第9回総会 議事録

平成15年12月15日開催

石会長

大変長らくお待たせいたしました。谷垣大臣をお待ちしたのですが、所用のため、今、山本副大臣に代わっていただきました。

それでは、9回目の総会を開きます。

今日は、「平成16年度の税制改正に関する答申」をまとめることが大きな目標でございます。

その前に、山本財務副大臣と山口総務副大臣、おふたりからご挨拶をいただきたいと思っています。

それでは、山本副大臣、よろしくお願いします。

山本副大臣

ご紹介いただきました山本でございます。税制調査会第9回総会が開催されるにあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。

税制調査会の委員の皆様におかれましては、平成16年度税制改正について精力的なご審議を賜りましたことに対し、心より御礼を申し上げます。皆様には、総理からの諮問を踏まえ、あるべき税制の具体化に向けたご審議をお願いいたしております。この具体化の過程にある平成16年度税制改正におきましては、11月21日に総理から検討をお願いした国庫補助負担金の改革を踏まえた税源移譲の問題をはじめ、幾つかの重要な課題があります。これに対し、これまでのご審議の中で、財政規律の重要性などを踏まえ幅広くご議論いただいたと聞いております。

本日は、「平成16年度の税制改正に関する答申」をおとりまとめいただくと伺っております。政府といたしましては、この答申を十分尊重いたしまして16年度税制改正に取り組んでまいります。先般の「中間報告」でもご指摘いただきましたとおり、あるべき税制の構築に向けた税制改正は、持続可能な社会保障制度の構築、国・地方のいわゆる三位一体の改革と整合性をとって行う必要があり、2010年代初頭のプライマリー・バランスの黒字化に取り組む上でも避けて通れない課題でございます。税制、社会保障、行財政のあるべき全体像を整合的に示し、公平で活力ある経済社会の構築を目指すことが必要です。皆様におかれましては、このような観点から引き続き精力的なご審議をお願いいたしたいと存じます。

最後になりましたが、石会長をはじめ委員の皆様の多大なるご尽力に、改めて厚く御礼申し上げまして、簡単でございますが、ご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

石会長

どうもありがとうございました。

引き続きまして、山口総務副大臣、お願いいたします。

山口総務副大臣

ただ今ご紹介をいただきました総務副大臣の山口でございます。今日は、麻生大臣、国際会議の関係で欠席いたしておりますので、私のほうからご挨拶をさせていただきたいと思います。

本日は、税制調査会としまして、「平成16年度の税制改正に関する答申」をご決定されるというふうにお伺いいたしておりますが、委員の皆様方には、これまで答申の決定に向けまして、地方税関係につきましても大変ご熱心にご議論を賜りまして、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。

6月にとりまとめられました「少子・高齢社会における税制のあり方」を踏まえつつ、今回、個人住民税均等割や課税自主権のあり方に関しまして、適切な指針をお示しいただけるものと伺っております。特に税源移譲につきましては、今もお話がありましたが、去る11月21日の総理からのご指示を受けまして、短い期間の中で精力的なご審議をいただきましたことを深く感謝申し上げる次第でございます。

総務省といたしましては、本日の答申の趣旨を十分尊重させていただきまして、平成16年度の地方税制の改正に取り組みまして、三位一体の改革の一環として税源移譲につきましても、引き続き、地方の権限と責任を大幅に拡大するという方向で、国庫補助負担金、地方交付税と併せて全力で取り組んでいく所存でございますので、よろしくお願い申し上げます。

最後に、石会長はじめ委員の皆様方の多大なご尽力に、重ねて厚くお礼を申し上げさせていただきまして、簡単ですけれども、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

石会長

どうもありがとうございました。

それでは、両副大臣、これから日程のご都合もございますので、ご退席になりますが、本日はお忙しいところを本当にありがとうございました。

〔山本財務副大臣、山口総務副大臣退席〕

石会長

それでは、「答申(案)」の審議に入ることにいたします。

お手元に、今日は、会議後に返してくれという判子のないのが出ておりますから、お持ち帰りいただいてよろしいのですが、前もって申し上げます。私が5時45分頃、小泉首相に手渡しますので、それまでは解禁してはいけないようでありますから、十分お気をつけいただきたいと思います。

それでは、今日の午前中、起草会合をやり、それから総会もやり、修文に努めてまいりました。最終的に午前中の総会のあと会長にご一任いただいたわけで、その後、議論を踏まえたものを修文してまいりましたので、これを早速事務局のほうから読み上げていただきたいと思います。

三位一体のところと前文のところだけでよろしいかと思います。今初めてご出席の方もいらっしゃいますし、二度目、三度目の方もいらっしゃるかもしれませんが、微妙に変わっているところもございますから、十分チェックをしていただきたい、こう思います。

では、事務局、読んでいただけますか。

〔事務局読上げ〕

当調査会は、本年10月6日の第1回総会において、内閣総理大臣から「少子・高齢化やグローバル化等の大きな構造変化に直面しているわが国社会の現状及び将来を見据えつつ、社会共通の費用を広く公平に分かち合うとともに、持続的な経済社会の活性化を実現するため、あるべき税制の具体化に向けた審議を求める。」との諮問を受けた。この諮問を踏まえ、基礎問題小委員会において、「あるべき税制」の具体化に向け、その基礎を固めるため、税制を取り巻く経済社会の構造変化を幅広い観点から的確に把握するための検討を開始した。また、金融小委員会においては、引き続き金融資産性所得に対する課税の一体化に向けた理論的・専門的検討を行った。

その後、総会において、両小委員会の検討も踏まえつつ、当面の課題である平成16年度税制改正について審議を開始し、11月27日に「平成16年度の税制改正に関する中間報告」を公表した。また、11月21日、内閣総理大臣から「国と地方の税源配分の観点から、16年度の税源移譲についても、国庫補助負担金の改革と併せて検討していただきたい。」との指示がなされた。このことを踏まえ、11月27日以降、限られた時間の中で、基礎問題小委員会及び総会において、国庫補助負担金の改革と併せて平成16年度の税源移譲について検討を行った。

本答申は、平成16年度税制改正にあたっての指針を示したものである。

三 「三位一体の改革」の一環としての税源移譲

当調査会は、本年11月21日の内閣総理大臣からの指示を踏まえ、国庫補助負担金と地方交付税の改革と併せていわゆる三位一体の改革の一環としての税源移譲について検討を行った。その結果は以下の通りである。

地方税は、地域における行政サービスの経費を地域住民がその能力と受益に応じて負担し合うことが基本である。このことから、応益性を有し、薄く広く負担を分かち合うものであること、さらに、地域的な偏在性が少なく、税収が安定したものであることが望ましい。また、自主的な課税を行いやすい税体系であることも重要である。

かかる視点から、税源移譲の対象として、所得税・個人住民税、消費税・地方消費税、法人課税、たばこ税、酒税及び揮発油税について検討を行った。

税体系の中で個人住民税が応益性や自主性の要請に最も合致している。今後、所得割の税率のフラット化、均等割の充実といった改革を進めていくことが重要である。一方、個人所得課税に求められる所得再分配機能は、主として国の所得税が担うべきである。このようにして、両者の性格に応じた個人所得課税体系における位置付けの明確化を図っていく必要がある。

地方分権の推進、地域福祉の充実等のために創設された地方消費税は、消費に関連した基準により都道府県間で清算を行うことにより税収の偏在性が少なく、安定的な基幹税目の一つとして定着し、大きな役割を果たしている。しかしながら、地方消費税は、税の累積を排除するため、生産、流通、販売などの各段階において、売上に係る税額から仕入れに係る税額を控除して納付税額を算出する国の消費税の制度と一体のものとして仕組まれており、全国一律の税率が前提となっている。また、国が委託を受け、消費税とあわせて徴収を行っており、地方が直接に税を徴収する仕組みとなっていない。このような点はあるが、地方においても福祉サービスの安定的な提供が求められている中、地方消費税の役割は重要である。

一方、国の消費税は、少子・高齢化が進む中で、ますます増大していく社会保障経費をはじめとする公的サービスの費用を安定的に支える税として、今後その役割を高めていく必要がある。2010年代初頭のプライマリー・バランスの黒字化を目指す上で不可欠の要素である。

地方法人課税には、外形標準課税の導入はあるものの、税収の偏在、不安定性という問題がある。また、経済のグローバル化が進む中で地方の法人所得課税のウェイトを高めていく状況にない。従って、国の法人税から地方の法人所得課税への移譲は適切でない。

たばこ税、酒税、揮発油税といった個別間接税についても検討を加えた。地方たばこ税は、税源偏在が小さい。また、たばこ税は、納税者への影響や大きな事務負担を伴わずに税源移譲を行うことが可能である。これに対し、酒税、揮発油税は庫出し税であり、そのまま地方税とした場合、地域的な偏在が極めて大きい。一方、流通段階の課税とすることは、納税義務者の負担や税務執行コストの面で困難である。

以上を踏まえれば、今後、所得税・個人住民税のそれぞれの性格に応じた個人所得課税体系における位置付けを明確化する方向で改革を進め、所得税から個人住民税への税源移譲を行うことを基本にすべきである。また、消費税・地方消費税については、少子・高齢化の進展に対応し、ともに充実を目指すことが課題であり、これについても併せて議論を深めていく必要がある。このような本格的改革は「あるべき税制」の理念に沿って行うべきである。

税源移譲を進めるにあたっては、税務執行面での配慮が欠かせない。特に、所得税・個人住民税の改革にあたっては、多数の納税者の税負担に何らかの影響を及ぼすとともに、源泉徴収を行っている企業・事業者にも事務負担が発生する。あるべき個人所得課税改革の姿について抜本的な検討を加え、成案を得た上で、納税者・源泉徴収義務者の理解も得ながら改革を進めていかねばならない。

当調査会の今後の審議にあたって、個人所得課税の抜本的見直しに関する検討を早急に行い、国庫補助負担金と地方交付税の改革と併せ、いわゆる三位一体の改革の完了する平成18年度までに税源移譲を実現していく必要がある。併せて、消費税・地方消費税のあり方についても、ともにその役割が高まっていくことを踏まえ、検討を深めていくべきである。

税源移譲は、基幹税の充実を基本として行うべきであるが、本格的な税源移譲の制度設計については、検討すべき課題が多く、時間的な制約もあり結論を出すには至らなかった。一方で、平成16年度の税源移譲所要額は、4,200億円強である。こうした事情を勘案すると、平成16年度においては、本格的な税源移譲を行うまでの間の暫定的措置として、国のたばこ税から地方のたばこ税への税源移譲を行うことが現実的である。

石会長

ありがとうございました。

何回も繰り返しました審議、修正、加筆等々の結果、ずいぶんスムーズになったなあという感じは持っておりますが、いかがでしょうか。

この「答申(案)」につきまして、何か今の段階でご注意いただくようなことがあれば、お伺いしておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

どうぞ。

井戸委員

午前の総会でも申し上げたのですけれども、12ページの下の最後の段落、「源泉徴収を行っている企業・事業者にも事務負担が発生する」のところです。事務負担が発生するということは、上の「納税者に何らかの影響を及ぼす」ということと同じような文脈で触れておいたらいかがかという意味で申し上げたのですが、相変わらず「発生する」と書かれております。移譲に伴ったら、所得税なら所得税の減税と住民税の増税、それを仕掛けるわけですから、発生するのは当たり前なので、それを、今さらとおっしゃるかもしれませんが、修文案を提示しておりませんでしたから、会長にご配慮をとお願いしたのですが、私はそういう意味では、「企業・事業者の事務負担にも配慮すべきである」とか、そういう言い方がいかがかなと思うんですよね。いわば新たに発生するという印象を、ことさらここでは……。

石会長

でも、「新たに」というのは入っていませんしね。これも、井戸さんのご指摘、たしか上月さんもご指摘があったと思いまして、議論いたしました。ただそのときに、何かふさわしい言葉もなくてこのままにしたのですが、といって今の段階でこれを直すのはなかなか難しいと思いますので、このまま、ちょっとご不満があるかもしれませんが……。

ただ、今言ったような議論があるということは十分私も認識しておりますので、機会があれば記者会見や何かのときでも、こういう議論があったというのはご紹介しておきたいと思います。

ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。

というわけで、まだ細部にわたってはご不満の点も残ろうかと思います。というのは、皆さんおっしゃったことを100%受け入れていませんから。もう読み上げませんが、「答申に盛り込まれていない主な意見」のほうには先ほど出たものはだいぶ書き込みましたので、そちらでいうなれば議論の紹介をしていただいたという点にポイントを置いていただきたいと思います。

それでは、今の段階で大きな修正もできませんし、もうご意見もないと思いますので、この表書きに書いてございますように、「平成16年度の税制改正に関する答申」は原案どおり決定させていただきたいと思います。この「案」というのがとれて、表紙だけ変わるのかどうかわかりませんが、後ほど事務局からお届けする予定でございます。

先ほど申し上げましたように、今から、「答申に盛り込まれていない主な意見」と2つ携えまして首相官邸に行きますが、17時45分頃と言われていますので、それまでは記事の解禁はお見合わせいただきたい、このように考えております。

それでは、10月から始まった新しい税調の組織での審議も今年はこれで終わりにいたしたいと思っておりますが、例年のことだと、新年早々にいろいろ呼出しがあって、また首相のほうから何かあるかもしれません。いずれにいたしましても我々としては、例の所得税と住民税の詳細設計をこれからやるといった議論も残っておりますし、三位一体の議論もこれから深めていかなければいけないと考えておりますので、正月早々というかどうかわかりませんが、1月に入りましてから何らかのアクションが起こるというふうにお考えいただきたいと思います。束の間ではございますが、正月はゆっくりお休みください。それほど1月から会議ではないと思いますが。

本当にありがとうございました。御礼を申し上げます。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。