第14回総会 議事録
平成16年6月22日開催
〇石会長
それでは、総会を行いたいと思います。
総会のテーマは2つございまして、1つが、基礎問題小委員会の報告と、「税務関係書類の電子保存」について、このご説明をいただくという2つでございます。最初のほうは今終わったばかりのことでありますし、それから、元来総会の委員の方は基礎小に出ておられますので、もう一回ご説明をということもと思っていますので、そのままご承認いただけると思いますが、榊原さんだけ、ちょっと今お見えになったんですね。修文云々のところを若干直したところもあるのですけれども、よろしゅうございますか。
〇榊原委員
はい。
〇石会長
すみません。では、そういうことでご了承いただいておりますので、基礎問題小委員会の説明は終わったという形で、総会でもお認めいただいたということにさせていただきます。
では、もう一つのほうが今日の主要なテーマになろうかと思いますが、税務関係書類の電子保存についてでございます。これを今から三課長の岡田さんに説明していただきますが、これはそもそもIT戦略本部会議において、文書を電子保存せいという報告があったのですが、財務省は元来税務関係の書類をどうやって電子保存しようかという点を考えていたようでございまして、これにつきまして今から内容をご報告いただこうと。それから、実務的税務執行面におきましても国税庁と絡んでまいりますので、今日は、杉江課税総括課長にお見えいただいておりますので、この辺についてメンバーとしてご質問があればお答えしたいということでございます。
では、岡田さん、お願いします。
〇岡田税制第三課長
お手元に「税務関係書類の電子保存」という横長の資料を用意しておりますので、それに沿ってご説明をしたいと思います。
まず最初、1ページ目ですけれども、「税務関係書類の電子保存についての現行の取扱い」ということで、文書に入ります前に若干概要的なことをご説明しておきます。現在、税法に限らずさまざまな法律で、帳簿書類を保存しなければならないという義務が民間に課せられている場合がありますが、そこで言っている帳簿書類、書類という場合は、紙で保存するのが法律上の常識ということになっていまして、例えば勝手に写真を撮って写真で保存して原本を捨てるというようなことは、認められていないということです。今回は、今までは紙で保存しなければいけなかったものをスキャナで--大きなコピー機みたいなものですけれども、スキャナで読み取って、パソコンの中で電子文書として保存して、原本、紙は捨ててしまうというふうにできないものかというのがそもそもの問題の原点でございます。
1ページ目のところに、現行の取扱いについて書いてあります。最初のマルですけれども、今、税の関係では、紙で保存しなければいけないというのは先ほど会長からお話がありましたとおりですが、最初から電子的にパソコンの中で帳簿書類をつくった場合、例えばエクセルであるとか一定のソフトでつくった場合には、紙に打ち出さず、そのままパソコンの中で電子的に保存してもらって結構ですということになっています。これは、注のところにございますけれども、平成10年にできた「電子帳簿保存法」という法律がございます。その法律の中で、内容を変更するたびに変更履歴が電子データの中で残るといった形で、真実性、つまり紙と同じものであるよということを確保できること、あるいは、後で見るときにちゃんと見られるという可視性。例えばパソコンとかプリンターをきちんと用意しておいてください、そういった一定の要件が確保されることを、税務署長が事前に承認を受けた場合に関しては、そういう電子帳簿保存ができるということになっております。
2つ目のマルですけれども、他方で、原本が紙の書類、一旦原本を紙でつくってしまった書類については、もとの書類を改ざんした上でスキャナで読み取るといったことをされた場合には、原本は破棄されてしまいますので、残った電子データだけで改ざんを発見することは非常に難しいということで、こういうものにつきましては税法上の書類として電子保存することは認められていない。したがって紙で保存してください、こういうことになっております。これは国税だけではなくて、地方税でも同じような取扱いになっています。
2ページ目に、今回、先ほど会長からお話がございました、IT戦略本部においてこういうものを電子化していきたいという話がございました。IT戦略本部というのは、1行目に書いてございますように、総理が本部長を務めておりまして、全閣僚と民間委員から構成されております。ここで、官民で電子化推進のための諸施策を進めていこうということになっていまして、そのうち、政府として取り組むべき重点施策について、「e-Japan 戦略II加速化パッケージ」というものが今年の2月にまとめられています。
2つ目のマルにありますように、このパッケージの中に、民間に保存が義務づけられている文書の電子的な保存が盛り込まれております。そのために、新しく電子保存を認めるための統一的な法律、つまり商法から何から全部含めて電子保存できるようにする、横断的な法律、「e-文書法」というものを平成16年度のできるだけ早い時期に国会に提出することを目指しております。
3番目のマルです。このIT戦略本部において、電子保存を認める際に、保険業界、流通業界、これは紙での保存が非常にたくさんある業界でございますが、こういう業界から、保存コスト削減の観点から、税務関係書類についても電子保存の対象とするよう強い要望が出されております。紙で保存する際に、保存場所がなくて例えば倉庫を借りているとか、新しく自分で保管場所をつくったりということで、かなり保管費用がかかっている業界がございますので、そういうところを中心に強い意見があったということでございます。
3ページでございますけれども、では、紙からスキャナでイメージ文書をつくる際に、一体どういう問題があるのかというのをまず最初にご説明しておきたいと思います。紙をスキャナで取り込んでパソコンの中に保存する。そのときに改ざんされる可能性というのは2種類ございます。最初の方は、左下にございますように、紙からスキャナに取り込む際に、紙文書の段階で例えば文字を消して直してしまうというようなことをして、それをスキャナで読み込まれてしまった場合。つまり、電子データが最初から偽造されてしまっている場合というのが1つございます。
もう一つは、今度右下ですけれども、一旦スキャナで取り込んで電子データにしたあとに、電子データというのはデジタルデータですから、かなり改ざんが容易な部分がございます。そういうことでイメージ化したあと、コンピュータの中で電子データとして改ざんされてしまう場合というのがございます。この2つのケースがある。
現在のところ、実は、電子帳簿保存法が平成10年にできて以降、かなりいろいろな技術開発がございまして、イメージ化したあとにコンピュータの中で改ざんするようなケースについては、幾つかの偽造防止技術を使うことによって、これをきちっとトレースしていって改ざん防止をすることはかなりの程度できるようになっております。
ただ他方で、左下にありますような、紙文書の段階で改ざんした後でスキャナで読み込まれてしまった場合に、たしかにスキャナの精度はかなり向上していまして、解像度は高いのですけれども、例えばちょっと触ったときに砂消しのあとが残っているとか、あるいは、紙の質がこれだけ違うといったようなやや三次元的な情報は、これは現在では取込み不可能でございますので、左下のような改ざんのケースについては、現在のところではなかなか防止できないというのが現状になっております。
そうした現状のもとで、では、この問題をどう考えるのかということで、4ページ目に基本的な考え方というのを書いてございます。最初のマルに書いておりますように、文書の電子化というのは世の中の流れでありますので、税の世界だけそれとは別にやっていくというわけにはなかなかいきませんで、やはり国税関係書類についても、電子化の推進に向けて積極的な検討を行っていく必要があるだろうというのが第1でございます。
2つ目のマルですが、ただ一方で、そういう形で税の世界でも電子化を推進した結果、改ざんが容易になって、脱税を助長するようなことになってしまっては、適正公平な課税が著しく損なわれて、税務行政の信頼を大きく揺るがしかねないということで、要は3番目のマルにありますように、そういう税務行政の根幹である適正公平な課税を確保するという課題と、民間の流れに合わせて、税の世界でも電子化をしていってコスト削減をいかに図るか、この2つの課題をいかにバランスさせるのかというのが最大の問題点だろうというふうに考えております。
そうしたポイントを踏まえまして、今回、国税庁で、例えば産業界であるとか、あるいは新しい技術開発をしているITベンダーの方々であるとか、さまざまな方々と技術的な意見交換を踏まえて、長い間、議論していただきました。最終的に、税の執行面においても、あるいは産業界からしても、この程度までやってくれるのだったら、バランス論の観点からいって、お互いぎりぎり納得できるというような案ができたということで、それを発表させていただいたものでございます。それが5ページにございます。
5ページの考え方は、先ほど申し上げましたように、どうしても改ざんの可能性を防ぎきれない部分がございますので、本当に重要な書類についてだけは紙で残していただきたい。ただし、その他のものについてはスキャナで読み取っていただいて結構ですという考え方でつくられています。ちょっと見ますと、「以下の特に重要な文書については、引き続き紙による保存を求め、それ以外の全ての書類について、真実性、可視性を確保できる要件の下で、電子的な保存を認める」ということでございまして、紙で残していただく特に重要な文書というのは2グループございます。最初の1が、決算関係の書類と帳簿。これは、税金を算出するために直接使われます最も基本的な書類ということで、これは紙で残していただきたい。
2つ目に、契約書及び領収書。これは個々の取引の実態、金銭の授受を証明するための最も基本的な書類ということでございまして、いわば金の流れと物の流れを最終的に決めている書類という形になります。ただ、3万円未満の少額の領収書、契約書等につきましては、これは、重要性の点から言って電子保存していただいても構いません。こういう仕切りになっております。
実際、電子保存する際の保存要件ということでございますけれども、注のところに1、2、3とございます。これは、電子帳簿保存法のところでもさっき出てきましたけれども、真実性を確保するための要件、それから、可視性を確保するための要件、最後は、税務署長の事前承認制度ということになっております。
真実性を確保するための要件、くわしくはご説明しませんけれども、一定水準以上の解像度、カラー画像を確保していただく。あるいは偽造防止のため、電子署名であるとか、タイムスタンプ、ヴァージョン管理、そこに説明が書いてございますけれども、そうしたものを活用していただく。それから、文書の作成・取得から一定期間内のうちに早めにイメージ化してくださいというようなことを要件としております。
それから、可視性を確保するための要件としましては、あとで税務調査等に入った際に、きちんとどんな書類がコンピュータの中で保存されているのかということがわかるようにするために、ディスプレイであるとかプリンターを用意していただいて、一定の検索機能をつけていただきたいということをお願いしているところでございます。
実際のところ、こういうことをやって、どの程度がスキャナ読みができるのかということで、次に6ページで、企業の負担軽減効果(試算)というのを出しております。これは、スキャナ保存を強く要望している個別企業で幾つか調べてもらったのですけれども、下の点線のところにございますように、95%から99%は全部スキャナで読んでしまって、原本を破棄していただいて構わないということになるということでございます。
先ほどの5ページを見ていただくと、よく、決算関係書類、帳簿、契約書、領収書、これ以外に書類があるのかという方がときどきいらっしゃるのですけれども、企業のほうでとっております書類で、契約の申込書、例えば自動車保険などで、申し込む際に後ろに膨大な添付資料とかをつけて申し込みます。あとは請求書であるとか、あるいは見積書、納品書、こういったものが実は分量的にはかなりかさんでおりまして、実態的には、先ほど申し上げましたように、主要企業で95~99%ぐらいはそういう書類で占められるということがございます。
ちなみに6ページのところに若干書いてございますけれども、3万円未満の領収書等については紙で残す方に入れてありますので、これもスキャナで読んでしまうということになりますと、これも幾つかサンプルを企業のほうで調べてもらったのですけれども、多い企業だと、実は領収書のうちの9割近くが3万円未満の領収書、例えば個別の出張した際の宿泊代金であるとか、タクシーの領収書であったりとか、そういう部分がかなりあるということなので、そういうものも含めてスキャナ保存してしまった場合にはさらに負担軽減が見込まれる、こういう形になります。
冒頭申し上げましたように、これは国税だけではなくて地方税も含めての話でございまして、あとは、税関でとっております関税の世界でも同じような保存書類がございますので、こういったものも含めて、すべて、内閣官房の方で提出する予定であります「e-文書法」という統一法律の中で手当をさせていただく、こういう予定でございます。
私の方からは以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。何か杉江さんの方からありますか。よろしいですか。
それでは、今のことについてご質問等々あれば。
この専門家は上月さんじゃないのかな。何かないですか。
〇上月委員
いえ、もうよくわかっております。ありがとうございます。
〇石会長
我々はわかっていないから、これでいいかどうかお聞きしたい。これは税務行政上は進歩ですか。
〇上月委員
非常に大きな進歩だと思っています。ありがとうございます。
〇石会長
何かございますか。よろしゅうございますか。
では、こういうご報告があり、財務省もこういう対応でやるということで、一応ご承認というか、こういう報告があったということで受けとめることにいたしましょう。
それでは、先ほどもちょっと申し上げたのですけれども、今後のスケジュールにつきまして、今の段階で総括をして、秋以降のことを再度確認ということで、以下のことを申し上げたい。
まず、昨年来やってまいりました金融所得課税の一体化は、この間、基本的な方向がまとまって、公表いたしました。本日は皆さんのご了解のもとに、基礎問題小委員会のまとめた「実像把握」、これもひと区切りついたと思います。そういう意味で夏休み前に審議を2つ終えて、2つの文書を公表しようということで、これを受けて秋以降の具体化ということになってこようかと思います。先ほど申し上げましたように、ここは、まだ日程を含めてはっきりしていない面があるということで、いずれまた、ご報告いたします。
それから、はっきりしていますことが、8月末から9月にかけてヨーロッパ、北欧諸国に出かけて海外調査をしたいと考えています。これまでの基礎問題小委員会でのいろいろな議論を踏まえまして、高齢化、グローバル化の中で一体どのような構造変化が起こっているかということ、あるいは、社会保障の公的部門の役割はどうだとか、その財源として付加価値税はどんな役割をしているかとか、税と保険料、この兼ね合いは一体どうしているのかといったあたり、かなりいろいろな問題を突っ込んで調べてきたいと考えています。
一応いろいろな景気面のこともありますので、ごく小規模に2チーム、奥野さんと田近さんでドイツ、フランス、EU本部のありますベルギーに。それから私と井堀さんで、北欧、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーを1週間ぐらいかけて調査をしてきたいと考えています。報告書をつくりますので、これをベースにして秋以降の議論の出発点にしてもらいたい、このように考えております。いずれにいたしましても、基礎小の具体的日程は、決定次第またご報告したい、こう考えております。
この件について、よろしゅうございますか。
それでは、ちょっと予定した時間より早いのですが、これで夏休み前の議論は終わりにして、秋以降という形に、英気を養ってきていただきたい、このように思います。
では、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。