第41回総会 議事録
平成15年5月27日開催
〇石会長
それでは、時間になりました。総会を開催いたします。
今日は3時間ほどの長丁場でありますので、途中1回、10分ぐらい休憩をとりたいとは考えております。
議事に関しましては、予定表をすでにお配りしてございます。項目は2つぐらいしかないのですが、実は内容は密でありますので、これからいろいろご議論賜りたいと思います。
今日は、総会だけご出席の委員の方には特にご発言をお願いしたいと思います。と申しますのも、来週以降、起草に入り、中期答申の骨格をつくっていこうと思ってますので、その前に、かねてお考えのことをこの際、言うなら心おきなく言っていただきたいと思ってますので、自由に討論する機会、時間もつくりたいと考えております。
3つほどございまして、1つは報告事項でございまして、海外視察やら、あるいは他の審議会との合同の会議の状況を簡単にご説明します。それから2つ目に、今申し上げた自由な討議時間をつくり、3つ目に、基礎問題小委員会、金融小委員会、かねて議論いたしましたことをまとめまして、そこで何が主要なテーマかを整理した紙がございますので、それをベースにご説明もしつつご意見も聞きたいと。これがおそらく起草会合に文章としてかかり、最終的な中期答申の中身になってくると思ってますので、そういう段取りで考えていきたいと思ってます。
それでは、最初に簡単に海外視察報告から入りたいと思います。お手元に2つ、スウェーデン・デンマーク組と、カナダ・アメリカ組の報告書がございます。これは4月末から5月の連休にかけまして、奥野さんと中里さんが北欧のほうへ、私と水野忠恒さんがカナダ・アメリカへ、おのおの行ってまいりました。事務局の方も2人ずつ参加いただきまして、そういうわけで4人ずつ向こうへ行ってきた、そういう報告書がまとまっております。
便宜上、私のほうから、カナダ・アメリカ班のほうから、ごく簡単にご説明させていただきます。
共通の――共通という意味は、北欧と共通する一応の問題意識は、高齢社会における税制やら年金の制度がどうなっているか、あるいは金融・証券、この税制がどうなっているか、納番も含めてそのことを視察してこようと、こういうねらいであったわけであります。
そこで、カナダ・アメリカ班は、まず、社会保障と税制と、それから納番、これは両国に共通でございます。アメリカのみに該当いたしますのが、例のブッシュ大統領が提案しておりました配当の二重課税の撤廃の問題、これは非常に話題になっておりましたから、その調査。それからカナダにつきましては、GSタックス、つまり、Goods and Services Taxにまつわるいろいろな問題がございました。それを整理したという形で報告書ができております。いずれにしましても、最終的な報告書をいずれ作成する予定でございます。
そこでまず、社会保障と税制につきまして、1ページ目から、カナダから説き起こしてございますが、カナダの年金制度は3階建てでございまして、極めてよくできているという印象でございます。向こうの担当官も自信を持っておりまして、我々の年金制度は国際的に高い評価を受けているというようなことを申しておりました。
1階建てが、全部税を財源にいたしております。保険に対して税で給付を配ってますから、一種の現金給付ですね。それから2階建てがCanada Pension Plan、CPPと言ってますが、これは言うなれば所得比例の年金でございまして、保険料で賄われております。それから3階建てが適格私的年金で、税を用いて、個人的な年金資産を積み立てるのに役立てようと、こういう形であります。
と同時に、1階建てのところに、低所得者に限って、特に低所得者の高齢者に限って、言うなればGIS、つまりGuaranteed Income Supplement、付加的な補足給付年金がございます。と同時に、2階建てのCPPのところに、高額所得者にはクローバックというシステムがあって、高額所得者の年金給付は削られていくというような状況がありまして、年金制度の中に一応の所得再分配機能があるといったのがカナダの年金制度でございます。
税制のほうでございますが、2ページの上からでございますが、一応基本的に、給付について通常の所得と合算され、それから拠出時、言うなら入口には一部税額控除がございますが、基本的には控除されるという形になっております。そういう意味で、よくwell-balancedという言葉を使ってましたが、そういう制度であるという説明で、やはり基本的な理念なり基本的な思想をこの3階建てのおのおのの階に持っているというところがカナダの年金の一つの特色であると我々も理解いたしました。
アメリカは、それほどはっきりした1階、2階、3階の年金制度というよりは、OASDIという、言うなれば報酬比例に係る、つまり、勤労所得のある一般被用者や自営業を対象とした、老齢・遺族・障害保険に係る年金があって、これが広く普及しているということでありまして、それ以外には、税制を使った、優遇措置を用いた私的年金の制度が極めて発達していると、こういう格好でございます。
カナダほど3階建てははっきりしてませんが、しかし、年金を一応老齢基礎的なところと、それから自助努力による税制でやるという部分がはっきり分かれているというところがここのシステムではないかと思います。
いずれにいたしましても、それほど所得代替率が、つまり、現役時代の所得を何割くれるかという点においてそれほど高くないということもあって、個人的な努力によって老後の安全を見るというあたりが発達していると思います。ここも原則はやはり拠出で非課税、給付で課税というはっきりした状況になっております。
それから納番、納税者番号のほうでございますが、私、15年ほど前にカナダもアメリカも同じような形で調査してまいりましたが、当時に比べると、納番の守備範囲といいますか、対象範囲が非常に大きくなったという印象を両国については持っております。
とりわけアメリカについては、資本所得、つまり、利子、配当、キャピタルゲインのところだけをマッチングするという格好の制度でございましたが、今回はかなりその範囲も広がりまして、財産所得から賃金所得まで納番の対象になっているという形であります。
いずれにいたしましても、この納番があるがゆえに、税の公平、公正が要するに保たれているという強い自負心がございまして、おそらくアメリカもカナダも、この納番制度あっての税制ではないかと、このように考えております。
ねらいはマッチングでございまして、各種受け取り側と支払い側の、言うなれば情報に基づきまして、番号を使ってマッチングすると。おそらく住所とか年齢とか名前でもマッチングは可能かと思いますが、それでやったときの手間に比べれば、この番号があるなしは圧倒的な差があり、おそらく今の両国の税務行政上、番号なくして、やはりマッチングというのは非常に制約があるのではないかと、このように考えております。
それからアメリカのブッシュ大統領の配当二重課税の撤廃は、かねて日本でも報道されておりまして、私どもが行ったときにはこれは非常に盛りでございまして、盛りという意味は、アメリカの税制改革の話をすると全部こっちに話がいってしまうのですね。というふうに盛んでございました。
4ページから5ページ目にかけて書いてございますが、そもそも配当の支払い側と受け取り側、両方で税が法人税でかかり、そして所得税でかかるという二重課税と言われて、アメリカはそれをずうっと保持してきましたが、やはり資源配分上の歪みを生み出しているし、経済の活性化、経済の成長には二重課税は好ましくないということから、言うなれば大胆に二重課税を排除しようと。この場合には支払配当控除法という、株主の段階での所得税をゼロにしようという発想で出てきたわけであります。テクニカルにはいろいろな面倒臭いことがございますが、基本的には、法人でかかったものは個人ではかけないと。日本の場合には税額控除がございますが、そういう形ではなくて、完全にかけないという形で一応理論を説き起こしております。
ただ、現実的には、かなり金融機関、証券会社等々に事務の負担がいくであろうと容易に予想されますが、それも、財務省側から言えば、そう大きな壁ではないだろうという形の判断が示されました。
我々が帰ってきてから、この二重課税の撤廃問題は少し様相も変わり、上院、下院でさまざまな違った案が出ておりましたので、その決着が今つかんとしているところであります。
それからカナダのほうの付加価値税は、Value Added Taxと言わないで、Goods and Services Taxと言ってますが、これも非常に定着した税でありますが、カナダで注目すべきことは、カナダは連邦において、日本の消費税に当たるGSタックスがあるのですが、州の段階で、アメリカの州政府と同じように、小売売上税を持っていると。そういう意味ではタックス・オン・タックスみたいになっているわけですが、それを3つの州で、言うなればハーモナイズしようと、統合しようという案が出ておりまして、州、そして連邦のGSタックスの小売段階で、両方、7%と8%、合わせて15%といったような形で一緒にしてかけようという、Harmonized Sales Tax、一応我々としては統合売上税と訳しておりますが、そういう動きがあるという点を見てまいりました。
これはある意味で日本の地方消費税、つまり、国が一括してとって配るというのとは違って、根っこが別々のものをたまたま税務行政上一緒にしたという税であります。ただ、いろいろな事情がございまして、3つの州で始めたものがその後広がっているという段階ではないようであります。
それからもう一つ、低所得者のためにGST Creditという制度があって、言うなればGSタックスというのは大衆課税であり、低所得者層に負担が多くなるという趣旨から、還付する、リファンドするという制度を入れております。
しかし、所得税とは違って、一旦税務当局が集めたものを税務当局が返すというスタイルではなくて、これはある意味で潜在的に払っているであろうとみなして、キャッシュ・トランスファーをするわけでありますから、言うなれば日本でいうと生活保護みたいになると思いますが、歳出面での対応という形で、こういう低所得者に対しての配慮が一応カナダの税制にあると。あるいはProperty Taxもリファンドがある州があると言ってましたから、この辺の配慮はしているのかなあとは思っております。
これが概略簡単な報告でございます。カナダとアメリカでございます。
じゃ奥野さんのほうからスウェーデンとデンマーク、続いてお願いいたします。
〇奥野委員
ここに書いてありますように、4月の終わりに、中里委員と事務局の方々とスウェーデン、デンマークを視察してまいりました。主題は、今会長がおっしゃった北米と似ていて、社会保障問題と、もう一つは、特に所得課税の控除制度と金融課税の問題というあたりについて調査してまいりました。
その概略ですけれども、両国の控除制度についてまずお話ししたいと思うのですが、両国とも人的な控除は基本的に基礎控除のみというのが大体概略の原則です。そのほかに社会保険料控除がちょっとあるぐらいということです。ずうっと両国とも税制の簡素化に向けて一貫して控除の整理・縮小を行ってきたという形になっています。
両国とも基礎控除額の水準は極めて低くて、基本的には最低生活水準の保障という機能は担わずに、むしろ基礎控除をとって、それに比較的フラットに近い税金を課すことで、平均税率が逓増するように累進構造を確保しているというのが一つの基礎控除を設定する理由。それからもう一つが少額の徴税事務負担を回避しているということかと思います。
個別の国民の事情、例えば老齢であるとか、配偶者がいるとか、そういう機能は税の人的控除には求めずに、むしろ給付、社会保障給付とか、そういう給付を主体とする仕組みを構築しているということが特徴かと思います。
また、社会保障給付との課税関係で言うと、両国とも基本的に北米と同じですが、社会保障給付が基本的に課税になっているということです。後でもう少し細かいことをお話しします。両国とも、従来非課税所得扱いしていた給付を課税所得扱いに変更してきていますけれども、その理由としては、国民の側にこれらの給付の収入であるという意識を高めようというインセンティブ的な問題とか、執行側から、ほかの収入と合わせて一律に課税することで納税者からの比較を容易にしたいとか、そういう理由があったということです。
いずれにしても、こういう給付を課税扱いにすると国民負担が増えるのですが、それに対する国民の反発というのは、実は同時に給付水準も引き上げてきたために、実質的な手取りが変わらないということで反発を避けてきたということのようでございます。
それから年金につきましては、スウェーデンとデンマークでやや違うといいますか、かなり違うのですが、スウェーデンは、ご承知の方も多いかと思いますが、旧制度は日本と同様な2階建てだったのですが、99年に抜本的な制度改革をして、基本的に公的年金制度は報酬比例年金のみの1階建てとして、特に報酬比例であるということ、非常にそこを強調して、ただし、低所得者に対してのみ一般財源による補足をして、いわば最低保障年金を給付するという形にしております。
この新しい仕組みというのは2つぐらい特徴がありまして、1つが、賦課部分というのがほとんどを占めているのですが、そこに概念上の拠出建てという、賦課でありながら確定拠出的な仕組みを入れていて、各個人別に仮想的な年金資産勘定というのをつくって、それがみなし運用利回りという形のみなし利回りでもあるという仕組みで給付を決定する仕組みになっています。
ただ、そうするとマクロで、全体で見たときにバランスがとれなくなるということが起こることを避けるために、そのみなし運用利回りを一定のマクロの形で修正するという、自動財政均衡メカニズムを入れている。
税制に関しては、拠出時は、仕組みはちょっと複雑ですが、基本的に非課税、給付時に勤労所得として課税されるという仕組みになっています。デンマークは、社会保障に関しては国民年金というのが1階の部分ですが、ここは完全な税方式で運営されているということでございます。税制に関しても、スウェーデンと同じように、給付段階では課税、拠出段階では事実上非課税という形になっています。
それから両国とも、いわば二元的所得税というものを入れているということが特徴かと思うのですが、実はこれについて、我々としては少し新鮮な発見といいますか、そういうものが幾つかあったように思います。
導入の背景ですけれども、ご承知かもしれませんが、80年代の後半から90年代前半にかけて、両国で非常に高い率のインフレが進行していて、両国とももともと総合課税であったために、しかも、例えば帰属家賃というものにも課税するという仕組みが存在していたために、総合課税であり、かつ支払利子控除は認められていた。
ところが、インフレが高くなると利子率が上昇する。そうすると、支払利子というものが非常に高額になって、その結果、資本所得というのは大幅なマイナスになるということになりました。それがさまざまな課税ベースを侵食したり、いろいろな問題を引き起こした。
もう一つが、キャピタルフライトといいますか、小国でオープンな経済ですので、国際的な資本逃避が起こる可能性が生まれてきた。それからもう一つが所得間での税率格差を利用した租税回避行為が生じたと。こういうような理由で導入がされたということでございます。
二元的所得税の理念形としては、勤労所得と資本所得を分離するという性格と、それから勤労所得は累進税率として、他方、資本所得には低い比例税率を課すということと、資本所得での損益通算を、資本所得内部でのさまざまな所得の損益通算を可能にする。それから法人税率、資本所得、比例税率、勤労所得の最低税率を均一とする、そういう幾つかの特徴があると理解していたのですが、行ってみると、両国ではそういった理念形としての二元的所得税はどうも成立していないようだというのが我々の印象でございまして、よく聞いてみると、後で簡単に説明しますが、どうもあまり理論的にきちんと考え抜いた税というよりも、本来、その性格として、実際的なといいますか、かなりプラグマティックな税であるようでございます。
むしろ重要なのは、導入に際して低い均一税率を実現するためにさまざまな特別措置とかそういうものを廃止したということが重要な点であるようでございます。
それで、現行の両国の税制がどうなっているかということですが、実は資本所得と勤労所得に関しては損益通算は限定された形で行われているということのようでございます。勤労所得から控除できる資本所得のマイナスの資本所得額、あるいは資本損失額というものに上限があるということのようでございます。
もう一つ、資本所得の中でも、所得の種類によって損益通算ができる部分というものが決まっている。だから、例えばキャピタルロスというのはほかの資本所得とは通算できる上限がこれまた決まっているというような形になっていて、完全な損益通算は行われていないということのようでございます。
デンマークは、もっと理念的な、我々が考えていたような二元的所得税とは違う税が課されていて、株式譲渡益とか配当というのは株式所得として分離されて、それ以外の資本所得はむしろ勤労所得と合算してしまうという形になっている。株式所得自体もフラットではなくて、2段階の累進になっているという形のようで、そういう意味で、どうも二元的所得税の理念から随分乖離しているというのが我々の印象でございます。しかも、スウェーデンともよく似てますが、損益通算に関してはさまざまな制限が課されているというのが実態のようでございます。
最後に、ここには触れてませんが、一言だけつけ加えますと、納番についても、我々、一応聞いてまいりまして、非常に興味深かったのは、例えばデンマークの例であれば、納番を使って、例えば雇用主が各被雇用者に幾ら賃金を払ったかということを当局に申告する。それから金融機関が各個人の金融所得に関して当局に報告するということは当然納番を使って行われるので、そういう情報をもとにして、当局の側が各個人のいわば納税申告書をまずつくってしまって、それを各個人に送る。それを見て、個人の側、申告者の側がそれを判断して、もしそのままでよければ何も修正しないでそのまま申告書として使ってしまう、場合によっては少し修正する、場合によっては自分で改めて作り直すというような形をしているようで、納番というものは申告納税費用、納税者側のコンプライアンス・コストを極めて低減させているという特徴があるように思いました。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。今の我々両人の報告に対しましてご質問あるかもしれませんが、次の報告をした後で、まとめてご質問いただきたいと思います。
次は、社会保障審議会の委員との意見交換、それから財政制度等審議会での私の意見の表明等につきましてご説明しておきます。
5月20日ですか、貝塚・社会保障審議会の会長と4名の委員と、税調側は私と4名の委員、5名、5名で自由に、年金を中心といたしました社会保障制度の今後の改革の方向等々の議論をいたしました。
非常に大きな問題でありまして、その場ですぐ結論が出たというわけではありませんが、少なくも20世紀型の発想ではなくて、新しい、将来を見据えた21世紀型の年金なり社会保障制度があるではないかという形では意見が一致しておりました。
とりわけ世代間の不公平というものが、給付、そして拠出において非常に高まってきた中でどうしたらいいかと。21世紀型というのは、言うなれば高齢者に対して非常に給付が偏っていると。若い世代に非常に負担がいっていると。これをこのまま放置できないだろうという点については、両審議会の委員の方も意見が一致しているわけでありまして、これはどうしようかと。
その一環として、基礎年金ですね。国庫負担を3分の1、2分の1にしようという意見についてどう考えるかというような議論をいたしましたが、当然のごとく、この時期の段階で確定した方向が出ていたわけではありません。言うなれば、最近は高齢者でも大変元気な人もおるので、応分の負担をしてもらってもいいではないかなんていうあたりで意見が一致し、そういう方向で制度改正をしようというほうに意見が流れていったということであります。
それから5月23日、先週の金曜日だったと思いますが、私、財政制度等審議会の委員でもございますので、社会保障の検討をするというので特に出席いたしまして、税調側の審議の過程を説明してまいりました。
そこでとりわけ最後の点で強調したのが、税調は公的年金等控除の見直しも含め、やはり課税の原則に従って、入口で非課税なら出口の給付で課税をするのが筋であると。したがって、課税は税負担増のほうで見直される方向にあるだろうと。
それから財制審のほうは、どちらかといいますと年金給付を引き下げようという形で、言うなれば年金制度の持続可能性を高めようという議論をしているわけであります。
おのおの、要するに歳出、歳入、両方で別個に議論するのが筋でありますが、実施の段階に当たってはやはり調整するということが必要であろうと。言うなれば同時に課税の強化と給付カットというのが行われますと、かなり年金受給者に対しては打撃になりますので、その辺の調整をどうするかと。そういうことは念頭に置いて今後議論を深め、そして、それを調整する場を設ける必要があるではないかといったようなことを申してきました。それは向こうの委員の方も、あるいは私も財政制度等審議会の委員でございますが、意見は、こういう考え方は共有できたと考えております。
以上、私のこの説明と、それから海外調査の報告につきまして、何かご質問があればお伺いしたいと思いますが、どうでしょうか。最終的な報告書はいずれ作成する予定でいますが、よろしゅうございますか。
今日はまだ議論が幾つかございますので、また後で思いつかれたら、その場でお出しいただいても構わないと思います。
それでは、これから中期答申を議論していくわけでありますが、少子・高齢化とか税制、金融・証券の税制、あるいは環境問題等々につきまして、中期答申はこれを軸にして報告書を作ろうと思ってますが、後で小委員会等のご報告でその審議状況をご説明する中でもご議論を賜れたらと思いますが、その前に、自由な立場から、中期答申に対しての議論をすべき項目につきまして、あるいはご意見を賜りたいと思ってます。
お手元の配付資料の下側のほうに3人ほどの今日ご欠席の委員から、言うなれば意見書が出ておりますので、これもご参考にしていただけたらと思います。今井さん、それから榊原さんと草野さんの共同のペーパー、それから森下さん、お三方から出ております。
それでは、今から20分程度でございますが、時間をとりまして、どういう形で今後のあるべき税制を見据えた中期答申を書くかという視点で、重要な項目につきまして、ご関心のある点についてご意見を賜りたいと思います。時間の制約もありますが、ご意見のある方、早速ご発言をいただきたいと思いますが。特に総会しか機会のない委員の方はご発言をいただけたらと思いますが。
困りましたね。意見がありませんか。貝原さん、あるのではないですか。あればどうぞ。
〇貝原委員
私はかねてから、日本の構造改革の中での大きなテーマとして、1つは規制緩和、1つは分権構造への改革と、このように思っております。この税制に関しましても、分権ということは非常に大切なことなのではないかと思っておりまして、というのは、今の我が国の財政の状況等を見ましても、行政サービスを低下するか、あるいは住民負担を高くするかという選択が今後非常に大きな課題になってくると思いますが、その場合に、できるだけ住民自身が自分たちの問題として判断するということが、諸外国のいろんな動きを見ておりましても、非常に有効なのではないか、また、あるべき姿なのではないかと、そのように思うわけであります。
そういうことで、かねて私は、経済財政諮問会議等でも議論されているような三位一体の改革をぜひこの際進めるべきであると、このように思っておりますし、小泉総理も、本年の正月のときの一番最初の税調に対する総理としての意見としても、自主決定・自己責任というようなことが実現できるような税制にしてほしいというような趣旨の発言をしておられました。私は、全く適切なことなのではないかと思っております。
最近、新聞紙上でいろんなことがこのことについて報道されておりますが、このことについて、政府税調といたしましても、この際きちんとした考え方を出すべきなのではないか。税の立場から見て、このことについてどう考えるかということについての見解をぜひ出すべきであるし、その場合、三位一体での改革、したがって、国税から地方税への税源移譲、もちろんそれに伴って、国庫負担金、補助金の削減、交付税の改革、こういったことをぜひ意見として出すべきなのではないかと思っています。
〇石会長
ありがとうございました。
じゃ室町さん、どうぞ。
〇室町特別委員
実は前回のこの総会の席で、私、不良債権処理に係る税制について、あまり銀行側から要望してないというようなことを申し上げたかと。若干誤解を招いたかもわからないと思いまして、そのときの趣旨も踏まえまして、要望といいますか、申し上げたいと思うのでございますが、あのとき申し上げましたのは、不良債権処理税制というものは、やはり金融行政そのものと非常に深い、一体のかかわりがあるものであって、アメリカ流の、例えば繰延税金資産の問題でありますとか、こういうものを取り上げる場合に、それが厳格化される過程では、アメリカではどういう税制があったのかということをむしろ申し上げたかったわけでございます。
したがいまして、今後この問題が、繰延税金資産の問題も含めまして、不良債権処理に係る問題についていろいろ議論が進んでいくわけでありますが、税制だけという観点からなかなか難しいと思いますが、やはり金融行政がどうなるか、あるいは今後、金融と産業の同時再生という問題点からもどうなっていくのかということも踏まえて、一体としてぜひ議論していただきたいと、そういう趣旨でございまして、具体的には無税償却の範囲拡大とか、あるいは欠損金の繰戻しの凍結解除、あるいはその期間の延長の問題ですね。15年というと非常に評判の悪い話もあるわけでございますが、それから繰越期間の延長問題といったものも総合的に、行政、あるいは産業、金融の再生という構造改革の側面からも総合的にぜひ考えていただきたいと、そういう趣旨で申し上げたわけでございまして。
それから、当然のことながら、金融機関として、昨日の決算もございましたように、やはり不良債権処理の問題、それから収益力の強化、この問題は非常に大きな課題だと。それは自覚いたしておりますので、そういうことで、ちょっとつけ加えてご要望させていただきたいと思います。
〇石会長
繰戻し15年もご主張されますか。
〇室町特別委員
いや、これは15年ということを直接言うわけではございませんが、これは中期答申でもございますので、今喫緊の問題ということもさることながら、少し中長期的に、繰戻しの凍結解除とかそういったことは、金融もそうですが、やはり産業界も同じような問題があるだろうと思いまして、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
〇石会長
わかりました。ほかにいかがですか。
榊原さんは、ペーパー出ているのですけれども、口頭で言われるほうがパンチあるでしょうが、何か。あまり時間ありませんけれども、重要な点だけどうぞ。
〇榊原委員
幾つか個別的なのは後でまたお話しさせていただきますけれども、これまでこの政府税調でも言われてきたことを繰り返す部分が出てくるかもしれませんけれども、やはり公平・中立・簡素という原則、これをきちっと守って、例えばクロヨンなどという問題の不公平な税制というものを改めていく、そういう税制改革が必要でないかと思いますし、まず、そういうことを進める上で、これもこれまで論議されてきているのですけれども、前提としては、やはり政治とか政府、行政の信頼確立ということが必要だろうと思いますし、国民への、税制改革をこれから進めるに当たって十分なる説明ですね。そういう国民的な合意形成を図るというようなことも十分手を尽くしていただきたいということ。基本的なことを申し上げておきます。
〇石会長
後ほど、個別な問題がございましたら、またご発言ください。総論的なところで、基本的なスタンス等々で何かございませんか。もうちょっと時間を割いてもいいかと思ってますが。和田さん、まだよろしいですか。
それでは、総論的なところは議論がしにくいかもしれませんので、小委員会での主な論点を整理した中で、個別に論点が出てきた中でまたご発言いただいたほうがいいかと思いますので、次に移らせていただきます。
小委員会における論点整理のメモがお手元にいっていると思います。正式には「小委員会での審議を踏まえた主な論点」、今日の日付になっております。これには基礎問題小委員会と金融小委員会、2つの小委員会を絡めた形で整理されておりまして、中期答申も大体このような項目で書き込まれていくというふうにお考えいただいても構わないと思ってます。
そこでまず、どっちが内容的に多いかといいますと基礎小のほうでございますので、最初に、4ページに書かれております「金融・証券税制」と「納税環境整備」、これは奥野さんがやっていただいております金融小のほうでございますが、まずそこの論点をご説明いただいてご議論賜った後で、基礎小の残りの論点に移りたいと考えております。
では、奥野さん、簡単にご説明ください。
〇奥野委員
金融小は1年半ぶりぐらいに4月に再開しまして、3回やりました。基本的には、「貯蓄から投資へ」という政策要請があって、ご承知のように、14年度、15年度と改正してきたわけです。その背景にはやや政治動向もありましたけれども、税制の簡素化と投資家利便への配慮を重視しようという方向性があったわけです。
ただ、こういう改正をした結果、実はかえってここら辺の税制が複雑であって、投資家にわかりにくいというようなことも起こってきているわけです。ただ、15年度改正については、税率を一律にして、簡便な納税方式、特定口座方式等を入れるという投資家利便に配慮した制度というものも作ってきているということかと理解しております。
以上を踏まえて、今まではどちらかというと、世論の動向も受けて、少し急いでいろいろなことを考え過ぎたというようなこともありますので、今後は少し、こういう金融関係、証券関係の税制について、その内容や意義について、理論的な側面からの検討もきちんとする。それから昨年度の答申で、金融資産性所得に対する課税の一体化ということを今後の方向性として示したわけですが、その具体的な内容についてもきちんと検討しようということが必要かと思います。小委員会としては、比較的中長期のターム、2年ぐらいを想定して、多岐にわたる論点について議論を行う予定でございます。
そこで、実は3回の小委員会で委員の方々から幾つかの問題提起をしていただいて、それから、その後事務局から幾つかの制度的なことについてご説明いただくというようなことをして、海外視察も含めてやってきたわけですが、その結論について、簡単に言うと、1つは、資本所得課税の歴史的な経緯とか論点とかいうことを考えると、先ほど申しましたように、欧米とか北欧諸国なんかの経験から、インフレに関連した節税とか租税回避の問題が1つあると。それからもう一つが、グローバル化を背景とした国際競争の問題がある。こういうことを考えると、いわゆる総合課税による資本所得課税というものは最近困難に、難しくなっているという認識が出てきているのではないかということが指摘されました。
そういう意味で、資本所得課税を今後考えるとすると、2つぐらい基本的な方向性があるだろうということで、1つが、かなりファンダメンタルな改革方式として、支出税とフラットタックスという仕組みとか、あるいは折衷案としての、さっきお話しした二元的所得税とかコンプリヘンシィブ・ビジネス・インカム・タックスとか、そういう仕組みというものが本当はあるのかということになります。
そういう意味で、議論としてはどちらかというと後者に、つまり中間的な話が中心になっているわけで、そういう意味で、問題としては、1つが、金融商品とか金融技術というものが高度化して多様化していると。それに伴って、例えばさまざまな取引を操作することによって支払う税額を変えるということが可能になってきている。投資形態についても、さまざまなファンドとか、そういうように多様化が進んでいて、そういう面からも、中立的な税制というものをつくるということが必要になりつつある。グローバル化ということで、国際的な資本取引に対することを考えることも必要になってくる。そういう意味で、先ほど申し上げましたように、金融資産性所得に対する課税の一体化ということが必要だろうということで、多岐にわたって議論をしているということだろうと思います。
検討課題として、今の小委員会の議論の中で出てきている中心的な論点としては、金融資産性所得の範囲というのをどこまでとるか、それから税率水準というのをどうするか、それから損益通算の範囲というものをどうするかということについて、多分議論を深めていく必要があるだろうと思います。特にその際に、投資行動や企業活動の中立性とか、課税ベースがどのぐらいとれるかとか、所得分配の影響、納税者利便、執行可能性などの視点からの検討が必要だろうと思います。
いずれにしても、具体的な税制の検討というのは、まだ3回の議論しかしてませんから、これから問題になるだろうと思いますけれども、皆さんから何かご示唆があればということは言えるかと思います。
それから「納税環境整備」ですが、納税者番号制度をめぐっては、例えばカードの利用なんていうのがありますから、番号の利用が身近になっておりますし、基礎年金番号とか住民票コードなどに全国一連の番号も整備されてきている。それから個人情報保護法制というものも整備されているという、環境変化というものが起きている。
そういうことを考えますと、従来も言われてきたことですけれども、適正・公平な課税の実現とか、税務行政の効率化、高度化、総合課税化、資産課税との関係、あるいはタックス・コンプライアンスとの関係というようなことを考えて、そういう視点から、納税環境、納番について考えていく必要があるのではないか。
それから、とりわけ金融資産性所得に対する課税の一体化の検討との絡みで、金融・証券税制構築のためには、やはり納番とか、そういう納税環境を整備することが必要なのではないかということで、その具体的な処方策を今後検討していく必要があるのではないかと思います。
今後の検討の進め方としては、先ほど、北欧のときにもお話ししたことも例えば一つの例ですけれども、納税者番号の利用を選択した納税者にとって、利便性が高まるような仕組みを考えることが必要なのではないかと思います。他方では納税者番号制度に関する国民の理解、これはプライバシーとの関連とか、そういうことも含めて理解を深め、国民のアンダスタンディングといいますか、そういうものを深めていくことが必要なのではないかと思っております。それから納税者の信頼確保、適正・公平な課税の確保ということで、具体的な検討が必要ということになります。
〇石会長
ありがとうございました。今、金融税制、証券税制、そして納税者番号の導入の是非を含めての金融小のご議論の紹介がございました。これは中期答申におきましても一つの大きなコアの部分でございますので、ぜひご議論賜って内容を深めていきたいと思います。どうぞ、しばらく時間をとって、この問題につきまして議論したいと思います。ご意見ございますか。……今日はなんかえらく湿ってますなあ(笑)。空のように。どうぞ、竹内さん。
〇竹内委員
今の金融証券税制の話で、あまりきれいに説明されてしまったので、何がポイントかちょっとわかりにくくて、課税の公平・中立という問題について、現状がどうで、将来どうかというその問題と、ガバナンス上、コーポレート・ガバナンスに対して、預金と配当とキャピタルゲインと、それから年金ファンドみたいなものがかかわってきているわけですけれども、その間のいわゆる企業を取り巻く税制といいますか、そういうものがどういうふうな考え方で一貫した形になるのか。あるいは、今度お金を提供する側から見て、例えば株式が10%であるとか、預金は20%であるとか、そういうふうな形のものが果たしてわかりやすいかどうかというもう一つの問題があると思うのですね。
それから、確かに株式市場は今低迷していますが、現実には株式分割などで小口化しているというのが現実で、これも個人投資家を呼び込むという一つの政策的な観点から、いわゆる平均株価が下がるということもあり、必ずしもこれが低迷というふうには言い切れない面もありまして、あまり株式、要するにキャピタルゲイン課税とか、株式への税制を通じて何か株式市場へのメッセージをつくるということもやはりどこかで限界が来るのではないかと考えますと、株式上の活性化と税制の問題はちょっと切り離して、何がわかりやすい税制で公平であるかということについての議論、そこがちょっと聞きたいところで、もちろん企業へのコミットメントの部分もあるでしょうが、それと、日本の株式に投資している方はやはり一定の資産性を持った方であるということも1つ考えに入れたときに、現行の税制と将来の税制、これがうまくつながっていくかどうかということについてどうお考えなのか、ちょっと……。
〇石会長
ご質問の部分がありましたから、ちょっとお答えいただいて、あとはご意見として拝聴しましょう。どうぞ。
〇奥野委員
ちょっと説明がうまくなかったのかもしれませんが、テクニカルな面もたくさんあるので、どこまでうまく説明できるかというのはちょっと微妙なのですが、基本的な一つの問題は、税という、特に所得税とかの金融取引ないしは資本取引に対する課税ということは、同じお金がもうかるのに所得の種類によって例えば税率が違うというようなことになると、さまざまな問題が生じるわけですね。
例えば1つが租税を回避できると。要するに、うまく所得間、投資の間で裁定をして、例えば節税をたくさんできると。それは逆にいうと今度は課税ベースが非常に少なくなるというようなことであるので、そこを中立的にするためには税率を下げる。それからできるだけフラット化する。特に比例税率にするというようなことが考えられるわけです。そういうことをやっているのが二元的所得税という、例えばですけれども、北欧の形式であったり、ほかにもいろんなやり方がありますけれども、そういうことを考えている。
ただ、その際に2つの問題があって、1つは税率をフラットにする。もう一つが、損益通算を認めるということをすることによって、投資家としてはいわばリスクを減らすことができる。それはどういうことかというと、こっちで損をしてこっちで得をした部分というのをチャラにできるわけですから、その部分を税を減らすことによって、逆にいえば国の側がリスクをシェアしてくれるということになる。ただ、それをあまりし過ぎると、これまたタックスベースが減ることになるというようないろんなトレードオフの問題があって、それを証券税制という形で考えると、それから今の日本の状況、今後の状況を考えると、できるだけそういう国民の負担が少ない、国がリスクをとってくれるような税制というのはある意味で望ましいわけですけれども、他方では、今の日本の証券税制というのは随分低い税率まで来てますから、そういう意味で、あまり細かいことまで考えることよりも、中長期的な視点から、今言ったようなトレードオフの問題ということをきちんと考えて、その議論をしていかざるを得ないだろうと。そういう意味で、拙速ではなくて理論的にというのが今我々考えていることだということになります。
〇石会長
よろしゅうございますか。ほかにいかがでしょうか。納番の問題1つとっても、そう皆さんが沈黙守っているような問題ではないのですけどねえ。何かございませんか。
どうぞ。
〇榊原委員
納税番号制のことについて、私ども連合としては、前から、これは早期に導入すべきだと。先ほど原則を申し上げましたけれども、やはり税の公平性という観点から見て、クロヨンのような問題をなくしていくためにも、それから税務行政の効率化とか、それから総合課税の実効性の確保とか、たくさん利点があると思うのですよね。したがいまして、話にもあったように、プライバシー保護ということを前提にして、この納税者番号制の導入については早急に検討すべきであるという意見です。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。金融・所得の一元化等々。どうぞ、菊池さん。
〇菊池特別委員
「貯蓄から投資へ」という政策要請に対してどうするのかというのが質問なのですが、今言ったでしょうと言われそうではあるのですが(笑)、もう一回お願いします。
〇石会長
教室でぼけっとしていると聞き逃しますから(笑)、もう一回、じゃ奥野さん。
〇奥野委員
「貯蓄から投資へ」という政策要請に関してということであれば、どう言ったらいいのでしょうねえ……かなりの、少なくとも小委員会の主流は、結構やってきて、今すぐ、また緊急に物事を変えるというのはあまりにも拙速ではないのというのが私の印象であって、貯蓄から投資ということはもちろん考えてはいるのだけれども、税制だけでそういうことが全部いくとは思えないので、金融小としての税制の議論としては、貯蓄から投資というよりはむしろ、先ほどから申し上げているような、もうちょっときちんとした理論的なフレームワークで、どういう金融税制が一番、中立性とか、タックスベースとか、公平性とか、そういう視点から見て望ましいのかというところまで広く構えて考えるということが必要なのではないかということ。だから、重点としては、貯蓄から投資ということよりも、そういった方向に少しスタンスを移していくというのが多分小委員会としての立場かなあと思いますけれども。
〇石会長
一般的に言われているのは、要するに貯蓄優遇とか、郵貯がどんどんたまり過ぎるという意味で、実際に証券投資、あるいは債券投資、そっちの直接金融のほうに話を向けていくために、少し政策的に配慮してもいいではないかという話はおそらく経済財政諮問会議あたりに流れていた主張で、それが、今奥野さんが説明されたように、広いバックグラウンドで金融小で議論いただいているということで、端的にいえば、間接金融から直接金融へのシフトに対して何か税の上で障害になっているようなことがないかどうかをチェックしてもらうと、こういうのが一番簡明な、簡単な説明ではないかと思いますが、何かあります? 上野さん。
〇上野会長代理
直接的に今の話に関連あるわけでは必ずしもないのですが、私は、納番についてちょっとお話を申し上げたいと思うのですが、税の透明性を高める、あるいは金融税制をより高度化していくという上において納番が不可欠だと、こういうふうに受けとめるわけですけれども、この納番を入れるときには、金融業界なり証券業界、その他の関係のところもあるだろうと思うのですが、納税者番号制度を実行するというのか、運用するというのか、税の執行行政庁側以外に関係するところが色々あるわけだと思うのです。
現実の運用もそうですが、それに入る前の準備や何かもこれは大変、今はシステム化の時代ですから、納番を入れるということになると、中小の金融機関なんかにとってはおそらく大変な負担も要るという話になるのではないかと思いますし、そこら辺の、そういう制度を担ぐ側のいろんな事情というものをやはり十分に考慮していただく必要がどうもあるのではないかなあということと、そういうことを考えるにつけ、納番を導入するについては、余程前もってスケジュールを立てて、関係者がこぞってそういう体制に持っていけるような時間的な余裕をつくる必要がどうもあるのではないかと。
それともう一つは、これは私、まだ判断をし切れてないのですけれども、納番を取り入れたい納税者が取り入れるということについては、実際、今申し上げましたような納番に関与するいろいろな方々から見て、それに対応するというのがやさしいのかどうかという点は考えていかなければいけないのではないか。税務行政の立場もあると思うのですが、ある程度、やるならやるということで一律にやっていくということも考える必要があるのではないかというその辺を、まだはっきり詰め切って考えているわけではないですが、問題意識として持ってます。
〇石会長
この問題、非常に深みと広がりありまして、一口に入れたらどうという議論に、すぐ効果のほうとか何か言ってしまいますけれども、コストの面も大きいし、それから手間暇の問題、強力ですよね。関係者の間の。これは非常に大きな問題で、実は我々も15年前ぐらいからこれは議論していて、まだ少し堂々めぐりをしている面もあるのですよね。しかし、金融・証券税制の一体化も含め、それからほかの税務行政の効率化を目指したら、必要だろうというほうには、皆さん、漠とした感触お持ちと思いますが、これをどういう形で書き込むかという点になりますと、まだ一層議論が必要かなあとは思ってますが、堂々めぐりからやはり少し抜け出すことが必要かなと思います。そういう意味では、今上野さんおっしゃったように、利用できる人が利用できるようなシステムにするか、一律強制でやるかあたりも1つ争点になろうかと思いますがね。ほかにいかがでしょうか。
それでは、残った問題もまとめて、またこの納番におそらく関連がありますから、戻ればいいのだろうと思いますが、じゃ基礎問題小委員会のほうで議論しております問題を2つか3つに分けまして議論していきたいと思います。その中で、今みたいなことにも関連しますので、より議論を深めていただきたいと思います。
そこで、「小委員会での審議を踏まえた主な論点」の1ページ目をちょっとご覧いただけますでしょうか。これは基礎問題小委員会が軸になってやりました議論がここに書かれているわけでありますが、基礎問題小委員会は、この間の総会以来、5月13、16、20日と3回やりまして、その間に厚生労働省からもヒアリングを受けました。そういう意味で、少子・高齢化そのものの問題、あるいは税制との関連等々やりまして、一応切り口といたしましては、個人所得課税、消費税、法人課税等々、それから、これとは直接切り離しまして環境問題なんていうことをやりまして、この主な論点の中に入っているわけであります。
それでは最初に、総論部分と個人所得課税の部分、この論点整理のメモでいいますと2ページの真ん中ぐらいまで少し議論いただきまして、一わたり議論したところで、必要ならば休憩をとりたいと考えております。そういう意味で、概略私のほうから、どういう点が論点になるかをご説明してからご議論賜りたいと思います。
まず「中期答申の基本的な考え方」でございまして、これは総論ですね。言うなれば、今度の中期答申の進め方についての基本的なスタンスを書くわけでありますが、我々、昨年の6月に、あるべき税制の構築という意味で「基本方針」を出しました。それを受けて、平成15年度の税制改正を暮れにやりまして、その大半と言ってもいいかと思いますが、改正で案を出したものがこの4月から実行に移されているという格好になっております。したがって、それを受けて、これから中期答申に何を新たにつけ加えるかという点が重要になってくると思います。そして、どのぐらいのタイムスパンで見るか。あるべき税という場合には、おそらく10年とか15年先を見据えた中長期的な税制のあるべき姿を描いているわけでございますので、そのスタンスは今回も変える必要ないと思ってます。
一応その切り口としては、昨年の6月はあまり強調しませんでしたけれども、やはり少子・高齢化という切り口が非常に重要であろうと。その進展が、今後の日本の経済社会を見通したときにどうしても中核になる現象でございますから、それをベースにして、国民の負担、あるいは受益の関係を議論するのが筋であろうと考えてます。
それと同時に、厳しい財政事情もございます。それから、一体どうしたら民間経済の活性化を促しつつ、国・地方も、ここに書いてある、持続可能な公的部門の構築でございますが、これは言うなれば歳出カット、あるいは行革を通じて、今のムダが多いと言われております行財政のシステムをどう効率化していくかという視点から、パブリックセクターも構築していきたい。
それから、俗に言われます個人金融資産の大きな積み重ねがあって、フローよりストックという点で非常に問題が出てきておりまして、これをどう利用するか、効率的に活用するかの視点も大きくこれから問題になろうと。
それから、どう考えても、いろいろな障害が出ておりますが、例えば公的年金制度1つ持続可能にするためにも、拠出、社会保険料、あるいは社会保障負担のほうでやるか税でやるかは別としては、国民負担増というのは避けて通れないだろうと。こういう点をどういうふうな形で基本的な考え方のスタートラインに置くかということが最初にあって、とりあえず議論がスタートできるのではないかと考えております。当然のこと、行財政改革というのは、どうしても国民に納得してもらうレベルまでいかない限りは国民の負担増というのは難しかろうという、そういう問題意識を持っているわけですね。
さて、「少子・高齢化と税制」の総論部分と個人所得課税のところだけちょっと議論を深めていただきたいのですが、少子・高齢化のその部分では、当然のこと、現象面を整理するということもございますが、少子・高齢化というのはある意味では、マクロ的に見ますと、貯蓄率は落ちるし、それから生産労働人口は減るし、経済としては停滞の方向に行きがちでありますが、それをどうやって活力ある方向に向けていくかと。それを何らかの形で税で支えられないかという問題意識ですね。
そこで、ここに書いてございますように、やはり世代間の不公平というのが大きくては、おそらく若い世代が働く気等々が起きない。あるいは負担を過度にするのでは、やはり勤労意欲等々落ちるではないかと。それから、その逆として、高齢者は、従来のように、社会的弱者という位置づけよりは、やはり所得、資産の点で見ても、かなり頑張ってもらえる層が多くなっていると。もろろんのこと、低所得者層もいますから一定の範囲では必要でありますが、世代間の不公平というのをどうなくすかという意味で、活力というものを引き出せないか。
それから、今申しました、個人はそういう形、それから企業のほうも、やはり潜在的に頑張れるところは頑張るような仕組みに持っていかなければいけないではないか。それからやはり、社会保障とか年金とか等々は持続可能性という点も非常に重要でありまして、これがないと、おそらく我々国民は安心という観点から、いろいろな消費であるとか何かの経済行動に差しさわりが出てくるのではないかと、こういうことを総論部分で書き込みたいと思ってます。書き込みたいと言うよりは、そういう議論をいたしましたので、それをベースにして論点を出したということで、これがもしか今日のご議論で大方ご承認いただければ、こっちのほうで書き込んでいきたいと思ってます。
それから各論の第一が個人所得課税でありまして、これは国税の所得税と地方税の住民税が入っておりますが、現状認識といたしましては、先ほど申し上げましたけれども、20世紀型の税制では、かなり個々の家族、世帯、あるいは特定のグループ層に対して、税で面倒見た結果、さまざまな歪みとか不公平が入っていると思います。これを直す過程において、やはり税の公平・中立・簡素というものを保ちたいし、かつ、個人のさまざまな経済行動の選択を歪めない形で税というのがあるべきではないかと。納税者の不公平感というのも、そういうさまざまな特定の個人を税で優遇したという点が出ているわけでありますから、これを直していきたいと思ってます。そういう意味で、課税ベースを広げようと、世代間の公平を確保しようといったあたりが基本的な考え方のベースになっていると思います。
それから、さまざまな世帯の間で負担がどうも不均一であると。これを直すという形において中立的な税制ができるのではないか。それから2ページ目に書いてございますように、次世代を担う子どもの扶養等々、社会全体で支えるといったような形の議論がありますけれども、それをどうしたらいいか。それから税の空洞化で言われますように、財源調達機能が極めて今税制において衰えてます。これをどう回復させるか。
と同時に、やたらと税率を落とすということ、引き下げるということにおいて再分配機能というのは無視していいかどうか、この辺の判断ですね。これはいろいろ事情があると思いますし、それから個別個別で人の諸事情に配慮するというよりは、やはり人的な控除を一まとめにするような方向で議論したほうがいい。具体的に申しますと、基礎控除というものを一本化するとか、そういう議論があってしかるべきではないかと。
それから、やはり年金課税というのが大きな焦点になっております。税の原則から言いますと、拠出段階で非課税であれば、給付段階で課税するというのが税の原則だと思いますが、これが双方で実質的に非課税になっているのが現状だと思います。そういう意味で、これをどうしたらいいか。過度に高齢者、給付側のほうで優遇されているという結果、どうも年金税制のコンシステントな体系が乱されていると、こう思ってますので、これをどうするか。
そこで、世代間の不公平、それから世代内の不公平、これが現に起こっていると思ってますので、先ほど申し上げたように、高齢者に過度の受益がいき、若者のほうに負担がいくという世代間の問題。それからやはり担税力のある高齢者がいる傍ら、どうしても経済的に不利な低所得者も高齢者にいるわけでありますから、例えば高齢者という世代内の中でも分配の公平というのはどうやったら維持できるかと、こういう問題がどうしても年金課税では避けて通れない問題だと思ってます。
それから、先ほど申し上げたように、人的控除の基本的な構造を見直すに当たって、どういう形で個人ベースで控除を再構築するか。それから、今、給与体系も、退職金制度も大きく変わってまいりまして、そういう意味で、給与課税の見直しというのがおそらくさまざまな形で起こっているわけで、実額控除といった形のものを給与所得控除を見直す中で入れてもいいではないかという議論もこの小委員会では行われております。
それから非課税の所得というのはいろいろありまして、これをどういう形で課税ベースに入れたらいいかという、それが先ほど申し上げた、税で個別のケース、ケースを見た結果出てきた非課税の所得の見直しというのをどう考えるか。それから個人住民税、これは地方分権の話と絡んでくるわけでありますが、均等割なり所得割なりを広く住民から負担してもらうという発想があっていいではないかというのも、この小委員会の中ではかなり重要な地位を占めたと思います。
これが一わたりさっと述べた小委員会での主要な論点でございますので、これにつきましていろいろご議論を賜りまして、これから実際の文章にしていきたいと思ってますので、まず所得税と総論につきまして、あるいは中期答申というものをどう性格づけるかということにつきまして、ご意見いただきたいと思います。どうぞ、島田さん。
〇島田委員
この中期答申の「少子・高齢化と税制」の基本的な観点ですね。これは大変的確で、こういう考え方、踏まえるべきだと思います。日本の所得税は、過去の経緯の中から、今会長おっしゃられましたように、いろんなパッチワークで控除をずうっとくっつけてきたので、ものすごい複雑な姿になっているのですね。これを簡素という観点から一度整理する必要が1つあるということと、それから、高齢者は弱いものだという考え方でずうっといろいろやってきた結果として、今ここの時点で気がついてみると、いろんな角度からとらえて、実は少なくとも数字上から見ると、高齢者は若年者と比べると、あるいは中年の前段のほうと比べると相当手厚い形になって、ただ、世間はそういうふうに理解を多分してないので、税調でこういうことを打ち出すときには、そこは余程注意深くわかりやすく、ややしつこくてもいいと思うのですね。実態はこうなってますよというのをしっかり出して、だからどうしましょうということを考える必要があるのですね。
ただ、どうしましょうと言っても、世間はまだ日本経済どんどん成長するのではないかと多分思っている節があるので、それだったら、そういう数字を出してもあまりピンと来ないのですけれども、やはりそこも正直に、人口構造の変化もこれあり、なかなか成長しないという全体の中でこの構造を持っているとえらいことになるということですよね。
そのときに出てくるのは、社会的費用として年金というのは非常に大きい。実は医療も福祉も大きいのですが、年金が非常に大きい。年金については、おそらくはもう中期的に、今までのような年金の運営の仕方でなくて、将来手取りが状況に応じて減ってくるというようなことも年金システムの中へ組み込まなければならないと思うのですね。
ただ、組み込むとどういうことが起きるかというと、大学の入学金の徴収と同じですけれども、一定期間、制度変更後には適用するけれども、制度変更以前には適用しないという世代間の大きなギャップが出てくるのですね。この問題は、我々の問題ではないと思いますけれども、社会保障制度の基本設計の問題にかかわるので、おそらく大問題になると思うのですね。
生命保険1つとったって大問題になっているわけで、そのことと比較にならないほど問題は大きいですから、そのときに税がどういう役割を果たすかというと、税のほうはそういうことなく一般的に遡及しますから、ですから、個人の控除の整理する過程の中で、国民の理解を得ながらサステイナビリティを維持するという意味では、控除の整理というのはどれほど重要であるかということと、年金課税というのは、恐縮ですけれども、どれほど重要であるかということはしっかりと書き込んだほうがいいと。
それともう一つ、そうはいっても、高齢者の皆さんは、そんなに将来安心だなんてだれも思ってないわけですね。それは税の問題ではなくて、実は住宅の流通性がないとか、あるいはケアサービスが本当に日本はまだ新しい時代に見合ったケアサービスになってない。だから、税調の報告として、一歩二歩、余計なことを人に言うことになるかもしれませんが、そこはちゃんとしろということは書いた上で、税のほうはそういう形でやらせていただくというのが必要かと思うのですね。
それからもう一つ申し上げたいのは、これは所得税制になるのか証券になるのかちょっと、中間領域かと思うのですけれども、日本の経済を活性化するためにベンチャーに活躍してもらわなければいけないのは明らかですけれども、エンジェル税制は、結局、損が確定したときに控除されるというのが所得税の考え方だと思うのですけれども、それであるがために、実はベンチャーというのは途中で消えてしまうので、使えないわけですね。今回少し、今年度税制で進歩しましたけれども、あれは、私はぜひ強調させていただきたいのは、イギリスほどいかないにしても、もうちょっと踏み込んで、投資をした段階で控除できるような仕掛けが欲しい。
最後に1つ申し上げさせていただきたいのは、今回、国家戦略的に、日本経済活性化のために対日投資倍増というのを総理がうたっておられるわけですけれども、その対日投資を増やすときに一番重要な戦略的な問題は、国境を越えた合併・吸収なのです。その場合に、それは今度の国会で通るはずなのですが、税がついてこないですね。
今の税はどういうことになっているかというと、所得税で、株を使って合併・吸収したときに、利益として実現していないのだけれども、それを動かしているものですから、そこに課税がかかってしまう格好になるので、実際にはだれも使わないということで、国際的に非常に注目されてます。ぜひこの問題は今次税制改革で、頭だけ、「検討を要する」ということぐらいは書き込んでいただきたいというのが私の要望でございます。
〇石会長
事務局のほうで、国境を越えたM&Aみたいな話についてはいずれ情報提供していただくようなことは可能ですか。今日でなくて結構ですから。
〇島田委員
一回ちょっと説明してもらいたいですね。しっかり説明してください。
〇石会長
ほかにいかがでしょうか。小委員会の先生方、再度登場でも結構ですし。どうぞ、村上さん。
〇村上特別委員
私も、小委員会に参加していますので、ここに書かれている論点で結構だと思いますが、特に今消費税のことが議題になっていますので、それに関連して申しますと……
〇石会長
消費税、まだやってないのです。所得税までです。じゃ所得税で何かおっしゃってください。
〇村上特別委員
全体を考える場合に、国の債務、国・地方を通じる債務が140%だという非常に厳しい現実を踏まえて、それをだれが支えるか、どういう形で支えるかということをしっかり踏まえなければいけないだろうと思います。それで、その中で、つまり、基幹税は何と何と何ですかということをしっかり規定していかなければいけないのではないかと思います。
具体的に考えれば、所得税と消費税というのは中核になりつつあるということで、さっきも出てますように、所得税についても相当の歪みがあることは間違いないわけですから、それを着実に是正していくと。それから消費税についても、これは政治的な制約がかかってますけれども、状況としては非常に重要な役割を占めているということを税調としては言うべきだと思います。
それからついでに法人税ですけれども、法人税については国際的な配慮とかいろいろな観点からの議論があるわけですけれども、これについても、法人税の位置づけというのを、後で出るだろうと思いますが、税調としてきちっと、どういう位置づけでいくのかということを議論するなり決めておく必要があると思います。
〇石会長
ありがとうございます。先に帰られる方もいらっしゃいますので、後のほうにもう入っていただいても結構ですが、後から、私、説明いたしますが、当面、所得税あたりに論点を絞ってもらえばと思いますが、どうぞほかの点でございますれば。
菊池さん。
〇菊池特別委員
ふと思い出したのですが、何だかわからない定率減税というのを残したままで、結構はっきり理由があるいろいろな控除を削っていくというのは順序が逆だという話にはならないだろうかという疑問が1つあるのと、この前のあれで、基礎年金の2分の1、3分の1で、税金とあれだから同じだというふうについ言ってしまったのですけれども、よく考えると、今税金で補てんするわけではなくて、国債で借金して補てんするということを考えると、3分の1を2分の1にするというのは全然意味が違ってくるのではないかと思います。
〇石会長
定率減税につきましては、たしか「基本方針」でも書き込んだと思いますが、景気回復というのが1つネックになっているのですが、しかし、我々の問題意識としましても、定率減税というのをやはり議論しないわけにいきませんので、当然のこと、書き込みたいと思います。
今おっしゃった2分の1、3分の1問題の財源問題というのがございますから、消費税を絡ませてできないならば、その辺で、財政赤字問題になればまた違うというのはご指摘のとおりだと思います。その辺もちょっと書き込みとしては慎重に扱いたいと思います。どうぞほかに。
榊原さん。
〇榊原委員
もうちょっと具体的に書き込まれてから話すべきこともあるのかなと思うので、あまり具体論には触れたくないけれども、少し触れて……。
この提起された所得再配分機能の適切な発揮ですね。やはりこれはきちっと所得税の累進構造というものは維持すべきではないかと。ここに言われている所得再配分機能と、それから税のスタビライザー機能の面から考えても、これまでどおり維持すべきでないかと考えます。
それから、これも書かれているのですけれども、給与課税の見直しというところで選択幅の拡大ですね。これはある意味では納税者の権利というような意味で、年末調整でやるのと、それから確定申告でやるという選択制の導入ということについても、ぜひ検討すべきではないかと思います。
それから、いろいろな人的控除の中、たくさんあるのですけれども、例えばの話ですけれども、義務教育修了前の子どもと障害者を対象とした扶養控除ですね。これについては、やはり社会保障できちっとやるという前提に立って見直しをするものは見直しするというふうにしていくべきではないかと思います。
あともう一点、年金課税のところですけれども、問題提起されていることは私どもも十分理解しますし、やはりバランスを欠いているということもそのとおりだと思ってます。ですから、これは検討しなければならない課題であることは間違いないと思ってますけれども、来年の年金改革というものの姿が見えないのに、あまりにも結論的なことを今回出していいか、ちょっと慎重な書き方でどうだろうかという意見を持ってます。
〇石会長
累進課税は維持とおっしゃったのは、今ある37プラス13ですか、最高で50%ぐらいは維持するべきだというお考えで、高めろとか下げろとか、そういう形にはコミットしないのですね。
〇榊原委員
それはやはりちょっと所得の低い人のところは低めて、それから高いほうはちょっともう下げ過ぎではないかと思ってますので。
〇石会長
10よりもっと下げろということですか。
〇榊原委員
8%ぐらいに。数字言ってしまった(笑)。
〇石会長
いいのじゃないですか。
どうぞ。
〇島田委員
基本的な考え方について、是非ここは強調すべきだと思うのは、少子・高齢化という長期のトレンドがありますけれども、もう一つは、それとも関係はしているけれども、経済が中長期的に、やはり高度成長路線から停滞路線に入っている。このことが資産価値から何からすべてを変えてきているわけですね。ただ一般の納税者はそういうふうには理解してないと思うし、したくないと思うし。ですけれども、そのことを相当しっかり書かないと、例えば相続税のところで、「相続時に残された個人資産の一部を社会に還元する必要あり」なんて書いてあるわけですけれども、今言ったような将来展望認識を国民が共有すればそれはわかるけれども、共有してなければ、これは何だよということになりますので、そういうところは随所にあるので、ぜひ前段で、中期答申の考え方として、やはり相当そういう、厳しいというよりも、経済トレンドが完全に転換してしまっているので、そこのところを踏まえてやりましょうねと。そうしないと、日本という経済はサステイナビリティがないですよということはわかりやすく書き込むようにひとつ工夫をお願いしたいと思います。
〇石会長
それでは、この辺で一服入れましょうか。消費税あたりになりますと非常に満を持してご意見があるだろうと思いますから、とりあえず少し……
じゃ最後に、休憩前に貝原さんにひとつ。
〇貝原委員
私、先ほど発言した中でちょっと不明確でなかったかと思いますので、付加的に意見申し上げたいと思いますが、国と地方の問題を取り上げたのは、この3ページで取り上げるべきだということを申したのではなくて、基本的な考え方として、これだけ非常に経済が厳しい中でサービス、負担の関係が厳しくなってくるとすれば、これはもう自分たちで決めるというような方向へ持っていかないともたないのではないかと。そういった意味で、基本的な考え方の「少子・高齢社会の下で」云々と、税制改革のポツが4つありますけれども、5つ目ぐらいに、自己決定・自己責任というような原則を税制の中できちんと取り入れていくという方向を書くべきではないかと、こういう趣旨で発言させていただきましたので、よろしくお願いします。
〇石会長
わかりました。
それでは、今から7~8分、ちょうど切りがいいから、35分ぐらいまで、10分に満たない時間ですが、ちょっと一息入れましょう。それであと消費税以下さっと見て、大体の方向づけをご承認いただきたいと思います。
(暫時休憩)
〇石会長
席に皆さんお戻りと思いますので、後半戦を始めたいと思います。よろしゅうございますか。
それでは後半は、まだ2つ大きな問題のブロックがございまして、消費税と法人税と相続・贈与税のブロックが1つ、それから、この5ページ、6ページに書いてございます、5ページが「環境問題への対応」、その前の前のページ、3ページに「国と地方」の関係でございます。これを残りのブロックでこなしたいと考えております。まだ1時間半程度予定しておりますので、議論がほぼ決着がつけば早めに終わりたいと思いますが、この問題領域はかなりご発言があるのではないかと期待もしておりますし、まあそういう状況ですね。
そこで、基礎問題小委員会でどういう議論が消費税について行われたかということを概略ご説明いたしますが、これは昨年の「基本方針」にも書いてある話でございますが、やはり消費税というのは今後、少子・高齢化の中でどうしても重要な役割を果たす中核にならざるを得ないだろうと。特に公的サービスの費用を賄うのに、消費税というものがおそらく今後基幹税として国民の間に定着するだろうし、それから社会保障給付を含めてコスト負担の上で、この消費税というのは将来的には税率引上げということも当然考えなければいかんだろうと。これに対してどういうふうな形で国民の理解を得るかというあたりがポイントになるというのが基本的な考え方ですね。
それで、具体的な制度設計としては、仮に引き上げるとした場合に、将来2桁になった場合には、おそらく軽減税率の採用が当然検討になるだろうと。その場合には、インボイスというものがあって初めて複数税率の実行がスムーズにいくだろうという意味で、インボイスの採用が問題になるだろうと。それから、おそらく今後、消費税率アップのときに、所得税の減税、あるいは法人税の減税と組み合わせることは非常に難しかろうと考えておりまして、そうなると、福祉目的税化といったような特定財源化の話も出てくると。
しかし、基礎問題小委員会では、基幹税たる消費税を、年金目的税というご発想もあるようでございますが、特定の経費にリンクさせるのは好ましくない。しかし、社会保障給付の増大に何か対応させる形で書けないか。これはある意味では福祉目的化と言ってますが、「税」をとった形ですね。ドイツにも一部そういう制度が残っておりますが、そういうことも考えてはどうかということが消費税の問題の一つの大きなポイントになりますね。
それから3ページにいきまして、地方消費税、これは基礎問題小委員会で今回は本格的に議論しておりませんが、昨年の「基本方針」にも書いてございますし、これについてはいろいろご関心の方もあろうと思いまして、ここに書き込んでございます。
それから法人課税は、この間、この4月から行います改正で、設備投資、あるいは研究開発投資を減税して、一応政策減税的なことで議論はしたわけでありますが、やはり今後、グローバル化された中での法人税率の引下げ問題はいずれ出てくるかもしれない。しかし、これはあくまで経済情勢や先進国とのバランスを考えての話だろうという形で議論はとりあえず整理できると思ってます。
それから公益法人等のさまざまな税につきまして、水野さんのほうでも議論いただきましたが、この問題も、NPO法人などを含めまして、どういう形でこの税をやるかという論点の整理は欠かせないと考えております。
それから、先ほど問題になりました例の繰延税金資産も含めての不良債権処理に係る税制、これも中長期的な視点というよりは、おそらく直近の比較的短期的な問題でありますので、ここで入れるかどうかはさておき、触れないわけにいかない。そういう意味で、議論はここでしていただきます。ただし、その他といった項目で、後半、そこの場で処理するかもしれません。
それから例の外形課税の問題、これはいろいろ紆余曲折を経て導入されますが、これをどういう形で定着させるか、あるいは今後どういう方向に持っていくかという議論はやはり我々の中長期的な展望の中の位置づけが必要だと考えてます。
それから3つ目の資産課税に当たります相続・贈与の問題でございますが、これも生前贈与というものを促進するために両者の税の一体化を図り、今税制改革に落としたわけですね。今後、相続税といったものの位置づけも、こういった生前贈与の改革を踏まえてどうするかという意味では、おそらく課税ベースの拡大という意味で相続税の基礎控除を見直すということがあり得べしという形の議論が今後の課題として大分出されました。
それから相続税というのは、今後おそらく資産課税の強化という意味で、消費税に依存する、あるいは所得税の再分配効果が累進課税の逓減によって落ちているということも踏まえると、資産の段階での再分配というのは必要だろうという認識を持っておりまして、その切り口の一つとして老後扶養の社会化というのが行われておりますので、相続時に1回、世代が変わるという意味において、個人資産の一部を社会に還元するといった、そういう必要性があるだろうという認識を持っております。これはたしか島田さんが先ほどお出しになった問題と絡めますが、この辺の議論もやっていただきたい。それで、どういう書き方をしたらいいかどうかのご提案もいただきたいと思います。
これが小委員会で議論された粗々の論点整理でございますので、どうか自由にご議論いただいて、不足した部分等は補っていただきたいと思います。
どうぞ。
〇島田委員
繰り返し言ってすみません。
消費税率の引上げは、中長期的には不可避だと思いますし、それから年金課税の問題も不可避だと思いますし、個人所得税の控除の整理も不可避だと思います。ただ、これはやはり納税者から見たら大変な話なので、これを理解してもらうために、私は先ほど、経済が非常に大きな、100年単位の転換を経て、発展活力のある経済、まだ発展活力あると思いますけれども、成長率から見たら明らかに長期的に下方屈折するので、サステイナビリティが問われるというか、サステイナビリティが失われるのですね、放っておくと。そのことは普通の人にはわかりませんから、そこは十分書き込んだほうがいいですよと申し上げたのですが、仮にそれを書いたとしたら国民は理解するかというと、ものすごく大きな疑念を持つと思うのですね。
それは何だというと、1つは、総理の言っていることと違うではないかと。総理は大丈夫だと、地震が来ても自信持てと、こうおっしゃった人ですから(笑)、大丈夫だと。それは非常にいい勘なのです、実際。私は日本は大丈夫だと思います。みんなが聡明に行動すればですね。ですから、そこを、もうちょっとわかりやすく我々は言う必要あるので、確かに大きな歴史的転換を経ているのだけれども、やはりもっともっと小さい政府に向けて努力するのだということと、変な事業資金補助みたいなことはどんどんカットしていくのだということだと思いますが、それからリアルサービスはちゃんとやるのだと。つまり、税控除は整理するけれども、社会保障だ、教育だ、住宅だというところについてのリアルサービスはちゃんとする。例えば住宅の市場の流通なんていうことは、今生前贈与の問題とも関係しますけれども、そういうことはしっかりやるのだと。
それから日本は世界の中でも対外投資の最も少ない国ですから、これは活力を非常に殺いでいるので、どうしてかというと、税制も1つ、さっき、三角合併の話をしましたけれども、影響している。そういうようなことも含めて、もっと魅力あるオープンな国にするのだというようなことで、活力のためにいろいろなことをちゃんとやるのだというのは、これは税調の問題ではないですけれども、私は、今度の中期答申は歴史的な意味を持ってしまうと思うのです。ですから、ぜひ会長におかれましては、ちょっとほかの分野なのだけれども、しっかりやるんだぞということを書き込んだ上で、そういうことだから、国民の皆さん、理解してくれというふうにしないと、サステイナビリティ、すっ飛んでしまいますよね。
だから、この「基本的考え方」のところの書き方が今までの中期答申と大分違うかもしれないということだけ申し上げておいて、国民にわかりやすい、自信の持てるような、地震が来ても自信持てるというような形にしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
〇石会長
ちょっと難しい話を仕掛けられた感じですが、100年単位で下方屈折しているというのは日本経済の話ですよね。それを説明するのはやぶさかではありませんが、それと今おっしゃった、さまざまな形で課税強化にならざるを得ない面もあるよという話とどう直接結びつけて議論するのですか。
〇島田委員
これはつまり、課税強化にならざるを得ないことは国民に理解してもらわなければなりませんよね。これは我々の課題ですよね。ただ、そうすると、国民は、この先経済は悪くなってくる、だから課税強化だと。それだけしか理解しない、できないわけですね。他方、もっと成熟経済で、成長率の低い経済で、小さい政府にしながら、リアルサービスを充実しながら、資本効率を高めながらやれる、そういう中でやっていけるサステイナビリティの基礎条件というのはあるのだよということを語る中で、今までの高度成長時代のように、資産価値がどんどん膨れていく、新しい税収がどんどんある、そういう状況の中でつくられたシステムは、トータル、根底から見直さなければならないところに来ているのだから、びほう策でやっているのではないのだということをはっきり書き込まないと、国民に理解できないと思うのですね。
〇石会長
応分の負担というか、国民の負担も、当然のこと、耐えてくれということですね。痛みをね。
〇島田委員
結果はね。それは賛成なのですけれども、その前提条件をしっかり書き込まないといかんと。よろしくお願いします。
〇石会長
消費税、相続税、法人税、主要な税が並んでおりますから、ほかにどうぞ。どうぞ、福原さん。
〇福原委員
納税者番号制度について2つほど申し上げます。
1つは、税体系の公正な執行というような観点から、やはり番号はいずれ必要であろうと私は考えているのですが、住民基本台帳でもうすでに我々が経験したように、これは大変な騒ぎになるはずなのですね。ですから、簡単に国民の理解を深めていく程度ではとても実行はできないと思うのです。それは結局、国民が執行者側に対する信頼を持ってないというところにあるのですね。それをどうするかという。罰則を強化する程度ではとてもいかないと思うのですね。これはちょっとここでどうするか申し上げることはできないのですが、考えていただかなければいけない。
それから第2番目に、納税者番号制度、結構ですよと言っている人たちは番号がなくてもきちんと納めている方々なので、むしろ番号をつけたくない人は、どっちかというと租税回避のほうに向かいたがる人だと思うのですね。ですから、つけたい人だけつけるというやり方は必ずしも好ましくないと思うのですが。
〇石会長
貴重なご意見、ありがとうございました。ほかにどうですか。
水野さん。
〇水野(勝)委員
納税環境の整備の関連で1つ、法人税とも関連するのですけれども、先ほどご説明ありました経済のグローバル化。グローバル化すると、多国籍企業がかなり日本の経済活動、もう現在でも拡大してきておりますけれども、それだけ経済が国際化する、グローバル化すると、現在の日本の納税環境というか、端的には税務執行を支えるもろもろの制度、質問検査権とか立証責任とか、そういったものをやはりグローバル的なラインに合うようなものにしていく必要があるのではなかろうか。そういう点では、ここにある納税環境整備方向プラスそういったものも、グローバル化への対応という観点からの一つの展開があってもいいのではないかという点が1つでございます。
それから納税環境では、今の番号制度でございますけれども、番号制度という言い方、さらには、要するに国民にみんな背番号をつけるのだという、そういう観念というのが非常にしみ通っている。そういうことではなくて、これだけ記号化が進んでいるというときには、自然につけてもらうやり方がないものだろうか。例えば生年月日、これが5~6桁、7桁ぐらいの番号になる。プラス、本人、自分の選択した暗証番号、5桁6桁、そういうことで大体自分で番号を決められるというシステムを考える。
今だって、税務申告書なり銀行との取引で生年月日書いたり名前書いたりすることは当然のことですから、それがしかも本人が選択した番号で、もちろんそれは重複があっては困りますから、そこは行政が整理していく必要があると思いますけれども、そうでなければ、原則として本人が決めた番号でやっていってもらう。それで現在の記号社会、番号社会の中に自然に溶け込んでもらうようにする。
そういう意味では、希望者というよりは、一般的、普遍的なものにならざるを得ないかとも思いますけれども、あくまで本人のイニシアティブ、個人の行動のもとに、そういったものが自然に、住所、氏名、生年月日にかわるような一つの記号がそこでできる。それをみんなで活用するという、そういう雰囲気、環境、そういったものができないかなあと、そんな気がいたします。
〇石会長
その場合、ネットワークはどうやって構築するのですか。個人が勝手に自分で番号選ぶのは結構ですけれども、社会全体でトータルにネットワークつくらないと機能しないですよね。だから、我々、住基番号とか年金番号使ってというふうに。どこの国もそうですけどね。今のように、自発的な番号……
〇水野(勝)委員
それはやはり国税のどこかなり、あるいは別の組織がいいかもしれませんが、そこで管理してもらって、重複は排除して決めてもらって、一度決めたら、そこで登録してもらって、その人の記号、番号になるという、何かそういうシステムも……
〇石会長
第三の番号システムをつくるのですね。今ある住基番号、年金番号以外に第三のものをつくろうというご提案ですね。
〇水野(勝)委員
そうですね。どうも今の住基番号ですとイメージがかたいというのがあるのかなと。
〇石会長
わかりました。ほかにいかがでしょう。
どうぞ水野さん、それから榊原さん、いきましょう。
〇水野(忠)委員
今、納税環境のお話が出てきておりますが、ちょっと気がついたのは納税環境の今後のといいますか、現在でもそうですが、その基礎にあるのは電子化の問題というものがあるわけです。それで、2004年から電子申告が始まりますけれども、これは先ほどの給与所得の実額控除の問題、それから付加価値税におきまして、インボイスの問題、これらも、最初は納税申告書の入力しかできないと思いますけれども、先行きは証票類、あるいは附属書類といったものの入力化をして初めてマッチングといったものが実際できるようになってまいりますので、何か電子化との関係で少し記述していただけたらと思います。
〇石会長
わかりました。
それでは、榊原さん、どうぞ。
〇榊原委員
消費税と、それから法人税でちょっと話をさせてもらいます。
今回、消費税の益税と言われているものについてかなり改善されたのですけれども、なおやはり益税という部分が残っているので、将来の消費税の税率を上げるときの信頼性、消費税に対する信頼性のことを考えれば、やはり益税を解消する。それから2桁になったらインボイスということも検討と言われているのですけれども、私は、早期にインボイス方式ということについても検討したほうがいいのではないかと思います。
それから、今の予算の総則に毎年明記されているように、少子・高齢化社会の中で消費税というのは極めて重要な財源で、社会保障関係費ということについて、目的と言っているのではないですけれども、今の総則に書かれていることについては十分今後ともそれを踏まえていくべきで、いわゆる財政赤字解消のために税率を引き上げるということはないようにしていただきたいと。この社会保障の中で、会長が先ほど補足的に言葉で言われた目的税化の問題なのですけれども、社会保障の中心はやはり何といっても年金ですから、私どもとしては、将来引き上げる必要があるというときは、年金目的税というような、年金に限ってということについても検討すべきではないかと思います。
それから消費税との関係で、いわゆるタックス・オン・タックスですね。二重課税の問題。酒とかガソリン、物品税かかっていて、消費税がまたかかってしまう問題とか、それから同じ消費行動ですが、自動車を買うときに取得税と消費税もかかってしまうという、これらについても検討すべきではないかと思います。
それから外形標準課税の件で、ちょっと雇用安定控除の特例というのがございますね。これは、積極的に店舗、事業所などを賃借して企業活動しているとか、それから地方自治体からの要請に応じて、そういう地方の都市に店舗を出していくという企業にとって、純支払い賃借料の負担が大変大きいわけです。そのことによって、先ほど申し上げた雇用安定控除の特例が受けられないと。これは総務省かどこかでつくられた資料があって、これでは付加価値のところの収益配分額のところで純支払い賃借料は5%しか見てないのですが、実際は大変高くて、これを超える。したがって雇用安定控除は受けられないので、企業としてはリストラせざるを得ないというような問題が出てきているので、この純支払い賃借料のところについて検討することができないかということです。
それから納税環境のことで一言だけ言っておきますと、私はやはり、公平・効率的な納税業務をやっていくということの中に、適正な税務職員の確保ということについてもやはり考えるべきだろうと思います。
〇石会長
総務省の方に、今、榊原さんがお出しになった雇用安定控除の特例を受けられない云々のことについて、何かご説明を追加していただくことあります?
〇株丹都道府県税課長
私どものほうで外形標準課税をご検討いただいたときに、今ご指摘ありましたような付加価値、即ち企業が活動して、どれぐらい1事業年度で活動するのかという規模を見てまいりますときには、報酬給与額と支払利子と支払賃借料、それと単年度損益を合計して算定するのが、生産要素、あるいは生産活動についても一番中立的な形で、理屈の上でも大変望ましいものだという考え方で整理をしてございます。
ただ、実際にその中でウェイトを見ていきますと、付加価値額トータルでは報酬給与額の部分というのが相当程度を占めるということがありましたので、理論的には中立的ではあるのですけれども、賃金課税的ではないかというご指摘は随分強くございました。
そこで、中立的であるということからすればやや踏み込んだ形ではあるのですけれども、雇用関係については、雇用安定控除を作ることによりまして、これまでの雇用の水準なりというのを引き下げないようなインセンティブが働くということで、あえて、今ご指摘ありました雇用安定控除をつくったわけでございます。これはあくまでも、その収益配分額の中でも報酬給与額などが非常に高いと、それから賃金課税ではないかというご指摘もありまして作ったということでございまして、原則的には、収益配分プラス単年度の損益ということで付加価値を見ていただくというのが一番望ましい形ではないかと思ってございます。
〇石会長
納得いきますか。
〇榊原委員
私たち、働く者の中でも、この外形標準課税の導入というのはさまざまな議論があって、しかし、トータルとして、ここで行われたような議論に基づいて何とかまとまりをして、私どももこの導入に賛成ということにあれしたのですが、今のお話は話としてよくわかるのですけれども、せっかく雇用安定控除を受けたいと思っても、現実的に、地方へ行くと、第三セクターでそういうものをつくって、この賃借料がすごい高いのですよ。ですから、よくその実態を踏まえてもらった上で、賃借料はどのぐらいのあれになっているかというのを踏まえてもらってご検討願いたいなあと思います。
〇石会長
そういうご要望が出たということで受けとめましょう。それから1点確認ですが、年金目的税とおっしゃるその意味は、年金特別会計でもつくって、そこに別に、一般財源でなくて、特定財源として入れよというところまでおっしゃっているのですか。それとも総則で書き込めばいいという、要するに目的化ぐらいでよろしいのですか。
〇榊原委員
後者で結構です。まだ具体的にそこまでの会計のあり方までちょっと検討してませんので。
〇石会長
ほかにいかがでしょう。
佐野さんと和田さんでいきましょう。どうぞ。
〇佐野委員
この「少子・高齢化と税制」ということで総論があり、次に個人所得課税があり、3番目に消費税が出てくると、こういう順番のようですが、私は、個人的な意見ですが、個人所得課税よりも消費税を先に持ってきたほうがいいと。少子・高齢化と言うからには、というぐらいに思ってます。そうこだわりはしませんが。
それで、消費税に関して言いますと、これは文章を書いていく中で処理されるとは思うのですが、重要な問題は、社会保険料負担というものが相当の限界に来ているという実態をやはり書き込むべきではないか。厚生労働省の方にも来ていただき、資料もわざわざ整えていただいたという経緯からいっても、とりわけ、個人もさることながら企業の負担というのも相当過大になっているので、それが例えば雇用状況に影響しているという実態もあるわけです。
そこら辺の、この税制の文章ですから、どうしても税金の記述に特化しがちなわけですが、国民負担という観点から見ると、社会保険料が60兆円に何なんとする。税金は、国・地方全部かき集めて70数兆円と。この実態をどう見るのだというあたりも、消費税を語る上での大きな視点ではないかと思います。
それと、ちょっとぶり返すようですが、個人所得課税のこの書き方。つまり、「少子・高齢化と税制」という大きなテーマがあって、各論ということで個人所得課税が来る。中身を見ると、課税ベースの拡大という一言におおよそ尽きると。「少子・高齢化と税制」という中で、課税ベースの拡大とどうつながるのだろうかと。少子・高齢化で経済が停滞する。税収は上がらない。何とかして確保しなければいかんということで課税ベースを拡大すると言うなら、それはそれでわかるわけですが、つまり、加工しない、少子・高齢化というそのものを持ってきて、さあ所得税の課税ベースの拡大だと、控除の圧縮だと、あるいは非課税所得の圧縮だというようなことに持っていくにはもう少し丁寧な説明が必要ではないか。でないと、最初に増税ありきで、後から理屈をくっつけるというようなことにもなりかねないという懸念を私は感じます。
ここで例えば、よく出てくる世代間云々の話、あるいは多様な世帯間での負担の公平云々の話、ここら辺の言葉の意味も、世代間というのは何を言っているのか。若者と高齢者ということなのでしょうけれども、若者といってもいろんな若者がいる。高齢者といってもいろんな高齢者がいる。なんか二分法で若者対高齢者というふうに分けて、対立関係をそこで描いて、そこに負担の不公平という結論を導くというのは少し雑ではないかというような気がいたします。
例えば個人所得課税の「現状認識」で、非課税措置、控除の存在というものが負担のアンバランス、納税者の不公平感を助長している、個人の自由な選択を阻害していると。本当にそうなのか。現在ある控除の中でそれを不公平だと思っている人がどのぐらいいるのか、あるいは個人の自由な選択を阻害しているという人がどのぐらいいるのかという実証検分をしてみると、必ずしもこういう書き方にはならんのではないかという可能性を感じるわけであります。
あと「多様な世帯間」というのがありますが、つまり、世代間、静止状態で若い者と年寄りを見た場合は、確かにそこにはアンバランスなり不公平なりと言えるものがあるかもしれませんが、人の世の中というのは移動するものでありまして、例えば独身者と妻帯者と子どもさんのいる家族持ちということを考えると、確かに単身者は阻害されていると、不公平だと、税金が重いと思われるかもしれませんが、やがては妻帯者になり、子どもを持っていくという前提で人々は思考するわけでありまして、その現在ある状況だけで不公平だというような考え方ばかりを人間はとらないものである。
世代間の不公平といっても、今現在は若いかもしれんけれども、老後になれば社会が保障する制度があるという安心感のもとに人間の人生計画というものはおおよそ成り立っている、そういう面があるのではないか、等々考えますと、世代間とか世帯間ということを二分法というか、そのままの状態で言うよりも、人の発想は、あしたは我が身だから、それは社会制度全体として理解するという考え方もあるのではないかと。そこら辺の書き方を少し緻密にしていただきたいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。いずれにいたしましても、文章にしたときにはおそらく佐野さんがおっしゃったような視点というのはもっと明確に論点として出されると思いますから、そのときご議論いただけばといいと思いますし、少子・高齢化と課税ベースの拡大で、所得控除の見直し等々、もう少し丁寧に書けというのはおっしゃるとおりだと思いますから、各段階で十分配慮したいと思います。
和田さん、どうぞ。
〇和田特別委員
休憩に入ります前のところにも触れさせていただきますが、この1カ月ぐらいのところで、新聞の見出しに年金課税というのが大変大きく出まして、非常に関心も持ち、それからどうなるのだろうという不安感を持っている高齢者が多いわけです。
それで、ここにありますように、「担税力のある高齢者」、どのぐらいから担税力があるという言い方をするのかというのは問題がありますけれども、私も、高齢者イコールすべて弱者という考えは決して持っておりません。本当に余裕があり担税力が十分にある、これは高齢者であろうが、若い人であろうが、やはりその能力に応じて負担をすると。そこのところをやはり文章にするときに丁寧に書き込んでいただきたいと思います。
それともう一つは個人所得税ですけれども、やはりこれは累進税率であったことによっての税の再分配機能というのが少々怪しくというか、頼りなくなってくるということが言えると思うのです。私は、平準化をやり過ぎたのではないかなという気がしております。
それともう一つは消費税のところですけれども、ここに、これは基本方針のところでも使った言葉で、「重要な税」であると、大変微妙な言い回しをしております。これが今後、税率のアップということが、「税率を引き上げ」という文章が出ておりますけれども、「国民の理解を得つつ」というのは非常に難しい問題だなと思います。
それで、逆進性という問題はもう一切触れないでいいのかという。逆進性というのは、税調の中でも逆進性があるというのは認めた上で、いろいろな文章をその時々書いてきたような気がするのですけれども、逆進性の問題というのを一切触れないでというのは少々おかしいのではないかなという気がしております。
それともう一点は、消費税の総額の表示の問題ですけれども、これはもう総額表示ということが決まりましたようですけれども、なぜそうなったかというのがどうしても一般の人たちには理解ができない。そうなったと言いますと、もし税率が上がったときにわからないではないかと、痛税感をなくすため以外に考えられないではないかという言い方が多くの消費者からは出ております。そこのところの説明がつくのかどうか。その辺のところを伺いたいと思います。
〇石会長
ここに書いてありますことはすべて100%網羅して書いているわけではありませんから、当然のこと、今おっしゃった逆進性云々というのはこれまで随分書き込んでますよね。そういう意味で、書くときにはそれへの目配り、気配りが十分必要だと思ってます。
それから総額表示のことにつきまして、今質問が出ましたけれども、別に、はっきりわかるように、税の表示、税と価格を分けて書けということも言ってますし、あるいは丸めて書いてしまえというのもありますので、和田さんは内税の問題のことをおっしゃったわけでしょう。
〇和田特別委員
はい。とにかく消費税を幾ら負担しているかというのがわかるようにするべきだと思っております。
〇石会長
大武さん、そこは、イコール内税ではないのでしょう。ちょっとご説明いただけますか。
〇大武主税局長
ご存じのとおり、総額で表示しろと。それは、ある店に行ったら消費税抜きですと。したがって別にくださいと言われ、ある店に行ったら、これはもう消費税込みの価格ですと言われるという意味では価格の比較ができない。これは対話集会でも何度も出た話であります。そういう意味では、今回の消費税の定着ということを考えるならば、やはりそこは総額はどこかに書いておいてください。
例えば百円ショップは多分百円ショップのままだと思います。ただ、百円ショップ、ただし105円払ってくださいと。そういうのをどこかに書いてくれと、こういうことを申し上げてます。したがって、今、書籍のほうも内部で調整中と聞いてますが、書籍なども多分、本体価格プラス税というのは変わらないのではないかと思います。ただ、本の間にはさむ、例えば紙をはさんでいただいて、そこに総額は別途書いていただくという形に多分なるので、和田委員が言われている内税化ということに進む業界というのは非常に少ないのではないかと、今の段階では思ってます。
特に百貨店も税額別記にするということを言われておりまして、そういう意味では、今和田委員が言われたような方向の議論というのは、今の状況では少ない。むしろ総額を別に出すという形に進んでいると聞いております。
〇石会長
総額を出すといっても、その中の内訳は税プラス価格でなくて、税の分が消えてしまうではないかというのを和田さんは心配しているのですよね。だから、百円ショップで105円で書いてもいいわけね。
〇大武主税局長
はい。百円ショップで105円というのを必ず書いてくださいと言っているわけです。
〇石会長
だから百円ショップじゃないということね。
〇大武主税局長
はい。ただ、そこは計算の話でもあり、要するに自由にそこは選べることは事実です。ただ、今の状況では、105円というのを外に出すというのではなくて、100円プラス税で105円というのを明記しましょうという話だと聞いております。そこはあくまでも強制ではありませんが、何しろ国民に総額はわかるようにしてほしいと。そういう整理にさせていただいているということであります。
〇石会長
総額がわかれば、5とか10の簡単な数字なら、すぐ計算可能なわけね。
〇美並企画官
若干補足させていただきますけれども、表示の関係と、それからレシートや請求書等々の誤解というのがこの総額表示の問題であるようでございまして、例えば、今、税抜き価格で表示されておりましても、結局その税額がどこで消費者の方にわかるかというと、レジに行った際のレシートの話なわけでございます。
今回改正して総額表示になった場合、今局長が申し上げましたように、総額とともに本体価格を書いたり、あるいは総額とともにその税額を書いたり、そこはもう全く業界の方の自由でございます。加えて、今回はあくまで値札等の表示の問題でございまして、レシート等について何か義務を負わせているわけではございません。そうしますと、レシート等において、今も税額書かれていることが通常でございますので、その辺は業界のご判断でございますけれども、そこを書かれるのは今回の法律改正によって何ら影響を受けるものではございませんので、今までどおり書かれるところが多いのではないかなという状況でございます。
〇石会長
和田さん、よろしいですか。
〇和田特別委員
わかりました。
〇石会長
税込み価格の総額だけでもいいのね。税を込めた総額だけでもいいから、それはいいけれども。表示はね。ただ、5%、10%なら、どのぐらい税があるかということはわかるわけね。とにかく総額で書いてくれということですね。
〇美並企画官
ですから、今との比較でいうと、今はもう表示は税抜き価格だけで、そこに税があるわけではなくて、レジへ行ったときにわかると。その構造自体はそんなに大きく変わるものではなくて、値札の表示において総額が表示されると、そういう改正だということでございます。
〇石会長
はい。どうぞほかに。
大分挙がってきましたね。諸井さん、松尾さん、こっち3人いきましょう。何だ、急にみんな挙がり出したなあ(笑)。
〇諸井委員
今、国・地方を通しての財政のプライマリー・バランスというのは大体30兆から35兆ぐらいになっていると思うのですけどね。このまま放置すると、おそらく今の700兆という国・地方の長期債務が数年で1,000兆になっていくのではないか。これはかなり国家として危険な、リスキーな状態で、これはやはり放置するわけにはいかないだろうと思うのですね。その30兆とか35兆のインバランスだということになると、これは一筋縄ではいかないわけで、結局、増税と歳出カットと、それから経済成長による増収と、そういうものがもうトータルで解決していくと、そういう形をとらざるを得ないだろう。
しかも、それは1年とか2年とか短期で勝負しようといったってとてもできるものではないので、多分5年とか10年とかはかかる話になるのではないのか。そうすると、それだけに今から綿密な計画を立てて、またその実態をよく国民にわかりやすく知らしめて、それでこういうふうにして解決していくのだという、それこそ工程表を出さなくてはいけないだろうと思うのですよね。
一方、さっきから、消費税上げるのだったら歳出のカットも余程しなきゃだめだねという話がありますが、これは当然のことで、しかし、逆にいえば、消費税を上げるということで歳出のカットもできれば、2つのポイントがそこで稼げるわけですからね。そういう方向は当然考えなければいかん。
しかし、やはり一番大事なのは、経済を成長させていくと。それによって増収が図れる。あるいは、増税だって歳出カットだって経済を沈滞化させる可能性が十分にあるわけですね。そうすると、経済がやはり強くなって活性化してくるということがすべての大前提になっていくのだろう。そこで、さっき島田さんがしきりに言っていた、どうやって活性化するのだと。いわばインセンティブをある程度与えていかなければ経済というのは活性化しないわけですよね。そういう問題で全体をトータルとして説明していくということが今回の中期答申では必要なのではないのかなと。
もう一つの問題は社会保障ですけれども、私は、社会保障がこれ以上税に負担をかけるということを避けてもらわないと、そうでなくたって今のようなことで、もうもたない状態になっているのだから。社会保障というのは、本来あれは社会保険なのですよね。だから、やはり受益者が負担すると、あるいは受益の面を押さえると、そういうようなことが基本であるべきなのではないか。それを国民全体にかかる税に負担させるというのは、私はやはり本来おかしいのではないのかなと、そういう感じがするのですね。そういう基本のところをぜひ、それこそ骨太に、あるいは三位一体でやっていただきたい。
〇石会長
総論の部分のご指摘だと思いますので、その辺は十分配慮して書きたいと思います。
それから、今お手が随分挙がってますが、あと残った時間、大分少なくなってきましたので、「国と地方」、これは4行ぐらいしか書いてございませんから、僕が説明することもないでしょう。それから最後の「環境問題への対応」も、お読みいただければわかるような議論が紹介されてますので、あと残った時間で、環境問題まで含めて、どうぞご自由にご発言ください。
じゃ松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
一番重要なのは、財政がずたずたになっている現状をやはり考えなければいけないということだと思うわけです。年金など、財源論いろいろありますけれども、国と地方の問題もありますけれども、やはり現在の財政赤字をどうするのかですね。これは最大の問題なのですね。この点について、国民の理解はやはり私は得られると思うのです。去年の税の対話集会などでの出席者の反応なんかを見ても、やはり十分国民の理解が得られると私は考えます。できれば、何年計画でどれぐらい上げると、消費税率をどれぐらい上げるということをもう提示しないといけない段階に私はすでに達していると思ってます。実際にするかどうかは別としてですね。
それと、先ほど目的税化の問題が出たのですけれども、消費税もすでに基幹税ですね。個人所得税が一番税収が多いのですけれども、もう法人税を上回って2番目に来ているということですよね。そういう基幹税を目的税にしている国はないわけで、やはりそれとまぎらわしいようなことはしないほうがよろしいと私は思います。
それと法人課税のところですが、特に法人事業税の外形標準課税導入問題です。私は、基本的に地方は選挙権のない法人にあまり依存してはいかんと思っております。それと、この書き方はちょっと問題があるのではないか。つまり、「法人事業税へ外形標準課税を導入(法人所得課税の実効税率は低下)」となってますが、個別企業を見ると増税の企業もあると思うのですね。だから、こういう書き方はしないほうがよろしいと思います。
それから相続税・贈与税ですけれども、ここに書かれている表現、「相続時に残された個人資産の一部を社会へ還元する必要性の高まり」「広い範囲に……課税ベースの拡大」、これは実際に当事者がこういう表現をされた場合どう受け取るかと、納得させられるのかどうかというのは、私はこれは心配あると思うのですね。どんどん浪費すれば税金がかからないけれども、こつこつためた者に税金かかってしまうということになると思うのですね。ですから、浪費を奨励するのと。それならそれで理屈としてわかるのですね。
いずれにしても、この相続税、贈与税のところはデリケートな税でありますから、相当、現実問題としては鋭い反発も予想されますので、やはりしっかり議論しておきたいと思います。
〇石会長
文章化した段階で、また具体的なご提案をいただきたいと思います。
竹内さん、どうぞ。
〇竹内委員
今回の中期答申の全体的フレームワークで最も重要なのが財政問題と、それからこれからの少子・高齢社会への対応というのが非常に大きな柱になるというこの前提で議論を幾つか、ちょっとポイントを整理したいのですけれども、まず第一前提として、歳出削減の面で最も重要なことは、現在、社会保障財源は福祉、年金を含めて国の歳出の約4分の1に達して、これがどんどん増えていくと。成長率も高い水準で増えていくという場合に、大きくいえば、社会保障と公共事業、その他のトレードオフが非常に激しくなるということをきちっと明記して、どこかを増やすならどこかを減らすという、そういう意味での補助金のカットというのは大きい柱としては必要なのではないか。
それから次に、今度財源調達の話なのですけれども、1つここに出てますのは、大きくいえば、消費税というのが一つの柱。それからここに出ております相続税・贈与税のところで問題提起がされてまして、ここのポツの2番目のところですが、ちょっと不明確だなというところがございます。「社会保障充実による老後扶養の社会化に対応し、相続時に残された個人資産の一部を社会へ還元する必要性」ということで、つまり、かかった費用をその人の資産の一部で社会に還元するというのは非常にあいまいな言い方で、これは何か時差があり過ぎて、これじゃはっきりきちっとバランスがとれるかわからない。つまり、むしろこういうふうな、ずうっと後から費用で負担してもらうというよりは、もっと事前に、幾ら高齢者に対して払うべきなのか、給付の是正の問題と、それから費用負担。
ちょっと諸井さんがおっしゃったのですけれども、例えば病院に入っていて医療を負担し、なおかつ長期入院の場合には、介護費用というか、生活費の部分が医療費に含まれた形で給付されていて、なおかつ年金が支払われているというのは、生活費を二重に支払っているというような側面があるわけですね。そういう意味でストックがたまってしまうということを考えますと、給付の面で、個人個人の財産状態、あるいは財政状態に応じて給付の調整をするというような考え方も必要なのではないか。
つまり、十分働いたから高齢者にお金がたまっていくのではなくて、過剰な支払いというものが国によってなされているケースもあるのではないか。なおかつ、病院に行くと、なかなか勤労者にはベッドが回ってこないというような問題もあって、この辺の給付の部分の調整というのをきちっとしないと、いきなり消費税と相続税・贈与税で財源調達というのは、ちょっと議論が先に行き過ぎているなという意味で1つです。
それから最後に、ちょっと中座するので、環境問題のところですけれども、一言だけ。今、地球温暖化問題等々で、日本の環境税の体系というのが非常に国際的にも注目される段階になってきていると。それで、まず重要なことは、持続可能な発展というか、日本もそちらのほうにいきますねという大前提はきちっと明らかにして、そのために税という議論をしているので、税を議論するために環境税をやっているわけでなくて、そういうふうに社会の体制そのものを変えていくと。
その場合に、例えば今までのような道路特定財源のようなものがあって、道路整備に使われていた。それが何か使途不明のような形で一般財源化するというような傾向があるのですけれども、他方で、課税水準は今までのように維持した状態で、環境税のような性格に変える、そういう考え方も一方である。
私は、環境税のような考え方に近づけていくべきだとは思いますが、その段階では、今までの目的税とは違う性質のものになるということをかなり消費者に明確に説明しないと、税の転換が簡単に行われてしまうというのは何か国際的にちょっと落ちつきが悪いというか、そこはやはりきちっと、一回今までの道路財源を切って、新しい税制に動くということはやはりけりをつけるべき部分があるのではないかと、そこのところです。
〇石会長
言うは易しいけれども、なかなか難しいですよね。わかりました、問題意識。
じゃ中里さん、河野さん。
〇中里特別委員
パブリックセクターに従事する人間の間で、消費税に対する過重な期待が醸成されているのではないかと思います。消費税が上がれば、おれも欲しいという方がものすごく増えてしまって、消費税上げようとすると、確かに消費税は所得税、法人税よりも中立的でありますが、赤字も補てんできるわ、福祉も充実できるわ、地方にももうちょっとよこせやと、いろんな人がいろんなストロー突っ込んできてぐじゅぐじゅになってしまうということで、ですから、総理が任期中、消費税、税率上げないとおっしゃった気持ちも、みんながストロー突っ込む前に、ほかのことをちゃんとやってくださいというようなお気持ちがあったのではないかというような気がいたします。いや、わかりませんけれども。
所得税や法人税であれば、目的税化するなんて議論はそもそも出てこないので、だから、消費税の増税云々ということは、これからの財政の負担を考えて、もちろん国民の合意を得ながら考えていかなければいけないことなのでしょうけれども、それはそれとして、そこさえ何とかなればすべて何とかなるという話ではございませんので、所得税とか法人税とか、一般財源的なことをだれも疑わないようなものについて、増税になるかどうかそれはわかりませんけれども、適正な負担を求めていくということが必要になってくると思うのですね。そのバランスの中で、租税制度、税体系というのがあるわけだと思います。一つの税にあまり過重な負担というか、過重な期待というのは、結局はぐじゅぐじゅになってしまうと思います。
〇石会長
でも、まあ期待はしているのでしょう。
〇中里特別委員
してます(笑)。
〇石会長
じゃ河野さん。
〇河野特別委員
私は環境税だけについて意見を述べたいのですが、ここに、前の経団連会長の今井さんと、今の経団連の税制調査会の委員長をやっている森下さんのペーパーが来ている。それにひっかけてちょっと議論したいのですよ。
この2人が出してきたペーパーは、前向きにガタガタと環境税導入について来年早々にも何か行動起こすぜということに対する牽制球なのですね。ロジックはここに十分に書き切れてないけれども、産業界、あるいは経済界の代表として、総意として申し入れると、こう書いてあるわけだ。
これはごく普通に受け取ると、そうか、企業負担が大きくなる。経済成長にマイナスになる。その他いろいろなことを考えてみれば、そう簡単に話を送ってもらっては困るよという趣旨のことだというふうに了解できるのですね。その点だけは僕もほとんど同じ意見ですよ。基礎小委員会で同じことを言っているから。この2人の人が書きたくて書けなかったことが1つあると僕は思っている。
どういうことかというと、今の環境税導入論者というのは、今の京都議定書というのは絶対のものだと。その前提になるのは、気候温暖化、世界の気象学者が言っている。あれも疑わしいけれども、まあ認めようではないか。京都議定書は、それに京都でやったのだからと、また特殊日本的なあれがついて、まじめにやろうではないかということになっているのですよ。
しかし、来年の今ごろ、この議論を国内でやるときには状況うんと変わってますよ。どう変わるかというと、今井さんが書いたみたいに、ロシアが批准しなけばこれはオシャカの話ですから。だけど、そういうことがないと仮定して前に進むとしても、京都議定書というのはそんなに神聖にして侵すべからざる大前提かと。我々が議論やる場合に。そんなことはないのですよ。国会議員の諸君もだんだんわかってきた。この話はね。今、産業界が言っているだけではないですよ。広く広がってきたわけだ。
どういうことかというと、京都議定書からアメリカが抜けてしまった。もともと中国は入ってなかった。この2つだけで大穴ですわ。あと5年、10年たったら、地球温暖化の原因はほとんど全部途上国から出るCO2によって支配されるのですよ。それまで考えてみると、先々のことを考えれば、京都議定書で、我々、それを守ることになっているけれども、この議定書というのは本当に、地球温暖化全体を防止するという観点から見れば非常に偏った欠陥商品なんですわ。ただ、それを言うことは、なんか環境問題に対して背を向けるということになると感情的反発を買うから、みんな黙っているだけですよ。だんだん本音が出てくる。
あわせて、日本だけがEUの策略にかかって重い負担を背負うようなシステムになっている。これは明らかに。これは専門家はみんな環境外交の大失敗だと言っている。小さい声で言っている。今だんだん公然と言うようになりますよ。ということを考えてみると、一路邁進という議論には僕はならないし、来年になってみれば事情が随分変わるだろうと思っているのですよ。
そこで、今日はもう僕の話はそれでおしまいにするけれども、たまたまここで和田さんと榊原さんがお見えになっているので、環境税というものについて、お二人はどういうふうな感触でいるのか。産業界代表のペアが2つ出ているから、これはよくわかったから、お二人はどういうふうに今受けとめていらっしゃるのか、それを聞いておきたいのです。
〇石会長
和田さんは中座されました。じゃ榊原さん、どうぞ。
〇榊原委員
今日のペーパーにも出してありますので、詳しくはそれを読んでいただきたいのですけれども、税金だけでこの地球温暖化問題が解決するなんて、そういうように考えているわけではないのでね。検討に当たっては、他の政策手法との効果の比較とか、そこに5点ぐらい挙げてありますから、そういうものを十分検討すべきではないかと、その上で判断していくことではないかというのが連合の立場です。
〇石会長
慎重にということ。ただし、十分に、環境へ配慮はそういうことですね。河野さんの結論は、状況わかりました。そこで実際に中期答申等で書くときには十分慎重にというニュアンスで書き込めばいいと、こういうご判断ですね。
〇河野特別委員
大体ね。去年の、税制のあり方論に書いた文章がベースなのですよね。それにどの程度言葉を飾るかということだけだと思いますね、実際は。
〇石会長
どうぞ。
〇三山特別委員
時間が大分あれなので、テーマを消費税にだけ絞ってお話しします。
その前提になるのが、先ほど諸井さんがおっしゃった件、島田さんがおっしゃった件、基本的な考え方、あのとおりだと思います。そのうちの3分の1か4分の1の柱になる重要な税として消費税を位置づけるべきだと。それもそのとおりだと思います。先ほどストローの話が出ましたけれども、最初からこの消費税にだけストローをあっちこっちから2本も3本も突っ込もうとしているのではなくて、3分の1、4分の1のびんに入っている消費税にストローを突っ込もうと言っていることであって、小泉総理がおっしゃったように、消費税にだけはストローを突っ込むなというのが総理のメッセージではないということはもう毎回、何回も小委員会で議論してきて、ここまでペーパーきているので、たがをはめられているわけでもなし、枠をはめられているわけでもなし、議論することは大いに結構だとおっしゃっているわけですから、ここまで結構いい文章にきていると思います。
そこで、冒頭おっしゃったお二人のお話と絡むのですが、やはり、先ほどの納番もそうでしょうが、相当の理解が必要だと思います。国民の理解が。相当政治的エネルギーも必要だろうと思うので、政府税調としてペーパーつくればあとは政治の問題だと言ってほうり投げるのではなくて、その先のことも考えると、ここからなのですが、私も厳格な目的税化することはよくないという論者で、そのとおりなのです。ところが、いかなるすきも残すまいということで、財務省なり厚生労働省なりが「福祉目的化することは適当ではないが」と当たり前のことをわざわざ書いていくと、その国民の理解というのは、先ほど諸井さんがおっしゃったような高次元の問題どころではなくて、もう少し中次元のところで理解が進みにくいと。
小委員会でも申しましたが、若者は消費税に対してアレルギーないことは昨年の集会やアンケート調査ではっきりしてます。やはり売上税、消費税のときに20歳前後の問題意識があって、現在、中年の主婦になっている、あるいは中年のおじさんになっている人たちが一番今ここにアレルギーがあるわけで、中年の人たちが将来の社会保障制度の重要な柱の一つなのだというふうに、一つの説明の方法として、ここをキーワードとして使っていくことは、実際に今後7%にし10%にしというふうなことまで視野に入れると、ここまで、「福祉目的化することは適当ではないが」とわざわざ、議論としては正しいのですが、まとめて外へ出すときに、ここらあたりは少し潤滑油として、導入を早期というか、近い将来、導入を実現させるためには、我慢できるところは我慢できるのではないかと、こういう意見です。
〇石会長
三山さんがメンションされたのは2ページの下から2行目ですね。
〇三山特別委員
はい。
〇石会長
これは「税」が入っているのですよ。目的税化は適当でないけれども、目的化はいいのですよ。すごく違う。
〇三山特別委員
いわゆる目的税的なる税、的なる税なら構わない……
〇石会長
いやいや、「目的税化」と言った場合には、特定財源みたいに特会をつくってという意味ですよ。
〇三山特別委員
そういうことです。それはよくないです。
〇石会長
だから、ここでそのことを言っているのです。「税」が入っているのが決定的に違う。ちょっとそこら辺、区別してください。
〇三山特別委員
わかりました。
〇石会長
ほかによろしいですか。随分挙がりましたね。
じゃ佐瀬さんからいきましょう。
〇佐瀬特別委員
簡単に言いますけれども、今度の中期答申というのは全体に、当然のことながら、増税やむなしと、増税お願いするほかないというふうになると思います。
そこで1点ちょっと、私、強調してほしいのは、税の不公平に対する問題を時々言ってますけれども、要するに、税務当局にもう少しきちんと所得の把握をする努力というか、あるいは体制の変更というか、そこを1つ入れてほしいと思います。
というのは、所得の不公平、税の不公平という問題に対しては非常に、いつのアンケートでも国民の一番の関心事になっておるわけでありまして、この前厚生労働省の方の社会保障に対する説明の中でも、結局、所得が幾らかということが基準になってさまざまな社会保障が受けられるということになってますね。ですから、その大もとがきちんとしていなければ、不公平は税金以外で一層拡大する。例えばそれ以外でも公営住宅の入居基準とか、保育所の保育料とか、奨学金とか、これすべて所得のというか、税金が幾らかということと関係して、つまり、所得の把握が基準になっているわけですね。
納税者番号ということが先ほどから出ておりますが、これを入れたからといって必ずしもきちんとするわけではないということを前に聞きましたし、それから、これがいつになるか、またこれもわからんということで、不公平な課税体制をほうっておいて増税をお願いするということは一層紛糾のもとになると。ですから、先ほど税務署の職員の拡大、人員増という意見もありましたが、それも含め、何らかの形でもう少しきちんとしないと、例えば給与所得者の控除という問題も、実はクロヨンとの関係で今緩やかになっているので、それ一方だけ絞るということはまことに不公平であると思いますので、そこの努力をもう少し強調しなければいけないと私は思います。
〇石会長
ありがとうございました。
じゃ牧野さん。
〇牧野特別委員
環境問題ですが、先ほどの河野委員のご発言ですが、結論的には慎重にやっていくということだろうと思いますが、ただ、表には言わないまでも、京都議定書が、これはもう死に体だということを頭に置いて議論していくというのはやはりちょっと問題があると思います。
問題はこの議論の進め方ですが、1つは、議論のタイムスパンをどういうスパンを置いてやるかということと、それから視点をどういうことでやっていくか。つまり、初めから環境税ありきというようなことで議論していくのは全くおかしいと思います。ご承知のように、京都議定書の実行は、まだ第1ステップが終わってないわけですから、いろいろなことをやっているわけですが、そういった状況を十分見定めるということも大事だろうと思います。
それからもう一つは、例えば欧州に環境税があると言いますが、これも相当例外事項があって、日本のエネルギー税制とどこが違うのかというような問題もありまして、環境税というのは一体どういうものなのかということが国際的にも概念はっきりしてないのだろうと思います。
そこで、何か早く結論出さなければいかんということで、言葉は悪いのですが、非常に付け焼刃の、例えばエネルギー税を一部環境に移すとか、道路税をどうするかとか、そういう付け焼刃的な、あるいは非常にピースミールの税をつくって、これが環境税だということは絶対に避けるべきであって、議論することは私は大事だろうと思いますが、これは本格的な、あらゆる角度から、環境税というものがもし必要があればどうあるべきかということできちんとした議論を、これは時間をかけてもやっていくべきだと思います。
〇石会長
ありがとうございました。参考にさせていただきます。
あと水野さんと佐野さんと、その辺でよろしいですか。じゃ水野さん、どうぞ。
〇水野(勝)委員
消費税につきましてですが、先ほどの会長のご発言で安心したのですが、福祉目的税化、目的税化であるとすれば、大黒柱の消費税は、これはもう一般財源でしてもらいたい。そうでないと、現在の700兆円を処理するときにも活用できないわけでございます。
「税率引上げに際しては」云々と2ページの一番下にありますが、ですから、ぎりぎり、今後、税率引上げがあって、その引上げ分についてはある意味で少し色をつけるということはあるかもしれんと、そういうことかなあと思ってましたが、これは全体が、目的税化ではなくて、目的化であるということから、そういう問題はないと思います。
それからもう一点、先ほどちょっとお話ありました逆進性の問題ですが、これだけ消費税というのが所得税と並ぶ基幹税になったというときに、逆進性というのは所得との対比での消費税の負担を言う場合の評価の姿ですけれども、これだけ所得税と並ぶ、それに匹敵する根幹税、基幹税になった以上は、消費は消費税として判断をしていいのではないか。
所得というのは稼いだときに課税する、稼いだものを支出したときに課税をお願いするのが消費税、これは全く対等な税であるということからすると、消費税の税を評価するのに所得税の評価を持ってくるということは、現時点ではあまり適当ではないのではないか。昔のように、稼いだらすぐ全部右から左に消費するというときには、それはある程度意味があったと思いますけれども、今のように、何年か分の資産を抱えていて、若いときに稼いで、そして老後に貯蓄して、それを老後に支出する。そうすると、その支出の段階で、稼いだときの段階と同じように課税するということでバランスがとれる。これは世代間の公平にもなる。そういう意味からすると、かつての時代のように、逆進性云々を議論するウェイトというか、意味づけはかなり違ってきているのではないかと思います。
〇石会長
新しい視点を提示されたと思います。その点もまた考え、いろいろ書き込みたいと思ってますが、ちょっと和田さんがいなくなって残念だけれども、そのうちまた説明しておきます。
佐野さん、どうぞ。
〇佐野委員
私は、この中期答申に当たって、税制改革ということで3点重視していたわけです。1つは社会保障と負担の問題、その中における税の役割。もう一つが国と地方、あともう一つは特定財源の問題だったわけです。消費税に関しては、先ほど申しました。その後、福祉目的税化、目的化か云々の議論がありますが、この議論に入ってしまうと、この手段をめぐって基本的な考え方がどこかにいってしまうという懸念を感じるわけです。
小委員会でも私は言いましたけれども、社会保障財源として、消費税を上げる場合、別にそのための特別の会計をつくるとか、法律で目的税として明記するとかいうことではなく、例えば給付の保障とか、あるいは向こう5年間は保険料をこれで上げませんという何らかの国民への納得ということを、法律とか会計制度の変更とかではなくて、予算措置として、通年の予算措置としてやればいいのではないかと、そういう妥協案もあるのではないかということを申し上げました。ここで改めて申し上げておきます。
「国と地方」ですが、これは私の印象では、小委員会でもどうやって、どの程度まで踏み込むか、どの程度まで具体化するか等々、非常に入口段階で難しい問題になっていると受けとめているわけですが、私は、今後の税制、税制改革という舞台の上で、この国と地方の問題というのは枢要な問題でありますし、小泉内閣の構造改革の中でも非常に大きい問題であって、したがって、政府税調としてこれをさらっと通り抜けるというよりも、むしろかなり踏み込んだ記述にしたいという個人的な希望は持っております。
もう一つの特定財源ですが、国と地方の問題でも特定財源という問題は当然入ると理解しているわけですが、このペーパーには入ってない。むしろ環境税でこの特定財源が出てきた。もちろん環境税にも絡むのでしょうけれども、国と地方をめぐっては、やはり特定財源、とりわけ道路特定財源の扱いをどうするかというのが当然議論になってくると思うわけであります。
具体的には、この前塩川財務大臣もおっしゃっていたように、例えば揮発油税の地方への移譲というような問題が出てくる。ところが、どうも地方のほうはこの揮発油税のほうは要らないと。なぜならば、ここからは私の推測ですが、黙っていても補助金で地方に回ってくると。つまり、ネットで増える税金、例えば地方消費税のようなものが欲しいと、こういうことなのですが、そういう議論のさなかにあって、むしろ議論が煮詰まる環境ができている。つまり、揮発油税は要らなくて、地方消費税は欲しい。これは一体どういうわけですかと。何をもとに、これは欲しい、これは要らないというような議論をなさっているのですかと。そもそも地方分権とあなた方が日ごろおっしゃっている意味とは一体何なのですかというような問いかけもできるわけであります。
そういうことから言いますと、この国と地方の中で道路特定財源、これまでの議論でも、この話が始まるとなかなか収拾つきにくいという過去の経験を抱えているわけでありますが、改めて国と地方に絡んで、この特定財源の扱い、あるいは地方の自主性、自主財源、それからその使途をどうするかという地方分権そのものの根本問題も踏まえて、ぜひ特定財源もこの中に入れたらどうかと思います。
〇石会長
ありがとうございました。最後、佐野さんから大きな問題が出されました。これも具体的な文章の上で議論すべきかと思いますが、十分にそれを配慮した形で議論を詰めたいと思います。
大体予定した時間が迫っておりますが、よろしゅうございますか。
今日の集約でございますが、一応今日は小委員会での審議の論点でございますから、それイコール中期答申に書き込むものというふうに必ずしもとらえいただかなくて、落ちている部分もございます。それから、これは結論をまだ出しておりませんから、ご意見をいただいた中で、イエスかノーかで、ご自分の判断から、これはどうかとおっしゃった方もいらっしゃいますので、これから具体的には方向性を明示した形で文章化したものを用意しつつ、次の総会あたりから本格的に議論を詰めていただきたいと思います。
ただ、今日お聞きいたしまして、少なくともこの主な論点に書かれております主要な項目については、ある方向においてはご支持を得たと私は考えております。ただ、幅はあります。注意すべき点として、所得控除の見直しがどうだとか、あるいは年金課税のやり方についてどうか、いろいろございました。それは当然のこと、十分に配慮しつつ文章化していくと思いますが、ただ、ここに出されました論点について絶対反対である等々という強い反論はなかったように思っております。
ただ、書きっぷりとしては、入口が非常に政治的混乱しているから注意しろといったような、そういうご希望をいただきましたので、その辺は十分に念頭に置きつつこれから議論をまとめ、次回以降、具体的な提案をさせていただきます。
今後の予定でございますが、来週から、起草小委員会を改めて具体的に委員会を設けるというよりは、基礎問題小委員会の委員の方に力を借りて、私と上野さんでまとめていきたいと思ってます。実はもうかなり煮詰まっている問題もございますので、一応基礎問題小委員会の方に集まっていただきまして、起草というような具体的な修文、あるいは加筆・補正等々する作業を2度ほど行いたいと思います。
そこで、1度終わったあたりで1回、それから2度目のとき1回、それから最後に再度という形で、以下、総会を3回予定しております。6月6日金曜日の午後と、6月13日金曜日、これは午前になります。それから17日火曜日の午前を予定しております。そのときには一応文章みたいなものを出してご議論いただけたらと考えております。日程的によろしいですか。
そこで、これは実際の中期答申の文章にもさわりますので、報道の方、あるいは各省庁の幹事の方、傍聴につきましては、従来どおりご遠慮いただきたいと考えております。ただし、その後、議事録につきましては事後的に公開したいと思います。
それでは、本当に3時間に何なんとする長時間、どうもご協力ありがとうございました。これで終わりにしましょうか。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。