総会(第41回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成15年5月27日(火)16:58~17:19

石会長

それでは、ただいま総会が終わりました。3時間にわたる議論をしてきましたが、そこを受けて今後どういう形で中期答申を書くかという、その辺の私の考えを具体的に…具体的にというか、その辺の基本的な方向を整理させていただきます。

まず最初にですね、今日お配りいたしました「小委員会の審議を踏まえた主な論点」というのがございまして、これに沿って議論をいたしましたが、大体この基本的な方向は総会でご了承いただいたと私自身は了解しております。当然のこと、注意すべき点、あるいは要望、幾つかございましたが、大きな許容範囲というのがあるとすれば、その中に入っているというふうに考えておりますので、大体このような項目で文章を付け、書いていきたいと、基本的にはそのように考えております。

さはさりながらですね、当然のこと、十分に配慮しなきゃならない点というのが幾つかございますので、2~3、私自身が考えましたことを整理したいと思いますが、「少子・高齢化と税制」というのが一つのキーワードでございます。これは、昨年6月の基本方針をこの切り口から切りたいというふうにこの間も申し上げましたが、そこでなぜ所得控除見直しだとか課税ベースの拡大が出てくるのか等々、ある委員から出ていましたように、この点は十分に基本的なところでありますから、少子高齢化というものを踏まえた時に、いかなる理由でこのような消費税、所得税、そして相続税・贈与税、この辺を見直さなきゃいけないという点はしっかり書かなきゃいけないというふうに注意すべき点として第1点。

それから、ここ2週間ぐらいになりますか、年金課税という点で皆さんご関心を持っていると思いますが、これにつきましても、年金受給者というのを一からげにして、すべからくここに網をかけて、そこで例えば公的年金等控除見直しとか等々を一網打尽という言葉は良くないかもしれないけど、そういう形でやるというよりは、やはり高齢者の中にもいろいろデータを見ると、この間も申し上げたように高所得者、低所得者、いろいろございます。そこで、十分にその辺は配慮しなきゃいけないなと思っていますので、当面、年金課税の強化といった時には、他の所得もあり、負担能力もありという高額所得者が当面念頭にあるという形であります。そういう形の議論はこれからやっていかなきゃいけないと思っています。その絡みで、公的年金等控除とか、その他幾つかの年金に絡む議論というのが出てこようかと考えております。

それから、難しいのは、今日幾つか議論になった中で、所得税の持っています所得再分配効果を更に高める方向でいくか、あるいは活性化という視点で累進課税をもうちょっと見直す…見直すというのは引き下げる方向ですね、フラット化の方向ですね、このあたりは再度議論を詰めなきゃいけないし、それから、消費税を仮に引き上げたとした時の逆進性に対する配慮、これはこれまで政府税調でも議論を重ねてまいりました。これを再度書き込むかどうかの問題というのは、恐らくこれから大きな争点になってこようかと思います。

それから、今日ここに書いてございませんでしたが、例の定率減税見直しの議論をここにかまして書けるかどうか。ただ、昨年6月の基本方針に書いてございますので、それを超える形で書けるかどうか。何ぶんにもまだ景気との絡みで定率減税をやられたもんでありますから、見直しに当たっては前提をしかと議論しなきゃいけないだろうと思います。

それから、総論部分について言うならばですね、何人かの委員から出てきましたように、日本経済全体の大きな構造転換点にあって、それを踏まえてこの税制、あるいは社会保障制度の見直しという、その辺の具体的なわれわれの理念ですね、あるいは基本方針というべきでしょうか、それはやはりあるべき税の姿を更に深めていく意味でしかと書き込みたいとは思っています。10年、15年先という点を踏まえても、この点はどうしても重要になってこようかと考えています。

それから、今様々な形で入り口の段階で政治的にもみくちゃになっている問題に対して、どこまで今回書き込むか、中期答申としてわれわれ積極的にもの申すかという問題、幾つか残っているような気がいたします。その1つが環境税の問題であり、今日もペーパーが出ておりますように、これはかなり議論しなきゃいけないし、と同時に、京都議定書の取り扱いにつきましても意見が割れているという時にあって、この取り扱い方はこれから少し争点になると思います。

それから、例の国と地方の三位一体論、今日はあんまり議論は出なくて、抽象的な段階ですが、これまた今、他の審議会でも議論になっていますように、政府税調としてどこまでこれに真っ向からぶつかれるかという点も議論として残ると思います。塩川大臣も関心をお持ちでございますし、いろいろおっしゃっています。それから、これとの絡みで税源移譲の具体的名前が出てきておりまして、今日も特定財源について揮発油税の問題が出てきました。この辺はこれからの議論として整理していく過程で、具体的に姿が出てこようかと思います。ただ、私の印象では、両論併記的に書くというようなことは極力しなくて…極力というか、しないほうでこの中期答申をすっきりまとめたいという願望を持っていますので、その方向でこれから一層努力はしてみたいと思いますし、多分、今の段階は楽観的ではありますが、そんなことは可能ではないかというふうに考えております。

日程等々につきましては、もう既にご説明しましたように、起草を1回やって、総会をやって、起草をやって総会をやってと。で、最後に総まとめをするという形のことを考えております。ただ、議論の進捗状態によっては伸びるかもしれませんし、最後の日にまとめたものを小泉首相に持っていくということをいつもやっておりますので、小泉さんの日程等もございますから、おしまいのほうが必ずしも17日だったかな…にならないかもしれません。それは今から少し議論はそういう形で留保を付けておきたいと考えています。以上です。

記者

今日、総会の中で消費税に関していろいろ議論が出ておりましたけども、今度まとめる中期答申が想定している時期というのは、一体中期というのはどれぐらいの点なのかと。これを聞くのは、塩川大臣が日曜日に、平成19年にも、という発言をされてますので、中期答申としてはどこの辺までを視野に入れているのかというのを説明いただきたいんですが。

石会長

中期答申という言葉遣いはですね、従来慣行的に使っているのは、3年ごとに委員の交代がございますね。そこで、その3年ごとに…だから3年ごとに書くという意味で中期的なという意味に使っていますが、ただ、今もご説明してますように、10年、15年先ということを絶えず念頭に置いて議論をしてますね。それから、したがって、3年を超える範囲でというのは、塩川大臣がおっしゃいましたように、直近で起こっていることにつきましては、「その他」か何かで書きたいと思っています、不良債権問題等々の話もですね。そういう意味で、私どもは、昨年6月に「基本方針」を出しましたように、10年、15年先、それから言うならば3年を超えた10年、15年先あたりが主たるタイムスパンとしての関心事であるというふうに言ってもいいかと思います。ただ、今から3年以内のことにつきましては、不良債権…さっきから言ってますようにそれはそれでまた別な処理をしたい。しかし、書き込みたいとは思っています。そこに消費税が入るかどうかはこれからの議論ですが、消費税の議論は、おそらく塩川さんが言われているように、あるいはわれわれ自身も10年、15年先に5%水準のままで推移するとは誰も多分思ってないと思いますので、そこは、その書き方としては当然そこら辺ではっきりしたことは言えようかと思います。

記者

納番なんですけれど、今日の総会でもいろいろ議論がありましたが、その中で選択式というものは課税の公平という観点からは好ましくないという指摘もありました。今回の論点を見ると、納番のところでは選択方式を前提としたような書きぶりで、より簡素な申告手続が可能となると、そういう書き方をしているんですけれど、ここの部分についてはどういう方向で整理されていくんでしょうか。

石会長

これはまだ確固たる方向を今の段階ではっきり申し上げることは難しいと思います。ただ、従来、納番、納番といって漠とした考え方ですから、何となくできそうな形の議論をしていましたけど、実際やるとなると、今ある2つの番号制度プラス第3の道を使うかどうかという議論がありますね。今日、ある委員が言ったように、個人が勝手に番号を付けて登録すればいいじゃないかなんていうこともおっしゃっているし、あるいは、恐らく金融の場だけで使えるような…使えば有利になるような、そういう番号の使い方というのが多分あるんでしょう。つまり、金融所得の一元化、あるいは総合課税化した時に、それを使えば損益通算ができるとかね、そういう形でメリットがあれば使ったほうがというような形でやって、定着して、だんだん広げていくという考え方もあるでしょう。これはこれからの議論だと思いますが、6月の段階は、もう1カ月ぐらいしかありませんから、その段階で一般的に強制するのか、それとも任意の方向でやるかというのは、もうちょっと議論してみたいと思いますが、まあ、どっちかのほうに議論が振れていけば、そっちを多くしたいと思っていますが、両方とも有力な理屈付けがありますんでね、もうちょっと議論を深めていきたいと思っています。

記者

先ほどチラリと出ましたけれども、塩川大臣の一昨日の発言、2007年度にも消費税引き上げと、この発言について会長はどういう受け止め方を。

石会長

まさに政治的なご発言だと思うし、それからまあ、小泉さんがちょっとこう自縄自縛になっちゃって、なかなか言い切れないところを代弁したんじゃないかと思いますけどね。まさにおっしゃる通り、ロジカルですよ。3年やった後は自由であろうという意味でああいうことをおっしゃったんだと思うし、3年後の財政事情というのはますます悪化しているだろうと思うし、だから、年金にしても医療にしてもますます財政ニーズは高まっていると思いますから、それはそれで塩川さんのような議論があると思いますよ。そういう意味では、改めて聞いてみると、そういう説明のし振りもあるかなと。政治的な判断も踏まえてね。僕はそう思います。

記者

先ほどの年金課税のところなんですけれども、要するに高額所得者に対して、負担能力のある高額所得者を対象にするというかですね、今回の見直しの対象にするというお話があったんですけど、これはイメージとして、今のところ例えば年収幾らとか、年間の所得が幾らかということに対する人に対しては年金等控除とか老年者控除を縮小すると、そういう線引きを決めてというイメージなんでしょうか。

石会長

あくまで年金課税の原則はね、入口で非課税になっていれば出口、つまり給付の段階で課税というのが世界の共通のルールです。ただ、今の場合両方とも非課税になっているという実態を少しでも直さなきゃいけないという時にですね、おそらく給付課税をフルにやってしまうというところまでいけるかどうかで、今ご質問のように、当面は他の所得もあり、年金もいっぱいもらっている方は、ある意味では高所得者層ですね。その方々に適用している公的年金等控除、それの見直しというのはあり得るでしょう。ご存じのように定額控除と定率控除がありますから、その辺の見直しということに今の話を噛ませることは可能だし…。ただ、老年者控除というのが 1,000万円という所得の頭打ちがあるところで、あれをどうするかと。ただ、われわれとしては、年齢によって自動的にああいう控除があるということはどうも好ましくないと思ってますから、いずれはと思っていますが、今の段階でどうできるかは問題が残ると思います。と同時に、低所得者層と言われている高齢者の人達を仮に年金課税を見直すといった中でどう位置付けるという形の問題は、ちょっと具体的にいろいろやっていかなきゃいけないと思いますが、当面ターゲットは、その高額高齢所得者になるだろうし、その形としては、他の所得込み込みの場合に控除を2つ使っていいかとか、あるいは公的年金等控除をフルに使わないような形にするとか、いろいろ策はあると思います。それを少し具体的に考えてみたいと思っています。まだ具体的設計ができてませんから、そのターゲットがどこにあるかということだけのご説明しかできませんが、そういう形のことを考えています。

記者

確認なんですけど、そうした場合に、高額所得者に限っちゃう場合は、今までの議論だと公的年金等控除とか老年者控除ですか、縮小という議論だったと思うんですけど、これを高額所得者に限る場合は全く廃止すると、そういう議論というのはあり得るんですか。

石会長

今でも在職老齢年金というのは、たしか37万円を超すとみんななくなりますね。要するに、カナダのクローバックシステムというのがあって、あるレベルを超えるとなくなるというのがありますよね。そこまでいくということになると、控除云々の話じゃなくなりますね。それを踏まえてどこまでやるか。具体的な制度設計というのは、おそらく仮に実施するとなると、年度末の議論になると思いますので、方向性だけをしっかりして、具体的な制度設計というのはいずれ年度改正の段階にならざるを得ないと思いますが、問題意識は明らかにしておきたいと思っています、問題意識は。

記者

中期答申で触れる項目の中には、来年度の税制改正で議論される項目もあるかと思うんですけれども、この部分については今年度末に議論するですとか、その方向感とか時間の感覚をどの程度はっきり示されるんでしょうか。

石会長

中期答申はあくまで、先ほど申し上げたように、10年、15年先のあるべき税の姿を軸にして書きたいと思います。その中から、おそらく年末になったらですね、この間…配偶者特別控除や特定扶養控除が昨年度議論されたように、恐らく緊急性を要する、早くやったほうがいいんじゃないかという項目はおのずから出てくると思います。一応、7月、8月に4回ほど対話集会をまた考えておりまして、その中で、対話集会の中でそういう問題が浮かび上がってくるかもしれない。あるいは、外側からの政治的な要求によって出てくるかもしれない。したがって、中期答申の段階では、その辺の時間軸の優劣というか重要性、後に及ぶ等々は具体的には通常は書いておりませんので、そこはニュートラルに書いて、いずれ年末にかけては具体的にそこの中から、言うなれば早急にやるべきものというものが拾い出されて、そこで年度改正の議論をしたいと、このように考えています。

記者

週末に塩川大臣が、三位一体の議論に関連して税源移譲の具体的項目に言及されましたけれども、それは、今後の起草の議論の中でどの程度意識されていかれるんでしょうか。

石会長

酒、たばこ、ガソリンだっけ、3つ出ましたよね。あと、片山大臣がたしか所得税と地方消費税をおっしゃって、いろいろ項目が出てきています。そこについて、政治的なレベルのご議論があったわけでありまして、われわれとしてそれをどこまで具体的な場で議論するかということは、皆さんの議論を聞いてみなきゃ分かりませんけれども、「例えば…」といったような形で書けるかどうか。議論はしたいと思いますが、何ぶんにも三位一体論というのは、税調がかねて言っているのは、例の国庫補助負担金見直し、地方交付税が大前提でありますから、それがあった段階でこう、という議論になると思います。塩川大臣のおっしゃったような項目について、今日も揮発油税が国と地方の段階でという議論も出ておりますから、これちょっと、どこまで書き込めるか、今日の議論を踏まえて整理して、みんなの意見を聞いてみないと分かりませんけれども、「例えば…」ぐらいで書き込むかどうか、これから議論になるところだと思います。

記者

今のに関連してなんですが、国税としてのあるべき税と地方であるべき税と、そういう分け方で書かれるおつもりは。

石会長

それはいずれこれから、6月の段階はまだ難しいと思いますけど、本来ですね、国・中央政府がなじむ税、これは個人所得とか法人所得なんですね。それから、本当の末端の市町村だったら資産課税が一番いいでしょうね、財産課税が。真ん中のところで個別消費税だとかいろいろあるんですね、各国の例を見ていきますと。したがって、税調としてはですね、各レベルの政府に望ましいというか、適切な財源、課税ベースあるんですね。そういう議論もまた新しい税調が発足した時には主要な問題、関心になると思ってます。ただ、そういうことがあって初めて国と地方の税源の配分というのは決まるわけでありますから、たしか昭和30何年かの税調で、税源配分部会というのを作って議論したことがありますので、そういう問題意識は私自身は持っておりますし、皆さん持っていると思います。ただ、今回どこがどうだこうだというところまで具体的には言えないけれども、おそらく年度改正あたりで、今言った議論というのは蒸し返される可能性は十分ありますね。論点は整理したいと思っています。

記者

遺族年金については、今日、概ね了承されたんでしょうか。

石会長

遺族年金云々の個別の年金改革につきましては、ここにも書いてありませんように、年金課税見直しの中で老齢退職年金のところだけになるのか、遺族なり他にいろいろございますので、具体的な個々のことで書き込むか、それとも大きな流れとして書き込むかによって議論が変わってくると思いますが。ただ、国際的な水準から見たら、今おっしゃった遺族年金のところね、これは日本だけが非課税だという問題意識を持っていますから。ただ、先ほどから申し上げているように、高齢者の低所得者に対して配慮しなきゃいけないのと同じように、一挙に遺族年金のところまで…遺族の方というのはある意味では、極めて経済状況上、不利な状況に置かれてますから、そこに一挙に行くかどうか。あるいは暫定措置にするのか、これは少し考えてみたいと思いますが、ちょっと皆さんの議論を聞きたいと思っていますから、今日は議論に乗ってません。

(以上)