総会(第16回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成16年10月5日(火)16:10~16:29

石会長

今日は、別に見聞を広められた後ですから、僕から特にまとめることないんですが、感想を申し上げて、あと、もし質問があれば、今日の議論以外でもお答えするという形で進めさせていただきます。

まあ幾つか議論がでて、とりわけ、総会にご出席の委員の方が、かなりいろんな問題意識をお持ちであるということがわかったということが、僕自身にとっては収穫でありました。そこで、これからどういうことをやっていくかという道筋を、今日は前2回の基礎問題小委員会の議論を受けてやったんですが、それなりの土俵は出てきたと思います。やっぱり具体的な財政再建のターゲット、まあ井戸さんが言ってましたけど、一体どこまで赤字を削ればいいのかねと、いつまでだねと。プライマリーバランスの回復だといっても、あれはほんの止血なんですよね。したがって、あれで事が終わるわけでもない。そうなると、本当に絶対額でストック分を減らすのかなんていう議論を、ターゲットをもう少し税調としてもつくらなきゃいけないな。時間かつその数量目標みたいのがあればと思いますが、まあそれをベースにして税負担をどのぐらい高めるかという、多分議論ができるんでしょう。したがってマクロの、言うなればターゲットをもう少し議論できればと思います。ただ、具体的な数字までつくるのは難しいことだと思いますが、それが第1点。

第2点は、やっぱりこれから我々が構ずべきことは、いざマスコミでは時々報道される増税に踏み切るとか、税負担増でいくといったときには、多分手順がかなり必要である。今日も消費者団体の方からもでておりましたように、負担に見合った受益はないんじゃないのと。したがって負担・負担と言われてもお応えできないと。このギャップを、専門家ということで今日、学者の連中から見ると「何を今さら」という気はする議論なんだけど、これをよりビビッドというか、より明確に示すべき責任はありますよね。誰が見たって、年金だって、医療だって、介護だって、ご本人が負担しているより給付は多い、これは実例を挙げていろいろ言えば、だんだん納得してもらえるかなと思いますが、ただ、よく財務省が出しているパンフレットにも、基本的なサラリーマンが納めている税負担に見合った以上に、例えば子どもたちの文教の費用がきているとか、あるいは医療がどうだこうだと、いっぱい並べてますよね。それでもなかなか分からないんですよね。そういう意味で、受益と負担のギャップを解消といったときに、そこをもう少し具体的に何かできないかなということですよね。したがって、給付の中身を明確に出して、それを負担とくっつけるような、そういう作業が必要かなと思っておりました。ただ、やっぱり突き詰めていくとないものねだりのこともあるんですよね。これ、どこまで解決したら、本当に税負担増というふうにスイッチできるかねという議論も起こりますよね。それは、まあ公務員の定数を削減しようということ、あるいは教員を減らせということでも、それはぎりぎり詰めていったときに、かなり難しい問題があり、それを論証しろと言われても困るものが出てくるかもしれない。

それから最後に、やっぱり井堀さんが出した平準的に税負担を高めていくのか、それとも、あるとき集中的にやるかという選択が残るんですよね。これは、消費税の場合、所得税の場合、法人税の場合、こんなのは税によって違いますけれども、ただ、既に平準的に、税負担の平準化というのはもうここ2年ぐらい、皆さんがよく表にして下さるように、保険料、税負担、含めてやってるんですよね。ですから、それとの比較において次なる集中的なもの、それから景気はどうかという議論、この辺のタイミングのはかり方は非常に難しいなと思ってます。そういう意味で、年金も含め、医療も含め、介護も含め、言うなれば保険料の負担と税の負担とを絡めつつ、いつどのような具体的なターゲットを決めてシナリオを書くか、そして国民の方々に納得をしていただくような手だて、情報をどう提供できるか。これが悩みであるなということが今日、議事を進行していて分かったということであります。まあこれからいよいよ議論の本番のなかで、これを一つずつ進めていく努力が必要かなと思っています。

というわけで、別に改めてご説明することはありませんが、何かご質問があればお答えするという形になります。

記者

何点か質問させていただきます。まず1点目ですけれども、最近、歳入歳出一体改革ということで、今度、石会長も財制審のほうに出席して、なにかスピーチされるやに聞いているんですが、そのあたりはどういうふうに評価されていますか。

石会長

いや、私も財制審の委員ですから、当然、委員の務めとしてと思ってます。おっしゃるとおりなんですよね、これまで審議会というのも縦割りでありまして、税調も自己規制は結構働いていて、歳出削減の具体的な提案をしていいかねとか、あるいは社会保険料引き上げ、あるいはその幅について何か言っていいかねということで自己規制してましたけど、僕はそういう時代ではないと思っています。そういう意味で、歳出カットが将来、税負担増の前提であると言われれば、歳出カットの中身についてもある程度税調の委員として、税調側としてもいろいろ意見を言ってもいいと思ってますよね。そういう意味を踏まえて、歳出歳入の具体的な、もうなんせギャップが開いてるわけですから、そのギャップの埋め方ね。歳出削減率どのぐらい、税負担増どのぐらい等々、あるいは社会保険はどのぐらいというようなことは、お互いの関係者が議論したってできない話ですよね。で、これも事務局だけにお任せしてていいかどうか、こういう問題なので、なにか然るべき議論の場も必要かなと思ってます。その第一段として、私が財制審で話す。それから、財制審からもいずれ来てもらおうなんでことで、交流を深めつつ、パリーグとセリーグの交流試合じゃないけど、交流をしながら、それから後をしかるべき、何か場ができればなとは思ったりしてます。その具体的な場は、まだ具体的にセットはできてませんから、何とも言えません。

記者

先程、感想のなかで社会保障の関係で、社会保険料と税というのを、まあトータルでどう考えるかというあたりなんですが、これは一つ、官房長官主宰の「社会保障の在り方に関する懇談会」…。

石会長

ええ、あれ、でもこれから議論になると思いますね。

記者

そこでそういう話を取り上げるつもりなんでしょうか。

石会長

それ、非常に大きな問題なんですよね。特に、連合と民主党は基礎年金を全部税でやれと。これは、財界もそうですね。こういう声がある。片や、保険料というものの性格を、要するに乱すような形で国庫負担を増やしてはいけないと。こういう議論もまたあるんですよね。これは、ある意味で税でやるか、保険料でやるかということなので、私、全く個人的な希望ないし意見なんですが、年明けて1月、6月というのはこれまで基礎研究を税調でやったました。そういうところで社会福祉なり社会保障の財源的なあり方みたいな議論を少し、いろんな人の意見を聞きながらやる場ではないかと思っていますので、いずれ税調としても正式にこの議論を取り上げたいと思ってます。

記者

フリーターの課税、総務省が徴税の強化というような方向を…。

石会長

課税の強化というか、徴税の強化というより、漏れていたものを要するに課税の公平・中立のためにをやるというのだから、別に強化でも何でもない。怠慢を認めて、これから本格的に戻すというふうに僕は考えてますけど。

記者

国税でも、とれていない部分が…。

石会長

いや、国税はいろいろ聞いてみると、例えば地方税みたいに、住民税みたいに、1月1日云々という定義は別に国税ではありませんから、源泉徴収義務者として、給料を払っている人、例えば2カ月働いた、3カ月働いた云々でもちゃんと届けてると思います。したがって、それが払われていないというのは、要するに2~3年、長期にわたる人で払っていない、義務を怠ると同じ類であって、別にフリーターだからといって、取り損なっている部分が特に多いというふうに私は理解してません。まあ少額である、あるいは短いという形に特殊な事情があるのかどうか分からない。それはちょっとこれから精査します。

それから、要は問題はあれでしょう、会社から各自治体に、調書というのかな、そのあれを1月1日でない出さないというところに問題がある。大した手間にもならないということを考えれば、その中間段階でも、あれは8万幾らだったかな、年間8万何ぼという額を超えた人については当然のこと、源泉徴収義務者である会社なら会社のほうが調書を送ればいいだけの話で、それを徹底していなかったということだと思います。これはある意味では怠慢だったと思いますので、それを認めてこれからやろうと。で、結果として徴税努力に結びつくのか、税収増に結びつくのか、それは結果として課税の不公平が直されるのは、それはいいと思いますけどね。

そういう意味で、私のほうからは、このフリーターについて雇用が随分変わってるという「実像把握」のところで議論したという議論と結びついているという意味においては、これはかねて問題意識を持ってましたのでやっていきたいと、このように考えてます。まあ、どのぐらい税収があってどうかというのはこれからの話で、ちょっとまだデータ的にはまとまっていないと思います。

記者

税調でも議論になっていると思いますが、豊島区の自転車放置税、これについて石さんのお考えをお願いします。やるべきかやるべきじゃないかということをお願いします。

石会長

今日、一部始終聞きましたけど、ベストな解決じゃないね、あれは。なんか双方、何ていうかなあ…、結局話し合いができなくて税に訴えたという、ある意味で税を手段に使って事柄を解決しなきゃいけなくなった状況のほうが問題じゃないかと思いますけどね。本来だったら、僕もあそこで言ったけど、駐輪場をちゃんと、地下とかに設けて有料でやりゃあいいだけの話を、まあ結果オーバフローしちゃったんでしょう。まあ確かに池袋の周りに行くと、ああいう放置自転車が多いのは事実ですけども、僕の大学のある国立だってそうですよ。国立はしかるべきところをつくって、大学の道路あたりにいっぱい置いて、それで放置自転車に対して 3,000円かなあ、なんか知らないけど取って、という形でうまく解決してます。まあ量的な問題が結局できなくて税に訴えたという形で、しかし、今日、遠藤さんも言ってたように、同意だとか不同意だとかという制度を作っておいて、これでこういう問題になったというところが、少しこじれてるんじゃないかと思いますけどね。今後もこれからいろいろな形で、妙な方向に発展しなきゃいいと思ってますけどね。

記者

先程、歳入歳出一体改革のお話の中で、歳出カットで幾ら、歳入カットで幾ら、あるいは保険料で幾らというような、関係者が議論するしかるべき場ができればと思っているとおっしゃいましたけども。

石会長

できればいいなあと思ってる、アイ・ウイッシュですよ。

記者

具体的なイメージというのは…。

石会長

これまで、財制審と税調の幹部が集まって議論するとか、社保審と集まって議論するとか、随分やってるんですよ。ただ、これはただの情報の交換であって、具体的な、何というかサジェスチョンまでいかないんですけどね、ある意味では、それを受けとめて、官邸側のほうで社会保障に関する懇談会みたいなのをつくったというのもその一つのあらわれでしょう。ある意味では、経済財政諮問会議みたいのもそういう一環かもしれない。だから、どこでもいいんですよ。どこでもいいけど、縦割りの審議会方式を横串でなんかできる制度をぜひつくってほしいという、まあある意味で私の期待を込めての問題提起でありまして、これを今後やらないともうどうしようもないですね。それも、しかるべき権威のあるところでやってもらうというのが一つの方法だと思いますね。なかなか下から働きかけたんじゃあ動かない面が多々あるので、少し上のほうからドカッとやってもらいたいという希望も入ってます。

記者

定率減税の縮小のお話ですが、最近、景気の動向がさらに芳しくないというような見方が広がってきて…。

石会長

一つの見方であって、足元がしっかりしてる見方もあるんじゃないですか。

記者

ですが、民間のエコノミストの間では、定率減税の縮小についても時期尚早であるというような声が結構強まってるように思われるんですが。

石会長

議論もしちゃいけないという意味なのかな、あれ。要するにアナウンスメント効果があって、みな冷えちゃうからって。僕が何度も言ってるように、1年3カ月後の景気をあらかじめ予測して、今は議論しちゃいけないっていうほうがおかしいんじゃないかと思いますよ。要は、どっちかというと短観がでてきて、なんか先の見込みが悪いっていうだけの話でしょう。あと、原油価格の話でしょう。誰か逆に言えばそういう人に聞きたいのは、いつまでも先行きのマイナスの状況だけわあわあ上げてきて、今後議論しちゃあいけないという封じ込めちゃうほうが、なんか知らないけど、便宜主義者みたいな気もしますけどね。だから、ちゃんと議論は議論としてやっていて、いざ発動のときに、とてもできる状況じゃないといったら延期なり、中止までしなくてもいいかもしれない。だから、おそらくバブル崩壊後、十数年たって、これだけ赤字が出てきて政策転換ができないという最大の原因は、そこなんだな。だから、それはそろそろ脱却しないと、逆にいって、時間がもうなくなってくるというふうに追い込まれるんじゃないですかね、財政破綻なり、財政健全化のほうにシフトするスイッチがね。だから僕は、それは確かに将来は僕だって分からないけど、要はシナリオはつくっておかないと発動できませんよね、いざとなると。それだけの努力はもうしてもいい時期ではないか、そのぐらいの底堅さは十分にもう、今の民間主体の経済回復であると考えてますから。だって、過去1、2年で一番、先進国のなかでは日本の経済成長高いでしょう。だから、OECDとかああいうふうの見込みだって悪くないですよ、ほかの国に比べると。そこで、何か知らんけど、また先行きおかしいねというところ、針小棒大的に言うのもどうかなと思う。針小棒大というとオーバーだな、そこはあまり過度に心配するのもな、と思いますけど、心配は大いにして結構なんです。だから、心配をしつつも、シナリオをつくるように、政策立案をしたらいいじゃないかというのが僕の意見です。だから、一たん決めたら、どんな景気になろうが、何が何でもやっちゃあいけないよというのは、そういう硬直的な政策立案はできないなということですが、そろそろリスクを取らないとどうしようもないなという意見も片や持ってるんですよ。難しいところですね。僕は時の大臣ならどうするか分からないけど、とりあえず審議会の役割としては、しかるべき問題意識を持って、案だけはかためる努力はしなきゃいけないと思ってます。

記者

先程も質問がありましたけど、法定外税、今日は自転車の話をしてたんですけども、課税自主権の話とかもあって、今後、相当いっぱいいろんなアイデアが出てくる可能性もある中で、税調としては今の話一回こっきりなのか、例えば法定外税についてある程度もうちょっと考えたほうがいいと思ってるのか、その辺を教えて下さい。

石会長

たまたま豊島区が、なにも税が乗り出さなくてもいいような案件に乗り出してきたなというイメージを持ってるんですよ。したがって、法定外普通税というのは今後、どういう理由でどういう格好で使われていくのかというのをちょっとみなきゃいけないし、それから、総務大臣の説明でも、理解を得ろ、理解を得ろと書いてあるよね。でも、当事者間で理解を得ろったって、本当にどういう意味で理解なのか。逆に言えば、産廃税のときどうだったのか、宿泊税のときどうだったのか、といろいろありますよね、当事者間の。ちょっとそれは過去のケースも洗いつつ、今後の大きな仕組み全体で同意とか不同意とかっていうので、本当に残しておくのかどうかね。もしくは、この問題をさらに発展するなら、そこまで話がいくんじゃないかなあ。いや、いくべきだと思いますね。

今日、河野さん言ってたけど、もう東京じゅう、放置自転車というのは山ほどあるんだから、この手法でいこうということになると、かなり波及効果も大きくなりますよね。いいのかどうか、ちょっとその辺も、ちょっと判断できかねますね。まあ税を本来使うべきところでないのに使ったというイメージですね、僕の印象ですね。税としてのでき上がりもよくないよ、あれは。因果関係がはっきりしない…因果関係だってきちっとやったわけではないからね。払うべき人と納税者の間の関係もね。そういう印象を持ってます、個人的には。

(以上)