第16回総会 議事録

平成16年10月5日開催

石会長

ただいまから、16回目になりますが、総会を開催させていただきます。

今日は、上田勇財務副大臣、ご出席でございます。初めてでございますので、ご紹介させていただきます。よろしくお願いします。

2回ほど基礎問題小委員会をやってきまして、国と地方の財政問題、あるいは社会保障をめぐってさまざまな議論が展開されましたので、今日は、どういうことをやっていたかというご報告を兼ねまして、実際にご報告いただいた委員の方からもう一回プレゼンテーションをお願いすることを考えております。

同時に、かねて宿題にしておりました、豊島区の「放置自転車等対策推進税」という長い名前の税について、総務省から、実態並びに、今どういう状態に置かれているかをご説明いただくということを考えております。

それから、総会でございますから、基礎問題小委員会でやったことをただご紹介するだけではさしたる成果がございませんので、総会のメンバーの方から、今日出てきますようなことをベースにいたしまして、今後の税制改革の基本的な方向につきまして、ぜひご意見を賜りたいと思います。これをもう少し詳しく検討せいというようなことをいただければ、また基礎問題小委員会に持ち帰って、それを議論してまた持ち帰るというように、少し往復したいと考えておりますので、ぜひ総会の皆様からご意見をいただきたいと考えております。

では、早速始めましょうか。2つに大きく分けますが、一つが、財政状況を国と地方に分けて説明し、後半は、社会保障のほうに少し軸足を移したいと考えております。

最初に、国と地方の税財政の現状と課題を、羽深調査課長と岡崎企画課長から、おのおの時間をとりましてご説明いただきます。

羽深さんからどうぞ。

羽深調査課長

それでは、お手元の「わが国財政及び税制の現状と課題」という資料に基づきまして、簡単にご説明をさせていただきます。

まず最初に、平成15年度一般会計税収決算額、7月末に発表されたものを載せておりまして、1ページをご覧いただきますと、15年度の決算額が43兆2,824億円、対前年5,508億円のマイナスということで、予算に対しては1兆5,000億円ほど増えたのですが、決算ベースではマイナスでございます。ただ、ご覧いただきますように、平成12年に郵貯の集中満期が到来した関係で、50兆円、特殊収入が増えておりますけれども、その後、対前年ずっと減ってきている、その減り幅が縮小してきておりまして、そろそろ底打ちの兆しが見えてきているところでございます。

2ページ、決算額では、主に増えたものが法人税、対前年5,900億円の増、予算に対しては1兆円ほど増えております。企業収益を反映したものです。所得税は、配当所得にかかる税収が増えたので、予算に比べてちょっと増えておりますが、前年度比では約9,000億円のマイナス、消費税は前年比1,000億円弱のマイナスというような数字でございます。

3ページは、その細かい税目ごとの資料ですので、省略いたします。

次に「わが国財政の現状と課題」ということで、財政全般についての状況をご説明します。

4ページをお開きいただきますと、一般会計歳出が82兆1,000億円、社会保障関係費が19兆8,000億円、国債費が17兆6,000億円、地方交付税交付金等が16兆5,000億円、この3大経費で全体の約3分の2を占めるという状況です。歳入のほうは、租税及び印紙収入でわずかに全体の5割、残りのうち37兆円程度が公債金収入ということで、公債に依存した体質になっている。

5ページも復習のような資料ですが、過去の一般会計税収と歳出総額の推移です。税収のほうは、平成2年度に60兆円ありまして、このときに、一番下の歳出に占める税収の割合が86.8%、9割近かったのですけれども、その後、歳出がどんどん増加しておりまして、一方で歳入は、景気の低迷とか減税の影響もあって、少しずつ減ってきまして、ワニの口のようなグラフになっております。16年度で、歳出に占める税収の割合が約50.8%、半分ということでございます。

6ページは、このような財政赤字が膨らんできているわけですが、その問題点を簡単に整理しております。財政赤字が増えますと、財政の硬直化によりまして政策的経費が圧迫されたり、効率的な資源配分が阻害される。あるいは、制度の持続可能性への疑問が生じて、将来不安からの消費の減少--「非ケインズ効果」と呼ばれておりますけれども、そういう影響ですとか、将来はクラウディング・アウトの懸念もある。それから、世代間の不公平の拡大というような問題が指摘されております。

7ページが、「財政事情の国際比較」ということで、左側が財政収支、フローベースのGDP比、右側が債務残高のGDP比です。フローのほうは、1990年冒頭は日本は若干のマイナスだったのですけれども、その後だんだん赤字が増えまして、現在、GDP比で7%ぐらいの赤字になっている。一方、欧米諸国は、90年代に財政再建を進めまして、だんだん赤字が減ってきております。直近、アメリカは少し膨らんでおりますけれども、傾向としては90年代に減らしてきている。右側の残高も、それに伴いまして、欧米諸国は横ばいですが、日本は今160%ぐらいということで非常に大きな債務残高がたまっております。

8ページは、各国の財政健全化に向けた取組みを歳出・歳入両面から整理したものでございます。歳出面は大きく2つに分けられると思います。一つは、アメリカのcap制(歳出上限の設定)、イギリスの向こう3年間の公共支出の伸び率上限の設定、あるいはフランスの歳出伸び率の物価上昇率以下に抑制するというようなことで、歳出の伸びなり上限を定めるやり方。

もう一つは、アメリカのpay-as-you-go とか、ドイツの新規措置は同等の既存措置の削減を条件とするとか、イタリアの新規歳出要求に当たっての財源確保義務の徹底といった、何か新しいことをやるには財源を自分で出してこい、スクラップ・アンド・ビルドないしpay-as-you-go という措置、この2つが主にあるのかなと。

日本もこれと同じように、公共投資とか裁量的経費にマイナス何%という限度を設けたり、義務的経費で削減した分、公共投資や裁量経費を要望できる仕組みを入れるとか、こういう措置をとってきております。

歳入面での取組みですけれども、アメリカは、所得税、法人税、遺産税等の増税、ヨーロッパ諸国は付加価値税の引上げ、あるいは、個別間接税、環境税、一般社会税等々、ほかの税目での増税などをしてきております。

9ページに、アメリカにおける財政健全化への取組みが書いてあります。1990年当初、ブッシュ政権、父ブッシュのほうですけれども、末期は2,900億ドルぐらいあった財政赤字が、1993年以降、クリントン政権になりまして、包括財政調整法などの取組みを行ってだんだん減ってきまして、1998年には黒字になりました。直近ではまた赤字になっておりますけれども、90年代は財政再建をやってきたということでございます。

10ページがヨーロッパです。欧州通貨統合がありまして、それに伴ってマーストリヒト条約というものが締結されました。そこに、原則として財政赤字はGDPの3%、総債務残高はGDPの60%を超えないということが決められておりまして、この縛りに沿って各国、財政再建への取組みをしてきているということでございます。

11ページですが、日本の場合です。「2010年代初頭における基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を目指す」ことを、「改革と展望」で閣議決定しております。現在、真ん中のグラフにありますように、国・地方合わせた基礎的財政収支が、14年、マイナス5.6%、15年、マイナス5.4%、16年、マイナス4.6%と、少しずつ減ってきておりまして、この傾向をずっと加速していって、2010年代初頭には黒字化に持っていきたいということで、個々の努力が必要ということでございます。

12ページは、一般会計について基礎的財政収支を計算してみたものでございます。16年度予算ベースで19兆円の赤字です。これを仮にゼロに持っていくとしますと、一般歳出の約3割、あるいは公共事業、文教、防衛の3つの合計額に等しい歳出削減をしなければいけないということで、一般会計の基礎的財政収支はかなり大きな赤字になっているということです。

13ページは、今まで歳出面で何をやってきたのかということを示すために、昭和40年度以降10年刻みで一般会計主要経費別歳出の推移を追ったものでございます。平成7年度から16年度までの9年間をご覧いただきますと、社会保障と国債費と交付税は増えていますけれども、特に公共事業あるいはその他の支出を中心に削減してきております。こういう努力はそれなりにはしているのですけれども、まだまだ赤字は大きいということでございます。

14ページ、とりわけ社会保障関係費の伸びが近年著しいのですけれども、将来的にもこれが一つの問題となるということで、右側の社会保障給付費の推移をご覧いただきますと、2000年で78兆円、国民所得比で20.5%だったものが、今の制度を前提として継続していくことにしますと、2025年には152兆円になり、国民所得比が29%。注2で書いておりますけれども、これを単純に足し込んでいきますと、国民負担率が約56%程度、5割を超えていくような状況になっておりますので、社会保障給付費の抑制が一つの課題であるということでございます。

15ページ、もう一つの課題というか、懸念要因として国債費がございます。左側の枠のところをご覧いただきますと、普通国債の残高が16年度末で483兆円、ちょうどこの半分だったのが平成8年度、245兆円でございました。国債残高がこの8年の間に倍になっているわけですけれども、利子及び割引料の欄をご覧いただきますと、むしろ減っているということで、要は利払い費が減っております。

なぜこうなったかというと、右側のグラフにありますように、長期金利が非常に低下しまして、いわばその恩恵がありまして、残高は倍になったけれども、利子及び割引料は少し減っているという状況でございます。今後、金利が上がりますと、国債費が増えていくということでございまして、1%上昇による国債の後年度影響額は、仮に17年度から1%上がるとしますと1.2兆円。国債の平均償還期限が約5年ですので、一たん1%上がると、それが毎年少しずつ増えていく形になりますので、1.2、2.3、3.7というふうに増えていくということで、今後の国債金利と国債費の関係が非常に気になるところでございます。

16ページは、それに関連して、平成9年(1997年)に金融危機がありまして、10年、11年くらいからいわゆる貸し渋りが言われ出しまして、ご覧いただきますように、銀行の貸付残高がどんどん減ってきている、それに反比例して、金融機関の国債保有額が増えているという図でございます。景気が回復してきますと、ちょっと状況が変わってくるという資料でございます。

次に「わが国税制の現状と課題」ということで、17ページ、一般会計税収の推移、16年度予算ベースで41兆7,000億円ですが、所得税、法人税、消費税が主な税目となっております。

18ページは、所得・消費・資産と分けて整理したものでございます。税収は減ってきているのですけれども、所得・消費・資産という分け方でいきますと、消費税の導入ないし引上げによりまして、消費課税のウエートが増えていて、法人所得課税、個人所得課税のウエートは減ってきているという姿になっております。

19ページは、税収とGDPないし税制改革との関係です。1990年(平成2年)に60兆円あった税収がバブル崩壊で次第に減ってきましたけれども、平成6年に景気対策で特別減税を打ち出しまして、それが制度減税ないし単年度の特別減税として残り、このあたりで税収が少し落ち込んできております。平成6、7、8年と少し税収が落ち込み、平成9年に一たんこの特別減税を廃止しまして、消費税の税率引上げがあったので税収が戻ったのですけれども、それ以降、金融危機等による景気の後退もありまして、平成10年からまた特別減税が入り、11年から恒久的減税が実施されて今日に至っているということであります。現在の税収のベースが41兆7,000億円。15年度、決算ベースで1兆5,000億円増えましたので、もうちょっと高いと思いますが、43兆円程度がベースになっているということでございます。

20ページは、2年度が60兆円、16年度が41.7兆円と予算ベースが落ちてきた要因の試算のようなことをしてみました。21ページをご覧いただくとわかるように、平成9年が経済の一つのターニングポイントと見ることができるかなと。平成9年までに、利子、土地、株などのバブル的なものが概ねはげ落ちておりますので、2年から9年の間の減収額6.2兆円がバブルに起因した一時的な増収の剥落と見られるのではないか。それから、9年から16年の間に落ちた12兆円のうち、その間に行われた税制改正を単純合計しますと、7兆6,000億円のマイナスになっておりまして、差引して4.6兆円が経済要因等による減収というふうに見られるのかなと。そうすると、全体で18兆円落ちたうちのバブル的要因が3分の1、税制改正が3分の1、経済要因が3分の1ということが言えるのではないか。

ただ、経済的要因による減少が4.6兆円ですが、15年度決算で1兆5,000億円増えましたので、今の時点で見ますと、決算ベースで増えた分は戻っているのかなという気もしますし、税収自体はそろそろ下げ止まってきていますので、今後はちょっと違う局面に入っていくのかなという気もいたします。

22ページをご覧いただきますと、国民負担率と財政赤字の推移を整理してあります。1990年以降、租税負担率は低下し、社会保障負担率は上昇し、財政赤字は拡大するという姿になってきております。

23ページは国民負担率の国際比較です。日本の場合は、ご覧いただきますように、個人所得課税がほかの国の半分、消費課税が、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどヨーロッパの半分ということで、個人所得課税、消費課税ともに低くなっている。一方で財政赤字が大きいので、潜在的な国民負担率は45%になってしまっているという姿でございます。

24ページがOECD諸国の国民負担率。日本もOECD諸国ですけれども、右端から3番目、35.5%という国民負担率は下から3番目に低いということでございます。

25ページは、今後の税制のあり方について、平成15年6月に答申をいただいておりまして、それをまとめたものです。あるべき税制の基本的視点として、将来にわたる安心をもたらす税制、若者から高齢者までがともに支える税制、個人や企業の活力を引き出す税制、という3つの基本的視点。税制改革の方向性としては、個人所得課税の基幹税としての機能を回復すること、消費税の役割を高めていくことが基本である、ということで答申をいただいております。

26ページは、今年の6月にいわゆる「実像把握」ということで出していただいたものの要約でございます。先ほどの1年前の答申と比べましても、実像から見えてくるのは、人口減少社会・超高齢化社会、右肩上がり経済の終焉、家族のかたちの多様化、財政赤字、これらをにらみますと、将来にわたる安心をもたらす税制が必要だとか、家族のかたちの多様化等を見ますと、若者から高齢者までがともに支える税制が要るのではないか、日本的雇用環境の揺らぎとかグローバル化をにらむと、個人や企業の活力を引き出す税制ということで、前のページの3つの視点は、「実像」のキーファクトからも読み取れるのかなと。今後の税制改正を考えるに当たっては、このキーファクトもにらみながら「実像」に基づいてやっていくことが大事かなというふうに考えられるわけでございます。以上です。

石会長

ありがとうございました。

では、地方税関係、地方財政関係、岡崎さん。

岡崎企画課長

資料は「基礎小19-2 地方の税財政の現状と課題」でご説明いたします。調査課長のほうから国・地方を通じた説明がありましたので、地方に関係する部分だけここにそろえてあります。

まず1ページでありますが、平成15年度の決算見込額がほぼ固まりましたので、ご覧いただきたいと思います。平成5年度以降の増減が書いてありますけれども、下の表の15年度の欄であります。32兆1,725億円という見通しの地方財政計画に対しまして、決算が32兆1,761億円、誤差がわずか36億円という、前例のない、見通しどおりの決算になっております。ただ、その決算額は、右から2番目ですが、14年度に比較しますと、7,600億円余り減少しているということでございます。

2ページは、主な税目別の内訳でございまして、右から3番目の欄が対地方財政計画の増減、全体では36億円の増でありますけれども、個別に見ますと、個人住民税、自動車税、固定資産税等が見込みよりも落ち込んでおりまして、それを法人二税がカバーしたという形であります。一番右の欄の決算額対前年比を見ても、法人二税だけが105.7%ということで、ほかは大体前年割れをしているということでございます。

3ページは、細かい内訳ですので省略いたします。

次に「地方財政の現状と課題」、4ページをご覧いただきます。毎度申し上げておりますけれども、地方財政はこのところずっと大幅な財源不足でございます。歳出を賄うに一般財源が14兆1,498億円足りないというのが平成16年度でございまして、その内訳としては、恒久減税、あるいは15年度税制改正の先行減税等の減収が4兆円ほどありまして、通常収支の純粋な不足が10兆1,723億円でございます。下のほうに行きまして、地方財政の場合、公債依存度は、国庫補助金、分担金、負担金、使用料・手数料等、いろいろ収入が多いものですから、率的に見ますとそう高くなく感じますが、16.7%と、今までの地方財政の中では相当高い率まで来ているということであります。

5ページでございます。毎年10兆円以上の不足が出ているこの数年でありますけれども、平成5年度にさかのぼりますと、実は、この年の地方財政計画では財源不足額が約0.2兆円と、ほぼ無くなっておりました。この年以降、どういう収入が減って、どういう歳出が増えたので財源不足が増えてきたのかということを、平成5年度対比の増減で比較したのがこの棒グラフであります。中間は省略いたしますが、一番右の16年度をご覧いただきますと、平成5年よりも、その後の減税措置によって4兆円の減少が出ている。一番濃い網かけのところです。これは、地方税の減収額と国税の減税による交付税の法定率分の減収額を足しておりますけれども、4兆円の減収である。その他、景気等に伴う一般的な税の減収あるいは交付税の減収が3.7兆円ありまして、減税・減収で7.7兆円という穴が歳入にあいた。これが財源不足の大きな原因になっております。

もう一つは、公共投資等を相当してきたこともありまして、7兆円ほど公債費が増えているという歳出の増加要因がございます。その他、社会保障費の地方負担分も増加いたしますし、その上にあります給与費も、ベア分あるいは職員の高齢化分等で増えたものがございますが、大きなものは減税・減収分と公債費と言えると思います。

それから、その他の経費を全部ひっくくっております。途中では増えた年がありますが、最近はこのように非常に厳しく見直してきておりまして、平成5年度よりも、今の5つを除く、その他の要因は全部含めまして4.3兆円も減らしてきている。それにもかかわらず増加要因が非常に多いものですから、折れ線グラフになりますが、財源不足としては14.1兆円、平成5年度に比べますと、13.9兆円拡大したということでございます。これで主な要因の感じがつかめるかなと思って作成した図でございます。

6ページでございます。そういうこともありまして、毎年どうしても赤字調整をはじめ地方債を多く発行するということもありまして、平成4年度以降あたりから、借金の残高が相当積み上がってきておりまして、今、204兆円、GDP対比、地方の分だけで40.7%、平成4年度から3倍ぐらいに残高が増えてしまっているということでございます。

7ページでございます。こういう中で、地方団体としても、あるいは私どもとしても努力いたしておりまして、よく言われるので、地方公務員数の状況をここに挙げております。左側のグラフにありますように、平成6年から9年連続減少しております。特に平成11年度以降は毎年3万人ペースで減らしてきております。実績の数であります。

特に300万人いて3万人をどう見るかですが、右にありますように、地方公務員300万人のうち教育が120万人ほど、警察・消防で40万人ほどおります。この辺はなかなか減らせない、むしろ増える要因を抱えておりまして、その他の一般管理とか福祉関係で一生懸命減らしている、合理化を図ってきているというのが実態でございます。一番右の公営企業等会計がちょっと増えておりますけれども、これは、介護保険という全く新しい助成で2万6,000人増えたとかいうのがありますので、ここはそういう観点でご覧いただきたいと思います。要するに、かなり限られている減らせる部分を一生懸命削っているというのがこの数年でございます。

それから8ページ、給与につきましては、ラスパイレスも100.1、平均でほぼ国並みになりました。団体別に見ますと、8割ぐらいの団体は100を切っている、国の水準以下の給与になっているということでございます。

9ページ以降は地方税制であります。先ほどの説明が国・地方を通じて詳細でありましたので、簡単に申し上げます。

9ページは、国税の基幹税が、所得税、法人税、消費税であるというお話がありましたが、それに対応して地方税では、個人住民税、法人住民税と法人事業税の法人二税、地方消費税、この3つでありますけれども、さらに地方の場合は固定資産税が基幹税として数えられるということでございます。

10ページは、都道府県・市町村ですので省略いたします。

11ページ、最後に、地方税収入の推移をもう一度申し上げます。先ほどの調査課長の説明と同じで、上にありますように、トピックとしては、平成3年度の土地税制改革、6年度の抜本税制改革、地方マターとしましては、それにより9年度から地方消費税が入り、外形課税が入ってきたわけでありますけれども、下にありますように、平成6年度に特別減税をやって以来、7年度には制度減税を行いました。9年度は特別減税が一時なくなったこともあって、税収がピークを記録しているわけですが、その後また恒久的減税等もありまして、特に14、15年度で落ち込みまして、今は32兆円ぐらいのベースで、ようやく16年度あたりで、横ばいないし持ち直すかなという状況になってきているということでございます。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

9月28日の基礎問題小委員会は、国と地方に分けまして、財政状況あるいは税の実態を事務局からご説明を受けたあとに、2つ報告がございました。1つは、井堀委員から、財政再建の進め方、つくってくれた推計を交えましていわばシナリオの説明をやっていただきました。もう一つは、みずほ証券の高田さんという方から、国債市場のいろいろな動向あるいは将来の見通し、この辺についてお話をいただきました。

今日、お二人から直接ご説明を伺いたかったのですが、所用があって、お二人が来ておりません。資料ができていると思いますので、羽深さんからご説明をいただいて、それをベースにして、今の事務局のお二人の話も交えて議論をしてみたいと思っております。

では、羽深さん、お願いします。

羽深調査課長

お手元に、井堀委員の「財政再建に向けた歳出削減・増税の組合わせとタイミング」という、そのときに発表されたプレゼンテーションに基づき主税局で整理したものと、配布された資料とがございます。我々のほうでまとめさせていただいたものについて、もちろん井堀委員のご了解を得ておりますけれども、簡単にご説明します。

ポイントは、財政再建と財政破綻、プライマリーバランスと財政破綻の関係、財政再建の手段、2ページ目に、実施のタイミングとございます。

財政再建と財政破綻につきましては、国債の保有層との関係で、財政再建につきまして、投資家(主に国債への投資家を指す)は賛成するけれども、非投資家は反対するため、非投資家が中位投票者、あるいは政治的に発言力が強い有権者であれば、財政再建のための増税が困難になってくる。したがって、国債保有層が個人まで拡大することは、財政再建のための増税について理解を得る観点からも望ましい状況と言える。

その次はまとめですけれども、財政構造が不均衡、あるいは一部に偏っていることがありますと、つまり課税ベースが狭いと増税幅が大きくなり、負担も特定層に偏るので、脱税や海外逃避等の歪みを生じやすい。したがって、広く薄い税体系を構築しておくことが必要である、というようなご指摘がございました。

2つ目に、プライマリーバランスと財政破綻の関係ですが、プライマリーバランスが均衡すれば新たな借金は発生しないが、過去の借金、公債残高は金利の分だけ増加する。したがって、財政破綻を回避できるのは、金利と成長率が等しい場合のみであって、金利が成長率を上回る場合には、公債残高の対GDP比を安定化するためにはプライマリーバランスの黒字が必要となる。実際のわが国経済は金利が成長率を上回っているので、プライマリーバランスの均衡回復という目標では不十分であって、もっと厳しい財政再建目標を設定することが必要である、という結論です。

3つ目の財政再建の手段ですが、わが国の潜在成長率はあまり高くないので景気回復による自然増収はあまり期待できない。また、財政赤字の削減目標を増税なしに歳出の削減だけで行うことは非現実的である。したがって、現実的な財政再建にはある程度の増税と歳出削減の両方が不可欠であり、消費税率の引上げや所得課税の増税、資産課税の強化が必要である。歳入・歳出両面からの改革が必要だというご指摘でございます。

それから、財政再建の実施のタイミングについては、成長軌道への回復を待って集中的に進めるという見解と、徐々に平準化された形で進めるという見解の2つの見方があります。

集中的に進めるという見解については、実施する場合にはマグニチュードが大きいために、国民が回復と認定しづらくなって財政再建の実施を先送りしてしまう懸念がある。それから、無駄な事業のほうが民間事業と競合しない。これは皮肉めいたことですが、景気対策は無駄な内容の支出になりがちである、といった問題があります。

それから、徐々に平準化された形で進めるという見解については、理論的には、課税の平準化とか負担の平準化の観点から正当化される。わが国の社会保障制度の現状では、早期に財政赤字を削減したほうがいい。それから、財政状況が危機的であるわが国では、財政再建のための増税や公共事業の削減は、家計が安心して消費を増やすという面、いわゆる非ケインズ効果が考えられる、そういう意味から支持されるということでございます。

したがって、財政再建はなるべく早急に実施することが最適であって、負担増や歳出削減は、消費税率を徐々に引き上げたり、公共事業を徐々に削減するなど、一時期に集中することを避けて、異時点間でなるべく平準化したほうがいい。なるべく早く実施して、かつそれは集中的ではなくて、分散させて徐々にやったほうがいいというご指摘でございました。

なお、当日の発表ではなかったのですが、後ほど先生からこれも追加してくれということで、一番最後ですけれども、小泉内閣では、公共事業規模を景気状況とは独立に縮減してきたけれども、それは景気にマイナス効果はそれほど与えなかったので、今後の増税が景気を抑制する効果もそれほど大きくないのではないか、というご指摘がございました。以上が井堀先生の分でございます。

もう一つ、高田チーフストラテジストの「国債市場とその影響」、これはお手元に資料がありますので、その中で何枚かおめくりいただきながら、ご説明します。

まず、ご本人の資料の1ページをお開きいただきますと、「本日の話題」と書いてありまして、3つございました。「なぜ消化されてきたか」、これが2ページから書いてあります。2つ目が「国債保有構造」、3つ目が「長期金利とその影響」。

6ページをお開きください。要約版の最初のマルのところですが、1990年代以降の国債の高水準での発行にもかかわらず、長期金利は低下を続けている。これは、資金の流れの出発点では金融政策等により資金供給が増加しているものの、資金の流れの末端では貸出等のリスク資産に資金が流れておらず、資金余剰感が強まっている中で、そのギャップ分を国債が吸収している形になっている。この絵で、国債ないし低リスク金融商品のところに太く書いてあるのは、そこにお金が回っているということでございます。

12ページをお開きいただきますと、要約版の2つ目のマルですけれども、こういった背景には、バブルにより拡大した企業のバランスシートが、バブル崩壊による資産価格の下落によって過剰債務構造となり、そうした企業部門の過剰な債務が不良債権として金融機関側に付け替えられ、最終的には経済対策や公的資本注入等によって政府部門に付け替えられていく。過剰債務が不良債権になり、さらに公的部門に付け替えられてくる、そういうプロセスというふうに説明できるのではないかということでございました。

国債面での不安定さは、むしろ経済の調整プロセスの最終段階で、企業活動が活発化し民間部門に資金需要が生じ、金融機関が国債にかわる代替的な運用手段を確保することができるようになった状況において生じうる。

一つ戻って11ページ、バブル崩壊以降、14年かけて続けてきた不良資産の処理が最終段階に入ってきて、民間の債務負担が軽くなるとともに民間の活動にもある程度回復が見えてきている。経済の調整プロセスの中で、いわば民間セクターの「身代わり地蔵」として国債債務残高が累増してきたが、そろそろその償還について考えなければいけない時期に来ている。そのためには、生産性の改善等により民間部門の収益力をあげ処理原資を確保することとあわせて、国民の負担により対応していくことも必要である、というご指摘がございました。

次に、保有構造です。16ページをお開きください。日本は、財政赤字が民間の貯蓄で吸収されている状況であり、いわば「お父さんとお母さんがやり取り」をしている状況。「お父さんとお母さん」の信任が維持されていればいいけれども、信任関係が崩れると資本逃避が起こりやすい。

それからレジュメの2ページ、17ページ以降をご覧いただきながらですが、わが国の民間部門の国債保有構造を見ますと、銀行中心の保有構造となっていて、均一的な行動をとりやすい参加者層により保有される構造となっている。こうした保有構造のもとでは、一方向のバイアスがかかりやすく、ボラティリティーが急速に高まったり、転換点において金利変化がオーバーショートする可能性もあるので、こうした状況をいかに管理していくかが重要だと。

次に、長期金利とその影響です。22ページをご覧ください。これは、短期金利と長短金利差に分けて考えられる。短期金利は金融政策により決められる一方で、長短金利差は市場で決まってくる。現在、長期金利の水準はきわめて低いけれども、長短金利差は一般的な水準となっています。22ページの表の棒グラフの部分が長短金利差、これは一般的な水準。今、短期金利が非常に低いので、それに長短金利差を加えた長期金利も低い。今後は、短期金利と長短金利差をいかにコントロールして、長期金利の上昇をサスティナブルなものにするかが課題である。

それから23ページ、その際に重要なことは、プライマリーバランスの改善、財政の健全化である。それに加えて、名目成長率が国債金利よりも高くなるような道筋を描いていくことが大事。

25ページをご覧いただきますと、金利が1%上昇したらどうなるかということですが、銀行部門の保有債券の含み損は概ね業務純益に相当しており、全体としては、金利上昇コストをカバーするいろいろな収入等々をいかに管理していくかが課題となっている。

30ページがまとめでございます。最後のマルですけれども、ご覧いただきますと、国債が大量発行されているにもかかわらず、市場で消化されているのは「必ずいつかは償却できる」という信頼があるからである。今後は、こうした信頼を「財政の健全化」、「民間セクターの回復」、「債券市場安定(国債管理政策)」の実現によりいかに維持・確保していくかが課題となっている。この課題への対応は基本的には国内で完結するものであって、この課題にどうやって応えていくのか、日本人のガバナンス能力が問われている、というようなご説明でございました。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。今、振り返ってみますと、9月28日の基礎問題小委員会はきわめて有益な議論をしたなと再確認しましたが、いうなれば、今後の税調で年末にかけて議論しなければいけないことの基本的なところをうまく整理してあります。事務局から基本的なデータを出してもらい、それをベースにして井堀さんのほうで、財政再建のシナリオ、とりわけ重要なのは、平準的にやるのか集中的にやるのかというあたりの選択が、今、我々にも迫られてきたということでしょうね。それから、国債市場の現状を見まして、次の段階は、政府の借金をどうやって国を挙げて返していくかというところに国債市場の反応があるというところだと思いますので、これをベースにいたしまして、20分ほど時間をとりまして、今後の進め方、いつまでもこのままで放置していいと思っている方はいらっしゃらないと思います。どういう格好でやるか、あるいは、消費税とか定率減税の廃止・縮減の議論も出ましたので、具体的にわたっても結構でございます。基礎問題小委員会に出られていなくて、今日これを聞かれて、いろいろな感想をお持ちの総会委員の方もいらっしゃると思いますので、積極的にご発言いただきたいと思います。どうぞ、どなたでも結構です。

では、時間の節約のため、井戸さん、久しぶりにお見えですから、どうぞ。

井戸委員

いい資料をいただいたのですけれども、先ほどの国債費の内訳を見ますと、8兆円が償還財源で、8兆円が金利で、あと手数料等、こういう材料になっていましたが、今のような財政規模をそのまま続けていって、国債を今と同じような形で--今と同じではあまりにも負担が大きすぎるのですが、2分の1くらいの国債を常に発行していくとすると、60年で大体どれくらいの残高になるのかなというのが気になります。プライマリーバランスをとってみても、残高はしばらくの間は増え続けていくのではないか。ですから、国債の残高の議論をしようとしたときには、今の財政構造でそのままプライマリーバランスを続けても国債の残高自体はある程度までは増えるのだ、そこが限界なんですよ、というところを示していただく必要があるのではないかというのが一つの感想です。

もう一つは、税収の国際比較の表を見させていただいたときに、消費課税と所得課税が明らかに日本の場合は軽減され過ぎている。所得課税については軽減され過ぎている、消費課税については負担を求めなさ過ぎているという感がいたしますので、これを井堀先生のように、一時的にやらないで平準化して対応していくとすると、増税を段階的にしていくというのはものすごく抵抗があるのですけれども、そういうシナリオが本来上手に描けるのかどうか。私の今までの経験からしても、増税のときはものすごく抵抗がありますから、どうしても一時的、一挙の解決をまず図りたがるわけですけれども、そういう平準化するようなシナリオを我々はとれるのか。政治力学的に可能なのかどうかというのが非常に気になったところでございます。

突然でしたので、とりあえずこの2点。

石会長

わかりました。またご発言いただきますが、これは事務局にお尋ねしたほうがいいと思います。これは宿題になると思いますが、今、36兆円ぐらい国債を出してますよね。これが井戸さんのご判断だと、20兆円以下ぐらい、半分くらいに下げていくのを当面の目標として一体どんな効果が残高に出てくるか、あるいは、プライマリーバランスに影響があるか。今、即答できますか。羽深さんのほうで何かおやりになっていますか。

羽深調査課長

すぐにそういうシミュレーションというのは、今、手元にはないのですが、お手元の資料、「わが国財政及び税制の現状と課題」の7ページです。プライマリーバランスの関係で考えますと、国・地方合わせた債務残高がどうかということが、国債だけではなくて問題になってくると思うのですが、ここで、日本がずっと右肩上がりで上がっていまして、GDP比で数字を追っていきますと、毎年7~8%ずつくらい債務残高が増えていっている。仮にこれを国・地方両方とも半分にすれば、毎年3%とか4%の伸びに鈍化していくわけですけれども、いずれにしても増え続けていくので、今、大体160%なのですが、今、毎年7~8%伸びているのを仮に4%程度に抑えたとしても、10年たてばあと40%増えるというふうに考えると、160に40を足せば200になってしまうとか、そういうような計算だと思います。

石会長

それから、井戸さんが、平準化は難しくて一気にとおっしゃっておられますけれども、マスコミ報道によると、過去数年、あるいは今後、どんどん税負担は高まるという数字がいっぱい出てますよね。現に配特はなくなるし、免税点は下がるし、公的年金等控除はなくなるしということでありますと、平準化したような格好で、過去、少しずつ動いているんですよね。でも、今おっしゃったのは、たぶん消費税のことが念頭にあられたのではないですか、一挙にやったほうがいいとおっしゃったのは。

井戸委員

例えば所得税で言いますと、今、国・地方を通じて税率は50%になっているわけですね。

石会長

最高税率ですね。

井戸委員

ええ。「50%でいいのか」というようなことを考えると……。

石会長

「いいのか」というのは、高いのですか、低いのですか、どっちですか。

井戸委員

低いんです。

石会長

低いから、上げる?

井戸委員

ええ。というような議論をやろうとしたら、一挙でないとできないだろう。それから消費税についても、会長ご指摘のとおりです。

石会長

どうぞ、ほかにいろいろご意見あろうと思いますから。

どうぞ、吉岡さん。

吉岡委員

今、石会長がおっしゃったように、マスコミ等では増税路線ということがずいぶん報道されております。消費者団体等でも、どうも政府は増税路線に行こうとしているのではないかと。特にプライマリーバランスのことを考えると、歳出抑制といっても限度があるだろう。そうすると歳入を考えなければいけない。歳入を考えるときに、どうしても広く・薄く負担をするということが考えられる。これが広く・薄くではなくて、「広く・厚く」になるのではないか。そういう危惧がされているというのが、今、私たちがつき合っている消費者団体、あるいは個人の感覚ではないかと思っています。

その場合に、今までとってきた政策が信頼を持たれていない、そこに問題があるのではないかと思うのですけれども、これは社会保障の場合でも負担と給付の問題がありまして、これはここの場で議論するべきではないのかもしれませんけれども。

石会長

後半にやりますから。

吉岡委員

そうですか。負担をするのであれば、それなりの給付がされるという保証がなければいけないと思いますし、国際比較をした場合に、日本の個人負担は軽いということも言われております。なぜ、それでもいやだと言うのかと申しますと、やはりそれだけの給付が期待できない、そこに問題があると思うのです。介護保険についてもそうですけれども、ある程度期待をしていたから、導入やむなしということだった人も非常に多いと思います。実際に導入されてみると、思ったようではないという不満がありますので、やはりその辺のところは、導入したものについての見直し、不満を直していく、そういうことをしない限りは国民の信頼が得られないという問題があります。

それから税制については、これから、納得してもらうための交流と申しますか、そういうことをやっていくお考えもあるということを前の総会の場でもお話がありましたが、そういう場での説明も、政府から出てくる資料は非常に丁寧で、なるほどと思う合理的な数値、そういうのが出るのですけれども、それで納得するかなと思うと、実はよくわかっていないということが非常にたくさんあります。そういう意味では、普通の家庭の人たち、あるいは消費者、国民がわかるような丁寧な説明がされなければいけない、実施する場合にはその点をお考えいただきたい。

それから、学者の先生のヒアリングをしていらっしゃいますので、たしかにそうだろうと思いますけれども、経済学者の考え方というのはずいぶんいろいろあります。お呼びになった先生の考え方は、間違っているということではありませんけれども、対立する意見を持っている学者もいらっしゃいますので、そういう意見も同時にお聞きになっていただきたいと思います。以上です。

石会長

ありがとうございます。大変示唆に富むご発言、ありがとうございました。

ほかに。まだ時間をとってありますから、どうぞ。

井上さん、せっかくご出馬ですから、どうぞ。

井上委員

地方公務員の問題ですけれども、先ほど話が出て、311万7,000人。2万7,000人減らしたということなわけですけれども、私は地方公務員というのは多過ぎるのではないか。それで教育が128万人いて、それを減らすわけにいかないと。どうもこのことはおかしいと思うわけです。平均すると、たしか生徒19人に1人ぐらいの教員がいる。30人学級としたら非常に多い教員を抱えているではないかということがある。と同時に、教員が何を教えているのか。少子化の問題にしてもしかりだと思うのですけれども、義務教育で本当に教えてもらっていないために塾に通わせる。小学校時代には100万円かかる、中学になったら300万円もかかる。そのために奥さんはパートでアルバイトせざるを得ないという現況を考えると、もっと教員なんて減らしていい。公務員を減らすことも大事であろうというふうに思います。

同時に、予算の配分の仕方、これも非常に問題があるのではないか。有効に働くところにもっと予算を配分すべきであろう。農業にしてもしかりですけれども、3兆円からの配分がされていることについても、もっともっと波及効果のあるところへの予算の配分がされないから結果が出てきていない、という問題もあるのではないかというふうに思うわけです。

それと消費税の問題についても、将来的には上げなければいけないことは、当然、これだけの赤字であるわけですから、決まりきったことだというふうには思うのですけれども、要するにタイミングだけの問題だろうと。やるときには、抜本的税の改革をやるべきではないのか。今まで場当たり的に、収入を増やすためにいろいろな税が複雑に絡み合い過ぎているものを、やるときには一遍に、十把一からげに思い切ったことをやるならば、逆に国民も理解ができるのではないのかなというふうに思います。ちょっと感じたことを申し上げました。

石会長

ありがとうございました。また、その線でご発言いただきたいと思います。

ほかに、どうぞ。辻山さん。

辻山委員

ちょっと質問を兼ねて。最初の資料に関係するのですが、今日の議論でプライマリーバランスの問題と国民負担率の問題、関係しますけれども、一応分けて考える必要があるというふうに考えます。プライマリーバランスの改善というのは当然必要なのですが、そのときに「OECD諸国の国民負担率」という資料がこういう表で出ますと、たしかに日本の負担率の低さが際立っているという印象を持つ。そういう意味では、アメリカとかそういう中でも日本と同じような負担率の国があるんですね。

そうしますと、結局、負担率の問題だけではなくて、支出の国際比較といいますか、要するに社会福祉についても、大きな政府を目指すのか、小さな政府を目指すのかというところで、一概に負担率だけ比較しても、負担の中身を、社会保障の水準とかセットで考えないと、直ちに負担率が低いから負担率を上げるべきだという議論にはならないのではないか。中身を拝見していて、ちょっと見落としてしまったのかもしれないのですけれども、同じような支出の内訳の国際比較みたいなものを次回にでも拝見したいというふうに思います。

石会長

ただ、支出の裏付けになっているのは、租税でやるか国債発行でやるかですから、財政赤字を重ねた部分のところ、俗に言われる潜在的な財政赤字というところが実は支出の裏返しになっていますから、支出の細かい内訳はさておき、それだけやはり支出していますから、日本の場合はアメリカなんぞよりははるかに……。財政赤字というのは将来返さなければいけない話ですから、負担率という解釈でもいいと思いますけどね。でも、おっしゃるとおり、支出面で、例えば財貨・サービスの対GDP比率とか、そういう政府規模をあらわすような方向のデータも必要かもしれませんね。

辻山委員

プライマリーバランスの改善のための過去の国債費、そういうものを改善していくというのは一方の議論であって、もうちょっと長期的に、税の支出でどのくらい、社会保障水準とかそういうものを国民の合意として行うのか、そこのところを長期的には分けて議論したほうがいいのではないかということです。

石会長

円グラフで歳出の内訳が出てますよね。あの中身で、国債費はもう減らせませんよね。問題は、社会保障、公共事業等々、あるいは地方交付税交付金などは少し入れるのかもしれませんけれども、そういうものをどういう形でウエートを置いて歳出カットの中に入れるか、こういう議論ですよね、おっしゃっている意味は。

辻山委員

国民負担率を上げて、例えばデンマーク型とかスウェーデン型のように、社会保障の水準をかなり高水準にしていくのかどうかというところを、その辺のことを一緒に議論しないと、当面のプライマリーバランスの改善のために、例えば増税とかそういうものは当然必要になる……。

石会長

わかりました。後段の議論で社会保障の問題は結構出ますから、そのときにまたその種の関連が出てまいりますので、おっしゃる、高福祉・高負担なのか、低福祉・低負担なのかという議論もまたそこで絡んでくると思います。

せっかくでありますので、もう一つぐらい。

どうぞ、上月さん。

上月委員

今日、井堀先生がお見えになっておりませんのであれなんですけれども、主税局で整理されたほうの最後の文章ですけれども、「公共事業規模を景気状況とは独立に縮減してきたが、それが景気に与えるマイナス効果はそれほど大きくなかった」、これはたしかにそうだと思います。それが「したがって」と続いて、「今後の増税が景気を抑制する効果もそれほど大きくない」と言えるのかどうかというのは、私はちょっと疑問があるので、ちょっと先生にお聞きしたいなと思ったのですが。

石会長

来たら、今度聞きましょうけれども、彼は、それをかなり言えると思ってるんですよ。その数行上に「非ケインズ効果」と言っています。結局、財政赤字があって破綻状況にあれば家計が安心していられない。財政赤字が縮んできて、将来、財政の破綻がなくて、年金とか医療もちゃんと面倒を見てくれれば、そういう意味で安心感ができるから消費も増やすだろうと。増税の効果というのはごく短期的ですよね。ところが、中長期的に見ると、非ケインズ効果というのは結構あるかもしれない。そういう面から見ると、という議論だと思います。ただ、私が代弁してもしようがないから。たぶん、論旨から言うとそういうことですよ。

だから、増税がすべからくマイナス、マイナスではなくて、これはある意味で非常に近視眼的な議論ですよね。もっと長く見れば、安心・安全を増税ということが保証すれば、ある意味で北欧の国なんか全部そうですよ。いくら税負担しても将来面倒を見てくれるということがあれば、という議論ですから、そういう議論もこれから必要だという問題提起だと思いますがね。

上月委員

北欧の場合は、この前のご報告を聞きましたら、たしかに国に対する……。

石会長

吉岡さんがおっしゃった、国に対する信頼の問題ですよね。

上月委員

そうですね。それがあることによってこれが可能だと。

石会長

逆に言うと、どうやって我々は信頼を持ったらいいですか。

上月委員

私は、もっとグランドデザインを示すべきではないかなと思っています。

石会長

グランドデザインというのは、小泉さんが?

上月委員

そうです。この前のレクチャーのときにおっしゃってましたけれども、政治家とか官僚とか、一番信頼されないほうに載ってましたね。その辺が問題であって、そこらあたりでもっとしっかり説明していただくと国民も納得するのではないでしょうか。

石会長

どうぞ。

大宅代理

そのわりに、みんな郵便貯金をするし、国が面倒を見るからと思っているわけでしょう。国債も買うし。

石会長

そう言われればそうだなあ。

大宅代理

私は、いと不思議なんです。亡命者も出ないし。

石会長

というのが大宅さんの意見ですが、この辺の議論は文化的な背景も必要ですから、一回やりましょう。

どうぞ。

井戸委員

先ほどの国債の話の延長線ですが、プライマリーバランスを議論しているということは、結局は、国債残高をもう減らしていかない……。

石会長

減らせないですよ。

井戸委員

減らせない、減らしていかない。ですから、何とか一定規模を確保していけばいいんだ、そういう発想だと思うんですね。ということは、一種の永久公債を発行していくということに……。

石会長

いや、プライマリーバランスを黒字にしなければだめだと言ってるんですよ。

井戸委員

私がなぜこれを言い出したかといいますと、本当に国債残高を減らさなければいけないのでしょうか、という意味なのです。国債残高をどんどん増やしていくのはそれは問題かもしれませんが、ある程度の国債をずっと抱えている社会というのを前提にしてもおかしくないのではないか。国債残高まで減らしていこうとすると、かなりそれこそプライマリーバランスを黒字化していかないといけない。それをどれくらいの期間を前提にして考えるのか。100年くらいの期間を前提にして考えるとすると、償還はほとんどあきらめたということにつながる。その辺をどういうふうに考えるのかというのは、これからの税の長期的な議論をしていくときに大事なポイントになるのではないかと思っております。

石会長

それでは、事務局に宿題として出しておきましょう。どのくらい持ちこたえられるか。ただ、ロットが大きいほど年々の国債額は増えますし、金利が安ければいいけれども、上がってきたときに、これは多額な歳出増になりますからね。おそらく絶対額を減らすのは難しいでしょうから、比率でどう持っていくかという議論にならざるを得ないと思います。

この議論は、これからまだ繰り返し、繰り返しやりますから、今日、ご発言のなかった方もぜひまたご開陳ください。

羽深調査課長

すみません。今の関連で言い忘れたことがございます。プライマリーバランスとの関係で、井堀先生に出していただいた本体の資料の2ページに「安定化目標の例」というのが書いてあります。過去の歴史を見ても、利子率と成長率のギャップが2%ぐらいありますので、これで推移する場合には、公債残高の対GDP比を200%で安定化させるには、プライマリーバランスを4%の黒字にする必要がある。現状から見ると、ほぼ8~10%ポイントの引き締めが必要となる。井堀先生のこういうご指摘がございましたので、ご参考までに補足させていただきます。

石会長

それでは、社会保障をめぐる問題の後半戦に移りたいと思います。最初に、「社会保障の在り方に関する懇談会」が設置されております。それにつきまして概略を事務局からご説明いただいて、あと、私から若干コメントをつけて、その後、田近さんからプレゼンテーションをもう一回整理してもらうという形にしたいと思います。

では、羽深さん、どうぞ。

羽深調査課長

まとめて、「社会保障の在り方に関する懇談会について」ということを簡単にご説明いたします。1ページをおめくりいただきますと、今年の7月27日に内閣官房長官決裁で設置されておりまして、趣旨ですけれども、「社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくために、税、保険料等の負担と給付のあり方を含め、一体的な見直しを行う必要がある。このため、有識者の参加を得つつ、この懇談会をつくる」。

検討事項が、社会保障の基本的考え方、給付と負担の在り方、制度の在り方等でございます。

構成メンバーは、3ページに、12名のメンバーから構成されておりまして、政府側は関係閣僚ですけれども、有識者として、当税調から石会長と宮島委員が入っておられます。

4ページが今後のスケジュールですけれども、懇談会は7月30日に第1回がありまして、これは初回ということでフリートーキング。2回が9月10日にありまして、社会保障の一体的見直しと年金一元化についてご議論がございまして、それから大体月1回のペースで、第3回が介護保険、医療保険、第4回が生活保護・少子化対策、第5回が議論整理ということで、これは特に設置期限が定められておりませんが、右側の欄ですけれども、「骨太の方針」で、「平成16年中に、社会保障制度の課題についての論点整理を行う」。これに対応して年内に議論の整理をしようということになっております。

今後、17年に介護制度の見直し、18年に医療保険制度の見直しがありまして、「骨太の方針」で、「社会保障制度の見直しの課題について、重点強化期間内(平成18年度まで)を目途に結論を得る」ということになっております。こういう日程をにらみながら、並行して懇談会の議論も続くということでございます。

5ページ、6ページは「骨太の方針」の抜粋ですので省略しまして、7ページ以下に、今まで2回の議論の概要を議事要旨に基づいて我々のほうで整理したものを、ご参考までに付けております。以上です。

石会長

ありがとうございました。私もメンバーの1人、宮島さんもメンバーの1人なのですが、まだ2回しかやっておりませんので、まだ本格的な議論が始まっていないというふうにご理解いただいていいと思います。ただ、特色は二、三ありまして、一つは、関係閣僚6人がお出になっていて、それなりに政策立案者の責任という形でご発言いただけるし、また我々委員も、それなりにあるバックを持っている人、とりわけ使用者側と被用者側というか、経団連の代表と連合の代表、ともに出ておられますので、年金制度の議論になりますと、当然、そちらのお立場からいろいろ議論がある。

そういう意味で、横から見ていて何かしてくれそうだなという感じがするのですが、果たしてできるかなというのは、これからの我々の努力いかんであります。月1回・1時間半くらいの議論で、この大きな問題をどこまでこなせるかですけれども、年末までに主要な論点が出そろって、それ以降、介護、医療、年金等々を個別に議論を積んでいこうという形で議論をこれからやっていくつもりでおります。もうちょっと時間を経てから、またご報告したいと思います。

それでは、10月1日に基礎問題小委員会をやって、社会保障をめぐる議論を整理いたしましたので、そのとき議論いたしました田近さんから、もう一回さっと整理していただきまして、当面の問題を再確認していただきたいと思います。

よろしく。

田近委員

それでは手短に、10月1日の基礎小委員会で話したこと、そのときの議論を踏まえて話させていただきたいと思います。

まず、なぜ税制調査会で社会保障なのかということですけれども、今、議論があったように、日本の財政の問題がある。財政赤字、増えていく国債の残高の問題がある。それでいろいろ議論があって、私が聞く範囲、考える範囲では、いろいろな問題があるけれども、景気も回復してきたろうと。直近の話では石油の値段が上がったりして、どんなショックがあるかわからない。ショックがショックとどう積み重なるかもわからないという中で、国債の残高が高いというのは、財政運営上、非常に危険だという認識が共有されてきた。

そこで、今も議論ありましたけれども、プライマリーバランス、つまり国債を除いた国の本来の歳出と歳入の間はバランスさせようというところに議論が来ているのだと思います。ということは、現実的には増税が必要なのでしょうけれども、ただ、それでは腑に落ちない。歳出のほうはどうなっているんだというところがずっとあって、税制調査会でもその点に正面から触れざるを得ないという状況だと思います。

お手元に、報告要旨というか、「日本の社会保障と財政」というものを用意させてもらいました。そこで議論したかったのは、歳出の中で大きなものといえば公共投資と社会保障でしょうけれども、社会保障の中で、財政の観点から見て、なぜ、これが止まるところのない過大なものになっていくのか。もちろん、人口高齢化とか給付自身が増えることは確かですけれども、財政の上でどうしてこれがわが国の問題として負担が増え続けていくのかということを、私は指摘したかったわけです。

短い時間で報告するということで、申し上げたいことを最初にしゃべってしまったのですけれども、第1ページのタイトルの下に書きましたように、「国庫負担は収入だ」。日本の社会保障を運営している主体、例えば厚生労働省等が、「国庫負担は収入だという考え方が、日本の社会保障財政と人々の真に求めている保障の提供を困難にしている」。財政を単に危うくしているだけではなくて、日本の社会保障で提供されているサービス自身も、その質が十分高まっていないということを指摘したいわけです。

あとはざっと見ていきますけれども、社会保障といったときには、生活保護とか、子供の保育の問題とか、社会福祉としてやるようなもの――伝染病の対策――とか、そういうものと保険としてやるもの、この2つに分かれるわけです。予算的に見れば、圧倒的に大きなものは、日本の場合、社会保険になっているわけで、皆さんのご関心も、年金、医療、介護がどうなっているんだというときには、これは社会保険なわけです。したがって年金、医療、介護の3つを考えて、わが国財政の独特の問題は何なのか、それが結果的に財政と人々が受けている給付の質にどういうふうに影響を与えているのか、ということを言いたいわけです。年金、医療、介護、それぞれ、さまざまなリスクに対応するものとしてあるわけですけれども、保険という以上は、保険に加入する人々の間でみんなでリスクを負担し合って、保険全体では収支均等するようにつくっていくべきだ。それは時間を通じてでしょうけれども、つくっていくべきだと。

ところが、2ページをご覧になっていただきたいのですけれども、日本ではそうではない。一番下ですけれども、年金、医療、介護保険すべてにおいて、国庫負担が制度的に組み込まれていて、例えば年金であれば、基礎年金の3分の1が税金で賄われる。医療保険であれば、一番典型的なのは老人健康保険ですけれども、基本的にこれから給付の半分は公費で賄う。介護保険であれば既に給付の半分は公費で賄っている。もう最初から、これから高齢化してただでも負担が増えていく中で、国がある意味で、ビルトインされた形で給付の一部を負担する仕組みになっている。その結果、負担の軽減を通じる過大な給付を引き起こし、過大な給付が起きると、今度はそれは、加入者あるいは利用者に対して負担が大き過ぎるのではないか、国庫負担をもっと上げようと。それがさらに高い給付を引き起こし、慢性的な財政負担の問題が起きていると私は思います。

申し上げたい第2点は、その結果、こういう仕組みで、人々が本来もっと得られるかもしれない、あるいは得たいものが得られているのだろうか、ということです。「安かろう悪かろう」ではありませんけれども、負担が抑えられている結果、過大な給付になっている。それに見合うサービスが十分提供されているか。これは、あとで介護保険のところで具体的に見てみたいと思います。

そのようなことを申し上げた上でごく簡単に数字を見ていただくと、日本の社会保障といったときに、一般会計から20兆円ぐらいお金が出ているのですけれども、どんなふうなものなのかというのが3ページです。普通、社会保障給付費は80兆円というのが頭にあるわけですけれども、現在、年金が40兆円ちょっと、医療費が30兆円、介護保険が5、6兆円、そういう数字で動いています。今言ったような形で、基礎年金の一部、それから医療保険は、基本的には高齢者医療が重要で、給付の半分近くが公費、介護保険は給付の半分が公費という形で、それが積み重なると、毎年大体20兆円、今の段階で国はお金を払っている。それが財政の状態です。

年金のところで言いたかったのは、少し歴史的なものを取り出しているのですが、当時の厚生省が議論を少し振り返っているわけですけれども、4ページは、厚生省自身が、公的年金、私的年金、どちらがいいのか、どういう役割の違いがあるのかと。ご覧になっていただくとわかるように、公が主で、私が従。公のほうは基礎年金の3分の1が国庫負担、給付面では公的年金等控除がある、負担面でも社会保険料控除があって、これは安くできているぞ、事務費には国庫負担もあるぞと。だから、社会保障をやるところの財政はそこの財政で、そのお金はどこから来ているのか。国民からしてみれば、左のポケットだけではなくて、このお金は右のポケットから出ているわけで、自分のポケットが右から左にお金が移ったときにこれを収入だと思う人はいないわけで、お金はどこから出ているのかという視点が重要だということを言っているわけです。

年金の実際の債務残高がどうなっているかということは省かせていただいて、少し介護保険のほうに時間を使えれば使いたいと思っています。医療保険は、8ページをご覧になっていただくと端的におわかりになると思います。これは、ちょっと古いというか、1998年のデータで、我々自身が計算したものですけれども、政府管掌保険(政管健保)、組合健保、共済、国保、老健(老人保健)。それぞれの保険の医療費を100として、保険料、自己負担、公費負担がどのくらいなのか。つまり、どのくらい保険になっているのかなということをお示ししたものです。

政管健保ですと、100の給付に対して128 、保険料と自己負担を払っている。なぜこんなに多いのか。これは一部が老人保健に拠出されている、そのためです。そして、さっき言った右のポケットから出した公費の部分も実は自分が払ったものだという考えに立って--右のポケットから幾ら出したかという計算は難しいのですけれども、保険の加入者の頭割にしたり、所得割にしたものですけれども、そこはざっくり見るとして、そうすると政管健保の場合は、100の給付に対して160近い負担をしているわけです。もちろん組合健保ではさらに高くなって、国保は低くなって、見ていただきたいのは、老人健康保健は100の給付に対して自己負担が14になっている。それが基本的には日本の医療における社会保障の負担の問題なんですよ、と。

あとでご質問があればお答えするとして、残りの時間を数分いただいて、9ページ以降の、今まさに新聞紙上をにぎわせている介護保険について見てみたいと思います。

先ほど吉岡さんから、払ったものに対して給付が得られているのかというお話がありました。信頼がないではないかということもありました。実は払っている額は給付に対して少ないわけですけれども、にもかかわらず、なぜそういう不満に近いものが出てくるのだろうと。そこなんですけれども、仕組みからごく簡単に見ていくと、これは地域保険なんだ、市町村が保険を管理します、その市町村の65歳以上の人が第1号被保険者で、45~65歳未満の人が第2号被保険者ということです。

65歳以上の人たちは保険料を払って、それはそれぞれの市町村にお金が落ちる--高いサービスがあれば保険料は上がって、その市町村で払ってくださいということです。40~65歳未満の人、我々は保険料を払っているのですけれども、私は国分寺市に住んでいますが、国分寺市に私の保険料がおりるのではなくて、一たんそれがプールされて、ある配分比率で国分寺市に配られていく。そこの違いは重要だと思いますけれども、違いはあります。

ポイントを絞って話をまとめたいのですけれども、では、一体どのくらい払っているのかということです。介護保険は、今、合計6兆円総費用がかかると言っていますけれども、それぞれの利用者、基本的には65歳以上の第1号被保険者をお考えになって間違いないのですけれども、第1号被保険者が利用されるときは、利用額の10%は自分で支払ってください、残りは結果的には保険料と国が払いますということです。保険料と国が折半です。保険料のうち、18%、32%と書いてありますけれども、これは全国の1号、2号の人口比率で案分しましょうということです。したがってこれは全国平均なわけです。個別の市町村の違い等をここで申し上げることはできないので、平均的な姿です。

今ここで申し上げたいのは、単に国庫負担があるから財政が厳しくなるということではなくて、それが保険の利用に一体どのようなことを引き起こしているのか、そして、そのサービスに改善はできないのかということです。この保険をつくったときは、まさか、2000年から始まって2004年で6兆円になる保険とは誰も思わなかったわけです。ふたを開けたらバッと増えた。

施設介護等はベッド規制とかありますから、そこは最初から規制されていて、在宅サービスの訪問介護とありますけれども、非常に伸びたのがグループホーム。在宅サービスの居宅系というと、頭しびれちゃうみたいなんですけれども、在宅サービスの中で痴呆性老人を扱うグループホームがどっと増えた、福祉用具も増えた。これはまさに、利用額の10%、保険料は月平均で1号が3,000円くらいですけれども、そういう仕組みの中で利用がものすごく増えていっているわけです。利用が増えていった結果どうなるのか。あるいは、福祉用具もどんどん借りているわけですけれども、それらがお金に見合うものだったのかどうか、それがまず問題だろうと。そして利用額が増えていった結果、どういう帰結になるかというと、この仕組みをやっていく限りは、給付額が多いならサービスをカットしよう、そういう循環になるわけです。

最後のページをご覧になっていただきたいのですけれども、社会保険に対して負担を軽くしていく、その結果が給付が増える、給付が増えていくとさらに国庫負担が増えていく。それでも賄えないときには結局そのツケは国民が払う。どう払うのかといったら、サービスをカットするんだと、そういう循環だと思います。吉岡さんとかの意見を私なりに理解すれば、10%で月3,000円の保険でなぜ不満があるのだろう。それは、自分のやっている足元の問題が、結局、自分の足元にツケが来ているというふうに考えます。

したがって、保険である以上は人々が給付に見合う負担をする。負担をすることで市場におけるサービス競争が起きて、いいものが提供される。10%しか払わない世界で市場に競争させろといっても、市場は競争しないわけです。だから、社会保障ということで深い意味で改革をしていくとすれば、保険であるものは保険にできるだけ直していきましょう、見合いの負担はきちんと求めていかざるを得ないでしょう、と。

その場合、負担能力のない人に対してどのような救済措置をするかというのは、ここがまさに税との兼ね合いでしょうけれども、そこはきちんとして、ただ、全体としては給付に見合う負担にする。そして保険に対して負担をかけるのではなくて、負担できない人がいれば、その保険料は、国なり市町村、都道府県が肩代わりする、保険は財政的に傷つけないという形で運営していく。結局そういうことで、いままで我々が見えてこなかったサービスが提供されていくのではないかということを申し上げたいわけです。以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、社会保険関係、いろいろな議論をいたしましたけれども、田近さんから問題提起いただいたものがベースになっておりますので、総会でも、給付と負担の関係、これが今の田近さんの説明でどこまで解明されたかは、これからいろいろなことをやらなければいけないのでしょうけれども、問題提起として行われましたので、どうぞ。田近さんの議論にのみ限定されずに、広く社会保障全体、あれば問題提起してください。

吉岡さんがお出しになったのは非常に重要で、負担に見合っただけ受益がないではないかという不満が社会にある、これは事実なんですよね。ただ、それに対して明確なデータがたぶんまだ出ていないのだと思いますが、田近さんのご説明だと、いずれにしても負担は保険料でやるか、税でやるか、受益者負担でやるか、3つだよね。その見合いとして受益があるわけでしょう。今の介護を見ると受益のほうがやたらと大きくなり過ぎてしまって、これぐらいの低い負担--負担と言っているときには、保険料を言ってるのかな、あるいは自己負担を言ってるのかな。それに見合ってどうだという議論をもうちょっとクリアカットにご説明いただくと、今の質問のお答えに。

田近委員

例を挙げながらお話ししたほうがいいと思いますけれども、今、介護保険にしても、病院にしても、入院したときの居住費をどうするかという問題が起きています。例えば介護保険で、そういう施設、養護老人ホームとかに入ると、1日700円・月2万円ちょっとで頭打ちになっているわけです。それを居住費を自己負担にしたらどうかというのが非常にホットなイッシューであるわけです。もちろん、高くして、払えない人に対する対策というのはあるのでしょうけれども、安いことに伴う問題というのもいっぱいあると思うのです。

今は、実際月5万円以上のサービスを得ているわけですけれども、本人たちが自分が払う5万円のときと、2万円しか保険料で払っていなくて受けている5万円のサービスと、そこは違うだろうと。つまり、ここできかせなければいけない一つの重要な考えは、消費者主権というのをこういう場でどうやって生かしていくのだろう、と。

例えば卑近な例ですけれども、我々はトイレ一つでも、普通のトイレではなくて、高くてもウォシュレットを買うわけですよね。もし、トイレが重要なものだからといって国が補助金を与えてくれたら、ウォシュレットのマーケットはたぶんできなかったと思うのです。国民が、自分が欲しいものは何だろう、それは自分のお金で払うから、凌ぎを削って、ウォシュレットという必要なものが値段も安くなってマーケットに提供されてくる。

その循環をどうやって社会保険の中でもつくっていけるのか。現実的にはそれが、専門的な言葉になりますけれども、医療保険の混合診療の問題、その一部、自分でお金を払うところは自分のお金で買ってもいいではないか、というようなところになってくる。だから、負担に対して給付が大きい、だから財政負担だというのは財政学者は言わざるを得ませんけれども、そういう仕組みで消費者が主権を発揮できないことで見えないものがあるのではないのか。むしろそれが、これから本格的な高齢社会の中で考えていかなければならない問題だと、私はこの頃、実際いろいろ施設とかを見ていて、つくづく思う。そういうことを申し上げたかったわけです。

石会長

どうぞ、島田さん。

島田委員

今の田近さんの議論は、給付に見合った負担をしていこう、そのことが消費者主権であると。私も賛成で、基本的にそういう考え方だと思うのですが、もう一つ、支出の中身を見ますと、かなりの無駄な支出が行われているんですね。例えば介護で言いますと、今、370万人の要介護老人がいるわけですけれども、法的に規定されて補助金がたくさんおりている施設というのは4種類あります。特養、老健、軽費老人ホーム、療養型病床群とあるのですけれども、これは施設整備費が75%補助で、特養とか老健というのはマックス5万円払えばいい。そしてサービスは33~35万円ですから、8~9割の補助になっているのです。これは、今の財政状態からするともう増やせませんよね。しかも、中に入っている方々は、25万円の年金をもらいながら5万円払って、あとは貯金ができるよと言っている人が何十万人かいるんですよ。そういうあたりをきちっと変えていくということは、これは税調で言えることかどうか知らないけれども、税を払わされる側から見たらたまらないですよね。だから、どこかできちっと言ったほうがいいのではないかと思います。

もう一つ、負担能力のない方はたしかにいるんです。これは低所得者の方もおられるし、年金が、農業者年金なんていうのも非常に不十分で、そういうものしかもらっていない人もいるし、いろいろです。こういう方々にこそ、補助率の高い--今、70万人分の施設があるのですけれども、70万人の施設を優先的にやって、年金を20万も25万ももらっている人はそういう施設を本当は使うべきじゃないんですよ。これは民間で、20万も払えば補助金なしの施設がいくらでもつくれる。

それは、小泉総理と私とでも「安心ハウス」と名付けてやっているのですけれども、厚生労働省はなぜか安心ハウスという名前を使うのは嫌らしくて、第三分類とか言っているのですが、さすがにできなくなったので、そっちの方向へ向けようという考え方ができています。これは、中産階級以上の方は補助金のないところへ自分の年金で入るべきだということでやっていって、本当に支払い能力のない人が今までの延長線上で施設をお使いになると。これならかなり整理されてくる。

それから医療費一つとっても、今、日本は珍しいんですよ。ジェネリックといって、特許の切れた薬を大量に使うというのが世界の潮流で、普通50%はジェネリックを使っているのですが、日本は20%もいってないんですよね。その差額は1兆数千億円になります。ですから、医療費改革というのは総枠規制でやりましたけれども、本当は、製薬メーカーとお医者さんと患者さんが、それぞれインセンティブを持って合理化せざるを得ないような仕掛けをつくればよろしいのであって、薬価差というのがひどかったけれども、薬価差はほとんどなくなりました。今度はすばらしいことが起きて、標準医療費払いという制度を国立大学80校に入れた。これが今度県立に入って、普通の病院に浸透していくと、お医者さんは新薬でむだ使いができなくなりますから、とてもよろしい。

極めつけは、国民一般に償還払い制度を入れることなんですよ。つまり、お医者さんへ行ったらとりあえず全額払わされる。風邪なんかは払っておけばいいんです。だけど、本当に難しい病気は全額払い戻してやるという仕掛けを、フランスが一回やりましたけれども、そういうことをやると支出の側はずいぶん整理されるのです。というくらいのことをこっちも言わないと、負担、負担と言われても大変で、という感じがいたします。

石会長

あと2つぐらい、ご意見あれば伺いたいのですが。いずれにしても、社会保障というのはこれから税調でも積極的に取り上げて議論しないとどうしようもない。つまり、税だけやっていたのではしようがないという時代になってきたんですね。社会保険料のほうが国税より大きい時代ですから。そういう意味ではだんだん税調も空洞化してきたんですな、社会保障がこれだけウエートが増えてきたら。我々も、空洞化を埋めるべく議論を取り込んでいろいろやるべき責任が出てきたかなと、だんだん私もそう思っています。

どうぞ、菊池さん。

菊池委員

よけいなことをまた言うようですけれども、今のを聞いてまさにそうだと思ったのですが、介護保険というのは私はすごく危険だなと思って、早くやめればいいなと思っているんです(笑)。世の中の動きを見ていると、2つ理由があって、1つは、やはりあそこにお金が集まります。新規事業だというので、若い人を雇ったり、土建屋さんが仕事をかえたりして、意識としてはなくなった公共事業の代替になっているんですよね、世の中で。そういうものというのはいやでも増えるんですよ。それが一つ。

もう一つは、介護をやっているところの入社式とかを見ると、とっても使いたくなるような真面目ないい子が、あんないっぱい入ってくるわけですね。普通の会社に入ってくるろくでもないのと比べたら、あれのほうが絶対いい。それをほとんど無駄なものに投資するという、そういうシステムをつくっていいのか。なおかつ、今までは主婦がアルバイトにちょこちょこっとやっていたのを、今度は資格を取らなければだめだとかうるさいことを言って、いいものにしようということをやってますよね。当然、資格を取らせればそういうあれができるわけだから、ものすごく危険な虫食いがはびこり出したという思いがしているのですが、そういうのを税調ですごくやってほしいなというふうに思います。

石会長

菊池節は相変わらず意気軒昂たるものがありますが、そういうものを取り入れながら議論しなきゃいかんですね。いずれ、また問題を提起していただきましょう。

次のテーマに行ってよろしゅうございますか。社会保障関係、特に財源関係をめぐってこれから我々も議論しなければいけないので、まだまだ機会はあると思います。

それではもう一つ、今日はテーマを用意しておりまして、法定外目的税の例の放置自転車税につきまして、総務省からご説明をいただきまして、議論したいと思います。

では、岡崎さん。

岡崎企画課長

前回の総会で会長からご指示がありましたので、資料を用意させていただきました。「総16-3 資料(法定外税)」というものでご説明いたします。

新聞等で報道されておりますが、豊島区の放置自転車税、俗称でありますけれども、これは法定外税の仕組みにのっとって協議があったものでありまして、1ページにその仕組みを書いてあります。地方税法に定めている税目以外の税をつくれるということでありまして、従来は法定外普通税というのは許可制でありましたが、平成12年4月に、大臣許可制を同意を要する協議制に変更いたしました。さらに目的税もつくれることになったというのが1番でございます。

手続は2番でして、地方団体が条例を可決したら総務大臣に協議をする。総務大臣は地方財政審議会の意見を聞くこと、財務大臣は必要に応じ異議を申し出ることができるという仕組みになっておりまして、総務大臣が審査の上で同意をする、あるいは不同意をするということになっております。

法律の条文でございますが、下の四角にありますように、下の3つの要件のいずれかがあると認める場合を除き、「総務大臣はこれに同意しなければならない」という条文になっております。要件というのは、1つ目は、国税又は他の地方税と課税標準が同じで、かつ住民の負担が著しく過重となる場合。2つ目は、物の流通に重大な障害を与える場合。3つ目は、その他、国の経済施策に照らして適当でない場合。これに該当しない場合は、同意しなければならないという条文になっているわけでございます。

2ページでございます。これだけの条文でありますので、地方団体がいろいろな税を考えるときに、我々の同意、不同意のある程度の考え方を示しておいたほうが透明性があってよろしいだろうということがあります。これは、平成12年の改正のときに出した通知を暫時変えてきておりまして、平成15年11月11日付で最新の税務局長通知を地方団体に宛てております。

第1、処理基準。どういう同意の処理をするかという基準を幾つか書いてあります。抜粋でありますけれども、例えば、国の経済施策に照らして適当でないことはどうか、どういうことかというようなことを書いております。法律をかみ砕いて説明している。

第3で、標準処理期間としては概ね3カ月です、というようなことも鮮明にしております。

第5は、留意事項ということで、処理基準とは異なるのですが、こういうことにも注意してということで、例えば「2.その他」でありますけれども、「法定外税については、税に対する信頼を確保し、地方分権の推進に資するものとなるよう、税の意義を十分理解のうえ、慎重かつ十分な検討が行われることが重要である」。あと下線部ですが、「税以外により適切な手段がないかなどについて十分な検討が行われることが望ましい」。(4)では、「特に、特定かつ少数の納税者に対して課税を行う場合には、納税者の理解を得るよう努めること」。事前にこういうことを示しているわけであります。

3ページは今までの法定外の状況であります。省略いたしまして、4ページ、豊島区の関係でございますが、豊島区の放置自転車問題というのはどんなことかということをまとめております。豊島区の場合にはたしかに放置自転車が多い状況にありまして、東京都の調べによりますと、平成15年度では、豊島区内の池袋が放置台数1位、大塚駅が2位となっております。かつ区の調査によりますと、少なく見てもその7割は鉄道利用者によるものであることが判明しているということです。

では、どうしようかということでありまして、新しい「5カ年計画」をつくるということで、今年16年度から20年度の5カ年の計画をここで立てております。その中での目標としては、今の3分の1くらいに放置自転車を減らそうということで、(3)のように、いろいろなことを計画に盛り込んでいるわけです。駐車場の整備、その他、ありますが、[2]にありますように、放置した人の負担も上げなければいけないということで、放置して保管したものをとりに来た人からいただく料金を5,000円に値上げする、などの対策も打つことにしています。

3番、財政負担ですけれども、この5カ年計画で平均1年11億5,000万円かかるということであります。その内訳としましては、先ほどの撤去の保管手数料、あるいは駐輪場の使用料等で3億3,900万円ほど自転車利用者からいただく。駐輪場の整備に国庫補助金8,000万円。そうしますと、区の負担が平均7億3,300万円でして、このうち自転車利用者の負担分よりは少ない範囲内で鉄道利用者からいただけないか、こういう発想でございます。

なお、4、備考にありますように、いわゆる自転車法、最後の10ページにつけてありますけれども、商業施設等、デパートにつきましては、自転車法に基づく区条例で駐輪場の付置義務を課しております。鉄道事業者については自転車法では、「地方団体又は道路管理者が、一般公共の用に供される自転車等駐車場の設置に協力を求めたときは、その用地の譲渡、貸付、その他により、積極的に協力しなければいけない」という「積極的協力義務」が法律であるわけです。設置義務はありません。

5ページが税の概要でございます。下の表をご覧いただきたいと思います。課税標準は、区内の鉄道駅における前年度の乗車人員であり、納税義務者は鉄道事業者。税率は乗車人員1,000人につき740円。すなわち1回乗車する人員1人について74銭ということになります。それから、課税免除というのが下にありまして、自ら区内に自転車等駐車場を設置して運営を行っている場合には軽減される。あるいは、保管用地とか駐輪場用地を区に無償提供、つまり貸していれば軽減されるとか、こういう項目がございます。聞くところによりますと、5社ございますが、そのうち1社はこれでほとんど税額がゼロになるということです。

6ページでございます。こういう税がどうして出てきたかということですが、12年に法改正がございましたことを契機に、区職員による研究会を1年半ほど実施しまして、そこで出てきたアイデアの一つがこれでございます。14年5月に至りまして、法定外税検討会というのを区で置きました。これは青山学院大学の中村教授を会長にいたしまして、学識経験者8名とその他の代表、関係団体として鉄道事業者も入っております。特に専門委員会8回というのは、学識経験者だけの会議を、8回ほど集中して1年4カ月ほどやりまして、まとめたものが、15年9月30日に報告書として出てまいりました。この中で、「鉄道事業者に課税することは妥当である」とか、「むしろ放置自転車1台当たりではなくて、乗車人員数でかけるべきではないか」ということが結論となりました。それをもとに条例を11月に提出し12月9日に議会で可決された。

可決されますと、私どものほうに協議が来るわけでありまして、7ページに協議のあとの経過を記載してあります。12月19日に協議書を持ってこられまして、私ども個別に当事者から聞いたりしましたが、4月9日に両当事者から直接私が聞くことをいたしました。この中で印象としましては、双方で腹を割った議論が不足しているのではないかというふうに考えたものですから、5月26日付で、次のページにありますけれども、もう少しちゃんと協議をしたらどうか、相談したらどうかという大臣名の文書を出しました。そういう提案をいたしましたが、6月に区から、議会の議決を得た条例を協議しているので、鉄道会社との話し合いは続けるけれども、同意、不同意の結論は早く出してほしい、こういう返事がまいりました。

一方で、自転車法に基づく協議会というのが新たに設けられまして、これも鉄道事業者が当然入っておりますけれども、法律に基づく協議会が6月30日に動き出しております。この法律に基づく協議会が前と何が違かといいますと、法律上、この協議会を経て総合計画というのがつくられれば、その計画に盛り込まれた事項は鉄道事業者にとって措置を講じなければいけないものになる。つまり、協力義務から措置義務に変わるという位置づけの協議会でございます。ここでも議論が始まりましたけれども、我々、その後も両方の当事者からも意見を聞きながら考えを整理しまして、9月13日に、法律上、3要件に照らした限りは、同意しなければならないという条文でもありますので、総務大臣による同意を行ったということでございます。なお、「意見」をつけております。

8ページが最初の意見でありまして、5月26日でございます。真ん中辺に大臣の考えとして、「自転車の放置というものの解決を第一に考える観点から見れば、もっと話し合いをして、合意の上で、鉄道事業者の積極的な協力を得ながら、具体的な対策を進めることを優先すべきではないか」ということを言っております。したがって、提案をいたしますということで、アは、自転車法の協議会ができるのだから、今後の対策とか負担とかいろいろなことについて具体的な協議を進めたらどうか。ウでありますが、その協議中に同意・不同意の判断をすれば、それもいかがなものかと思いますので、見合わせたらどうか、というようなことを提案したわけですけれども、先ほどのように早い判断を求められたということであります。

9ページは、9月13日付の同意文書でございます。これは実際は2枚でありまして、点々から上が同意書、下が、それにつけた意見でございます。意見としては、1番、「課税団体と納税者の見解がほぼ全面的に対立したままであって、協議、相互理解が十分に進んでいるとは言いがたい」という認識のもとに、「特定少数納税者に課税する法定外税の場合には、理解を得る努力を尽くすことが特に重要である。したがって、納税者から提起されている種々の指摘や批判を真摯に受け止め、協議・調整を十分に行って、その理解を得るように、更に格段の努力を行うこと」ということをつけております。

2番は、「特に、鉄道事業者だけが納税者となる(ほかの物販事業者等ではなくて)ことについて理解を得るよう努めること」。

3番で、ただいま説明しました5月26日の意見で指摘した点を踏まえまして、「自転車法に基づく協議会等の場を活用しながら、放置自転車を解消するための具体的な対策について、総合的に協議・検討を尽くすとともに、その状況を踏まえて、本件課税のあり方について必要な見直しを行うこと」、こういうふうに意見をつけた上で同意したわけであります。

その後、豊島区におきましては、先ほどの経緯にもありますが、第2回の協議会を開いたり、私どもが伺うところでは、豊島区もこの大臣意見を重く受け止めておりまして、すぐに施行するということではなくて、協議を進めたいと言っておられます。また伺う限りでは、鉄道事業者と豊島区はかなり具体的な協力、何ができるかという話し合いが始まっているということでございまして、私どもとしては、大臣の意見に沿って、適切に今後も話し合い等が進められることを期待しているというのが今の状況でございます。

以上でございます。よろしくお願いします。

石会長

ありがとうございました。詳細なご報告をいただきました。

何かご質問なりご意見はございますか。

島田委員

放置自転車というのは、朝、通勤者が乗ってきて夕方乗って帰るでしょう。日中置いてあるのは放置ではないのですね。それも放置なのですか。

岡崎企画課長

東京都の調査の定義では「自転車駐輪場以外の場所に置いてある自転車」でありますので、駐輪場以外の場所であれば放置であります。ただ、当然、今のような毎日持って帰るケースと、ほとんど捨ててあるようなずっと置きっ放しのものと、そういうものも含まれております。

島田委員

混ざってますよね。だから、さっきおっしゃった、取りに来たら5,000円というのは、大部分がおそらく毎日乗っている人なんでしょうね。

岡崎企画課長

さようでございます。

石会長

そうなると、駐輪場の定義も難しいね。それははっきりしているのですか。豊島区がそんなしていると思わんけどなあ。

岡崎企画課長

会長は地元なのであれですけれども、それなりに区も、池袋駅周辺は地下などにつくってありますけれども、例えば巣鴨駅周辺とか、落合南長崎の周辺とか、かなり地下を使ってつくってはいるんですね。ただ、それでは金がかかるし、なかなか間に合いませんので、例えば池袋駅周辺で、幅の広い歩道の一部をちゃんと置場として区画して、登録した自転車はそこに置けるとかいう簡易なものもつくったりしています。

石会長

銀行がつくったり、一部商店のところで駐車場みたいな形で駐輪場をやっているとか、いろいろあって、おそらくそういうところの曖昧さは残るのでしょうけどね。こういうことが出てくると、今後、いろいろな形でいろいろ類似のものが出てくるのではないかというのが問題。

どうぞ、河野さん。

河野委員

質問なんだけど、経過はわかったけれども、これが実施されるとするでしょう。おたく、大臣が同意したんだから。何もここだけじゃないんだよね、放置自転車は。私の家の近くだって、小田急沿線だけれども、こんなことは山ほどあるわ。危険でしようがない、あんなものは。だから何とかせいという声は山ほどあるんだけど、これも一つの解決方法かもしれない。よくわからないけれども。みんなが右へ倣えで、豊島区はいいことをやってくれる、じゃ俺のところも全部やるぜ、というふうに始めたら、大阪なんかは別にして、東京だけで幾らの収入になるか、地域全体で。計算したことありますか。

岡崎企画課長

そもそもこの税の740円という単価自体が、豊島区の負担の中から割り出しています。同じものができるとも思いませんので、今、ご指摘のは計算しておりません。おりませんが、これは豊島区内の乗車1回の行為について74銭ですから、ほかのところで乗る人はこの税とは重なることはないわけです、同じような仕組みをつくるとすれば。ですから、1回の乗車は、最低でも150円程度の切符を買うと思いますが、そういうものに74銭をどう考えるか。

逆にこれで言いますと、例えば2億円ほど、JRで1億円ほどという負担になりますけれども、ご自分で駐輪場の整備をしてもそれはそれである程度の金がかかるわけですので、私どもの判断としては、この税が決定的に鉄道事業者に対して経営阻害になるほどの重い負担ではないのではなかろうかというふうに考えております。

田近委員

豊島区で電車に乗りますよね。740円をどうやって取るのですか。まさか池袋で電車に乗ると、1円切符が高くなるわけじゃないですよね。

岡崎企画課長

これは納税者は鉄道事業者ですので、個人に転嫁するかどうかは別の問題であります。鉄道業者が前の年の乗車人員数について1,000人あたり740円払うということです。

田近委員

同じような税が、昔、横浜のお酒か何かであったような気がするのですけれども、あのとき問題になっていたのも、結局、誰が払うかわからない。だから豊島区の人たち、電車に乗る人が自転車に乗っているかどうかわからないけれども、そこはアバウトでいいとして、最終的に取った税金が鉄道事業者が払うとして、誰が払うかわからないというのは問題ですよね。だから、この3つの基準のどこかに違反しないんですかね。税を輸出しちゃっていることになるような気がしますけど。

岡崎企画課長

どんな税でも、いずれにしてもどこに最終的に負担が転嫁されるかという問題はあると思います。逆に負担が増える側面だけは、税ですから、目立ちますけれども、一方で言うと、本来、ある程度の協力を果たせばそれなりのコストがかかるわけでして、それとこの税との比較考量ということにもなるのかなという気がいたします。誰が負担するかは、たしかに最終的にはよくわからない世界になっています。

島田委員

事実認識ですけれども、2,000数百台の放置自転車というのは、ある日一斉に調べてこれだったということですよね。だから、毎日大体そのくらいになっているのだろうと、そういう感じですね。

岡崎企画課長

都がたしか1週間ぐらいの期間をずっと調べて、そんな平均をとっていると思います。

島田委員

それからもう一つは、池袋、大塚駅で2,000数百台あるわけですけれども、いわゆる駐輪場のキャパシティというのはどのくらいあるのですか。

岡崎企画課長

それはわかりますが、今、すぐ出るかどうか。

島田委員

10分の1くらいはあるのですかね。

岡崎企画課長

駅によって相当に違います。

島田委員

要するにあふれているわけでしょう。

岡崎企画課長

あふれているのですが、2,000台というのは純粋な台数ですよ。同じ2,000台くらいのところでも、駐輪場がもっとあるからそれで済んでいる駅と、非常に少ないのであふれているのが大きい駅と、その状況はさまざまです。

島田委員

でも、池袋なんかあってあふれているわけですよね。

岡崎企画課長

そうです。あってあふれているのと、それから、やや遠いところですと、あるんだけど利用率が低いとかいうようなことがございます。

石会長

どうぞ、村上さん。

村上委員

2億円を税で取るのがいいのか、それとも、鉄道事業者から取るのであれば、税ではなくて鉄道事業者に対策をやらせるという手があるのではないかなと。素朴な疑問ですが。

それから、私は杉並区の阿佐ヶ谷ですが、区が手数料を取って儲けちゃうんですよね、放置自転車と称して。それを何度も繰り返しているわけです。区の安定収入になっているわけです。だから、もしそういうことを公的な区とかそういうところがやるのであれば、責任を持って収納できる施設をつくらなければ解決しないわけですね。同じことをずっと繰り返しているものだから、取る側は待っているわけです、放置してくれるのを(笑)。そういう状態になっている。これも似たような話で、鉄道事業者から税金を取ってあとをどうするかというのが問題だと思うのです。そうであれば、鉄道事業者はきちっと責任を持って処理すべきと言ったほうが、公的な機関が関与しなくても済むのではないか。

石会長

それは当然、何度も言ってるのでしょう。それを西武とかJRが言うことを聞かなかったということでしょう。岡崎さん、そういうことでしょう。

岡崎企画課長

協力してくれとか、土地を貸してくれとかいう話もいろいろあった中で、なかなか両方の円満な解決にならない中で出てきたというのが事実です。

今のお話ですと、何かペイするのではないかという感じですが、どこの団体に聞いても、今、自転車というのは高く売れるわけでもないですし、儲かるわけにいかないと言っております。こういう目的のために目的税としてつくらざるを得ないというのが、この判断になっています。

それから、すみません、先ほどのお話ですが、例えば池袋ですと、都の調査によりますと、2,294 台の放置という集計結果になっていますが、ちゃんとしたところに置いてある駐輪台数は1,897 台という感じ。同じく大塚は1,900台の放置ですが、853 台が駐輪場の駐輪台数です。

石会長

そうすると、スペースが足らないということですか。たぶんそうでしょうね。

岡崎企画課長

大体どこの駅でもそういう状況だと思います。

石会長

本来は、公の機関が、鉄道でも区でもちゃんと駐輪場をつくって、有料にして受益者負担でやるのが筋だよね。それをやらないで税金のほうに来ると……。

河野委員

土地がないのよ。

石会長

ですから、土地も含めて、高いのを取ったらいいじゃないですか。

河野委員

いやいや、それでつくるでしょう。つくると利用しないんだ、金かかるから。ケチなんだ、今のユーザーは。ほんとだよ。ガラガラなんだもの、有料は。

遠藤委員

これは私の記憶では、法定外税というのは自治大臣の許可だったんですよね。許可をやめて同意なんていう制度を残すから、ここで問題になるのであって、地方分権で地方団体がきちっとやって、あとは責任を持つ。それは手数料で取ろうと、使用料で取ろうと、税で取ろうと、地方団体の勝手なんですよ。だから、もし事業者に不服があるのであれば、条例はもう制定されているわけですから、法廷で争えばいいんですよね。それを自治大臣が同意とか不同意とかいうから問題になるので、こういう制度はもうやめたらどうですか。私が言うのもおかしいですけどね。

石会長

元次官が言うんだから、迫力あるなあ。

さて、よろしいですか。これは、その後の状況を見て、ほかの波及等々を見てまた議論しましょう。

次回以降の考えておりますことを述べさせていただきますが、総会の予定は、10月15日(金曜日)午後2時から考えておりまして、個人所得課税とか消費課税とか、個別の重要な税の項目に入って議論いたしたいと考えています。

したがって、これに先立ちまして、この議論をする基礎問題小委員会を10月8日と12日、2回、おのおの個人所得課税と消費税をやっております。消費税は個別消費税も入りますが、そういう意味で2度粗ごなしをしたものを持ってきて、皆さんのご意見を聞きたい。特に個別の税に入りますので、いろいろなご意見がいただけるのではないかと思っております。お忙しいとは思いますが、出席をあらかじめご予定ください。

ちょっと時間が過ぎましたけれども、ちょうど時間もいい頃なので、これで終わりにしたいと思います。お忙しいところをどうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。