第2回総会 議事録
平成15年11月11日開催
〇石会長
それでは、両大臣おそろいになりましたので、本日から、平成16年度税制改正の審議を始めたいと思います。後ほど大臣からごあいさつをいただきますが、その前に、今日何をやるかということのあらましをお伝えしたいと思います。
3つほどテーマがございます。1つは、第1回の基礎問題小委員会をすでに開催しておりますので、そのことをご報告したいと思います。それから第2の問題は、すでに本年度税制改正を受けて制度が動き出しておりますので、その実態報告、そして今年度の税収の動向であるとか財政事情につきまして、来年度税制改正をやるために必要な最小限度の話をここでまとめてもらいたいと思います。それから第3、これが一番重要なのですが、主要な税につきまして、個別に、どういう問題を抱えて、これを今後どういう方向で直していくかといった点の現状認識を含めての整理をしていただこうと。この3つの問題を考えております。
実は今日は盛りだくさんでございまして、3時間ほど予定しておりますので、途中で1回休憩をはさみたいと。これはかねてのお約束どおり、2時間を超えるときは休憩をしましょうということを言っておりますので、実行したいと思います。
それからあと小さな問題ですが、財務省はホームページを持っておりまして、そこに税制改正要望等のいろいろな形の記載をしておりますので、ご関心のある方はぜひご覧いただきたいと思います。それから片や、各種団体からさまざまな形の税制改正要望が税調宛に来ております。それをまとめたものが一覧できますので、それをまたご覧いただけたらと、このように考えております。
それでは、お忙しいところ、谷垣財務大臣と麻生総務大臣にお越しいただいておりますので、今日は最初の本格的な議論を始めるということになりますので、それに当たりまして、最初にごあいさつをいただきたいと思います。
では、谷垣大臣からよろしくお願いします。
〇谷垣財務大臣
一昨日の選挙で総務大臣ともども戻ってくることができまして、またよろしくお願い申し上げます。
平成16年度の税制改正のご議論を始めていただくわけでございますが、一言それについてごあいさつを申し上げたいと存じます。
我が国は、少子化、高齢化、グローバル化といった大きな構造変化に直面しているわけでございますが、こうした中で、持続的な経済社会の活性化を実現するため、「あるべき税制」の構築に向けた検討を進める必要がございます。これを踏まえまして、平成15年度税制改正においては、研究開発・設備投資減税などの広範な改革を実現いたしまして、その結果、平成15年度において約1.8兆円、それから平成16年度において約1.5兆円のネット減税が先行いたしました。これによりまして、経済活性化に向けた確かな手ごたえが伝わってきているように存じます。
平成16年度の税制改正に当たりましては、この動きをより確かなものとするとともに、経済分野における国際協調を一層強化するため、国際的な投資促進に重点を置いた取り組みが必要と考えております。先週、およそ30年ぶりの日米租税条約、全面改正でございますが、署名することができまして、今後これが批准されますと、平成17年1月から日米間の配当、利子、使用料に対する大幅な源泉課税の軽減、免税が行われることになりまして、世界第一、第二の経済大国である両国がより一層強いきずなで結ばれて、我が国産業の活性化と雇用拡大にもつながっていくのではないかと期待しております。
今後この新条約を着実に実施するとともに、ほかの国々との租税条約につきましても、この新日米条約をモデルとして見直しを進めていきたいと考えております。このため、平成16年度の税制改正において、関連する国内制度の改正に取り組んでいきたいと考えておりますので、この点についてご議論を賜れば幸いと考えております。
それから、先日の第1回総会でも申し上げましたが、私は総理のご指示を踏まえまして、2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化を目指した財政運営を進めてまいりたいと考えております。そこで、現在、我が国の財政は国の歳出総額に占める税収の割合が5割を辛うじて上回る程度となっておりまして、極めて厳しい状況にございます。こうした現状を踏まえまして、財政の持続可能性に対する国民の信任を確保しなければならないわけですが、そのためにも、平成16年度税制改正に当たりましては、財政規律に十分配慮した検討を行う必要があると考えております。
また、現在、年金制度や地方分権の問題についても重要な改革が進められているわけでございますが、これらの改革に関連する税制上の問題についても、ご議論をお願いしたいと思っております。
委員の先生方におかれましては、精力的なご審議をいただきまして、平成16年度税制改正について適切なご指針をお示しいただきますようお願い申し上げまして、簡単でございますが、私のあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。
〇石会長
どうもありがとうございました。
では引き続きまして、麻生大臣、よろしくお願いいたします。
〇麻生総務大臣
谷垣大臣と同じく、一昨日の土曜日まで極めて殺伐とした世界におりましたので(笑)、こういうところに入ってくるのはおよそ場違いだと思いながらも、役目柄、慌ててここに参上させていただきました。ご存じのように、いよいよ、この税制改正に関しまして、平成16年度の政府税調が今日から本格的なスタートということでございますので、雨の中お集まりいただきまして、まことにありがとうございました。
私ども、地方税のほうから申し上げさせていただきますと、もう皆さん方ご存知のように、私どもが抱えておりますいわゆる借入金総額、平成15年度末で約200兆円というものを抱えておるのはご存知のとおりでございます。加えて、今、時代の流れとして、明治このかたやってきた中央集権、官僚主導、業界協調という制度でこの国は明治はもちろんのこと、敗戦後もこれでうまくやってきた結果として、世界第二の経済大国にまでのし上がったのだと思いますが、どうやら、脱工業化社会等々、日本を取り巻く環境がものすごく大きく変わって、冷戦も終わった、それに関連してインフレも終わった等々、ものすごく行政が変わってきておりまして、中央集権から何となく地域主権、中央集権が地方分権へといろんな流れが大きく出てきているのだと思います。そういった流れにあわせて、国としても制度全体を見直さなければいかんという大前提に立って、小泉構造改革というのはその前提を抜きにして語れんところだと思っております。
そういった中で、地方でということになってまいりますと、その地方の歳出総額のうちに占めます地方税は約4割弱、36%ぐらいがこれまでの実績でありますので、それに加えて、景気低迷しております中、さらにその税収自体が減るという事態になってきております。
今後、三位一体だ、やれ市町村合併だということになって、地域により多くの主権を渡していくということの流れということになりますと、当然のこととして、権限を渡す、財源を渡す、いろいろな形で渡していった場合には、地方との間において地方間で競争が起きる。当たり前のことだと思いますが、地方で経営能力を問われる。この市とこの市、この県とこの県、どっちがというような経営能力が各県、各市、各町村間で問われるという地域間競争が起きることになっていくのだと思います。それはそれなりに経営能力を問われることになりますので、その問われる能力に対応できるだけの人を選ばなかったら地方住民の責任なのであって、それなりの結果をしょってもらうのは当然だと思っていただかなければいかんのであって、そのワリを食った分だけ後で何とかしろなどというのは大体とぼけた話なのだと、私は基本的に、地方分権を進めればこういう流れになっていくのだと思ってます。やはりその責任を負っていただくなら、その負っていただく分だけ、地方税収と歳出の乖離が大き過ぎるというのが少しでもあると、縮めることを考えないといけませんし、また地方に財源を渡したところで、税をとる対象の人もいなければ企業もないところに、いきなり渡されてもかける相手がおらんというようなところでは全然状況が違いますので、都市と地方の差とはいろいろ違いが出てくると思っておりますので、その意味も配慮した上でこの問題を考えていただかんと、基幹税みたいなところがある程度入ってくるということを考えないと、とてもできるはずのない話ですので、ぜひそういった意味ではいろんな偏在性というものをやはり考えておかなければいかんところだと思います。ここにお見えの方々、いろいろお詳しい方が大勢お見えでございますし、地方にお詳しい方もいらっしゃいますし、知事初め、いろいろ各地でその現場にいらっしゃる方もお見えのことと存じますので、ぜひそういった問題を考えていただいて、市町村合併いろいろ進んでいく過程の中において出てくる避けがたい問題がこの問題だと思っておりますので、ぜひ皆様方のご審議をいただきまして、それぞれ厳しい地方財政を抱えております地方公共団体等々、いろいろその団体によってまた内容が違うのですけれども、そういった点もぜひご理解いただいて、地方税の重要性という点もぜひ頭の中にしっかり置いていただいてご審議をいただければということを心から切望するものであります。
いずれにいたしましても、今回選挙もありまして、ついこの間までやっておりましたので、何となくガタッと日程が後ろに詰まったような形になっているのではないかと思って、大変申し訳なく存じますけれども、限られた日数の中、積極的なご審議を賜りますよう、会長初め皆さん方のご理解、ご協力を賜りますようお願いを申し上げまして、ごあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。
〇石会長
どうもありがとうございました。今、両大臣から国税、地方税に関する基本的な考え方、ご披露いただきました。
実は両大臣が無事、と言っては失礼なのですが、我々のところに戻ってくれたということを税調として心から歓迎すべきことを言い忘れておりました(笑)。谷垣大臣に言われまして、麻生大臣は留年だとおっしゃってましたが、大学において留年は非常に不名誉でございますが、内閣においては大変いいことではないかと思いますので、何年も何回も留年していただければと思います。
それでは、両大臣、これから日程ご多忙でございますので、ご退席されます。どうもありがとうございました。
(谷垣財務大臣、麻生総務大臣退席)
〇石会長
それでは、本議題に入りたいと思います。
最初の議題は、10月7日に開催されました第1回目、今度の新しい税調においての第1回目でございますが、基礎問題小委員会で行いました議論を資料をもって説明していただきたいと思います。
それでは、調査課長の佐藤さん、よろしくお願いします。
〇佐藤調査課長
調査課長の佐藤でございます。
お手元の資料、総2-1といったものに沿いましてご説明したいと思います。2つほど資料がございまして、1つは分厚い資料、それから後ろに一枚ペラがついております。実はこの資料は10月7日、基礎問題小委が第1回目開かれましたときに事務局のほうから問題提起という形で提出いたしまして、そこでご説明を申し上げたものでございます。この内容をちょっとポイントだけご説明したいと思います。
もともと、この税調に対します総理からのご諮問という中に、「あるべき税制」の具体化に向けて検討するという場合には、「社会経済の構造変化というものを十分見据えて行う」というくだりがございまして、それに対応した資料という位置づけでございます。90年代から現在にかけて、急激に我々の足元の経済情勢が構造的な変化を起こしているということは日々感じるところ。そういうものが現在どうなっており、将来どうなっていくかということをやはりファクトできちんと確認しながら税制の論議を組み上げていくべきではないだろうかと、こういう問題意識でまとめた資料でございます。
そういう意味ではとっかかり的なものでございますが、ある意味での現象面をとらえたものでございますが、今後の基礎小の議論においては、このあたりの中で特に掘り下げていくべきもの、どういうものがあるかというあたりをご議論いただくということになるのだと思いますが、そういう意味での資料ということでございます。
1枚めくっていただきまして、目次がございます。1から11ということでいろいろな角度からの資料を用意してございますが、今日はお時間限られておりますので、その中から特にハイライトの部分だけご説明したいと思います。
そこでまず、人口の関係ということで5ページを開いていただきたいと思います。ここに総人口の動き、それから各年齢階層の動きというものをグラフ化したものでございます。若干ポイントだけ申し上げますと、総人口につきましては、左側の表、2006年にピークを迎えまして、1億2,774万人ということでございますが、その後右下がりのトレンドに入り、人口減少社会に入るということはご案内のとおりでございます。
ここに中位推計、高位推計、低位推計と書いてございますが、出生率によりまして、そこの線が分かれてくるということでございます。通常言われますのが中位推計ということで、欄外をご覧いただきますと、出生率が1.39ということを前提にした数字でございまして、2050年の段階では約1億人ということになるわけでございますが、そういう意味では、2006年のピーク時と比べますと約2,700万人の減という社会が出てくる。低位推計ということになりますと、これは1.10という数字でございますので、さらに下がりまして、2050年の段階では9,200万というレベルになるということでございます。この出生率のぶれというものも下ぶれするということであればここまでいくというようなピクチャーかと思います。
それから右側の表でございますが、これは年齢別にグラフを書いてございます。ご案内のとおり、65歳以上の高齢者につきましては急激に右肩上がりになっておりまして、現在、2,363万という数字が、2050年の段階では3,586万ということで、全体、35.7%、3分の1強の方々が65歳以上になるという世界でございますが、他方、0~14歳という子どもの世界が急激に下がってきておるということでございます。
象徴的なのは、シャドウで打ちました90年代に、実はこの0~14歳、それから65歳以上、この線がクロスしておりまして、いわばX字の形になっておりまして、これがまさに少子化と高齢化が同時に並行して進んでいることの証左でございまして、1950年と2050年をちょっと見ていただきますと完全に対照型になっているということで、社会の構造が大きく変わるということの象徴的な姿かと思います。
それから上の線でございますが、15~64歳の生産年齢人口というところですが、これについては下降トレンドに入っておりまして、1995年、8,700万ということ、90年代にピークを迎えまして、それからずうっと右肩に下がり、2050年の段階では5,389万ということで、約3,300万人減るという姿が出てきます。
次の6ページをちょっとご覧いただきますと、そのあたりの姿をご案内のとおりの人口ピラミッドで見たものです。65年の非常に末広がりのピラミッドから、次第に釣鐘型になり、最後、2050年においては縄文式土器のような形になっているということで、いわば発展型の人口構成というのは崩れていくという姿でございます。
まさにこれを起こしますのが、当然、先ほど申しました出生率の低下ということでございまして、このあたり、今まで想定していた社会の姿、要するに人口増、それから発展型の人口構成ということを前提としていた社会から大きく変わるということになりますと、価値観も変わるだろうし、それに基づく諸制度、社会的なモデルというものも随分変更せざるを得ないのではないだろうかということは、おそらく質的な変化が出てくるだろうということを示唆しているものということかと思います。
続きまして7ページでございます。「家族」というところでございます。世帯構成をご覧いただきますと、ちょうど3つ目、夫婦と子どものみの世帯、通常、標準世帯と呼んでおる世帯でございますが、これが平成14年の段階では1,492万ということで、3割強のウェイトでございますが、これが20年後には1,300万世帯ということで、全体の4分の1に減少していく。そういう意味では標準ということが相対化してくるということがあります。
一方で、単独世帯、夫婦のみの世帯、いわば子どものいない世帯というもののウェイトが5割を超えるという水準にまでなってまいります。それから男親と子ども、女親と子ども、いわばシングルペアレント、要するに片親、この世帯も増えてくるということで、世帯構成の多様化と、一言で言えばそういうことになるわけですが、従来思っております家族というものの形が随分広がりというか、バラエティを持ってきているということが言えるだろうと思います。
税を含めました諸制度を考えるときに、こういった変化をどのようにとらえるかというのは極めて重要なポイントだと思います。特に夫婦と子どものみの世帯のうちということで、下の段でございますが、夫が就業、妻が非就業という、いわば専業主婦、典型的な標準世帯になりますが、これが651万世帯ということで、全体の4,678万世帯との関係で言えば1割強になっているということもあわせてテイクノートしていただければと思います。
次の8ページでございます。婚姻関係のデータをざらざらっと並べてございます。お時間ございますのではしょりますけれども、初婚年齢、それから出産年齢、これが全体的に遅くなっておりますし、離婚件数は増えて、瞬間風速的に言えば、3組に1組が離婚する状況になっている。再婚の割合も増えてきておりますし、未婚率につきましても、特に45~49歳の段階で、1度も結婚したことがないという、こういうデータですが、これがここに見ていただくような数字になっておりまして、相当、結婚しなくても平気という方々も出てきておる。
それから国際結婚という欄がございます。ここも、件数は3万5,000件でございますが、総結婚件数に占める割合は4.7%ということで、20組に1組は、フローベースですが、国際結婚だということでございますので、結婚観というものが、いわば伝統的な一つの結婚にこだわるというのもいろいろバラエティを持ってきておりますし、当然、一人のライフサイクルの中で随分変化が出てきているということのあらわれだろうと思われます。
それで9ページでございますけれども、これは博報堂の調査で、家族意識の変化というものを見た調査でございます。ちょっとおもしろい点がございますので1点だけ申し上げておきますと、右側に、「子どもの進路決定の最終決定者は子どもである(個人化)」、「夫婦はどんなことがあっても離婚しないほうが良い(緩系化)」ということで、このあたり、従来の非常に強い、ストロング・タイといいますか、強い紐帯というイメージから、ウィーク・タイというか、個人化と進んでいるということで、社会学者の中ではこの部分をウィーク・タイということで定式化するような理論があると伺っておりますが、いずれにしましても、家族の行動が伝統的な家族主義というものから随分動いてくる。そうなると、家族の中で持っていたいろいろな社会的なリスクケア能力というものが外部化していくという社会になってまいりますので、そのあたり、どういうようなことを今後諸制度の中で考えたらいいか。もちろんそこには税が含まれると思いますが、もうちょっと広い視野で考えていく必要があるのではないだろうかということでございます。
次に10ページ、「就労」でございます。「労働力人口」という欄をご覧いただきますと、現在6,689万ということで、人口減少に伴いまして将来とも労働力が減っていくということにつきましては、潜在成長力の低下の問題、活力の問題が出てくるということは想像できるわけですが、その下、65歳以上、女性、それから外国人というあたりを見ていただきますと、それぞれ数が増え、ウェイトが上がっていくということですから、いわば労働人口が減っていく中で、このような65歳以上、それから女性、外国人といったものもいわば労働力の担い手という形で位置づける時代、社会的な制度をむしろ支える側にいると考える時代ではないかということがしばしば指摘されるわけですが、そのようなことの裏づけの資料ということでございます。
それから11ページでございますが、雇用形態をちょっと見たものでございます。上のほうの正規の従業員の雇われ方と、非正規といいますか、典型的なパートタイム的な雇われ方というもののウェイトが、次第に正規から非正規へということで二極化してきているということがわかってまいります。もちろん、これには人件費削減といったような企業における雇用政策の問題というのはもちろんあるわけですが、一方でさまざまな雇用、働き方についての個々人の考え方の違いというものも生まれてきているのではないだろうかという指摘もされているようでございます。
それの関連で、12ページでございますけれども、真ん中あたり、フリーターという数字だけちょっと見ていただければと思います。平成14年におきましては417万ということでございます。同じ世代の人の約2割がこれに当たるということも出ております。そういう意味で、労働に対する考え方、あるいは労働の形態が随分多様化してきているという状況でございます。
それから13ページ、会社に対する帰属意識の調査ということで、「薄れた」「今まで通りある」というのがこういう形で上がり下がりしておるということもご確認いただければと思います。
それから次、17ページまで飛ばしていただきたいと思います。ここはライフサイクルとか価値観というのを整理したところでございます。これは消費のパターンを示したものでございまして、違う切り口を見せておりますが、一番上の欄、お茶とかヨーグルトとか書いてます。これがヘルス、健康です。それから次がパソコンなりインフォメーション、それから語学、これが自己啓発のようなエデュケーション、それから次のペットとかそういうのがリフレッシュメントで癒し系ということで、最後、外食、保育費用、アウトソーシングということで、この頭の文字、H、I、E、R、Oとやりますとヒーローと呼ぶようでありまして、消費がそういうところにシフトしていると。特に最後のアウトソーシングのところにつきましては、保育費用等々を見ますと、家族機能との関係が十分出てきているのではないかというふうに見えるわけでございます。
19ページに進んでいただきます。ちょっとはしょりまして申しわけございません。「国民生活に関する世論調査」という内閣府のものでございますが、これをご覧いただきたいと思います。どういうときに充実を感じるかということについての回答ですが、家族団らんというのが横ばいでございます。緩やかな関係という先ほど申し上げたことと相通じるのかもしれません。それにかわりまして、ゆったりと休養とか、友人と会合・雑談、趣味・スポーツといったような、どちらかというと個人化しながらも緩やかな仲間、先ほどの社会学の言葉で言うとウィーク・タイと言うようですが、そういう社会が随分広まってきているのではないだろうかということで、このあたり、価値観の大きな変化が読み取れるということでございます。
それから次の心の豊かさですか、物の豊かさですかというふうになりますと、心の豊かさがどんどん増えてきておるということで、むしろ働きがいとか生きがいをベースとしたアメニティ重視といいますか、そういう感じになってきているあらわれだろうかと。それから将来に備えるか、毎日の生活を楽しむかというあたりで、毎日というのが増えてきているということで、生活の楽しさを好むようになったということかなあという分析でございます。
それから20ページでございますが、どういうときに悩みを感じますか、ゆとりを感じますかということでございます。全体では、悩みを感じる人、不満を感じる人が増え、ゆとりがあるということを言う人も増えてきておるわけですが、年齢別に見ますと、ちょうど40~59歳までの間は悩みや不安を感じる人が多くて、ゆとりを感じるという人は若い世代と60歳以上の世代に多いということで、ここは大きく世代において考え方が分かれておるという姿でございます。
続きまして、26ページまで飛んでいただきます。ここからちょっとテーマを変えまして、グローバル化ということに関連する資料を並べてございます。冷戦が終結した後、90年代には大きくグローバル化が進むということ、それからIT化が進展するということで、人、モノ、カネ、情報が自由に動くようになったと俗に言われるわけでありますが、それの確認ということでございます。貿易額、輸出・輸入額が当然増えてまいっております。
27ページ、ここは相手側を見るという資料ですが、中国のウェイトが輸出・輸入とも相当高くなってきているということでございます。
それから次に28ページでございますが、対外直接投資、対内直接投資というあたりを整理しております。特に対内直接投資につきましては近年かなり増えてきておりますが、まだ全体としては、対GDP比に比較しましても1%にも足らないという状況ではございます。内外の投資促進というようなことから、環境整備が必要な状況ということもあろうかと思います。
それから下の特許使用料というのがございますが、これは日本が海外に支払っている部分、それから海外が日本に払っている部分、それぞれ上下段に書いてございますが、特に海外が日本に対し支払っている下の段が大幅に増えてきておりまして、両者接近してきているという形になっておりまして、そういう意味では、モノで食べる国ということのみならず、ノウハウ、要するに知的財産といいますか、そういうもので食べていくというような形に数字的にはなりつつあるということかと思います。
それから29ページ、ここは人の移動をつらつら書いております。ご確認をいただければと思います。
それから、はしょりまして申しわけございませんが、30ページ、企業の海外進出というところでございます。これも進出数が増え、それから海外生産比率が増えるという形になっております。グローバル化のもとで、各企業はさまざまなインフラコストというものを考えながら、それぞれに立地をしていくという流れであろうかと思います。
それで、31ページでございます。先ほどのは企業単位の話ですが、ここは国単位のグローバル化という関係ですが、スイスのIMDにおいて出された統計でございまして、これはよく見られたことのあるデータだと思いますが、第三者的に見たときの日本の相対的な競争力ということでございます。
97年を境にドカンと落ちまして、現在30位。別の同じような指標では、最近ちょっと上がり傾向だという話がございますが、割とこういう傾向は依然としてありますが、それの評価のポイントが右側に書いてございます。高い評価を受けているもの、低い評価を受けているものということで、ざっと項目に目を通していただきますと、経常収支だとか、外貨準備高とか、そういう経済指標もございますが、あと特許の数だとか、それからR&Dの支出だとか、こういう知的財産、あるいは科学技術系の研究の蓄積とか、そういうものに対して高い評価が得られているということでございますが、一方で低い評価という部分につきましては、対内直接投資とか教育関係の指摘、起業家精神、それから株主重視の度合いということでございます。それから産業電力コストなどなど、指摘されております。
80年代にはむしろすごく評価されていたものが90年代に急激に、グローバルスタンダードといいますか、そういう考え方が随分変化したことがあらわれているという面はあろうかと思いますけれども、いずれにしても、こういうふうに見られているということでございます。今後、国全体としてグローバル化戦略をどう考えるかと、国力の源泉をどう考えるかというあたりで1つ示唆に富む分析ではないだろうかと思われるわけでございます。
最後に40ページをあけていただきたいと思います。ここはコミュニティということでございます。ちょっとグローバル化のところで話が飛んでしまいましたけれども、コミュニティというところで、先ほどの家族とか就労ということの文脈で考えていただければということですが、例えばこういう犯罪の検挙率等々につきましては大幅に下がり、外国との比較も横に書いているとおりでございます。それから少年関係の凶悪犯といいますか、キレるという、そういう世界も最近増えてきているということ。それから不登校の数も非常に増えているということで、コミュニティ機能というものが薄れているのではなかろうかとしばしば言われるものの数字でございますけれども、一方、41ページ、ボランティアの数とか、NPOの数とか、そういうものは増えてきているという面もございますので、そのあたり、コミュニティのあり方というものについて、やはりいろいろものの見方に幅が出てきていると。先ほど申した家族の機能、地域、企業いわば会社、そのあたりの今まで思っておる世界と随分、いわばバリエーションが出てきているということかなあというあたりでございます。分厚い資料はそれだけでございます。
最後に一言だけ。一枚紙でございますけれども、これは今申し上げたこのデータなどを踏まえまして、今後、基礎問題小委員会におきまして、このような項目について掘り下げたご議論をいただき、それが例えばどういう現象なのか、どういうメカニズムでそうなっているのかというあたりを掘り下げていく中で、我々として、税を支える、いわばこのもととなる社会モデルといいますか、そういうものをどのように想定していったらいいだろうかというあたりの議論をやはりしていくことではいかがでしょうかと、こういう問題提起をさせていただいたということで、第1回、かなりご議論いただいたということでございます。
とりあえず資料はそこまでになります。
〇石会長
ありがとうございました。大変膨大な基礎資料を作っていただきました。
この総会の下には基礎問題小委員会という大きな、この総会に出す前までの下準備をするところと、それから奥野さんにやっていただいている金融小委員会というのがございまして、その2つがこの総会に出すまでの基礎的な作業をするという格好になっております。
ちょっと私のほうからも、なぜこのような直接税制に関係のないデータを集めてもらったかということですが、実は日本の税制は社会経済変化との間でどうもミスマッチが起きている。例えば家族といっても、元来我々のイメージにある家族というのは、ご主人が働きに行って奥さんが家にいてという片稼ぎの家族であるし、子どもも4人も5人もいるといったようなことがあったような時代の所得税というイメージをまだ引きずってますよね。
それから就業にしたって、一生涯同じ会社に勤めて、退職金をもらって、年功序列でだんだん上がっていくという話でありますが、今や全く、終身雇用という世界にどっぷり漬かってない人もおるし、それからフリーターとかパートタイマーがどんどん増えてくる。昔、我々、クロヨンとかトーゴーサンとかいう問題、大分議論いたしました。まだその問題は残っていると思いますが、実は大きな問題は、フリーターに対する源泉所得税の問題とか、新しい側面がどんどん出てきてます。情報化、あるいはグローバル化、それから地域のコミュニティの問題、今日触れられませんでした環境問題、いろいろございます。
税制を考えるに当たって、こういう基礎的な問題をとりあえず固めて、それから、3年ございますから、そのスタートにしたいという形でこういうテーマを設定して、今日、一枚紙のほうで整理していただいたような項目が並んでいるような資料を作っていただいたわけであります。
そういうわけで、当然のことながら、細かい制度的な問題も議論はいたしますが、大きな視点から、こういう問題をバックグラウンドにしてこれから税制の議論をしていきたいと考え、今日、第1回目の基礎小でやったことをご披露したわけであります。
次の問題に行く前に、この種のものの考え方なりこのデータなりで何かご質問があれば、あるいはご意見があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ、出口さん。
〇出口特別委員
人口推計につきましては、年金とか税制だけでなくて、非常に重要な要素だと思うのですけれども、人口推計というのは、ここに出てますとおり、合計特殊出生率だけを仮定して、あと計算していくという方法をとってますので、具体的に合計特殊出生率がどういう要因で決まってくるかというようなことについてこれまで十分な分析が行われてなかったのではないかと。ここ20年ほど、人口問題研究所の推計よりも実態はずっと下回っているわけですよね。
できましたら、20年ほど、どの程度下回ったのかというような資料と、それからもう一つは、今でなくて結構ですけれども、合計特殊出生率にどういったものが政策として影響を与えるのかということを整理していただきたいのと、もう一つ、直観的にわかるという意味では、合計特殊出生率のほかに純再生産率も提示していただけたらと思ってます。意見でないですが。
〇石会長
実は、夏休み前でしたか、人口に関しましては、阿藤さん、人口問題研究所の所長に来ていただきまして、かなり突っ込んだ議論もご説明いただきました。まさに今おっしゃっていただきましたように、さまざまなところでさまざま残ってますので、専門家を呼んでその辺の具体的な、今おっしゃったような特殊出生比率の問題点等々ももう一回整理しつつ、いずれ年明けから本格的議論をしたいと思ってます。ありがとうございました。どうぞ、本間さん。
〇本間特別委員
当税制調査会の現在の委員の任期である3年間は三位一体改革と一致しているという部分があるわけでありまして、今後は補助金の整理縮減という問題を粛々と進めなければならないと思いますが、その裏側で、税源移譲に関する基本的な考え方に関して、税制調査会もやはりご審議をいただく場を作っていただいて、きちんとこの問題に対して準備をしていただけないかということです。コミュニティの部分のところでは出ておりますけれども、より分権的な問題との絡みにおいて、国、地方のあり方についてぜひご検討をしていただきたいと思います。
〇石会長
ちょっと説明が舌足らずでございましたが、こればかりやっているということではなくて、年明けましたら、年金の問題、あるいは三位一体の絡みでの国と地方の関係、当然、車の両輪の片方としてやるつもりでおりますので、それを支える意味で、またコミュニティの問題もこちらの基礎問題でやるという意味で、両方でやっていきたいと思いますので、折に触れてまたいろいろご助言いただきたいと思います。
ほかにどうぞ。
〇井戸委員
企業等のあり方についての基本的な考え方を十分に議論しておく必要があるのではないかと思うのですね。今の企業観、どういう企業観かというと、アメリカ的なコーポレートガバナンス的な考え方に支配され過ぎているのではないか。ある意味で、企業はだれのものかという議論をきっちりした上で、課税単位としての企業のあり方というのを税制調査会としても十分に押さえておいていただく必要があるのではないか。
つまり、今の支配をしているような考え方で考えていきますと、企業の永続性だとか、あるいは企業の社会的責任だとか、あるいは企業はなぜ存在しているのかというような面での配慮があまりにもなさ過ぎている傾向があるのではないかと、そんな思いがいたしますので、そのような意味で、企業のあり方というのを十分押さえておく必要があるのではないかという問題提起だけさせていただきます。
〇石会長
それは法人税の議論のときに当然出てくる話でありまして、この税調も古くて新しい問題として抱えておりますので、また折に触れましてそういう論点も整理していきたいと思います。ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
それでは、まだ今日は議題が山積みでございますから、少し先にいかせていただきます。第2の議題は、現在進行中の平成15年度税制改正におきまして、どういう形で今制度的に動いているか。つまり、研究開発・設備投資減税をしたり、あるいは相続税・贈与税の一体化を行ったり、あるいは金融証券投資に絡む税制も随分変更いたしました。そういう意味で、一体どういう形でその効果が浸透しているかという点も踏まえまして、最初にこの辺の調査をいたしましたので、ご説明いただきたいと思います。
引き続きまして、調査課長の佐藤さん、ご説明ください。
〇佐藤調査課長
引き続きまして、資料の総2-2をまずお手元にあけていただければと思います。この資料は、平成15年度税制改正につきまして、いわば効果といいますか、活用状況というものを実態調査したものでございます。
ご案内のとおり、15年度におきましては、経済活性化という観点から、研究開発減税などなど、相当大規模な包括的な改正をいたしまして、1兆8,000億円に及ぶ減税効果が出るものということを行ったわけですが、それがいわばplan、do、seeといいますか、そういう予算プロセスとの関連においてどういう形で受けとめられ、効果が足元、起こりつつあるかと。もちろん、施行されましたのがまだ半年ぐらい前でございますのでなかなか難しい面はございますけれども、やはりseeという観点からできる限りつかんでみようということで、夏から秋にかけて調査をしたものでございます。
枠の中に観点が書いてございまして、15年度税制改正において活性化に資する観点から講じられた主な改正事項ということにつきまして、今、426社プラス関係団体102先、約500の先につきまして、それぞれ個別に面接聞き取り調査をいたしたということで、フィールドワーク的な調査を行ったということでございます。
これにつきましては、9月の税調総会にもご報告申し上げたわけでございますが、今回、税調が一新されましたので、重なる部分はございますが、そのご報告等、またその後さまざま出てまいりました追加的なデータをいわば改訂という形で織り込んだものとしてご紹介させていただきたいと思います。
それでは1枚めくっていただきまして、左側に「改正事項」、真ん中に「評価」、それから右側に「主な意見」ということでございます。詳細は別とじになってございますので、それをご覧いただければと思いますが、説明の便宜、この3枚紙で簡単にかいつまんでご説明いたします。
「評価」の欄でございますけれども、A、B、Cと書いてございます。聞き取りましたときに評価をして、現に活用し、効果があると見ているがA。評価していて、今後活用、効果があると見ているというのがB。ネガティブがCということで便宜分類いたしまして、まとめたものでございます。
研究開発減税のところですが、A+Bで、ご覧いただきますと88%の評価をいただいております。内容は、ここに書いておりますように、厳しい経済環境のもとで、研究開発投資を幅広く、かつ継続的・安定的に行う後押しになるというようなことでございまして、現実に今年度の研究開発投資に減税効果を上積みしたり、来年度以降きちっと織り込む予定であるというお話もまま聞いたわけでございます。
「主な動き」というところ、これはデータでとれたものですが、経産省、あるいは日経新聞における調査におきましても、このような形でのプラスの数字が出てきておるわけでございます。
個別に聞きましても、やはり今回の措置が例えば一つのプロジェクトをいわば採択するだけの効果があるというようなお話。特に今回の措置につきましては恒久化措置だということもありまして、将来におけるキャッシュインというものを想定できるような現状であるという評価もございまして、相当、企業マインドの高揚にも寄与しているのではないかというお話が聞き取れたわけでございます。
それから次の設備投資減税でございますが、これもIT関連というふうにご覧いただければと思います。A+Bが86%ということで、それぞれ書いてございますが、IT投資の後押しになっているという評価がございます。
数字としてご覧いただきますと、「主な動き」のところ、パソコンの出荷台数、それから出荷の金額で見ましても、それぞれ、対前年同期に比べまして大きく伸びておりまして、8月に調べましたときよりもさらにここの数字が加速化してきているということがございます。今まで先送りされた部分がいわば需要ということで立ち上がってきたということが分析でございます。
そのほか新しい数字としまして、次の日本政策投資銀行のデータで、情報化投資額が、計画ベースですが、9.3%伸びるというデータがございます。
いずれにしても、設備投資が今伸びてまいっておりますが、こういう減税がそういうものの一役を買っているのではないだろうかという感触を得ているわけでございます。
次のページでございます。中小企業税制。ここはさまざまございますが、例えば少額の減価償却資産の全額損金算入の特例ということについて見ますと、情報化投資の積極化につながっているというようなことで、ここに見ていただくようなプラスの数字が出てきておるわけです。
ただ、先ほどの研究開発減税と同じく、ここも共通してですが、ネガティブな意見としましては、赤字企業にはメリットがないというお話もあったということをここに記させていただいております。
次に金融・証券の関係の改正でございます。ここは、本来ならば個々の個人というあたりにヒアリングすればよろしいわけですが、なかなか難しゅうございますので、証券会社、銀行などなどを中心に聞き取ったものをここに掲げてございます。A+Bが94%ということでございます。「主な意見」のところ、配当を受け取った個人投資家が減税の効果を実感する。投資マインドの好転というあたりがございまして、現実に特定口座が、「主な動き」のところですが、急速に増えてきておるということ。それから個人投資家のウェイトも、ここに掲げるように伸びてきているということで、そういうものとして効果が確認できるのではないだろうかということでございます。
ただ、「主な意見」のところですが、制度の変更が頻繁であることが依然として投資家の心理にマイナスの影響を与えているというお話とか、あるいはプロとかセミプロの方々の取引は相当活発化しているのだけれども、一般の人々についてはどこまでいっているかというあたりについてはもう少しPRが必要ではないだろうかというお話も聞けたわけでございます。
次のページでございます。相続税・贈与税の一体化措置ということで、大きな改正をいたしましたが、これにつきましても、A+Bが84%という数字をいただいております。前向きな評価はございますけれども、「主な動き」のところを数字で見ていただきますと、住宅取得資金の関連で、1件当たりの贈与金額が大きく伸び、550万円といういわば一つの壁があるわけですが、それを超えて700万近い贈与金額に1件当たり平均的になってきているとか、あるいはその頭数といいますか、人の割合も4割近くなってきていると、こういうふうなデータがございますので、住宅取得についての子どものサポートということで、親のニーズに合致してきているふうがあるということでございます。
それから3つ目の〇で、相談件数もかなり増えてきているということで、具体的な手ごたえがあるということも業界から調査で聞き取れております。特に20代の独身の女性がお母さん、お父さんを連れてセミナーに訪れるというケースもまま増えているというお話も聞き取れております。
ただ、具体的な案件が少ないために評価しにくいというお話もございました。特に相続税がかからない人にはこの制度は無関係だという思い込みといいますか、先入観があるのではないかと、こんなお話もございましたので、PRが必要であろうと課題として考えたところでございます。
そのほか、土地・住宅税制、登録免許税関係についても、ここに書いているような形での評価をいただいたということでございます。
まとめでございますが、下の欄でございます。かなり多くの企業、団体において関心が示されまして、その効果とか活用につきまして肯定的な受けとめ方をされているということで、経済活性化という政策目的といいますか、それとの関連で言いますと、かなり手ごたえが出てきているというようなまとめかなあと思いますし、8月、9月で調査いたしまして、もう一度今、若干追加的なデータを確認いたしましたけれども、そのデータにおきましても、さらに加速化してきているという感じも汲み取れるということでございます。
なお、PRということで、Q&Aとかパンフレットを作成いたしました。お手元にご参考までにお配りしておりますけれども、このようなパンフレットもお配りするということでございます。今回の調査で聞き取れました、そういうPR不足みたいなところのご意見をフィードバックさせるということでございます。引き続き広報に努めたいということでございます。
最後に、Bが結構多いということでございますので、引き続き効果がこれから期待できるのではないだろうかということで、その効果の出方というのも引き続きウォッチしていきたいと思っております。
それから続きまして、次の経済関係で総2-3という資料を見ていただければと思います。今の調査との絡みで、足元の経済の状況はどうかということを簡単にご説明したいと思います。
めくっていただきまして1ページでございますが、この説明におきましては、10月におきます政府の月例経済報告をご紹介することで紹介にかえさせていただければと思います。
ご覧いただきますと、10月の判断でございますが、「景気は、持ち直しに向けた動きが見られる」ということで、設備投資は増加、企業収益は改善ということで、企業部門は前向きな動きが出てきているという指摘でございます。輸出は持ち直し基調、生産は横ばい、個人消費はおおむね横ばいで推移、それから雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きが見られると、こういう集約になっておるわけです。
若干データで確認していただければということで、1枚めくっていただきますと、2ページ目の左側、GDPの推移を書いた四半期ベースの推移でございます。ご覧いただきますと、この黒い線、折れ線グラフが実質GDPの線でございまして、6四半期の連続プラスになっているということで、特に足元4~6では1%相当のプラスという形になっているということですし、細めの線、名目のGDPの伸び率ですが、これも2四半期連続のプラス成長という形になっておりまして、そういう意味では、かなり堅調に推移しているということがここで確認できるのではないだろうかということです。
ちなみに、今週14日には7~9月のQEが出ることになっておりますが、その動向を見守るということです。
それで、景況感ということで申し上げますと、右側の上でございます。GDPにあらわれるものの、ベースにありますいわゆる感覚でございますけれども、これが全規模・全産業におきまして傾向的に右に上がっているということで、先行きについても含めまして改善の基調にあると。それから特に大企業、製造業におきましてはむしろプラスになっているということに注目していただければと思います。
基本的には、この牽引力といいますのは、企業収益の回復とか設備投資の持ち直しといったようなものが裏づけとなってこういう景況感につながってきているということで、冒頭申し上げました景気判断の基調判断のバックデータがこういうところにあるということでございます。
それで、ちょっと戻っていただきまして1ページ目ですが、「先行きについては」ということで、「企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・為替レートや海外経済などの動向には留意する必要がある」ということで、先行きについては持ち直しの見込みがあるけれども、まさに円高懸念だとか、あるいはアメリカ経済が回復してきておりますが、それで一過性に終わらないかどうか、そのあたりも注意しながら見ていく必要があるということでございます。
来年度の経済見通しについては、先ほど申しましたように、7~9月のQEとか、そういうものが出た後、年末にかけて調整されていくという状況でございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
このご説明にご質問もあろうかと思いますが、次のご説明を受けた後、合わせてご質問を受けたいと思います。それでは、税収動向及び財政事情につきまして、国と地方と分けてご説明いただこうと思います。それでは、財務省の総務課長の古谷さんと、それから自治税務局の企画課長の岡崎さん、お二人から続けてご説明いただきます。よろしく。
〇古谷総務課長
それでは、総2-4「国の税収動向・財政事情について」という紙をお開きいただきたいと思います。目次を飛ばしていただきまして、1ページであります。最近の「一般会計税収の推移」を書いてございますが、15年度予算、一番右が41.8兆円と書いてございます。それより以前の14年までは決算でございますが、ご覧いただきますように、かなり急勾配の右下がりになっておるということでございます。
それから下に幾つか細かい数字が並んでおりますのは、税収の当初予算額と補正、それから決算の対比をした表でございまして、例えば右から2番目にC-Aという欄がございます。これが当初予算と決算との開差でございまして、近年、例えば13年、14年度を見ていただきますと、▲2兆7,000億、▲2兆9,000億ということで、ここ2年間は当初予算に対して3兆円ぐらい、税収が決算において減っております。13年9月11日の同時多発テロ後の企業収益の落ち込み等が影響しまして、税収の見積もりと結果の間にこれくらいの差が出たということでございます。
次のページをご覧いただきますと、2ページでございますが、もう少し長い推移を書いてございます。歳出総額と税収の推移がございます。近年になって歳出総額と税収の開差が広がっておりまして、一番下に数字だけ並べてございますが、歳出に占める税収の割合が、平成2年、86.8%、約9割を税収が賄っておりましたものが、15年度予算は51.1%まで落ちてきておるということでございます。
この結果が公債発行額につながっているわけでございますが、3ページが「公債残高の累増」の状況を書いてございます。全体で450兆円、公債残高がございまして、このうち特例公債と建設公債に分けてございますが、建設公債が219兆円、最近の公共投資予算の縮減に伴いまして建設公債は減り始めておりますが、特例公債が逐年著増してきているということでございます。
それから4ページにお進みいただきまして、これもよくご覧いただく資料でございますが、国債に加えまして長期債務を載せてございます。普通国債残高が450兆円、それに長期債務を入れて518兆円、地方にも199兆円の債務がございまして、合わせて686兆円ということで、GDP比が約140%となっておるということでございます。こういう状況でございますので、例えば減税等、国債増発の観測や報道が出ますと、すぐに国債市場が反応して長期金利が動くといった非常に過敏な状態になっているということでございます。
5ページに進んでいただきますと、その税収の推移のうち、主な税目、3税目についてプロットしてございます。上のほうに最近の大きな税制改革をイベント的に書いてございますが、平成元年に、消費税導入とともに抜本的税制改革で所得税や相続税の大きな減税をしてございます。平成6年から9年にかけましても、所得税の先行減税と消費税率の引上げがございました。それから平成10年以降の法人税の改正ということで、税率を30%まで下げるということがございました。
また、所得税を中心に、いわゆる小渕減税、定率減税がございまして、それが今も継続しておると。それに加えて、小泉政権のもとで15年度税制改正で先行減税になっておるということでございまして、バブル後の経済状況と、こういった度重なる減税もございまして、所得税は、ピーク時、26.7兆円あったものが、現在、13.8兆円まで減ってきております。法人税も、19兆円ございましたものが9.1兆円ということで、消費税よりも税収が下回る状況になっておるということでございます。
それから6ページでございますが、同じような資料で恐縮でございますが、税収の推移と歳出に占める割合をプロットしてございます。平成12年から色分けして上にちょこっと載っておりますのは、これは12年からさかのぼって10年ほど前に、金利が高いときに定額郵便貯金に集中的に預けられたものの満期が来た関係で、郵貯にかかる利子税収がこのときたくさん出ました。それが乗っかって50兆、48兆が維持できたのですけれども、10年、11年の減税の結果、税収の実力はそれを外した46~47兆円に下がっておりまして、その後、同時多発テロや15年度の先行減税の結果、現在は41兆円そこそこの実力に税収がなっておるということでございます。
7ページでございます。これは歳出のほうでございますけれども、今年6月の骨太2003におきまして、「16年度経済財政運営と予算のあり方」ということで、方針が政府として決まっております。「中期的な経済財政運営の考え方」としましては、そこにございますように、国と地方を合わせたプライマリーバランスを、2010年代初頭に黒字化することを目指すということになっておりまして、この大きな中期的な方針のもとに、2にございます「16年度予算における基本的な考え方」が掲げられてございまして、平成16年度予算においても昨年度同様の歳出改革路線を堅持する、また国債発行額についても極力抑制する、政府の大きさを極力抑制することを目指すといったことになってございます。
こういった方針で、この8月初めに、8ページにございますが、概算要求に当たっての基本的な方針というのが閣議了解されておりまして、それを抜粋したものでございますが、3行目から一般会計歳出及び一般歳出について実質的に平成15年度の水準以下に抑制することを目標とするということで、歳出全般にわたる徹底的な見直しを行うということで概算要求基準が決められております。
2枚進んでいただいて、10ページに「平成16年度一般歳出の概算要求基準の考え方」というのが絵になっております。例えば公共投資関係費については3%削減して要求をしろとか、義務的経費につきましても厳しく抑制する、裁量的経費については、科学技術振興費を除いて▲2%といったようなルールが決められておりまして、これに基づいて要求されたのが1つ前のページの9ページでございます。
時間の関係で簡単にご覧いただきますが、15年度の予算額が一般会計全体で81兆7,000億となっておりますのに対して、概算要求額が86兆4,000億ということで、4兆6,000億円ほど増えております。この年末に向けまして、歳出サイドで、この86兆という要求額をどこまで削り込めるかというのが課題になっておるということでございます。
最後に11ページ、税収の動向について簡単にお話をしたいと思います。3つ箱を立ててございますが、真ん中の15年度をご覧いただきますと、先ほど見ていただきましたように、当初予算41.8兆円ということでございます。この41.8兆円を見積もりましたのが昨年の暮れの予算編成時でございまして、その際、14年度補正で、左のほうにございますが、44.3兆円というのを土台に15年度の当初予算を見込みました。
結果的に、14年度は決算で4,000億減りまして、43.8兆円となっております。この14年度決算43.8兆円から今年の当初予算を見ますと、2兆円少ない。割合にして95.3%ということでございます。
上のほうを見ていただくと、現在、15年度の税収は9月末までの税収が入ってきておりまして、この9月末の税収の昨年の9月末に対する対比が97.5ということでございまして、下の95.3よりは少しいい数字になっております。
ただ、9月末では、進捗割合30.4と書いてございますが、まだ全体の税収の3割しか入っていないわけでございますが、この進捗割合も過去5年間の平均とほぼ等しいということでございまして、そういう意味では、現在、税収は巡航速度で入ってきております。
先ほど経済情勢について説明がございましたが、GDPだけここに書いてございますけれども、経済は政府経済見通しの想定以上に好調に推移しておるということで、比較的足元では税収の見通しは明るいわけでございますが、その箱の中に、減税、繰越欠損金等、幾つか書いてございます。やや懸念すべき要因も同時にございまして、先ほどの説明にもございましたが、研究開発減税やIT減税、かなり企業に使われているようでございまして、経済にはいい方向なのですが、この減税の活用によって税収は当初見込んだ以上に減る可能性がありはしないかと思っております。
それから繰越欠損金と書いてございますが、現在、各年の所得の倍ぐらいの繰越欠損金が企業にはございまして、企業収益の増加がありましても、この過去からの繰越欠損金に食われて、税収増にそのままつながらないといった要素もございます。
それから想定された以上に円高が進んでおりまして、これが年度後半に向けて企業収益の下方修正要因になる可能性がございます。
さらに雇用でございますが、夏のボーナスはかなりよかったようでありますけれども、冬のボーナスを見極める必要もございます。さらに、先ほどの資料でも説明がございましたように、パート、アルバイトといった非正規雇用がかなり増えておりまして、きちんと給与を源泉徴収できているかどうか、ちょっと変化が起きている面もございます。
こういった懸念材料も今後考慮いたしまして、年末の予算編成時までに、16年度、足元の税収の見込みを的確にとらえていきたいと思っております。
さらに、16年度の税収をどう見るかということでございますが、財務省の後年度影響試算では、名目成長率0.5を前提に、41.8と機械的な計算をしておりますが、16年度の政府経済見通しがどういった経済を描くか、さらにこれから議論いただきます16年度改正での増減税を的確に織り込んでいくということで、今後年末に向けて見積もりを進めていきたいと思っております。
ただ、先ほどから申し上げておりますように、歳出に占める税収の割合が辛うじて半分を超えるといった状況でございますので、16年度の税制改正に当たりましては、財政規律の維持という点に従来以上に配慮する必要があるのではないかと思っておりまして、その点も考慮してご議論いただければと思います。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
では引き続いて、岡崎さんのほうから地方関係のご報告を受けます。
〇岡崎企画課長
資料は「地方の税収動向・財政事情」という総2-5というのをご覧いただきたいと思います。
最初に1ページでございますが、地方税収、最近の推移でございます。35兆を超えているときもありますが、この特に14年度、15年度でかなりガタガタと減っているということであります。
下の表をご覧いただきますと、特に下から2段目の14年度をご覧いただきますと、決算額で、見通し32.9兆円。地方の場合に、集計その他ありますのでまだ確定しておりませんが、14年度、32.9兆円というぐらいの額でございまして、前年に対して2兆800億円の減ということでございます。それから国の予算に該当します地方財政計画で見込んだ額からも1兆3,000億円ほど落ち込んだというのが14年度の実績でございます。
次の2ページでございますが、上段、1番は今申し上げた14年度、32兆9,000億円でございますが、15年度、今年度の状況を申し上げます。2番、下のほうでございますが、地方財政計画では32兆1,700億円というのを見込んだわけでありますが、現在、9月末で調定の状況が、右から2番目になりますが、前年対比97.1%ぐらいでございます。
地方財政計画は、実は14年度の決算見込み額からは97.7%、2.3%減で組んでおりますので、それとほぼ同じような減りになっておりまして、大体このまま推移いたしますと、先ほど古谷課長がお話しになったようないろいろな要素がありますので確定的に申し上げられませんが、地方財政計画の額程度、あるいは若干下回る程度というようなことが予想されます。
ちなみに、この1番のほうにありますように、13年度、35兆円でありましたので、2年間で32兆円まで落ちてくるということでございます。
3ページは主要税目を含めた税収推移、グラフにしましたが、省略いたします。
4ページをご覧いただきます。ここから先は財政状況のお話でございます。昨今の地方財政の状況を端的に申し上げますと、この1にありますように、大幅な財源不足ということと極めて高い公債依存度と言えると思います。財源不足と申しますのは、要するに標準的な財政需要といいますか、仕事に必要な額に対して収入額を見積もるわけでありますけれども、地方財政計画を策定する際に収支が不足するという額が通常分で、15年度ですけれども、13兆4,400億円となっておりまして、さらに、先ほどお話しあった恒久的減税の減収というのがこのほかに3兆円、穴埋めしなければいけない。その他、今年の改正の先行減税による影響が6,800億円ということで、合わせて17.4兆円ほどの穴を埋めなければ地方財政計画を組めないという状況になっております。
下の点線の中にもございますが、平成11年度以降はほとんど10兆円を超えるような財源不足をやりくりしながら財政計画を作ってきているということでございます。
5ページをご覧いただきます。もう一つ大きな問題としまして、借入金残高が急増しておりまして、地方の分だけで、平成15年度末で199兆円。大臣も約200兆円とおっしゃいましたが、大変多額の借入金残高を抱えているということであります。
以上、マクロですけれども、IIIにありますように、地方財政は地方団体、3,000の団体の集合でございますけれども、個々の団体を見ましても非常にいろんな指標が悪くなっている団体が増えております。一番下にあるのは全国平均でありますから、平均的にも相当、いわゆる経常収支比率、公債費負担比率、その他の指標が悪化してきております。この10年ほどで大変悪化しておりまして、したがいまして、個別の団体ではこうした平均をはるかに上回るような財政状況の悪化を見せている団体がかなりたくさん出てきているという状況でございます。
それから6ページをお願いいたします。ただいま申し上げたことをちょっと見やすくしたわけでありますが、財源不足、いわゆる収入が見込まれる、歳出に足りないという額でありますけれども、ここにございますように、特に平成11年度以降、10兆円を超える額になっておりまして、これがなかなか減らない。それから13年度以降は特に赤字地方債を出しておりますので、穴埋めに使う地方債も相当発行が増えております。
そういうこともありまして、最後の7ページでございますが、借入金残高が急増いたしております。下のグラフでご覧いただきますと、平成3年度、70兆円の残高でありましたが、これが15年度には199兆円、2.8倍に増えております。130兆円ほど増えているということでありまして、この部分が特に先ほど申し上げた財源不足等を解消するために減税補てん債、減収補てん債、あるいは財源対策債、臨時財政対策債、いわゆる赤字地方債といったものを増発してきた結果として、これだけの借金を今抱えておるということでございます。
先ほど国税でもございましたけれども、こういう状況の中でございますので、当然、16年度改正に当たりましても、我々としては地方財政のこういう実力を頭に入れまして、財政規律の維持というようなことを念頭に検討をお願いいたしたいと思っております。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。景気はやや上向いてきたけれども、その恩恵がどうも財政まで及んでないというあたりで、国税も地方税もかなり減収といいますか、なかなか出てこないということのようであります。
それでは、今お三方から説明を受けましたが、15年度の税制の効果、それから税収、あるいは財政事情の動向につきまして、少し時間をとって質問なりご意見を賜りたいと思いますが、いかがでしょうか。ございますか。大分時間も押してますから、なければ先にいきたいのですが。
じゃ上野さん、どうぞ。
〇上野特別委員
ただいま、財政状況の説明があったわけですけれども、私申し上げたいのは、やはり国債の発行が野放図に続くということになると、国債マーケット等に与える影響というのは極めて心配なものがあるということを申し上げたいと思います。現在でも、国債等の増発が続いていくだろうということはマーケットは認識いたしておりまして、そういう意味では、すぐ国債発行の増加がとまるということがなくても、急にどうこうということはないというふうには思っております。
ただ、やはりプライマリーバランスの回復というようなことがいずれ図られなければならんというようなことは、皆さん、マーケットでは頭に置いているところでございまして、そういう常識的なことが実現しないということになった場合には非常に市場は不安感を覚えるだろうと私は見ております。
先ほどの話で、国債の増発によりまして、一般会計の歳出に占める割合が半分をわずかに超えるというような状況だということでございますけれども、これが仮に半分を割ってくるというようなことになりますと、先ほど言ったように、すぐにどうこうということはないだろうとは思いますが、やはりマーケットとすれば非常にセンシティブな動きになってくる可能性がある。私は、やはり半分というのは財政規律を持っていく上で一つのポイントになるのではないのかなあと、こういうふうに見ております。
〇石会長
マーケットの動向、ありがとうございました。不安が顕在してくるというのはまだ数年あるのですか。つまり、プライマリーバランスというのは2010年代初頭と言ってますから、まだ7~8年あるのですよね。しかし、そこまでいかないうちに顕在化してくるのでしょうね、きっと。
〇上野特別委員
その一つの可能性は、やはり経済が回復いたしてまいりますと、民間金融との競合の問題が出てまいりまして、現在でも株がちょっとよくなってくると金利は上がってくる、国債の値段が下がると、こういうような状況がちらちらと出るわけですね。これは日銀あたりは低金利政策を継続するのだという強い意思を表明しておられるから当面おさまっているという状況はございますけれども、そういう経済全体の動きもこの国債マーケットへの影響というものを持っているということでございます。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、宮島さん。
〇宮島特別委員
今、国税と地方税の税収の変動についてご説明いただいて、おおむね見当はつくのですが、要するに税収の変動というのは、1つは成長率なり物価なり、そういう自動的に動いていく分と、それから裁量的な減税政策、税制改正の影響で出てくる部分があって、その辺のところはおそらく幾つか試算などはされているのではないかと思いますけれども、できれば少しそういうことが知りたいなあと。
といいますのは、一方で財政収支につきましては、今例えば構造収支と循環収支をある程度、多少は分けて考えて、ですから、例えばこれからもし成長率がややもとに戻るというようなときに、例えば自然増収でどういう形で財政収支のほうの影響が出てくるのか、どういうような裁量的な歳出の削減なりあるいは税制改正をやらないとプライマリーバランスの回復に動いていかないのかといったような、少し見当をできればつけたいというか、知りたいということがございますので、もしそういうことで少し何らかの資料なり示していただけるなら、あるいはご議論いただけるならば大変ありがたいと思っております。
〇石会長
どうでしょうか、今の2つの要素に分けて、つまり、制度で減税幅か、景気が悪くて減税かなんていう、何か昔やられていたような記憶があるけれども、今やってますか。
〇古谷総務課長
5ページに過去の税制改正と税収の主な税目の推移を書いてございますけれども、それぞれの改革の改正増減収という制度効果はその時々で計算してはございます。やや時間がたっておりますので、その改正の影響をどういうふうにその時々の経済に織り込むかというのをちょっと検討してみる必要があると思いますが、可能かどうか検討してみたいと思います。
〇石会長
よろしくお願いします。かつて、我々若いころはこの種の計算はいっぱいやったのですが、もう我々も年取ったから、だんだんやる気力も能力もなくなってきたから、事務局にお願いしようかと思いますが。どうぞ、河野さん。
〇河野特別委員
今日から始まるのは年度減税の話ですよね。えらい短い期間に急速にまとめるということなのですけれども、項目を見てみると、各方面から来ている要請、一番新聞づらによく出てくるのは、金額がばかでかいから、個人住宅建設のためのローン減税というのがあって、これをどうするかというのはひょっとすれば量的には最大のテーマになるかもしれんと思っているのですよ。いずれにしても、ほかにも、大小取り混ぜてみれば、テーブルの上に上がってくるのは全部減税論ですよ。全部減税論。
年金関係で、今度公明党が大勝したから、彼らの言っているところでは定率減税を直すのだとかいう話がいろいろあって、これは増税でいいんですわな。しかし、それは年末までに高度な政治折衝がある話だから、この席で議論をどの程度できるかどうかわからない。
この席で議論できるのはおそらく全部減税の話。これは、それぞれ減税を要求するサイドから見ればそれぞれ理屈があって、これをやれば、いずれ遠からずプラスに景気に影響して収入が増えるだとか、いろいろなことがあるわけです。それはそれでいいのですけれども、いずれにしても、やはり財政規律論、ちょっと上野さんもおっしゃっていたけれども、どうしてもここは超えてはならない一線というのはどこかにあるはずなのですよね。
特に一般歳出に対する税収の割合、ひょっとすれば5割を切るかもしれないよというのがあって、これを減税要求それぞれ全部足していって甘めでオーケーしてしまったら、割ってしまったということになると、これはやはり税調として超えてはいけない一線を超えることになるかもしれない。そういうことをやりたくない。そのためにはどういうふうに減税要求を合理的に査定するかという話がね。どうせあまり愉快な話ではないのですよ。だけれども、それをやらざるを得ないと思うのですね。それでも、短い時間ではあるけれども、かえって、ああでもないこうでもない議論をやらないで、ストレートにどんどん議論を詰めれば、月末までに大方定性的な議論は全部できると思いますけどね。
いずれにしても、今度税収が歳出の半分を割るかもしれんというふうな危機的な状況というのが、毎度毎度税調総会を開くたびに出る議論ではあるけれども、今度いよいよえらいところに来たな、断崖絶壁だなという気がするのですよ。これはやはり共通の問題意識として持たないと、減税要求サイドは、そんなことは一応頭に置くけれども、まあ片隅のほうであって、もっぱら自分の要求の合理性を唱えるのが普通ですから。いつの世の中でも。しかし、今度はそれに対して相当警戒的にものを見ないといけないという気がするのですわ。
よく、小泉内閣で構造改革をやると痛みが走るとか走らんとかいう議論があるでしょう。財政のこれを見ていると、国民は恐らく幻想の世の中にいると思うのですね。もう借金でやっているわけだから。国民は普通の人ではないわけだ、要するに。それで、政府に対する要請とか幾らでも出てくる。これは減税もそうだし、ほかの歳出要求も全部そうですけどね。我々は幻想の世界に住んでいるのだということについて、毎度これも言われている話で全然新しくないのだけれども、確認する必要があるのではないかと思うのですよ。
上野さんの話を聞いていれば、いずれ遠からず、これだけ過剰に歳入を公債に依存することの痛みが各方面に出てくるような世の中になるかもしれないよということを警告されているわけだ。これはしかしなかなか、イソップ物語みたいなもので、前から言っているけれども、一向にそういうことが出てこない。まあ当分大丈夫かというような話でしょう。一般論で言えばね。しかし、それはもうそろそろ、いろんな条件、変化があって危ういのではないかという気がしないでもないのだね。いずれにしても、半分を切るようなことを我々はやってはならんのではないかということを申し上げたい。
〇石会長
いつも河野さんから警告を発せられておりますが、何かひとしお寒さと同様にしみてきた感じがしますね、今回は(笑)。そういう意味で、今年の年度改正につきましては、14日に住宅ローン減税の話とか、あるいは金融に絡む要望とか、いろいろ減税がもろにかぶるような項目を取り上げたいと思いますが、またそのときご議論いただきたいと思います。よろしゅうございますか、次にいって。
じゃ村上さん、どうぞ。村上さんと井上さんで切りたいと思います。
〇村上委員
今までに出ている話の関連ですが、やはりプライマリーバランスの回復、それを10年代初頭にということがうたい文句になってますが、だれがどうやってやるのかというのは何も出てないわけで、これは別に税だけでなくて、歳出が主役だと思いますけれども、税の立場からもやはり、先ほどの河野さん、上野さんのお話のように、税収の割合が半分以下になるようなこと、もうそこまで来てますから、5カ年計画でも7カ年計画でも、そういうものをまず税の立場から計画を立てると。そしてその税の項目ごとに大体の役割、基幹税ならどのぐらいというような役割を大体想定して、その上で、個別の減税、あるいは増税、そういうものを当てはめていくという考え方が必要なのではないかなと思います。
〇井上委員
先ほど非常に悲観的なお話があったわけですけれども、しかし、日本の経済の活力というものをどういうふうにして高めていくかということはやはり非常に大事なことだろうと思うのですよね。その活力を上げるために減税をするということが時には必要ではないのかということなわけですけれども、例えば中小企業の問題にしてもしかりですけれども、中小企業、3,000万人の従業員を抱えて、約70%の雇用を確保しているわけですよね。ところが、その中小企業というのはちっともよくなってない。今大企業は確かに25%も経常益を上げてきているということは事実なわけですけれども、そういう底辺をいかにして上げていくかということに対しての税の検討がなされてないのではないかと思うわけです。
留保金課税の問題にしてもそうですけれども、確かに減税をしたと、そのキャッシュフローの改善に役立っているというお話なわけですけれども、自己資本比率の50%以上にはやはり留保金課税をかけている。何でそれをかけなければいけないのかということなわけですよね。やはり、今現状が非常に社会環境が変わってきた。銀行、金融庁の監査にしても非常に厳しくなった。そうしたら、自己資本比率というものは上げていかなければいかん。そうすれば、金利も安く、融資も受けられる。そして例えば債券だって発行もできるような状態になって、ますます企業はよくなっていく。そういうように中小企業を育てるような税というものをもっと見据えて考えていかなければいけないのではないか。
事業承継の問題でもしかりだと思うのですけれども、株券、株に対しても税をとる。こんなの、担保にもならない紙っぺらですよ。そういうものに何で税をかけなければいけないのか。そうではなくて、農村だって、これは20年継続したら税はとらないということもあります。また、法人の場合、企業を分割した場合には、その譲った財産を無税で贈れるわけですよね。そういうような仕組みだってある。にもかかわらず、何で個人の中小企業のそういう承継に対して、事業承継という非常に大事な、その株に対して税をとらなければいけないのかという点を非常に私としては疑問に思っているのですが、その辺について、会長、お聞かせいただきたいと。
〇石会長
それはもう戦後50年来やっている話なのですよ。昨日今日の話ではなくてね。事業承継につきましては、また別途時間を作ってご議論を賜りたいと思いますし、それはまた一つのご意見が出ましたけれども、また反対からの、当然のこと反論はあるし、それから相続が出ると、お立場のような意見は絶えず出てきておりますので、初めて聞いた方はそうかなと思われるかもしれませんが、そうでないなあと思う人もいっぱいいるわけで(笑)、いずれこの議論はやりたいと思います。今日は各論に入って議論というよりは大きな流れ。ですから、大きな流れを1つご提示いただいたという形でテイクノートしておきたいと思っております。
そういうものを踏まえまして、ちょっと個別に入っていきたいのですが、よろしゅうございますね。第3の要するに主要な税につきまして一わたりしていくという作業がこれから残っておりまして、今日は年金を中心といたしました個人所得課税、それから法人税、消費税、この3つにつきまして、これから残った時間で大急ぎで論点を整理していきたいと考えております。しかるべきところで休憩もとりたいと考えております。
それでは、まだ2時間になっておりませんので、最初に年金課税を中心とした個人所得課税につきまして、税制一課長の永長さんと市町村税課長の吉崎さん、それからまた調査課長の佐藤さん、おのおのご説明いただくという機会を設けたいと思います。
それでは、永長さんからどうぞ。
〇永長税制第一課長
お手元資料、総2-6という資料でございます。「個人所得課税(年金課税等)」。
目次を繰っていただきまして、1ページ、「所得税収、負担割合の推移」ということで、これは税収の推移、先ほどご説明いたしました。
次のページ、この税収の対NI比、租税負担率の内訳の国際比較でございます。一番黒く塗りつぶされているところが個人所得課税。日本6.1、アメリカ15.2という数字が挙がっております。
2ページお繰りいただきまして、4ページでございます。ここに簡単なポンチ絵的に所得税計算の仕組み、イメージということで整理させていただいております。ざっとご覧いただきますと、「収入の種類」という一番左側のコラム、それに応じて、すなわち、収入の種類ごとに差し引きをまずいたします。「必要経費等」となっておりますが、これが収入の種類ごとに若干の負担調整をしているケースがあるということで、代表的な例としては給与所得控除、その下に出てくる公的年金等控除、さらには退職所得控除と、必要経費以外の控除がこの第2段階で組み込まれておる。
こういう差し引きをした後、「所得分類」ということで給与所得となっているわけですが、それを損益通算した上で、「諸控除等」ということで控除が行われます。その上で適用税率がかけられて、出た税額、そこから「税額控除」ということで、先ほどお話がございました住宅ローン控除を含め、税額控除が行われる。現在、この出た数字、税額控除をしたその数字に定率減税が平成11年分所得から行われていると、このようになっております。
次のページをお繰りいただきますと、個人所得課税の負担構造の基本的な視点と申しますか、ポンチ絵にしたものでございます。一番左のところ、「特定の収入」、それから「その他の収入」となっておりますが、年金とか給与収入、退職金、先ほど申し上げた収入の種類ごとの負担調整が行われる。さらに、そもそも課税所得にならない、非課税扱いされているものが幾つかある。
それを全部差し引きした後足し上げて人的控除を行うということになるわけですが、この人的控除につきまして、さまざまな割り増し加算措置が行われている。配特、これについては平成16年分から上乗せ部分が廃止されます。そのほか特定扶養控除等、まだ課題が残されている。さまざまな割り増し加算措置の簡素集約化という課題がございます。
こういったものを含めまして、特定の収入ごとに適用される特別の控除や非課税措置を見直して、課税ベースにまずは取り込んだ上で、基礎控除、扶養控除といった人的控除、こういったもので諸事情への配慮を行う。これが基本的な見直しのあり方だと中期答申等で書かれております。
はしょりまして申しわけございません。8ページに飛びます。ここから高齢者関係の議論になります。「世帯主年齢階級別にみた1世帯当たり・世帯人員1人当たり平均所得金額」ということで、当然、壮年層が一番、世帯で見た平均所得は大きいわけでございますが、1人当たり、パーキャピタで平均所得を出した場合には、一番薄い棒グラフ、比較的そろっておると。お年寄りであっても遜色がないという数字でございます。
次の9ページでございます。「高齢者世帯の所得階層別にみた世帯分布」ということで、100万円未満から1,000万円以上というところで、この白抜きでつないであるグラフが高齢者世帯でございます。やはり当然、低所得者層に一つの山があるということでございますが、総じて言えば、ばらつきが大きいと。かなりの所得をお持ちの高齢者世帯もあるということでございます。
次のページでございます。年金を受給しておられる受給年金額の分布でございます。モデル年金、40年加入というのが大体200万余、203万ぐらいになるのですが、それを真ん中にして2こぶになっておるという姿が見てとれます。
それから次の11ページでございます。消費支出、これは家計調査からとった数字でございますが、食料、住宅等々それぞれの支出、これは月額で24万6,000円ぐらい。モデル年金額、先ほど申しました、40年間加入で言いますと、奥様の基礎年金も含めまして月額で23万6,000円出る。そのほかの収入や資産の取り崩しでこの差が埋まっているということかと思われます。
次のページでございます。とかく高齢者世帯というと一律で論じられがちでございますが、右の棒グラフを見ていただきますと、その他の世帯というのが先に出てしまってあれですが、雇用者と自営業者以外のいわゆる年金生活者のご家庭の収入の様子でございます。いわゆる年金収入がかなりの部分、ほとんどを占める。しかし、全体の8%、全体の12.5%を占める、ほかに所得のある世帯におきましてはそれなりの収入を確保しておられるという姿でございます。
これに対して、年金課税の現状でございます。13ページ。これも何回かご覧いただいているポンチ絵かと思われますが、まず年金については掛金、拠出時におきまして青天井の控除が行われ、非課税になっております。給付時、いわゆる支給が行われる際、公的年金等控除、老年者控除、こういったものが普通の場合に合わせてなるものですから、結果的には出口においても課税が行われていないということが指摘されております。
次のページでございます。「公的年金等控除(現行制度)」をグラフにしたものでございます。現在、公的年金等控除については、定額控除、それに定率控除を足して、かつ最低保障額というものがセットされております。特に65歳以上になりますと定額控除、それから最低保障額、これがそれぞれ加算されるということで、先ほど簡単に申しました老年者控除というのが65歳以上に適用になるものですから、年齢が65歳になった途端に税負担が下がるという、年齢だけを基準にした措置が取り入れられておるわけでございます。
次の15ページ、「老齢年金の場合」ということで、上に色が塗ってありますのがモデル年金で受けている数字。夫が203万円、奥さんが80万円弱。それに対して下に、現行制度で課税最低限がこのようになっておるということでございます。
16ページ、17ページ、何も普通の年金ばかりではございません。いろいろな年金についてそれぞれの税制上の対応が行われておると。
18ページ、「主要国における公的年金税制」ということでございますが、出口、入口、両方とも実質非課税になっているという国は諸外国においてはないと。
また、19ページ、日本で言う老年者控除についての比較がございますが、例えば所得制限等が日本の場合1,000万円ですが、諸外国の場合、そんなには高くない。ないしは、日本の場合、50万円の上乗せをしておりますが、この控除額もそんなに大きくないというのが比較になっております。
以上、いろいろはしょりましたが、20ページでございます。これが本年6月に中期答申としてお出しいただいた年金課税についてのご指摘でございます。20ページの下の[1]のところをご覧いただきたいと思います。[1]の下線部の2行目でございますが、「低所得者の取扱いについて十分配慮した上で、給付段階での優遇措置の適正化に取り組むべきである」。それから「担税力のある高齢者に現役世代と同じように、能力に応じた負担を適切に求めていくことは、高齢者間のみならず世代間の公平にも資する」と、このようになっております。
次の21ページ。一番最後のパラグラフ、恐縮でございます。下線を引いてございませんが、「現下の年金制度改革に関しては」ということで、例の負担割合の引上げの問題、若干フレーズがございます。「給付水準をはじめとする年金制度のあり方を総合的に検討し、将来の年金制度体系における公費の位置付けと関連付けて検討」せいと、こういうご指摘をいただいております。この年金改革についての現況、これは後ほど調査課長からご説明申し上げます。
以上でございます。
〇石会長
では引き続きまして地方のほう、吉崎さん、お願いします。
〇吉崎市町村税課長
続きまして、個人住民税関係でございます。基本的な考え方は所得税と同じでございますので、特徴的なところだけご説明させていただきたいと存じます。
資料は同じ冊子の23ページでございます。個人住民税は所得に応じて課税される所得割と、それから一定の所得のある方に等しく定額を負担いただく均等割とがございますけれども、まず所得割でございます。
所得割は所得税と類似の構造になっておりますが、1点相違のところは、その地域において受益している行政サービスの対価を広く薄く負担いただくということで異なっております。具体的には各種の控除などにつきまして限定的になっており、この結果、課税最低限も所得税より低くなってございます。今後、年金課税等を見直す際にも、所得税より低い水準で設定すべきであるというご指摘をいただいているところでございます。
1ページおめくりいただきまして24ページでございます。これは個人住民税の均等割の資料でございますが、均等割は個人住民税固有の制度でございます。昭和25年から現在までこの制度は継続しておりますが、まず、人口5万、50万で線を引きまして、3段階別に市町村民税としてスタートいたしております。
このように3段階に分けましたのは、当時の、例えば道路の舗装率など、大都市のほうが進んでおりました関係上、より高いサービスを受けられるのが大都市であるということで、このような税率格差が設けられたものでございます。以後、昭和29年には道府県民税でも均等割の制度が導入され、現在に至っております。
ただ、経済成長に伴いまして所得割のほうが大きくウェイトを高めた結果、現在におきましては、個人住民税の中で均等割の占めるウェイトというのは2%程度ということになっております。
具体的にどのような税率になっているかということでございますけれども、現在は、都道府県のところが1,000円、それから市町村のところが規模別に2,000~3,000円ということになっておりまして、合わせますと、大体平均年間3,500円の負担ということになっております。
地域の会費として見た場合、年間3,500円、月に直しますと300円に満たないわけでございますけれども、この額が妥当かどうかというところが均等割をめぐる一つの課題になってございます。
また、2つ目の課題といたしましては、昭和25年当時における大都市、小規模町村とのインフラ整備の格差などにつきましては大きく是正されてきております。また、逆に最近では小規模町村のほうが住民1人当たりの行政サービスコストがかかるといったような問題もあり、このような人口規模別の格差がふさわしいのかどうかというのが2つ目の課題でございます。
3つ目の課題が24ページの下のほうに書いてございますけれども、一定の所得のある方には均等割をかけるわけでございますけれども、夫が均等割を払う場合、生計同一の妻については、たとえどれだけ収入がある場合でも、均等割を非課税にするということになっております。この制度について、女性の社会進出等が進んだ段階でふさわしいかというのが3つ目の問題でございます。
25ページは、均等割が税率、昭和30年から8倍になりましたが、各種の指標はもっと伸びているということで、説明は省略させていただきます。
26ページは、現在においては、人口規模別の公共財の整備状況について格差が小さくなってきているということの資料でございます。
27ページが、先ほどご説明しました生計同一の妻に対する非課税措置の説明でございますが、昭和25年段階では所得割を納める生計同一の妻というのは54万人しかおられませんでしたが、現在ではパートなどで100万円以上納める方が834万人にもなっているということで、女性の社会進出が非常に進んでいるということでございます。
もともと均等割のほうが地域の会費とも言うべきもので、最低限も低く設定してございまして、納税義務者は多いのがあるべき姿でありますけれども、この非課税措置の結果、この27ページの右下に書いてございますように、所得割のほうがむしろ多くなっているという逆転現象が生じているというのが現状でございます。
以上のような点を踏まえまして、28ページでございますけれども、今年の6月にいただいた税調の答申におきましても、均等割につきましては、税率は低い水準にとどまっている。人口段階に応じた税率区分の解消を含めて水準を引き上げる必要がある。また、生計同一の妻に対する非課税措置については廃止する必要がある、というご指摘をいただいているところでございます。
個人住民税関係は以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
では佐藤さん、お願いします。
〇佐藤調査課長
資料の総2-7という資料をおあけいただきたいと思います。現在行われております年金制度改革の議論の状況につきまして、ご説明したいと思います。
まず、目次を繰っていただきまして1ページ目に「年金制度の概要」というのがございます。すでにご案内のことと思いますが、若干頭の整理ということでかいつまんでポイントを申し上げますが、まず、この枠にありますように、現在の年金制度、1階、2階、3階というふうになっておりまして、1階が基礎年金、2階がその上乗せとしての報酬比例年金としての厚生年金、さらに上乗せとしての厚生年金基金等となっておりまして、図に書いておる仕組みになっているわけです。
それで、まず国民年金の1号被保険者、サラリーマン以外の部分につきましては2,207万という方々がかかわっておるわけですが、保険料、この枠の中でございますが、月額1万3,300円ということでございます。
それから2号被保険者、サラリーマンの世界でございますが、これが3,676万人というのがかかわりまして、保険料は、総報酬額に比例しまして、労使折半でトータル13.58%という保険料がかかっているということでございます。
それから第3号被保険者、これはその被扶養配偶者ということでございますが、1,133万ということでございますが、保険料は本人は負担を要しないという姿になっておるわけです。
給付の水準でございますけれども、1号被保険者につきましては40年加入で満額ということで、下に書いてございますけれども、基礎年金が月額6万6,000円余ということでございます。それからサラリーマン等々につきましては、厚生年金+基礎年金、この場合はサラリーマン夫婦で専業主婦世帯ということでございますので、月額23万6,000円弱という形になってます。
この厚生年金に係るところの給付の考え方といたしましては、現役世代におきます平均的な片働き世帯の平均賃金につきまして一定割合、いわゆる所得代替率という概念を使っておりますが、それが59%を目途とするというモデル設計になっているということでございます。
それからもう一つ、国民年金、この基礎年金のところですが、図の中ではシャドウをかけてございますが、その中の3分の1は国庫から負担されておりまして、15年度予算ベースでは5兆8,000億という数字になっておるということでございます。
年金制度につきましては、そういう意味では保険料、給付、それから国庫負担というのはいわば三点セットということで一体になった構成になっているということが重要でございます。
それで、年金につきましては少なくとも5年に1回の財政再計算が必要だということで、16年がその年に当たるということで、今現在ご議論されているわけでありますけれども、実は年金に関しましては、先ほど冒頭のご報告で社会経済情勢が随分変化しているというお話を申し上げましたが、その中で少子高齢化が随分進んでいるということで、年金制度における持続可能な制度をどういうふうに構成していくかということが問題になっているという状況でございます。
それでは、最近の政府部内におきます年金制度改革に関する諸議論というものを資料に基づきましてご説明しますが、まず3ページをあけていただきたいと思います。これは平成15年6月に閣議決定いたしました、俗に骨太の方針2003というものでございます。ここに社会保障制度改革ということが記述されておりまして、議論のスタート台といいますか、土俵はこれにあるということでございます。
若干言葉を見ていただきますと、まず最初の「社会保障制度改革」というところで、「世代間・世代内の公平を図り、持続可能で信頼できる社会保障制度の改革」、それから「改革のポイント」の(2)というところですが、「年金制度は、現行制度のままでは、若年世代の負担が過重なものとなり、世代間のバランスを失することになってしまうことから、給付と負担の改革を行う」という方向感が出ております。
それから1枚繰っていただきまして、4ページ、ここにも年金制度改革ということでずらっと項目が並んでおりますが、一に指摘いたしますと、まず頭のヘッドラインのところですが、「頻繁に制度改正を繰り返す必要のない恒久的な改革とする」。それから[1]ですが、「現行の給付と負担の水準では制度は維持できない」。それから[2]ですが、「保険料は引き上げざるを得ないが、将来の最終的な保険料については、国民負担率の上昇抑制と、将来の現役世代の過重な負担の回避という視点を重視し、決定する」。
それから[3]「基礎年金の国庫負担については、平成12年金改正法附則の規定を踏まえ対応する」。これは、ちょっと飛んで恐縮でございますが、21ページを見ていただきますと、ここに附則というのが書いてございます。平成12年に改正された法律の中に書かれているものでございまして、「基礎年金については」ということで記述されておりますが、ポイントは、「給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し」、すなわち、給付と負担の関係をきちっと広く議論するということ。それから安定した財源を確保するということを前提として、国庫負担の、現在3分の1でございますが、それを2分の1に引き上げるというような附則がここにあるということで、それを踏まえて対応するという指摘がなされたということでございます。
それから、恐縮でございますが戻っていただきまして、4ページの[4]でございますが、「将来における負担水準を固定して、人口や経済の状況の変化に応じて給付を自動的に調整する仕組みの導入」。
こういうことを提言されておるわけでございまして、ほかにいろいろ切り口は書いてございますが、今のところがポイントでございます。
次の5ページを見ていただきますが、この閣議決定をベースといたしまして、9月に厚生労働省のほうから、いわゆる坂口試案ということで年金改革のモデル的なものが案として出されたわけでございます。ポイントだけ申し上げますと、まず[1]のところですが、公的年金の性格論ですが、高齢者の生活のため不可欠なものだと、こういう位置づけでございまして、先ほど申しましたが、現役世代の所得の一定割合を保障する、いわゆる所得代替率を確保するという考え方をいわば基本に置いた上での制度設計というふうにしていくという考え方でございます。
それから[4]、「国庫負担割合の引上げ」と書いてございますが、この2分の1の引上げについては、その道筋をつけると。その実現には多額の安定した財源の確保が必要となることから、その財源のあり方も含め、十分議論を尽くしていくと、こういうことでございます。
次の6ページ、それでは具体的にどういう仕組みにするのかという提言でございますが、上の2のところ、「保険料固定方式」と書いてございます。最終的な保険料水準を固定し、少子化等の社会経済情勢の変動に応じて給付水準を自動的に調整する仕組みにするということでございます。
それでは具体的な数字はどうかというので、3のところ、真ん中あたりですが、厚生年金の保険料は、年収の20%を超えない水準を基本とする。それから国民年金の保険料は、月額1万8,000円台までにとどめる。今1万3,300円、13.58%に対してこういう数字を掲げているということでございます。
それから2つ目の〇、将来の給付水準は、平均的な片働き世帯の所得代替率で見て、おおむね50%から50%台の半ばを確保すると。こういうイメージの試算でございます。
それで、8ページまでいっていただきますと、そういうことを前提に、若干いろいろ細かいところはございますが、行われた試算結果というのが示されております。試算結果で、最終保険料率を20%とする。
それから基準ケースと書いてます。この基準ケースといいますのは、国庫負担の割合を2分の1とするということと、それから合計特殊出生率につきましては中位推計値を使う。先ほど冒頭私申し上げました1.39という数字を前提といたした基準ケースということで試算をしたものでございます。
2通りございまして、積立金水準を維持するケース、それからそれを取り崩すケースということで2つに分かれてございますが、維持するケースでは、この所得代替率、要するに今のスキームの中でどの程度の給付水準が最終的にもたらされるかということにつきましては、52.8%、54.5%とそれぞれ出ておりますし、もう一つ、「少子化改善」と書いてありますが、これはもう少し子どもがたくさん産まれるという前提で、これだと、先ほど見ていただいた資料ですと、1.52という数字になります。それを前提として計算いたしますと、それぞれ55.6、56.6という数字になります。
ちなみに、もう一つ厚生労働省は出しておりまして、少子化がさらに進行してしまうという、いわゆる低位推計に当たる部分、ちょっとここに書いてございませんが、口頭で申し上げますと、その場合は出生率が1.10を前提でございますが、47.8%、それと51.2%という推計を示しているということでございます。
その下の〇でございますが、ただ、この試案における考え方としては、給付水準を調整するといっても、一定の下限が必要であろうということで、50%を下回らないことが望ましいということを指摘し、6の「持続的で安定した制度を目指して」というところでございますが、[1]の最終の行、将来の給付水準が50%台半ばで維持できることを目指したいということを指摘されてます。
それから[2]、国民年金保険料の給付の例の空洞化の議論ですが、これについては徹底した収納対策に取り組むと、こういうふうなお話が指摘されております。
そのほか、3号被保険者の制度見直し云々ということについては、次のページなどにメンションされておるという状況でございます。
次、10ページでございます。先ほどのものは厚生労働省の坂口試案でございますが、この10ページの資料は、9月に出されました塩川前大臣の財政制度等審議会への提出資料ということで、財務省の側の考え方が示されたものでございます。
幾つか言葉だけ拾っていただきますと、1行目でございますが、我が国の公的年金制度は現行のままでは維持できないと。それから半ばですが、恒久的な制度改正を構築したいということ。
1については、将来にわたり持続可能な制度を構築する。2ですが、年金の受益者も負担者も国民であることを踏まえ、初めに給付水準例えば、現役世代の所得の一定割合、先ほど申しました所得代替率ですが、それありきではなくて、国民が保険料と税金を合わせて年金のために負担できる水準にあわせて給付を設定するということで、「負担できる水準」ということがキーワードでございます。
3、年金の役割につきましては、「長寿に対するセーフティネットと位置づけ、現役世代の所得の一定割合の保障という基準はとらない」という考え方を示しております。
それから11ページ、5番目でございますが、世代間の給付と負担の格差を縮小させる方向を強調している。
それから7でございますが、「税金で賄う国庫負担については、投入すべき対象、その役割、意義を明確にする」。また、「国庫負担割合の2分の1への引上げ問題については、具体的な安定財源が確保されることが検討の大前提である」。
こういうことで、定性的ではございますけれども、厚生労働省とは少し違った角度からの頭の整理を提示したということでございます。
あとはその関係資料でございますが、19ページまで飛んでいただきます。19ページは、先ほどの坂口試案、それから財務省からの提出資料などなどをきっかけといたしまして行われた議論の最中に、経済財政諮問会議でいろいろ年金についての審議が行われておりますけれども、その際に出された資料でございまして、ちょっと見ていただきますと、ヘッドラインのところですが、「持続可能な制度を構築して、年金への信頼を回復する」と、そういう目的がもう一度再確認されておるということ。
それから1のところですが、「最終的な給付と負担の水準」というところで、「年金の水準を決定するに当たっては、給付、保険料、税(国庫負担)の3つの要素があり、これらは同時決定すべきものである。しかし、高齢化が急速に進む我が国では、考え方としては持続可能な負担のあり方を重視し、その範囲内で給付水準を検討することが必要」だと。それから世代間の公平性が重視されるべきだということで、その4つ目のポツで、経済社会の活力の維持というような観点から、下に見るような点も合わせて検討すべきだというような指摘がなされておりまして、次20ページでございますが、2でございますが、最終的な給付と負担の水準に達するまでのスピードについてもできるだけ早期着手ということを指摘されておるということでございます。
実はこの3つはポイントになるペーパーということで提示させていただきましたが、そのほか、政府部内におきましてはさまざまな形で現在議論が行われ、調整がされておるということでございますが、今後年末に向けての議論が本格化していくということでございます。
今見ていただいたように、将来世代が支え得る持続可能な制度を構築するということにおいては共通のステージがあるのではないかと思われますけれども、具体的な仕組みという問題についてはこれから議論をさらに進めていくということでございますし、与党との関係というのも出てくるのではないかと思われます。現状はそういうことでございます。
〇石会長
ありがとうございました。
なんか盛りだくさんな情報提供をいただきまして、頭がやや混乱してきました。ここで休みましょう。2時間ほどたちましたので。今3時7、8分でございますから、10分間ほど休んで、3時17、18分ごろお戻りください。ちょっと休憩いたしましょう。
(暫時休憩)
〇石会長
再開いたしたいと思います。4時には終わりたいと思ってますので、ご協力いただきたいと思います。
あと法人税と消費税が残っているのですが、その前に、今所得税につきましてご説明いただいたことに関しまして、少し質問なり、あるいはご意見があればと思います。どうぞ、林さん。
〇林特別委員
年金課税につきましては、いわゆる現役世代と退職世代の世代間の不公平の問題というのが議論されるわけですけれども、今日冒頭ご説明いただきました社会経済構造の変化の中で、親から住宅資金を提供してもらうという比率が随分上がっているわけですね。今の、生活が比較的裕福な高齢者の生活様式を見ますと、かなりの部分が子どもであったり孫にそういう形をトランスファーされているわけですね。ということになりますと、年金課税の問題というのはただ単に世代間の問題だけではなくて、同一世代内の不公平という問題を、これも贈与税の制度改正とも絡んで出てくるのではないかという気がするわけです。
所得税を考えるときに、やはり公平性といいますか、不公平感を払拭するといったようなことが非常に重要な時代になってきているのではないかと思うのですね。ですから、そういう同一世代内での不公平という点にもやはり留意しなければいけないのではないか。これが1点でございます。
それからもう一点は、先ほど質問すればよかったのかもしれませんが、いわゆる財政収支のバランスを改善するということが税制改革の非常に大きな一つのポイントになっているといったときに、税収の将来予測ですね。これがどの程度精度の高いものが行われているのかということが、私、非常に重要なのではないかという気がします。
特に所得税の場合に、これだけ年齢構成が高齢化してまいりますと、今の制度のままでは、従来の弾性値を使った伸ばし方では非常に誤差が生まれてきて、つまり、年金課税をしなければどんどん税収のロスになっていくわけですね。ですから、こういう年齢構成の変化というのが一体税収にどのように影響するのかということをきちっと将来予測をしておかないと、ミスリーディングする可能性があるのではないか。
そういう意味で、少し、ひょっとするとやっておられるかもしれませんが、とりわけ所得課税に関してはこの年齢構成の変化が税収に大きく影響するということを考えたときに、それが将来的にどうなるのだろうかといったようなシミュレーションもやる必要があるのではないかという、ちょっとこれは希望でございます。
〇石会長
前段のほうは夏前の税調でも大分、高齢者の高所得者、あるいは高齢者の年金生活の中でも差があって、高いほうは少し負担してもらってもいいではないかなんていうことを大分申し上げましたので、今ご意見としてまた新しく、できたらご考慮いただきたいと思います。
それから後段につきましてはまだ新しい視点でございますから、何か事務局のほうでご説明いただくことありますか。これは一課長じゃないの? 何かあれば。なければいいよ。
〇永長税制第一課長
残念ながら、現在ございません。
〇石会長
じゃ宿題だなあ。まあご検討ください。折を見まして、また何か成果を出していただければと思います。どうぞ、河野さん。
〇河野特別委員
年金の制度、安定恒久的なものにするという議論は、今度の衆議院総選挙で、よくもまあ、新聞だって、論争点の3分の1ぐらいはこれに全部集中した解説なり意見の紹介なり全部やったのですよね。それはものすごく教育効果があったと僕は思っているのですわ。我々想像した以上にあったと思っているのですよ。今、選挙終わって、きのうのNHKのテレビの討論会なんかずうっと見ていると、流れは、来年の参議院選挙をまた政治家が意図していると明らかに思われる節があるのです。
何が言いたいかというと、給付水準をどう直すかと。年次的に。ということについて大枠のあれが書いてあるけれども、そこのところの議論はほとんど手つかず。そこは甘いポピュリズムで全部塗ったくってやって、財源どうするかというところについて、とにかく消費税の話から、定率減税の話から、国家公務員の給与を削減する話から、公共事業論から、よくもまあこれだけ出たものだと思うほど全部出ているのですよね。特に税調はかねてから年金課税についてやるべきだと言っているねと。そのとおりなのですね。大議論やった結果、それはその点で正しいのですよ。
ただ問題は、今のままで税調は歳出削減とか給付水準についてはほとんど議論は、注文は出せるけれども、ここは決定権何もないから、ひたすらここにツケが回ってきて、税金何とかせいよと、君ら、ということになる可能性は大いにあるのですね。それは、我々、ここに答申に書いてあるとおり、年金課税についてはもう厳しい見方をしていることも堂々と書いてあるから、今さらそんなこと改めて議論するまでもないことだと思うのですけれども、ただ、それが当たり前だと。給付水準の手直しについてはみんな腰が引けているという状態のまま年末を迎えていくということはえらい危険極まりない話だなという気がしているのですよ。
ここに専門の方いらっしゃるし、いろんな、もっともっと詳しいご意見を持っていらっしゃると思うのですけどね。とにかく年金課税は税調答申だから、君ら黙ってやれと、給付水準の話はまた別のところで検討するから、ああだこうだ言うなというのは困るのですね。とにかく給付水準についてもっと明快な線を出さないと、それは国家公務員の給与は削減しても構わないと思うけれども、いやいや、本当の話、高いからね。相対的にですよ。だけれども、それはいかにもその場限りの発想ではないかという気がするのですよね。
ただ、そういうメッセージ、どう出すかということは、石さんの責任にかかっているわけだ。会長が全体の方向性づけについて、我々のところに税金とるだけのことについてツケだけ回して、給付水準についてもの言えないという状態では、こんな、片落ちの議論ないと思うのですね。それはきっちりと言っておいてもらいたいと思う。世間に対して。
〇石会長
それは夏前から、そういうご意見もあり、記者レクであるとか何か折を見て、ほかの審議会でやるべきことだから税調はやらないというのではなくて、相互乗り入れでいいではないかということも言っておりまして、どこの場でどう具体的なことを申し上げるかなのですが、ただ、要望だと少しパンチないでしょうね。やってくれと言うだけですからね。我々として少し組み込んだ形の何か提言みたいことができればだと思いますけれども、ただ、それもまた難しいのですが、いずれにしても、今おっしゃったように、年度末にかけて、あるいは参議院選にかけて等々、いろいろ事態は動くと思いますけれども、聖域なくいろいろな議論をするという意味では、年金給付の削減問題もこの中で議題にしてもいいと思っているのですよ。さっきの人口の問題も含めてね。いずれ具体的に、年明けになりましたら、年金課税、総括する中でその問題も取り上げざるを得ないと思ってます。
具体的にもの申すのは、厚労省のほう、それから財制審のほうでしょう。あとは経済財政諮問会議。本間さんもいるし、宮島さんもいらっしゃいますし、いろいろ関係者もいますから、その辺で少し意見をまとめて、もの申す体制を整えることは可能だと思います。やりましょう、それは。ほかにいかがですか。
どうぞ。
〇菊池委員
さっきの5ページ、急に言ってもあれですが、法人税も個人の所得税もこの10年ちょっとで絶対額で半分になっている。その間、所得は半分に減ったわけでもないということですよね。それを考えると、法人も含めた所得税が増えているときというのは非常に日本が活力あるときであると。それで税収が減っているときは活力がないときであると。それがどっち先かというのは、僕は税金を増やせば活力が出てくるのではないかなと思っておるのですが。余計な減税とかなんとかやるから、働かなくても自動的に収入が増えるわけで、税金とれば、しゃあない、働くかというので活力が出てくるという構造が必ずしも100%間違いではないと思いまして、ここまで減ってくると、何でもいいから増税すれば日本の活力は出ると僕は思ってます。
それは総論なのですが、手順というか何というか、どうなるかわからないですが、所得控除とか税額控除とか、これの見直しというのは年度改正でもう一回やるつもりはあるのでしょうかということと、あと均等割、ちょっとなんか忘れてしまったのですが、これはだれが決めるのかと。この場で、例えば今、年率になっているのを月率にするというようなことを勝手に決めればいいのかどうかということ。
あともう一つ、基礎年金の2分の1の話で、もう一回考えてみたのですが、安定した税源というのはだれがそういうふうに認定するのかということですね。財源として最も安定しているのは国債発行でありまして、間違いなく、出すといえば出すわけですから。国債発行というのが2分の1の問題で安定した財源と認定できないのかどうか。してしまえばそれまでのことであり、そうするとものすごくものが見えてくるというか、あんたら、借金でもらっているんだよというのが見えてくるから、嫌味としてすごくいいのではないかなあと。
それを例えば将来の消費税を財源にするみたいにすると、そんなもの、色目がついているわけで、三位一体も、あらゆるところで、消費税を財源にすれば世の中解決するけれども、消費税は上げないよというわけわからない議論がまかり通っているというのがあるので、安定した財源というのをここの税調で定義してもいいなという気はするのですけれども。
〇石会長
税調には税調多士済々のメンバーがおりますから、極めてユニークな意見もいっぱい出てきますが、それも一つで、いつも聞かせていただきまして。いや、冗談ではなくてね。そういう発想もおそらく必要な局面もあろうかと思います。
だれがどこで決めるかという話ですが、税調はあくまでプランを出し企画をするわけでありまして、我々が決めたからといって、すぐさまケチがつくわけでない。ただ、最終的には国会で税法が通ったという段階でしょうが、我々としてはやはり意見をちゃんとまとめてもの申すという形で、菊池さんのご意見がみんなの支持を得て全体の意見になれば、またそれは言ってもいいだろうしね。それはこれからの審議の過程で出てくると思います。
それから税額控除とか所得控除云々の細かい点の所得税の改革についていろいろ我々も書き込みましたけれども、ただ、年末にかけての、来年の税制改革にかけての具体的な点につきましてはどこまでできるか。住宅ローン減税の問題とか等々ありますけれども、それはその過程の中でどれだけできるか。本格的に少し腰を据えてやるという問題ですと年明けで、所得税の構造改革という視点でやればいいと思ってます。
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。井戸さんと、あと水野さん、それから宮島さんね。じゃ、すみません、3つぐらいで区切らせていただきます。どうぞ、井戸さん。
〇井戸委員
これは私の経験でご参考にということでご披露しておきたいのでありますが、若い人と議論いたしますと、若い人たちは非常に年金制度について不安感を持ってます。今自分たちが掛け始めて、本当に自分たちが受給できるのだろうか。破産するのではないか。だから、将来に対して投資をする、あるいは何らかのアクティブな行動を起こすということに対して非常に消極的に考えがちたがっている、こういう実態が非常に強くあります。
ですからこそ、今の将来不安がかなりいろいろな分野で叫ばれているときに、年金の仕掛けをきちっと今提示するということは非常に大切なことなのではないか。そういう中で、年金課税の議論は実を言うと後から議論されるべき話なのですけれども、それが先にいっているということについて、どういうふうに我々として考えるのかなあということも踏まえておく必要があるのではないかという意味で、問題点を1つ提起させていただきました。
もう一つは徴収です。なぜ20%も国民年金の徴収率が落ちたか、はっきりしているのです。これは徴収方法を社会保険庁が自分でとるという形に変えたからなのですね。従前は国民年金の徴収は市町村を通じてとっていたわけです。これは長い地方事務官制度の整理との絡みがあったわけですが、徴収のあり方ということも、年金のあり方を考えるときには必ず議論しておかなければいけない。例えば、今、地方税の中で国保料にかえて国保税という税制を選択できる仕掛けがありますけれども、そういう仕掛けまで含めて十分議論しておく必要があるのではないかと年金については思っております。
それから菊池さんから、月割でも均等割とっていいのではないかみたいなお話がありましたが、これは額と徴収コストの絡みで議論していただいたらいいことではないかと思いますが、均等割については今あまりにも水準が低過ぎるのではないかというのが私どもの認識でもありますことをつけ加えさせていただきます。
〇石会長
現場からのさまざまな情報、ありがとうございました。
それでは、水野さん、どうぞ。
〇水野委員
私も年金について若干の感想を述べたいのですが、先ほどご説明いただいた税制調査会の中の答申ですけれども、年金課税の7ページに出ている、ちょっと見ますと、やはり社会保障制度との関連にも留意しながらと、こうなっておりますが、先ほど調査課長のほうのご説明で、年金制度、どのぐらい年金の掛金として徴収するか、これをはっきりさせたいと書いてありますが、いわゆる租税の立場で社会保険料控除といったようなものも全部、所得控除ひとつ合わせてもう少し簡素にした場合に、年金の掛金が控除できなくなるとか、さらに運用の段階でとまっておりますが、給付の段階で受け取ると。
これはもともと裕福な人から受け取ればいい発想なのですけれども、いずれにしても、この給付の段階の課税をどうするかと。いわゆる年金制度の取り立てと、それから給付、非常に密接に重なっているので、一体この2つをどういうふうにして議論するのかなというような、ちょっと疑問といいますか、厚労省のほうで毎月1万8,000円と決めましたと言ったところが、税金のほうでは控除を認めないで、その分、実質的に増税になってしまったとか、そういうような形になるのか、やはりどこかで調整をするのかですね。そのあたり、やはり検討していったほうがよろしいのではないかと思っております。
〇石会長
まさにそのとおりなのですが、そういうところをどこでやるかということはちょっと頭痛いのですが、これはもう少し具体的ないろいろな詰め方をしまして考えなければいけませんね。わかりました。
では宮島さん、どうぞ。
〇宮島特別委員
申しわけありません。それではごく簡単に。
1つは、6月に出たここの答申ですね。私はそこで相当議論というのは尽くされていると思っておりまして、その理由づけも私はそのとおりだと思っておりますので、それが1つと、もう一つは、先ほどご説明の中で、公的年金所得と、それから退職所得を非常に違う所得だというような形で図になっておりますけれども、確かに国民年金や厚生年金はそうですが、日本のいわゆる企業年金と呼ばれるものはもうほとんど選択で一時金とることができますので、一時金でとると退職所得、年金でとると年金というようになって、適用は両方とも公的年金が実は適用されて、ただ選択を一時金か年金でとるかによって違ってしまう。ですから、年金課税だけですと、一時金のほうにして、租税回避問題が必ず起こってくるという話がありますので、やや厄介な話ですけれども、それでもちょっと気をつけていただきたいと思います。
〇石会長
退職金課税についても従来からえらく問題意識を持ってますので、おっしゃる点を踏まえましてね。それから前段でおっしゃった9月に出した報告というのは、厚労省から出た宮島さんの小委員会で出したことですか。
〇宮島特別委員
この6月に出した……。
〇石会長
そんなに書き込んであったかなあ。わかりました。それはそれでもう一回精査いたしまして、年明けに議論するときに少しまとめた基本的な理念等々も整理したいと思います。
〇宮島特別委員
ちょっと誤解を招かないように申し上げますと、私が言ったのは、6月に出た「少子・高齢社会における税制のあり方」という、あそこの中での年金課税のあり方についての議論は、私はもうあれで尽くされていると。
〇石会長
そうですね。基本的な方向としては、大筋としてはあれでということですね。細かい制度設計とかなんとかいうことではないということですね。
〇宮島特別委員
はい。
〇石会長
わかりました。よろしゅうございますか。あと2つ残っているのですが、とりあえず法人税から片づけていきましょう。
それでは、次の大きな固まりでございますが、法人課税につきまして、二課長の道盛さんと、それから都道府県税課長の株丹さんからおのおの、国税、地方税につきましてご説明いただきたいと思います。では、道盛さん、どうぞ。
〇道盛税制第二課長
それでは、お手元の資料2-8に基づきましてご説明させていただきます。まず、法人税全体の状況につきまして、1ページ以下の資料を用いましてご説明させていただきます。
1ページ、「法人税収の推移」、先ほどからお話が出ておりますが、平成元年の19兆円から、今年度予算では9.1兆円と半分を割り込む水準にまで落ち込んできております。大きな原因、主に2つございまして、1つは、やはり経済状況のもと所得の状況が悪化しているということで、2ページをお開きいただきますと、欠損法人の割合が7割前後でここのところ推移している、高くなっている状況がございます。
これは単に所得を圧縮するというだけではなくて、3ページをお開きいただきますと、繰越欠損金として大きな影響を税収に及ぼしているというのが現在の状況でございます。3ページの図の下半分を見ていただきますと、ストックベースでの繰越欠損金の推移を示してございまして、従来10兆円台だったものがバブル崩壊とともに急拡大いたしまして、80兆、90兆といったレベルにまで膨らんできております。
一方、フローの所得を見てみますと、上半分の濃い部分がいわゆる課税所得の推移でございまして、平成2年の50.4兆円という所得をピークに、一時期、平成7年、31.6兆円まで落ち込んだ後、平成13年には39.6兆円まで回復してきているというマクロの流れがございます。
ただ、これはもう一つ要因がございまして、実は上のところにちょっと薄い四角がございます。13年のところでは10.1兆というのがございますが、これは繰越欠損金があるために、繰越控除でいわば所得を相殺している部分でございます。これを足し合わせますと約50兆円レベルのもともとの所得があったと考えることもできるわけでございまして、このレベル、ずうっと左のほうに見ていただきますと、まさにバブルのころにかなり近づいてきていると見ることもできます。そうした中で、繰越欠損金が非常に巨額にたまっているがために、毎年毎年の所得を大きく圧縮している状況になり、これが法人税収に大きな影響を及ぼしているというのが現在の状況でございます。
4ページ目以下でございますが、ここにございますとおり、もう一つの要因は大幅な法人課税の軽減を図ってきたということがございます。税率の推移、ここにございますが、ピーク時の43.3から、現在は30%まで下がってきております。およそ3分の2まで税率水準が下がってきております。
それからまた一方、8ページをお開きいただきますと、この税率の下げに加えまして、昨年度の税制改正過程におきまして大幅な法人税の軽減を行いました。これは一方では、個人所得課税につきまして配偶者特別控除を廃止するとか、酒、たばこについて税負担増をお願いするとか、結果的に税負担の増加となる措置をお願いする一方で、多年度税収中立という考え方のもとに、法人税につきましては大幅な軽減を図ったというのが昨年の措置でございました。
それぞれの特徴をここに簡単に<制度のポイント>としてまとめてございますが、8ページの研究開発減税、それから9ページの設備投資減税、いずれも近年にない大幅な、かなり思い切った減税措置を講じておりますし、中小企業税制におきましても、9ページにございますが、同族会社の留保金制度――これは本来、よく我が国では法人成りと言いまして、法人になったほうが税制上も得ではないかといったような一般的な認識がある中で、その調整を図るために留保金制度というのが設けられておりますが、これを自己資本の低い中小企業についてはその課税を停止するといった形で大幅な軽減措置を図っております。
これらの合計が下にございますが、1兆4,000億円、平年度ベース。もともとの法人税の税収自体がもう9兆円レベルでございますから、相当思い切った軽減措置が今年度からとられているということでございます。
それから、来年度の税制改正におきまして話題になりそうな事項を幾つかご紹介申し上げます。12ページをお開きいただきますと、第1点が連結納税制度、これは平成14年、2年前に導入されまして、制度の趣旨と申しますと、この企業グループが一体的な経営を行っているという状況のもとで、それの実態に即した課税を図るという考え方のもとに、ここの真ん中に丸がございますが、いわば親会社と子会社が100%の資本関係でつながっている場合に、この親会社と子会社の損と、それから赤字と黒字を通算することによって、親会社がまとめて最後の残りの所得を申告して納税していただくという制度でございます。したがいまして、企業グループ全体として、企業一つ一つの会社を見ると、仮に所得、黒字があったとしても、それが通算されますので、相当程度の減税効果を持つ、こういった、一体的なグループ経営を行っている企業にとっての減税効果を持つという制度でございます。
13ページを見ていただきますと、その申請状況、利用状況でございますけれども、ここにございますとおり、昨年の今ごろは、下のほうの[1]にございますけれども、申請状況は全部で164グループ。これが去年の今ごろの数字でございましたが、その後、[2]、[3]と着実に増えてきてございまして、今は網かけの部分の384グループ、会社数としては、親、子会社合計で5,096社が適用対象となっているという状況にございまして、順調にこの申請数は増加してきているという様子を見てとることができます。
これがどの程度実際上の効果を持っているかということについての分析を14ページにお載せしております。すでに14年度の納税を済まされましたのは15年3月31日決算法人でございますので、これについて分析してみますと、1にございますが、134のグループ、親会社が申告されまして、3にございますが、申告所得の合計が325億円。それから5にございますが、申告欠損金額の合計が2兆7,128億円ということで、ほとんどの企業が赤字申告されておられます。
これをもうちょっと分析してみますと、濃いところから下の内書きを見ていただきますと、「添付された個別帰属額等届出の状況」ということで、実は親会社、子会社それぞれの黒字、赤字を合わせて届け出ていただいております。これを見てみますと、黒字会社が1,600、赤字会社が860ほどございまして、この黒字会社だけの所得を拾い上げてみますと、9,287億円の所得がもともとはございました。
したがいまして、もしも従来の制度と同じように会社ごとに納税されておられたとすれば、この9,287億円が申告されていたわけでございますが、それがグループ内の赤字と通算されることによって、3にございます325億円に圧縮されたというのが連結納税の初年度の申告状況でございます。
したがいまして、この9,287億円から325億円を引き算いたしました約8,900億円余りというのが所得が相殺により減った分でございます。これに端的に30%の法人税率を掛けますと、約9,000億円掛ける30%の税率でございますから、約2,700億円の全体としての減税効果が生じていると初年度において分析することが可能と思われます。
15ページをお開きいただきますと、こちらは2年前の連結納税制度を創設いたしましたときに、連結納税制度全体として、これはそもそも企業減税を意図するものではなくて、一体的なグループ経営という実態にあわせてきちんと減るべき分は減らしてほしいということでございましたので、法人税の中で増収措置を組み合わせまして、全体として税収中立という形で導入されてございます。
連結納税の中でいろいろ仕組みを入れましたので、(1)の減収に(2)の増収を加えた、今ある連結納税制度の総減収額というのが真ん中よりちょっと下、差引というところにございますが、初年度で3,280億円の減収というのが制度設計時の想定でございます。
私が今申し上げましたように、初年度の実際の状況を今2,700億円程度と見込むことができるということで、おおむねかなり近い額の実際の減収が生じている。その後、今の初年度の申告状況というのは134のグループの状況で、現在それは380まで増えてきておりますから、相当程度有効に税負担の軽減に企業の方はお役立てになっていらっしゃる状況が見てとれるのではないかと思います。
したがいまして、連結付加税があるから連結納税をなかなか皆さん選ばないといったような議論が昨年ございましたけれども、こうやって効果を見る限りはかなりの効果を及ぼしているのではないかということが見てとれると思っております。
ただ、いずれにせよ、16ページにございますが、この連結付加税の仕組みでございますが、16ページの(1)の[1]にございますが、2年間の措置として付加的に2%を上乗せするということで、今年が期限になりまして、議論の対象になる年でございます。
それからもう一つの論点が17ページ以下でございますが、不良債権処理と税制に関するものでございます。昨年度も、竹中大臣が承認されました金融再生プログラムから始まりまして、いわゆる三点セットという要望がございまして、昨年度は見送られましたが、今年度も引き続き要望が出されております。
三点セットの中身でございますが、1点目がいわゆる無税償却の範囲を拡大してほしい、有税償却、有税で償却している部分があるので、これを拡大してほしいということ。
第2点が欠損金の繰戻還付。これは、今年赤字が生じたといたしますと、1年間繰戻還付を受ける制度がもともとございまして、去年の黒字をいわば相殺する形で、去年払った税金を還付してもらえるという制度がございますが、これの凍結を解除するとともに、繰戻し期間を16年――16年というのは、ちょうどバブルのころ払った税金がすべて含まれることになりますが、このころまでに払った税金をすべて還付してほしいというのが第2点目の要望でございます。
3点目の要望が、金融機関について、欠損金の繰越控除期間を5年から10年に延長するということで、これは今年赤字が生じた場合に、将来黒字になったときの黒字を消すことができる。これは繰越控除のせいでございますが、これを5年から10年に延長する。
こういう3つの要望でございまして、いずれも金融機関についてということで、銀行等についての特例的な措置を講じてほしいという要望になっているわけでございます。
この点につきましては、20ページをお開きいただきますと、本年6月の中期答申におきまして、税制調査会の前のメンバーの方々に基本的な考え方を整理していただいております。20ページにございますが、アンダーラインの部分だけ目で追っていただきますと、「金融行政、企業会計を含めた全体の対応策の一環として、税制面での対応も検討すべきである」。これはもともと竹中プログラムというのがありまして、繰延税金資産の企業会計上、あるいは金融行政上の扱いをどうするのか、金融機関の自己資本の扱いをどうするのかといった議論にあわせる形でこの話が出てきたことに伴いまして、全体の対応策の一環として検討すべきであるとしていただいた上で、21ページにございますが、無税償却については「金融機関に対する特例措置ではなく、全ての企業に平等に適用することを前提に検討する必要がある」ということで、その下のほうにございますが、「不良債権処理の実態を踏まえ、税務会計の基本を維持しつつ税務基準と企業会計の取扱いの差異が小さくなるよう必要な見直しを図っていくべきである」という方向性をお示しいただいております。
「ただし」というところがございまして、多くの金融機関が赤字である現下の状況において非常に難しいことを書いてございますが、かえって悪影響を及ぼしかねないことも考えられるので、金融機関に与える影響などを踏まえつつ、具体化を図る必要がある。こういう注釈がついておりますが、この点は後ほど簡単にご説明させていただきます。
それから22ページをお開きいただきますと、欠損金の繰戻還付、16年分の税金を還付するようにという要望につきましては、「こうした措置は実質的には公的資金の供与と変わりはない」ということで、多額の税収減が生じるほか、金融機関に限って16年分の税金を返してくれということは、「他の納税者との公平性を著しく欠くなど税制上も極めて問題が大きい」。
これは、もちろん金融機関もバブルのころはたくさん税金を払っておられましたが、そういう意味では、今苦しんでおられるゼネコンはもちろんのこと、小売業、あるいは不動産業、あるいはほとんどすべての産業が、バブルのころまでさかのぼれば多額の税金を払っていただいて、その中でもいろんな企業が破綻している状況のもとで、銀行だけ本当に税金を返すという発想がいいかどうかというご指摘をいただいております。
したがって、その下のアンダーラインでございますが、「税金の還付という方法ではなく、公的資金の投入の是非やその条件について正面から議論して結論を出すべき課題である」というような方向性をいただいております。
それから3番目の欠損金の繰越控除につきましては、現下の極めて厳しい財政状況の下で、金融機関の特例措置ということは問題があるので、一般的にこの欠損金の繰越期間の延長をするようなことが産業構造の改革や不良債権処理の加速という政策課題に真に有効な措置となるかどうか、慎重に検討すべきである。ただ、いずれにせよ、「繰越期間は帳簿保存期間及び除斥期間と整合性がとれた制度とする必要がある」というご指摘をいただいております。この最後の点はまた後ほどご説明させていただきます。
23ページをお開きいただきますと、これは金融機関の自己資本を主要行で見たものでございまして、現在、金融機関の自己資本は24.9兆円ございます。このうちTier1と呼ばれるものが13兆円、Tier2と呼ばれるものが11.9兆円ございます。
ところが、この自己資本の反対勘定を見てみた場合に、実は繰延税金資産が7.8兆円、これがTier1に相当する部分に入っているわけでございますけれども、資本と言いながら左側のほうに計上されている資産としては、繰延税金資産という、いわば非常にあやふやな資産が随分を占めているではないかということが問題の発端にございまして、実は金融庁からいただいているご要望の主眼点としては、この繰延税金資産があやふやな資産なので――真ん中に繰越欠損金というのがございます。それから貸倒引当金繰入超過額等4兆円、これは有税償却の引当金の部分等でございますけれども、これらを合わせて8.9兆円のいわばあやふやな繰延税金資産があるので、これを現金にかえて強固なものにしたいというのが繰戻還付の要求の要諦でございます。
これが要するに資本の充実強化というところに当たる部分でございまして、よく竹中大臣などが三点セットと記者会見などでも言っておられるのは、三点セット、つまり、この繰戻還付という現金にかえる部分がなければ非常にその効果がないというようなことを別の面から言っておられるわけでございます。
それで、25ページをお開きいただきますと、非常に見にくい表でございますけれども、危なかしい債権というのは真ん中の列の左側、金融機関向け実務指針の中で破綻先とか実質破綻先といったところに発生しているという状況を私ども金融機関から聞いております。したがいまして、税務基準と企業会計の基準との間に、この引当金を積む額において乖離があるということは事実だと私どもも思っております。6月の中期答申でも、必要な見直しは行うべきであるという方向性を頂戴いたしているところでございます。
26ページをお開きいただきますと、ただ、それが必ずしもストレートに税制改正のほうに結びついていかないという理由がございまして、それを簡単にこれから、ややこしいですが、ご説明させていただきますと、現在、有税償却ということが現に行われている場合があるのは事実でございます。例えば100億円有税償却いたしますと、左上にございますが、税務上、損金算入、経費になりませんので、100億円分、経費が少なくなってしまう。
ただ、ずうっと右のほうにございますが、将来、損金算入が可能となれば、その時点で損金になりますので、つまり、つぶれたときにはその時点で損金になりますので、その時点の法人税を減少することができるというこの期待権を資産と認識して、繰延税金資産を計上するというのが税効果会計のルールでございます。40%積み上げますのは、今法人の実効課税率が40%であるので、40%掛けて資産としてみなすわけでございます。
それを現時点で無税償却できるように下のほうに持っていけるようにしたといたしますと、税務上損金算入が現時点でできることになります。そうなりますと、通常私どもイメージするのは黒字法人でございますから、下の矢印にいきまして、損金が、経費が増えますから、支払う税金が増えるということで、企業にとってありがたいことになるわけでございますが、残念ながら、現在の銀行というのはほとんどが赤字法人でございますので、真ん中の矢印のほうに移っていくわけでございます。
その結果、現在の銀行というのはもともと、例えば昨年度ですとほとんどの銀行は赤字で納税をされておられませんので、黒字を減らすのではなく、赤字を拡大させる効果を無税償却の範囲の拡大は持つということになります。赤字を拡大させる、つまり欠損金を増やすということでございます。
ところで、この欠損金も、最初申し上げましたが、5年間の繰り越しが認められておりまして、将来の法人税を減らす権利がございます。そういう意味で、税効果会計上、この欠損金も繰延税金資産として整理されておりますので、今の時点で、銀行経営が赤字の状況のもとで有税償却していたものが無税償却になりますと、上から下に移るということで、結局、有税償却としての繰延税金資産が欠損金としての繰延税金資産に名前を変えるということで、繰延税金資産には影響がないというのが今の銀行の経営状況を前提にした、実際の何が起こるかということになるわけでございます。
その中でも特に欠損金につきましては、下に書いてございますが、5年間の繰り越しということになってございますので、反対に言うと、6年目にはもう権利として消滅することになります。5年間で消滅する繰延税金資産に変わってしまうというのが今の銀行経営の状況から見た、実際に起こることになりまして、金融機関にとってみるとかえって体質が悪化した、繰延税金資産がむしろ5年後になくなることが明らかになってしまうという意味を持つということが、なかなかこの見直しをどういうふうにするかということについて方向性が最終的にはできないことの背景になっているわけでございます。
〇石会長
道盛さん、少し急いでくれる?
〇道盛税制第二課長
はい。あとはざっと飛ばしていただきまして、31ページをお開きいただきますと、もう一つは、繰越金、繰戻しの期間の件でございますけれども、実は、これまでの歴史を整理してございますが、明治32年に初めて法人所得税という税金ができましたときには、欠損金は無制限に繰り越して所得から控除するという仕組みでございました。ところが、それは非常に問題もあるということで、大正15年に、むしろ欠損金の繰越控除を認めないという改正が行われまして、その後、戦前、3年になったり1年になったりいたしてございます。
昭和25年にシャウプ勧告が出されまして、実はシャウプさんが来られて非常にびっくりしたのは、日本の納税の実態を見ると、そもそも帳簿が全然できてないではないかと。だから、申告納税制度というのは正しい納税を行うことが前提であるのに、帳簿がない中でどうやって正しい納税を確保するのだということを強く思われまして、青色申告制度というのを導入されした。
そのときに、これまで実は繰越欠損金の控除期間というのは3年だったり1年だったり無期限だったりしたのですけれども、いずれにせよ、帳簿がないところでそんな繰越控除を認めるのはどうかという考え方が当時の政府の中で議論されまして、昭和25年の改正を見ていただきますと、青色申告の継続提出というのが繰り越しの要件であるというふうになるとともに、帳簿の保存期間を5年にされまして、それにあわせて欠損金の繰り越しも5年になったという経緯がございます。そのときに初めて1年間の繰戻還付というのが設けられたわけでございます。
あと32ページだけ見ていただきますと、ここで繰越期間というものを各国で比較してございますが、繰越期間について、アメリカ、イギリス、ドイツといった長い国があることは事実でございますが、一番下にございますが、これらは納税者に立証責任が置かれている国でございまして、我が国とフランスにおいては課税庁側が立証責任を負っている国で、課税庁が立証責任を負う国は、納税者あるいは取引先のもとに帳簿がとってないと納税が正しいかどうかを確認できないということになりまして、日本とフランスにおいては帳簿の保存期間の範囲内に繰越金、繰戻金の期間を制限しているというようなせいでございまして、やれるとしてもこの範囲内でどうするかという問題ではないかと考えております。
ただ、いずれにせよ、33ページにございますが、先ほどもご説明しましたが、欠損金というのが法人税の税収に非常に大きな影響を与えている中で、繰越期間の延長といったことは、法人税収についてはかなり大きな影響を与え得る措置であるということが言えると思います。
以上でございますが、あと1点だけ、まことに恐縮でございますが、5ページをお開きいただきまして、先ほど、法人税率が非常に下がってきたという状況のもとで、30%まで法人税率が下がりましたので、G5で見ても、地方税がないイギリス、フランスは別として、国税で見てみますと、基本的にほとんど同じ税率水準になってきていると思われます。また、6ページ、アジア諸国の中で低い国があるのは事実でございますけれども、右半分でございますが、こういった国においてはかなり消費課税といったことに依存しているという意味で、税体系全体で各国とも税体系を構築しているという状況でございます。
以上でございます。
〇石会長
せかしましてすみません。実は予定した時間を過ぎているのですけれども、せっかく乗りかかった船でございますから、今度は地方税のほう、大急ぎでご説明いただいて、若干の時間をとって、法人税の議論を終わりたいと思いますが、じゃ株丹さん、すみません。5分ほどでお願いします。
〇株丹都道府県税課長
総2-9、地方法人課税関係でございます。お時間の関係もあると思いますので、中身はともかくとして、目次でざっとご覧いただいてと思います(笑)。目次、最初の法人住民税、それから法人事業税、この2つを法人二税と称してございますが、法人税と同様に相当な落ち込みでございます。
それから「法人二税の税率の推移」を3ページに挙げてございます。これまた、法人税と同様に、税率、相当下がってきてございます。ちなみに、法人住民税だけの税率は法人税額を基本的に課税標準としておりますので、ちょっとグラフには入れてございません。
それから東京都の「銀行税」について資料2枚ほど入れさせていただいてございます。これはあくまでも個別のお話ではございますが、これまでも、当税調におきまして、特にこの税ができました当時、いろいろご議論を頂戴したということで、一応最終的な決着が東京都の分については見たということで、そのご報告でございます。
ちなみに、これはよく間違えられるのですが、これはあくまでも法定外税ではございませんで、法人事業税、普通であれば所得に課税するところを、別な、「銀行税」の場合は業務粗利益というものに課税するということで、条例を東京都がつくられた。現在も、外形標準課税、全国的に導入されましたけれども、根拠となる条文につきましては一部改正して残ってございます。
あとは、地方税全体での政策税制、いわゆる租税特別措置の関係、全部で1兆円ほどになるのですが、事業税では社会保険の診療報酬、長年の課題でございますけれども、これは地方税独自に実質的に非課税にしているということで、たびたびご指摘もいただいております。そのことをご説明させていただいております。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。消費税は残念ながら次回回しにしましょう。この問題は選挙でも大分議論になりましたので、我々としてもいろいろ検討すべき余地がございます。
それでは、法人税に関しまして、国税、地方税、5~6分時間をとりまして、何か、今言っておかないとというテーマがございましたら、どうぞご発言ください。――脅かしたかなあ。出てきませんね。どうですか。よろしゅうございます? それでは、法人税も次回、少しノートでもとっておいていただいて、もしこの問題で意見ありましたら次回にしていただくと。何ぶんにも3時間超えますと思考能力が衰えてきますから、今いい意見も出てこないかもしれませんから、ここで終わりにしましょうか。
次回以降の予定を申し上げますが、今週の金曜日、14日、1時から、また長丁場でございますが、4時までという形で予定いたしております。大きなテーマは、この消費税が残っておりますから、消費税のほかに国際課税の問題とか、あるいは地方分権と税制、あるいは金融証券税制等々、残った問題を議論したいと考えております。住宅ローンもそこでおそらく議論の対象になろうかと思います。
それでは、どうもすみません。5分ほど超しましたが、これにて終わりにいたしたいと思います。長時間ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。