があるから、これも少し、ただ、これもデータで議論は難しいんですよね。ただ、明らかなことは、サラリーマンのなかに実額控除を入れてくれという声もあるので、実額控除というのを一応、我々も検討しようとは思ってます。これも既に答申、過去の報告書に載ってると思いますが、今言った所得捕捉の問題等も絡ませてやらなきゃいけませんから、これも少し実態面でなにか資料があればと思ってます。ただ、難しいですよ、この捕捉漏れの推計は僕もかつてやったことありますけど。
〇記者
最後に酒税なんですけれども、まあビール、発泡酒、最近はエンドウマメから作ったやつとか、企業の技術革新というか、その努力のほうが先へいって、税制が後から後手後手になっているという感じがあって、その辺の酒税の定義というか、その辺を見直すべきだということでしょうか。
〇石会長
まあそれは前から関心持ってるんですよ。で、10種類に分かれてて、かなり細かくて、その間の税率格差等々あるようなのがいいのか、もうちょっと束ねてやるほうがいいのか。だから、おそらく今のままですと、また技術革新でさまざまな新商品も出てくると思いますから、まあどれがいいのか。少し前広に議論しながら、ある方向をなるべく早く打ち出したほうが、業界の方のためにもいいんだと思いますけれども、ちょっとそれはこれからの議論を待つところが大ですね。
〇記者
児童、子育て世帯への税制なんですけれども、今も児童扶養控除とかあるんですけれども、その一方で児童手当という形で、まあ所得の比較的低い層には年額6万円とか、第三子12万とか配られてるんですけれども、そういう社会保障の給付とのバランスとか、そういうのは考慮するんでしょうか。
〇石会長
どっちかでやるんですよ、どっちかで、本来的に言うならね。それで、税を使うときの最大の問題は、税を払ってない人に恩恵がいかないということですよ、いろいろなことを考えても。で、おそらく課税最低限下に落っこちてる方に本当の子育ての費用というのが必要なのかもしれない。それだったら歳出でやるべきですよ。ただ、歳出の最大の問題はばらまきになるということですね、この財源が不足するなかで。ただ、諸外国の例を見てますと、かなり歳出面での児童手当、これはやってるところ、多いんじゃないですかね。ですから、僕はどっちかに限定して両方やる必要はないと思いますけどね。それもこれからの議論だろうと思ってます。ただ、税の世界でやっぱり扶養控除という、要するに扶養の数が多い人ほど担税力は減りますから、その調整があります。今おっしゃったやつは地方でやってるケースでしょう、おそらく児童手当的なのは。6万円とか、第二子が何とかっていうのは。それとも国でもやってるか、児童手当みたいのを。
〇事務局
国の制度としてもやってます。
〇石会長
入ってるんだな、そうすると。そのことも、あまり脈絡なく、地方と重複しながらやるのもあまり賢い話じゃないから、そこは明確に子育て支援というもので複数の制度の間の調整とか、税と支出の間の調整とかってしっかりつけるべきでしょうね。そこはまだ、僕は不十分だと思いますね。だから、税でやるときも、それをしかと見て、仮に今日の議論にもあるように、「児童税額控除」なんかやるときには、その辺もしっかり見定めての話でしょうね。
〇記者
環境税ですが、今日の議論は議論というよりもご意見の主張、まあ基本的なことの確認ということだったんですけども、今年はとりあえずは環境税の議論は終わりという感じでしょうか。
〇石会長
後ね、環境税を本格的に集中審議する時間というのはあるかと言えば、それだけとれるかどうか自信ないんですよね、これからの項目を見ますとね。と同時に、来年4月、税制改革議論にも当然入ってはいますけれども、正直言って、すぐさま議論するのかということになると、中身がない。それからこれからのさまざまな関係者等のヒアリング等とかいって、時間的にちょっと不足かもしれませんよね。しかし、今日の税制三課長の話にもありましたように、ステップ2にもう入るわけですね。だから、遅ればせながらというか、少し時間を早めながらこの議論を本格的にやらなきゃいけないという義務感持ってるわけです。しかし、あまりにも環境が詰まらないなというのでちょっとため息ついてるんです。今日もまさに勝手に双方が言い合ったというだけでありまして、事柄の難しさをちょっと示唆した程度で終わってしまいましたけれども、来年度の税制改正の答申等々には、当然、環境税にも触れると思いますよ。触れざるを得ないと思います。それは事柄の重要性と、今後の取り組み方等々について触れるというのが第一であって、来年即やれという項目と比べれば、どんどん差が出てくると思いますけどね。ただ、もう環境税も一応税調として受けとめたという視点は出せると思います。
(以上)