第45回総会 議事録
平成15年9月9日開催
〇石会長
それでは、片山大臣がお見えになりましたので、今日は、片山総務大臣と森山財務大臣政務官をお招きいたしまして、第45回目の総会を開きたいと思います。
実は、3年前にこの総会を開催して以来、3年間、審議を重ねてきましたが、今日は最後の日になります。そういう意味で、いろいろなことをこれからやりたいと思っております。
お手元に、今日は本当は小泉首相にご出席いただく予定でございましたが、ラジオで報道のとおり、今、自民党で立会演説会、それから、これから街頭演説会に出られるようでありまして、ちょっとお時間がとれないということで、紙をおつくりいただきました。後ほど、私が朗読させていただきます。
それから、今日は塩川大臣がお見えになる予定でございましたが、急遽、ご都合が悪いということで森山政務官にお越しいただいております。
片山総務大臣には、ご出張の直後、お忙しい中をおいでいただいております。後ほど、お言葉をいただきたいと考えております。
今日のテーマは2つございます。1つは、「税についての対話集会」、4回終わりました。そのアンケート結果等々、まとめておきたいということがございますので、それをご披露させていただくと同時に、今、今年度の税制改正の中身で実行していますことがどのようなことになっているか、活用等につきましての調査ができましたので、それを後ほどご報告したい、このように考えております。
それでは、ご挨拶をいただく前に、私のほうから、小泉首相にお出しいただきましたこの文書を朗読させていただきます。
税制調査会委員の方々へ
税制調査会の皆様におかれましては、3年間の審議を通じ、わが国税制のあり方について貴重なご提言をいただきました。心から御礼申し上げます。
私は、就任以来、「改革なくして成長なし」との理念の下、わが国経済の全般にわたる構造改革に取り組んでまいりました。税制改革はその極めて重要な柱です。このため皆様には、昨年来、年間を通じた精力的な税制審議を行っていただき、包括的な税制改革の指針をお示しいただきました。
平成15年度改正においては、あるべき税制の構築に向け、広範な税目にわたる改革を実現し、その結果、企業の研究開発、個人投資家の市場参加などの面で、活性化に向けた確かな手応えが伝わってきています。
これまでのご尽力に対し、重ねて厚く御礼申し上げるとともに、皆様方には、引き続き各界における税制論議に中心的な役割を果たしていただきますよう、お願いいたします。
平成15年9月9日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
以上でございます。
それでは、早速、森山政務官から財務大臣のご挨拶を代読していただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
〇森山財務大臣政務官
大臣政務官を務めております森山でございます。
皆様ご承知のとおり、塩川財務大臣が病気加療中でございまして、近日中に退院されるように伺っておりますが、本日、出席がかないませんでした。大臣のご挨拶を代読させていただきます。
税制調査会第45会総会が開催されるに当たり、一言、ご挨拶を申し上げます。
平成12年9月以降、3年間にわたり、貴調査会に税制のあり方について精力的なご審議をいただきました。まずは、石会長はじめ委員の皆様に心から御礼を申し上げます。
21世紀に入った今日、持続的な経済社会の活性化を実現するため、税制の抜本改革は避けて通れない課題となっております。この3年間で、皆様のご尽力により、「あるべき税制」の構築に向けた大きな第一歩を踏み出すことができました。特に、昨年以来、税制審議は年末に行うものという慣例を破り、年初から通年で貴調査会にご審議をいただき、その成果として、平成15年度税制改正において、研究開発・設備投資減税、相続税・贈与税の一体化措置など、広範な税目にわたり思い切った措置を講ずることができました。これらの改正について、関係をする企業からヒアリングを行ったところ、「経済活動の力強い後押しとなる」といった高い評価をいただいたところであります。
また、貴調査会におかれましては、昨年来、計16回にわたり、全国各地で「税についての対話集会」を精力的に開催していただきました。私自身も、日程の許す限り参加させていただきましたが、国民の生の意見を耳にし、税についての関心がこれまで以上に高まっていることを直接肌で感じました。これも、貴調査会において意欲的な問題提起が行われた賜であると思います。
今後、貴調査会からいただいた、昨年の「基本方針」及び本年の「少子・高齢社会における税制のあり方」を指針として、徹底的な行財政改革を進めながら、引き続き税制改革に取り組んでまいりたいと存じます。
改めて、委員の皆様方の3年間にわたる多大なるご尽力に厚く御礼申し上げ、簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。
以上でございます。
〇石会長
どうもありがとうございました。
それでは、片山大臣、お願いいたします。
〇片山総務大臣
総務大臣でございます。一言、お礼を申し上げたいと思います。
すでにお話が何度もありましたが、平成12年の9月から始めていただいて、3年間、本当にわが国の国税・地方税を通じます税制について、大変なご尽力をいただきましたことを改めて厚くお礼を申し上げたい、こういうふうに思っております。
毎年度のいわゆる年度答申は当然でございますけれども、特に去年の6月には、「あるべき税制の構築に向けた基本方針」という大答申をまとめていただき、今年は「少子・高齢社会における税制のあり方」をまとめていただきました。しかも、それをかなり早い時期にまとめていただきました。我々にとっては大変ありがたかった、こういうふうに思っておりますし、特に私どものほうの地方税では、個人住民税の問題、地方消費税の問題、また、固定資産税や土地税制のあり方について格別のご指導を賜りました。
また、15年度の税制改正では、地方にとりましてのいわば悲願でございます、法人事業税の外形標準課税も認めていただき、これが法律として成立いたしたわけであります。施行はもちろん先でございますけれども、今、円滑な施行のための準備を一生懸命やっているわけでございます。
地方税にとりましては、こういう地方分権の時代でございますから、国と地方の税源配分のあり方を見直していただこう、こういうことと、いわゆる課税自主権、これをどこまで租税法定主義の中で認めていくのか、こういうふうな大きな問題が残っております。今後とも、我々も努力いたしますけれども、形は、委員の皆さん、どういうことにおなりになるかわかりませんけれども、ぜひ、それぞれの立場で、またいろいろなご指導を賜れば大変ありがたい、こういうふうに思っております。
特に石会長には、経済財政諮問会議に何度も来ていただきましたり、そちらのほうでもご指導賜りましたが、ぜひ石会長、上野会長代理、税調委員の皆様、今後とも、ひとつよろしくご指導を賜りますようにお願いしまして、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
〇石会長
どうもありがとうございました。
それでは、大臣と政務官、ご日程の都合もありますので、ご退席になります。どうもありがとうございました。
〔森山財務大臣政務官、片山総務大臣退席〕
〇石会長
それでは、本来の総会の議事に入りたいと思いますが、最初に、主税局のほうでかなり人事異動がございました。大武主税局長から、その辺を紹介していただきたいと思います。
〇大武主税局長
現メンバーでの最後の税調総会において、人事異動をご紹介させていただく格好になるのでございますが、前回の総会以降、7月8日付で事務局の異動がございました。
総務課長をしておりました清水が、福岡国税局長に転出いたしまして、その後任に、税制一課長をしておりました古谷が就任いたしました。
また、税制一課長には調査課長をしておりました永長が就任いたしました。
調査課長には、主計局で文部科学担当の主計官をしておりました佐藤が就任いたしました。
税制三課長をしておりました稲垣が、主計局の農林水産担当主計官に転出いたしまして、その後任には、大臣官房総合政策課の調査企画官をしておりました岡田が就任いたしました。
また、税制二課で消費税担当の企画官をしておりました美並が、行政改革推進事務局参事官に転出いたしまして、その後任に、調査課で広報担当の企画官をしておりました西田が就任いたしました。また、西田の後任の広報担当企画官には、国際協力銀行開発金融研究所の主任研究員でありました藤城が就任いたしました。
また、国際租税課の主税企画官の上斗米が、国税庁の課税部課税総括課審理室長に就任し、上斗米の後任には、国際局地域協力課国際調整室長をいたしておりました志村が就任いたしました。
いずれも、前任者同様よろしくお願いしたいと存じます。
〇石会長
どうもありがとうございました。
それでは、最初の議事に入りたいと思います。お手元に資料が行っていると思いますが、『「税についての対話集会」のまとめ』という冊子についてでございます。1枚お開きいただきますと、今年4回やりました各地の状況が、ここに一覧になっております。
ご参加いただきました委員の方には、厚く御礼申し上げますとともに、塩川大臣、谷口副大臣にも1回ずつお出ましいただきまして、我々と一緒に対話集会の実を上げていただきました。
それでは、この後ろに幾つか注目すべき結果等々出ておりますので、それをかいつまんで、まず最初に、藤城企画官から内容をご紹介いただくことにしましょう。
藤城さん、お願いします。
〇藤城企画官
藤城でございます。
それでは、お手元の資料の3ページをお開きいただきたいと思います。「会場アンケートの結果」というのがこちらに載せてございます。
第1部の「税制一般について」でございます。
問1、「あなたは税金についてどのような要望がありますか?」。この問いに関しましては、[2]、[3]、「不公平をなくしてほしい」、「わかりやすい税制にしてほしい」というのが、いずれも4割弱ほどのご回答をいただいています。これは昨年とほぼ同じ傾向でございます。
問2でございますが、「今後の公的サービスと負担の関係についてどう思いますか?」という問いです。[1]、[2]、[3]と、少し複雑に書いてありますけれども、[1]の答えは「サービスを維持して税負担を増やす」、[2]は「サービスを減らして税負担を維持する」、[3]は「サービスを減らして負担を増やす」、こういう回答でございますが、いずれも3分の1強弱のような回答になっておりました。ある程度の負担増である程度のサービスを維持する、というようなものが大勢であるかと思います。
問3につきましては、「どのような税の役割を高めるべきとお考えですか?」。この回答といたしましては、[3]でありますけれども、「消費税の役割を高めるべきである」というものが6割弱でございまして、過半数を占めておりました。
1ページおめくりいただきまして、「『少子・高齢社会における税制のあり方』について」という問いでございます。こちらのほうは、第1部と違いまして、石会長からの中期答申に関するご説明や、委員の方々とフロアとのご意見交換、これのあとに記入していただくような形にしておりました。
問1でございますけれども、「高齢者の優遇措置についてどう考えますか?」という問いであります。これにつきましては、[2]のところで、「高齢者の中にも低所得の方はいらっしゃるので、そういった層に配慮しつつ、年齢だけで一律に優遇する措置は見直していくべきだ」、こういう意見が7割弱でございまして、大勢を占めておりました。
問2に移りまして、個人所得課税でございます。いわゆる特別の控除や非課税措置を縮減して、人的控除でまとめて担税能力を調整していくという方向性、これが中期答申で示されておりますが、その方向性につきます意見といたしまして、「賛成」「反対」「どちらとも言えない」という回答を求めましたところ、賛成というご意見が56%、一方、反対が17%、どちらとも言えないというのが27%でございまして、賛成が比較的多いという形になっておりました。
5ページに移りまして、問3でございます。「消費税率を引き上げることについてどうお考えですか?」という問いですが、これにつきましては、「税率の引上げはやむを得ない」という[1]が54%で、過半を占めております。一方、「ほかの税目の負担増で賄うべきだ」という意見が17%、「公的サービスの水準を下げることで対応すべきであり、税率の引上げは慎重に考えるべきだ」というものが29%であります。
いわゆる消費税の引上げに賛成というのは54%で、何らかの形でそれには反対だというものが46%ということで、半々くらいでございます。賛成がやや強いぐらいございます。
ただ、後ほどご紹介しますけれども、絶対反対だという意見もフロアからかなり出たのですが、こういう結果を見ると、一辺倒ではないのかなという感じはいたします。
問4でございます。相続税のあり方ですが、「『老後扶養の社会化』の進展に伴い、相続時に残された個人資産に負担を求める必要性が高まっているという考え方、これについてどう考えるか?」という問いに関しましては、賛成が44%、反対が25%、どちらともいえないが30%ということでございまして、まだ、さらなる議論が必要なのかなという感じがいたします。
1枚飛ばしていただきまして、7ページでございます。「意見発表者及び一般参加者からのご意見」ということで、さまざまなご意見がフロアで出たもの、それから、後ほどアンケートのところに書き込んでいただいたものを含めた概要をまぜております。
第一が、税制全般に関するものですが、幾つのか論点がございました。1つ目の論点は、いわゆる将来像に関するものでありまして、例えば、上からマル2つ目でございます。「国は国民に対して受益と負担の明確な将来ビジョンを示して将来不安を取り除くべきである」、こういう意見がございました。
2つ目の論点といたしましては税体系の話がありまして、一つの例としては、例えば下から5つ目のマルです。「消費税、法人税を含めた税制全般の見直しを行い、社会的に公平な税制を構築すべきである」、これに関連いたしまして、次のページですけれども、例えば8ページの上から3つ目、「社会的弱者には負担を求めるべきではない」、こういうご意見がありました。
一方、その2つ下になりますけれども、「経済の活性化」ですとか、あるいは、「公平論議だけではなく、景気回復を意識した税制改革も必要である」、こういう意見が他方でございました。
3つ目の論点は、高齢化と少子化という観点であります。比較的高齢化というものが前面に出ているのではないかという観点から、下のほうに、「少子化対策についてもっと検討を行うべきだ」、「結婚し子供を産み育てることにインセンティブを与えるべきではないか」、こういう類いの意見がございました。
それから、1ページおめくりいただきまして、9ページでありますけれども、最後にこの「税制全般」では、世代別の見方というものが比較的分かれた意見のグループがありました。上から3つ目のマルですけれども、高齢者の立場からは、「働きたいと考えている高齢者が働ける場を提供するとともに、働く高齢者を優遇する税制措置を設けるべきだ」、こういう意見がございました。
その半面で、その2つ下になりますけれども、「若い人に大きな負担をかけることは適当でない」とか、あるいは、一番上のマルになりますが、「老人を社会的弱者として一律に捕らえるべきではないのではないか」というような意見も、若い人から出されているものがございました。
次のカッコでございますが、「税の使途」が9ページの中ほどから始まっております。税の使途に関しましては非常に多くの意見がございまして、特に、「税負担増の前提として、まず行財政改革と歳出の見直しを徹底的に行うべきだ」、こういう強い意見が数多く見られました。特に、例えば下から2つ目のマルのように、「歳出の改革を進めれば、まだ増税をする必要などないのではないか」とか、あるいは、その次のページの上から2つ目のマルですけれども、「主婦の感覚からして、41兆円の税収の中、なぜ歳出として81兆円も使えるのか疑問」、こういう率直なご意見もございました。
一方で、その2つ下になりますけれども、「税が正しく使われていれば増税するのもやぶさかではない」、こういう意見もございました。
その次の新しいカッコですが、「個人所得課税」につきましては、晩婚化ですとか、少子化、あるいは諸控除等々に関しまして、さまざまなご意見、アイデアの数々が出されておりました。
一つの例としては、下から3つ目でございますけれども、「親と同居する独身者にはもっと担税力があるのではないか」という観点から、パラサイトシングル税を入れたらいいではないかという意見もございました。
所得税のさまざまなアイデア、その次のページもずっと続いておりますけれども、12ページにお移りいただきまして、「消費課税」のグループがございます。消費課税につきましては、一番上のところのご意見が一つの代表でありますけれども、「少子高齢化を理由に消費税率を安易に引き上げるのは、場当たり的」という強い調子のご意見が数々見られました。
ただ、その内訳といいますか、どういうご理由でそういうことをおっしゃっているかというのはさまざまでございまして、その一つ下のところのように、「公共投資が原因で生まれた借金を消費税で返していくのは納得がいかない」という、責任論の方向からおっしゃる方もいらっしゃれば、現在の経済状況からおっしゃる方、あるいは、その2つ下になりますけれども、小規模事業者の立場、消費税の転嫁の問題からおっしゃる方、さらにその下ですけれども、「消費税率の使途が国民に見えない中でそういう議論をするのだろうか」と。先ほどの「税収の使途」にちょっと似ていますけれども、そういう観点から反対なさっている方もいらっしゃいました。
13ページに移っていただきますと、そういうさまざまな懸念の中には、逆進性ということをおっしゃる方もいらっしゃいまして、「逆進性を解消する工夫をすべきではないか」という意見がありました。
この観点につきましては、13ページの中ほどから下くらいに出てまいります意見ですけれども、いわば条件付き賛成といいますか、「消費税の税率引上げには賛成であるけれども、医療、食品に対する税率を軽減するなど社会的弱者への配慮を工夫してほしい」、こういう意見が幾つかございました。
また、上から4つ目になりますけれども、一方で、「景気回復を待って消費税を上げるということでは手遅れではないか、近々、国の財政は本当に破綻しないか心配である」、こういう直言のようなご意見も一方でございました。
1ページおめくりいただきまして、14ページですが、下のほうに「資産課税」、「税務行政」等々ございます。税務行政では、「クロヨン問題を最近聞かなくなったけれども、どうなっているのでしょうか。問題意識を忘れないでください」という意見なども出されておりました。
16ページから後ろのほうは、アンケートに記載をされましたさまざまなご意見を要約して掲載しております。
それから、この場をお借りしまして一点付言しますと、このような対話集会以外にも、電子メールとか郵送で、中期答申に関しましてさまざまなご意見が送られてきております。最近では、222 通、そういうご意見がございまして、これは綴じて製本した上で、今、入り口のところに置いてございます。もし、お時間が許すということでございましたらば、そちらのほうもご覧いただければというふうに思っております。
以上です。
〇石会長
どうもありがとうございました。
今、藤城さんにご説明いただきました資料を、ご関心の方は、後ほどもう一回、1枚ずつめくって中をご検討いただけたらと思います。
今から、ご質問、ご意見を賜りたいと思いますが、私自身の感想は、昨年12回、今年4回と16回やったわけでありますが、かなり本音ベースの意見のやりとりができたなというふうに感じております。ああいう集会に出てこられる方は、私は、問題意識が非常に高いと思います。単に増税がいやだから抗議に行くといった以上に、日本の税体系をどうしたらいいか、あるいは、将来の社会保障制度自体を国民としてどう受けとめて、それをどういう形で負担しようかということについての問題意識はずいぶんお持ちの方がいらっしゃったと思います。
それから、各地で意見発表者を公募いたしまして、3人選びました。7~8人の地区と10数人の地区といろいろ分かれておりましたが、それなりにご自分の意見をしっかり持たれて堂々と発表していただき、我々の議論にずいぶん参考になったと思います。
正直申しまして、我々、消費税を2ケタにしなければだめだと申したということがあって、やはり消費税についてのご関心はずいぶんあったと思います。極端な分け方をしますと、2通り意見に分かれておりまして、ご自分のビジネス、いうなれば商売というべきかな、特に小売事業者のような方から見ると、自分の商売に直接かかわるので、転嫁の問題、実際の税務の執行の問題、申告の問題等々で大変である、生活する上ではこれはぜひやめてもらいたいという、まさに自分の身の回りからのご議論をされる方が、当然、片やいます。
もう一つ、そうはいってもこれだけの国の借金のかたまりの中で、年金、介護、保険、これを国として維持していく必要がある。そのために消費税というのは、条件さえ--条件というのは歳出カットであり行革ですが、それがあれば認めるのはしようがないではないかという、積極的に容認とまでいかなくても、その方向を基本的には了承する、この2つの形の意見があったと思います。
それがアンケートの結果で、54%くらい、消費税負担を上げてもしようがないという意見が出てきたということでございます。会場では、反対の方が、どうしても言いたいという形でご出席いただいた方が多いですから、おそらく7:3か8:2くらいで反対というほうだと思いますが、会場全体の雰囲気は、アンケートをすればここに出てきていますように、半分以上の人は、議論してもいいではないかということになっているかと思っています。
これは、数年前の状況と比べるとずいぶん違ってきたなと思いつつ、逆に言えば、少子・高齢化の進捗の状態、国の借金状態、これの深刻さが国民の方々にだいぶ浸透してきたのかなという気はいたしておりますが、我々としても、すぐやるということではなくて、10年とか15年先を見据えてという形なので、まだ心にゆとりがあるかと思います。これが、いざ消費税を上げることが直近になってきたときには、世論がどうなるかということは、これから政府税調としてもその辺はしっかり見定めつつ議論をしなければいけないかと思っています。
あるべき税制等々、皆で負担を分かち合わなければいけないのではないかということについて、絶対反対というのではなくて、ある程度の受け入れというんですか、そういう姿勢は徐々にできてきたかなと思っております。本格的議論はやはりこれからだと思いますが ただ、我々の3年間の成果をこういう形で世に問うたというのは大いに成果があったことだと思います。
それでは、この1ページ目に出ております、実際にご参加いただいた委員の方々もご感想がおありでしょうし、それから、ご参加いただけなくて、今日この会場で初めて聞いたんだけど、こういう点はどうだったというようなことで、ご意見、ご質問のある方もいらっしゃると思いますので、しばらく時間を割いて、対話集会の結果につきまして議論したいと思います。どうぞ、どなたでも結構です。あるいは、委員の方で、ご自分の出られた会場の雰囲気なり等々でご感想ございませんか。どうぞ、佐瀬さん。
〇佐瀬特別委員
一言だけ。今後のために参考に意見を言っておきたいと思いますけれども、私、さいたま市の対話集会に出ました。会場の人は、10人ぐらいでしたか、意見があったけれども、ちょっと気になったのは、あそこは税理士の方が非常に多くて、時間の半分、あるいはそれ以上を税理士の人がしゃべっておりまして、中身もわりと技術的なものが多く、その分一般の方の意見が少し減ったという印象が非常に強いので、今後は税理士の人は、出ていけないというわけではないけれども、プロとアマが混じっているような集会はどういうものか。別途税理士の方はそれだけでやるとか、そういう工夫が要るのではないかという気がさいたま市の集会ではしましたので、今後、ひとつ参考にしてください。
〇石会長
どこの会場も、税理士の方は商売柄ご関心があって、発言の10人中2~3人は占められますし、意見発表者の方にも1人は入っているということはありますが、それはそれなりのご意見を伺ったかと思っています。佐瀬さんのご意見も今後参考にしたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、時間のこともございますので、また何かございましたら、あとでも結構ですから、ご発言ください。
それでは、もう一つアンケート結果が出ております。今年度の投資減税につきまして幾つか資料がまとまってきましたので、これにつきまして、調査課長の佐藤さん、お願いします。
〇佐藤調査課長
調査課長の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
お手元の資料、総45-2と書いた資料に沿ってご説明申し上げたいと思います。A3になりましたものをベースに、ご説明したいと思います。
まず、最初の扉のページに書いてございますが、「平成15年度税制改正事項の活用等に関する調査」ということで、その内容につきまして下の箱の中に書いてございます。
ご覧いただきますと、平成15年度税制改正において経済活性化に資する観点から講じられた主な改正事項につきまして、その活用状況についての実態把握をしようということで、本年8月、財務省におきまして、個別企業426 社、関係団体102 先、合わせて500強のところから直接の聞き取り調査をいたしまして、それぞれの改正項目をどのように受けとめておられるか、あるいは、それをどういうふうに活用されておられるかという、一種のフィールドワークのような調査をいたしたということでございます。それに伴いまして、質問いたしますのは直接面接聞き取りでございましたので、それに対して得られました回答を、あとで見ていただきますような形で整理をさせていただいたということでございます。
若干補足いたしますと、この調査に関連いたしましては、小泉総理及び塩川大臣から調査をせよというご指示を受けました。趣旨は、ご案内のとおり、今、予算のプロセスにおきまして「プラン・ドゥー・シー(Plan Do See) 」ということをいろいろな形で取り込んでいくべきである、そういう考え方を強く打ち出してきておりまして、税についても、このような「シー」、一種の評価といいますか、そういうのを取り込んでいくということで、実施してはどうかということだったわけであります。
ご案内のとおり改正後間もないものでございますので、いろいろな形で調査をすることについては難しさがございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げたような経済活性化という観点から、そういう目的で講じました措置について、現場でどのように受けとめられているか等々、生の声を整理をするということで、一つの意味のある調査になるのではないかということで実施したということでございます。以上が背景でございます。
中身をご説明申し上げたいと思います。
1枚めくっていただきたいと思いますが、左側に「改正事項」が書いてございまして、真ん中に「評価」という欄がございます。得られました回答につきまして、A、B、Cと分けてございますが、内容的には評価をしている、現実に活用し、また効果が実感できているというような回答についてはA。内容については評価しているし、活用は今後、あるいは、効果が期待できるという実感を持っているということをB。Cにつきましては、あまり評価をしていない、ネガティブな評価ということで分類をさせていただいたわけでございます。
それぞれにつきまして「主な意見」というものを右側に掲げてございます。詳細につきましては別紙を付けてございますので、そちらをご参考いただければと思いますが、このA3の横紙では、ポイントとなるところだけを便宜抜き出しているということでございます。
それでは、最初のところからご説明いたしますが、研究開発減税でございます。ご案内のとおり、試験研究費の総額の一定割合について税額控除をする、恒久的な制度として措置をするといったことが制度の中心でございますが、これにつきましては、A、B、それぞれ28%、60%、合わせて88%ということで評価を得ているということでございます。
主な意見の欄をご覧いただきますと、1つ目のマルですが、「厳しい経済環境の下、研究開発投資を幅広く、かつ、継続的・安定的に行う上で力強い後押しとなる」、あるいは、「減税相当額を今年度の研究開発投資に上積みするとともに、来年度以降もその効果を織り込んでいく」というお話が直接聞かれております。
特に、研究開発に長期的な取り組みが必要な分野におきましては、このような恒久的な措置がとられることは大変意味のあることだと。数十億円単位の減税額が、例えば10年という単位で見通せることになりますと、プロジェクト一つを新たに想定できるというふうなお話も、業種によりまして聞き取られたということでございます。
それに関連して「主な動き」というところをご覧いただきますと、経済産業省、あるいは日経新聞によります関連の調査といたしまして、例えば経産省の調査によりますと、主要425 社の研究開発費については過去最高額を更新ということで、ここに書いておりますような伸び率で伸びているとか、あるいは、日経新聞によります聞き取り調査によりますと、264社のうちの7割の企業が研究開発費の増額を計画--ある種これは傍証でございますが、このようなデータも得ているところでございます。先ほど申し上げた話と合わせますと、企業マインド、投資マインドというものになにがしかの貢献をしているのではないか、ということをうかがわせるデータでございます。
ただし、主な意見の一番下、菱形のマークでございますけれども、赤字企業には意味がないということで、ネガティブな評価の方々はそういうふうなお話でございます。これが1つ目の減税のご説明でございます。
2つ目でございますが、設備投資減税でございます。これは、主としてIT投資促進税制を念頭に置いていただければよろしいわけですが、これにつきましては、真ん中の評価の欄は、A+B:86%ということでございます。
主な意見といたしまして、「商取引のIT化が進む中で、社内LANシステムの構築など、中小企業のIT投資の後押しとなっている」、あるいは、「生産管理システム等のIT化のため、IT投資の増額に現実に踏み切った」というふうな声が聞かれます。
特に、いろいろなビジネスの世界で入札をする等々の中で、電子入札ということもずいぶん行われるようになってまいりました。いろいろな形でビジネス環境が変わる中でIT化していかなければならないという状況があったわけでございますが、こういう措置をきっかけといたしまして、先送りされていた投資が顕在化するというふうなお話だろうと思っております。
それについての一つの傍証的な数字でございますけれども、主な動きのところで、パソコンの出荷台数をとってみますと、243 万台から252 万台ということで、2年ぶりにプラスに転じるというデータ等がございますから、今申し上げたものの一つの例証かなというふうに思っているわけでございます。
次の、中小企業税制でございます。ここで主に想定しておりますのは、30万円未満の少額の減価償却資産の全額損金算入というあたりの税制でございます。中小企業にかかわる研究開発の話は、今申しました一番上の研究開発減税の中に織り込まれてございますので、こちらの中小企業税制のところは、30万円未満の少額の減価償却資産についての措置を中心に聞いているわけでございますが、A+B:85%という数字でございます。
主な意見の欄でございますが、その制度につきましては、設備投資減税と相まって情報化投資の積極化につながるというふうな話になってございます。ネガティブな意見といたしましては、赤字企業には意味がない、こういうふうな結果が出ているわけでございます。
次のページでございます。今まで法人税中心のお話でございますが、次は、金融、あるいは相続税等々に関する措置でございます。実はこのあたりになりますと、個人の方々にかかわる分野でございますから、個人の方々がどのように受けとめられ、どういうふうに活用されるかというところまで聞ければよかったわけですが、時間の制約等もございますので、ここでは、証券会社とか、銀行とか、信託関係、住宅の会社とか、そういうあたりを中心にヒアリングをしたということで、彼らがビジネスをして感じていること、あるいは、顧客の動きを聞き取ったという感じでお受け取りいただければと思います。
最初の「金融・証券税制の軽減・簡素化」というところでございます。ご案内のとおり、上場株式の配当等につきます一定の軽減・簡素化措置を講じたわけでございますけれども、これについての評価、A+B:94%ということでございます。
主な意見としまして、配当を受け取った個人投資家が減税の効果を実感して、投資マインドを好転させているという感じ。それから、「貯蓄から投資へ」の動きを税制として後押しする姿勢が明確にされたということで、それを評価する向きが聞こえてまいります。
具体的な一つの例証といたしまして、主な動きの欄でございますけれども、特定口座に着目いたしますと、ここに書いてございますように、15年の1月末と7月末で比べていただきますと、101 万口座から147 万口座という形に増えてくる。あるいは、次のマルでございますけれども、個人投資家のウエートもこのような数字で増えてきているということで、やはり投資マインドの好転を伺わせるものでございます。
ただし、主な意見の菱形のところでございますけれども、制度の変更が頻繁であることで、依然として投資家マインドにマイナスの影響が出ているのではないかと見る向きがございます。それから、現在こういう活発な動きが出はじめているのも、プロというか、セミプロといいますか、株に関心のある方々がビビッドに反応しているということですが、裾野の広さという意味におきまして、一般の投資家についてはまだまだこれからではないかという感じを持っておられるようでございます。それぞれの会社、それぞれの業界においても、かなりのPRをしていくというお話のようでございますが、私どもとしても、そういうPRが必要ではないかということをひしひしと感じた次第でございます。
次の、相続税・贈与税の一体化措置のところでございます。A+B:84%ということでございます。ここをご覧いただきますと、「将来の相続トラブルの防止、事業の円滑な承継、収益を生む資産の早期移転などに活用することができる」、あるいは、「贈与のタイミングの自由度が増し、高齢者から若い世代への資産移転が促進される」、こういうふうな話でございます。
具体的な動きといたしまして、住宅金融公庫の調べということで、主な動きのところをご覧いただきますと、住宅取得資金につきまして、1件あたりの贈与金額が増大している。ここにご覧いただきますような、508 万円から674万円という感じになっております。
それから、「550万円超の贈与を受けた者」の割合も、14年度と15年度を比べますと、18%から37%ということで、増えてきている。住宅取得という面で取り上げてみますと、子供をサポートしようということにおいて、この制度が親のニーズに合っているということをある程度あらわしているのではないだろうかという感じがいたしますし、現場においてもそのような感じがあるということのようでございます。
ただし、上の主な意見の菱形のところですが、具体的な案件が少ない云々と書いてございます。実際にこのような相続・贈与の措置というものについては、相続税に関係がないと思っている人は右から聞いて左へ抜けていくというところがございます。そういう先入観が結構あって、まだまだ理解が不足しているのかなという声が聞こえてまいります。業界で説明をいたしますと、ここに書いていますように、相談がかなり出てきているということのようでございますけれども、一層のPRが必要だという感じを持っているようでございます。
最後の土地・住宅税制、ここは、主として登録免許税の軽減を念頭に聞いているわけでございますが、A+B:79%ということでございます。
主な意見ですが、「キャッシュフローを生まない事業の立ち上げ段階において、税負担軽減によりコストが軽減されプロジェクトの実施が推進」ということでございます。ネガティブな反応としましては、「登録免許税の軽減による取引コストの軽減だけでは、土地取引の円滑化には不十分ではないか」ということでございます。
実際に登録免許税という性格がございますので、実際にそういうプロジェクトなどに携わって初めてコストの軽減の実感が出てくる、というお話が聞けたわけでございます。
以上が、差しあたり行いました調査の要約でございます。
最後のところに、おおよその傾向といたしましてまとめてございますが、かなりの多くの企業・団体におきまして、その内容について関心が示されて、肯定的に受けとめはされているようであるということで、経済活性化という政策目的との関連でいきますと、プラスの感じで受けとめられているということでございます。先ほど申しました金融・証券税制、あるいは、贈与のいろいろな措置も含めまして、まだまだ改正の内容について十分な理解がなされていないという声もあるようでございますので、さらに広報に努める必要があるのではないか、という印象を持ったということでございます。
冒頭申し上げましたけれども、改正後まだ間もない時点におきまして、どのような形で関係の方々が受けとめているかということについて、いわば初めての試みということでやったものでございます。一定の傾向が、私ども、つかめたのではないだろうかというふうに思っているということでございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
今のご報告のように、なかなか評判はよろしいようでありますが、しょせんこれは減税ですからね。文句を言う人が多くないのは当たり前と言えれば言えるかと思いますが、我々の活性化という視点からの効果はかなり前向きに受けとめていただいていると思います。
来る途中、自民党本部での総裁選の立会いで小泉さんが発言しているのをたまたま耳にしたら、税制改革を大いにやった、特に研究開発減税と設備投資減税はということを言及されておりましたので、総理の頭に描かれている方向での結果が出ているのかなという気はいたしました。
それでは、この内容につきまして、いろいろご質問、あるいはご議論もあろうと思います。どうぞ、河野さん。
〇河野特別委員
減税の効果について、これだけ広範な調査をしたというのは初めてなんですよね。考えてみれば、世の中には減税も増税もあるわけで、それぞれの評価を今までやってこなかったというのは不思議な話で、やりっ放しで、あと世の中の評価はそれぞれやってください、我々はまた次の減税でも考えますかということをやってきたので、そういう意味では今度はよく中締めでいいことをやってくれたと思う。
それから、政策減税というのはずいぶんとやってきたんですよね。ただ、僕の印象では、この調査もそうだし、二、三、知っている製造業の社長なんかに会って聞いても、証券のことはちょっとわからないからあれだけど今回のこの研究、IT、こちらのほうはずいぶん評価が高いんですよね。これは、数年来やった政策減税の中では、まず第一にタイミングがよかったということ。企業内部で研究開発をそろそろ進めなければいけないという意欲が高まったときにこれが来たということで、ものすごく後押しになった。それからもう一つは、恒久的な減税だということ。思い切った内容だったということもあって、それでこういう効果を、今、生みつつあると思うんですね。だから、数年来の政策減税の中ではピカイチの効果を出しつつあるのではないか。しかもそれは、1回限りの、今年、来年あたりでまたシュンと下がるのではなくて、どうやら傾向は、これは恒久的な減税ですからね、さらにもっと広がるのではないかという気がするんですよ。
例えば本でいえば、最近、『バカの壁』という面白い本があって、100
万部突破したというんだけども、あれほどのミリオンセラーにならないけれど、10万ぐらいの本になってるかなと。石先生の本だってなかなか10万部出ませんものね。それは非常に広範な支持を得ているのだと思うんです。しかも、恒久的な減税だということでロングセラーの性格を帯びているかもしれない。自画自賛ですが、そう思うんですわ。株のほうも考えてみれば、日本の株価の低迷という大きなうねりがあって、それでちょっと気がついてみれば減税もやってるねということで、それも結構、ということになっているのだと思うので、やはりタイミングなんですね。
もう一つは、総理も自画自賛しているけれども、たしかに効果があるでしょう、あってもらわないと困るから。しかし同時に、これから増税のほうも我々はやるわけだ。減税で評判のいいのだけピックアップして、我々は立派なことをやったと自画自賛しても、それはおまえさん、ちょっと片落ちじゃないかとなりかねないので、これから増税もあり得るわけで、それが一体どういうふうに評価されるのか。全くネガティブなのか、いや、それでよかったのかと、さまざまだと思いますけど、そういうことも公平にやらないと、何だ、いいことばっかしやってつまみ食いじゃないかと言われるのは不愉快なので、そういう評価をこれから継続的にやっていただければ、税調のこの客観評価に対する評価も定着するだろうという気がします。
以上です。
〇石会長
大変よいまとめをいただきました。ありがとうございます。
ほかに何かご感想なり、ご意見でも結構でございますが。どうぞ、田中さん。
〇田中委員
えらい細かい話なのですが、設備投資減税のところで、パソコンの4-6月の出荷台数、たしかに増えているのですが、出荷額は4-6はまだマイナスだったと思います。7月以降、出荷額もプラスになっていますので、それは書かれたほうが……。要するにテンポがついてきているという感じがありますので。広報資料として使われるかもしれませんので、7-9月、特に出荷額で書いていただいたらいいかと思います。
〇石会長
どうもありがとうございました。どうぞ、菊池さん。
〇菊池特別委員
河野さんはそうおっしゃるのですが、研究開発減税の話をしていたころは、2兆円ぐらい増えることを言っていたような気がするのですが、これを見ると、たかだか4,000億円増えただけである。まあ、全部ではないですけれども。これからやるよというのに期待するしかないとは思うのですが、僕はこれを見て、喜んでいるわりに全然やってくれないじゃないかという気がしているのですが。
あと、金融税制は、本当に税制のせいなのか、株価のせいなのかというのは、もっとしつこくフォローしてやってみないといけないなという気がします。項目が、金融・証券税制の場合、いろいろ細かいことがたくさんあったから、そのうちどれが効いているのかというのははっきりさせておかないと、先々、何でもいいから株が下がったら減税しろ、株が下がるのは税金のせいだという話がどうせ出てくるわけですから、ここのところではっきりさせておいたほうがいいと思います。
相続税ですが、「住宅金融公庫調査」というのは、住宅金融公庫の自分ところの調査だとしたら、今、住宅金融公庫なんかから借りている人はいないので、全体像をあらわしていないのではないかなと心配するのと、ほかのも全部入れて金融公庫が代表で日本中を調べたということなんですか。
〇石会長
その点だけ、お答えいただけますか。
〇佐藤調査課長
幾つかいただきましたが、まず、住宅金融公庫のところでございます。それぞれ、第1四半期における住宅金融公庫における実績を集めていただいた数字だということでございます。
〇菊池特別委員
今、住宅金融公庫、誰も使ってないですよね。だから、あまり全体像をあらわしていないような、むしろあまりお金のない人の分だけ評価しているような感じがちょっとしますけど。
〇佐藤調査課長
私ども、住宅金融公庫からは、彼らが行っております具体的な融資の事業につきまして、第1四半期について14年度と15年度を比べたらどういう形になっているか、という実績ベースを聞き取ったということでございますので、こちらでは加工してございません。むしろ生の数字ということでございます。
〇石会長
菊池さんのご提言のように、やはりこれはフォローする必要もあろうかと思います。いずれまた折を見て、今のような問題意識で少しデータを集めることも今後必要でしょう。主税局のほうに受けとめてもらいたいと思います。
ほかに、何か。どうぞ。
〇大武主税局長
今、菊池先生などからお話のありましたように、金融・証券税制にせよ、相続税・贈与税にせよ、本来は個人が受益するものでございます。個人は、特に相続税・贈与税などは来年の3月の確定申告で初めて判断をすることになるので、まだ実績が出るようなものではない。先ほどお話のあった増税のほうも、実はまだ実施に移っていないわけでございまして、私どもとしてもそこは、プラン・ドゥー・シーではありませんが、今後、幅広く、個人向けにもどういうような効果があるかということはフォローしていきたい、それぞれ思っている次第です。
特に総理からも、相続・贈与にせよ証券税制にせよ、これからが実は勝負でありまして、まだまだ一般個人には十分伝わっていないというのが実態でございます。特に企業向けには、研究開発とか設備投資は相当浸透して、評価もいただいていると思うのですが、証券なども、既に証券投資をしている人が証券の投資額を大幅に増やしているという実態はあるのですが、新規の投資家にどのくらい伝わっているかというと、残念ながら、まだ十分伝わっていないというのが実態かと思います。
今後、そういう方々に、明らかに利子よりも配当のほうが税率が低いという事態があるわけですから、そういう意味では、配当という形のもので、どうやって一般大衆の方々が受益を受けるかということを十分情報として知っていただかなければならない。別に売り込むというわけではありませんけれども、情報としてそういう実態にあるよということを知っていただいた上で判断していただく。そしてその上で、それがどういう効果があったかということをきちっとフォローしていきたいと思っている次第です。
〇石会長
企業のみならず個人のほうにも、いずれまた聞く機会を設けて情報を集めていただけたらと思います。
ほかに何かございますか。どうぞ、今野さん。
〇今野委員
対話集会のご意見、大変興味深く拝見しました。17ページの「税の使途」というところですが、歳出削減、行政改革をまずは実施すべきであるというご意見がいまだに圧倒的に多いということ、よくわかりました。この会でも何度か、いろいろな方々から、どれくらい真剣にこれに取り組んだかということはお話しいただきましたが、まだまだ一般の国民の方々に納得できる形になっていないということだと思いますので、さらに、目に見える形で、納得できる形で進めていく必要があるのかなと思いました。
それから、研究開発、設備投資、中小企業税制、これは本当にすばらしい成果を出していただけたと思っております。私も、これまでずいぶんエンジェル税制で皆さんにご無理を申し上げながら、ようやくここまで来たと思いますが、いまひとつ、せっかくこんなに苦労して作ってあげたのに、エンジェル税制が使われていないのはどういうわけかと言われております。逆に言えば、これだけ待たれているのに、まだ使われていないということは、本当にメリットが実感できる形になっていないと思いまして、これはとても残念なことだと思っております。ですから、思い切って本当にみんなが使いたい形に一度してみて、実際に効果が上がらなければ、こういう税制を作ってもむなしいわけですから、実効を上がるようそこまでぜひやっていただきたいと思います。
私は9年間、大変税調でお世話になりまして、今日を最後に引退させていただきますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
〇石会長
ありがとうございました。ちょうど4時になってしまうのですが、今、今野さんから最後の弁みたいなことが出ました。まさに今日、最後の会と。記録を見ますと、当時の森総理大臣から平成12年9月14日に諮問をいただいて、3年間やりました。今日は最後でございますので、今のこの2つのアンケートの感想も交え、かつ、今後の税調をどういう形で進めたらいいかということの積極的なご主張をいただくとか、あるいは、過去3年の審議の仕方で、ここはどうも同じではないかといった点がありましたら、少し時間をオーバーしても結構でございますので、ぜひ伺っておきたいと思います。どうぞご遠慮なくご発言ください。どうぞ、和田さん。
〇和田特別委員
私も実は12年、委員が3期と特別委員ということで税調に参加させていただきました。12年前と申しますと本当に右肩上がりで、初めて出た1年目くらいの税調は、いつでも、こんなに簡単なことでいいのかなというような右肩上がりの説明で、それでいて、いろいろなところでの減税ということに終始したのを覚えております。状況がすっかり変わったなということです。
それで、やはり感じておりますのは、今もお話がありましたけれども、行財政改革、これがいつでも必ず言われるのですが、本当に真剣に、私たちが家計費に対して厳しく対応せざるを得ないような調子でやってくださっているかどうか、という疑問です。大変細かいことになりますけれども、いろいろの面で、「あ、こんなやり方がまだ続いている」と。細かいことです。例えば税制調査会の通知が、今までは速達で来て、FAXと両方入っていたのが、それが整理されてきた。そういうことがきちんとされたなという気がするんですけれども、他の省庁で見てみますと、別にお知らせだけではありませんが、いろいろなところでまだまだ私たちから見ると無駄があり、そういうことを発言してもなかなか通らないという実態です。
それと、省庁間の壁を破っていかないと、何か一つのこと、同じようなことをいろんな省庁で予算をとってやっていることがあります。そこにかかわっている委員も、こちらの省庁にも、こちらにも出ているというようなことで、少しは垣根が取り払われるようにはなってきましたけれども、もっと課題別に考えていく必要があるのではないかということを感じております。
それと、税金のほうに戻りますと、所得税について基幹税だということを位置づけておりますから、その考え方に立てば、あまりにも平準化が強すぎたのではないかなと。対話集会のご意見にも入っておりましたけれども、累進を強化することも考えていいのではないかと思います。高額所得者の高齢者に対しての年金の控除の面の検討がされまして、今度の答申にも入りました。それはあえて反対はしませんけれども、全体の所得税なり何なりということを、もう少し先に考えるべきではないかという気がしております。
それから消費税につきましては、さんざん発言させていただきましたから、あえて繰り返しませんが、つい最近、私どもは財務大臣に、「消費税の総額表示によって消費税がわからないことにならないように」という意見書を出しております。これは、多くの消費者が買物をしていますチェーンストア協会が、総額表示のみということに踏み切りました。レシートは対象になっておりませんけれども、チェーンストア協会では、総額に対しての消費税は書きますということですが、その他の販売店で、売場での消費税がだんだん姿を消すことは十分に考えられますし、レシートについては、財務省の消費税法で変わったということ、対象外というのは、またレシートについても消費税が消えることがないとは言えないのではないか。税金というのは、消費税に限らず、負担額をはっきり納税者が認識するというのが第一条件ではないかなと思いますので、最後にもう一度発言させていただきます。
本当にありがとうございました。大変いい勉強であり、得難い経験をさせていただきました。
〇石会長
こちらこそ本当にありがとうございました。最後にまた、貴重なご意見をいただきました。今後の議論の糧にしたいと思います。どうぞ、堀田さん。
〇堀田委員
私も3年間、勉強させていただきまして、今回は元役人ということでのご説明でありました。3年で終わるわけであります。感じましたことをストレートに言いますと、判断の基礎資料が財務省から出される資料でありますので、放っておけば当然そちらの方向に引っ張られる。それを公正に、国民の立場で判断するための委員会だと思うのでありますが、そこに届きます情報が、業界団体等からは大変な資料がまいりますので、関係する団体がこういうふうに考えているということはわかるのですけれども、政治的に言えば、無党派層と言われております一般市民といいますか、そこの感覚がなかなか届かない。そこを反映させるのが大変難しい。その点につきまして、ぜひぜひ今後の審理の上でご配慮をいただきたい。私も、外から大いにその意見を届けたいと思っておりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
〇石会長
重要な視点、どうもありがとうございました。極力、参考人で来ていただいてご意見は聞くことにしておりますが、今後、またそのルートも大いに深めたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
〇上野会長代理
3年間、会長代理を務めさせていただきまして、皆様方に大変お世話になりました。ありがとうございました。
私、この3年間、初めて税調の審議に携わったわけでございますけれども、会長のご発案だと思うのですが、いろいろな答申や何かを一本の考え方にまとめると。「主要な意見」という形で違う意見も添付はされますけれども、答申自身が一本の線で出されたことは非常に意味があったというふうに思いますし、出すタイミングも、去年の年度答申や何か非常にいいタイミングで出されて、具体的な税制改正への寄与度は非常に大きかったのではないかという感じがいたしております。
それから、3年間、国家財政の状況をずっと勉強し続けたわけでございまして、私もこれほどよく勉強したのは初めてだったのですけれども、わかるにつけて、国家財政の状況が非常に厳しいものであるという感を深くいたしました。今の自民党の総裁選、いろいろな候補者の方がいろいろな政策を打ち上げられておりますけれども、国家財政の観点からアプローチしておられる意見はないのではないかという気もするわけです。僕は、マスコミがもう少し国家財政の状況について関心を持っていただいたらな、というのが率直な印象でございます。ああいう意見が出るについても、それを整合性のあるものであるかどうかという観点から、チェックをしていただく役目がマスコミにはあるのではないかという感じがいたしております。
以上でございます。
〇石会長
どうもありがとうございました。どうぞ、水野さん。
〇水野(勝)委員
私も9年間お世話になりました。平成6年からでございます。平成2年から平成5年までは特例公債脱却ができていた期間でございまして、それが、平成6年からこの9年間に税収は全体の予算の51%にとどまるという今の姿になってきてしまっている。こういう姿を後々の世代に残すことになったというのはある意味で慚愧の至りでございます。
しかし、それによってまた景気が底入れをし、少しずつ上向いてきていることにつながっているのだろうということで、そこはきっと後世代もわかってくれるだろうと思います。今、代理からもお話がございました。小泉さんの公約を見ましても、2010年にはプライマリーバランスの黒字化を確実に達成するというようなことを言っておられるわけですから、大丈夫だと思いますので、今後の皆さん方のごご健闘を祈念するわけでございます。
〇石会長
どうもありがとうございました。税調のことを一番知っておられる水野さんからのお話でありまして、重みがあったと思います。
ほかによろしゅうございますか。お立場、いろいろあろうかと思いますが。
それでは、予定の時間も10分過ぎております。私も、最後に御礼を申し上げなければいけません。
上野代理に支えられ、かつ、事務局の方々からも支えられ、どうにか3年、任期を全うすることができました。これも本当に委員の皆様のご協力をいただいたおかげだと思っております。いろいろなことをやりたかったのでありますが、その一端は、先ほど上野さんが言ってくれたような形で、一本化したとか、対話集会を重ねたとか、いろいろなことをやったつもりでございますが、本番はやはりこれからです。少子・高齢化、これからだんだんスピードも速くなってきますし、何よりも国家財政も心配になってきております。
そういう意味で、税をどういう形で作っていくかということにつきましては国民一人ひとりの責任ではないかと、かねがね思っております。増税をお願いしなければいけない、などということをよく政治家とかお役人は言っていますが、お願いするのではなくて、国民一人ひとりが判断すべき時期にもう来ているのではないかと思います。そういう視点から、みんなで負担し合うというのがどういう意味を持っているかということを、もう少し考えてもらう、また、考えてもらえたらなと思いつつも、皆さんのご協力で少し我々の考えが浸透したかなとは思っております。
対話集会の結果を踏まえて言えば、いろいろご批判もあろうかと思いますが、10年前の対話集会、地方公聴会から比べれば、きわめて建設的に、本音ベースで議論ができたことは大いなる成果ではないかと思っております。
何よりもこの3年間、特に後半の2年間は1月から審議をするという超ハードなスケジュールで、これは大武さんが局長になったことと関係しているのかもしれませんが、ずいぶんしごかれたなあと思っていますよ、正直申しまして。皆さんにとっても、本当にお忙しい方々がこれだけお集まりいただいて審議を重ねられたというのも、これも税調に対する一つの思い入れかなと思っております。13日で任期が切れますので、これでこの3年間のグループは解散いたしますが、今後も、どうか引き続いて税調のことについて関心をお持ちいただきまして、また、いろいろご議論をいただけたらと思います。
どうも本当にありがとうございました。心から御礼申し上げます。
(拍手)
それでは、これにて散会いたしたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。