総会(第42回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成15年6月6日(金)16:36~16:57
〇石会長
今日は答申素案という形で、多分、来週以降提出できるであろう中期答申の中身を検討いたしました。これはこれまでの基礎問題小委員会の議論を踏まえ、かつ金融小委員会の議論を踏まえ、前回の総会のときに出たものを修文いたしまして、結果的には最終的なバージョンとして今日お示ししたわけであります。内容につきましては、既に皆さんにお渡ししてあります項目、あの項目立てに内容がくっついていて、全体で本文は15ページぐらいを考えております。広く読んでいただくという趣旨から、それ以上多くするのはよくないと思っていますし、それにアペンディクスがくっつきます。トータルで20ページぐらいかなと思っていますし、前から申し上げていますように、一本化して書きたいので、本文に載らない、しかし注目すべきいろいろな見解、意見がありますので、それは別途、別冊で答申に盛り込まれていない主な意見という形で収録し、雰囲気を伝える努力はしたいと考えております。
そこで、中身につきまして3つ、4つ、これから我々が絶えず念頭に置いて議論し、あるいはまた、今日意見が出た結果まとまった点につきましてご紹介します。恐らく内容的に見ていただきますと、すぐおわかりいただけると思いますが、これは来年、再来年に同時にドンとやろうという、そういうような答申ではございません。昨年6月に基本方針を出しました。そこで、10年、15年先の我が国税制のあり方という形で出したものが今度は特定の切り口、例えば少子・高齢化という切り口から現行税制の問題点を探り、改革の方法を出したという意味において、短期的な視点というよりは中長期的な、かつ、ざっと言って10年先ぐらいになるとこうなるだろうと、そういう視点から消費税率なども書き込んでいるわけでありますので、そういう点ですぐ短期にこれを全部やるのかねというような判断にはないということをあらかじめ申し上げておきたい。したがって、現行税制の問題を探っていきますと、どうしても税負担引き上げという方向で、そういうトーンになると言わざるを得ませんが、これは順を追って、ステップ・バイ・ステップで行くという趣旨であります。
そこで、少子・高齢化という柱が立って、それにまつわるさまざまな分析をした後で、個人所得課税、消費税、そして法人税、なおかつ相続税・贈与税と、こういうふうな形で4本並べておりますが、さらにこれからは個別間接税、あるいは個別のサービス課税みたいなものが非常に重要になると。これはすぐさまゲーム・カジノ税を思っているわけではございませんけれども、そういう趣旨の発言もあり、今言った4つの税以外に、個別間接税といったものも今後新しい角度から、特に地方分権等との絡みで言うならば、非常に税源になるではないかというふうなことで、そこに書き加えることはあり得るかと考えています。
それから、消費税、これはいろいろ議論も出ておりますので、かつ随分先を見通した議論から言えば、現行の5%のままで止まることは多分ない。そういう意味では、10年先として、15年先として、将来2桁ということはあり得るだろう。今の段階でこんなに書くことはないじゃないかという議論もございましたし、いや、姿勢をはっきりする意味で書くべきだという議論もありまして、ここだけ特に取り上げて議論もいただきました。しかし、今の少子・高齢化の世界で考えたときの医療、介護、年金等々の必要な財源は、別途何らかの形で国民のみんなが負担する格好にしなければいけませんから、これはあり得るだろうと。それから、何分にもこれだけの借金漬けを将来世代にいつまでも送っていくわけにいかないだろうと。そういう意味で、今後の少子・高齢化は、みんなで負担し合って、痛みを分かち合うという形でないと乗り切っていけないという意味において、消費税が中核になるというふうな議論をいたしました。
したがって、次なる問題はどういう税制で支えるかというときに、やはり所得税の基幹税としての機能回復、これは少子・高齢化の中でも待ったなしの状況でございますので、今ある不公平感、あるいは歪みの点で、さまざまな所得がいろいろな形で特定的に扱われておりますので、それを全部もう1回精査して、例えば年齢だけで優遇されるといったような所得税制度はよくないだろうと。やはり所得の種類で、高齢者の方も、何種類も所得があって高齢者だったら、別に年金だけ優遇するのではなくて、他の所得と一緒にして所得課税に乗せれば、高齢者の高額所得者に対して負担を課すことは十分可能だし、ただし、年金だけで生活しているような高齢者の低所得者層にはかけるべきでないと、こういう点をはっきり書けということでもあり、それら修文をこれから考えてみたいと、このように考えています。
言うなれば、少子・高齢化という項目で半分以上を占めておりまして、それ以外の地方分権とか、その他の項目というのは残りでございますが、できる限り少子・高齢化という切り口で、例えば地方分権というのもこれから少子・高齢化、まさに地方が担い手になってという視点もあるわけですから、そういう視点から書けないかという議論もございました。そんなことを今議論してきたところであります。
そういう意味で、全体のフレームについて、一応お認めいただいたと思っていますし、個々の内容につきましては、もっともなという、さまざまな具体的な提案もありましたので、これから修文をして、来週火曜日にもう1回起草会合というものをやって、今日のいろいろな意見を酌み取った形で、さらに答申素案の修正版をつくって、来週金曜日、13日になりますか、できれば会長一任という形のところまで議論を詰めて、案文を最終的に固めたいと考えています。できれば17日、これはまだわからないんですけれども、首相の日程等々ありますので、そのときの状況でありますが、首相に答申を持っていきたいと、このような段取りで考えております。
最後、言い忘れましたが、やはり社会保険負担というものが絶えず税負担増との絡みであるわけで、この社会保険負担増との関連を今後の税のあり方の中で、やはり積極的に入れなければいけないのではないかという議論もあり、別途、項目を立てて書くかどうか、これから議論をしていきたいと、このように考えています。
今日、具体的に物がなくて、内容について細かくご説明するわけにもいきませんでしたので、議論が、こういうことがあったというご紹介で、ただ、今みたいな項目でやったということで、中身についてはご想像いただけるかなとは考えています。以上です。
〇記者
修文をして取りまとめということになると思うんですけれども、特に修文で委員間の意見の隔たりがある部分とか、あるいは特に難しい部分というのは何かございますか。
〇石会長
1つ、今日特に取り上げていただいたのが消費税の税率水準をどう書くかということで、幾つか意見がありますけれども、大体、全体の方向としてははっきり2桁の税率と書こうということで、これは恐らく反対の方もそれは同調していただけると思っています。
それから、納税者番号のあたりで番号を、今、住基番号等々あって、これが現在、民間の利用に使ってはいけない等々の議論もありますよね。そういうことの書き方をどうするかという、その辺の書き振りについて議論もございましたし、それから国税の所得税の、言うなれば諸控除の見直しとか、税率云々の議論に比べて、地方の住民税関係のところが少し少ないので、これはもうちょっと書き込んだらいいじゃないかというあたりで議論もございました。したがって、地方税の書き振りの、あるいは目指す方向は同じとしても、改革の方向の具体例を少し書いていいじゃないかというあたりで、少し議論が出てきたように思います。そんなところでしょうかね。
〇記者
非課税所得なんですけれども、具体的なメニューは。
〇石会長
具体的なメニューで、今日も議論になったんですが、非課税所得というのは、所得の性格によって課税の対象にしない、具体的なものが遺族年金とか失業給付ですね。しかし、所得税の性格から言うと、はなからそういう所得の性格において税の外へ置いてしまうというよりは、一旦入れて、他の所得と一緒にして、それでさまざまな、さまざまと言うよりは、基本的な人的控除で、そういう遺族年金などかからないような、本当に困っている人、低所得者はかからないような方法でできるわけです。従来の所得体系は、どうも余りにも特定の所得なり、特定の境遇なりをはなからはじいてしまった。それを戻して、その代わり、人的控除等々でしっかりそういう人は税の外に出すというのが本来ではないかという、そういう方法をとっておりますから、そういう書き方になろうかと思います。それから少子・高齢化で高齢者に応分の負担をという言い方をしたときに、少子化の方でも扶養控除というものをしっかり、社会的に皆で認知し合って、少し集中的に扱ってもいいじゃないかという、そういうふうな配慮もという議論をしました。
〇記者
国と地方の税源移譲の関係なんですけれども、方向性みたいなものを示したいということで前回言われていましたけれども。
〇石会長
今、税源移譲等々、いろいろな案が出ていますよね。酒だ、たばこだ、ガソリンだとか、あるいは所得もとかという話ですけれども、ただ、これはまだ非常に議論としては未成熟でありますし、かなり政治的な判断に左右される問題であります。我々としては、10年、15年先を見ているわけですから、5年たって、うたかたの、消えてしまうような議論を書き込んでもしようがないと思っているんですよ。そういう意味で、今はまだ方向が定まっていないような問題については、取り上げるつもりはございません。したがって、税源移譲の具体的な項目について書くということはしないつもりでおります。ただ、ご存じのように今、三位一体論が非常な、何というのかな、方向が定まらない形で議論が行われていますので、我々として従来のトーンを大きく逸脱して書くというのは非常に難しいと思っていますので、無条理に三位一体でやるなら、国庫支出金、地方交付税というものをちゃんと見直して、その財源を税源移譲に譲るといったような議論しかできないと思っていますので、そういう書き方になっているということです。
〇記者
税源移譲なんですけれども、この中期答申とは関係なく、政府税調として答申を出されて、この秋からまた具体的な議論を始めますが、その中で税源移譲というのはどういう形で取り扱っていくのか。
〇石会長
今回はあくまで、先ほど来申し上げていますように、委員が交代になる3年ごとに将来を見通して日本の税制はどうあるべきかという、卒業論文みたいなものでありますから、それほど個々具体的なケースに触れるのは、性格になじまないと思っています。ただ、基本的な方向で幾つか具体例も交えた方法が出ております。恐らく秋以降の議論では、今おっしゃったような形で具体的な、そのときの状況にもよりますが、税源移譲の問題の項目がでてくる。それからもっと別な意味で、来年も所得控除を見直すよというときは、これはこうじゃないかなんてことが具体的に政治的問題になったとき、あるいは我々としても年度改正の答申を出します。その中で今回の中期答申の中から、来年取り上げるにふさわしい問題があれば、そこで取り出して、また基本的なフレームを提起する形で諮問会議なり、党税調なり、それを踏まえて一緒に議論したいというような段取りを考えています。
〇記者
とすると、年末の税制改正の答申の中では、具体的な税源移譲の中身について、あり得るかもしれないと。
〇石会長
あり得るかもしれませんね。今の議論がどこまで続いているかわかりませんけれども、秋まで、あり得るかもしれません。
〇記者
先ほどの地方の住民税が少ないので、書き込んではどうかというのは何を。
〇石会長
いやいや、分量的にですよ。分量的に記述が少ないという意味ですよ。
〇記者
改革の方向ということですか。
〇石会長
いやいや、例えば所得割、住民均等割みたいなことがあっても、具体的に所得割で課税ベースを広げるとか等々でも、国税は事細かくいろいろな控除を書いたりなんかしているわけです。それと同じぐらいの分量まで行かないにしても、もうちょっと具体的なイメージが沸くぐらい書いてはという議論があったということをご紹介したわけです。単に諸控除の縮減と言っても、何の控除かわからないでしょう。
〇記者
住民税が少ないというのは、住民税の記述が少ないと。
〇石会長
そういう意味です。税負担が少ないという意味ではないです。記述が少ないという意味です。ごめんなさい。そうとっちゃったか。僕の説明がまずいのか。
〇記者
塩川さん、今日の会見で、新たに所得税の一部を税源移譲してもいいんじゃないかみたいなこともおっしゃっているんですけれども、これに関しては、石さんは何かご意見ありますか。
〇石会長
個人的にですか。塩川大臣がそういうことをおっしゃったということは今日聞きまして、それを税の答申の中に、これはとっさになかなか今から書き込めないと思いました。私は基本的には、貧乏人同士が懐をお互いに見定めつつ、よこせとか何とかという、そういう事態ではないと思っているんですよ。ただ、三位一体で、国庫支出金が整理され、地方交付税もそれなりの財源を生み出し、かつ事務事業なり、権限が地方に行った段階で、国が財源上余裕が出れば、それはあるんでしょう、税源移譲は。そのときに、おそらくどのぐらいの規模で税源移譲があるかによりますけれども、小規模なら、まさに塩川さんが言っているようなたばこ税、こういうものが念頭に挙がって結構だと思いますし、大きくなれば、やっぱり所得税とか消費税とか、片山さんが言っているようなところまで波及するということは、理屈の上ではあるんでしょうね。ただ、何分さっき言いましたように、国庫支出金と地方交付税がどのぐらい、権限移譲も含めてきれて、地方の本当の分権に役立つような姿になるのかわかりませんから、それを前提としてと言うならば、大規模な場合には所得税移譲というのは考え得る可能性があるんでしょうね。
〇記者
所得税の控除のところで、昨年度というか、去年の年末のときに配偶者特別控除を廃止しましたよね。配偶者控除というのもずっと議論はしていたんですけれども、今回の中期答申では、明確に配偶者控除を廃止するということは打ち出すんでしょうか。
〇石会長
何分にも配偶者特別控除がまだ実現はしていないわけで、俎上に上っているわけですから、ここ1~2年で配偶者そのものにまでというところまでは具体的には言えないと思います。ただ、これから右肩上がりの経済も終わり、みんなで支え合おうといったときに、家庭とか就労のタイプとか何かで課税の歪みが生じてはいけないだろうという趣旨において、先ほど申し上げたのは、本当の意味で扶養の必要な人に対しては、控除を増やしていいだろうと。ところが、配偶者控除というのは、ある意味では一本立ちした女性を対象にしているわけですから、配偶者特別控除の流れの一環として配偶者控除というものを見い出すことはあるんでしょう。そのときは、扶養控除の中に溶け込ませるか等々の議論は残るでしょうね。したがって、今ここに殊更、配偶者控除を狙い撃ち的に廃止すべきだというのは、配特が終わったばかりでありますから書いておりません。書かないと思います、そこは。ただ、問題意識は持っていますね、問題意識は。だから、本当に所得税の世界で身障者とか、年少の児童に対して扶養の幅を広げるというのは、あるいは人的控除の意味で、基礎控除を拡大するということはあり得るでしょう。そのときに恐らく配偶者控除というのは、1つの議論にはなるでしょうね、統廃合という意味でね。ただ、それはまだ先の話でしょうね。
〇記者
さっきの説明の中で、サービス課税が重要になるというふうな発言、これは中期答申の中で何か具体的なものを挙げて書き込むことになるんですか。
〇石会長
実は今日、先ほど申し上げた少子・高齢化の中の4つの主要な項目、個人所得課税、消費税、消費税というのは付加価値のことですね、それから法人税、贈与税・相続税と来て、5つ目として、やはり個別間接税、これに全然触れないのはおかしいじゃないかという意見が出て、これは前からそういう意見もあったんですが、特にそれはギャンブルとかゲームとか、そういう形で、ここでもご紹介しましたけれども、あって、そういう意味では、あとはパチンコだとかホテルだとか、いろいろあるんでしょう。そういう意味で、これからどこまで具体的に書き込めるかは別として、基本的に個別間接税というものに対して、従来は個別間接税を廃止して一般消費税を入れたから、個別間接税については殊更触れないで来ましたけれども、この税源移譲の問題があったことだし、それから世の中は随分変わってきたし、サービス化というのも一段と進む中で、個別消費税、特にサービスに追従した個別消費税、間接税、これの拡充というのはあり得るという視点、これは今日も出てきましたし、議論したいと思います。書きたいと思っています。既に、東京都がホテル税を始めたり、いろいろ始めていますからね。
(以上)