総会(第40回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成15年4月22日(火)16:30~16:43
〇石会長
総会が終わりましたので、経過は既にご承知と思いますから、今日の審議を今後どういうふうに利用するか、あるいは私自身がどういう受けとめ方をしているかというご説明をしたいと思っています。
正直申しまして、3回の基礎問題小委員会と金融小1回を今日2時間半で議題として設定しましてまとめましたけれども、なかなか難しいですね。非常に大きな問題ばかりでありました。ただ、我々の説明をそれなりに受けとめていろいろなご意見を賜ったと思っています。
2~3、重要であったと私が感じましたので申し上げますが、やはりこれから少子高齢化を受けて、税調でありますから、どうやってコスト、負担を分かち合うかということが視点ですよね。ただ、一体どのぐらい給付が必要で、どのぐらい歳出が増えるかなんて指標もいずれ必要かと思います。そういう意味では、潜在的国民負担増として、今ある国民負担率37~38%が60%になるなんて話も出まして、そういう話もいずれやっていきたいと思っています。ただ、佐野さんがおっしゃったように、負担がだんだん、例の自己負担の増の方にいくとか、あるいはやはり高齢者の負担になるようなものをやるかわりに、若年者の負担、あるいは企業の負担、こういうものとの絡みをどう考えるかなんて視点は、やはりこれから重要になってくるなという印象を持ちました。
第2点は、あえて私ども消費税を今議論しないわけではありませんが、所得税を基幹税にするという大きなテーマに取り組んでいるわけで、中でも議論いたしましたけれども、大きな改革、今年度から消費税についてやりましたから、あと今後の姿として、税率、あるいはその時期などはこれからの議論で、中期答申にどれだけ書き込めるかは、中身をもう少し議論を詰めていきたいと考えております。
今日、私が一番みんなの意見の集約として考えていたのは、少子高齢化、これからどんどん進捗するわけで、その負担は構成員全体で分かち合わなければいけないという視点、そうなると、やはり基幹税たる所得税、消費税をしっかりして、特に所得税については、従来穴だらけになっている社会保障的活用というものを見直すべきではないかという視点、これは今日問題提起をいたしました。そういう意味で、それについてまだ具体的に立ち入った議論が展開されませんでしたが、この基本的な理念なり、考え方については、税調の共有の財産にこれからしていきたいというふうに考えております。
基礎小では、社会保障の観点から個別の特定の人的控除をどんどん増やしていくというのはもう限界ではないかということについては、私は世間に対しても、国民に対しても、これから幾つか訴えたいと思いますが、1つは弱者の定義について、嘘の弱者と本物の弱者があるなんて議論をしておりましたが、おしなべて、何か所得控除を是正する、あるいは廃止するとなると、すぐそれを受けとめる側から見て弱者のみに焦点を当ててということになりますが、実はこれから高齢者の中の弱者、高齢者の中のリッチな人という仕切りをいろいろつけながらやっていかなければいけないと思いますけれども、その議論を本格化させていく必要があろうかなと思います。
国と地方の関係ですが、今日は地方の団体の方から随分ご発言がありましたけれども、税調の中でも、基本的にどういう格好で、つまり税調流の三位一体論の議論をどうするかという議論は、総会の中ではもう少し議論を闘わせなければいけないかなと考えております。構造的な問題だから、そもそも今の国も貧乏、地方も貧乏でも、国から地方に移せというのは1つの考え方かとは思いますが、国・地方も努力して、国税、あるいは地方税体制を完備するという、そういう方向での議論というのはもう少し詰めなければいけないなと思っておりますが、これについては、いろいろな議論があったという形の集約しかできないかと思っています。
そういうわけで、あと2カ月ぐらいで本格的な議論の整理をしなければいけないかと思っていますが、昨年6月に出しました基本方針でほぼ方向は決まっておりますので、それに追加する、この間申し上げましたが、追加するべきものとして、少子高齢化と税制もあるだろうし、それから環境問題をどこまで書き込めるかという問題が残っていますが、海外視察の結果を受けることになると思いますが、証券税制とか、そこらをベースにした資産性所得の見直し、それと絡めて、今日は余り議論まで深く立ち入らなかった資産課税、相続・贈与の話、これも大きな仕事をしたと思っていますので、課税ベースの拡大ということについてどこまで積極的に議論ができるかあたりが今後の焦点ではないかと考えております。
5月はかなり密度の濃いというか、日程的には毎週やるような結果になるかと思っていますが、いずれ6月末等々、国会との関係もありますが、目指して、中期答申というものをとりあえず整理する格好でいきたいと考えています。
以上です。
〇記者
少子高齢化と税制の議論の中で、高齢者の応分の負担ということで捻出した財源をどういうことに使うのかということも示すべきではないかという議論がありましたが、これについてはどういうふうにお考えでしょうか。
〇石会長
それは、恐らく福祉目的税的に特定化するというところまで議論が行っていないんだと思いますけれども、例えば基礎年金の3分の1から2分の1に引上げるときに公的年金等控除を直すなんて話もございますが、あくまで所得税の中で改革をして、仮に増収になっても一般財源ですよ。所得の中の一部をどこか目的税にしようなんてことは税議論としてあり得ないのでありまして、それはあくまでそういう方向でやるよという意味において、消費税も含めて税収、財源を確保するという姿勢しか言えないと思います。それはある意味で理念系というか、観念系と言うべきか、そういう意味では、その辺の特定の目的税化は無理だと思います。
〇記者
国・地方の方ですけれども、結局、課税自主権というか、超過税率、個人の方は実際にはほとんどないにもかかわらず、高知でちょっとあったという程度で、ほとんど超過税率を採用している自治体がないと、こういう状況なんですけれども、こういう状況はどのようにしていくべきだとお思いでしょうか。
〇石会長
課税自主権というのは、結果的には例の超過課税のところと法定外目的税、法定外普通税、3つぐらいしかないんですね。まさに総務省の方から説明がありましたように、これはメインの税ではないんだよね。やはり補助的な税でありますから、本来的にそれでもって財源確保の資財にするということは難しいと思いますが、地方自治を高める、地方分権を高めるというのなら、それについてしっかりやると。まして、言うなれば企業だけ狙い撃ち的な課税自主権はまずかろうというのは、税調としては十分そういう意見を持っていますから、地方分権、地方自治の担い手というならば、やはり汗をかいて集めるような住民税なり何か、資産税がありますかね、そういうところで努力すべきだと思っています。
したがって、松本町長さんが言っていましたけれども、うちの村ではやるものがないよと言っていますよ。そういうことかもしれませんが、ただ、私は地方のサービス課税的なものはまだ余地があるのではないかと思います。そういうものを少し、自主財源の充実という意味で、税調としてもいずれ議論はしてみたいなと思っています。そういういろいろなことをやった後でしょう、構造問題として国から地方に移すということがあるとすれば。その中でどういう税目を移すという議論が出てくるんだろうと思っています。
〇記者
2点お伺いします。今の記者会見の冒頭で、給付と負担の整合的な議論について、今、石先生はいずれやっていきたいということでしたが、いずれやっていくというのがもう少し具体的なスケジュール感等があるのかどうかという点と、議論の中身なんですけれども、では、給付がこれぐらい減るなら、負担は少し増やさないようにしましょうねとか、逆に負担が増えるなら給付は減らすわけにはいきませんよねという、そういうところまで議論が詰まっていく可能性があるかという点。
もう1点は、国と地方なんですけれども、政府としては連休明けの諮問会議で、財務省、総務省で検討した結果を持ってこいということで総理が言っているんですけれども、それを受けた形で、税調としては税源移譲の具体的な部分について、どういう形で議論のスケジュールに乗せようとされているのか。
〇石会長
いずれも重要なポイントだと思います。負担と受益の関係、給付の関係というのは、恐らくマクロ的な指標で、また国民負担率なんていうものの指標が重要になる。そういう意味では、経済財政諮問会議がこの間出しましたよね、ああいうものは一応参考にいたしますが、ただ、あくまで我々は、給付水準の確定的なことについて、どこまで能力があるか、どこまで審議するべき責任があるかというのはわからないんですよ。あくまである前提を置いて、例えば潜在的国民負担率が55になるとか60になる中で、どういう負担のあり方を考えるかという議論はできると思います。
もう1点、我々の議論の行き着くところは歳出面で少し面倒を見てくれという要望になってくると思うんですよね。例の社会保障的に税制を使わないということは、公的年金等控除、老齢者控除、あるいは扶養者控除等々、いろいろな社会保障的に使ってきた人的控除を整理したいということになると、恐らく手当であるとか、給付面、歳出面ですね、そこである程度面倒見てほしいという希望が当然出てきますよ。それは今日、堀田さんの議論にもあったように、すべて弱者狙い撃ち的な容姿になってはいけないので、それは恐らく給付でやる方が、歳出でやる方が僕は効率的だと思いますけれども、税というのは、幾ら所得税源を設けても、やはり不特定多数、かなり広がります。その点、歳出でやれば、かなりピンポイント的にいろいろなことができるわけでありますから、そういう点を1つ問題意識として持っていますので、私、財政制度等審議会の委員でもありますので、そういうことを少し歳出歳入で議論できればなというふうには考えております。
国と地方も同じようでありまして、我々としては、国庫支出金の見直しとか、地方条例の見直しということについて、ある程度の発言はできるかと思いますが、全体的なレベルなり、規模なりを我々の口からどうこうということはなかなか言えない。ただし、それができたという条件のもとで、国税・地方税の体系を見直す中でどのぐらい税収を確保するか、どういう問題をやったらいいか、その後で本当に必要ならば国から地方への税源移譲もあるのかというふうな議論は、僕はできると思います。
そういう意味で、ある条件を課しつつ、我々のテリトリーで議論ができたらと思っていますので、いろいろなところで出てきたものを持ち合えば、ある種の具体像が浮かび上がってくる、そのコスト面なり、負担面なり、税制面なりの担い手は我々だと思っていますので、そういう形の議論をできたらしたいと思っています。
(以上)