税調第9回総会後、答申総理手交後、石会長記者会見の模様

日時:平成15年12月15日(月)18:27~18:57

石会長

ただいま平成16年度税制改正に関する答申を小泉首相に手渡してまいりました。これは先刻ご承知のように、この間発表いたしました中間報告に、例の三位一体の税源移譲というものをくっつけて、答申として完成させたということです。中身につきましては、既に事務局から細かく説明があったと思います。ご質問があればお答えいたしますが、それには触れないで、この答申をまとめるに当たって、どんな点に留意し、感想としてどんな点を持ったかということを三つ、四つご説明したいと思っています。

正直言って、税源移譲に関しましてはしんどい議論をしたと思っています。国税と地方税のある意味では接点になっていますから、そういう意味では双方ともいろいろ思い入れのある。そういう税源移譲論になったわけでありますから、一本化できるかなという感じもいたしましたが、皆さんの協力をいただきまして、ここに提出しているような形で一本にまとめることができました。

ただ、時間的な制約が非常に大きくて、細かいことはとても言う暇がなかった、そういう意味では平成16年度はたばこ税でやって、17年、18年、つまり17年度以降については本格的に基幹税でやると。それも一応、所得税から住民税というのが一つのルートで、さはさりながら消費税・地方消費税も併せて検討しましょうという組み立てでやったと。これは確か12日にもご説明したとおりでございますので、それを文章にして、今日お示しして、最終的に合意をいただいたということであります。

つまり、たばこ税はあくまで、言葉は悪いんですけれども、つなぎという意味で、時間があれば、恐らく所得税、住民税のルートをしっかり整理してという声が確か多分に上がったと思います。ただ、これは税率をどうするか、あるいは課税ベース、どういう形で処理するか等々、非常に難しい問題があります。

そういう意味で、詳細設計は来年早々からでも始めなければいかんかと思っています。そうい意味で、所得税というものは、それでなくても空洞化していて、浸食されて、本来の税収獲得機能がないということで、我々修復をしたいと思っていたんですが、そこにこの種の移譲問題が絡んだりいたしまして、これは本腰を入れて、どういう格好で将来、所得税を復活し、住民税を本格的な基幹税として育てるかという議論が来年度以降、大きな問題になったと、このように考えております。

それから、消費税につきましては、従来から言っておりますように、税率アップの問題も絡めて今後出てくる話であろうと思っていますので、構造的にさまざまな益税的なところを直す等々の、あるいは総額表示を含め、いろいろ直すということをやってきました。従来どおりの路線で消費税、地方消費税の議論というのは処理できようかと思っています。

今回、言うなれば税源移譲というのが飛び込んできて、我々の頭に描いておりました将来のあるべき税制論に従った税制改革について、若干の不協和音が入ったかなとは思いつつも、やはり国と地方の間の税源をしっかり見直すというのが一つの大きな使命かとも思っています。あるべき税制という形を言われた以上、この税源移譲もその枠内でやるのが筋ではないかと思っておりますので、あくまでその中で議論を今後どうやって構築するかということが大きな問題ではないかと思っています。

今日、小泉さんに答申を手渡したとき、必ずしもこの内容についての議論が起こったわけではありません。今回の目玉は、年金課税と三位一体論からの税源移譲ですということを申し上げまして、それから今年度、大分大きなことをやったから、一服休みかねといったような、そういうような印象論も持ちました。4月にやった税制改革がかなり効いているのではないかというふうに小泉さんはおっしゃっていました。そういう意味では、投資減税を中心とした、あるいは生前贈与の話とか、そんなもろもろのことを十分にやったので、来年度は、そういう意味では少し一服しても、言うなれば次に備えるということでいいのではないかという印象を持っているところです。

ついでながら、今日手渡したときのもう一つの大きな議論は、総額表示というのが一体どういう形でどう展開するのかねという議論でありました。財界の方々と議論するときに必ず総額表示の問題が出てくるようでありまして、それについてご関心をお持ちのようでありました。

それが、限られた時間でありますが、交わした中身であります。

そういう意味で、いつの段階でまた総理指示が来るかわかりませんけれども、来年度もなるべく早い時期に次のステップを目指して税制改革の議論を始めるということになってくるのではないかなと考えています。あるべき税制の構築というのは、1年、2年で終わるわけではありませんから、これから次なるステップに向けてということは、税調も9月に改組されたばかりでありますから、1年目として次なる目標に向けて頑張りたいと、このように考えています。

今日の答申について、まとめ、かつ首相に提出してきたということに関連する話題はこのぐらいです。

以上です。

記者

まず、たばこ税、今つなぎというご説明でしたけれども、基幹税移譲ができた時点で、また配分を戻していく、いわゆる租特でやっていくという、そういう……。

石会長

租特でやるかどうか、これから具体的設計についてはまだ決めかねております。ただ、4,200億円という数字がはっきり我々に与えられたものですから、これがやはり大きな要因になってたばこになったと思います。したがって、将来的に、例の4兆円のうち、どのぐらいが税源移譲になるか、まだわかっておりませんから、その最終的なでき上がりで、例えば2兆 5,000億円か3兆円か知りませんけれども、そういう大きなものになったときには、個人所得税から住民税ということを考えなければいけません。そのときに、恐らくたばこ税というものをもう1回戻すということは十分にあり得る話とは思っています。そういう意味で、つなぎとして、たばこ税というのが一番、そういう性格には適しているのではないかという意味で、少し伸縮というか、フレキシブルに考えているということです。

記者

税源移譲に伴って、たばこ税は比較的税源の偏在が少ないということですけれども、基幹税といろいろ税収の格差というのが指摘されていますが、これに対する対応というのは、どうあるべきかと。

石会長

基幹税というのは、住民税か地方消費税ですよね。それとの比較において、たばこ税を移した……、どういうことですか。

記者

たばこ税は比較的偏在が少ないですが、将来、基幹税を移譲していくに当たって、地域格差が出る問題については。

石会長

税調の動きは、全く格差是正のためにまた地方交付税が出てきて、何かやるというよりは、もう税源移譲というのは、そもそも今の格差とは違った偏在が起き得るので、それはある程度覚悟してもらわなければしようがないという点が皆さんの持っている考えではないかと思いますけれども。したがって、年明けから所得税から住民税ということを仮にやるとして、どのぐらいの地域偏在があるかどうかも含めて、そこで何か手当をする必要があるぐらいの、見逃すことができないぐらいの大きな格差かどうか、それを見極めた後でいろいろ議論してみたいと思います。ただ、それとの関連において、やはり地方交付税もこれから本格的に議論しなくてはいけないかとも考えています。ですから、所得税の移譲の偏在の程度というのも、地方交付税の改革との関連は出てくるかと思いますが、ただ、何が何でも格差是正のために地方交付税が使われてはいかんかという問題意識は皆さん多分持っていないと思います。

記者

住民税、あるべき姿どうかということで、政府内にも税率のフラット化についての考え方があると思うんですが、行政サービスの受益分について、負担してもらうというのがはっきりする一方で、中・低所得者の負担が重くなるのではないかという見方もあるんですけれども。

石会長

住民税ですか。

記者

フラット化ですね、税率のフラット化。

石会長

フラット化というのは、何%で置くかにもよりますけれども、恐らく決まりのいいところから言えば、10%か何とかと、そんなことが頭に来るんでしょうけれども、今3段階ありますから、ちょうど真ん中の税率に上下から寄せてくるということになれば、低から中、高から中に行くといったあたりで、それも当然のこと、負担が少し出てくるのはやむを得ないと思います。ただ、それがどのぐらいかというと、実際にやってみなければいけないと思いますけれども。ただし、国税が減税になるわけですから、それとの見合いで地方税が増税になるというのが今回の税源移譲の大きな問題ですから、そこは併せて議論してもらわないと困るんじゃないんですかね。

記者

先ほども事務局に聞いたんですけれども、消費税の扱いなんですが、石先生のお考えとしては、ともに役割を高めていくというのは、将来、増税したときに国税・地方税の充実を考えましょうということでよろしいんでしょうか。それとも、今の5%税率の配分も選択肢としては……。

石会長

そこは、恐らく同床異夢的なこともあるかもしれない。この答申を書くのに一番苦労したのは、お読みいただければおわかりのように、地方消費税のときの主要な論点整理のところです。良いというか、問題ないという人と問題ありという人が両方いたわけでありまして、そういう意味では、ここに書き込んであるようなものが恐らく地方消費税に対する今の評価だと思います。それを受けて、今後、税源移譲に充てようというときには、皆さんの考えの中には現状のまま、5%なら5%のままでという人もいないことはないと思う、ある意味では少数だと思いますが。上がったときに、それを分けるということについては、皆さん異存ないと思いますよ、そこは。

そういう意味で、個人住民税、所得税から住民税というのは、別に増税絡みでなくてもできるだろうけれども、消費税については、やはりそこは、上がったときということをイメージしている人が多いと思っていますが、そこは別に確認はとっていません、税調としては。

記者

その年明けからの議論では、所得税、個人住民税が主になるのはわかるんですが、消費税についても、議論の対象としては含まれているというか、排除しないというか。

石会長

消費税は、もう随分、ある意味では今年度、改革の方向は出されていますよね。そこで、残る消費税の議論というのは、恐らく上がったときに複数税率にするかとか、上げるときに福祉目的化するとか、目的税にするとか、インボイスを入れようかという話で、これについては、ほぼ議論は尽くしているんだろうと思います。したがって、理論的な議論としては、現状のままで据え置いたときに、一体回すだけの余裕があるのか等々の議論はあるかと思いますが、それが最初から大上段に出てくるとはなかなか思えないですね。おっしゃる意味では、税率が上がったときについては、十分な対策はできていますから、具体的なパーセンテージは恐らく5と1ですから、10と2なんてことを皆さんおっしゃっているのかもしれないけれども、7と8になるときはどうするかという議論は残るかと思いますけれども、当面、やはり所得税、住民税の議論、それから所得控除のどういう形で整理していくかという議論、やはり所得税中心にならざるを得ないと思っています。だから、消費税については、即議論が白熱するということでもなかろうと思っています。

記者

先ほど国税がその分減税になるというご説明がありましたけれども、同時にあるべき税制の中期答申で示したようなものを実現すべく議論をして、実現していくと、そちらの方はむしろ負担増の部分もあると思うんですけれども……。

石会長

将来的にはあるでしょうね。

記者

同時に実現した場合に、差し引きで国税分というのは、実際、減税になるのか、それとも負担増の方が多いのか、どんなイメージなんでしょうか。

石会長

いずれにしても、所得税から住民税というのは17年以降の話だよね、16年はたばこ税でやろうと言っているんだから。その17年のときに、所得税がまさにすぐ増税して云々ということができるのかできないのか、今からわかりませんよ。ただ、所得税、住民税のルートは、そういう増税をかませなくても一応やりましょうというふうな話に多分なるんじゃないかなと思っていますけれども、ただ、いずれにしても、この財政事情で、国税も地方税も財政逼迫の折、少し長い目で見れば、当然、両方とも上げなければいけないのではないかということを皆さんお感じで、主な意見の方にも書いてあります。一体、将来的に国税も地方税も上げなければいけないときに、税源移譲は意味があるかなんてことも、主な意見のところで書いてあるような議論になっていますから、それはこれからの景気の動向にもよるだろうし、果して所得税、住民税がいつの時点で引き上げられるかということの問題にも絡みますよ。ただ、これは将来的にはあり得る話でしょうね。

記者

中間報告で盛り込まれていた内容に関係することなんですけれども、年金課税について、春先からずっと議論してきて、むしろ現役世代よりたくさん収入のあるお金持ちの高齢者には、当然課税していいんじゃないかという感じでずっと政府税調で議論してきたと思うんですが、今上がっている案ですと、205万円ぐらいは課税最低限で、そんなにお金持ちじゃなくて、ごく平均的よりちょっと高いぐらいの年金収入の人にも課税するような方向になっているようですけれども、その辺の議論をどんなふうにご覧になっていますか。

石会長

要するに、モデル年金のところ、205万円までならいいじゃないかと考えるか、それとも夫婦2人のサラリーマン家庭だと 150何万円ですね、あそこまで下げていいと考えるか。しょせん年金生活者って、年金だけ持っている人はそんなに高額所得者じゃないですよね。ただ、今ある比較において、例えば70万円まで下げてしまうと、今言ったモデル年金を割り込むでしょう。しかし、140万円という定額部分を 120万円ぐらいにすれば、モデル年金のところで食い止められるとか、いろいろ議論があると思いますけれども、通常、モデル年金をもらっている人に新たな税負担がかからなければ、恐らくそれは十分に社会的にも是認されるのではないかと思います。ただ、将来的にそれをさらに食い込んで議論するかどうか、これからの議論でしょうね。結果的には、入り口で完全非課税ですから、つまり社会保険料控除があって、出口の方でどうかというときには、諸外国の例を見ると課税ですよね。だから、どこまで課税できるかというのがこれからの焦点でしょうけれども、一挙に大がかりな税負担増というのは、やるべきでもないし、難しいでしょうね。だから、200万円あたりか、それとも思い切ってサラリーマン世帯の言うなれば所得税負担のところまで持っていくあたりが争点じゃないですか。今、二つ案が出ているようですけれども。それは、我々が政府税調で議論したときの資料ではありませんから、まとめたときの話は出ていなかったから。ただ、皆さんのイメージは、やはりモデル年金の上ぐらいの人には応分の負担があってもいいだろうと思っているんじゃないかと思いますけれどもね。

記者

先ほどの税源移譲のところで、所得税増税の可能性もあるというふうなことで、その前にも所得税が浸食されているから修復したいということをおっしゃっていますが、その手段として、年金との絡みで出ている定率減税の扱いをどうするかと、この税源移譲で減る分を定率減税でまた修復するとか、その辺の扱いはどんな感じになるんですか。

石会長

実は、一旦国税を減税して、地方の住民税を増税という形で税源移譲した後、何年たってどうかわかりませんけれども、税負担を引き上げる時期が、景気にもよりますが、あり得るんだと思います。そのときに、国税の立場から言うと、減った分を修復するという感じの議論が恐らく成り立ち得るかもしれない。それとは全く別に、定率減税を元に戻すということは、景気がよくなれば、あれを置いておく理由は全然ないのでありまして、恐らくそれは基礎年金の方に充てるとか何とかという議論よりは、やはり基幹税としての一般財源として所得税を使うという方に、税収を使うという方に当然ならざるを得ません。それは当然出てくるだろうし、それから今回、税源移譲のときにどういう格好で譲るかはこれから、1月からの議論ですが、恐らく課税最低限を上げるような格好になるんだったら、ある種の所得控除というものを結果として上げざるを得ないかもしれない、基礎控除みたいなやつをね。そういう議論になってくるんじゃないでしょうか。ただ、基礎控除を上げたとしても、将来的にさまざまな、雑多な所得控除を我々は廃止したいと考え、その見返りとして基礎控除を上げてもいいと言っていましたから、話が少し前後するかもしれないけれども、十分にあるべき税制の中での議論は可能と思っています。

記者

三位一体に関連するんですが、来年度1兆円で、3年間で4兆円ということを考えていらして、4兆円というのが一つのゴールというふうなとらえ方で会長は説明されていますが、地方団体から見れば、9兆円、10兆円という移譲を求めているというのが現状ですけれども、会長のご認識としては、4兆円で終わりなのか、さらにそれから先があるのか、その辺はいかがですか。

石会長

私は1兆円の削減の騒動を見て、来年もう1兆円できるかどうか心配ですよ。まして、4兆円までやれば御の字じゃないかと思いますから、本当に8兆円、9兆円なんて言っている方は、どういう手段でどういうものを削って、そうすると中央官庁の、言うなれば補助金官庁は人が要らなくなりますから、そういう雇用対策をどうするのかということも含めて議論しなければ本当はいけないと思いますよ。余り腰だめ的に、そういう格好で、7兆円も8兆円もというのは、本当に実現すると思っているのかなと思いますね、個人的には。そういう意味では、4兆円を一応目標にしたわけですから、4兆円を目指して来年度以降、どれだけ実現するか頑張ってみると。その過程で税源移譲の額も決まってくると思いますから、4兆円やれば、どのぐらい出てきますかね、よくわかりませんが、2兆 5,000億円とか3兆円が出てくれば、しかるべき基幹税というのは、僕は移すだけの十分な素地ができると思いますけれどもね。

逆に質問しますけれども、8兆円なんてできると思いますか。

記者

平成17年度の引き下げというのは、非常に読みにくいわけですけれども……。

石会長

読みにくいですね。

記者

17年度、補助金の削減額が幾らになるかというのが一つ、もう一つは所得税の抜本改革ができるかどうかということによるんですけれども、仮に所得税の抜本改革が難しいと……。

石会長

それは税源移譲という意味においてですか。

記者

税源移譲において。

石会長

それは別に難しくないですよ。

記者

所得税の抜本改革、控除の見直し等ができなければ、所得税で税源移譲するのは難しいというお話……。

石会長

1月から今言った、例えば2兆円なり3兆円なり、いろいろ言うことを想定して、どういう控除を所得税で言うなれば認めて、税源の幅を決めて移すなんていう議論は可能ですよ。我々の中では、所得税から個人住民税という一連のルートは、それほど難しくなく詳細設計はできると思っていますからね。問題は、それだけ固まった額を移すほどの補助金削減ができるかということですよ。そっちの方が我々としては問題視するし、実は今日も、補助金の削減が非常に不満だ、不十分だということで、えらい苦情を申し出た地方の方がいらっしゃいましたよ。税調だから、これは俺たちの管轄外だということでお引き取り願いましたけれども。ただ、4,200億円というのも税調がgivenとして認めてしまうと正当化してしまうから、税調は淡々とその額を受け取ったというふうに書いてくれと。ここに書いてあるでしょう、「税調に示された」それを入れたんですよ。そういうことで、その議論の方が大きいでしょうね。税の仕組み自体は、僕は問題ないと思う。できます、それは。

記者

恐らく普通の人は、税源移譲というのは国税と地方税が税収一律で、地方税に全部移るだけだというふうに、負担は受けないだろうと思っているわけですけれども、そのときに、併せて所得税のいろいろな控除の見直しですとか、定率減税の見直しなどを含めれば、負担増と税源移譲の話が一緒になって……。

石会長

恐らく消費税については、その議論はあるかもしれない。所得税については分けられると思います。だって、定率減税というのは、別にそれを増やそうが税源移譲の問題と関係ありませんから。国税の、もともと失われた税収を確保するだけです。恐らく所得税の世界で、将来、景気もよくなったし、国も地方もこの財政事情を上げようといったときに、今言った引き上げた分の一部をシェアしましょうという議論はあると思います。だから、二通りあるんじゃないですか。上げないで、今の国税を地方税に移すという話と、上げて、上げた分の取り分をどうするかという議論、これはわかりません。これから、さまざまなシミュレーションがやられますよね。それはこれからの議論であって、しかし、そう簡単に所得税も住民税も上げて、上がった分だけの取り分をどうしようかというような、そういう時代がすぐ来るとも思えませんからね。ただ、将来はそれが必要でしょうね。ただ、一旦上げた後、しばらく時を置いておのおの上げるということもありますよ、それは。そうせざるを得ない事態が近づいてきているんじゃないかという感じもしますけれどもね。

だから、所得税に関して言うなら、税源移譲はそれほど増税絡みでなくてやった方がすっきりするかもしれない。一呼吸置いて、双方で増税するということもあり得るでしょう。それがすっきりするかもしれない。わかりません、これからどういうことになるか。

記者

基礎年金の国庫負担の引き上げの財源の話ですけれども、与党の議論が大詰めを迎えていますけれども、今の協議の状況をどう受け止めているかということと、答申の枠から離れたところでの意見を伺いたいんですけれども、とるべき選択肢というのは何があるのか……。

石会長

基礎年金の話ですか。税調は、今回ははっきり言明したんだけれども、外野の声は一切気にしないと。我々は筋論で言うんだから。これが通る通らない、あるいは外野がこう言っているからこうしようといった話は一切、今回は各委員の方から言わない。そういうことも少なかったし。したがって、税調として基礎年金の3分の1を2分の1にするという、その議論については今回踏み込んでいませんよ。だから、あるとすれば、定率減税でやるか、消費税でやるかという議論はどうかというご質問でしょう。税調としては、それは議論していません。今後、それをどういう形で持ち出すかという時期が年明けから来るのかもしれません。そのときにみんなで議論したいと思いますけれども、今はそこについては、税調として明確なスタンスがありませんので、ちょっとお答えはしにくいですね。

記者

税調の立場を離れてということは。

石会長

いいですよ、別に。離れて個人的な意見ですか。個人的な意見は、やはり消費税しかないでしょう。可能性を将来的に全部一括するなら。ただ、定率減税は、私は、そんなものに当てるよりは一般財源として所得税の基幹税としての修復に使うべきだろうと思っていますから。ひとえに小泉さんが3年間封じ込めているから、言うなれば、年金絡みの公的年金等控除を少し集めてなんて苦肉の策をしていますけれども、すっきりさせるんだったら、消費税しかありませんが、それをどういう形で税調の中に入れ込むかというのは、まだ議論していませんから。ただ、個人的には、今、自民党税調がつなぎで公的年金等控除、老年者控除をやって、その後、消費税値上げだというストーリー、これは苦肉の策かなと思いますけれども。ほかにそれほど解があるわけでもないから、そんな感じがします。

記者

確認なんですけれども、税源移譲の対象として、消費税を全く政府税調の議論から排除するというわけではないわけですか。

石会長

排除なんかしていないじゃないですか。よく読んでくださいよ。ただ、主と従と、ファーストプライオリティとセカンドプライオリティぐらいはついているかもしれない。それは今回の、先ほど申し上げた地方の側の方も一応歩み寄って協力的に議論して、将来的にはこれでいこうということになりましたから、事態があれば、それは当然のこと、消費税もあり得るけれども、ただ、消費税の場合には5%のままでは難しかろうという印象を皆さんお持ちだろうということは言えると思いますよ。つまり、5%のうち1%を 1.5%にしようなんていう話は、税調の議論としてはない。将来上がったときに、それは消費税があり得るだろうということは十分あり得ますね。

(以上)