総会(第10回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成16年1月16日(金)16:06~16:37
〇石会長
年初めてでございますから、今年もよろしくお願いします。第10回目の総会になりました。随分資料が出ておりまして、その資料の説明に追われて、かつ、今日は30分時間短縮いたしましたから、ご覧のように実質的に審議を深く詰めることはできませんでした。そこで、後で皆さんのご質問に答える形で、総会で出ていない話題も触れたいとは思います。今日の総会を踏まえた印象を2~3申し上げますと、冒頭、河野さんのご発言もありましたが、やはり皆さん、三位一体の中での年末の政治的決着につきましては、それなりのご関心があったようであります。しかし、再度、総括が行われましたように、党税調と政府税調の意見が変わっても別に構わないんだろう、そう気にすることはないであろうと、私もそう思っていますので、その点についてはこれ以上触れなくてもいいだろうとは思っております。
問題は、これから先なんですよね。今日も地方の側からのご意見もございましたように、フレームを固めることがしっかりしないと、税源移譲そのもののスキームがなかなかできないのではないかという心配を持っております。具体的に申し上げると、本当に3年間でトータルで4兆円といったような規模の補助金が削減できるか、3年間でこれができるのか、そのうちどれだけ一般財源として、言うならば税源移譲の対象になるのか、この辺のスキームができませんと、我々として所得税から住民税という流れ、これを追いかけてどこまで作業するかということになります。ただ私は、個人的にはその辺がどうなるのかということは余り心配してもしようがないので、着々とその辺のスキームは、一応税調として技術的、理論的、専門的にまとめておく必要があろうかと思います。所得税改革の一環として議論はした方がいいかなと思っています。そういう意味で、これはこれからの議論ということであります。
第2点は、今後の議論の進め方なんですが、我々基礎問題小委員会で、言うならば所得税改革という大きな流れに沿った抜本的な議論をすると同時に、経済社会の構造的変化についてのさまざまな情報を集め、かつ有識者の意見を聞こうと、こういう2本立てでやっていく予定でございまして、これは来月早々から開始しようかと思っています。経済社会の実像把握につきましては、夏まで続けまして、かなり情報も整理されるし、有識者の貴重なご意見もいただけるかと思っていますので、それはそれとして1冊の冊子ぐらいにまとめて、今後の議論のためにとっておきたいと思います。これは意外に税制改革と距離があるように受け取られるかもしれませんが、ただ、所得税改革の根っこにはやはり家族の問題とか就業の問題とかIT、グローバル化、情報化等々、その辺の変化をしっかりとらえた上で議論しませんと、所得控除一つ見直すにしても議論ができないと、こう考えておりますので、決して迂遠とは考えておりません。しっかり基礎作業をしたいと思っています。そこの中で所得税改革というものが恐らく実を結んでくるのではないかというふうに考えております。
それから、我々として定率減税をどうしよう、あるいは三位一体の税源移譲をどうしよう、消費税をどうしようということにつきましては、与党の税制改正大綱に一応工程表が載っかっておりますよね。大体あの線というのは税調として受け入れて、あれに沿って議論はできるかと思っていますので、あれに沿った形でということが一つの指標にはなろうかと思っています。その中で定率減税の問題、税源移譲の問題、所得税が絡んできます。それから消費税につきましては、今、急にという必要はないと思いますが、ただ早晩、大きな問題になるのは目に見えておりますので、基礎的な作業というのは用意を怠りなくやっていきたいと思っております。とりわけ今日の資料にも整理されていますように、基本方針と例の中期答申でしかとその辺は書き込んでございますが、将来の研究課題としては複数税率、これをしたときどうするか、インボイスというのはどうなのか、それから福祉との関係をどうするのか等々ございます。そういう意味で、まだ個人的な段階でございますが、夏ぐらい、9月と言うべきでしょうか、付加価値税での先進国、ヨーロッパで今言ったような問題がどう取り扱われているかというのをやはり見てきたいと私は考えております。その内正式に事務局の方に依頼したいなと思っていますが、いずれにいたしましても、2007年度以降と言いましても、そう時間がたっぷりあるわけではございませんから、消費税につきましても、その辺はしっかりと歩を進めていきたいと思っています。
最後に、今日は直接の議論はないけれども、間接的に議論があるんですが、言うならば、たばこ税から所得譲与税に変わったという点、それから土地の譲渡益課税の税率変更であるとか等々、税調で暮れにやっていない議論が、本来の結論の方に響いて、我々の方が無視されたように一見見えております。ただ、今日の資料にございましたように、過去2年間やりましたさまざまな問題提起の流れの中で、これは着実に自民党、あるいは与党税調の答申の中に盛り込まれているというふうに考えております。あるべき税制ということに関しましては、それなりの手応えを感じているというのが私の年頭の所感と言えば所感でありまして、これから所得税の基幹税としての役割を高めていくということと消費税を充実させようということと、それに付随した構造的な問題で定率減税、あるいは税源移譲もございます。やはりその先には、多分資産課税の強化という意味で相続税の見直しとか、その先にはさらに環境税というのが出てくるのか出てこないのか、これは前の事情によりますけれども、そういう意味でかなりしっかりした問題があるなという感じを持っておりますので、これから本腰を入れて議論を始めたいと考えております。
内容は以上でございますが、今触れていないことにも関連いたしまして何かご質問があればお答えしたいと思います。以上でございます。
〇記者
年間的なスケジュールで見た場合に、与党大綱では05年に既に定率減税に手をつけるということも、縮小というのが出ているんですけれども、夏までは社会経済の問題をやるということですが、その後にということなんですか。
〇石会長
いやいや、別に夏まで所得税の改革論議をしないというわけではありません。同時並行にやると言っているんですから。さっき申し上げたように、今申し上げなかったけれども、ワーキンググループを立てることも考えています。所得税、住民税のスキームというのは、かなり技術的になるし、データの操作も重要になりますので、専門家グループで少したたき台を作ってもらいたいと考えておりますので、それはさっき申し上げた社会経済の構造変化と並行してやっていくと。その中で恐らく定率減税の話も出てくる、あるいは出てくるべきかと思いますが、ただ、定率減税というのは、縮減・廃止という課題から言えば、どのぐらいの時点で、どのぐらいの規模で、何段階でやるかというふうな話でしょう。僕は、それはそんなに時間をかけなくていいと思う。ただ、定率減税を直すという過程において、税率とか課税最低限の問題とか、インカムブラケットの問題が出てきますから、そこはそこで所得税改革の中にうまく含めて議論はできると思っています。
〇記者
消費税なんですが、今年の議論で例えば税率まである程度具体的な、2桁という表現からさらに踏み込むというお考えはあるのか。
〇石会長
今年というわけにいかないでしょうね。与党の税制改正大綱に書いてあるように、2007年と書いてありますよね。まだ3年あるわけですよね。ですから、今年中にというところまでは、税率とか時期については議論が行かないと思いますね。ただ、個人的には、その中身の問題として、少し技術的に詰めておかなければいけない問題としては、申し上げた複数税率の問題とか、インボイスの問題とか等々あって、どういう形で付加価値税先進国がやってきたかなんてことも踏まえて、少しそこの基礎的なところを固めたいという意味です。したがって、税率のことはちょっと行きにくいでしょうね。そう慌てることもないと思っています。
〇記者
ヨーロッパのご視察ですけれども、もうちょっと具体的に調べたいところとか。
〇石会長
調べたいところは、やはりヨーロッパというのは、EUから始まってOECDまでいろいろ絡んでいる国がずっと持っていて、あれは結局、福祉の財源として使っていると。その背後には、実は社会保険料、日本でも問題になり出しましたけれども、社会保険料の高騰、引き上げというのがまさに日本の経済界が言っているように、経済活動にダメージを与え出したということで、付加価値の税率を上げてきたという経緯もあるんですよね。しかし、そうでない国もあるんです。いずれにしても、福祉絡みで一体どのぐらい付加価値税というものが国民の中に浸透し、かつそれが役割を演じているというのは、私10年ほど、7~8年かな、その前にも行って見てきたんですが、最近の状況は変わっていると思いますので、それは見てきたい。
それから、何分、技術的な意味で、複数税率というのはそう簡単ではないんですよ。食品等という定義もございますし、企業の側にしたら、今、総額表示でさまざまな問題が起こっている以上に複数税率の問題というのは税務行政上大きな問題を抱えていて、かつインボイス絡みでかなり大きな問題を生むと思っていますので、いわゆる先駆者の知恵を学んできたいと思っています。税調も含め、我々学者というのは机上のプランをしがちでありますから、簡単に言いますけれども、いろいろ聞いてみると大変なところがあると思っています。
〇記者
2点ほどお伺いしたいんですけれども、今、先生がおっしゃった所得税の抜本改革、定率減税縮減・廃止というのは当然増税になるので、それを抜きにして、例えば各種控除を縮小・見直ししていく、逆に基礎控除を増やしていくという、これまで出ている考え方でいくと、差し引き、結局、所得税も今後は相当な増税になると。あるいは、もう少し増減収で言うと中立的な抜本見直しにしたいという、どっちの方向性を持っていらっしゃるんですか。
もう1点、経済財政諮問会議で今日出ている改革と展望の中で、一般会計の税収見通しが今 41.幾つですが、5年後には50兆円ぐらいになるという試算でプライマリーバランスを計算しているんですけれども、先生ご自身のお考えで、今後5年で50兆円まで税収が回復できるという見通しを立てられると思っていますでしょうか。
〇石会長
第1点ですが、ひとえに私は本格的な景気回復がいつの時点で来て、マクロ的な、例えば税負担引き上げ、増税ですね、引き上げを吸収できる、いつごろそれが出てくるかという条件次第だと思います。ただ、10年、15年、長い目で見たら、恐らく所得税というのは引き上げざるを得ないとは思っています。というのは、国民所得比で見て、確か6%ぐらい、これは住民税を入れてですが、間接税主体のラテン系の国より低いんですよね。そういう意味で、長い目で見ればそれをやらなくてはいけない。ただ、途中で、いろいろな所得控除を整理する過程において、それがうまくいったときには、基本的な基礎控除ですか、あるいは扶養控除も入るかな、人的控除について、急激な所得控除削減に伴う増税を緩和するようなことはあるかもしれない。ただ、それはいっときだろうと思いますし、長い目で見ると、私は所得税改革というのも他先進国並みのウエートにしていかざるを得ないのかなと思っています。これも時間がかかる話だと思っています。
改革と展望は、5年間で8兆円ということですよ、42兆円から50兆円、8兆円ですね。うまくいけば、いくかもしれない。というのは、これは1年で1兆 6,000億円ですかね、厳密に言うと。僕はざっと、今、税収の所得弾力性というのは 1.1、せいぜい 1.2でしょう。それで、改革と展望で名目成長率をどれだけ見ているかわかりませんけれども、多分そこそこ、2%から 2.5%ぐらいなんじゃないんですか。42兆円で、言うならば2%で 8,000億円で 1.1倍弾力性を掛けて、どれだけ頑張ってもそれだけの数字だと1兆円ですよね。ただ、単純な税収の弾力性 1.1以外に、景気がよくなったときにさまざまな取引が起こってきたり何かしますから、 1.5兆円ぐらい行く可能性はないことはないでしょう。ただ、これはマキシマムの、かなり楽観的な数字であろうかと思いますが、ただ、このぐらい増えてくれないと困るなという、かなり願望めいたこともありますね。だから、やって不可能ではないけれども、精一杯背伸びした数字かなとは思っていますけれども。
〇記者
今のは、要するに税制改正による増税を伴わなくても……。
〇石会長
これは何かやるんでしょう、8兆円には。だから、僕が言ったのは、何もしなくて名目成長率が膨らんでも1兆円そこそこだろうと。これは、恐らく社会保障経費の自然増で使われてしまう話でしょう。そういう意味で、5年間のうちに、恐らくネットの増税なくして、この8兆円というのは難しいと思いますね。5年後ですから、その間に恐らく景気も今言ったような話で、2%を超えることもあるだろうし、何か名目で2%を超えれば消費税もいいよといったような話が出てきているようでありますから、恐らく制度の変革を含めた、その改革の中でできないことはないでしょうね。ただ、何かやらなければだめでしょうねという印象を持ちます。
〇記者
環境税の議論について、先ほど出るか出ないかわからないみたいなことをおっしゃったんですが、これについては、何かロシアの条約への加盟が前に付されているような感じもあったりして、まさに経済界から反対の声も非常に多いみたいなんですが、そこら辺、何か・・・。
〇石会長
暮れまでのここでのご説明で1~2度ご説明したと思いますが、私はひとえに京都議定書の発効が鍵を握っていると思っているんです。というのは、アメリカは逃げてしまったわけでしょう。京都議定書が発効できないということは、ロシアが背を向けるということですよ。そうすると、アメリカ、ロシア、それから中国、インドもそうでしょうけれども、発展途上国が入らない。それが恐らく、CO2 の排出量の過半を占めるような国が入っていなくて、日本がなぜ先頭切って入って、環境税だなんていうものを入れて企業に負担をかけるかという議論は出てこざるを得ないし、既にそういう議論があるわけです。私は、そこがクリアできるのは、イラクの戦争の大義ではないけれども、やはり京都議定書というものが発効されて、国際的責任を負って、その中で企業も含め、国民に税負担をという環境税ですね、そこで議論は成立すると思っているんです。したがって、今言ったそのフレームがない限り、なかなか前に行けないなという感じはしています。だから、それは将来、確実に京都議定書のフレームはできるという前提で環境税を議論するという時期が来るかもしれません。それは恐らく地球温暖化が猛烈に深刻になって、大変だなんていう予測が皆さんの心配事になれば、そういうことはあるかもしれませんけれども、1~2年の間では、私は京都議定書絡みの議論が先行すると思っていますので、仮に税調で、あと3年の任期の中で環境税を議論するにしても、これは恐らく後の方のテーマだと思っています。
〇記者
環境省の方なんかは、10何年度から早速導入したいみたいな……。
〇石会長
2005年のことを言っていますね。
〇記者
では、それはちょっと難しいという……。
〇石会長
いや、わかりません。それを我々として小委員会でもつくって本格的にやるかどうかですね。ただ、2005年のスタートだって、京都議定書が成立したという前提で議論しているんでしょう。
〇記者
それはそうですね。
〇石会長
だから僕は、それができれば、大いに我々としても本格的に議論を始めなければいけないと思っていますから。今の前提ができれば、環境省の話と同じだと思いますが、ただ、経済界の反対等々もある中で、どういう形で生産的な議論ができるかというのは、じっくり考えたいと思っていますね。
〇記者
公益法人改革に伴う新しい税制については。
〇石会長
今、行革本部の方で非営利法人の方の、そもそも税を抜いたところのスキームを検討中でありまして、実はその本体が去年ぐらついたものだから、税の問題もぐらついてしまったんですよ。だから、今回はしっかり非営利のところの、公益法人の議論をまずまとめてくれと。その後で税の問題というものを我々は議論しましょうという形で、内々聞くに、2月とか3月ぐらいには出てくるのかなと思っていますので、そうなったら、基礎問題小委員会にぶら下がっている、水野さんがやっているワーキンググループでそれは議論してもらおうかと思っています。
〇記者
定率減税の話なんですけれども、党の税制大綱では、2005年、2006年という期限が入っているんですが、ただ、あれは恒久的減税ですので、景気情勢に応じて本来変えるべきものだと思うんですけれども、そこのところ、政府税調ではやはり2005年、2006年に触るという前提で動くのか、それともあくまで恒久的減税という本来つくった前提をもとにして、景気がよくなるまではやらないのか、その点についての見解を教えていただけますか。
〇石会長
僕は後段だと思いますけれども。つまり、景気に対しての配慮があってできた定率減税ですよね。逆に言えば、景気がよくなって、3兆 5,000億円ぐらいの国税・地方税合わせた、あれが飲み込めるぐらいな強さになれば、それは温存していく理由は全然ないと思う。問題は、そこら辺の、今やっていいかどうかという程度の景気回復になったときに、2005年、2006年で一挙に上げるかどうかという話が残りますよね。僕は、一挙には無理だと思う。2段階、あるいは3段階ぐらいでやるのが、今いいでしょう、国税で言うと20%の25万円でしょう。だから、税額控除20%の半分、10%ぐらいやるかなというあたりぐらいが現実的な話としては、また10%ぐらいの話に耐え得るような景気回復というのはあり得ると思いますから、2005年、2006年は。そのときの時期の問題だと思います。
ただ、私は、消費税の引き上げの議論が出る前に定率減税の問題にある程度めどをつけておかないと、議論はできにくいと思っていますね、そこは。つまり、中高所得者層の大きな、すごく大きな減税を残したままで逆進性の強い消費税というのはなかなか、税制改革の議論の組み合わせとしてもまずかろうと思っています。だから、あのスキームどおり行くということは、極めて景気回復が順調で、あのぐらいのことをやっても日本経済は大丈夫だという自信が出た段階でのシナリオだと思いますが、そこまで行くかどうかでしょうね。
〇記者
定率減税に手をつけないと、消費税には入らないですか。
〇石会長
入らないというよりは、入るのは、筋として、政策論として難しかろうと言っているんです。ただ、これは難しいですよ。同時にできないし、どのぐらいの時間を置くかも難しいし、これはこれから最大の問題になると思いますね。あのシナリオどおり2005年、2006年でやって、次が、2007年から消費税なんていう、今のシナリオどおり行くというのは、今のところ、誰も予測はつかないんじゃないですか。うまくいけば、それにこしたことはないと思いますけれども。
〇記者
定率減税の関連で、与党の税制改正大綱では、定率減税を廃止する目的として年金の国庫負担の……。
〇石会長
何かそういう書き方ですね。
〇記者
そういうふうになっていますけれども、そもそも国庫負担割合を引き上げる目的は、保険料をあまり上げないようにという、そういう目的があると考えると、取られる側から見ると、ほとんどの・・・。そういう観点から、会長ご自身は、そういう財源の使い方については、どのように。
〇石会長
僕は、年金制度のスキーム全体の基本的哲学が欠落していると思っているんです。つまり、どういうことかと言うと、1階建て、2階建て、3階から作っていますけれども、1階建てを民主党みたいに税で全部やるよと、これも一つの考え方でしょう、カナダでやっていますから。そのかわり、これは生活保護的になりますから、高額所得者まで含めて全部給付することはないんですよ。そういうところを割り切った形でスキームを作ってやっているかというと、必ずしもそうではない。何となく、今おっしゃったように、保険料を上げたくないから税でというだけの話で、なぜ3分の1で、2分の1で止まっているのか。2分の1ではなくては 100%行くのかという議論はまだ抜けていますよね。だから、年金のそもそも論をどこかでやってもらうべきだと思っています。したがって、税調で定率減税を仮に国庫負担の割合に投入するときには、今言ったような議論をやらないとまずいと思いますね。
私は、全く個人の懐から言えば、負担はどちらでも同じことだと思う。ただ、2分の1にしておくということは、まだ保険の要素が強いので、 100%税にするのとはかなりというか、大分意味が違うと思いますよ。保険というのは、ある意味で保険を積み立てていって、自分がいわゆる年金を受け取る権利を主張するわけでしょう。その要素がまだ残っているわけです。だから、その2分の1という意味は、まだ誰も解明していないし、これはないものねだりで誰も言えないとは思いますけれども、2分の1にする論理固まってきませんね。したがって、私はまだ答えがないんですよ。ただ、政治的に決まっていって、そっちに持っていこうというだけの話が決まっていますが、後知恵でもいいから、そこは少し基本的にしっかり整理すべきだと思っていますけれども。ただ僕は、 100%にするのはちょっと問題かなと思っていますけれども。つまり、保険の要素を全部拭っていいかどうかということですね。これは国民的議論をした方がいいと思う。これはいろいろな、学者の中でも意見は分かれていますから。
〇記者
そういう議論を政府税調の中でもなされる……。
〇石会長
恐らく今言った3分の1、2分の1の財源に定率減税でやるのか、あるいは消費税でやるのかという議論が必ずしも出てきたときには、やはりどういう議論をしたらいいかというふうなことは、いろいろな意見があるとは思いますが、論点を整理すべきだろうと思います。
〇記者
2点なんですけれども、まず三位一体改革に伴う所得税から住民税の、いわゆる仕組みですね、これは大体いつごろまでに固めるという、時期的なもの。
〇石会長
今度 4,000億円ぐらいの話で、実は兆単位のものがなければ、本格的な所得税の税源移譲は難しかろうとは思っているんです。そこで、税率構造まで変えたり、あるいは税源移譲を基礎控除引き上げでやるような課税最低限、国税の方でやるとかという話になりますと、やはり兆単位の税源移譲が要求されるような補助金カットがなければまずいんだと思うんですよね。と言っても、それを前提にしてというわけにいかないから、我々としてはワーキンググループを作るということも考えておりますので、先ほど申し上げたように、基礎問題小委員会の下に所得税改革ワーキンググループを作って、その中で今言った理論的な議論はできると思っています。それで、ちまたにも既にアイデアが出ていますけれども、住民税を10%にして、国税の方が10、20、30、40にしようなんていうのを、仮にそういうことでスキームを組んだら、具体的な検討はシミュレーションとしてやるべきだろうし、それが地域偏在をどれぐらい生むかといったような問題も併せてやっていきたいと思いますので、それは別に先延ばしにしているというつもりはありませんで、専門家グループでやってもらおうと思っています。
〇記者
ということは、今年中に固まれば、固めると。
〇石会長
ただ、その発動する条件は、先ほど来申し上げているように、一体どのぐらいの税源移譲が必要かという方に戻るんだよね。そこが来たときに、慌てふためいてやるよりは、準備しておくことが税調としては肝要かと思いますけれども。
〇記者
消費税の今年中に基礎を固めたいという定率減税とインボイスについてですが、今年中に基礎を固めるというのは、例えばこういう方針で行くというところまで詰めるのか……。
〇石会長
それは海外調査報告でも、各段階で恐らく各国の経験として書く程度で十分でしょう。だって、今年度、今年の最後に2005年税制改革で消費税を上げるという話には、よほどの何かがない限り、多分ないでしょうから。だからそれを、要するに我々としては準備をちゃんとしておくという一環として研究していきたいということだと思います。いろいろ外枠の方の条件があればこうだというときには、こうだというのをちゃんとしておくのも一つ、準備をしておかなければいけないという意味では重要かと思っています。
〇記者
所得税改革の進め方というか、手順でお伺いしたいんですけれども、定率減税を廃止・縮小していく話と、さっきいろいろな三位一体の絡みで出ている税率構造とか課税最低限の話は、これはパッケージである段階でドンとやるのか、それともやれることから何かやっていくのか。
〇石会長
税源移譲の問題が仮になかりせば、「あるべき税制」に沿って、今度は公的年金等控除と老齢者控除の縮減廃止が決まりましたから、次なるしかるべき所得控除の候補者がありますよね、「あるべき税制」の審議からいくと。その議論は、それは清々粛々とやる予定でいますから、そのスケジュールには変更ありません。それに今言った所得税と住民税の話が折り重なってきていますから、そこは同時に所得税改革ワーキンググループでやってもらうのか、それとも「あるべき税制」の方は、それほどテクニカルな話でなければ基礎小本体でやるかという意味で、その辺はすべて問題意識としてあります。ただ、議論の担い手をどこに置くかという問題は、まだこれからの議論として残っているということですね。すべてやってみたいと思っています。
(以上)