第17回総会 議事録
平成16年10月15日開催
〇石会長
それでは、時間になりました。第17回目になりますが、総会を開催いたしたいと思います。
これに先立ちまして、10月8日と12日に基礎問題小委員会をやっております。そこで個人所得課税と消費課税、2つを議論いたしましたので、今日はその資料を紹介しつつ、議論の中身をここで再度整理してご議論いただきたい、こう考えております。細かく申し上げますと、所得税、消費税、酒税、環境税、この4つがございますので、おのおの分けてご説明いただいて、そして議論いただく。つまり4つセクションをつくりたいと思っております。
では、早速でありますが、時間もございませんので、始めましょう。
最初に、個人所得課税で、税制一課長の永長さんと市町村税課長の山根さんから、おのおのご説明を国・地方についてお願いいたします。
では、永長さん。
〇永長税制第一課長
お手元の「所得税関係」という資料、よろしゅうございますでしょうか。
早速でございます、メッセージをめくっていただきまして、1ページ、税収の推移でございます。いろいろな減税をここ10年間やってきているという表でございます。税収だけ申し上げますと、ピークが元年、2年、3年、このあたり20数兆円の所得税税収があったわけですが、現時点では見積もりで13.8兆円という形になっております。バブル最盛期、2年、3年の26兆円から、平成9年、19兆円あたりございますが、これまでで大体あのバブルの部分が剥落したかな、一段落したかなと。その後、平成12年、13年と若干山がございます。これは郵貯の大量償還が3兆円ほどあったということで、そういう意味では棚ぼたがあったというわけでございます。現時点では13.8兆円という姿になっております。
さらに3ページでございます。具体的に個々人の方が所得税、個人住民税をどのように払ってきておられるかということを、給与収入700万円、500万円のケース、次のページには、独身の場合を書いてございます。ひと渡り目を通していただければと思います。
次に6ページでございます。所得税計算、簡単なポンチ絵でございます。一番左側にいわゆるグロスの収入がございます。一般の事業者の場合はこれが売上に当たるわけです。そこから給与所得控除を引きます。現在、給与収入約220兆円ほどございますが、給与所得控除ということで、60兆円、約3割を差し引くことになるわけでございます。その結果、収入から所得――いわゆる利益でございます――が出る。この所得から人的控除等の控除を行いまして課税所得というものが出ます。この課税所得に税率をかける超過累進課税が行われます。その結果、右から2列目ですが、算出税額というものが出されます。そこから、定率減税とか住宅ローン減税の税額控除、こういったものが行われて、最後に納付税額が出る、このような計算過程でございます。
最初に、所得計算。収入から所得を出すその代表例として、給与所得控除、次のページ、さらに8ページをご覧いただきたいと思います。グロスの収入から経費等を差し引くということで給与所得控除が行われております。現行、平成7年、これが一番上の太い線でございます。昭和48年、実はこの次の年、49年分から、最低保障額という制度ができたものですから、たまさかこういう48年の例を挙げております。前回の基礎小では、48年当時、先ほど3割差引になっていると申しましたが、その数字がどれくらいだっただろうと。20数%、25%台でございました。昭和48年当時のサラリーマンの平均収入は140万円半ば、146万円でございました。現在、この数字は447万円。これは、いろいろな方々のすべての給与を平均した場合に447万円、このようになっております。
若干飛ばして恐縮でございますが、11ページでございます。給与所得控除についての税調でのご論議でございます。アンダーラインのところの2行目、「給与所得者の必要経費に関する概算的な控除としては説明しきれない高い水準と言える。控除額の上限がない点も問題である」、このようなご指摘がなされております。
これに関しまして、「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」ということで、16ページでございます。これは今年の前半ご論議いただいた実像把握でのキーファクト、そこから関連する部分を抜き書きしたものでございます。「4『日本型雇用慣行』のゆらぎと、働き方の多様化」ということでございまして、一番下の行、「カイシャに依存した経済社会の諸制度の再点検も必要となろう」、このように書いてございます。
いわゆるサラリーマンは会社に従属している、その結果、もらう給料もガラス張りになっている。その見返りと申しますか、経費以上の損金算入が受けられる、フリンジベネフィットも受けている、自分でコスト管理をする必要もなく、納税計算、申告、こういったものも会社任せ。こういう形に今まではなっていたわけです。こういった所得税制度も、「カイシャに依存した経済社会の再点検も必要となろう」ということでございます。
次のページ、「結びにかえて」ということで17ページでございます。「個人による自由で多様な選択をなるべく阻害しないとの観点から、これまで以上に柔軟な発想が求められる。就労面では、多様な人材の多様な働き方を可能とするという視点がより重要となろう」。自立心と申しますか、やる気のある勤労者が自分の可能性を高めてさまざまな仕事にチャレンジする。そういったことを、邪魔にならないというか、応援する、そういった税制が必要になってくるのではないかと考えております。
次の18ページから、先ほどポンチ絵で申しました2段階目の、所得から課税所得を出す、いわゆる人的控除の概要でございます。基礎的な人的控除ということで、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、この3つの控除がございます。そのほか特別な人的控除というのもございますが、人的控除につきまして、過去、政府税制調査会におかれまして、19ページ、中身としては20ページでございますが、人的控除を簡素・集約化していくべきであるというご指摘をちょうだいし、それから21ページ、人的控除の基本的な構造のさらなる見直しということで、はしょって恐縮でございますが、22ページ。家族に関する控除の構造の見直しということで、3つの考え方が基本方針の中で示された。先ほど申し上げた、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、この3つの控除を、例えば考え方1では、家族控除というのに配偶者控除と扶養控除をまとめる。さらには、配偶者控除をやめて扶養控除だけにする。さらには、児童の扶養について税額控除にしていく。所得控除の場合は、例えば同じ38万円を引きました場合には、10%ブラケットの方には、それによって3万8,000円の税金が安くなる。仮に20%のブラケットの人にはその倍の7万6,000円が安くなる、こういう姿になる。税額控除にいたしますと、所得水準にかかわらず税負担の軽減が行われる、このような差があるわけでございます。
これにつきましても、24ページ、先ほど申し上げた「実像」把握、ピックアップいたしました。人口減少社会、いわゆる少子高齢化のグラフをつけております。さらに25ページには、「家族のかたちの多様化」ということで、家族類型別世帯数の推移というグラフがついております。昭和30年当時には、夫婦と子供で世帯があるというのが全体の4割以上。その数字は実は50年代半ばまであまり変わらないわけですが、一番右のところ、2020年ではこの数字が全体の4分の1になるということでございます。
次のページ、「結びにかえて」ということでご指摘いただいております。少子高齢化を何とかしなくてはいけないということと、就労面では、多様な人材の多様な働き方が可能とならなければいけない。女性、高齢者の労働力がわが国社会では大変重要になっていくであろう。そういった中で少子化を迎えている。夫婦共働きであっても片働きであっても、場合によってはシングルマザー、シングルパパの場合でも、子育てで苦労している人にはできる限りの手助けをしなければいけない、こういうような考え方でございます。
27ページ以降、税率でございます。先ほど申しましたように、所得から控除して課税所得を出し、それを税率にかけるという段階がございます。累々、税率のきざみを大きくしてきまして、以前は15段階ありましたものが、現在は所得税10%、20%、30%、37%の4段階。その下のグラフでございます。住民税は5%、10%、13%の3段階、このようになっているわけでございます。
これに関しまして28ページ、それぞれのブラケット、10%、20%にどれくらいの方々が属しておられるのかというのを整理したものでございます。日本は10%、最低税率のところに約8割の頭数の方が入っておられる。基礎小で、イギリス並みに10%のブラケット、1割ぐらいにしたらどのくらいの増税になるのかというご指摘がございました。約7兆円くらいのかなりの増税になるという格好でございます。
次の29ページに、これはブラケットほどではないのですが、収入ごとに応じまして、下が、どれくらいの頭数がいらっしゃるのか、その方々がどれくらいの所得税を納めていただいているのかというのを、200万円、400万円、600万円、800万円、1,000万円、2,000万円、2,000万円以上、このように区切って整理をしております。当然ですが、頭数として一番多いのは数百万のオーダーであります。これは累進構造をとっておりますので当たり前でございますが、1,000万円、2,000万円、2,000万円~、右の3つを足しますと約半分、このような格好になっているわけでございます。
30ページ、税率構造を反映した実効税率、国際比較をいたしております。
32ページ、これも「実像」でございます。税率構造を考える際にはいわゆる所得再分配のことを考えなければいけないわけでございます。政府税調でご論議いただきました際には、「行き過ぎた『結果の不平等』、行き過ぎた『結果の平等』に対しても否定的に捉える意識を観察することができる」と。所得再分配を考える際にはこの辺のところも考えざるを得ないのではないかということでございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
引き続きまして、地方の住民税関係、山根さんから。
〇山根市町村税課長
お手元の「個人住民税関係」という資料に沿ってご説明させていただきます。
まず1ページをご覧いただきたいと思います。個人住民税と一言で申しましても、2つ、市町村民税と道府県民税がございます。住民税は、住所を有し、かつ一定の所得を有する個人にかけるということで、その中にもまた2種類ございます。均等割ということで「定額の負担を求めるもの」、現在、3,000円、1,000円、合わせて4,000円となっております。それから、所得割ということで「所得金額に応じた税額の負担を求めるもの」がございます。なお、このほかに金融関係の利子割等もございます。
2ページをご覧いただきますと、税収の推移をグラフであらわしております。住民税は比較的安定性のある税だと言われておりますが、先ほど説明がございましたように、累次の減税や経済環境の変化に伴いまして、11.5兆円あったものが現在8.1兆円程度ということでございます。
3ページをご覧いただきますと、地方の税収に占める住民税の推移でございます。概ね道府県税の2割程度、市町村税の3割程度をこの税で賄っておりまして、いわゆる基幹的な税目と見ることができます。
4ページをご覧いただきますと、住民税の納税義務者と人的非課税の範囲を示しております。人的非課税の範囲ですが、3種類ございます。まずアとしまして、両方非課税。これにつきましては、生活保護を受けている方とか、障害者、未成年者、65歳以上の方のうち、一定の所得以下、こういった方については非課税でございます。それからイとして、均等割のみ非課税というものがございまして、一定の計算式に基づいた所得以下の方については非課税。昨年まではここに生計同一の妻というものがございましたが、16年の改正におきまして、段階的に課税していくということにいたしております。ウとして、所得割非課税。一定の計算式の所得以下の方については非課税というふうにいたしております。
5ページを見ていただきますと、住民税均等割の税率ということで、従来は、市町村民税につきましてはその人口規模によって税率が異なっておりました。平成14年のところをご覧いただきますと、3,000円、2,500円、2,000円でしたが、これにつきましては、今年の改正で統一して3,000円ということですので、県と合わせて日本全国標準税率4,000円になっております。
なお、この均等割につきましては、かつては住民税のうち2割近くを占めておりましたが、現在では2.3%程度というシェアになっております。
6ページをご覧いただきますと、均等割の水準を示したグラフでございます。昭和30年くらいと比較しますと、各種指標が大きく伸びているのに対して平均税率はまだ911 という水準にございます。
7ページをご覧いただきたいと思います。これは、昨年の調査会の答申のうち均等割に関する部分でございます。3点ご指摘をいただいておりまして、生計同一の妻に対する非課税措置の廃止、均等割の税率の引上げ、3点目として、人口段階に応じた税率区分の廃止ということでございます。この1と3につきましては、先ほど申し上げましたように今年の改正で実現しておりますが、2の税率引上げにつきましては、昨年の党大綱におきまして、検討事項ということで、引き続き検討するという状態にございます。
8ページからは所得割でございます。所得税と個人住民税の関係と申しますか、計算の仕方ということです。左の2つにつきましては所得税と同一の計算ということでございます。所得税法に基づきまして計算を行う。それから、右の点線で囲ってある部分が、住民税独自の計算ということで、所得控除をまず行う。この所得控除の水準につきましては、先ほどの資料にございましたが、所得税と住民税と違った金額となっています。これに税率をかける。住民税の税率は5%、10%、13%ですが、これは県と市を足した税率でございます。その内訳はこの図の中に示してあるとおりでございます。この税率をかけて算出税額を出しまして、現在ですと、例えば定率減税のような控除を行いまして、最終的な納付税額を決めているということでございます。
9ページが税率構造でございまして、先ほど所得税については説明がございましたが、住民税につきましても徐々にフラットな構造になっておりまして、平成11年度を見ていただきますと、5%、10%、13%になっております。
10ページが退職所得の課税方式ということで、住民税は所得のあった翌年に課税するという方式が原則でございますが、退職所得につきましては、現年で分離課税をするということで、ほかの所得割とは違った計算方式をとっております。
最後、11ページが「あるべき税制の構築に向けた基本方針」という答申でございます。ここに住民税の性格が集約されていると考えております。「[1]基本的な考え方」というところですが、「住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任する(負担分任)」、「受益に対する負担として対応関係が明確に認識できる(応益的)」。それから、「税源の偏在性が少ない」であるとか、「税収の安定性を備えている」ということで、地方税の基幹税として充実確保を図る必要があるということでございます。
次に所得割でございますが、所得割の課税最低限については、負担分任の性格から、所得税より低い水準で設定すべきであるというふうに答申をいただいているところでございます。以上です。
〇石会長
ありがとうございました。
お二人から国税と地方税の所得税関係をご説明いただきました。これからご議論いただくわけですが、この間の基礎問題小委員会で何をやったか、かいつまんで争点になったことだけご紹介しておきます。
共通した問題意識は、基幹税の地位をほぼ失いつつある所得税、あるいは住民税、これをどうやって修復するかというところに大きな問題意識を持っていたと思います。同時に、三位一体で、いずれ近い将来、3兆円規模の所得税から住民税への移転が行われるときに抜本的改革しなければいけないだろう。そういう視点から、今日ご説明いただいた所得税を見直す必要があるだろうと。
特に見直す方向はもう決まっておりまして、「あるべき税制」で所得税も住民税も一応書かれていますから、端的に言えば、所得控除を見直して課税ベースを広げる。どの控除を広げるかというあたりでいろいろ議論があるわけです。今、話題になっている、給与所得控除とか退職所得控除とかあります。それから、所得控除でいいのか税額控除でいいのか。あるいは、あのとき問題提起されたのは、少子化対策で児童控除みたいなものを、思い切って集中的に少し拡大する方向で考えてもいいのではないかという議論もありました。
それから社会保障給付というのも、今、極力課税ベースに入れないという形でやっておりますけれども、そうではなくて、入れて、そのあと基礎控除等々で面倒を見ていけば、本当に貧しい人にはかからないけれども、払っていい人には払ってもらってもいいのではないか。要するに、初めから非課税にするのはおかしいではないかという議論が、今後の福祉関係の支出が増える中で議論になった。住民税も幾つか問題があったのですけれども、今の前年度課税を、将来、現年課税に改めなければいけないのではないか。それから、国税と所得税と住民税は、何か似たような格好になっているけれども、全く別な発想で独立した税体系の方向に今後改革していくべきではないか等々、議論がございました。
これはほんの一例というか、大体このような議論をしたのですが、今日は、そのとき議論に参加されていない初めての委員の方もいらっしゃいます。特にその方々からのご意見もお聞きしたいと思いますので、しばらく時間をとりましょう。
所得税、住民税につきまして、どうぞ、ご意見なりご質問。まあ、ご意見を伺いたいのですけれども。現在、地方で実際に行政をやられている方々もいらっしゃいますから、どなたでも結構です。ご発言ください。
どうぞ、佐竹さん。
〇佐竹委員
一般的にでございますけれども、住民税の均等割の平準化、直ちに私どもの議会でもこの話が出ました。やはり均等割の部分については、それぞれの政党といいますか、それによって意見は若干違うわけであります。おしなべて、地方議会も含めて、改めて2,500円、3,000円の論議をしましたところ、そんなに安いのかという認識はあるようです。我々もそう思っています。
ただ、控除については、給与控除についてのサラリーマンと自営業との関係では、サラリーマンのほうは、自営業に対する所得捕捉についてきわめて疑義を持っている。むしろ我々サラリーマンの控除は低いのではないのかと、そこら辺が生活実感としてあるわけですね。ほとんど払っていない方が非常にいい車に乗っているわけです。実感として、そこら辺について国民の中で乖離があるんですね、我々の議論しているところと。ここら辺で所得の捕捉をきっちりしないことには、自営業とサラリーマンとの軋轢が出てくるというのは、我々、現場にいてそういう感じがいたします。
〇石会長
ありがとうございました。またご発言ください。
ほかにどうぞ。草野さん。
〇草野委員
今、おふた方からご説明いただいたのですが、ちょっと感じたのは、税は安いんだ、もっともっと取らなければいけないんだという感じを非常に強く受けまして、私どもサラリーマンの立場から見ると、実感とだいぶ違うんだなと、まず正直に感じたことを申し上げたいと思います。
それから、今、佐竹委員も言われましたけれども、不公平税制の根本的な是正がなされないで、所得税控除の削減といいますか、整理・統合というか、こういう問題を議論するならば、納税者番号制度を含めた所得捕捉の不公平というものにきちっとメスを入れていくのは大前提ではないか。これが2つ目であります。
3つ目として、たしかに書いてあることから言いますと、いわゆる働き方が変わってきた。それに対して適応できる税制にしなければいけない、こういうふうに書いてあります。そのこと自体決して間違っていると私は思いませんけれども、働き方が自分で選べるのではなくて、やむを得ずそうなっているという現場の実態があるということは、ぜひ認識していただきたいというふうに思います。
ここは税調ですから、よけいなことを言うつもりはありませんけれども、例えばハイヤー、タクシーの規制緩和で今何が起きているか。ものすごい倒産が起きていますし、実際にはタクシーの運転手さんの収入は200万円ですよ。300~400万円のところは、東京とごく一部の大都市だけで、地方では、規制緩和をすれば、3社ありまして、体力のある1社が下げますと、そこに揃えざるを得ないとなると、あと2社は確実につぶれていく。そういう中で働いている人たちの収入が激減しているという実態があることはぜひ認識していただきたい、こういうふうに思っております。
これは質問ですけれども、私、全部を読みこなしていないものですから失礼があるかと思いますが、いわゆる2分2乗とかn分n乗という議論がどうであったのかということと、源泉ではなくて申告税制、こういう納税の仕組みの問題についての議論がどの程度進んでいるのかということをお聞かせいただければありがたい、こういうふうに思います。
〇石会長
2分2乗は話題としてはのぼっておりますが、それを本格的にわが国の中に入れて実際にどういう問題があるかというところまでは議論が固まっていないし、それはまだ未成熟な議論だと思います。
それから、2番目におっしゃったのは、源泉ですね。これは、給与所得控除の見直しとも絡む話なのですが、実際サラリーマンの人も実額で控除でという議論もあって、そこで皆さんの関心はあるのです。要するに、源泉で納めっぱなしで納税者意識がない、これは問題だということがありまして、基礎問題小委員会でもかなり問題意識はありますので、今後、それを深めていくことは十分可能だと思います。
ほかにどうでしょうか。草野さん、退職所得控除、退職金等は何かご関心というか、一つ話題にはなっているんですよね。何かありましたら。
〇草野委員
これもなかなか難しい部分が多分にあると思うのです。退職金の場合には、企業規模間で退職金の実額そのものに大きな開きがあるというところの問題は、別の問題として一つ大きくありますけれども、今までの働き方ということで見れば、退職金は後払い賃金であるというのが私どもの考え方です。そこの部分についてはきっちりとした控除がないと、それを踏まえた上での老後の生活設計になっていますから、そこはきっちり考えていただきたい、こういうふうに思っています。
〇石会長
ほかにいかがでしょうか。
上月さん、ありませんか。今話題が出ているような話について。
〇上月委員
先ほど来、所得の捕捉の問題が出ていますけれども、私たちが見ていますと、ごく小さいところは別として、そこそこ皆さん事業者は一生懸命やっているので、そう言われると心外かなと思うのです。
ただ、サラリーマンのほうは給与所得控除がかなり大きくなっている。これは少し問題ではないか。事業者のほうは、とは言われるものの、キャッシュフローという面から見るとやはり出ていってますので、その辺の問題があります。サラリーマンの方も実額控除をきっちり認めて、できれば申告という形にしていただければ一番いいのではないかと思います。
〇石会長
いずれそれも本格的に取り上げたいと考えております。ほかにいかがでしょうか。次の話題に移ってよろしいですか。
それでは、いっぱいありますから、また戻るという形でとりあえず次にいきましょうか。次に大きな消費税というかたまりがありますから、この議論も。では、前のほうでまたお気づきの点がありましたら、お戻りください。
では、消費税にいきましょうか。
佐藤さん、株丹さん、おのおのご説明ください。
〇佐藤税制第二課長
消費税でございますが、「資料(消費税関係)」を出していただきたいと思います。かなり大部な資料を用意してございます。時間の関係もございますので駆け足でご説明したいと思います。この資料のアングルというのは、消費税創設されまして16年たちまして、どういう歴史をたどり、今、どこにいるのか、これからどういう課題があるのかということ、いろいろな形で繰り返された議論でございますが、整理をさせていただくことが目的だということでお聞き賜ればということでございます。
それでは、資料をめくっていただきまして、最初の1ページ目でございます。現状を確認させていただきます。元年に導入されまして16年ということで、いわば元服の時期に入っているわけでございますが、税収的には、一番右側にございます9兆6,000億円という数字になってございます。これは国分4%相当でございますので、そのほかに地方消費税1%ございますから、合わせて12兆円という規模ですが、国分は9兆6,000億円ということでございます。一般会計税収に対する割合が22.9%でございまして、推移的にも安定的な推移ということで、次第に基幹的な税という形に成長しつつあるというふうに思われます。
1枚飛ばしていただきまして、3ページでございます。消費課税、消費税の負担をご覧いただくための資料でございます。見慣れた資料でございますけれども、一番左側の日本のところでございます。国民負担率全体は35.5%、その中の租税負担率が21.1%ということで、他の先進国と比べて低い水準だということはかねてから指摘されているところですが、消費課税は7.0%という数字でとどまっているということでございます。
その7.0%の内訳を示したものが次の4ページの表でございます。日本のところ、左側でございますが、7.0%の内訳は、個別間接税、酒などのもので3.7%、消費税、いわゆる一般的な消費税という意味においては3.3%というウエートになっておりまして、他の国、例えばイギリスは8.9%、スウェーデンでは13%でございまして、その規模から見ますと、3分の1ないし4分の1の負担の水準でございます。ちなみにスウェーデンの税率は、日本の税率5%に対して標準税率25%でございまして、標準税率は5倍の税率の高さですけれども、負担率で見ますと、3.3%という数字と13.0%、3.9 倍ということでして、そういう意味では日本の場合は単一税率、課税ベースが広いということで、税率そのものは低く済んでいるという面もございます。
次の5ページでございます。消費課税の基本的な仕組み、若干おさらいでございますが、申し上げたいと思います。一番上のフロー、川上から川下までの物の流れを書いてございます。実際の各事業者の事業といいますのは、たくさんのところから仕入れてたくさんのところに売るということでございますが、ここは便宜上、単純化しているわけでございます。卸売業者のところ、この業者の消費税とのかかわり方を少し見てみたいと思います。
この業者の場合は、前段階の事業者から税込で5万2,500円という形で仕入れてまいるわけでございます。税抜で5万円。その中に合わせましてコストということで、2,500円が仕入れの形の税額として入っているわけです。この業者、2万円の利益をのせまして、7万円を税抜きで価格設定をいたしますと、それに対する消費税は3,500円になります。実際の納税額はどう計算するかといいますと、この3,500円まるまるではなくて、仕入れに入っておりました2,500円を引く。これを引かなければ税の累積が生じてしまうために、その部分を引くわけでございます。これが仕入税額控除という仕組みですが、それを引きまして実際に納付するのが1,000円ということになります。次の段階で売りますのは、7万円足す3万5,000円ということで、7万3,500円という売値で売ることによりまして、価格に織り込まれ最終消費者に移っていく、こういう流れでございます。
消費税につきましては、このように各取引の流れの中で事業者が納税義務者という形でプレイヤーとして動いているということ、それから、仕入税額控除の仕組みがあることが、消費税における重要な仕組みのポイントでございます。
続きまして「歴史」に入りたいと思います。7ページでございます。若干、温故知新みたいな話でございますけれども、話せば大変長くなる歴史をわずか5分くらいで駆け足でお話ししたいと思います。
この表、ちょうど真ん中あたりに、平成元年に消費税導入ということでございます。それから見まして、今、16年ですけれども、実はこの導入に至ります過程で紆余曲折があったことはご案内のとおりでございます。昭和53年の「一般消費税(仮称)」というところから始まりまして、売上税の話等を経まして平成元年に導入ということでございます。このときのコンセプトをあとで申し上げますけれども、高度経済成長を経て日本の経済構造がずいぶん変化した、それに合わせて税制改革をしたいという中で生まれた消費税でございます。その後、傍線を引いてございますが、4回ほど、消費税に関する大きな改革、見直しがございます。平成3年のもの、平成6年のもの、それが施行されたのが平成9年。平成11年には消費税の福祉目的化という形がなされ、最近では15年の改正、施行が16年4月ですが、「あるべき税制」という文脈の中で大きな改革がなされているということでございます。一言で達観いたしまして、ブラッシュアップの16年ということになるのだろうと思います。
そのあたりを見ていただくために、次の8ページをご覧いただきたいと思います。「消費税制度改正の歩み」でございまして、4つの段階を比較してございます。税率につきましては3%でスタートいたしまして、平成6年の改革で4%、地方消費税を合わせて5%という形でございます。[2]、[3]、[4]とございますが、これがいわゆる中小特例ということで、中小事業者に対する事務負担への配慮ということで導入されたものでございますが、その後、ここにご覧いただくような形で改革がなされ適正化が相当程度進んできているということでございます。ちなみに免税点につきましては、適用上限3,000万円以下というところから、昨年の改正で1,000万円以下になるなどの改正ということでございます。
それから仕入税額控除、[5]でございますけれども、仕入税額控除を行います控除要件のかけ方につきましても、かなり改善ということで、帳簿保存方式から請求書等保存方式ということで、より適正な要件を課す形になっているわけでございます。[6]の申告納付の回数につきましても、消費税といいますのはいわば預かり金的な税でございますので、その運用益問題等ございましたので、これに対する改革ということで、申告納付回数を最大、今や12回まで増やす形になっているわけです。価格表示につきましては、総額表示の義務付けということがご案内のとおりでございます。
次の9ページでございます。これから消費税をいろいろな意味で考えていただくに当たりまして、消費税のスタートラインのところだけはぜひとももう一度確認をさせていただければということで、少し説明をさせていただきます。消費税創設時、どういう背景があったかということがこの12年の答申でまとめられてございます。アンダーラインのところをご覧いただきますと、当時の税制については、所得課税にウエートが偏っていたというそういう問題。それから、次のパラグラフですが、本格的な少子・高齢化の到来を前に、勤労世代に偏らずより多くの人々が社会を支えていけるような税体系をつくるという話。次のパラグラフでございますが、「当時のわが国の消費課税は」としまして、物品間での課税のアンバランスが生じ、また、サービスに対する課税が行われておらず、消費の多様化やサービス化といった変化に対応しきれていなかった、こういう問題意識が強く出ていたということで、いわば税制の構造改革というか、税体系論といいますか、そういうものが議論の柱になっていたということでございます。
したがいまして11ページですけれども、この税制改革のフレームにつきましては、差引2.6兆円の減税ということで、ネット減税の改革がなされていたということにも、税体系論が主であったことが伺えるのかなと思います。
その背景となる要因、12ページをご覧いただきますと、ここには人口の話と財政の話だけを典型的に掲げておりますけれども、上のグラフ、高齢化率、65歳以上の人口の比率です。消費税導入当時、1990年前後ですが、高齢化率は12%でございまして、この時点では先進主要国の中では低い部類でありました。これから現在は、19.9%、約20%というところまで、すなわちこの10数年間で急激に足早に高齢化が進んでいくという流れがありまして、現在と1990年当時とコントラストが際立っていることをご覧いただければと思います。
財政も同じような事情でして、下のほうですが、1990年、財政収支、例えばフローのベースで見ていただきますと、0.0%、すなわち均衡財政であった。バブル等、一種の天佑というものがあったかと思いますけれども、赤字国債からの一時的な脱却という状況の財政事情で比較的ましな状況であったわけでございますが、今はご案内のとおり、それがコントラスト、きわめて悪い状態になっているということでございます。
背景事情はそういうことで、むしろ問題の論点は税体系論だということになったわけでございまして、13ページをご覧いただきたいと思います。左側のグラフは、所得・消費・資産の課税のバランスを見たものです。昭和63年(1988年)のところ、全体の税収、82兆3,000億円という中で、消費課税は14兆6,000億円という数字でございます。率として18%、こういうバランスで、所得課税に偏重だというようなことであったかと思います。
それから、消費課税を含む間接税の歪みということがこの時点で非常に議論されたことが特徴でして、その当時の議論をまとめた表が右側でございます。当時の物品税におきまして、課税されているかそうでないかというもので、例えば贅沢品か否かということで、普通の家具、けやき製のものは課税だけれども、桐とかうるし塗りの家具はそうではない、こういうアンバランスがかなり問題にされたということでございまして、いわば線引きの難しさから、このような選択的な物品税ということではなくて、一般的な課税ベースの消費税にシフトをすることが改革の原点であったということもご確認いただければと思います。これからの消費税論議の中でさまざまな税率構造論が出てまいりますが、このような経緯も十分踏まえていることが必要なのではないかと思います。
14ページは、平成6年の税制改革のことを書いてございますが、16ページを見ていただきたいと思います。平成元年の改革はネット減税でしたが、このときの税制改革はプラマイ・ゼロ、税収中立ということでして、基本的なアングルとしては税体系論がメインに出ていることも引き続きの状況であったかと思います。
17ページは、昨年の平成15年度改正に絡む部分ですが、「あるべき税制」についてご議論いただいたときのものでございます。この時点になりますと、先ほど見ていただきました人口構造とか、財政事情が、たった10年でございますが、大きく変化をしたということを背景にこの答申がまとめられたということでして、アンダーラインのところをご覧いただきますと、「今後、少子・高齢化、グローバル化の一層の進展に伴って、消費税の役割がますます重要となっていく中で、制度の信頼感を高めるとともに、その税率水準の見直しを図ることが大きな課題となっている。消費税の所得に対する逆進性の問題については、消費税だけでなく、税制全体、更には、歳出面を含めた財政全体で判断することが必要である」ということで、「あるべき税制」という文脈の中で、いわゆる信頼性を高めるための制度改革、税率の見直しという2つが課題として設定されたということでございます。
それに伴いまして15年度に行いました内容が18ページでございまして、中小特例の見直しを大胆に進めたということでございますが、その位置づけです。一番上のアンダーライン、「あるべき税制」の構築に向けて、第一歩としての改革を行うということで、今申し上げました中小特例に関する特例の改革、すなわち免税点制度の見直しや簡易課税の見直し等が行われたという位置づけでございます。
22ページをお願いしたいと思います。これは、その後出ました平成15年6月、当調査会の中期答申におきます消費税に関する記述でして、ここで改めて消費税の位置づけが確認されてございます。アンダーラインの部分でございますが、「少子・高齢化が進展する中で国民の将来不安を払拭するためには、社会保障制度をはじめとする公的サービスを安定的に支える歳入構造の構築が不可欠であることから、消費税は極めて重要な税である。したがって、将来は、歳出全体の大胆な改革を踏まえつつ、国民の理解を得て、二桁の税率に引き上げる必要もあろう」という記述がございます。下に(2)としまして、今後の検討課題ということで、税率構造、仕入税額控除、消費税の使途という課題が、「あるべき税制」の第二ラウンドとして課題設定されているというのが現状でございます。
26ページから42ページまで、「わが国経済社会の構造変化」ということで、6月におとりまとめいただきまして「実像」に基づきます部分を消費税に絡む部分を抜き出しをしております。お時間の関係がございますので基本的には省略させていただきますが、ここにありますのが、人口構造の高齢化、価値観の多様化、分配面での変化、あるいは財政の事情、そういったものを総合的にバックグラウンドとして消費税を議論していただく必要があるということで抜き書きをしてございますので、確認を賜ればと思います。
ただ、1点だけ、メンションさせていただきたいのは、36ページでございます。収入階級別税負担というものでございます。左側のグラフは家計調査に基づくグラフですが、全体を10個の分位に分けまして、一番下の分位、第I分位と第X分位の収入ないしはそれに伴う税負担をグラフ化したものです。第I分位は、全体336万円という収入に対して税額が23万円、そのうち消費税が9万円というデータでございます。第X分位につきましては、1,219万円、それに対して税は169万円、うち消費税が24万円ということになってございます。絶対額ではもとより高収入のほうが大きいということではございますが、それを負担率という形で見ますとということで、右側です。消費税の負担率は収入に対して、第I分位2.7%、第X分位2.0%ということで、この差を逆進的なものだというふうに巷間言われるデータでございます。
しかし、税全体で見ますと、6.8%が第I分位、それに対して第X分位は13.9%ということで、トータルでは累進的な形でございまして、全体としての逆進性というものを考える場合のデータをどう読むかということが一つのポイントかと思います。
今後の課題をもう一度最終的なおさらいをさせていただきます。先ほど申しましたように、税率構造、仕入税額控除、使途という3つがございますので、それに関する部分だけ答申に沿って若干かいつまんでご説明いたします。
45ページを見ていただきたいと思います。税率の水準です。日本の税率は5%、その他の国と比べたコントラストは鮮やかでございます。
46ページ、税率構造に関する答申が累次出てございます。アンダーラインのところだけ拾い読みをいたします。この最初のところですが、「税率構造については、単一税率を基本として検討する」という記述。次のパラグラフでございますが、「そもそも、複数税率の導入は」ということで、「公平・中立・簡素といった消費税導入の趣旨からすれば、基本的には、これは望ましくない」という話。
それから、47ページの答申では、下のほうのアンダーラインでございますが、「消費生活のパターンが多様化してきている中で、軽減税率の適用範囲を合理的に設定することは極めて難しい」。一番下でございますが、「わが国の消費税が、従来の物品税を中心とする個別間接税制度が有していた物品間の課税のアンバランスなどの諸問題を解消する観点から創設されたことに鑑みれば、消費者のライフスタイルや価値観がますます多様化している中で、税制が消費者の選択を左右することは基本的に望ましくない」という記述等ございます。
それから真ん中あたり、なお書きということで、「仮に、食料品など軽減税率を設ける場合には、一定の税収を確保するためには、軽減税率による減収分だけ標準税率の引上げ幅を大きくせざるを得ない」このような記述がありまして、直近の「あるべき税制」の答申では、一番下でございますが、「消費税の税率構造は、制度の簡素化、経済活動に対する中立性確保の観点から極力単一税率が望ましい。仮に、将来、消費税率の水準がヨーロッパ諸国並みである二桁税率となった場合には、所得に対する逆進性を緩和する観点から、食料品に対する軽減税率の採用が検討課題となる」、このような整理をいただいているわけでございます。
外国の調査報告もつけてございます。デンマークの2行目ですが、[1]、[2]、[3]、[4]ということで軽減税率についての問題意識が記述されてございます。
51ページ、ノルウェーの場合でございます。4つ目のポツですが、「付加価値税の逆進性緩和の観点からも、累進的な所得課税や給付による再分配効果の方が、軽減税率よりも効果的と考える」ということで、[1]、[2]としまして、「軽減税率は、再分配の対象とされるべき家計に適用を限定することはできず、すべての家計に適用されてしまう」などの指摘があったということでございます。
あとは省略させていただきます。
次の、税額控除関係でございます。税額控除につきましては適正な税額控除をするということから、57ページでございます。帳簿及び請求書を保存することが控除の要件になっていますけれども、請求書、あるいはインボイスとの違いを見ていただくために用意した資料でして、日本の請求書が左でございます。ここに100万円というものがございます。これが税抜きです。消費税額5万円ということで、105万円ということになっています。
これはイギリスのインボイスでして、Total(Net)、税抜きですが、これが338.60ポンドとなってございまして、VAT 、付加価値税ですが、これが59.25 ポンドということになっております。基本的には見た感じ同じでございますが、このVAT の部分、イギリスについては記載することが義務化されていることが大きなポイントでございます。この例ではたまたま、イギリスの場合、VAT Rateが17.5%と一つになってございますが、複数税率になりますと、これがいろいろ混ざり込んできますので、このようなトータルの額が明示されるということでないと、仕分けがなかなか複雑かなということが見てとれるかと思います。
インボイスとは何かという特徴を下に整理してございます。2つ目のマルですが、インボイスに売上に対する税額の記載が義務づけられているということ。それから、免税業者はインボイスを発行できない形になっている。それから注につきまして、欧州において、インボイスの様式までは特定されていないということもご覧賜ればということでございます。
あとは飛ばさせていただきまして、63ページ、インボイスの各国比較、もう一度広く見ていただきます。どういう記載事項があるかということを[1]から[6]まで書いてございますが、日本とのコントラストで申し上げると、今申し上げたような税額の記述の義務があるかないかということでございます。それから[2]のところ、供給者の側の住所・氏名に加えまして、課税事業者であることの登録番号も記載される形になっているわけです。
最後に、使途の問題でございます。69ページでございます。消費税の使途ということでございますが、消費税につきましては、国の分が4%、地方の分が1%です。その4%のうちの29.5%が地方交付税へまいりますので、実際的には56.4%相当が国分で、これが基礎年金、老人医療、介護に充てられるというのが、福祉目的化というものでございます。その前提となりますのが、70ページ、予算総則で、福祉目的税化ではなくて、「福祉目的化」されているということでございます。
ただし、71ページ、その規模でございます。国の消費税は、6兆7,000億円ですけれども、福祉目的とされている歳出のサイドは合わせて11兆円ということで、そのスキマが4.3兆円あるというのも現状でございます。
ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
では、地方税関係、株丹さん、お願いします。
〇株丹都道府県税課長
お手元の資料、「基礎小22-2 地方消費税関係」をご覧いただきたいと思います。目次の次の1ページ、地方消費税収、2.5兆円程度で安定的に推移しています。ただ、地方税収に占める割合はそれほど高くないということで、この図には書いてませんが、16年度で7.7%程度です。
2ページに地方消費税の概要を出させていただいております。4の課税標準、5の税率をご覧いただきますと、地方消費税は消費税額に100分の25(25%)かけて税額を算出するということで、消費税率で換算すれば1%になるというものです。あと、6のところに書いていますが、消費に関連した基準によりまして都道府県間で清算をしております。
3ページ、地方消費税の創設と書いていますが、以下、若干その関係の資料をつけています。4ページをご覧いただきますと、昭和63年、消費税創設時の地方の対応の資料ということでつけさせていただいております。ここにございます「税制改革法」の中で「地方税に関する改革等」という第三節がございますが、14条で地方税の既存の個別間接税の廃止等を行ってございます。このときの差引の増減収等を6ページでご覧いただけるかと思います。先ほど、国トータルでもそうであったわけですが、地方での税財政上の対応は0.9兆円差引の減でした。
7ページです。平成6年の税制改革のときに消費税率3%から実質的に5%に引上げになったわけでして、その際の改正法の提案理由を引いています。アンダーラインのところで、「地方分権の推進、地域福祉の充実等のため消費譲与税に代えて、消費に広く負担を求める地方消費税を道府県税として創設することにより地方税源の充実を図ること」とうたっています。
8ページを飛ばしまして9ページに、このときの税財政上の対応を出してございますが、増収、減収がイコールであるとなっています。
10ページから地方消費税の特色に関する資料でございます。まず10ページは、都道府県にとって地方消費税がどの程度の構成比を占めているかということです。地域によって相当差があるわけですが、大都市部ではない地域のかなりの数の道府県において、税収の20%を超える割合になっています。
それから11ページです。細かな数字もいろいろ入った図ですが、これは、人口1人当たりの基幹税の税収額をご覧いただきたいということで、全国平均を100とした場合に、それぞれの都道府県がどの程度の割合になっているかを示すものです。ばらつきといいましょうか、偏在がどの程度かということを、個人道府県民税、法人二税、地方消費税の清算後の姿で比較をしていただこうという趣旨です。全国平均100として見ますと、実態として一極集中であることを反映する部分があるわけですが、基幹税の中では地方消費税が一番偏っていないという数字になっていると思います。
最後に12ページ、13ページにおきまして、このような地方消費税の性格を反映しまして、これまでの税調の答申におきましても、今後の改革の方向、あるいは13ページでは検討課題ということで、地方消費税について答申をちょうだいしております。いずれも、「今後、福祉・教育等の幅広い行政需要を賄う税として、地方消費税の充実確保を図っていく必要がある」となっております。
簡単ですが、以上です。
〇石会長
それではこれから、国・地方の消費税関連のご議論をいただきますが、消費税は各方面からきわめて期待を持たれておりまして、今後、これを中心に改革の歯車が動くのではないかと思っています。これまでの経緯、抱えている問題、いろいろ議論いたしましたが、二、三、申し上げると、我々、基礎問題小委員会で一番問題になったのは軽減税率をどうするかという議論です。いろいろな議論がございましたけれども、基本的には、かなり高くなるまでは、弊害を重んずればそう簡単に入れられないのではないかと。弊害というのはいろいろあるのですけれども、物品税みたいに仕分けが難しかろうという話とか、あるいは、必ずしも軽減したからといって低所得者層の救いにはならない、高額所得者も使うしとか、いろいろございまして、結論はそっちのほうに行ったように思います。あるいは逆進性の緩和という形から入れるのだったら、税制全体で見ようとか、歳出から見たらいいではないかと、この資料にもございますが、そういう問題ですね。それから、目的税にするか目的化にするか、議論ございました。
いろいろな議論はまだ前哨戦という感じでございますが、今日、ここでぜひ、総会にご出席の皆さんからもいろいろな点をご指摘いただいて、今後の議論を高めたいと思います。どなたでも結構ですから。また、基礎小にご出席の委員の方も再度ご発言いただきたいと思います。
吉岡さんからひとつ発言してもらいますか。
〇吉岡委員
私は、前回の総会のときに意見を申し上げまして、それに対して認識が違うという意味の反論を幾つかちょうだいしております。その点につきましては戻りましてから、私の所属する団体、それ以外の消費者団体の方にも、その当時のことも含めてどう考えるかということを少し意見を聞いてみました。ですけれど、その反論に対する反論があったということは確かでございまして、ただ、反論に対する反論のバックデータをお出ししないといけないのではないか、そういう議論もありました。本日、それに対するバックデータをお持ちしておりませんので、ただ、感情的には反論について納得していないということは申し上げておきたいと思います。やはり食品、必需品については所得の低い層のことを考えなければいけない。それから高齢者といっても、所得のある高齢者とない高齢者と、いろいろあるので、その辺の公平性を考えていかないとなかなか国民一般の公平性とは言えない。
それから、海外と比較した場合に、海外の場合には国民が自分たちも意見を言って納得していると。デンマークなどを見てきた消費者団体の人は、デンマークの消費者と話し合いをしたときに、「自分たちも意見を言って納得した」と、そういう声もあったそうでございます。やはり国民が納得していることが非常に重要なポイントだなと、そのように考えております。
それから、導入の際に高齢化・福祉化の問題との関係があったのではないかということを前回は申し上げましたけれども、それについては、当時税調のメンバーであった方に伺ったら、いや、その辺のところはあまり議論をしていない、食品関係はかなり議論をしたというようなことも聞いておりますので、もしそうであるとすれば、これからの議論の中でもう少し詰めた議論をさせていただきたいと思います。
〇石会長
いずれまた、詳細なデータ等々そろいましたら、またそれに基づいてご発言いただきたいと思います。
いかがでしょうか。どうぞ。
〇草野委員
質問みたいなものですけれども、先ほどのご説明の中で、インボイスというのは請求書保存方式と比較をして役に立たない。だからインボイスという方法はとらないということでの説明だったのでしょうか。そこのところがよくわからないのですが。
〇石会長
説明した側からご説明ください。
〇佐藤税制第二課長
ちょっとはしょってしまいましたものですから、恐縮でございますが、資料の58ページを開けていただきたいと思います。そこにアンダーラインが引いてございまして、わが国の場合とヨーロッパの場合を比較した部分がございます。「ヨーロッパ諸国においては」というところですが、「複数の税率が存在する場合には」云々とございます。これに対してわが国の消費税はということで、「単一税率になっており、また、非課税取引の範囲も限定されていることから、請求書等に税額が記載されていなくとも」--先ほど申し上げましたようなインボイスということでなくても、現行制度において仕入税額控除の計算を適正に行うことは可能となっており、有効に機能しているという指摘がございます。そういう意味においては、インボイスでなくても、こういうような税額計算が行われている部分は評価されているということでございます。
一方、インボイス自体を導入することについてのいろいろなご議論も当然ございまして、アンダーラインを引いてございませんが、58ページのハの下のところです。「わが国の請求書等保存方式の下で、免税業者からの仕入れについても仕入税額控除の対象とされているのは」云々とございます。要するに、インボイスを入れますと免税業者からの仕入れができないことが問題ではないかという議論があったところを、「平成6年の税制改革に際して」ということで、(イ)、(ロ)、(ハ)というようなことでさまざまな状況を勘案して、現行制度でもそれなりの有効性があるのではないかということで、現状、認定された経緯があるということでございます。
〇石会長
どうぞ、草野さん。
〇草野委員
こちらも勉強不足ですから、技術的なことはよくわからない部分がありますけれども、今、生活者という視点から言いますと、消費税に対しては、益税だとか、脱税とまでは言いませんけれども、そういうものに対しての不信感がかなりあるということは否定できないと思います。例えば私が住んでいる地元でも、あそこの商店は本当に消費税を納めているのかしらなんていうのは、結構住民の方々の口端にのぼることがあります。そういう意味では、インボイスが必ずしも100点満点かどうか私もわかりませんけれども、請求書保存方式で本当にきちっとできるかどうか、もう少し私なりには勉強させていただきたいと思います。
それから、最終的にはどういうふうな使途にするかと。先ほど石先生もおっしゃいましたけれども、社会保障の在り方懇、今日は宮島先生はご出席ではありませんが、私ども積極的に関与していますから、介護であるとか、医療であるとか、年金であるとか、そういうものとの整合性をとらないと、この場だけで議論していても、これは前にも申し上げたと思いますが、必ずしも一定の方向性が出にくい部分があるのではないか、こんなふうに思っています。
〇石会長
後段はいずれまた議論しなければいけないし、前段のインボイスというのは、前向きにそれを入れていこうという方向の議論のほうが大きいのですよ。ましてや、この間海外調査に行って、付加価値税にはインボイスがつきものだというところの密な関係、それを我々は確認もしてきましたし、今後、仮に複数税率になるようなことがあれば、インボイスでなくてはできないだろうという意識を持っていますので、それはますますこれからの議論としては浮かび上がってくると思います。
では、遠藤さん、どうぞ。
〇遠藤委員
この前は欠席したものですから、質問させていただきたいのですが、一つは、22ページに15年6月の税制調査会の記述があります。この真ん中のところのアンダーラインで、「歳出全体の大胆な改革を踏まえつつ、国民の理解を得て、二桁の税率に引き上げる必要もあろう」と書いてあります。この「歳出全体の大胆な改革」というのは、言葉はわかりますけれども、具体的に何を意味しているのかというのを教えていただきたいのが1点。
それから70ページに、現在、消費税については予算総則で、どこに充てたかということが詳細に書いてあるわけです。これはほとんど目的税化されていると考えてもいいのではないかと思いますけれども、この予算総則でこういう費目に充てていると書いてあることと、制度上目的税化することとはどこが違うのかということ。
もう一つは、次のページに、今、国の消費税分は6.7兆円で、対象が11兆円あるということなので、このスキマは目的税だったら埋められると思うのですけれども、この算出方式で、総則に書いてあるだけでは埋められないのか、また逆に、目的税化しない理由としては、もっとよけい取って一般のその他の経費にも充てようという思惑があるのか、という点を教えていただきたいのですが。
〇石会長
事務局からいずれ説明してもらいますが、私から、最初の22ページの「歳出全体の大胆な改革」、これは常時このような言葉を使っておりますが、具体的中身を入れて、どことどこの経費をどう削るというところまでは議論は行っていません。二桁に上がるという場合、かなり大胆なものは必要だろうという抽象的なレベルの議論であったと思いますが、本来的にはこれからやるべき議論ではないかと思います。
それから、目的化と目的税化というのは基礎問題小委員会でもこの間議論になりましたけれども、厳格に言うなら、目的税化といったら特別会計ですよ。今の揮発油税とか道路特会みたいな格好にして、くくらないと目的税化にはならないです。この目的化というのは、今言ったように、総則で緩い形でリンクを持っているという程度ですから、ある意味では「どういう効果があるのかね」という疑問を持つ人も当然いますよね。同じ丼の中で仕切りがなくて、ただ渡しているよというだけの話ですから。これも、これからこの議論をするときに、どういう形でこれを深めていくかということだと思いますが、どうぞ事務局から。
〇佐藤税制第二課長
目的税化に関連するご議論の整理がなされておりまして、この資料の64ページの下でございますけれども、[2]の「消費税の『福祉目的税化』」ということがございます。アンダーラインが引いてございますけれども、目的税化についての議論として、「今後、わが国の税財政にとってますます重要な役割を果たすべき基幹税であること、目的税化は財政の硬直化を招くおそれがある」ということで、慎重に検討すべきというご議論もある一方で、次のページですけれども、「社会保障給付の増大にいかに対応するかが重要な課題である」ということで、「そのための消費税の充実が不可避であるとすれば、福祉目的税化も検討に値するのではないかという意見もあり」というようなことで、さまざまな意見があったことが紹介されているのが現状でございます。
〇石会長
加藤先生が会長の頃の話で、このとき両論併記的になっていますので、まだ決め打ちにしていないのですけれども、基礎問題小委員会あたりの議論になりますと、かなり片一方のほうで議論しているような感じがしますけどね。一般財源化というのはどこかでうたっていたと思うけれども、どことどこをくっつけるかというのもこれからの議論です。その辺の是非をめぐっていずれまたと思っています。
ほかに、いかがでしょうか。どうぞ、水野さん。
〇水野委員
消費税のところでインボイスのご説明をいただいたのですけれども、インボイスと請求書の保存といったところで、いわゆる書式の問題が説明されています。端的に言うとどこが違うかというと、いわゆる仕入税額というものが、インボイス方式を徹底しますと、インボイスがないと仕入れの税額が控除できない。そういうようなことがありまして、今、わが国では帳簿方式で、帳簿をもとにして消費税額を計算しますけれども、これをインボイスといった方式に変えた場合には、帳簿に依存するというよりも、証票としてのインボイスがないと仕入税額が落ちない、そこに大きな意味があるのではないかと思います。
そういうふうにいたしますと、例えば仕入業者と仕入れする側に両当事者が出てきますけれども、片一方は、売上を減らしたいので、できるだけ売上金額を少ない形でインボイスを送りたいし、片方は、仕入れをできるだけ大きくして差引控除したいわけですから、できるだけ大きい金額を相手から受け取りたい。そういうような形でマッチングが行われるといいますか、牽連関係がありますので、適正な税額がお互いに記載されるのではないか、そういうようなことが期待されているのではないかと思います。
そうしますと、よく言われるのですが、現実に税務調査などをやろうとしますと、インボイスのような添付書類がいっぱい積み上がっていると、調査しても調査のしようがないと、法人税の証票みたいになってきますので。それを考えると、今度はもう一つステップを進めて、情報申告にして、さらにそれを電子申告の形で届ける。そこまで進むとかなり調査の役にも立っていいのではないかというわけです。先の長い話ですが、この辺も検討したらどうかと思います。
〇石会長
EUは、先ではなくて、現に各国ごとにつながった形のインボイスの電子証票化をやりたいと言っていますから、そう先の話ではないような感じがします。
では、井上さん。
〇井上委員
消費税の問題ですけれども、当然、プライマリーバランスということを考えるならば導入せざるを得ないことはよくわかりますが、企業の活力を得させるための問題、そういうことも十分に考えてもらわなければいけない。と同時に、出口の問題、要するに今の予算の問題にしてもしかりですけれども、その辺の使い方の問題、それをどうするのかというのをもっと真剣にやはりこの税調でも論議していただきたい事項だというふうに思うわけです。
あと、消費税を導入する場合、軽減税率の問題。これは難しいというけれども、難しくてもやるべきだと。というのは、食料品だけは軽減税率を適用すべきだ。そうでないとまず婦人の方々が納得しない。要するに食料品は我慢はできない。しかし、衣料とかほかのものは我慢できるわけですね。これは特に贅沢品ということではないわけですけれども、衣食住、食以外のものについてはある程度我慢できる。そういうことからすると、食についてだけは何としても軽減税率を適用しなければいけないのではないのか。そうでないと、国民は納得しないでまたえらい問題が起こる可能性はあります--あると想像できます、ということでございます。
それからインボイス方式の問題、これは当然、そういうことになればインボイス方式は導入せざるを得ない。ともかく国を挙げてIT化ということを言っているわけですから、そうであるならば、中小・零細企業までそのソフトを提供してコンピュータによる申告ができるような仕組みをどうするのか、ということを考えていくべきだというふうに思います。そんなところが気がついたところです。
〇石会長
ご婦人が我慢できないというのは……。こちら側にご婦人が何人か並んでいますけれども、どうぞ松永さん。
〇松永委員
婦人という言葉を今はもうあまり使わないかと思いますけれども(笑)。私も前回出ていないので、お聞きしたいのですけれども、食料品のことというのはとても大きいなと。本当にいつも、「じゃキャビアはどうなのか」という話が出ますけれども、キャビアがどうのではなくて、私は、主食ですよね、お米に関しての食料減税というのはないと、ただでさえ庶民いじめという風潮はかなり聞こえてきておりますので。例えば7%とか8%までは単一課税でいこうと、そういう論議が前回あったのでしょうか。
〇石会長
ありました。
〇松永委員
でも私は、7%になっても10%になっても、欧米に比べて低いといっても必要だと思います。
〇石会長
この間、欧米の報告のときに、現にやっているところの税務当局、財務当局を回ったということもございますけれども、いかに大変か、いかにコストがかかるかということをさんざん聞いてきて報告したこともありますけれども、食料品の区別の仕方。それから、さんざん言われているように、マクドナルドの店の中で食べるのと外で食べるのと税率が違うという話とか、典型的なパターン化した議論があって、議論いたしますが、まあ、これからだと思います。
事務局のほう、何か仕切りの難しさとか、具体的な例で、食料品を入れるときのコストのかかる云々の実例みたいな、今のご質問に答えるようなことはありますか。
〇佐藤税制第二課長
最近、セット商品というのがございまして、例えば300円くらいの品物でフィギュアがありまして、飴が2つ入っている。これは食料品かどうかよくわからないね、と。例えばそういうふうな限界事例というのは当然ございますし、そういうようなことも含めて少し研究はしてみたいというふうに思います。
〇石会長
では、吉岡さん。
〇吉岡委員
今、松永さんもおっしゃいましたけれども、女性はとか、ご婦人はと、これは要らない……。
〇石会長
要らないですね。
〇吉岡委員
はい。消費者はというか、生活者はというか、そういう見方をしていただいて、やはり食料品については一律という中に入れてしまうことはとても我慢ができない。当然、食料品については別という考え方を入れなければいけないと思います。
それから、IT化の問題が出ておりました。今、ユビキタスという言葉がだいぶ普及しておりますし、ICタグをつけるという時代に変わりつつありますから、そういう意味から言うと、それを税制の面で生かすことはできるはずです。そういうことでお考えいただきたいと思います。以上です。
〇石会長
佐竹さん、どうぞ。
〇佐竹委員
先ほど遠藤委員からお話があった、「歳出全体の大胆な改革」と。実はこれ、皆さん方、ご認識いただきたいのですけれども、今、その実際によっても違うでしょうけれども、伸びているのは社会保障、保険医療関係だけなのです。年率で7~8%ずつ自動的に伸びています。しかも全体としてはウエートはものすごく大きい。例えば公共事業分野などはここ5年で半分ですよ。ですから、歳出全体の大胆な改革というのは自動的に社会保障しかないです。無駄な公共事業というのはあるかもしれないですけれども、その部分なんかこれからできっこないんですよ。ですから実態を見ますと、大胆な歳出のカットというのはどこを目指すかというのは、抽象論ではなかなかできにくい。結局、消費税の対象相手というのは、社会保障のところについての水準をどう保つかという、非常に大きなリンクをするのかなと。そこら辺だと国民世論としては納得するのかなという感じはいたします。
〇石会長
難しい問題ですね。
何か反論ですか、井上さん。では、手短かにお願いします。
〇井上委員
公共投資を削減したりというのは当然のことなわけですけれども、やはり人件費とか、例えば地方の議員の問題にしてもしかりだと。6万6,000人もいてそれが給料をもらいながらやっている。ああいうものはある程度ボランティアでもいい、というようなことも考えていかなければいけないのではないか。我々中小企業は、赤字だったら金をもらえないわけです。そういうようなことを考えると、そういう点の削減をしていくのも大事だと。そうでないと国民は、「税金を垂れ流しではないの」というふうになるということでございます。
〇石会長
尾崎さん、どうぞ。
〇尾崎委員
昔話になって恐縮ですけれども、消費税の前に売上税で大議論があったわけですね。売上税がなぜあれだけ国民の批判を浴びて、結局、ボツになったのですけれども、その最大の理由は実は非課税だったのです。非課税を認めるということで、何を非課税品目に選ぶか、その選び方が不公平だ、声の大きいところが認められるのではないか、ということが売上税に対する不信感になって、それでは全部例外なしにいきましょうと言ったら、消費税として何とか認めていただけたという過去を背負っているわけです。
お話に出ているのは軽減税率で、非課税ではないですけれども、食料品だけ別というのですが、「何が食料品か」から始まって、口の中に入れるものは同じではないかという話になって、飲むものはどうするんだという話になって、薬どうするかとか、そういう話になっていって、必ずお隣り、お隣りといって大混乱になることは、私ども経験しておりますので、どこか考えておいていただきたいことであるということです。
〇石会長
では、田近さん。
〇田近委員
消費税は今は5%で、上げたときに軽減税率というのは必ず出てきて、今、何人かの委員の方も、その必要があるのではないか、あるいは尾崎さんが、どれを軽減するのか、非課税にするかということで、選び方が難しいとか、いろいろな議論があります。つまり、どの品をどう選ぶかとか、あるいは、ハンバーガーを外で食べるときは食品、中で食べるときはレストランだからかけるとか、いろいろなことがあると思うのです。それから、お金を戻すとしても誰に戻すのかとか、いろいろあると思います。
ただ、お国ぶりというか、この間、夏にヨーロッパに出張させていただいて、何回も聞いたのは、デンマークは25%の付加価値税で単一だと。それは税と歳出との関連が国民に認められているからだとか、あるいは、食品はゼロ税率といって、単に非課税にするのではなくて仕入れもまけてあげるとか、いろいろな国があると思います。日本のお国ぶりというのは何なのかということだと思うのですけれども、なぜ、この議論をしているのかというと、先ほどご意見もありましたけれども、基本的には高齢化していって、社会保障をはじめとした歳出項目は、どういう改革をするにせよ大きくなっていくわけです。どの税がどれにという対応は必ずしもつける必要はないとしても、現実問題として、この税が社会保障を支えるものだという認識はあるわけですから、給付を受けるのは広く国民であるということを考えると、直感に近いかもしれませんけれども、5%が10%近くなる段階で軽減税率の議論をするのは、財政全体、あるいは給付を受ける国民全体の目から見て、あまり適切ではないのではないかと私は思います。
〇石会長
では、ほかにまだ話題が2つ残っていますから、大宅さん、最後にどうぞ。
〇大宅代理
さっき尾崎さんがおっしゃったのとほぼ同意見ですけれども、物事は何か例外をつくれば、そのときに必ず境ができて、こっち側に入ったのが損だとかいう話になって、それが不公平感につながるので、よほどすごいことがない限りはなるべく簡素なことがいいだろうというふうに思います。さっき松永さんはお米の話をなさったのですけれども、お米、うちはひと月3,000円もかからないんですね。2人しかいないのですが。それが5%だと150円、それが10%になっても300円ですね。今、150円、300円払えない日本人というのはたぶんいないだろう。今、コンビニで170円のおむすびがバカバカ売れる。あれを自分のうちでつくれば50円もかからないわけですよね。
そういうふうに考えると、弱者というか、そういうのを切り捨てろという話ではなくて、制度はなるべく簡単でよくて、本当にお米も買えないところには別の手立てでやるのがわかりやすいし、不公平感みたいなものも出ないので、そのほうがいいのではないかと私は思います。
〇石会長
何か議論が白熱してきまして、がっぷり四つに組んだ感じがありますから、また仕切り直してやりましょう。
それでは、お酒と環境税が残っていますので、残った時間で効率的にその辺を議論したいと思います。
では、岡田さん、資料のほうお願いします。
〇岡田税制第三課長
では、「基礎小22-3」と右肩に書かれております資料「酒税関係」をお開きいただきたいと思います。
まず最初に1ページでございます。実は、個別間接税と呼ばれている分野はたくさんあるのでございますけれども、今回、酒税は、これが社会生活の変化を最も受けている分野、その代表例ではないかということで取り上げさせていただきました。具体的な変化の話に入る前に、基礎的な事項の確認ですけれども、2ページで酒税法のことを若干お話ししておきます。酒税法では、そこにありますように、お酒を10の種類、11の品目に分けて、それぞれ定義を置いて税をかけております。定義は原料、製法というもので置いておりまして、具体的な税としては従量税をかけるという方式でございます。
4ページをご覧いただきたいのですけれども、かかっている税の具体的なイメージです。一番上の棒グラフは、アルコール分1度当たりの税率ということで出させていただいています。よくビールの税率が高いというのは、こういう1度当たり税率をもとに議論されるのですが、実際かけているのは1度当たりではなくて、標準的なアルコール度でそれぞれのお酒を見まして、それに税率をかけている。これが真ん中の棒グラフでございます。これでご覧いただくと、標準的な度数に対して従量税が幾らかかっているかというのをご覧いただけると思います。一番下が、今度は価格との関係で、標準小売価格に占める税金の割合ということで並べております。これでも30%以上かかっているものがあると言われるのですが、実際のところ、ほかの個別間接税としてあります、たばこ、ガソリン、こういったものは価格の半分以上が税になっているということでございます。
ちょっと飛んでいただきまして、6ページ、ここで、実際日本人がどういうお酒をどの程度飲んで、どれくらいの税金を払っているかの内訳がございます。この円グラフで見ていただいてわかるとおり、課税数量、つまり飲んでいる量にしても、あるいは課税額、払っている税金にしても、ビール・プラス発泡酒で大体7割いっているということでございます。
全体量を7ページで時系列的に追っております。棒グラフですけれども、日本人はずっと右肩上がりで酒の消費量を増やしてきたのですが、平成6年くらいを境に頭打ちになってきております。折れ線グラフは、税収ですけれども、それよりもぐっと下がっておりまして、平成6年度、これは発泡酒が出た年ですけれども、ここから減少トレンドに転じているということでございます。
どんなお酒がどう飲まれ変遷してきたのかが、8ページにございます。これは最近30年間を追っているものですけれども、昭和48年の時点ではビールと日本酒で9割以上だったというのが実態でございます。それから次第に日本酒が飲まれなくなってきて、ウイスキーが増加してくる。そういう中でもビールは一人勝ち状態だったのですが、平成10年というところがございますけれども、発泡酒が出てきてからは、今度はビールが発泡酒に押されるようになった。もう一つは、焼酎がどんどん伸びてきて、ついに清酒と焼酎は入れ代わってしまっているのが実態でございます。
ちょっと飛びまして、10ページでございます。切り口といたしまして、日本人1人当たりがどの程度お酒を飲んでいるかの変遷図でございます。棒グラフの部分が、成人人口1人当たりでお酒を飲んでいる量です。先ほど、全体量で横ばいと申し上げましたけれども、成人人口1人当たりで見ると減少傾向に入ってきております。まだ成人人口全体は増え続けていますので、日本人の人口が減っていく局面になってくると、おそらくもっと減るだろうということが言えるかと思います。
次の11ページは、世帯当たりでどれくらいお酒にお金を使っているかということですが、これもどんどん減ってきている。つまり、お酒にお金をかけなくなりつつあるというのが実態でございます。
ここまでのところで一つ申し上げておきます。右肩上がりでお酒の消費が伸び高いお酒を買っていた時代は、酒税も従量税中心だったので、ある程度お酒の価格が上昇してきますと、途中で従価換算して減少しているということで、税負担の適正化という観点で横断的な増税を繰り返してきたのが今までの酒税の上げ方でございました。しかし、現在のようにデフレ下で価格上昇もございませんし、これからどんどん減少局面、つまり右肩下がりに入ってくる時代、こういう時代にどういうふうに酒の税をかけていくのかというのが一つの課題であるかと思います。
12ページです。これは、今まで当税制調査会でご議論いただいて、最近の一つの基本方針ということでございます。線を引いているところにございますように、酒類の区分の簡素化を図り、同種・同等のものには同様の負担という形で税負担格差を縮小する、ということがうたわれております。
最近の例では、14ページ。平成15年度に、同種・同等のものということで、税負担格差をビール、発泡酒、清酒、ワインといった4酒類のものについて縮小をしたところでございます。
15ページ、これは最近の変化でございます。ビール、発泡酒以外に、最近ではビール風酒類と呼ばれているもの、そこの点線で囲ってあるようなものが出てきていまして、例えばリキュールの形、つまり、発泡酒と焼酎を混ぜてリキュールの形で税を20円ほど安くするとか、あるいは、麦芽を全く使わずにその他の雑酒という形で分類される、そういう商品を出すといったようなことは行われております。
16ページが、次第にそういったビール風の酒類が、発泡酒を浸食してきているという最近の統計でございます。
ここでちょっと申し上げたいのは、一番冒頭に、従来の酒税法の考え方は、原料、製法で区分をして、そこで定義をして税をかけていた。それが最近の技術力向上で、酒類メーカーは食品加工技術を使って、原料とか製法の壁をやすやすと乗り越えられるようになってきている。つまり、全く別の原料、製法を使いながらも、同じ味、同じような風味のものが出せるようになっている。こういうもとで税法におけるお酒の定義というのはどう考えるのか。伝統的な考え方を守っていくのか、あるいは、現実に即して何か考えていくのかというのが、課題として突きつけられていると思います。
説明は以上でございます。
〇石会長
お酒、皆さん関心があるし、大口消費者もいっぱいいると思いますから、どうぞ。いろいろな点からご議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。
〇佐竹委員
秋田は大変酒を飲むところで、私も人並み以上に飲みますけれども、最近のお酒を飲むところに行きますと、高い酒は高所得者、低所得者は安い酒というのは完全に崩れていますね。むしろたくさん給料をいただく会社の社長さん方が、健康を考えて一番安い焼酎をお飲みになっている。そういうことで、税の格差と所得と、そこら辺の機能は全く今はないのかなという感じが実際いたします。
それと、今、道路交通法が非常に厳しくなりまして、私どもの市役所はあまり酒気帯びが多いものですから、夜10時を過ぎたら酒は禁止と。いずれ、酒税についてはウエートは絶対的に減っていく運命にあるのではないのかなという感じがします。
〇石会長
酒とたばこは減っていくでしょうね。ガソリンはどうか知りませんけれども。それで何か具体的にご提案ございますか、酒税に関しては。
〇佐竹委員
酒類ごとに分けること自体が、あまり意味がなくなっているのではないのかという感じがいたします。
〇石会長
どうぞ。
〇草野委員
特段の意見ということではないのですけれども、今、佐竹委員がお外で飲むお酒のことを言われましたけれども、現実に発泡酒がこれだけ増えてきたというのは、一般的な家庭では、「ビールを飲みたいけれども発泡酒」という傾向が非常に増えてきている事実があるということはご承知おきいただきたいなというのが一つ。
それからもう一つ、つくるほうからみたらたまらんのですよね。一生懸命研究して新しいのをつくったら、追い打ちでまた税をかけられる。そういう声が結構あるものですから、そういう意味では、どういう議論になるかわかりませんけれども、酒の税というのはこうあるべきだという基本的な考え方をもう少し明示しないと、つくるほうはたまらんという声は、私どものところにかなり来ていますけれども。
〇石会長
現行制度でいくと、それをねらってまたノウハウが発展してきますから、前広に本格的にどういう形でどう進めていくんだというような考えを、出したほうがいいかもしれませんね。
どうぞ。
〇井上委員
国民の収入が減ってきているわけですよね、景気が悪くなって。だから、安い酒に行くということはやむを得ないので、それでそちらが増えているということではないのかと思います。ですから、税率を変えるとかそういうことについては、一つにしていくべきではないかと思いますけれども、逆に、たばこ税をなぜ上げないのかということのほうがもっと問題ではないか。いつも言うのですけれども、男性は1.6 倍、女性は1.9 倍、死亡率が高くなっているわけです。禁止税であるということをおっしゃいますけれども、早く上げるべきではないか。世界的にも一番低い税率であるのはおかしいというふうに思います。
〇石会長
いずれまた議論の俎上にのせましょう。よろしゅうございますか。
もう一つ、環境税という大物が残っていますので、それについてもご議論いただきたいと思います。
それでは、岡田さん、どうぞ。
〇岡田税制第三課長
それでは、「基礎小22-4 環境税関係」という資料に沿ってご説明いたします。
まず1ページ目ですけれども、環境問題に関しては、今回の「実像」把握のキーファクト8というところで取り上げられておりまして、産業型公害に加えて、そこにあるようなさまざまな環境問題が顕在化してきたということかと思います。その中で、京都議定書の関係で地球温暖化問題、これがいまや最も重要な環境問題の一つになっているかと思います。
以下、地球温暖化問題に絞って2ページ、若干経緯的なものをおさらいしておきたいと思います。この2ページの年表書、上から2つ目の白マル、平成9年12月、ここで京都会議が開かれまして、各国ごとにCO2 等の温室効果ガスの削減目標が定められた。日本の場合には、6%を平成20~24年の5年の間に達成しなさいという約束があったということでございます。それを受けて平成14年3月、すぐ下の白マルですけれども、地球温暖化対策推進大綱というものを日本政府はつくりまして、これは、6%削減、約束を履行するために具体的な裏付けのある対策を提示したということでございます。
環境税という観点では、去年の8月に中央環境審議会で、「温暖化対策税制の具体的な制度の案」ということで、新聞等で報じられましたけれども、炭素課税という形でガソリン1リットル当たり2円の課税をする、税収規模で9,500億円程度を確保するというものが出ています。
ただ、1点申し上げておきますと、これは国民的議論のためのたたき台という形でして、環境省が正式に出している環境税の案というわけではございません。そういう意味では、まだ正式の案というのは存在していない状態になっております。
その後、今年に入ってから、中央環境審議会、産業構造審議会などでいろいろとりまとめが行われておりますが、これはあとでまとめてご説明いたします。一番下の白マル、今年の9月にロシア政府が京都議定書を批准する旨の政府決定を行っております。ロシアが正式に批准した段階で、そこから90日たつと、冒頭に申し上げました気候変動枠組条約で言われているCO2 の削減の義務がかかることになります。
1ページ飛ばしていただきまして、4ページでは、地球温暖化大綱の中で、日本は6%削減をどうやっていくのかという目標が掲げられております。この表の基準年、1990年と書かれたところ、ここに12億3,700万tという総排出量がございますが、これを6%削る。つまり7,400万tを削るということで、これを分野別に割り振った目標がございます。
2点申し上げておきますけれども、[1]エネルギー起源二酸化炭素、これは石油等を燃やしてできる二酸化炭素ですが、これが実に全体の排出量の85%を占めている。ここが核になるということです。一番下に、「その他(京都メカニズムの活用等)」とございます。この中には、俗に言われている排出量取引というのが入っていますが、この部分は補完的措置だという位置づけがなされているということです。
次の5ページ、これが6%削減を取り巻く現状でして、左側のグラフです。基準年、12億3,700万tというのは先ほど出てまいりましたが、実は足元ではそれよりもっと増えておりまして、平成14年度で13億3,100万tまで増えています。ですから、6%削減というのは今の時点から言えば、そこにありますように、7.6%と6%を足した13.6%削減、こういう形になります。
このうち、一番排出量が多い、先ほど全体の85%と申し上げました、エネルギー起源のCO2 の排出量だけを足元取り出したのが右側でございます。産業部門、民生部門、運輸部門と分けておりますけれども、現状はこういう形になっておりまして、我々家庭の部門で実はかなりCO2が増えてしまっているのが現状でして、最終的な目標までの到達というのはどうなんだろうかというところでございます。
6ページ、これはスケジュールの話でございます。地球温暖化対策大綱の中では、実際の約束年である平成20年から24年の前、6年間を2つに分けまして、第1ステップ、第2ステップという形で2段構えの構成になっております。今年(平成16年)は第1ステップの最終年でして、第1ステップでやった方策で足りないということであれば、第2ステップで、どんな施策を講じるのかを考えましょうということになっています。そういうことで環境税の議論がいろいろ盛り上がっている、こういうことでございます。
以下、環境税についてご説明したいと思いますが、8ページに飛んでいただきます。環境税に関しては当税制調査会においても議論をしたことがございまして、平成15年6月の「少子・高齢社会における税制のあり方」の中で環境税について書いてございます。基本的考え方をちょっと飛ばしまして、留意点のところですが、2つ申し上げておきます。まず最初に、「まず」と書いてあるところですけれども、ここでは、環境税というのが、石油関係に税金をかけてなるべく消費を抑える、これを価格インセンティブ効果と申していますけれども、こういうものについて疑問点が出されております。そこに書いてございますように、要するに政策目的が実現されるにつれて消費が減って税収が減るということであれば、それは税ではなくて課徴金ではないかという意見があったのが1点。
もう1点ですけれども、次の「さらに」というところですが、環境税の税収を使って何か環境施策をするのか、しないか。一般財源にするのか、あるいは目的税、または特定財源にするのかという点について、「税の基本的な考え方に沿って検討する必要がある」という指摘がなされております。あと一番下のところで、既存のエネルギー関係諸税等との関係についても検討すべきである、というメンションがございます。
9ページ以降が、今年に入ってからの中央環境審議会なり経産省の経済産業構造審議会のご意見でございます。ここでは、「大綱の評価・見直しに関する中間取りまとめ」というのが出されていまして、エッセンスを申し上げますと、温暖化対策税制は、いろいろなほかの施策と比べますと有力な手段だという結論でございますけれども、同時に、国際競争力や技術開発リソースを失うとか、有効性に疑義があるといった点でさらに議論を深めることが適当である、こういう取りまとめになっております。
次の10ページでございます。これは、温暖化対策税制だけを専門にやっております、中央環境審議会の施策総合企画小委員会の中間とりまとめでございます。一言で申し上げますと、課題として残された事項が多いということでして、左側の下に黒いポツが4つ並んでいますが、こういったものについてはさらに検討しなければいけないということで、実は具体案が出ていないという状態でございます。
併せて、10ページの右側のほうで、産業界からの反対があることも踏まえて今後もいろいろ意見交換をする必要があるというふうにされております。
11ページでございます。ここでは、経産省が中心になっております産業構造審議会で、環境税について導入には反対だという指摘がなされていると。具体的な問題点、下線部のところですけれども、効果が不明確であるとか、国際競争力に悪影響を及ぼすとか、産業の空洞化が起こりかねないとか、あるいは、予算も既存のものでいいのではないかとか、そういう指摘がなされたということです。
以上の議論を取りまとめまして、12ページにまとめておりますけれども、留意点ということで、1つは、一番上のところでございます。温室効果ガス6%削減のためにどういう施策をどう使っていくのか、そういう検討が必要だという前提。その下ですけれども、当然のことながら国民の理解と協力が必要。そういう前提で環境税をやるという前提であれば、税制面で以下のようなところについて議論のポイントがあるのではないかということで、今までご説明申し上げたようなことを並べております。
たしかに議論の前提条件がそろわない中ではありますけれども、他方で、先ほど申し上げましたように、第1ステップの最終年ということになっておりますので、大綱の見直しが必要だという状況も念頭に置きつつ議論をしていただく必要があるのではないかと思っております。
私からは以上でございます。
〇石会長
地方税関係、岡崎さん、お願いします。
〇岡崎企画課長
「地方税関係資料(環境税関係)」という薄いものがありますので、これで地方と環境のかかわりだけご説明いたします。
1ページですけれども、環境対策、あるいは地球温暖化対策との地方のかかわりでございます。環境基本法36条では、「国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた環境保全のために必要な施策を実施する」というのが地方公共団体の責務になっております。
地球温暖化対策推進法につきましては、「区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための施策を推進する」と書いてありまして、具体的には、「地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し温室効果ガス排出の抑制のための措置を講ずる。区域内の事業者又は住民が温室効果ガスの排出を抑制するような活動の促進を図る」というようなことが責務として書かれております。
2ページですけれども、そういうもとでどんなことをやっているかというのを、分野別に整理をした表であります。真ん中を見ていただきますと、省エネ機器の助成とか、公共交通機関(地下鉄等)の整備を進める、ディーゼル車を規制する、自転車利用を促進する、低公害車を導入する等々ありますし、また、風力発電等もだいぶいろいろな団体で始めております。それから、原子力発電所立地対策、大きいところで廃棄物対策。これは、ガス排出の少ない高機能な廃棄物処理施設に更新を勧めるというので、毎年、かなりお金がかかっているようであります。そのほか、フロン回収とか、当然、造林、林道、公共施設緑化等も行っているということで、備考欄にはそのうちの特に大きなものの金額を掲げさせております。
3ページでございます。地方税と環境の関わりでどんなことが言えるかということですが、1番は、まさに環境という政策目的で税の特例があるものです。一番上の〇は、ご承知のように、自動車税のグリーン化を13年度に地方税独自の策として導入いたしておりまして、これの特徴は、ただまけるのではなくて、環境負荷の大きいものは税率を重くする、環境にいい車は安くするということで、これはもともと税収中立を前提に設計したのですが、技術の進歩というか、ものすごく税制が効いたのかもしれませんが、環境にいい車ばかり発売されまして、大変減収になっております。効果としては相当あったのではないかと思います。
同じく自動車取得税でも軽減措置がありまして、これも相当な効果が出ているのではないかと思っております。その他、公害防止施設等の特例がございます。
2番ですけれども、特に環境対策ということでつくってあるわけではありませんが、結果としては、従量税的なもので環境負荷の軽減と整合的なものになっているのではないかというのが、例えば軽油は引取量に対して従量で課税しております。自動車とか軽自動車についても、たくさんガスを食うというか、排気量等によって税率をだんだん高くしていく設定になっております。
3番ですが、これは新しい話として、最近この1年ほどの間に4県ほど、森林環境税という名前の措置がされております。これは個人住民税、法人住民税の均等割の超過課税をするということで、低額ですが、500円とか、法人の場合は5%とかいうことですので、これで抑制効果が出るわけではありませんけれども、きれいな水と空気を提供する森林を整備する財源としてこういうものが課され始めております。金額的に一番大きいのは、岡山で4億5,000万円程度という税収でございますが、こういう工夫がされている。ですから、抑制効果というよりは啓蒙的な効果があるのではないかと思います。
最後の産業廃棄物税、今、13府県1市で実施中です。現在、私どもに来ております協議でほかに6県。ですから、約20団体ほどでこういうものが導入されている、あるいは、されつつあります。こちらは、最初に言った三重県等の話を聞きますと、かなり排出量が減っているという効果もあるのではないかと言われております。
私からは以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。だいぶ時間が切迫しているのですが、せっかく事務局から資料を出していただきましたし、今後、我々としても議論を深めていきたいと思いますので、ご意見なりご質問があれば。
どうぞ、翁さん。
〇翁委員
環境税につきましては、課徴金的な税という手法が本当に最適な手段なのかということについては十分議論をしていく必要があるのではないかという印象を持っております。例えば排出権取引とか、そういうマーケットができていけば、より環境に配慮する、企業がより有利になるという形で、企業の努力のインセンティブのコンパチビリティー(両立し得る)、そういうやり方があるわけで、そういうメカニズムを使ってより目的を達成するという手段もあると思いますので、ほかの手段との比較で、こういった課徴金的な手法が最適かどうかについては慎重に議論する必要があるのではないかと思っています。
〇石会長
おっしゃるとおりだと思います。
それでは、田近さん。
〇田近委員
CO2 の排出に関してこの頃指摘されるのは、産業部門より民生と運輸部門が大きくなっていると。運輸のほうは排気ガスだと思うのですけれども、民生部門が大きくなっている理由は車というふうに考えていいのですか。というのは、税との関係がそういうところに……。
〇岡田税制第三課長
これの内訳、詳しく手元に資料はございませんけれども、例えば電気の使用量であるとかそういうものも含めております。あと、一点申し上げておきますと、最近、原発が止まっている。したがって、石油火力、火力発電を中心に稼働せざるを得ないという事情も、ここのぐっと上がっている部分にはあるという話も聞いております。
〇田近委員
そこが重要なところだと思うのですけれども、産業のところはいろいろ議論がある。民生のところは、もしですけれども、車の大型化とか、排気量の大きな車が増えて、そしてCO2が増えてくるというようなものとの連関が事実としてあるかというのは、税との絡みで考えていくときは重要だろうと思います。
〇石会長
もっともっと我々はいろいろ情報は必要でしょうね。
どうぞ、千速さん。
〇千速委員
時間の都合がありますので簡単に要点だけ申します。先ほどの環境税関係の資料の5ページにありますように、右側の平成14年度(2002年度)の数字ですが、産業部門は着々とCO2 排出量を減らしつつあるわけです。基準年というのは90年ですが、1.7%。これをさらに7%まで下げることをコミットしているわけですけれども、これは必ず達成できると思っています。よほど経済の成長の規模が違ってくると狂ってきますけれども、達成できると思います。問題は民生部門と運輸部門というのははっきりしているわけです。
ちなみに、経団連として「実施行動計画」というものをつくりまして、産業界・経済界、非常に熱心に進めているわけです。例えば、身近な自分のところの鉄鋼業の例でいきますと、1970年から、省エネルギー、それから環境対策ということで、鉄鋼業だけで対策費を4兆4,000億円投入しております。鉄鋼業だけで見ますと、1990年比で7%の省エネは達成しているということでございます。
それだけではなく、非常に高い省エネ技術を、中国を中心にして、廃熱回収、最新の省エネ技術、環境対策設備、技術トランスファーを、この7、8年、相当熱心に進めております。そうした技術移転をどんどんすることで、むしろ地球規模でCO2 削減、環境対策を進めないといけないというのが現在の認識です。
〇石会長
産業界の方は産業界の努力がずっとございますけれども、産業界から見て、では民生と運輸、どうしたらいいかという具体的ご提案はございますか。そこがあまりないから、どうも困るんですよね。
〇千速委員
これは非常に難しいと思います。
〇石会長
ええ。だから環境税が出てくるんですけどね。
〇千速委員
ガソリン税とかそういうのはもっと高くしろとかいろいろありますけれども、例えば、自動車は最近は……。
〇石会長
エコカーが出てきましたね。ああいうことでしょうかね。
〇千速委員
ええ。それ自体も、そういう対策を進めてきていますけれども、例えば、3人乗ってなかったらどうとか、大勢乗っていたらいいとか、1人では高くつくとか、そういうことを考えないと、と思います。
〇石会長
この問題もいろいろな方面からいろいろな議論がありますので、少し体系的議論を含めて、また、情報も整理して早晩議論しなければいけないかと思っています。
時間が数分過ぎておりますので、あとの予定を申し上げたいのですが、消費税に関しては今日ずいぶん議論が出たのですが、実務的なところで我々として知らなければいけない、例えば食料品の定義も含め、インボイスのやり方、あるいは、軽減税率にしたときの問題点の難しさ等、多々ございます。それについて私からこの場をかりて、事務局でそのレベルの議論を整理してもらって、ぜひ我々の疑問に答えを出していただきたいと思います。
それでは、あとの予定ですが、お手元にスケジュール表がございます。10月から11月にかけて基礎問題小委員会と総会を出しておりますので、あらかじめご予定ください。最後の2つは時間が未定になっておりますが、この段階で起草会合ができ、そこで税調として最終的に議論を固めようというのが24、25日のあたりでございます。時間は未定でございますが、ぜひこの辺もノートに書き入れていただけたらと思います。
総会は、ここに書いてございますように、10月26日(火曜日)を予定しております。これも、その前の19日、22日、2回ございます基礎問題小委員会の議論を、今日みたいに整理してご意見をいただく場にしたいと思っています。基礎小は、19日が法人課税、国際課税、22日が資産課税あるいは金融所得課税等を議論したいと思いますので、お忙しいと思いますが、ぜひご出席いただきたいと思います。
そういうわけで、11月の末までには今年じゅうの議論は終わりにして、しかるべき答申をまとめてと考えております。政治的な事情もございますので、若干狂うかもしれませんが、粗々の予定としてこうなっております。
では、5分ほど過ぎてしまいましたが、熱心なご審議をありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。