第42回総会 議事録
平成15年6月6日開催
〇委員
それでは、時間になりました。総会を始めたいと思います。
お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日は、いよいよ中期答申のまとめの最後のほうに入ってまいりまして、「答申素案」を検討したいと考えております。一応2時間半、休みなしと考えておりますが、進捗次第によっては2時間半では足りないこともあります。そういう意味であらかじめご了承ください。ただ、ご予定のある方はどうぞご退席されても結構でございます。
対外的には終わったあと、概略を私が記者会見で今日の模様を報告したいと思いますし、事後的にはこの議事録を公開したい。もちろん名前はとりますが、そういうことを考えております。
お手元に、「答申素案」と「答申に盛り込まれていない主な意見」という2つの冊子がございますが、これは未完成でございますから、いずれお立ちのときには机の上に残しておいていただきたいと思います。
この素案を作りましたこれまでの経過をちょっとご説明いたしますが、前回、5月27日に総会を開きまして、皆さんからご意見を頂戴いたしました。そのときは、すでに基礎問題小委員会、金融小委員会等々で議論いたしたものを積み上げて整理したわけでございまして、それを受けて起草会合というのを6月3日に行いました。これは基礎問題小委員会の方々にご参加いただきまして、私と会長代理とでまとめるべく作成に入ったときにお力をお貸しいただいたわけであります。
これは今年の最初、総理大臣から、「少子・高齢化と税制」の課題を今年は検討してくれと。昨年6月に基本方針を出しておりますから、そこと重ならないように、いうなれば昨年6月の段階で総論をやりましたので、今年はそこから特に重要な問題を抜き出してさらに深めようと、そういう発想でやったわけであります。例年どおり両論併記をできるだけ避けるという形で、国民に対するメッセージがぼけないようにいたしたいと思います。
ただ、皆さんのご意見の中で答申自体に盛り込まれないものは、この「主な意見」のほうでぜひ収録させていただいて、これも総理に一緒に提出いたします。総理、何かこっちのほうが興味あるような顔をして見ていましたから、たぶんこっちも読むでしょう。
そういう意味で、「答申素案」のほうは全体の流れの中で一本化して書きたいと思いますし、また、税調にもこれまでの一貫した流れがございますので、そう急に新しいことを、理屈を変えるというわけにもいかないでしょうから、そういう点についても十分に配慮したいと思っています。
ご覧いただきますと、全体で本文は15ページぐらいにまとめてございます。それにアペンディクスが付いておりますが、できるだけ多くの方に読んでいただきたいということになりますと、長いのは敬遠されがちでございます。そういう意味で、本文15ページという形で、極力圧縮してもらうようにこの本文を整理いたしました。
それでは、読むと40分ほどかかるのでありますが、これをまず最初に朗読いただきまして、そのあとパーツパーツに分けまして、皆さんのご議論をいただいて、修文の作業に入っていきたい、このように考えております。
それでは、事務局、大変ですが、よろしくお願いします。
〇事務局
はじめに
少子・高齢化やグローバル化が急速に進展する中、わが国経済社会の活性化を実現するには構造改革の推進が急務であり、税制も21世紀の新たな社会に相応しい姿に再構築していく必要がある。当調査会は、このような問題意識の下、昨年6月に「あるべき税制の構築に向けた基本方針」(以下、「基本方針」という。)をとりまとめ、中長期的視点から持続的な経済社会の活性化を実現するためのわが国税制のあるべき姿の全体像を示した。平成15年度税制改正では、この全体像に基づき、人的控除の簡素化・集約化の第一歩としての配偶者特別控除(上乗せ部分)の廃止、研究開発税制・設備投資税制の集中・重点化、消費税の信頼性・透明性の向上に向けた改革、相続税・贈与税の一体化措置の導入、法人事業税への外形標準課税の導入、金融・証券税制や土地税制の見直しなど広範な税目にわたる改革を実現した。
本年1月、小泉内閣総理大臣から当調査会に対し、平成15年度税制改正の成果を踏まえ、「基本方針」で示した考え方のうち少子・高齢社会を支える税制などの課題について、さらに検討を深めるようにとの指示があった。
翻ってわが国を取り巻く現状を見ると、景気がおおむね横ばいで推移する中、依然としてデフレ傾向に改善がみられない。財政については、多額の長期債務残高が国・地方を通じて累増し続けている。各分野における構造改革は進展しつつあるものの、厳しい経済情勢もあり国民の閉塞感を払拭するまでには至っていない。
このような状況の下、わが国は少子・高齢化の進展とともにまもなく20世紀を通じ増加傾向にあった人口が減少に転じるなど経済社会構造の大きな転換局面に立っている。この構造変化の前ではかつての高度経済成長を前提とした諸制度を維持し続けることは困難である。われわれは、わが国が有する高い潜在力を信じており、各分野における構造改革の取組みを加速し、活力にあふれる民間部門とそれを支える効率的で持続可能な公的部門を構築できれば、21世紀の少子・高齢社会への展望を切り開き国民の自信を回復させることは可能と考えている。また、わが国経済社会の高齢化・成熟化に伴いフローに比してのストックの重要性が高まるため、金融資産をはじめとする資産の効率的な活用が経済社会の活力の維持にとり重要な意味を持つ。
一方、持続可能な財政の確立に向けては、2010年代のできるだけ早い時期にプライマリーバランスの均衡化を達成することがまずもって重要であり、そのために着実な財政収支改善努力を行っていく必要がある。今後の高齢化の進展に伴う年金・医療給付の増大も見込まれ、国民の負担増は避けられない。これからの負担増について国民の理解を得るためにも、国・地方を通じた徹底した行財政改革による公的部門の効率化を図ることが大前提となる。
さらに、わが国の構造改革の重要な柱として、地方の自己決定権と自己責任を拡充し、地方分権の推進を図っていくことが求められている。
税制もこのような構造改革の動きと軌を一にして改革していかねばならない。
当調査会は、このような認識に基づき、総理指示を踏まえ、「少子・高齢化と税制」、「地方分権と税制」、「金融・証券税制」などの課題に焦点を絞って審議を進めた。審議の過程では4月下旬から5月上旬にかけて北米・北欧において関連する動向について調査した。
本答申は「基本方針」の内容をさらに深め、両者一体で将来のわが国税制のあり方について提案を行うものであり、これらの提案をもとに今後とも税制の再構築に向けて国民の間で幅広く建設的な議論が行われることを期待している。
第一 少子・高齢化と税制
一 少子・高齢社会を支える税制
少子・高齢化の進展により、21世紀のわが国は超高齢・人口減少社会を迎える。長寿化と少子化の進行により、わが国はこれまでも世界の主要国に例を見ない速さでの高齢化を経験してきた。今後もこの傾向は続き、いわゆる「団塊の世代」が高齢期を迎えた2015年頃には国民の4人に1人が高齢者となり、また、人口は2006年をピークに減少に転じると見込まれている。
人口構造の大幅な変化は、家族のあり方をはじめとして、わが国経済社会に多大な影響を及ぼす。国民は、少子・高齢化に伴う労働力人口の減少、貯蓄率の低下を要因とする経済成長率の低下や現役世代の社会保障負担の増加等に対する懸念から漠然とした不安を抱いており、今後の少子・高齢社会を悲観的にとらえる見方が広がっている。しかしながら、前述のとおり各分野における構造改革を加速することにより、経済規模が人口減少に伴い縮小しても一人当たりで見ればより豊かな社会を築くことも可能である。
技術革新を通じた生産性の向上、女性や高齢者の社会参画の推進、持続可能な社会保障制度の構築など取り組むべき課題は山積しており、少子・高齢社会に適合する姿に諸制度を再設計することが重要である。税制についても、以下の3つの視点に基づき改革に取り組んでいく必要がある。
[1] 将来にわたる安心をもたらす税制
今後の高齢化の進展に伴い社会保障などの公的サービスの増加は避けられないと見込まれる。財政が国・地方を通じて極めて厳しい状況にある中、国民は将来の負担増を予期し、本来国民に安心をもたらすはずの諸制度が逆に将来への不安を増幅させ経済の活力を削ぐ要因ともなっている。社会保障制度は少子・高齢社会を支える必要不可欠なセーフティネットである。国民の将来不安の払拭には、将来にわたり持続可能な社会保障制度と財政構造の構築が必要であり、そのためには、社会保障給付の見直しを含む歳出面での徹底した改革とともに、税制面では、所得・消費・資産等の間でバランスのとれた税体系に配意しつつ、必要な公的サービスを安定的に支える歳入構造の構築が重要となる。
[2] 若者から高齢者までがともに支える税制
これからの負担増について国民の理解を得ていくには、税負担の公平を確保することが重要となる。
最近の高齢者は、積極的に社会活動に参画し経済的にも現役世代と遜色のない者がいる一方で、健康状態がすぐれず経済力が低下した者もいるなど極めて多様な姿となっている。今後の少子・高齢社会では、こうした高齢者の多様性を踏まえ、年齢だけを基準に画一的・固定的に高齢者を取り扱う発想からの転換が求められている。他方、現役世代は、右肩上がり経済の終焉とともに経済環境が激変し雇用不安や賃金の低迷などの困難に直面している。
わが国では高齢者と現役世代の比率が1:3.6(2000年)から1:1.9(2025年)へと急速に変化する。このような状況の下で、今後急増が見込まれる社会保障などの公的サービスにかかる費用の負担を大幅な賃金上昇が期待できない現役世代に求める構造を維持した場合、将来の現役世代の負担が過重となり社会の活力の発揮は期待しがたくなる。
こうした中、税制面では、低所得者層に配慮しながら、高齢者を年齢だけで一律に優遇する税制の歪みを見直し、年齢にかかわらず能力に応じて公平に負担を分かち合うことが重要となる。そうすることにより、世代間の公平とともに高齢者間の公平の確保にも資することとなる。
[3] 個人や企業の活力を引き出す税制
高齢化・成熟化するわが国経済社会を活力にあふれるものとするには、個人や企業が潜在力を十分に発揮できる社会を築く必要がある。このため、生涯現役社会や男女共同参画社会の構築に向けて、能力と意欲のある高齢者や女性の社会参画を妨げない制度づくりが重要な課題となっている。また、高齢者の役割が高まる今後の社会では、民間非営利活動には新たな活力の源泉として高い期待が寄せられている。さらに、人口減少社会で経済的な豊かさを実現する鍵となるのが生産性の向上であり、生産活動の主役である企業が今後ともグローバル化等の構造変化に対応し柔軟に活動できる環境を整備していくことが必要となる。税制面では、個人や企業の活力を引き出す観点から、個人の就労や企業の選択を歪めない中立的な税制、簡素で分かりやすい税制を基本としつつ、今後とも構造改革を促進し経済社会の活性化を図るために必要な対応を行うべきである。
これらの視点を踏まえれば、昨年6月の「基本方針」でも述べたとおり、将来の少子・高齢社会を支える税制の構築に当たっては、個人所得課税の基幹税としての機能を回復すること及び消費税の役割を高めていくことが基本となる。このような改革は、国民の負担増を伴うものであり、国民の理解を得るには、徹底した歳出削減、行政改革を実施するとともに、とりわけ税制上の歪みや不公平の是正といった観点に立って取り組むことが重要である。以下、このような基本認識の下、各税目の課題について列記する。
二 個別税目の改革
1.個人所得課税
(1)少子・高齢社会における個人所得課税の基本的考え方
[1] わが国の個人所得課税の負担は、国民所得比でみると、主要国が二桁の水準であるのと比べ極めて低い水準となっている(平成15年度:6.1%)。特に税率構造について見れば、大多数の納税者が最低税率のみに分布しており、主要国の中でも特異な構造となっている。これらは累次の減税により、諸控除の拡充のほか、税率の引下げやブラケットの拡大による累進緩和がなされた結果である。当調査会は、既に「基本方針」において、諸控除や税率構造の改革の方向に加え、継続している定率減税についても、経済情勢を見極めつつ、廃止していく必要があることを示した。今後、このような考え方を踏まえ、財源調達機能や所得再分配機能が適切に発揮されるよう、基幹税としての機能の回復に取り組んでいく必要がある。かかる視点からあるべき個人所得課税を将来にわたり構築することは、国民の負担増を伴うものとならざるを得ず、経済情勢も見極めながら改革に取り組んでいかなければならない。
こうした改革に当たっては、まず、近年の経済社会の構造変化に対応して、税制の様々な歪みや不公平を是正し、個人の経済・社会活動上の多様な選択を妨げないような負担構造を構築していく必要がある。この取り組みは単純な増税論や年金制度改革のための財源論を論ずることではない。いわんや真の弱者にまで課税強化を行うことを目的とするものでもない。大切なことは、少子・高齢社会での個人所得課税のあり方として、どのような負担構造を目指すのかという問題である。
[2] 個人所得課税が様々な税制上の歪みを抱えている要因としては、公的年金等控除のように特定の収入だけに適用される特別の控除や非課税措置が多く存在することがあげられる。その結果、多くの収入が課税ベースに含まれないこととなり、他の収入との間で負担にアンバランスが生じ、納税者に不公平感を抱かせ、ひいては自由な経済・社会活動を妨げる結果ともなっている。
例えば、公的年金等控除は、年金収入であれば高齢者の他の収入状況に関わりなく適用されるため、高所得者であっても課税ベースからの脱漏が生じ、現役世代との間はもちろん、高齢者間でも負担のアンバランスを引き起こしている。また、給与所得控除や退職所得控除については、従来の終身雇用を中心とする雇用形態が背景となっていた面がある。しかしながら最近では、就労形態の多様化などが進んでおり、税制と経済社会の変化との間に乖離が生じている。
なお、給与所得者の間には、事業所得者と比較して所得捕捉に関する不公平感が依然として根強く、適正課税の実現に向け、より一層の執行面での努力が求められている。
[3] 上記を踏まえれば、今後の個人所得課税のあるべき負担構造としては、広く公平に負担を分かち合うため、様々な要因による収入をできるだけ課税ベースに取り込んだ上で、個々人の諸事情への配慮は、基礎控除や扶養控除といった人的控除にまとめて措置する方向が基本的に望ましい。
こうした負担構造の構築に当たっては、現役世代に負担が偏らないよう世代間の公平を確保するとともに、個人の経済・社会活動の選択に対し中立的な制度とする観点が重要である。また、少子化の進展に対し、社会保障制度との関連にも配意しながら、次世代の担い手である子供の扶養へ配慮することも考慮すべきである。
平成15年度税制改正において配偶者特別控除(上乗せ部分)が廃止された。これは課税ベースを拡大すると同時に、配偶者の就労に対して中立的な税制に近付けることを意図したものであり、経済社会の構造変化に即応した改革の第一歩と位置付けられる。
(2)年金課税等の見直し
わが国の年金課税の現状は、社会保険料拠出を全額所得控除する一方で、給付についても公的年金等控除などの適用によって実質的に非課税に近い状態となっている。これについては、次のような問題がある。
・少子・高齢化の進展に伴い、今後ますます増大する社会保険料拠出と年金給付がともに課税ベースから脱漏することとなり、個人所得課税の基幹税としての機能が更に減殺されていく。
・年金課税の整合性という観点からみて、拠出段階を非課税としたまま給付段階も実質非課税とする現行税制は一貫性を欠いている。
・高齢者の経済状況は様々であるにもかかわらず、高所得者に該当する高齢者まで一律に現役世代と比べて優遇しており、高齢者間だけでなく、世代間でも不公平が生じている。
このような問題に対し、次の点を念頭に年金課税の改革を行う必要がある。
[1] 少子・高齢社会においては、現役世代の活力を維持する方向で改革を進めることが重要である。従って、年金課税の見直しについては、年金収入のみで生計を立てる低所得者へ配慮しつつ、まず給付段階での優遇措置の適正化に取り組むべきである。公的年金収入を課税ベースに取り込み、担税力のある高齢者に現役世代と同じように、能力に応じた負担を適切に求めていくことは、高齢者間のみならず世代間の公平にも資することとなろう。
[2] 公的年金等控除は、昭和62年改正時に、それまで年金給付を給与等とみなして給与所得控除が適用されていたことを改めるとともに、負担調整を図るという趣旨で創設されたものである。しかし、高齢者の担税力に対する配慮としては、老年者控除と趣旨・機能が重複している。また、65歳以上の高齢者に対して適用される措置については、低所得者・高所得者に関係なく適用され、「年齢だけで高齢者を別扱いする制度」となっている。更に、高齢の就業者の増加とともに給与収入を得ながら年金を受給する者が増加しており、これに給与所得控除と公的年金等控除が各々適用され、課税ベースの脱漏が生じている。従って、これらの問題点を是正し、真の担税力に応じた適切な課税を行っていく必要がある。
[3] 社会保険料控除については、公的年金に対する強制拠出に加え、自助努力による任意拠出についても控除対象となっている。今後、社会保険料の増大とともに、個人所得課税の課税ベースがますます浸食される懸念がある。今後の社会保険料控除のあり方については、年金制度改革全体の方向性とも関連付けて控除対象の範囲を検討していく必要がある。この場合、公的年金と私的年金の役割分担のあり方についての見直しを踏まえる必要がある。将来的には、公的年金に対する保険料控除に一定の限度額を設けるとともに、税制適格の私的年金については拠出時控除・給付時課税の枠組みを徹底する方向で見直すことが考えられる。また、生損保控除や財形貯蓄など貯蓄優遇税制の見直しも行うべきである。
[4] 課税ベースの拡大の観点からは、控除の見直しとともに、社会保障給付に対する課税上の取扱いについて、諸外国での事例も踏まえ、課税対象を拡げる方向で検討すべきである。特に、遺族年金給付や失業等給付のように、個々人の所得や資産の保有状況と関係なく支給される非課税給付については、今後、見直しを進めていく必要があろう。その際、給付の性格に則して必要な担税力への配慮は人的控除等で行うべきである。
現下の年金制度改革に関しては、基礎年金の国庫負担割合の引上げとそれに伴う財源の問題がある。この国庫負担の問題については、給付水準をはじめとする年金制度のあり方を総合的に検討し、将来の年金制度体系における公費の位置付けと関連づけて検討すべきである。その際、現状でも公費の相当部分を公債に依存している財政状況にも十分留意する必要がある。
(3)給与課税等の見直し
[1] 給与所得控除については、勤務に伴う経費の概算控除として明確化することとあわせて、事業所得者と同様、給与所得者にも自らの就労に要した費用を実額で確定申告して控除する機会を増加させていくべきであろう。こうした方向は、給与所得者が自らの経費に対し説明責任を果たすことにつながり、自立した勤労者像の位置付けにも資するものと考えられる。その際、負担水準を調整する観点から、基礎控除をはじめ人的控除の水準等を考慮することも合わせて検討していく必要がある。
[2] 退職所得控除については、雇用の流動化が進展する中で、多様な就労選択に対し中立的な制度とする必要がある。従来と比べ個人所得課税の累進構造が緩和されていることや、最近の企業年金の普及等の状況を踏まえ、過度な優遇を是正するとともに、給与、退職一時金、年金の間で課税の中立性を確保していくべきである。
(4)人的控除の基本構造の見直し
[1] 少子・高齢社会においては、社会保障など公費の負担をできる限り多くの者が広く公平に分かち合う負担構造とし、老若男女を問わず働く能力と意思のある者が、経済社会の支え手として積極的に活躍できる社会を構築する必要がある。
[2] こうした観点からは、人的控除の基本構造のあり方について、今後、家族の就労に対して中立的な仕組みとしていくことが重要である。人的控除のあり方については、従来から、主に標準世帯(片稼ぎの夫婦子二人世帯)の課税最低限を念頭に、世帯としての負担調整を行う観点から検討される側面が強かった。しかしながら、今後は世帯構成の多様化も踏まえ、個人を中心とした考えをより徹底する必要がある。
[3] 配偶者に対する配慮のあり方としては、家事や子育て等の負担はどのような世帯形態でも生じる上、今後、共稼ぎの増加が見込まれるため、税制面で片稼ぎを一方的に優遇する措置を講じることは適当でない。また、扶養に対する配慮については、少子・高齢社会における子育ての重要性を考え、今後、児童など真に社会として支えるべき者に対して集中することが考えられる。その際、税額控除制度については、社会保障制度との関連や執行面での課題、諸外国での事例等を踏まえながら検討する。
(5)個人住民税
個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任するという性格を有する。同時に、地方公共団体が少子・高齢化に伴い提供する福祉等の対人サービスなどの受益に対する負担として、対応関係が明確に認識できるものである。また、税収入の面で見れば、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えているものである。このような性格を踏まえ、地方税の基幹税として充実確保を図る必要がある。
[1] 所得割
所得割については、個人所得課税に共通する課題に対処する観点に加え、地方税固有の性格を踏まえ、諸控除や非課税所得の縮減などを行う必要がある。
[2] 均等割
均等割の税率は低い水準にとどまっており、人口段階に応じた税率区分の解消を含め、その水準の引上げを図る必要がある。また、生計同一の妻に対する非課税措置については、男女共同参画社会の進展を踏まえ、個人単位課税の観点から廃止する必要がある。
2.消費税
(1)少子・高齢社会における消費税の重要性
消費税は、制度創設以降、社会保障をはじめとする公的サービスの費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う上で大きな役割を果たしている。同時に、その税収は安定的に推移し現在では国税収入の約2割を占めるなど、わが国税制における基幹税の一つとして国民の間に定着してきた。
少子・高齢化が進展する中で国民の将来不安を払拭するためには、社会保障制度をはじめとする公的サービスを安定的に支える歳入構造の構築が不可欠であることから、消費税は極めて重要な税である。したがって、将来は、歳出全体の大胆な改革を踏まえつつ、国民の理解を得て、二桁の税率に引き上げることも念頭に置く必要がある。これが今後の税体系全体の見直しの基本となると考えられる。これに関連し、所得に対する逆進性の問題については、消費税という一税目のみを取り上げて議論すべきものではなく、税制全体、更には社会保障制度等の歳出面を含めた財政全体で判断していくことが必要である。
少子・高齢社会における消費税の重要性にかんがみ、消費税に対する信頼性・制度の透明性の向上を図る観点から、平成15年度税制改正において中小事業者に対する特例措置の見直し等抜本的な改革を講じたところである。
(2)今後の検討課題
このように消費税に対する信頼性・透明性は相当程度向上したと考えるが、今後、消費税率の引上げについて検討していくに際して、以下のような課題についても検討を深める必要がある。
[1] 税率構造
消費税の税率構造は、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保の観点から極力単一税率が望ましい。しかし将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率となった場合には、所得に対する逆進性を緩和する観点から、食料品等に対する軽減税率の採用が検討課題となる。
[2] 仕入税額控除
現行消費税制度において仕入税額控除を行うためには、課税仕入れ等の事実を納税者自身が記載した帳簿の保存に加え、取引の相手方が発行した請求書等の取引の事実を証する書類の保存が必要とされている(「請求書等保存方式」)。このような請求書等保存方式は、単一税率の下では適切な仕入税額控除に特段の支障がないが、将来、複数税率が採用される場合には、適正かつ円滑な施行に資する観点から、免税事業者からの仕入税額控除を排除し、税額を明記した請求書等の保存を求める「インボイス方式」を採用する必要がある。
[3] 消費税の使途
消費税はわが国の財政にとって重要な役割を果たすべき基幹税である。平成11年度予算以降、国の消費税収(地方交付税分を除く国分)を基礎年金、老人医療及び介護に充てることを毎年度の予算総則に明記する、いわゆる「消費税の福祉目的化」が行われている。税率の引上げに際しては、国民の理解を得るために社会保障支出の増大との関係を明確に説明することが必要となろう。
[4] 地方消費税
地方分権の推進、地域福祉の充実等のために創設された地方消費税は、消費に関連した基準により都道府県間で清算を行うことにより税収の偏在性が少なく、安定的な基幹税目の一つとして定着し、大きな役割を果たしている。少子・高齢化等の進展に伴い、今後、福祉・教育等の幅広い行政需要を賄う税として、地方消費税の充実確保を図っていく必要がある。
3.法人課税
(1)少子・高齢社会における法人課税の基本的考え方
少子・高齢化の進展により、労働力人口の減少や貯蓄率の低下を要因とする経済成長率の低下が懸念される。また、経済のグローバル化が進む中で、わが国企業は厳しい国際競争の下で活動を行っている。そうした中で、経済社会の活力を維持していくためには、企業が創意工夫を発揮し、新しい事業・技術の創出を図ることにより、競争力の強化や産業構造の改革を進めていく必要がある。また、米国等に見られるように企業や個人が多様な形態により柔軟に事業・投資活動を行うことができる環境の整備を図ることも重要である。こうした観点から、今後の法人税の位置付けとしては、国際的に整合性がとれ、企業活動に対し歪みの少ない中立的な税制とすることを基本としつつ、今後とも構造改革を促進し、経済社会の活性化を図るために必要な対応を行っていくべきである。
平成15年度税制改正においては、企業部門が全体として資金余剰状態にあり、過剰な設備・負債を抱えている状況の中で、21世紀のわが国を支える産業・技術の創出に不可欠な研究開発、IT投資に直接つながる政策税制を集中・重点的に講じた。また、活力ある中小企業の経営基盤を強化する中小企業税制の見直しを行った。
(2)今後の対応の方向性
[1] 「基本方針」で述べたとおり、法人税率の引下げについては、経済状況、わが国の税負担の水準や税体系全体のあり方との関連、更には先進国との税率のバランスを踏まえて、今後検討すべき課題である。
[2] 経済活動のグローバル化、金融自由化等に伴い、国際的なものを含め様々な形態による事業・投資活動が出現している。これらは企業や個人の柔軟かつ積極的な事業・投資活動を引き出し、新たな活力の源泉となることが期待される。他方、企業活動が複雑化・多様化する中で、各国の税制の相違を利用した租税回避の動きが顕在化している。こうした中で、多様な形態による事業・投資活動が円滑に行われるよう、適正な課税のあり方を検討していく必要がある。
[3] 高齢者が増加する今後の社会では、NPO法人等の民間非営利活動が活発化していくと考えられる。こうした活動は、今後ますます多様化する国民のニーズに行政に代わって効果的、機動的に応えることができるものであり、大きな役割が期待される。このため、民間非営利活動が円滑に行われるよう、寄附金税制も含め適正な課税のあり方を検討していく必要がある。
[4] 公益法人に対する課税のあり方については、現在行われている公益法人制度改革の検討を踏まえながら、適正な課税が確保されるよう、検討する必要がある。
[5] 法人事業税への外形標準課税の導入については、平成15年度税制改正において、資本金1億円超の法人を対象として、外形基準の割合を4分の1とする外形標準課税制度を創設し、平成16年度から適用することとしたところである。今後、納税義務者となる法人への周知徹底を図るなど、この制度の定着に努めていくことが必要である。
4.相続税・贈与税
(1)基本的考え方と相続税・贈与税の一体化等
相続税は、相続を契機とした世代間の財産移転に着目し、資産の再分配を図るという他では代替できない固有の機能を有している。
相続課税を取り巻く環境をみると、経済のストック化の進展や高齢化の進展に伴う相続による次世代への資産移転の時期の大幅な遅れなどの経済社会の構造変化への対応が求められている。
このような状況を踏まえ、平成15年度税制改正において、生前贈与による資産移転の円滑化に資する観点から、相続税・贈与税の一体化措置を相続時精算の簡素な仕組みの下で実現した。あわせて、個人所得課税の最高税率や諸外国の例との格差を是正するため、相続税の最高税率の引下げを含む税率構造を見直した。
(2)今後の検討課題
これまで相続税は、累次にわたる減税や各種の特例の拡充により、その負担は大幅に緩和されてきたが、負担の適正化に必要な課税ベースの拡大は実施されてこなかった。
個人所得課税の累進構造のフラット化の進展、将来の消費税率の引上げを考慮に入れると、相続税の持つ資産ストックの段階での再分配機能が一層重要となる。
また、高齢者を取り巻く状況をみると、近年、現役世代の負担を伴う社会保障給付が充実し、個々人が主に家族で老後扶養の負担を担う形態から、より社会全体で老後扶養の負担を支えるようになってきている。このような老後扶養の社会化の進展に伴い、相続時に残された個人資産に負担を求める必要性が高まっていると考えられる。
こうした点を踏まえ、今後、少子・高齢化の下では、相続税について、従来より広い範囲に適切な税負担を求める狙いから、課税ベースの拡大に引き続き取り組む必要がある。
第二 地方分権と税制
一 基本的考え方
地方税は、地域における行政サービスの経費を地域住民がその能力と受益に応じて負担し合うことが基本である。このことから、応益性を有し、薄く広く負担を分かち合うものであること、さらに、地域的な偏在性が少なく、税収が安定したものであることが望ましい。一方、地方税の現状を見ると、国と地方の歳出純計に占める地方の歳出の割合は約63%であるのに対し、租税総額に占める地方税の割合は約42%であり、地方の歳出規模と地方税収入が乖離している。
そのような中、わが国の構造改革の重要な柱として、地方分権を推進し、自立した国・地方関係を確立し、活力と個性のある地域社会を実現していくことが求められている。地方の自律性を高めるためには、市町村合併の推進や地方歳出に対する国の関与の廃止・縮減などによる地方行財政の効率化が不可欠である。このことを前提に、地方公共団体が一層の情報開示を進め、受益と負担の対応関係を意識しつつ自らの責任と判断で地域のニーズに応じた行政サービスを実施できるよう地方税等の自主財源を中心とした歳入基盤を確立することが必要である。
二 今後の対応の方向性
いわゆる三位一体の改革については、国と地方の役割分担を見直し、国庫補助負担金の整理・合理化や地方交付税の財源保障機能のあり方を検討し、税源移譲を含め国と地方の税源配分のあり方について根本的に見直すべきである。その際、国・地方それぞれの財政事情や個々の自治体に与える影響を考慮に入れる必要があろう。
また、地方分権一括法による地方税法の改正を契機として、法定外税や超過課税の活用の動きが活発化している。主要な税源は国・地方の法定税目とされていることなどから、現行の枠組みでの課税自主権の活用による地方税源の充実には限界がある。しかし、このような取組みは、地方分権の観点から望ましいものであり、課税自主権がさらに活用しやすくなるような方策について検討を進める必要がある。課税自主権の活用に当たっては、公平・中立などの税の原則に照らし十分な検討が行われることが望ましく、住民と正面から向き合い、自らの責任と負担で施策を進める姿勢が求められる。
第三 その他の課題
一 金融・証券税制
金融資産性所得に対する課税に関しては、「貯蓄から投資へ」という政策要請を受け、貯蓄優遇税制や株式等譲渡益課税の見直しが相次いで進められてきた。平成15年度税制改正では、上場株式等の配当及び譲渡益、公募株式投資信託の収益分配金に対して、利子と同じ20%の税率で課税を行うことを基本としつつ、従来の優遇措置を整理の上、今後5年間については上記税率を10%に軽減する措置が講じられた。また、申告不要制度の導入など投資家利便にも配慮された。こうした改正を踏まえ、今後は中長期的に安定した税制の構築を目指し、幅広い観点から検討を続けていく必要がある。
近年における情報化・国際化の進展、金融技術の高度化の中で、多様な金融商品が組成されており、取引形態の操作等によって所得分類を変更したり、収益の発生時点を操作することなどを通じて、租税負担を回避することが容易となってきている。資本市場からの資金調達が重要性を増す中で、各種事業体やファンドの設立など投資形態も多様化しており、国際的な租税競争の下、各国税制や国際的な資本取引の動向も勘案する必要が生じている。
わが国の金融資産性所得に対する課税は、収益の性質・発生態様や所得捕捉体制の問題等から、総合課税を基本としつつも分離課税を多く導入しており、課税方式も個々の収益ごとに異なるものとなっている。こうした中、今後の課税のあり方については、簡素かつ公平で安定的な制度の構築を念頭に、金融商品間の中立性を確保し、金融資産性所得をできる限り一体化する方向を目指すべきである。
このような方向に関しては、金融資産性所得の範囲や税率、損益通算など多岐にわたる課題について、様々な観点からの理論的・実務的な検討が必要である。その際、貯蓄・投資や企業活動への中立性の確保、課税ベースの拡大、所得再分配への影響、納税者利便と国内外にわたる適正執行の実現などに関する配慮を欠かせない。このためには、納税者番号制度など納税環境の整備を進めていくことも重要となろう。また、諸外国の状況を見ると、二元的所得税など新たな租税論の展開が見られる一方で、勤労所得との間の課税バランスや租税回避行動の抑制等の観点から、実際的な対応が行われている。今後、金融資産性所得に対する課税の一体化の検討に当たっては、わが国においても、これらについて十分な検討が必要となろう。
二 納税環境整備
納税環境整備は、課税の公平・中立・簡素の実現のためにきわめて重要である。また、従来から指摘されている各種所得の捕捉率をめぐる不公平感の問題への対処ともなる。今後、引き続き制度・執行の両面における取組みを着実に推進し、次のような課題について更に検討を深め、税制及び税務行政に対する納税者の信頼を確保していかねばならない。
1.納税者番号制度
(1)納税者番号制度を巡る環境の変化
納税者番号制度は、適正・公平な課税の実現に資することに加え、税務行政の効率化・高度化にも寄与することから、従来から当調査会においても検討を重ねてきた。特に近年、各種カード等や暗証番号の利用が普及し、日常生活における番号の利用がより身近なものになるなど、国民の意識も徐々に変化の兆しが見られる。さらに、基礎年金番号や住民票コードの導入による全国一連の番号の整備、個人情報保護法制の整備などの変化が見受けられ、制度導入に向けた環境も次第に整いつつある。
(2)納税者番号制度の検討の必要性
従来から諸外国の経験も踏まえ、総合課税化や適正な資産課税のために、納税者番号制度の必要性が指摘されてきた。近年においては、金融資産性所得を一体的に課税する新たな金融・証券税制を構築するためには、納税者番号制度が不可欠であると考えられている。また、税務行政の効率化・高度化や納税協力(税制への信頼と納税過程における法令遵守)の向上といった観点、更には経済取引の電子化・国際化を背景とした国際的な資金シフトに対応するためにも、改めて検討を行うべき時期にきているといえよう。
(3)今後の検討の進め方
納税者番号制度については、金融資産性所得に対する課税一体化の検討を含めた金融・証券税制の構築のため、その導入に向けた具体的な諸方策を検討する必要性が高まっている。他方諸外国においても、制度導入当初においては納税者がある特定の取引を行う場面においてのみ番号の利用が義務づけられるのが通例である。申告納税になじみの薄いわが国において納税者番号制度を導入する場合には、こうした諸外国の例が参考となる。
今後は、全国一連の番号の利用や個人情報保護のあり方の状況を踏まえ、導入に向けた具体的な諸方策について更に検討を進めるべきである。この際、民間及び行政のコスト負担が小さく、プライバシー保護を含めたシステムにおけるセキュリティが確保されるよう適正な制度設計を行うとともに、納税者番号制度に対する国民の理解を深めていくことが必要不可欠である。そのためにも、例えば簡素な申告手続を可能とすることを含め、番号を利用する納税者の利便性が高まるよう、制度のあり方や利用方法、あるいはその利用者や対象となる取引の範囲について検討することが必要である。
2.公示制度・資料情報制度
公示制度については、個人のプライバシーへの配慮の観点から問題点が指摘され、制度の廃止を含めた検討が必要である。また、国際化、情報化などの経済社会の構造変化に対応した資料情報制度の拡充その他の制度整備も重要である。平成15年度税制改正においては、わが国の租税条約相手国の要請に基づき執行当局が情報を収集するための質問検査権を創設する措置が講じられた。
さらに、平成15年度より、納税者利便の向上等を図る観点から、電子申告や電子納税の導入が予定されており、引き続き電子化の活用を図っていくことが適当である。
今後とも、申告納税制度に対する納税者の信頼確保の観点及び国際化や情報化・電子化などの経済社会の構造変化に対応した適正・公平な課税の確保の観点から、これらの問題について具体的な検討を深めていく必要がある。
三 環境問題への対応
1.基本的考え方
京都議定書の発効に向けて、地球温暖化問題をはじめとした環境問題への関心が年々高まっている。当調査会においても、環境問題に対する総合的な取組みの一環として、税制面での対応について、幅広い観点から検討していく必要があるとしてきた。特に、地球温暖化問題については、規制的手法、自主的取組、税制以外の経済的手法の活用に加えて、税制を活用することの必要性について広く議論が求められる。
2.税制面で対応を検討する場合の留意点
環境問題に対する税制面での対応の検討に際しては、いくつか検討すべき点がある。
まず、公的サービスの財源調達という租税の基本的な機能に照らして考えた場合、特定の政策目的に税制を活用することや政策目的が実現されるにつれて税収が逓減していくという性質について問題となる。また、そもそもこのような性質を有するものは「課徴金」ではないかという意見もあり、こうした基本的な点について、今後、十分な議論をしていく必要がある。
更に、環境負荷の原因者に追加的な負担を求めることによって生じる税収を地球温暖化対策などの環境対策のために用いるべきか否かの問題がある。一般財源にするか、目的税又は特定財源にするかについては、当調査会が繰り返し指摘してきたとおり、税の基本的な考え方に沿って検討する必要がある。
いずれにせよ、いわゆる環境税の導入を検討する際には、国民に広く負担を求めることになる問題だけに、国民の理解と協力が得られることが不可欠である。今後、国・地方の環境施策全体の中での税制の具体的な位置付けを踏まえながら、国内外における議論の進展を注視しつつ、汚染者負担の原則(PPP)に立って、引き続き幅広い観点から検討する。この際、揮発油税、軽油引取税、石油石炭税など既存のエネルギー関係諸税等との関係についても検討すべきである。
四 国際課税
企業活動のグローバル化が進む中、国家間の課税権の調整を図る租税条約の果たす役割は一層重要となっている。投資交流をより一層促進し、併せて租税回避の防止のための措置を整備するべく、今後、租税条約の新規締結及び改正を積極的に進めるべきである。また、国際的な事業・投資活動が複雑化・多様化し、租税回避の動きも顕在化している中で、国際課税制度全般にわたり、国境を越えた経済活動についてわが国の課税権を十分確保し、適正な課税が図られるよう、今後、一層の見直しを進めるべきである。
五 不良債権処理と税制
わが国金融・産業の再生を図る観点から、金融機関の不良債権処理の加速は重要な課題である。繰延税金資産をはじめとする諸課題に対する金融行政、企業会計を含めた全体の対応策の一環として、税制面での対応も検討すべきである。その基本的な考え方は補論にまとめている。その検討に当たっては、まず、政策目的を明確にした上で、税制上の措置がそれを実現するために有効かつ相応しい手段であるか、また課税の公平確保の観点から慎重に判断せねばならない。
〇委員
ありがとうございました。
補論の部分が残っておりますが、すでに40分ほど時間も経過しておりまして、補論まで読みますと時間切れとなりかねませんので、まず、本論でいろいろなご意見を聞いて、余裕がありましたら補論のほうへと思っています。
若干補足的な説明をしておきますが、この答申は、同時に来年からやろうというような短期的な時点に立って議論しているわけではございません。昨年6月に「基本方針」で、10年、15年先を見通して日本の税制はどうあるべきかという議論をしたわけです。それを受けまして、今回、少子・高齢化という切り口から税制全体を見渡すという、昨年度やりましたオーバーオールな議論に比べて、今回はかなり特定の、英語で言えばスペシフィックと申しますか、そういう点に力点を置いている点にまずご理解をいただきたいと思います。
そこで、はじめに等々が最初の基本的な考え方で、大きく問題領域は、1ページから、約半分を占めます11ページまでが「少子・高齢化と税制」ということで、個人所得課税、消費税、法人税、相続税・贈与税という四つの大きな税について、少子・高齢化と関連づけ将来どうあるべきかという視点を訴えたつもりであります。
それに比べますと、第二、第三の論点はいささか量的には少ない。第二の柱は「地方分権と税制」が11ページから12ページにかけて約1ページ。それから、その他残っております金融・証券税制以下、納番も含めまして、すべて「その他の課題」という形で三つ目の大きなグループを形成している、こういうふうにご理解いただきたいと思っております。
そういう意味で第一の論点がこの答申のいうなれば中心課題でございます。その中でおのずと個人所得課税も含め、今後あるべきという姿から、現行税制の改革の方向をにじませたということであります。容易にわかりますように、昨年はそれでも設備投資とか研究開発投資の減税とか、生前贈与とか、それなりに減税というものを抱き合わせた形でロジックができておりましたが、今回は、ある意味ではそういうタマがなくなったということと、この財政事情、それから少子・高齢化のスピードから言って、将来こういう姿で税負担をしない限り--逆に言えば、全世代すべての国民が負担し合わないと、少子・高齢化、借金漬けの日本の財政を前提にして、持続可能性は望めないという視点で書かれているわけであります。
それでは、ご議論いただきますが、起草会合にお出になった先生から見ると、俺の意見が入ってないではないかとご不満のところもあるかもしれませんが、これは「主な意見」のほうにも収録しておりますし、その辺は、全体の流れで我々知恵を絞って書いたという点でお許しいただきたいと思います。ただ、非常に重要だから復活してくれというご意見があっても結構でございます。
まず最初に、基本的な我々のスタイル、理念がはっきりしないといけませんから、はじめのところと個人所得課税に入る本文3ページの上ぐらいまでのところで、基本的なスタンスでご意見を伺い、修文等々のご要望を承りたいと思っています。時間の関係もございますから、どんどんご発言をいただきたいと思いますし、途中ご退室の方はあとのほうに触れていただいても結構でございます。
それでは、議論を始めましょう。
では。
〇委員
言葉じりみたいなことで。
〇委員
結構ですよ、どうぞ。
〇委員
1ページですけれども、9行目。「貯蓄率の低下を要因とする経済成長率低下」……。
〇委員
本文の1ページですね。
〇委員
そうです。
〇委員
どうぞ。
〇委員
貯蓄率の低下だけが経済成長を妨げているのではないと思うのですが。書き方をどうするか、です。
〇委員
何か具体的なご意見はございますか。
〇委員
貯蓄率の低下ももちろんあるけれども、経済成長率全体は低下の方向にある。現下の状況においてはですね。
〇委員
ですから、少子・高齢化というものが引き出すであろう労働人口の減少、貯蓄率の低下を要因とすると、つながっているわけですよね。だから、少子・高齢化と経済成長の鈍化ということがあって、その間に労働力と貯蓄率が入っているわけです。ですから、今のご意見だと、「貯蓄率の低下など」とか何とか、そうしろということですか。
〇委員
そうです。
〇委員
ほかに何があるんでしょうか、具体的には。
〇委員
今の場合にはデフレもありますし。
〇委員
いえいえ、これは少子・高齢化というもので引っかけてこれを書いているんですよ。
〇委員
人口が減るわけですよね。だからパイは小さくなるわけですね。したがって経済成長率は小さくなる。
〇委員
でも、デフレが今後永遠に続くとは考えてないんですよ。ですから、少子・高齢化という長い目で見て、貯蓄が落ち、労働力が落ちるから成長が落ちる、こういうロジックですね。デフレは現在も続いていますから。
〇委員
でも、貯蓄率が低下すれば、その分は消費に回る可能性があるのではないでしょうか。
〇委員
いや、全体のパイが縮まると、わからないですね。
〇委員
そうですね。
〇委員
わかりました。検討させていただきます。ありがとうございます。
ほかに、いかがでしょうか。
〇委員
これも些細なことではあると思うのですけれども、3ページの1行目から3行目あたりのところですが。
〇委員
本文ですか。
〇委員
はい、本文です。前のページからですけれども、「このような改革は、国民の負担増を伴うものであり、国民の理解を得るには、徹底した歳出削減、行政改革」云々というところですが、「行政改革を実施するとともに、とりわけ税制上の歪みや不公平の是正といった観点に立って取り組むことが重要である」と。その「実施」と「重要」という言葉ですけれども、こういうところにあまり感情的な言葉を使うのはよくないと思うんですけれども、これ、もうちょっと強調できないかなという気持ちがちょいとありますが。
〇委員
検討してみましょう。何か具体的な提案がありましたら、また教えてください。
では、どうぞ。
〇委員
非常に細かい点で、「はじめに」の2ページ、一番上の行ですが、「今後の高齢化の進展に伴う年金・医療給付の増大」。これは、介護も5兆が20兆になるわけですから、入れていただいて。
〇委員
では、医療給付のあとに、「・介護」と入れるのがよろしいかもしれませんね。まさにそのとおりですね。これはこの場で採用させていただきます。
どうぞ。
〇委員
本文の1ページですけれども、10行目のところから、「現役世代の社会保障負担の増加等に対する懸念から漠然とした不安を抱いており、今後の少子・高齢社会を悲観的にとらえる見方が広がっている」と断定的に書いてありますね。これでいいのかどうか。つまり楽観論もあるわけですよね。相当な可能性があると。今朝の新聞を読んでいたら、堺屋太一さんあたりは楽観論ですね。大変な楽観論をぶっていらっしゃるんですね。私も基本的には、日本の潜在力、高齢者の能力、これを生かしていけばそう悲観的にとらえる必要はないと思っておりまして、あまり断定的に書くのはいかがかと思うんです。「そういう見方もないわけではない」ぐらいに……。
〇委員
この答申の特色は、すべからく断定的に書きたいという趣旨で書いていますから。これは、「見方も」ぐらいではまずいですか。
〇委員
楽観論があるんですよ。
〇委員
ありますよ。ただ、ここで書くのは、少子・高齢化というものの重みをとらえてみんなで支えましょうという趣旨ですから、やや悲観のほうにいってますが。そうすると、楽観論的なことも読み取れるような文章にすればいいですね。
〇委員
そういうことですね。
〇委員
わかりました。検討してみましょう。
次にいってよろしゅうございますか。
〇委員
何ページのどこということではないのですけれども、やはり「少子・高齢化と税制」というところで大きく流れているのは、高齢者がおしなべて弱者ではない、応分の負担を求めて、それによって世代間の公平、同じ高齢者間の公平も必要だということは、読む人たちがみんな理解はすると思うのです。そうだ、そうだということは言うと思うのです。
ただ本当のところ、前にも申し上げましたけれども、資産も所得も非常に厳しい状況にある、「真の弱者」という言葉をこの文章でも使っていますけれども、その人たちにとっては、年金の改革がもしかしたらあるかもしれない。それから、年金についてどうなるのか、あるいは医療、それから今お話の出た介護、そして、あとから出てきます消費税の問題まで、ダブルパンチ--もう少し重なって出てくるということで、そこのところは「真の弱者には」ということをもう少し書き込むことができないのかなというところです。
やはりそういう人たちの声というのはなかなか出にくくて、この税調でも対話集会とかいろいろやっていますけれども、そういう人たちが出席する会合というのはおそらくなかなか望めないのではないかなと思いますので、やはりそこのところは十分に考慮する必要があると思います。
〇委員
それは数段考慮して、こういう文章になったんですよ。実は、高齢者はウェルシーで十分担税力があるというトーンが少な過ぎまして、大変お叱りを受けまして、それは、委員にご指摘される前に数段文章を加え……。例えば2ページの上の2行目、「健康状態がすぐれず経済力が低下した者もいるなど」、こういうところもつけ加えましたし、それから3ページ目の個人所得課税でございますが、20行目、25行目に、「真の弱者にまで課税強化を行うことを目的とするものでもない」とはっきり書いてありますのでね。まあ、もう少し何かつけ加えられるということであれば努力はしてみたいと思います。
では、どうぞ。
〇委員
今の委員の意見と似たような意見になるのですが、どこがどうということはないのですが、これを一読して国民は、年金生活者から税金をもっと取りますよ、ということだというふうに受け取るのではないかと思うのです。そういうトーンで全体が--もちろんほかの税目も触れられていますけれども、非常に強く出すぎているのではないか。
〇委員
ちょっと待ってください。具体的に。
〇委員
一つは、理屈は理解できるにしても、生活がかかっているのであれば、やはり激変緩和措置みたいなことをどこかできちっと触れておかないと、国民は不安に駆られるだけではないかということが一つ。
それから、具体的な場所はともかくとして、強化された年金課税の税源がどういうところに使われるのかということについて、コメントをするというのか、何かメンションしておかないとなかなか理解は得られないのではないか。この取り上げられなかった意見にも書いてはありますけれども、やはりそういうトーンを少し強めていただかないと、読んだ国民、特に年寄りは不安に駆られるだけではないかというのが私の率直な気持ちでございます。
あと、これは個人所得課税のところになりますが、5ページで、これは質問です。上から9行目のところで、「年金収入のみで生計を立てる低所得者へ配慮しつつ、まず給付段階での適正化に取り組むべきである」と。「まず」と言われますと、何かこのあとがあるということで、あとというのが、26~27行に「年金制度改革全体の方向性とも関連付けて控除対象の範囲を検討していかなければならない。この場合、公的年金と私的年金の役割」云々と書いてある。これが「まず」に対応することなのかと思いますけれども、下から4行目ぐらい、「将来、公的年金に対する保険料控除に一定の限度額を設けるとともに、私的年金については、拠出時控除」云々ということで、一番最後の「税制適格な私的年金を構築」と。
言っている意味が私には理解が非常にしづらいのですが、この辺は、私的年金と公的年金をどうするかという問題を税制調査会が取り上げるのはちょっとおかしいのではないか。税制適格年金という側面で物事を見るのはわかりますけれども、この辺はちょっと削除していただかないと、年金制度の中で公的年金と私的年金がどういう格好で運転していくかというのは基本的な問題になると思いますので、言い過ぎではないか。5ページの25、26行から下ですね。そうしますと、その上に書いてある「まず」というのも要らないのではないかなという気が私はいたします。
〇委員
2点ご質問がありましたので、お答えしておきます。
低所得者、つまり年金しか持っていない低所得者にまで課税が及ぶではないかというご心配、これをはっきり書くやり方もあるかもしれませんが、我々はそれは到底考えておりません。公的年金等控除を見直す過程においても、おそらく定額、定率、両方の部分もございますし、全部あれを一挙になくすということは考えておりませんから、当然のこと、高齢者の高所得者層が負担が増える形での年金の控除の見直しというのがまずあるはずであります。おそらく低所得者層の人も、残った公的年金等の問題と基礎控除、配偶者控除等々ありますから、当然のこと新たな課税にならないような措置を考えておりますが、今おっしゃったところは読み取れないということならば、もう少し工夫します。
それから、5ページの下のほうに書いてある--これはもう個人所得課税のほうにいってますから、これからどんどんご議論をこちらに波及してくださって結構ですが、我々として、「税調はここまでしかやってはいけない」という縛りは極力なくそうと思っています。例えば歳出面の話、道路の話、地方の交付税の話、これは税調だけで縛られると何もできません。そういう意味で、年金も介護等々も大いに口を出そうという話になっておりますので、これは今後許されると我々は考えております。
そういう意味で、5ページの下の私的年金等々のところは、今後我々としては、1階、2階、3階ある中で、1階、2階をしっかりしてもらって、3階建ての税制適格年金で1、2階の不十分さを補わない限り日本の公的年金制度は確立しないと思っているのです。そういう意味で我々として、守備範囲はまさに税制適格年金の税制でありましょうが、それを議論するにしても、公的年金、私的年金にも社会保険料等控除というのが入っていて、これがまたここに絡んでいますから、これは十分ここで我々は議論してもいいと考えておりまして、出しました。そういう意味で今のお答えになっていると思って。これを削除されますと、今後考えておりますことがちょっと表に出ないので、ここは寛容の精神でお願いしたいと思います。
〇委員
前段の点はある程度丁寧に書き込んでいただかないと、読んだ人が非常に不安感に駆られると思いますから、会長のご発言の今の前段の部分はぜひ丁寧に書き込んでいただいて、年金収入しかない人は課税にならないよ、というようなニュアンスが出るような形でひとつお願いしたいと思います。
それから後半のほうは、ここで議論するのもいかがかと思いますが、例えば生保控除についてもそのあとに触れられております。生保控除もそういう意味ではある程度私的年金の関係に絡んできますよね。文章として「また」ということで、「生損保控除の見直しも行うべきである」と書いてあるのですが、その辺が首尾一貫していないのではないかなという感じがいたします。
〇委員
わかりました。検討させていただきますが、この生損保控除、財形は、十何年来、税調の文章に絶えず書かれておりまして、ややマンネリ化している気配もあるのですが、私的年金、公的年金の中でなぜ今さら生損保控除だけを認めているんだという議論もあって、ここで入れたわけであります。本来なら例の所得控除見直しのところに入れるべきかもしれませんが、これは、まさにここの議論と絡んでいるから入れたということです。ちょっと検討させていただきます。
それでは、この議論に入っていますから、所得税全般につきまして消費税のあたりまで含めてどうぞご発言ください。
どうぞ。
〇委員
すみません、今のところで申し上げるべきでしたけれど、10ページの相続税・贈与税のことです。
〇委員
そこまでいっちゃいますか。ちょっと先走り過ぎてますから、ちょっと待ってください。
どうぞ。
〇委員
4ページのところから幾つか意見を申し上げたいと思います。4ページの5行目のところに、給与所得控除や退職所得控除について「乖離が生じている」という言い方で、見直す必要があるとか、検討するという言葉ではないけれども、ここで指摘したということは、見直す必要があるという意味で書かれたのだろうということで、意見をちょっと申し上げたいのですが、給与所得控除のことで言えば、その下に所得捕捉率の問題が出ています。今の給与所得控除はこのことや必要経費も考慮してつくられていると。不公平な捕捉率をここでは指摘はしていますが、それが解消されるかどうかわからないのに、給与所得控除だけは見直すことについては私たちとしては疑念を生じざるを得ません。やはり給与所得については現行水準を維持していただきたいという意見です。
それから退職所得控除ですけれども、言われるとおりに、終身雇用制を前提にして勤務年数によって控除の額が違っているというやり方です。これはここでも指摘しているように、いろいろな働き方が出てきていますから、私どもとしては、例えば年60万円とかいう形で勤務年数によって差を生じさせるのではなくて、一律1年につき幾らということを検討していただきたいと考えます。
それから、4ページの(2)の年金課税のことです。この間も申し上げましたとおり、ここに指摘されていることについて、問題点についてはこの間も「理解します」と申し上げました。ただ、この間の新聞にも出ていたのですが、来年の年金改革で、新聞に出ていたようになるかどうかはわからないけれども、給付も引き下げるというのが出ていましたよね。来年の年金全体の改革構造が見えないうちにこういう結論を出してしまうことについては、私は慎重であるべきだとこの間も申し上げたのですが、ぜひその点についても配慮していっていただきたい。
それから5ページで、先ほどちょっとございました私的年金や生損保控除、財形貯蓄、ここについては、公的な支援制度というのは国・地方の今の財政状況から見れば、そこにのみ依拠していけない、自助努力も必要だ。自助努力をしていく部分について税制上支援することについて、やはり考えておかなければならないだろうという意見を申し上げておきます。
それから、6ページです。遺族年金給付と失業等給付のところですけれども、そのあと、一律全部見直すと言っているわけではないから、具体のところを見ないとなかなか言えませんけれども、遺族年金に頼って生活している人たちのことについては十分配慮する必要があるだろうということと、それから失業給付の問題です。これは、会長ご承知のとおり、今年の5月1日から新しい給付水準で実施されています。つまり、今までの雇用保険の給付水準について、今国会で4月25日に参議院を通過して通ったのかな。一部見直しということで、5月1日から新しい給付水準--端的に言えば、引き下げた。
そのときに政府が出して国会で法案審議した設計は、給付非課税原則というものを前提にして設計されていたものです。それで今年の国会で議論して5月1日からそれで行われているのに、ここでは、そこを課税するということになると、政府としてこれはどういうことなのだろうかと。法案として議論させたときは非課税にしておいて、ひと月もたたないうちにこの税調ではもう課税を考えているということになると、国民から大変不信を買うのではないかという気がしますので、ここは再検討を願いたいというふうに思います。
ちょっと休みます。
〇委員
そうしてください。我々もお答えするのに、あまり長く続けられるとお答えが少なくなるから。
今の点ですが、これは、法律で非課税にしたのを課税にすぐさま来年にしようなんてことは努々考えてませんよ。課税のあり方としてこういう非課税の項目がどんどん増えていくので、見直す必要があると。ここに書いてある「今後見直しを進める必要がある」というので、「今後」の意味をどれだけとるかですけれども、10年、15年先まで今のままでいいと思っていませんから。
同時に、下に書いてございますように、遺族年金等々は、これだけもらった人に対して課税はかからないように人的控除等で面倒を見る、例えば基礎控除を引き上げるということも当然この背後にあるんです。ただし、遺族年金をほかの収入と合体してより高い所得水準になれば、それは払ってもらってもいいわけですから、すべからく所得の種類で非課税というのは税の理屈から言うとおかしいという発想なのです。だから、ほかの所得があれば当然遺族年金で払ってもらってもいいけれども、遺族年金だけだったら、課税の対象にならないような人的控除を仕組みましょうというのがこの意図するところです。
それから例のクロヨン云々の話は、6ページに一応書いてございますが、実額控除を認めて、裁量の余地を増やしましょうということで、今、ご存じのように給与収入の中で3割の給与所得控除は過大すぎるというのは、サラリーマンサイドから見ると適切と思うけれども、青申とか事業者から見ると、これは過大だとしょっちゅう文句を言われるんです。そこで、サラリーの中は一体どれくらいかわかりませんが、サラリーのうちの1割がクロヨンで、2割が必要経費かもしれない。それはわかりません。わかりませんが、それを少し下げていくことにおいて、事業所得者に対する不満にも応える。それから、実額控除というのを少し幅を広げて使い勝手をよくして、そこで実質的に担保できるのではないかという考えを持っておりますので、これは設計はまだしていませんが、アイデアとしてはそっちを考えています。
それから生損保控除は、所得控除の課税ベースの拡大という形で従来は書いたのですが、今後、税制適格私的年金という大きな中で考えたら何も損保と生保だけが税制適格年金との絡みでできてくる商品ではありませんよね。こういうのは廃止しても、全体で商品設計、あるいは確定拠出でもいいですが、その中で考えるときに、生保と損保だけ業界の--ここに業界の方がいらっしゃるかもしれないけれども--利益のためにやるのはまずいのではないかというのはもう十年来言ってますので、ここに書いたのです。そういう思想です。
全部お答えしていませんが、またあとでお答えします。ほかの方もいらっしゃると思いますので。
どうぞ。
〇委員
途中で抜けますので、4点ほど。
今のところですけれども、今のところは会長のご説明はよくわかるのですが、使い勝手をよくするということで、実額。今までの特定支出控除が実績がないんですね。全国で3件とか4件とか……。
〇委員
6件。
〇委員
そんなのでしょう。そういうことで、僕はこれを見ると、また特定支出控除と同じだなというふうに思ってしまうわけですよ。ですから、「これまでの特定支出控除の反省を踏まえ」とか、そうやって実現性があるようなね、これだとお題目を並べているようにしか見えないから。ということをひとつよろしくお願いします。
それから、先に進ませていただきまして、この間僕がちょっと問題にしたところですけれども、公益法人のところです。これは入れていただいているのですが、NPOのところ、これはこれである委員もいらっしゃることですし、こういうことでよろしいのではないかというふうに思うのですが、ただ一つだけ入れておかないといけないのは、[3]の下から2行目の、「民間非営利活動が円滑に行われるよう」というところはいいとしても、そこでプラス、「また、活動内容の透明性が担保されるよう」というふうにきちんと入れないとここはだめなんですね。でないと、怪しいのがいっぱい出て来てしまいます。「悪貨は良貨を駆逐する」ということになったら、その委員の本意ではないというふうに僕は思うわけであります。
それから[4]のところに、「公益法人に対する」と、これは独立させていただきましたけれども、これもただ「適正な課税が確保されるよう」ではちょっと弱いので、「情報公開を徹底させ、適正な課税が確保されるよう」とか何とかという言い方を、強調語を入れたほうがいいのではないかというふうに思うのでありますが。
それから、すみません、後ろのほうにざーっといきますけれども、15ページの環境税のところであります。一番下の国際課税という文字のすぐ上に、下から2行目、「この際、揮発油税、軽油引取税」云々かんぬん、「についても検討すべきである」と。先ほど会長も、道路特定財源のこともあるとおっしゃいましたけれども、これは、自動車重量税を具体的に入れておく必要があるんです。
というのは、自動車重量税というのは車が重いから道路が壊れるという話なんですね。重さと大きさに比例して税金がかかっているわけでありまして、重さと排気量がまた比例するわけです。ですから、基本的に排気量が大きくなるわけでありまして、そうすると、ディーゼルエンジンを含めて排気ガスはどんどん出るわけですから、重量税というのは、コンクリートを傷めるのではなくて空気も傷めるのだと、そういうところをきちんとおさえておく必要があるわけです。
今、3点言いましたけれども、4点目です。個別税目の消費税、法人税、相続税・贈与税を取る議論がありましたけれども、今までの税目の中に入っていないものがあるということをちょっと申し上げておきたいのです。これは前に僕が申し上げましたけれども、カジノゲーミング法などを育てる必要があるので、特区でも--今、却下されていますけれども、工夫すれば政令で入る可能性があるし、議員の人たちもたくさん集まってカジノをやろうと言っている勢いがありますから。
つまり、消費税、法人税、相続税・贈与税以外に、新しい産業を育ててそこに課税していくという発想がなければ、これは広がりがないわけですよ。そういう観点からカジノゲーミング法なんていうのは、オリンピックに出ている国は全部カジノがあるわけです、日本だけがなくて、それはおかしいわけですから。アメリカはユタ州だけないんですね、モルモン教があるから。あとは全部あるんです。それはともかく置きまして、そういうふうなことですから、カジノを育てるという意味で、例えばカジノに課税していくということは考えられますね。
ただ重要なことは、パチンコ屋さんがいっぱいあって、パチンコ屋さんが大して法人税を納めていない。これは、法人税という形で見ていくとあまり取れないんです。赤字ぎりぎりにしてあったりとかするわけですから。したがって、カジノゲーミング法の中での税の取り方というのは、これは地方税になるかどうかわかりませんが、国税でも取れるかもしれませんが、それは検討していただくとして、一定のお金の動きに対してお金が取れるというふうに理解すべきであって、1万円遊んだら1,000円お金が取れるようなあり方はあるはずでありますから。「遊んだら」というのは、株も投機的なことはありますけれども、一定の利益が出たら、そこから10%なら10%、20%なら20%、税金を取れるというふうなことになると思うんですね。
消費税に近い発想だけれども、ある種の間接税的な要素を持ったものではないかというふうに想像されるわけですけれども、新しい産業を育てて--新しい産業というのは、特にカジノのような場合は消費の活性化ですから、余っているお金、タンスにあるお金をどんどん出してカジノでもやってもらって、そして税金が取れればこれが一番いいわけです。そういう意味で、お酒とたばこも楽しんでいるうちに税金が取られていて、それは全然ぴんと来ないわけですから、カジノも楽しんでいるうちに税金が取られるということは、痛税感があまりない。先ほどのサラリーマンの実額控除とかそういうのは痛税感があったほうがいいのですけれども、ないほうがいい場合の税金がたくさんあるということであります。
そういうことで、新しい産業を育てていくという意味での、そういう位置づけの……。つまり、消費税、法人税、相続税・贈与税の議論だけになっているけれども、プラスアルファの新しい産業を興すことによる課税、こういう発想を加えていただければというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
〇委員
4点目について、私、こう考えているのですが、たしかにカジノゲーミング法をギャンブル的なことで税と、鋭いご指摘をいただきまして、頭にあるのですが、ただ、この中で改めて時間をとって議論はまだしていない。ただし、個別消費税、特にサービス課税ですね。ホテル税とかパチンコを含めて、そういうものをこれから確立しなければいけないという問題意識は皆さんお持ちだと思うんですよ、何も一般消費税だけではなくて。
だから今の書き方として、そういう中でカジノゲーミング法を出してもいいのですけれども、項目として書くのはいかにもぎらつきますから、そこはちょっとおさえ気味に。ただし、今言った個別の間接税の充実、あるいは、地方などはこういうサービス課税でまさに課税自主権を発揮したらいいと思っているんです、産廃だけではなくて。東京のホテル税なんかはその例だと思いますけどね。そういう形で少し検討して具体的に文章化させていただくことでよろしいですね。
〇委員
そういう新しいものがあるよという余地を残す。
〇委員
わかりました。
〇委員
ただ、あまり小さい束になってしまうとしようがないので、5,000億円増えたとかというふうな話ではなくて、もう少しスケールの大きい形で考えて何か余地を残すような表現にしてもらう。
〇委員
個別間接税という項目を立てて、その中で議論して、将来発展性のあるものの中でこれを位置づければ、それは皆さん夢が持てるかもしれないけど。そういう書き方にさせていただくかどうか、うまく入れれるかどうか、いずれにしても個別間接税というのはちょっと落ちていますので、検討する必要はあるかなと思っています。まあ、部分的に出ておりましたから、今の段階ですくい上げてもそうご不満はないかと思いますので、少し検討させていただきます。
どうぞ。
〇委員
先ほど話が出ていましたけれども、5ページの一番最後の行、「また、生損保控除」。ここは、この流れで出てくるのだとするとやや唐突のように思のですが、この前はなかったんじゃないですか。
〇委員
いや、入ってますよ。
〇委員
では、見逃しかな。特に生と損保一緒に書いてありますけど、生と損は全然性格が違うものだと思うんです。生で言えば、今、予定利率の問題が騒がれていますけれども、生のほうは老後保障という機能がかなりあるわけですよね。だからみんな騒いでいるわけで、ここに書かれているように、私的年金、こういうものを一方で構築していく、そういうものに税制をかましていくということであれば、生というのはやはり同じ流れで生きてこないとおかしい。財形貯蓄とか損保というのは、関係の方がいらっしゃると悪いのですけれども、これはちょっと性質が違うものではないか。むしろこれは租税特別措置の廃止の流れの中で、あるいは、間接金融から直接金融に移行する中で議論するならわかるのですが、やや唐突かなという気がするのですが。
〇委員
ただ、財形はこの一環で説明できるのではないかと思いますが、いずれにしてもそこはおっしゃるとおり、そういう問題があると思います。検討させていただきます。
もう11ページまで前からずっとで、前を打ち切るわけではございませんから、どんどん出してください。
どうぞ。
〇委員
土曜日の朝の新聞に、「児童税額控除を税制調査会が提案して、子育て支援をする」、こんな記事が載っていまして、どこかと思ったのですが、7ページの人的控除の[3]ですけれども、これをよく読んでみると、何かそんなような感じがしてまいりまして。これはこれで、いわゆる少子化に対応するためにはそういう制度もあり得るかなと思いましたが、従来、年度改正等で特定扶養控除はやめるべきだということで、教育費の控除といったものはやめていこうという形で話が来ているわけです。子育てのために児童についての配慮をするとなりますと、その上の中学生、高校生、大学生、どこまで配慮していくかなという問題が出てくると思います。ということで、年度答申との整合性をちょっと考えていただいたらありがたいと思います。
〇委員
当然のこと、税調としては特定扶養控除の廃止という看板をおろさない。ここで書いてある児童というのはもっと下の話ですよ。つまり、フリーターも含めて、これから自分で何かできるような、家庭の奥さんも含めて、それは税で面倒を見ることはない。身障者と、まだまだ子供が小さくて自立した能力のない人は、扶養控除等々で面倒を見てもいいではないか、こういう発想なんですよ。したがってこの「児童」は、せいぜい5つか6つ、8つくらいまでいくのかな、わかりませんが、特定扶養控除は関係ないんですよ。おっしゃるとおりその辺で誤解を招くとまずいですから、ちょっと書き加えが何か必要でしょうね。
それでいいですか。それを踏まえた上で、この税額控除みたいなものをもっと……。
〇委員
それですと、基本方針としてまた新しい提案ということになりますので、それはそれでよろしいと思います。
〇委員
これはある委員や何かからだいぶ出た意見だし、ヒアリングでもだいぶ出た意見なので、ここで書き込んだということです。
では。
〇委員
大きな点が1点と小さな点が1点と、2点申し上げさせてほしいのですが、関連するところを強いて探せば、8ページの7、8、9、10行目、このあたりです。申し上げたいことは、少子・高齢化が進んで負担を上げざるを得ない。それぞれ所得税、消費税、その他、考慮していく、こういうトーンの中で国民の感覚等に立てば、負担が増えるということは、単に税負担だけではなくて、社会保障の負担、この両方は意識の中では全然区別していないんですね。実際経済的にも同じことなので。ですからこの8ページのところ、消費税だけではなくて税制全体を考えると、「社会保障制度等の歳出面を含めた財政全体」とあります。給付の面ももちろん考え合わせなければいけないのですけれども、負担の面と両方バランスをとりながら考えなければいけない、そういうことが出てほしいというふうに思います。
そのことからさらに関連していって、負担の仕方の問題については、前回意見を言わせていただきましたけれども、負担と給付について国民が納得するといいますか、そういうプロセスも非常に大切であります。そういう意味からいくと、地方税源、財源というややこしい問題に絡んでいきますけれども、介護保険制度の保険料を決めるみたいに、地域地域でその実情、そして給付との関係で国民が判断できる、なるべくそういった仕組みに近づけていくのが好ましい。そうなると、地方税が単に地方消費税で分けてあげるというだけではなくて、国民自身が負担と給付の関係で税率についても判断できる、税目についても判断できる、そういう体制をつくることも必要ではなかろうか。
そうなってきますと、11ページの「第二 地方分権と税制」というのは、少子・高齢化とは別だというふうに最初ご説明がありましたけれども、地方分権を進めるというのは、実質からいくと社会保障の責任と権限を地方に委ねていくというのが一番大きな地方分権ではなかろうか。そうなってくると、結局、負担についても地方で判断させる、そういうことになっていくのではなかろうか。ですから、第二のところがさらっとありますけれども、これも、少子・高齢化に関連して、社会保障と関連してというふうな、そういうニュアンスが出てほしい。これが第一点の申し上げたいことであります。
第二点は、大変小さなことでありますが、先ほど別の委員の触れられました10ページの公益法人改革のところでありまして、15行目のところであります。前回、私は先に帰りまして、今日見ますと、「適正な課税が確保されるよう」という文言が入っております。これは委員のご意見かなという気もするのですが、「適正な課税」は、別に適正の理解にかかるので反対しませんけれども、適正の中身は、いい公益法人といいますか、民の活力を生かす、そういう観点からの適正ということなので、この適正の中身にいろいろなことをつけ加えられるのであれば、私の申し上げるような趣旨の文言が入ってほしいというふうに思います。
〇委員
どういう文言ですか。
〇委員
「民間活力を十分に活用する点も考えあわせる」とか何か、そのような文言ですね。
〇委員
どうぞ。
〇委員
それでは、10ページの事業承継、相続税・贈与税のところですけれども、相続税・贈与税は、日本の99%の中小企業からしますと、まさに小泉総理がおっしゃっているような少子・高齢化の問題だと思います。そういう意味で、15年度の改正で相続税・贈与税については、相続時精算課税制度というものを作っていただきましたことは、非常に大きなことではなかったのかと思っております。でも、今、日本は企業の数をこれ以上減らすわけにはいかない。事業がこれまで健全に運営されている場合は、事業継承という大きな課題を一つひとつの企業が何とか乗り越えられるように、さらなる配慮をする必要があるのではないかと思っております。
そういう意味で、新産業創出と同時に、伝統産業とか既存企業がこれ以上、今生存している企業を一つでも減らさないという意味でさらなる改善が必要ではないかと思っております。例えば5年程度の事業の継続を前提にしながら、課税対象額の5割ぐらいを控除するという、思い切った事業用資産に対する包括的な継承税制をこの際確立する方向で検討してみたいと思っております。
言うまでもないことですけれども、先ほどのご説明にもございましたが、高齢者と現役世代の比率が今の1:3.6から1:1.9になる。かつてバブルの頃にはたしか1:6ぐらいだったと思うのですけれども、となると、一人ひとりがこれまでの3倍くらいは頑張らないといけないということになると思います。そこには、我々、これからまさに高齢者になろうとする人たちの運命と幸せがかかっているわけですから、そういう意味でもこれは本気で取り組むべきものではないかと思っております。
〇委員
事業承継は絶えず頭にあって書き込んでいた経緯がございますが、ここにちょっとあらわれていないのです。そういう意味でちょっと検討させてください。
では、どうぞ。
〇委員
6ページ、先ほどの数字からまいります。人的控除の基本構造の見直しですけれども、ここに提起されていることについて、この間も申し上げましたが、複雑多岐にわたっている人的控除について必要な見直しをしていくことについては賛成であります。その上で、当然お考えになっていることだと思いますけれども、企業の活力も大事ですが、個人の活力も大事なことなので、やはり必要な控除というものはきちんと残して、その上で、子育てのところで税額控除と出ていますけれども、先ほど誰か指摘されたところですね。その他の控除についても、税額控除ということについて検討されてはどうかということです。
それから次、消費税のところにまいります。7ページから8ページですけれども、私どもも、消費税は基幹的な税で、福祉にそういう税を使っていくということで、必要に応じて引き上げるべきだということについては賛成ということを申し上げました。前回、今から引き上げていく分について年金目的にすべきではないかと申し上げて、会長のほうから、その場合の年金目的は特別会計かという質問を受けたので、そこのところ、私どもの考えを申し上げますと、今も基礎年金部分については一般財源から特別会計に入れられてまいます。現在、基礎年金財源は国民年金特別会計というふうになっていますよね。したがって、これから5%から上げていく部分については、年金目的として国民年金特別会計に入れていくということについて考えられないだろうか、と。この間ちょっと質問されたことについての答えです。
その上で、会長が、先ほど説明が終わったあと補足されたのですが、これは今後10年とか15年ぐらいを見通しての少子・高齢化と税制を基本にしたあれだということで、大体のスパンはわかったのですが、それにしても、ここに「二桁の税率に引き上げる必要もあろう」という「二桁」という数字。私はここで、10年、15年で二桁という数字、ある目標みたいなものを出すのはいかがなものかと。一定程度の引上げは重要ですが、私どもとしては、二桁までここに出てくることについては賛同しかねるということを申し上げておきたいと思います。
それから9ページに、法人課税のところで、最後に、法人税率の引下げについては、「今後検討すべき課題」、こうなっています。私の認識が間違っていれば別ですけれども、法人税率はこれまで引下げをしてきて欧米と水準的にはほぼ並んでいるというふうに思います。ここを読みますと、個人は増税、企業は減税という印象を与えますし、私は日本全体の財政再建のことも考えれば、これ以上の法人税の引下げについては考えなくてもいいのではないかという意見でございます。
それから、これは質問になりますけれども、13ページに2カ所出てくるのですけれども、総合課税のことです。資産課税のことについて、上から3行目から4行目に「金融資産性所得をできる限り一体化する」と、一体化という言葉を使っています。総合課税とこの一体課税は同じ意味で使っているのかどうなのか。この一体化という言葉は12行目あたりにもう一回出てきます。これをはっきりさせていただきたいということと……。
〇委員
そろそろまたお答えしなければいけませんし、ほかにもまだいっぱい手が挙がっていますから。
〇委員
あと一つだけ。ここに出ていないことで一つお願いしたいことは、企業倒産時における労働債権の確保という問題です。労働者を保護する観点から、先取特権を有する労働債権について、公租公課よりも優先するように国税徴収法を改正していただきたいという要望です。
〇委員
最後のは、今の段階でどうするか。ただ、頭に入れておきましょう。
例の一体化のところですが、これは金融資産性所得の中だけでの総合課税を考えています。金融資産性所得も資本所得も労働所得も全部入れたのが総合課税ですから、金融所得の総合課税化ということもあるんですよ。全体の総合課税と区別する意味で一体化というのをここで使っておりますから、一体化しても別に構わないと思いますが、ちょっとニュアンスを変えました。
それから、二桁云々の話は実は議論があったところで、欧州並みの二桁を見てと巻頭にも書いたのですが、今は経済界でも、方々でも、10%、15%とどんどん話が出ております。まして10年、15年先のあるべき姿をやったときに、マスコミも、二桁、そんな話題にならんというぐらいの時代になっているんです、今。そういう意味で我々として、腰くだけのことを書くよりはっきり書いたほうがいいのではないかということで書いたので、これはまた皆さんのご意見を聞きたいと思います。
では、どうぞ。
〇委員
これは、この前の小委員会でいろいろ意見が出たのですが、修正を加えたペーパーですか。
〇委員
そうです。
〇委員
あまり変わっていないという印象が……。
〇委員
いやいや、よく読んでください。
〇委員
あまり多項目にわたると会長も答えにくいので、そこら辺は配慮して申し上げますけれども、さっきから出ている、5ページの下の「社会保険料控除について」というところから始まる[3]の項目ですが、私なんかも話を聞いていて確かにこのくだりは表現がわかりにくいです。その一つは、公的年金と私的年金という言葉が出てくる。これは何を指すのか。公的年金とは何か、私的年金とは何か。ここらの区分がよくわからないわけです。私的年金も企業年金というのがあって、貯蓄性の本当の私的年金というのがあって、何か一緒にしているなという印象も感じるわけです。
「将来、公的年金に対する保険料控除に一定の限度額を設ける」と。たしかにこういう意見もありました。私は反対ですが。そのあとに、「私的年金については、拠出時控除・給付時課税の枠組みを徹底する」と。つまり、公的年金に対して社会保険料控除を全部は認めませんよということを言っている。しかし、私的年金については拠出時控除ということは、私的年金についてみんな認めるみたいな、そんな印象を与える書き振りであります。「給付時課税の枠組みを徹底する」と。公的年金については保険料控除があって、しかし給付時も制度的には課税なので、公的年金等控除は実質非課税になっているという話なので、ここら辺はちょっと用語を整理したほうがいいのではないか。
それから最後のところ、「老後保障機能を有する税制適格な私的年金を構築すべきである」、これは何を言っているのか。税制適格な私的年金というのがよくわからないわけであります。
それから、これは基礎小でも申し上げたけれども、社会保障が出てくるくだりに関しては給付水準というのがよく出てくる、給付水準が高すぎるとか云々の。現下の問題は、社会保障に関して言えば、負担料、負担金、社会保険料負担率が相当高くなっている。特に中所得以下では相当の負担感が出ている。これをどうするんだということが非常に大きい問題。そこに税金がかかわってくる重要な要素があるわけなので、どこかに社会保険料の負担というくだりを、現状なりそれがもたらしている影響なりをどこかに入れるようにと申し上げたのだけれども、どこにも入っていない。入れにくいのかどうかよくわからないけれども、国民感情からすればこれが一番の問題なわけです。税金が高いと思っている人はいなくても、社会保険料が高いと思っている人はたくさんいるわけです。そこにこれからの税制を判断する素地があるように思えるので、社会保険料負担は相当重くなっている、あるいは、負担感が強まっているというあたりはぜひ入れてもらいたいということです。
それから、7ページの税額控除制度。このくだりで、今度は「その際、税額控除制度については」と、急に出てくるという唐突感を感じるわけです。児童なんかに集中するんだと、ずっと流れがあるわけですが、そのあとに「その際、税額控除制度については」ということなので、税額控除制度というのはどんなものなのか。これまで言っている控除制度とどこが違うのか、知らない人が大多数で、いきなり税額控除制度が出てくるという唐突感。せめて何か説明を、例えば所得に関係なく一定額を税額控除するとか、何か入れないと、何なのかなと戸惑うのではないか。
それから、そのあとの個人住民税の書き方は、例によって付け足しみたいな印象があります。「個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分任」ということですが、一律10%という話が出てきているときにそれとどう関係するのか。累進税率というのは相変わらず維持するのか、それとも一律税率ということなのか。ちょっと議論になっている、国民もわかっているところですから、この書き方、これでいいのかどうかご検討いただきたい。
それから所得割について、要するに、個人所得課税に共通する課題に対処しますよと言って、そのあと、「諸控除や非課税所得の縮減などを行う必要がある」とさらっと書いている。これ、所得税に関しては相当ガタガタと、組みかえるのだ、控除も廃止したり組みかえたりするのだとさんざん書いてきて、この所得割について、それもやりますよ、しかし、さらに、「地方税固有の性格を踏まえ、諸控除や非課税所得の縮減」と。これ、具体的に何を言っているのか。もっとやろうというのか。所得税でやって、さらに、住民税ではなくほかのことをまたやろうというのか。そういうことだったらば、何かしらもう少し書かないとだめですね。これだけではよくわからない。
長くなりますから、一旦とめます。
〇委員
もう時間がなくなってきましたが、最後までカバーしていただいて結構ですから、ずっとおしまいのほうまで見てご発言ください。
では、お待たせしました。そのあと。
〇委員
これは先ほど出た話かもしれませんが、4ページ5行目、「給与所得控除や退職所得控除については、従来の終身雇用を中心とする雇用形態が背景となっていた」と。退職所得控除は端的にそういうことだろうと思いますけれども、給与所得控除と終身雇用を中心とする雇用形態との結びつきというのは、どちらかというと逆かなと。いつでもクビになってしまうかもしれない地位の不安定さに対して考慮する、斟酌するという意味があると言われていた。そういう意味では最近はリストラの時代ですから、そういうことはなくなっている。むしろ逆の方向の発想も考えられるわけですので、終身雇用と給与所得控除を端的に結びつけるのはいかがか。ですから、この途中を抜いて、「ついては、就労形態の多様化などが進んでいて」「乖離が生じている」というくらいで結びつけたら、それでいいのかなと思います。
それから5ページへいって、下の、社会保険料控除と公的年金と私的年金との関係、こういう発想というのは中期的に考えられる方向ですので、こういうことでよろしいのではないかと思いますが、最後に来て「また」とある。これも先ほどご指摘があったかと思いますけれども、そこで思想が切れているのか、同じ方向で生保、損保、貯蓄を見直すのか。「また」という言葉がちょっとよくわからない。「構築すべきである、そうした方向の中で、生損保、財形も見直していくべき」、そういうふうにでも続ければこの思想は生かされるのではないか、そんな感じもします。それは修文の話でございますので、お任せでございます。
〇委員
2点、お願いしたいと思います。1点は、個々の問題ではなしに、全体のまとめの構図の中で、「はじめに」は、1ページ目、2ページ目に、これからの日本の少子・高齢化社会であるとか、また、今までの社会保障のあり方の仕組みを変えていかなければならないと、背景がきちっと書いてあるのですけれども、各論というか、各章立てになってきますと、どなたか最初におっしゃっておられたと思いますけれども、第二の、例えば国と地方のあり方の問題とそれぞれの問題を、何か切り離してしまっているような感じがするんですね。第二の「地方分権と税制」というところと、社会保障の問題とか、少子・高齢化の問題とか、これは全部一体のものだと私は思うんですね。
だから、全体的にワンパッケージでこれを論じていく形にしないと、どうも論点が、こちらを言えばこう、こちらを言えばこう、となりますから、全部つながっている問題なので--新しい環境税とか何とかいうものは別にいたしましても、何かワンパッケージにならないものかなと。今よく言われている、国民負担率がどうあるべきかということからすれば、国と地方、どう削減すべきかという問題と、それぞれの納税のあり方がどうあるべきかという問題、これはご専門の方々ですから、そういう問題をできる限り離れないようにワンパッケージでまとめていくべきではないかと思います。
消費税の問題も、先ほどご意見が出ていましたけれども、やはり消費税だけを論じるのではなしに、全体のことから考えれば消費税はどうあるべきか、国民負担率はどうあるべきか、諸外国と比べてどうあるべきか。そして、今の日本の少子・高齢化の場合、こうあるべきであるというところを言えば国民的な理解も高まってくるのではないか。
また、法人税でも私は同じだと思うんですね。諸外国との関係においてこうあるべきである。しかし、法人税だけを論じておりましても、法人実効税率を下げていって社会保険料がどんどん上がってくれば、国際競争力を失ってしまって経済力が活力を失ってしまうというのは、個人でも一緒だと思うのです。所得税が減っても社会保険料がどんどん増えてくれば、国民の負担感、負担率が高くなるわけですから、そういう意味では一つだけ論じるのではなしに、全体を論じた形で--中期答申だけに、そういうふうな論調ができるだけ各章に出るようにしていただきたいと思います。
最後に、環境税の件は、私は先回、データを文書で出しましたけれども、まだ途中でございますので、いろいろな論議を深めていく、そして、現在の状況をつぶさに分析する、そういうところから次の論議に入っていくほうがいいのではないかなと思います。
〇委員
まさにそのトーンで書いているんです。
〇委員
大体そのように理解しております。私も前回、ちょっとペーパーを出したものですから。
〇委員
わかりました。第二点の地方分権とか国と地方のほうを少子・高齢化とひっかけて書けというのは、他の委員もお出しいただいたので、ちょっと考えさせていただきます。一緒にしてしまうと、地方分権というもう一つのキーワードが、少子・高齢化の陰に隠れて何やら矮小化されるのではないかというご不満も出てくると思いますので、その辺は難しいのですが、その辺は考えさせていただきます。
では、女性3人続けていきましょう。
〇委員
先ほど何度もお話が出ていますけれども、5ページの下のほうの公的年金と私的年金のところが、正直なところ、読んでなかなかわかりにくいということを申し上げておきます。
そして、これは質問ですけれども、生損保控除や財形貯蓄などで、生保控除というのは貯蓄優遇税制というとらえ方なのでしょうか。先ほど生保と損保が違うというお話があって、ますます難しくなってきてしまったのですけれども、やはり生保は、私たちは、万が一があったときの相互扶助に一番ウエートを置いているわけで、単純に貯蓄優遇税制というとらえ方でいいのかどうか、これは質問も兼ねてです。
それから、先ほどからお話の出ています消費税です。今までは「重要な税目である」という書き方であったのが、いきなり「二桁の税率」という具体的な数字が出てきまして、会長おっしゃるように、新聞であるとかいろいろなところで二桁ということは言われてはおりましたし、税調でも委員の中で「もっと具体的に」というご発言があったのは覚えておりますけれども、ここに二桁というのを出すのは意味がものすごく重い。税調としての覚悟というか、そういう意味でいると、ちょっとどうかなという気はしております。
それと前回、逆進性のことを発言しまして、文章としてきちんと入りましたけれども、具体的には財政全体の中で判断していくのだ、と。どう判断していくかというのはよくわかりませんが、具体的には二桁になったときに、所得に対する逆進性を緩和するために軽減税率の採用ということが書いてありますけれども、逆進性というのは、二桁と、そこまでいかなくてもやはり相当大きな問題ではないかなと感じております。
それから、もう発言の機会はないと思いますので先までまいりますけれども、地方税のところで、いろいろ難しい点はあると思うのですが、たまたま数日前に知り合いの家で集まりがありまして、そこの家がちょうど区の境目ぐらいのところにあるんですね。そうしましたら、そこの家の主婦が、あそこ、見てちょうだいよ、隣の区のほうが道路がずっといいんだと。言われてみると何かそんな気がするんですね。そしたらそこにいた若い人たちが、公立の学校はどこどこの区のほうがいいとか、そこはもう高齢者が亡くなりましたけれど、介護保険を使ったときにどこどこはこうだったとか、非常に具体的なことを発言している。別に消費者運動とか市民運動をしているメンバーではないのです。そして、選挙のときに区会議員の人がよく来るから今度区会議員の人に聞いてみようかしら、というような声まで出てくるんです。
国のところへ聞きに行くことはなかなかできなくても、身近なところで議員さんに聞いたり首長さんに聞いたりということは、これから、特に若い人にとっては何でもなく出てくることだと思います。地方での歳出というのは身近なところで厳しく見ていかなければならないとは思いますが、いつも申しますけれども、できるだけ身近なところでおさめて、そのかわりチェックはして厳しいことは言っていくという方向性は、そういう人たちの発言を聞いていて、出てきたのではないかなという気がいたしました。ちょっと抽象的な言い方ですけれども、以上でございます。
〇委員
生損保控除は従来から貯蓄優遇という位置づけで書いていたと思います。ただ、今回はまた新しく私的年金との絡みがありますから、それでいいかどうかというのはちょっと書き方を変える必要はあるかもしれませんね。
それから、今、先ほどの委員と今の委員から、税調として二桁を書く覚悟を今決める……。つまり、二桁になるかもしれないと思ってらっしゃるわけでしょう、10年、15年先は当然。こんなので僕は済むと思ってませんからね。そこはどうなんですか。
〇委員
年金目的税で私たちは2025年のところで8%という数字なんですよ。つまり、今より3%と。
〇委員
委員はどうですか、そこは。今言うことはないということなのか……。
〇委員
いえ、具体的に数字を申し上げるところまでは、団体で具体的な数字まではあれしておりません。
〇委員
今ひそかにしておけばいいという考えもあるんですよ。何もことさら今。しかし、8%というのはありますけれども、5%のままでいいという人は誰もいないんですよね、あらゆる計算を見ますと。だから、税調としてもそろそろある方向性を--まして10年、15年先と言っているのだから、それは出してもいいではないかという意見があってここに書いたのですが、どうでしょう。今、総会である程度議論しておかないと書き込めませんので。お2人、反論が出ましたので、それでいいかどうか、修文が必要ならば書きかえなければいけませんので、基礎小の場合とちょっと違ってきましたので、この辺、まとめてご意見があれば伺っておきます。
どうぞ。
〇委員
今の1点だけですけれども、いろいろ消費者団体だとか、労働組合だとか、従来この手の議論はずいぶんそういう対立の間に来たんですよ。だけど、今、財界の人がそこにいるけれども、片一方で別の提案もあるわけだ。これは産業界代表だか、同友会とか、いろんなことがあるから、それぞれ立場は違うけれども、ここで相場観を出すということは、先々の議論をする場合に、企業者にしろ一般消費者にしろ市民にしろ、やはりそういうことは暗黙のうちにやる必要がある。それが、いつ、どの程度の手順で、どういう内容でやるかということについては具体論はいくらでも検討していいと思うけれども、ここで相場観を引っ込めるということは大反対ですな。
〇委員
あと二、三、積極的にご意見があればお聞きしておきます。
どうぞ。
〇委員
私は、先ほどの国民負担率というところで、もう少し国民に、主要国といいますか、先進諸国の国民負担率などを明示しながら、そして社会保障の問題から、社会の仕組みの問題、そういうことを体系的に見てある程度の発言をしていかないと、国民に対して違うメッセージになるのではないかなという意見を持っています。
〇委員
二桁を書くかどうかは、どうですか。
〇委員
書くべきだと思います。
ここは、またあとの議論で触れてくださって結構ですから。
どうぞ。
〇委員
最初に、今の観点の話を。消費税の話は、社会保障の問題を入れた場合に、日本のこれからの社会が非常に高いコストを必要とする社会になるというのが非常に大きなメッセージで今回入っておりまして、この場合に高齢者がどういうふうに負担をすべきかという議論が非常に重要で、消費税と年金課税、その他、公的年金の控除。高齢者がどのようにこれからコストを負担していこうかという一つの問題提起であって、どのように負担したくないかという議論ばかりしていたのでは、これからもたないという議論が若い世代から非常に出てきているわけで、私の意見としてはこれは二桁でいいと思っております。実際の税率はどうあれ、今回の指針の内容としては消費税が一番大きいテーマですから、これを書かないと何を議論したかわからない。今までと同じ議論をしていたということになってしまいますので、私はこれでいいと思います。
その他、3点だけ短くコメントしたいのですが、先ほどから出ております社会保険料控除の点です。議論が途中でねじれたということで、要するにこういうふうに修文すればいいのではないかということですけれども、ここのメッセージは……。
〇委員
どこですか。
〇委員
5ページの最後の[3]のところです。つまり、社会保険料が増大すると課税ベースが浸食される、この問題が一番大きいテーマですから、公的年金と私的年金の両方を合わせた税制控除の仕組みを構築すべきである、というふうにすればいいのではないか。私的年金を構築するのではなく、合わせて幾らという形にすればいいのではないか。そうすると、「また」が要らなくて、「その場合は」というふうにくっつければいいのではないか。
2番目の点は、7ページの前段の部分で、[3]の「配偶者に対する配慮のあり方」の部分ですが、前段の部分は私も賛成でございます。後段の「今後、児童など真に社会として支えるべき者に対して集中することが」と。この「集中」が、配慮を集中するのか、控除を集中するのか、手当を集中するのか、何かわからない。ですので、子育ての重要性を考えるならこれは手当になるのかな。ここがないと、この文章の意味が全く崩れてしまうので……。
〇委員
「控除」ですよ。
〇委員
控除ですね。控除を集中すると。配慮だと広すぎるので、その点です。
それから3番目は、非常に簡単にいきますが、相続税の考え方がやはりこれもねじれている。11ページの「(2)今後の検討課題」の第二パラグラフのところでございます。ここで言っているのは、所得税はフラット化します、消費税は上げます、その場合に一つのメッセージとしては、再分配機能が遅れてしまうのでこれをきちっとさらにやりましょう、というのが入っているんですね。字句の問題だけ言えば、「資産ストックの段階での」、この言葉がちょっとおかしい。前のページは「資産移転」という言葉を使っているので、資産移転だと思うのですけれども、ここはちょっと字句だけの問題です。
その次に、「老後扶養の社会化の進展に伴い、相続時に残された個人資産に負担を求める」。負担を求めるということと再分配機能というのが、ちょっとフェースが違うんですね。お金が足りないから払ってよという話が2番目なんですね。ここも、もしかしたら再分配として考えておられて、金持ちのほうからもらって貧しい人のコストを払えというふうにも読み取れるので、ここは残してもいいですけれども、違う話に入っている。
次に3番目に、今度は課税ベースの拡大という話が出てきて、これは再分配機能の強化ではなくて、よりみんなで少し負担してよという話になってきて、再分配機能の強化とはフェースが変わってしまう。この3つの話が連立して出てくるので、申し訳ないのですけれども、やはり大きく言えばこれもフラット化の方向、みんなが少しずつ負担する方向で、相続税の形を変えようという議論にしているのかなというふうに解釈したのですが。
〇委員
そうですよ。
〇委員
そうですよね。再分配機能というのは、豊かな人はもっと払ってよという話になるので、ちょっとねじれがあるのではないか。
〇委員
はい、ねじれを戻すべく努力しましょう。
ではどうぞ。
〇委員
13ページの納税者番号制度のところです。24行目のあたりで、「各種カード等や暗証番号の利用が普及し、日常生活における番号の利用がより身近なものになるなど、国民の意識も徐々に変化の兆しが見られる」というところですけれども、各種カード、暗証番号の利用が普及した、だから日常生活における番号の利用が身近になった、国民の意識も徐々に変化の兆しを見せているということが、納税者番号制度をめぐる環境の変化になりますかね、と思うんです。
カードや暗証番号の利用の普及そのものと、納税者番号制度に対してみんなの意識というのが、すり替えているような感じがして、むしろそんなことを書かないほうがいいのではないか。暗証番号は自分で変えられるし、カードは、不正に利用されたと思ったら止めてしまうこともできるけれども、住民票のコードにしろこういうものというのは、そうではないものでありますから、この辺のものと一緒にして、ちょっと迎合した書き方というのはよくないような気がするのでありますが。
〇委員
はい、よくわかりました。
〇委員
今の納税者番号制度のところに絡むのですけれども、その前の8行目、「このためには、納税者番号制度など納税環境の整備を進めていくことも重要となろう」という中で、その次、「また、諸外国の状況を見ると、二元的所得税など新たな租税論の展開が見られる一方で、勤労所得」云々。「課税バランスや租税回避行動の抑制等の観点から、実際的な対応が行われている。今後、金融資産性所得に対する課税の一体化の検討に当たっては、わが国においても、これらについて十分な検討が必要となろう」というくだりですが、つまりこれは、納税者番号制度を導入します、ただそれは段階的にやっていきます、ということと同義語になるわけですか。
〇委員
10行目から下のあたりですね。一挙に全部網をかけてというよりは、段階的に、かつ、使うほうがメリットがあるような利便性を考えてというのが根っこにあるんです。そこはまだはっきりは一本化していないのですが、おっしゃる趣旨で書いたつもりですが、何かそれを踏まえてもうちょっと修文があれば。
〇委員
一体化論、一元化論、大賛成なのですが、現実問題として、そういうことをやったときに納税者番号制に本当に移行していくのだろうかという疑念。つまり、分離課税という便利なものを片一方に認めながら、本当に個人個人が納番制を採用するようなことが実際に起こってくるのだろうかということが思われますので、あえてこういうことを税調で言う必要はないのではないか。要するに納番制をやりましょう、みたいなことでいいのではないかということですが。
〇委員
金融小委員会等々の議論は、諸外国の調査も行ったし、金融所得の一元化、総合化、これは一つの方向だろうと。ついては、今、分離課税云々の話がございますが、分離課税をやめて総合課税化と、今のところ方向として考えていますから、それで納番だと。委員のおっしゃるように、「できるかね」という議論はまた次の次元としてありますが、それはそのときに議論すればいいと思っています。いや、ご指摘はよくわかります。それを今から、できないねと書くわけにいきませんからね。
〇委員
できないねというよりか、今度の証券税制改正でもつくづく現実として起こったことは、やはり税務署とさわりたくない、税務署に知られたくないという国民感情といいますか。特に利子等について分離課税が残っている中で、本当にそういうことができるのだろうかということです。
〇委員
できるのだろうかという意見はどこかで紹介はさせていただきますけれども、ここで、「できるのだろうか」とも書けないし。
〇委員
だから、「やりましょう」でいいのではないかという意味です。
〇委員
そういうことですか。ちょっと検討させてください。
〇委員
それからもう一つ、その前のページ。これは私の誤解もあるのかもしれませんが、21行目のところ、「申告不要制度の導入など投資家利便にも配慮された。こうした改正を踏まえ、今後は中長期的に安定した税制の構築を目指し、幅広い観点から検討を続けていく必要がある」。これは、要するに証券税制について言っている部分なのでしょうか。その次の行からは、いわゆる金融商品、難しくなってきたから一体化していこうと書いてある。このくだりは証券税制だけについて言っていることになるわけですか。
〇委員
ええ。それはまずいですか、いいのですか。
〇委員
そういう意味では何を検討するのか、と。「安定した税制の構築を目指し」ということは、証券税制だけについて何を目的とされているのかということが、若干……。
〇委員
それは、先ほど私が言った金融性所得の一元化等々のような大きなフレームの中で、幅広い観点からですから、何が出るかわからないですね。楽しみにしてください(笑)。
では、委員、初めてですね。どうぞ。
〇委員
さっきの消費税の二桁のあれは、せっかく経団連が勇気を奮って15%と相場観を出してくれたわけですから、ここで税調が足を引っ張る必要はさらさらないということで、二桁は遠慮っぽい表現だと思います。
あと、三位一体絡みの税源移譲などもあっていろいろ思うのですが、環境税というか、環境問題のところで何か引っかかるなあと思っていたのは、最後のところで、「この際、揮発油税」云々と書いてあることによって、環境税というのはエネルギー関係にかけるのが前提になっているように読めてしまう。僕は、環境税というのは、エネルギーに偏るのではなくて、空気を吸っていること自体にかけるというか、きれいな水を飲むのもタダではないよということで、ポールタックス的な10兆円、20兆円の税金に育てあげていくべきではないかと思っていますので、エネルギーにかけるのをここで規定してしまうという感じが何か気に入らないのです。だから、「この際」というのは、ここのところで行がえして、「また」とかやってもらったほうがありがたいなと思います。
〇委員
ここはいずれにせよ、いわゆる環境税の導入というのはずっとおしまいまで絡んでいるんですよ。ある意味で地球温暖化対策税みたいなイメージで環境税をとらえていますから、化石性燃料なんですね。ただ、おっしゃるように地方でやっております産廃の話だとか、環境の維持のため云々というのはまた別途あるんです。だから、それを書き込むかどうかちょっと考えましょう。
〇委員
そこまで書かなくてもいいと思うんですけれども、ここでくっつけちゃうとどうしても……。
〇委員
でも、いわゆる環境税というのはくっつけるんですよ。化石性燃料にかけるのがいわゆる環境税ですから。
〇委員
でも、上のほうで言っているのは、そうではなくて、もうちょっと大きいね。
〇委員
はい。
〇委員
もう一つ、それも含んでいるのですが、担税力というか、聞いたことのあるような話しか載ってないのは面白くないというのもあるんですけど、ある委員が言ったカジノ税もちょっと魅力的だなというのがあって、そういう意味で新しい税金を考えていったらどうかしらというのを1項目欲しいなと。例えばパラサイト課税とか、くだらないテレビ番組課税とか(笑)、金を出せると思うところに出させるというのをいろいろ考えていくというのは、これから10年、20年、必要なような気がするのですが。
〇委員
賛成ですが、今の段階でと言われても、キャンペーンをやっていただけませんか(笑)。
すみません、あと10分ぐらいですが、ご発言は、ほかにいらっしゃいますか。よろしいですか。
では、3人で締切りということもないけど、どうぞ。
〇委員
これは基礎小でも申し上げたのだけれども、13ページの納税者番号制度。「番号導入を巡る環境の変化」ということで、26行目、「基礎年金番号や住民票コードによる全国一連の番号の整備」云々で、「制度導入に向けた環境も次第に整いつつある」、こう書いてある。この住民台帳、11桁とか何か番号を振るというのは、これは民間取引には使わせません、あくまでパスポートの発給とかそういう役所の仕事だけですよということで、国民に立法の過程からずっと説明してきた。しかし、納税者番号ということになると、銀行の口座開設、証券会社も使うでしょうし、場合によっては不動産会社に見せなければいけない、そういうことになってくる。この住民番号を銀行では口座開設の本人確認に使ったというので騒ぎ出して、金融庁が注意したとかそういう話まで出ている。
そのときに当たって、納税者番号ならいいんですよと、税調がここで言った、環境が整ってますよと言ったというのは重要なことですよ。だから、ここら辺の表現はちょっとまずいので、削るか、もうちょっとやわらかくするか、これだけ国民との約束で国民全体がそう思っている、自治体もそう思っている。そういう中で、いや、これを納税者番号に使います、金融取引に使います、資産取引に使います、というようなことを含ませる書き方は、そこまでの決断があるのかどうかということです。
それから、その前の12ページ、「地方分権と税制」の課税自主権のところで、法定外税、超過課税、とりわけこの法定外税に課税自主権というのを結びつけ過ぎている。課税自主権というのは法定外税だけの話ですかね、と。むしろ住民が自分たちで税率を決めるなり何なりしていく、そういう意味での課税自主権というのがむしろ民主主義にとっては重要だと思います。そこら辺は、住民たちが自分たちの税金を、税率等々を含めて自分たちで決めていくのだ、それが課税自主権の本旨だということが感じられる書き方が考えられないかどうか、検討していただきたいということです。
〇委員
それは、11行目くらいに、それとなく「さらに活用しやすくなるような方策」と書いてありますが、委員のご感想から言うと万事不足なのでしょうね。
それから、今の住基番号云々は、実は委員のご指摘を受けて我々としてもしかるべき段階で議論はいたしました。これは総務省のほうから、今、委員がおっしゃるように、税調としては踏み出してしまうということについて何かございますか。事務局から、それについて何かありますか。いや、税調としてそれぐらい法律を変えるつもりでやっていいではないかという議論、これはあるのかもしれないし。何かあれば。
〇事務局
法律を変えるというには変える中身とか、いろいろな考えがありますから、そういう意味では、時期としては第二次稼働の微妙な時期でもあるというあたりは、ご考慮いただければと思います。
〇委員
ご考慮いただければって、委員から言われたのだからさ。これ、どちらかというと総務省の一番責任担当のところだよね。「環境も次第に整いつつある」と書くと、納番の第一歩だよというイメージだよね。これを残すか残さないかというのは、ある意味では総務省の今後の政策を縛りますよ。我々として大いにやろうと皆さんが言うなら、それはそれで支援しますし、とてもではないと言われるとあまり意地悪もできないし。そういうイメージではないですか。
いや、今お答えできなくても、まだ数回ございますから。何かありますか。
〇事務局
直接的にここでもってすぐやる、やらないというあれではなくて、環境の中の部分として述べていますが、いろいろ書き方なり判断、もう少し時間をください。
〇委員
では。
〇委員
ただ今の点の13ページのところですけれども、25行目以下でも、別に住民コードを使うというわけではない。私は、そういう環境がいろいろ整ってきたのだからという、環境整備の一つとして書かれているのだなと理解をしていたわけです。といいますのは、なかなか難しいかもしれない。そういう場合には税固有のもので出発してもいいのだから、この表現でどっちになるとも限ってないというふうに読んだわけです。
それで、税独自でつくる場合には、例えば生年月日と自分の暗証番号4桁、5桁、それで各人が自分で選択してもらう。それを登録してもらったらそれは動かせないというわけですから、そういうふうなことも考えられる。そういう意味では「暗証番号の利用が普及し」というのは、先ほど迎合的な用語ではないかというお話もありましたが、決してそうではない感じを持っているわけでございます。
それから、納番はどうしても資産課税に関連をつけられがちですけれども、今後、雇用形態がいろいろ変わってくる。そういった観点も含めれば、勤労者におきましても勤労性所得についても必要になってくる。金融資産課税にだけ関係づけると、いろいろまた反応がありますから、金融所得課税を含めた幅広い課税上の施策であるというふうに理解され、そういうふうな方向での表現ができればと思うわけでございます。
それから、カジノの税金。こういったものは、先ほどの新しい課税自主権の書き方とも関連するわけですけれども、あそこの地方税のところで、サービス課税を中心にそういったものを大いに活用すべきだという中で、先ほどの委員のようにそういったものを大いにやるべきだと。そういうところに持ち込んで、何とかうまく書ければ幸いだと思うわけでございます。
消費税の税率については、平成15年度改正でかなり環境整備がされたわけすので、今後の方向としてはこういった税率の水準が自然な流れになる。そういう自然な流れを書いておくことは必要なことではないか。しかし、それが非常にショッキングであるというなら、それは表現の問題かもしれませんが、方向としてはそこは明らかにして。
〇委員
いや、その表現が今問われている。二桁かどうかで議論しているわけだから、そこはどうですか。
〇委員
基本的には、現時点の表現でよろしいのではないかと思います。
〇委員
委員に一つお答えし損なったけど、委員のご指摘があったのは14ページの13行目のところで直したんですよ。この間、行政にかかわる全国一律番号の利用等々で住基番号ということをご指摘になりましたよね。そこで、「行政にかかわる」というあたりはとったのですが、13ページの下から2行目でまたご指摘がありましたから、委員のおっしゃっていることの意味はさらにここにまで波及していますから、ちょっと考えます。すみません、ちょっとお答えができなかったので。
どうぞ。
〇委員
簡単なことですが、同じ14ページ、納税者番号です。15行目から以下のところですが、ゴタゴタ書きすぎているように思うのです。それで、「コスト負担が小さく、プライバシー保護を含めたシステムにおけるセキュリティが確保される」というのは絶対条件なんですね。これが怪しくなるとまた住民台帳みたいなことになってくるので、それは絶対であって、その上で、「納税者番号制度に対する国民の理解を深めるために、例えば簡素な」というふうに間を抜いてしまっても構わないと思うんですね。
〇委員
ありがとうございました。
では、最後にどうぞ。
〇委員
環境問題です。15ページ、24~25行目ですが、重量税関係も話が出てまいりました。エネルギー関係ということで、これを見ていたら、道路特定財源だけが環境問題でとらえているのではないかという感じを受けます。自動車関係にいたしましても、炭酸ガス関係は4分の1か5分の1だったという感じがしております。そのほかに産業関係もあるだろうし、産業廃棄物関係もあるわけです。そういうことで、この書き方は特定財源だけを目指したとり方だというような感じを受けます。そういうことで、ほかにもちょっと書き加えていただかなければいけないのではないかという感じがいたします。
〇委員
道路特定財源に触れて、一般財源化云々の話を再度書けというおっしゃり方ですか。
〇委員
一般財源何ですか。
〇委員
道路特定財源に触れろとおっしゃるのでしょう。ここはあえて道路特定財源に触れてないんですよ。道路特定財源という言葉を使ってませんからね、ここでは触れてないわけです。ですから、寝た子を起こすような書き方はまずいんでしょう。触れてないんですよ、ここは。もう少し触れて書けというご要望なら、ちょっと考えますが。
〇委員
もうちょっと産業関係とか、何か加えてもらわないと。
〇委員
産業関係?
〇委員
企業関係。
〇委員
すみません、具体的に修文等々でご要望があれば伺っておきたいのですが。
〇委員
企業関係の工場から出る排煙関係ですね、そういうこともあるでしょうから。企業関係の炭酸ガス関係があるわけですから。
〇委員
ここは、道路だけではないだろうと言ってるわけですね。
〇委員
我々にとっては、特定財源だけをねらわれているような感じを受けるんです。
〇委員
ああ、そうですか。そこがちょっと心配になるということですね。
〇委員
はい。
〇委員
それでは、ちょうど時間になりました。長時間、2時間半にわたりましたので、ぼつぼつ終わりにしたいのですが、よろしゅうございますか。
あとの手順ですが、今日いただきましたいろいろなご意見を、今度の火曜日の起草会合でまた基礎小の先生方に集まっていただきまして、修文したものを、来週の金曜日に再度お出ししたいと思っています。ただ、皆さんからいただきましたものを全部取り込むと、また、あっち言った、こっち言ったでわからなくなりますから、それは、これから我々の基礎小の起草会合を含めて検討させていただきたいと考えています。6月13日、午前中ですが、10時から12時を考えております。これがおそらく実質的に最後の審議になると思いますので、今日の議論を極力生かす形で書きますが、できましたら案文を私にご一任いただく格好で、うまくとりまとめができたらと思っています。
しかし、どうしてもとおっしゃる方には、ぜひ、「主な意見」のほうで意見を開陳していただきたいと思っていますので、これはまたそのときご紹介いたしたいと思っています。
そこで、今の段階ですが、13日でまとまったとして、最終的に一任いただいたとしても、もう一回、案文をご紹介いたしましてご了解いただくという、最後の形式的と言っては何ですが、小泉さんに持っていく前に最終的なものを確認いただく作業が残っております。これは、諸般の事情があって確定はいたしかねておりますが、一応6月17日の午前中、火曜日、これを考えておりますので、予定の中に組み込んでいただけたらと考えております。
再度しつこいのでありますが、「返却願います」というのは、今、マスコミに非常にねらわれておりますので、これはぜひ机上にお残しください。よろしくお願いいたします。
どうも長時間、ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られら時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期してしますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。