第40回総会 議事録

平成15年4月22日開催

石会長

それでは、時間になりました。総会を開催いたしたいと思います。久しぶりにお目にかかる方もいて、にぎやかでいいなと思っています。

今日は2時間半の長丁場でありますので、ご都合のつかない方は途中ご退席ください。議題がそれだけ多いということでありますので、うまく進めたいと考えております。

基礎小と金融小の状況報告を各々しようということですが、テーマがいくつかございますので、分けてやっていきたいと考えております。

それでは、「議事予定」に従いまして行いますが、その前に、総務省のほうで人事異動がございましたので、板倉さんのほうからちょっとご紹介ください。

板倉自治税務局長

このたび人事異動がございましたので、ご紹介をさせていただきます。

4月1日付で兵谷芳康、前の固定資産税課の資産評価室長が代わりまして、石橋茂が室長に就任をいたしました。よろしくお願いいたします。

石会長

よろしく。

それでは、議事に入ります前に、お手元に資料がいくつか積み重なっておりますが、その一番上に、「国会の審議過程における主要討論事項」というのがあって、その後ろに税制改正関係法案要綱集がございますので、これは一々ご説明はいたしませんが、この4月にスタートいたします新しい年度の税制改正の内容が盛られております。実は3月28日に国税が、それから、地方税につきましては3月24日に、それぞれ国会を通過しております。そういう意味で、3月31日に来年度税制改正が公布されたということでございまして、その内容がここに盛り込まれているということになっております。後ほどお目通しをいただけたらと思います。

それでは、審議に入らせていただきますが、まず、基礎問題小委員会、これは総会と総会の間にすでに3回やっておりまして、その間にいくつか重要な項目を議論いたしました。3つほど今日ご報告すべきことがございます。1つが少子高齢化と社会保障、2つ目が国と地方のあり方、これは課税自主権の問題、3つ目が環境問題、環境税等々の問題でございます。

私が基礎問題小委員会の委員長をやっておりますので、順次ご説明をいたしたいと思います。私が簡単にその審議状況、内容をご説明したあとで、事務局のほうから基本的な資料の説明をいただき、それで議論をするという格好にしていきたいと思います。いずれも6月の中期答申の具体的な内容にかかわる問題でありますので、ぜひ総会の委員の方々からも積極的なご意見をいただき、ある程度税調としての意見を集約していきたいと考えております。

まず最初が少子高齢化と税制でございます。これは、今年度の、あるいは今年の税制改革の目玉といたしまして、かなり集中的に行っております。4月1日、4月8日、2日間に分けまして3人の委員の方からご発表いただきまして、それと資料を交えましてかなり突っ込んだ議論をいたしました。また、4月18日には個人所得課税と相続税・贈与税に関しまして、これも少子高齢化という視点から税制の基本的な問題点を整理いたしました。

そこで、今、3回やりました基礎問題小委員会の主要な論点をご説明させていただきます。

4月1日、金子宏専門委員から、「高齢社会における所得税のあり方」という形でまず最初に発表いただきました。

重要な点は、金子先生は、所得税を基幹税としてもう一度機能を回復させなければいけないと。それには空洞化が起こっているというところが一番の原因とお考えのようでございまして、具体的には、課税ベースを拡大する中で、控除をいくつか整理しなければいけないと。具体的には基礎、扶養、配偶者、3つの基礎的な人的控除、これが3要素であって、それ以外に様々な細かい控除は標準控除という形で一元化して、できるだけ簡素化して、所得税体系を再構築すべきであるというご主張でございました。消費税の引上げ等々は当然将来は考えるとしても、所得税収の割合が低下したのは著しい問題であるというご認識でありました。

それから、同じ日に神野委員から、「高齢社会を支える租税制度を求めて」という形で議論がございました。

神野さんの一番おっしゃりたかったことは、家族が支える機能、つまり共同体の機能と言うべきでしょうが、これがどうも日本社会は今後とも落ちるだろうと。したがって、政府が具体的に高齢社会の責任を持つべきである。ということは、やはり増税型の税制改革というのを実施せざるを得ないのではないかというのが最初の問題点でありまして、国民負担率というのを北欧と大陸系のヨーロッパとアメリカ、これあたりを比較しつつ、日本というのは極めて低い。しかし、政府の関与するところは多くなっている。いうなればドイツ、フランス型になっているけど、その負担は赤字でやりつつ給付のほうはやっていると。補完責任を果たすのに負担が少ないのではないかと。今後負担を考えるときには、やはり個人所得課税というので上げていかざるを得ないだろうと。基本的には国民負担率の中の社会保険負担、社会保障負担というのは、かなり高くなっている。そういう視点から、個人所得課税の充実が今後の課題であり、これが世代間あるいは世代内不公平の是正にも役に立つということであります。

それから、もう1点強調されていたのは、やはり資産性所得並びに資産課税は強化しないといけないのではないかと。とりわけ資産性所得は今ばらばらにかけているわけですが、これは非合算できましたけど、これからは、やはり世代内、世代間の不公平を拡大しているから、合算の方向でそれを検討すべきであると。

それから、どちらかといえば、社会保障政策というものを税制でやるには限度があるのではないか。これは後ほど宮島さんがおっしゃっていたことと同じなのですが、その点を特に強調されたようであります。

それから、4月8日、宮島洋さんに来ていただきまして、「少子高齢化と税制-社会保障との関連-」、そういうご意見の開陳をいただきました。

神野さんと大体同じような線でご議論いただきましたが、我々として印象的なのは、税込み社会保障給付という概念が外国では用いられる。つまり、様々な社会保障給付をするわけですね。生活保護も含め、年金も含め、医療も含め、それを全部税引きでやっていると。だから、諸外国は税込みでやっているから、一旦給付を渡したあとでそれが課税所得の中に組み入れられるということですね。今後そういう形で議論というのは進めたほうがいい。つまり、年金を配ったあとの高齢者の間の世代内負担というのも、一旦給付を渡したあとで累進課税等々で公平を保つ税制がいいだろうというご主張でありまして、今後我々の議論としては一つ参考になると思います。

それから、先ほど申し上げたように、給付でやる代わりに税制の特別措置でやっている面が非常に多い。つまり特別な人的控除があったり、保険料控除があったり、あるいは利子の非課税控除があったり等々しているわけでありまして、税でやるのがいいか、あるいは給付サイドで歳出面でやるのがいいかは議論すべきであるというご主張でございました。

それから、あと消費税、資産税、長所短所含めていろいろご議論がありましたが、やはり今後は消費課税というものに頼らざるを得ないだろうと。つまり、税収の安定性とか税収増の規模の大きさを考えますと、これに頼るのが一つ重要な方向であろうと。

それから、資産税は、やはりこれから消費税あるいは所得税のフラット化で、フローの段階で再分配ができなくなっていますから、ストックの段階で再分配ということを考えるならば、やはり資産課税であろうと。

それで、相続・贈与の大きな改正が行われたけど、やはり相続税・贈与税の課税ベースの拡大がなかったのが問題であるという点ですね。

それから、相続税というのは、介護などが社会化されているわけですね。いうなれば介護は公的な意味で公的介護になったわけでありますから、それだけ社会的な恩恵を受けているのだから、一生涯で精算するときに、相続税について応分の社会に対するお返しというのですか、そういう形のことをすべきであるというご主張でございました。

そういうわけで、お三方から社会保障関係をめぐって税制の議論をいただきました。

それに対していろいろな議論がございましたが、基本的には次のようなことが重要だと思います。とりわけ主張したいのは2点ございますが、1つは、高齢化社会の中で年金、医療、介護等々の社会保障というのを従来どおりのレベルで維持していこうとすれば、ちょっと程度が落ちるかもしれませんが、維持していくとすれば、どうしてもみんなで負担しなければいけないだろうと。構成員全体で負担するようなそういう仕組みでない限り、公的な制度の維持は難しかろうということですね。それには消費税というものの充実も前提だろうけど、やはり所得税そのものも今後再度基幹税として回復させることが必要であるということですね。

それから、先ほども申し上げましたが、社会保障制度を税制でやる、とりわけ所得税の控除でやるというものには、限界があるだろうと。これは税制としての役割から逸脱しているものも多いので、本来やるなら、手当とか給付、歳出面でやるのが筋ではないかという議論ですね。これはお三方の税制学者、財政学者の議論を受けて、基礎問題小委員会でもそういう方向でこの2点についてずいぶん議論いたしましたので、これは我々の中期答申等々を書くときの基本的なスタンスになりますので、今日は総会でも皆さんのご意見を伺いたいと、このように考えております。

それとの絡みで資産課税の強化、あるいは資産課税を充実させるという意味で、相続・贈与税というものを基礎控除等々を見直すという形で課税ベースを広げて、所得税等と同じような形で再度これをしっかりしたものにする。これはある意味では世代間の資産移転について、それだけの配慮が必要である。こういう形の議論がありましたので、大体これにつきましては、ほぼ意見が一致しているのではないかと思いますが、それはあくまで基礎問題小委員会ベースでございますので、ぜひ総会の方々からも、その辺の基本的な考え方についてはご意見を伺いたいと、このように考えております。

それでは、そこに使いましたいくつかのバックグラウンドデータがございますので、個人所得課税につきまして、古谷さんと吉崎さんから国税、地方税についてご説明を受けます。それから、そのあとで相続・贈与についてまた議論をしたいと考えております。

では、古谷さん、ご説明ください。

古谷税制第一課長

それでは、お手元の資料で、「基礎小27-1」「個人所得課税関係」というちょっと分厚い資料がございます。それをご覧いただきたいと思います。その資料の上に「説明資料の概要」という縦長の紙が配付されておるかと思いますが、基礎小のほうでは、個人所得課税の現状を踏まえまして、その3というところで課税ベースと書いてございますが、(1)から(8)のような項目についてご議論をいただいたところでございます。

資料は大変厚くなっておりますので、恐縮ですがピックアップしてご覧をいただきたいと思いますが、目次を飛ばしていただきまして1ページでございます。所得税の現状でございますが、一番右、15年度予算で13兆8,000億円ということで、国民所得に対する割合が3.8%、住民税を入れて6.1%ということでございまして、左のほう、ピーク時は平成3年で26.7兆円所得税がございました。いわば半分ほどに減ってきたということでございまして、空洞化が進んでおるということではないかと思います。

3ページをご覧いただきますと、これもよくご覧をいただく資料でございますが、諸外国、G5と比較をいたしまして、ヨーロッパと比べて消費課税のウエイトが低いこともさることながら、フランスのように消費税が中心の国に比べましても、個人所得課税のNI(国民所得)比がこういうふうに小さくなっておるということでございまして、6.1%というのは格段に低いということではないかと思います。

それから、少し飛ばしていただきまして6ページでございますが、ちょっとややこしいフローチャートの表をつけてございますけれども、日本の所得税計算の仕組みというのをイメージしたものでございます。

2つほど特徴を指摘できようかと思いますが、総合累進課税ということを所得税は原則とはしておりますが、収入の性質に応じまして、左から3番目に「所得分類」というのがございます。10の所得分類に分けて整理をした上で損益通算をし、諸控除を効かせて累進税率を適用し、必要な税額控除をするという計算になるわけでございますが、1つの特徴としまして、左から2番目の「必要経費等」という欄をご覧いただきますと、給料・賃金については、給与所得控除というものがございます。公的年金、これは給与とは違う雑所得という扱いになりますが、その所得を計算する過程で公的年金等控除というものがございまして、日本の特徴の1つとしまして、この所得計算の過程で大きな控除が給与や年金については設けられているということでございます。

ご承知のように、この給与所得控除については、経費の概算控除という意味に加えまして、事業所得等との間での負担の調整という説明が従来からされてきているところでございます。

もう一つは、下のほうに土地、株、預貯金の利子といった資産性の所得については、右のほうに追っていただきますと、累進ではない比例税率で分離課税が行われているということで、資産性の所得については、かなり広範に総合課税の例外になっているというのが2つ目の特徴かと思います。

諸外国の同じような絵が7ページ以下G5について並べてございますが、7ページのアメリカだけちょっとご覧をいただきますと、アメリカもやはり総合累進課税の国でございます。ただ、日本のように所得分類というのがありませんで、所得を総所得という形で総合した上で、そのあとに控除を効かして累進税率を適用するということで、総所得として合算をしたのちに、サラリーマンの経費についても、この概算控除と実額控除の選択といった仕組みになっております。

さらに一番右の税額控除というところをご覧いただきますと、小さな字ですが、子女税額控除ですとか、勤労所得税額控除といった、いわば担税力の調整のような役割を、かなり税額控除が担っているという点があろうかと思います。

8ページ以降、ヨーロッパのそれぞれの計算のプロセスを書いてございます。時間の関係で省略いたしますが、ヨーロッパの諸国でも税額控除が比較的用いられているというのを見ていただけるかと思います。

その上で11ページでございますが、「課税ベース(イメージ図)」ということでご覧をいただきますと、今申し上げた収入から課税所得に至るまでの間の課税ベースが減っていくプロセスを、非課税所得、各種所得についての控除等、人的控除、その他の所得控除というふうに書いてございますが、左側の非課税所得と各種所得についての控除等ということで、所得計算上の控除、これらはいわば非課税所得の場合にはその収入を100%控除する。各種所得についての控除等は、収入の一定割合を控除するといった形で、初めの段階で課税ベースから落とす役割を持っている。人的控除やその他の所得控除は、収入なり所得を総合したあとで個々の担税力の調整ということで、後ろのほうで控除をしているというふうに図式的には整理できようかと思います。

非課税所得として今かなり大きなものは、例にございますが、遺族年金や失業等給付、生活保護給付といった社会保障給付が非課税となっております。

それから、各種所得についての控除等は、先ほど見ていただきました給与所得控除ですとか公的年金等控除が、こういった所得計算上の控除に当たるということでございます。

それで、13ページでございますが、昨年6月、基本方針をいただきまして、人的控除の簡素化・集約化ということで、そこにございますように、配偶者特別控除の上乗せ部分を廃止をさせていただきました。基礎的な控除の割増・加算としては、特定扶養控除ですとか老人扶養控除があるということでございます。

さらに、15ページをご覧いただきますと、6月の基本方針の時点で、基本的な3つの控除については、そこにございますように、考え方1から考え方3まで、3つの考え方を示して、国民に提示をしていただいた形になっております。

考え方1は、現在の仕組みを基本的に変えない。考え方2は、納税者本人の基礎控除と児童・老齢親族の扶養控除にして、配偶者控除はやめる。考え方3は、この扶養控除について、税額控除という形で実施をする。こういう3つのパターンを示していただいておるわけです。

これについて16ページで外国をご覧いただきますと、アメリカは1人に1つということで、人的控除が本人、配偶者、扶養親族、それぞれにございます。イギリスの場合には、基礎控除はございますが、配偶者に関する控除はなし。扶養については税額控除で対応しているということでございます。ドイツ、フランスになりますと、課税単位との関係もございますが、基礎控除も配偶者控除もございませんで、子供の扶養について、子女控除と児童手当の選択ができるといったような仕組みになっておるということでございます。

それから、給与所得控除の関係でいくつか資料をご覧いただきますと、19ページでございます。給与所得控除についても、これまでご議論していただいておりますけれども、19ページのグラフでご覧いただきますように、昭和48年までは下にあるような定額控除の上に20%から5%の定率控除がございまして、76万円の控除限度額という頭打ちがございました。これが49年の改正で上のような形になっておりまして、現行、平成7年からと書いてございますが、40%という高い控除率からスタートをいたしまして、頭打ちも廃止をされたということで、平均をしますと、給与収入の3割ぐらいを控除する制度になっておるということでございます。

これにつきまして、21ページでございますが、これも時折ご覧をいただく資料でございますが、経費の概算控除ということで、経費とおぼしきものを家計調査から拾ってみますと、一番右の(A)分の(B)の欄にございますように、平均しますと6.6%ということで、経費の概算控除ということでは、収入の1割ぐらいあれば十分ということではないかと思います。

さらに、22ページで、昭和63年から給与所得者についても実額で経費控除を選択する制度が導入をされておりまして、通勤費ですとか、研修費、資格取得費といった5項目が特定支出として実額控除の対象になってございますが、給与所得控除のオーダーが、先ほど申し上げましたように大きいものですから、一番下の(注)にございますように、この実額控除を選んでおられる方は全国で4件という実態でございます。以上が給与所得控除でございます。

それから、25ページにお進みをいただきまして、「公的年金にかかる課税の仕組み」ということで資料をまとめてございます。25ページの上のほうから見ていただきますと、拠出時、いわゆる入口の段階では、掛金が社会保険料控除等が効いて全額所得控除されるということでございます。それから、給付時、出口のところでは、年金収入に対しまして、公的年金等控除がまず働きまして、それから老年者控除ということで、65歳以上で合計所得金額が1,000万円以下の方については、50万円の所得控除があるということでございます。この結果、入口で非課税、給付時もかなり大きな控除で、実質的に非課税になっておるというのが、日本の年金に係る課税の実態でございます。

このうち公的年金等控除というのが27ページに図示してございますが、現役世代の給与所得控除と比較しながら絵になっておりますけれども、65歳以上の方と65歳未満の方でグラフが違っておりまして、65歳以上の方が上のほうでございます。140万円の最低保障がございまして、25%から5%の定率控除になっておるということでございます。それから、65歳未満ですと、最低保障が70万円、半分に落ちて、同じグラフで伸びていくといったような構造になっております。

この結果、31ページに飛んでいただいて恐縮ですが、現役の世代と年金受給者世帯で課税最低限を比較いたしますと、右のほうの平成16年から配偶者特別控除がなくなったあとの改正後でご覧をいただいて、65歳以上で配偶者がおられる場合、2人世帯ですと、年金受給世帯の課税最低限は299万8,000円、単身の場合で236万3,000円、これに対しまして、現役夫婦者で156.6万円ということでございます。

さらに、33ページをご覧いただきますと、これも昨年もご覧をいただいたと思いますが、年金を受給しながら給与を得ておられる場合の課税最低限でございます。年金は雑所得、給与は給与所得ということで、所得分類が違いまして、それぞれ所得計算上の控除である給与所得控除、公的年金等控除が働きますので、給与ももらい、年金ももらっておられる方の課税最低限は、354.8万円ということで、さらに現役世代よりも高くなるということでございます。

これらにつきまして、例えば34ページのように、高齢でもかなり就業者が増えてきておられる状況、さらに35ページ、高齢世帯で給与を得ておられる雇用者世帯が真ん中に書いてございますが、かなり年金と給与を含めた収入が大きくなっております。そういったことを念頭に置きますと、こういったダブルで控除が適用されるということをどう考えるかという問題があろうかと思っております。

それから、ちょっと飛んで恐縮でございますが、38ページでございます。今、高齢者の控除という観点からご覧をいただきましたけれども、年金課税の考え方ということで整理をいたしましても、38ページにございますように、包括的所得課税の考え方では、拠出段階と運用段階で課税をし、給付は非課税。それから、支出税、消費税の考え方をとりますと、拠出、運用段階では非課税ですが、給付段階では課税ということで、入口か出口かどちらかで課税をするということであろうかと思いますが、日本は入口で非課税、出口でも実質非課税ということでございまして、年金課税の考え方からしても、見直しが必要ではないかという論点でございます。

それから、その関係で39、40ページには、諸外国の年金税制が整理してございますので、恐縮ですがご覧をいただきたいと思います。

さらに、46ページに飛んでいただきまして、退職所得についての課税方式の資料をつけてございます。これもいつもご覧をいただきますように、長期勤続に手厚い形の課税になっておりまして、どう考えるかという問題がございます。

それから、時間の関係ではしょって恐縮でございますが、50ページ、課税ベースのところでご説明をいたしました主な非課税所得について整理してございまして、51ページの(参考2)に社会保障関係の給付について、それぞれの法令を引っ張ってきて整理してございます。ご議論をいただければと思います。

以上でございます。

石会長

地方税のほうをお願いします。

吉崎市町村税課長

続きまして個人住民税でございます。資料は55ページをご覧いただきたいと存じます。

基本的な考え方、仕組みにつきましては、個人住民税は所得税と同じでございますが、特に費用をみんなで分かち合うという性格から、各種の控除が所得税に比べまして低く設定されております。その結果、課税ベースは広く、また課税最低限が低いというのが個人住民税の特徴になっております。

そこで、特に社会的に弱い立場にある方の稼得力に配慮いたしまして、ここに掲げてございますような人的非課税の制度が設けられております。アのところで、生活扶助を受けている方、あるいは老年者等で所得が125万円以下の方は、均等割、所得割が非課税でございます。また、イの[1]、ウに計算式が出ておりますけれども、一定の所得以下の方につきましては、均等割、所得割が非課税ということになっております。

その他のことにつきましては、所得税と同じでございますので、説明は省略させていただきます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、古谷さん、続いて相続・贈与もまとめてご説明ください。

古谷税制第一課長

「総40-3」という資料に転じていただけませんでしょうか。「資料(相続税・贈与税関係)」となっております。

目次を飛ばしていただいて1ページに、昨年の6月の基本方針を再掲してございますが、アンダーラインを付した部分をご覧いただきますと、昨年の基本方針で、経済のストック化の進展、それから、社会保障の充実によりまして、老後扶養において公的負担の役割が高まっておること、その結果、相続財産の一部を社会に還元する必要性が高まっているのではないかという点、それから、3番としまして、高齢化の進展により、相続人のライフスタイルの中で資産移転の時期が後ろになってきているといったことを踏まえまして、従来より広い範囲に適切な税負担を求める必要があるという基本的な方向感をいただいておりますが、その上で、生前贈与の円滑化の仕組みを考えるべきであるというご指摘をいただきました。

この結果、5ページでございますが、もうこれはご承知のとおり、15年度改正で相続時精算課税制度を創設させていただきまして、生前贈与の円滑化の仕組みを導入するといった大幅な相続税の改正が実現をしてございます。

この制度に対しましては、非常に関心が高く、毎日係のほうに数十件ぐらい問い合わせがあるというのが現状でございます。そのご報告の関係の資料が7ページぐらいまで続いておりますので、説明は省略いたしますが、今後の相続税の課題でございますけれども、8ページ以降にその関連の資料を並べてございますので、若干ご覧をいただきたいと思います。

8ページは、社会保障構造の在り方について考える有識者会議の報告が引っ張ってございますけれども、老後扶養が社会化しているということを踏まえまして、資産の保有や相続に着目して、より広く税負担を求めることが必要になってきているといった指摘をいただいております。

10ページでございますけれども、いくつかデータを並べてございますが、世帯主の年齢階級別資産残高ということで、年齢が高くなるに従いまして、金融資産、実物資産の残高が大きくなってきているという絵でございます。

それから、12ページの資料をご覧いただきますと、これは貯蓄残高から負債残高を引きましたネットの金融資産保有の年齢別の分布でございますが、1989年から1999年まで3年分をプロットしてあります。ご覧いただきますように、現役の若い世代のところでは若干減りぎみでございますけれども、60から上の高齢者のネットの金融資産は、着実に増えているという絵でございます。

それから、13ページでご覧いただきますと、やや見にくい絵で恐縮でございますけれども、金融資産残高の保有に応じて実物資産がどうなっておるかということで、棒グラフを並べてございますが、金融資産が少ない高齢者夫婦世帯でも、左のほうでご覧いただきますように、3,000万円近くの実物資産を保有しておる。これは持ち家が中心ではありますが、そういう状況であるということでございます。

こういう中で、14、15ページとこれまでの相続税のバブル期以降の主な改正の推移を並べてございますが、15ページの一番最後の「現行」というところをご覧いただきますと、今回、一体化措置の導入とともに最高税率を引き下げまして、ブラケットの改正をいたしました。ただ、基礎控除のところをご覧いただきますと、「同左」となっておりまして、課税ベースの問題については、今回手をつけないままになっておるということでございまして、今後の税体系の中での資産課税の位置づけですとか、社会保障制度を通じた老後扶養の進展といったことを踏まえまして、ご承知のように、100人に5人という相続税の課税の現状をどう考えるかということで、課税ベースの問題が1つ相続税には残っておろうかと思っております。

こういった点をこの間基礎小で説明をさせていただいたところでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

短時間で膨大な資料並びに議論の紹介をいたしましたから、消化不良のところがあるかもしれませんが、これから3、40分時間を取りまして、現行の個人所得税あるいは資産課税のところの、特に少子高齢化という視点から見て、どういうふうに改革の方向を持っていったらいいかというあたり、忌憚のないご意見をいただきたいと思います。

先ほど基礎問題小委員会の議論をご紹介しましたから、繰り返しませんが、そういう方向で考えていいかどうか、いや、まだ所得控除等々重要だから、社会保障的要素も加味して、まだその意義を認めるべきだというご意見もあるかもしれませんよね。そういう意味で、少し議論いたしましょう。どうぞ、どなたからでもけっこうです。

堀田委員

中身の問題に入る前に、論議の広報の件についてなんですけれども、前回の基礎小での議論も各紙載せておるのですけれども、例えば読売新聞ですと、「公的年金課税範囲を拡大へ」とありまして、その具体的な点が2つ取り上げられておって、「年金以外に収入がない人の課税最低限を引き下げる方向」、これが1つ。もう1つが、「夫を亡くした妻に支給される遺族年金は現在非課税扱いだが、課税対象にすることを検討」。この2つが取り上げられているわけです。

もちろん、その2つだけ議論したわけではないのですけれども、議論の中で特にこの2つが取り上げられて、こういう形で政府税調でやっている、基礎小でやっているということになると、初めて読んだ人は、ほとんどの人は初めて読むと思うのですけれども、特に関係者は非常にショックを受ける。そいうふうになるのかと、そんなことがそこで決まるのかと、そういう感じを受けると思うのです。ですから、これは今後検討していって、それを実現する過程で非常に私はマイナスになると思うのです。

ほかの、例えば日経新聞などは、社会保障費が非常にかかるようになるのでということ、それから、世代間の公平というようなこと、なぜそういう検討をしているかの実質的な理由を書いてあるので、それだとまだわかるのですけれども、そういうことなしに、特に弱者の点だけ2つ取り上げて、そういうことだと書かれてしまうと、本当に、誰か基礎小でおっしゃっていましたけれども、鬼じゃないかと、我々は鬼にならなければいけないという議論もありましたし、それから、河野さんから、ここで腹を決めなければいけないという議論もあって、それはそれでわかるのですけれども、やはり鬼になるなら鬼になるにしても、なぜそうならなければいけないのか、また、それについて十分検討しているという過程を順次示していかないと、いきなりこうなんだという方向が出て、やがて我々が議論して、やがてみんなでこういう結論になりました、結局そうなったじゃないかと、そういう過程ではかえって非常に疑惑を招いて、その後の論議過程にマイナスの影響を与えるのではなかろうかと。

だから、そういう意味で、まず第1に資料ですね。この資料は非常によくできておって有益なのですけれども、初めての人たち、特に当事者たちにもわかるような基礎的な資料、なぜそういう検討をするのかという、そういうわかりやすい資料を1つ入れていただきたいということが1つ。

もう1つは、広報の際に、議論の過程で、特に検討しているという、例えば年金についてであれば、日本は入口も出口も課税していないので、これでいいのだろうかという問題提起があって、いろいろ検討があったと。実際前回の基礎小というのはその程度のことだったと思うので、そういったような順次プレゼンテーションをするというご配慮をぜひちょうだいいたしたいというお願いでございます。

石会長

それは僕に対する注文ですか、マスコミの方々に対する注文ですか。

堀田委員

マスコミはどうしようもありませんので、マスコミがわかるように……。

石会長

堀田さん、記者の方と付き合いが多いからおわかりと思いますが、僕が中立的に淡々と例えば100述べますと、そのうちの2、3を書いていただくわけですから、その2、3を書けとは僕は言えませんよ。だから堀田さんの言うのはある意味で無理な注文なんですよ。それをやめたければ、一切記者レクをやめたほうがいい。だから、どうしたらいいですか。

堀田委員

そのことは十分わかって私申し上げたのですけど、石会長が適切に要約してやっておられることは、記者会見を読んでわかっております。ですから、問題は1つは資料。資料の中に、こういう専門的なこのレベルの資料のほかに、あわせてそのときに配るようなわかりやすい資料を準備していただくというのが1つ。

それから、もう1つは、議論の結果こうなったということだけではなくて、ここから先は石会長に対するお願いになると思いますけれども、大変だとは思いますが、問題点のバックグラウンド、特に弱者に対する課税が問題になっている点については、特に丁寧にそろりとやっていただきたいというお願いです。

石会長

私の説明が少し不備な点は重々認めますが、いくらそろりとやろうが、大胆にやろうが、受け取る方の受けとめ方ですから、私の説明では限度があると思います。それは十分おわかりいただきたい。したがって、私の会見したものをすぐ速記録に起こして、ホームページで出しているわけですから、ホームページのほうが私の言っていることの本体でありますから、ぜひそことあわせて読んでいただかないと困るのだけど。

堀田さんから難しい注文が出ましたけれども、十分に配慮しながらと思いますが、税負担増、弱者というときには、特に私も気にしつつ発言しておりますが、どうしてもそちらのほうに記事がとられやすいというのは、堀田さんが一番ご存じと思いますが、ご忠告承っておきます。また後ほどの記者会見でもその辺は十分にお願いすべく言いたいと思います。ありがとうございました。

次は榊原さんですか。手を挙げられましたか。どうぞ。

榊原委員

小委員会の金子先生、神野先生、宮島先生の問題提起について、アバウトにわかりましたけれども、そこで言われているのは、所得税の再度の基幹税化ということと、それから、資産課税の強化、社会保障の非課税の問題について、というようなところが重要な今後論点になっていくのだろうと思いますので、今日の段階では具体論ではないので、それが課題だという認識は持たせてもらいました。

それで、少子高齢化社会と社会保障ということは、極めて重要な我が国のテーマだろうというふうに私も認識しておりまして、それをどういう税制で支えていくのかということは、この税制の重要な任務なのだろうということも認識しておりますので、今後、積極的にそのような議論に参加したいと思っているわけですけれども、1つだけ、前から申し上げておることですけれども、そのような少子高齢化社会を支える税負担のあり方に際して、必要となる施策の整備、それと社会保障としての給付水準のあり方というのを明示した上で、国民にどの程度の負担を求めていくのかというのを、まず明確にして議論していく必要があると思います。

必要な国の税収を確保はしていかなければならないのですが、単に人的控除だけあれこれするのではなくて、景気とか国民生活に与える影響ということも十分配慮しながら、各種人的控除の整理と少子高齢化社会のもとでの社会保障制度の充実というもの、両方きちっと並立させていくという観点で今後議論していければなと思っております。

石会長

いずれ具体論についてもまたご意見を伺いたいと思いますので。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、佐野さん。

佐野委員

前回の基礎小を私欠席したので、どんな議論が行われていたかよくわからないのですが、今、事務局の説明などを伺って感じることは、高齢者にも応分の負担を求めていく、こういうことだろうと思います。その理由というのは、社会保障の給付費というのが今後さらに膨張していくというのが最大の原因ということだろうと思います。

ただ、この高齢化社会と税の関係というのは、ずっともう2か月ぐらいやっているように思うのですが、1つ論点として欠けているなと常々思っているのは、要するに、こうやって高齢者からも応分の資金を出していただくということで、では、それをどうやって使っていくのだと、どこに振り向けていくのだという議論を、具体的でないまでも、方向性、考え方ぐらいはあってもいいのではないか、必要ではないか、と思うわけであります。

つまり、こうやって捻出した財源というものを、では社会保障分野に優先的に、集中的に使っていくのかどうか。税である限り、一般財源ということで、その他諸々に使われるというのが原則なんだけれども、この場合は社会保障の分野に使っていくのかどうか。社会保障の分野といっても、負担と給付ということがあるわけでありまして、特に高齢者に負担を求める場合、給付は削らないでくれ、この人たちは原則として保険料を負担していないわけでありますから、そこの人たちに負担増を求めるのなら、給付は保障します、あるいは自己負担というようなことはなるたけこれ以上求めていきません、というようなところに焦点を合わせるのか。それとも若年世代あるいは企業にまで求めて、保険料の負担というものをこれ以上できるだけ上げないようにしていく。つまり、保険料を負担のほうにウエイトを置いていくのか、等々の考え方というのをあわせて議論していかないと、ただ「お願いします」ということで、無用の反発を食らうということになりかねない。そろそろ、何に使っていくのかという議論もあわせて行っていくべきではないかと思います。

石会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。もうこれで終わりですか。次にいっちゃいますよ。これは非常に重要な問題なので、皆さんのご意見をぜひ聞きたいのです。特に基礎小でご発言の機会がない総会にご出席の方、いかがでしょうか。

堀田さんは再度ないですか。さっきはマスコミのご意見だったけど。

では、今野さん。

今野委員

せっかく堀田委員がああいうご発言をしていただきましたので。私はあの問題は、今回の弱者の税制に関することに限らず、非常に大切なことだと思います。だから、どんなに委員の先生方が心を込めて、いろいろ配慮をしながら検討なさって決められたことであっても、それがどう報道されるか、またはどういうふうにそれが伝わって、理解され、受け入れられるかということによっては、ずいぶん国のありようが違ってくることではないのかと思います。

ですから、どんなに石会長が言葉を尽くして話していただいても、受け取るほうの自由というふうに考えずに、マスコミの方にもいろいろな方々がいらっしゃると思いますので、そういうふうに諦めてしまうのでなくて、では、マスコミがもしそういうものであるとするならば、私たちとしては、どのような手段を考えて、正しくその心を伝えていくべきかということに関して、もっと考えたほうがいいのではないかと思います。

石会長

そのために、今日はマスコミの方にも、総会だけですけど来ていただいて、生の状況を見ていただいているわけですから、これは非常に私は、教育効果と言っては失礼だけれども、税調の姿をわかっていただくにはいい機会かなと思っています。

政治あるいは政策決定とマスコミ、それから世論というのは、まさに小泉さんが年中怒っているというか、気にしていることでありまして、あらゆる人がここのところを通過しなければいけないので、まあ、我々なりに努力しましょう。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

松尾委員

私は、少子高齢化社会ですから、高齢者が応分の負担をするというのはやはり当然だと思うのです。ただ、相続税の場合、課税ベースの拡大が積み残されているということになっているのですけれども、これはやはりちょっと所得税とは性質が違うと思うのです。生存権、財産権、その辺をどう考えるかという問題があると思います。

そこで、一体どこまで税で取れるかですね。これは学者の間でもいろいろなご意見があるようでして、所得税に吸収するべきであるというご意見もありますね。どういう観点でこの相続税の問題を切っていくのかということが、これは大きな課題であると思うのです。所得税と違うとすれば、広く、薄くという考え方が本当に適用できるのかどうか。地価が地域によって違いますから、場合によっては、地域ごとに相続税の課税最低限を変えてみてはどうかという考え方もあるかと思うのです。

それと、国際的な動きとしては、カナダ、オーストラリアには相続税がないんですね。イタリア、アメリカも相続税を廃止しようとしている。そういう中で、そういった国際的な動きとどう整合性を保つのか。そういった問題はやはりきちんと議論しておく必要があるだろうと思います。

石会長

ありがとうございました。

津田さんですね。

津田委員

先ほど、堀田さんなどのご意見はごもっともだと思うのですが、実は基礎小でも意見が出ましたのは、第1回の会合のときに、総理が消費税はやらないよと、こういう言い方をされておるわけですね。そうすると、基礎小なり、総会のご意見もそうなのですが、消費税というのを抜きにして、薄く、広く、しかもかなり社会保障財源、今後のものは巨額のものを調達しなければならないということが、本当にできるのか。いわゆる歳出カットだとか歪み是正、先ほどの諸控除問題などは1つの歪み是正ということなのですが、そういうものだけで本当に処理できるのか。何か議論しているうちに、結局、消費税抜きなものですから、所得課税の所得控除等に非常に局所的に重点化するような議論になって、それはマスコミにも書かれてしまう。こういうような議論が本当にいいのだろうかというのは、実は基礎小でも出たことがあります。

ですから、最終的なとりまとめのときには、やはり税調としては、社会保障の大きな財源を出すためには、薄く、広くというような観点から、消費税問題も取り上げなければなりませんし、それから、歪み是正あるいは歳出カットというような順序論はわかるのですけれども、それで問題が解決するかどうかということは、やはり皆さん方の意見をとりまとめた上で答申しなければいけないのではないかと、どうもそういうあれがございますから、ちょっと今の段階は対外的に難しいことがあるのではないかと思います。

石会長

消費税の問題は、いずれまた、2か月ぐらいありますので、その場に応じてまた議論していきたいと思います。どうぞ、和田さん。

和田特別委員

前回も発言したのですけれども、所得税を基幹税としてということを、基礎小でも話が出ているということを伺いまして、基幹税にということは、これからもっと議論が出ていくのだと思いますけれど、やはりそれは大事にしていく必要があるということを感じております。

それで、少子高齢化の時代で、高齢者であっても応分の負担をということはわかりますけれども、その応分の負担の中身だと思うのです。

それともう1つは、先ほどもお話が出ましたけれども、その財源をどうやって使っていくのかということが、あわせて議論されていかないと、なかなか十分な議論、そして納得がいく形にはなっていかないのではないかなと思っております。

それから、相続税・贈与税の資料のところの12ページに、「高齢者で高い金融資産」というグラフがありまして、60歳、70歳以上になってくると、金融資産を2,000万円ぐらいは持っているというのが出ていますけれども、これは私の読み方が十分ではないのかもしれませんが、例えばその本人たちの年金の種類によって、頑張って年金で何とか生活はある程度できるというところでの金融資産であれば、相当余裕があると読めるのかもしれませんけれども、国民年金、しかも満額をもらっていない人が多いという中で、こういう数字をどう見るかというのは、また見方の問題があるのではないかなと思います。

同じように次の13ページの、金融資産が少ない高齢者夫婦世帯でも、3,000万円近くの実物資産を保有しているというところの、下のほうの750万円から900万円のところが、3,000万円近くの実物資産保有という、見出しに合っているようなところなのでしょうけれども、ここの本当の生活を考えてみると、3,000万円近くを持っているよということは、相当いろいろな見方をしないと、生活の実態というのは出てこないのではないかなということを感じました。

石会長

おっしゃるとおり、その種の議論も大分いたしました。特に平均というような形で十把一からげでやってはいけないのではないかと。それから、おっしゃる中身ですね。ただ、これはここに書いてございますように、全国消費実態調査の定義に従って、例えば貯蓄残高はこれだというようになっていますから、それをご紹介したので、あとのいろいろな分析の視点というのは、それなりにまた別途、和田さんのおっしゃるような視点を加味して考えなければいけないと思います。

今の点について、事務局は別によろしゅうございますか。何か追加的に説明がございますか。よろしいですか。

それでは、ほかにいかがでしょうか。どうぞ。佐野さん。

佐野委員

ちょっとこれは質問なのですが、特に総務省に対してちょっと質問したいのですが、15年度の改正で、とりあえず来年から配偶者特別控除が廃止されると。高齢者は当然これは範囲内ということで38万円落っこちるということなんですが、それに加えて公的年金等控除等々の圧縮を進めていく。課税ベースが広がるということになりますと、1つちょっと私が心配しているのは、高齢者の社会保険料負担との関係なわけです。つまり、例えば国民健康保険料あるいは介護保険料というものが、控除後の所得ということで算定されているということなので、つまり、控除は削られる、つまり税負担は増える。一方、社会保険料負担は上がるという両方の負担増になってくるのではないか。とりあえず来年から配偶者特別控除が廃止される。これに対して国民健康保険料あるいは国民健康保険税、それから介護保険料、等々の調整はあるのか、ないのか。そこら辺わかる範囲でけっこうですから、板倉さん、お答えいただけませんか。

石会長

今日無理ならばまたと思いますけれども、どうぞ、担当の方でも板倉さんでもけっこうです。

板倉自治税務局長

その辺はよく整えまして、またご報告させていただきます。

石会長

では、猪瀬さん、どうぞ。

猪瀬委員

先ほど弱者の話が出ましたけれども、弱者というのは僕はイデオロギーだと思うんですね。つまり、本当の弱者と嘘の弱者がいるんですけれども、弱者、弱者と言っていくことによって、日本は大きな政府を作ってきたのであって、そういう社会主義的な政府になったわけであります。

したがって、たまたま小泉さんが、いろいろな思惑はあるかもしれないけれども、消費税はやらないと言ったときは、僕は1つのチャンスだと思いまして、つまり、聖域なき構造改革というのは、弱者という嘘のイデオロギーによって作られた聖域というものをきちんと整理していくチャンスだというふうに考えるべきだと僕は思います。やはり各種控除、様々な歪んだ控除がたくさんあるものは、この際一切整理していくということで、当然、年金をいただいている方々の所得と若い人たちの所得、年金をもらっている人たちが多かったりするわけですから、決して弱者ではないのであります。

そういうところを、これはメディアの方々もそうなんですが、弱者というのは記事を書きやすいですね。だから、そういうことではなくて、やはり弱者の中身をきちんとチェックしないと、固定観念による弱者というのが作られていくことが、この間一番問題だったのではないかということであります。

そういう意味で、僕は今回のは賛成なんですけれども、この際、とにかく消費税をやらないという一回栓を締めてあるところで、整理できるものは整理し尽くすというのが一番重要ではないかと思うわけです。

ちなみに、生活保護費というのは1兆5,000億円ぐらいあるそうですが、ずいぶん多いんだなと思いました。もちろんそれを言うと、また批判が出てくるかもしれませんが、そういう中身だってもっと検討していいわけでありまして、弱者と言ったら特権であるというのは間違いでありまして、しかしながら、本当の弱者はいるわけですから、本当の弱者に手厚くするためには、偽の弱者を排除していく必要があるだろう。こういうことであります。

石会長

ありがとうございました。重要な視点を出されたと思います。

三山特別委員

先ほど津田委員が問題提起された消費税の問題について、石会長は、まだ何か月かあるから、先へ行って議論するというふうに整理されたのですが、この消費税の問題は、それぞれの委員に相当受けとめ方のばらつきがあると思うのです。1月17日に、今年最初の総会のときに、私ちょっと総理に質問して、それで出てきちゃったものだから、多少責任も感じているのですが、総理は、「私の内閣ではやらないが、議論は大いにやってくれ」と、そうおっしゃっているわけですね。それから、実はその場で引き続き、消費税を上げる前に歳出の見直しや無駄遣いを徹底してやるのだと、その上でやるのなら別だが、というニュアンスをおっしゃっているわけですね。

基礎小でも、水野委員でしたか、総理のお考えを謎解きされて、ほかにいろいろ給付のカットあるいは負担の増というものをやった上で、消費税に触らざるを得なくなるなら、触ってもいいのではないかという、謎解きというか解釈をされていますが、同じ小委員会でも、この政府税調は消費税には枠をはめられたのだと、したがって触ってはならないのだという考え方をとるのか、いろいろプライオリティーをつけて議論をしていった上で、こじんまりした改革しかできないならば、あるいは非常に窮屈なことしかできないならば、この6月の答申の中で消費税についても触ってもいいのだというふうに解釈をするのか、今後議論を進めていく上でも、現時点での石会長の考え方の整理をお願いしたいんです。

石会長

わかりました。

実は大きな改革を今年度やっているんですよね。3,000万円を1,000万円にするという益税対策もやったし、それから、簡易課税制度も5,000万円に下げたし、総額表示にしたり、これは大改革なんですよ。したがって、それを先へ越えていくとなると、6月に何を書き込むかということになると、残るは、税率をどのぐらい、いつの段階で上げるか、これに尽きますよ。それについて中期答申でどこまで踏み込むかというあたりの議論は、まだ2か月ぐらいありますから、これはかなり各委員の方の主観的な判断もあるし、思い入れもあるし、いろいろあるので、それはそこで書きっぷりとして問題は残るだろうと。

ただ、大いに議論するという意味は、この少子高齢化の中で、消費税率をどこまでどうするのか片や置いて、今日はまだ議論していませんけど、そこだけなんですね、今度のを書くとすると。細かい構造的な話はずいぶん議論しましたから、一応大改革をやったという前提のもとで、次のステップとして、次のような議論はいずれやりたいとは思いますけれども、ただ、本格的な議論はどうなんですかね、例の基礎年金のところの話が秋に出てきますから。

それから、実は後ほど申し上げようと思いましたけど、来月の20日ぐらいに、社保審の委員と税調の一部の人で懇談する予定にしています。ですから、社保審がどういうことを考えているかというのもおそらくいろいろ議論があると思います。ただ、おっしゃるとおり議論は大いにすべきだと思いますから、いずれまた税率を含めて、時期を含めて、今の時期にやったほうがいいかどうか含めて議論したいと思いますから、別に封じておりません。

石会長

あと、水野さんと村上さんでよろしいですね。次の議題へいきたいので。

水野(忠)委員

私のは技術的なんですが。年金課税ですけれども、今後、高齢社会の中で考え直していかなければならないと思うのですが、ちょっと考えてみますと、年金というものは大体30年前後、そういった計画で進んでいくものなんですけれども、大体我が国で課税の仕組みを説明するときに、まず年金の掛金は社会保険料控除で所得から差し引かれる。それから、受け取った段階ではほぼ公的年金等控除でカバーされる。運用している期間がありますけれども、これもまた今はとまっておりますけれども、適格年金退職金の法人税というのがかつてありまして、これも停止している状況である。

実際には年金には課税関係が生じてこないということなのですが、よく考えてみますと、この数十年の長きにわたって積み立てて、それで年金として受け取る。こういう仕組みはもともとは予想されていたのですが、現在の社会保険というのはいわゆる賦課方式になっておりますので、社会保険料の掛金、いわゆる年金の掛金というのは、自分のために積み立てているのではなくて、人の年金を養うために払っているわけですね。そうすると、自分が掛金のときに控除をされて、受け取ったときにこれに税金がかからない。そういう同じものではないんですね。掛けるというのは人のために払っているわけで、もらったときにもらっている者のために積み立てているわけではありませんので、そうすると、これはもう一回説明の仕方というのを考え直さなければいけないのではないかなと思っております。これはやはり年金というのが数十年の期間をかけて動いていくものであるために、どうしてもそういう変化が生じてくるのだと思いますので、その点、もう一度ちょっと考え直してみる必要があるかなと思っております。

石会長

ありがとうございました。新しい視点のご提示だと思いますから、いずれまた議論の俎上に乗せたいと思います。

では村上さん。

村上特別委員

基礎小で発言したことですけれども、今のいろいろ出ている議論の基本は、空洞化している基幹税としての所得税をどうするかと。税収と歳出とのギャップをどう埋めていくかという大きな視点の中での話ということだと認識しています。ですから、公的資金についてもいろいろな議論はあったわけですけれども、いきなり拠出と給付のどっちから取るかとか、遺族年金に課税するとか、いきなりポンポンと来る話ではないのだと。いろいろなものが考えられて、その中で遺族年金といえども、全く無傷で済まないかもしれないという程度のことかなというふうに私は認識しています。

ですから、話がかなり、先ほどの議論でもいろいろな方がそれぞれの専門のところで物を言っていらっしゃるので、マスコミ報道などではちょっと誤解を与えるのかなと思いますが、基本は、要するに所得税の空洞化をいかに解決していくかという視点でいろいろなことを考えようと、そういう段階なのだなというふうに認識しています。

石会長

ありがとうございました。

まだいっぱい議題があるので、終わりにしたいと思いますが、これまでの議論を拝聴いたしまして、いろいろな立場からのご意見がございますから、一括してまとめるのは難しいと思いますが、ただ、少子高齢化というのを念頭に置くと、やはり所得税というものに頼る、あるいは消費税も入るかもしれませんが、コストをどう負担するかが一番重要なんですね。

今日は何もしていないのですけど、実は高齢化ですごく給付が大きくなるというのが前提の議論であり、事実そうなんですね。そういう意味で、一律に、何かいじるとすぐ弱者にひどい目にあわせるというようなイメージにとられやすいのですが、実は社会的弱者と称する高齢者、そこがこのままでいいかという問題意識を皆さん一部ではお持ちになっているわけでありまして、そういう意味で、所得税の歪みをなくすという視点から、この所得税を基幹税にしようというスタイルを我々は議論としてとっているわけで、そこに少子高齢化が絡まりましたから、非常に難しいなという印象を持っております。

ただ、皆さんのご意見を聞いて、所得税はこのままでいいということは誰もおっしゃっていませんし、その背後にある少子高齢化の対応策として念頭に置かれていることは、皆さん共通の問題意識だと思いますので、消費税の問題と絡め、この課税ベースを広くしていくという中で、どれを取捨選択してこれから具体的に政策に移すかという議論、これは6月までの段階でまだまだ議論を詰める余地はあるし、また詰められると思っております。

それでは、次に、もう一つ大きなイシューは、国と地方の関係でございまして、これも私が数分議論をご紹介いたしまして、あと資料の説明をして、それで後ほどまたご議論いただく形にしたいと思います。

一時、経済財政諮問会議でも大分これは議論があったようでございまして、「三位一体論」という言葉遣いが、マスコミを通じてずいぶん躍っていたと思います。つまり、国から地方へ税源移譲ということと絡めて、国庫支出金、そして地方交付税の見直し、この3つを議論しなければいけないという議論がございました。

基礎問題小委員会では、三位一体ではなくて四位一体、五位一体というのがもっとあるではないかという議論が基本的に共通の部分だと思いますが、つまり、国も地方もとうに貧乏なんですね。財政赤字が膨大に積み重なっている。したがって、貧乏人同士が、こっちからあっちへ移せとか、こういう話ではなかろうと。まず、各レベルの政府が負担と給付という視点から、あるいは歳入・歳出のギャップを直すという視点から、各々歳出カットに努力する。あるいは歳入をもう少し集めるべく税制改革をするといった視点が重要であって、まずそこが根っこにあって、そのあと、いうなれば国から地方へ行くところの政府間の資金移転、これが問題になるだろうという捉え方なんですよね。そういう意味で四位、五位の中身がいくつかあるかと思いますが、まず、各々のレベルでともに歳出ギャップを見て、そこで努力をしようという点が優先するのではないかと。

そこで、別に財源移譲を端から切っているわけではなくて、そういう中で、努力をしたあとで、必要であれば補助金見直しも当然のこと、あるいは地方交付税見直しも当然のこと、しかる後におそらく財源移譲というのがあるのであろうと。そういう順序が必要であるという議論が基本ではなかったかと思います。

課税自主権の問題もずいぶん議論いたしました。資料も出していただきました。課税自主権で今法定外普通税、法定外目的税ができて、かなりやり出してはいますが、どうも超過税率も含めて企業に負担が重くいきすぎているのではないかという認識を持っております。やはり地域住民が自分たちの地域を活性化、あるいはそれを維持するならば、地域住民が汗をかくような税、具体的には住民税ですよね。特に均等割、所得割あたりをもう少し考えてもいいのではないかという議論がかなり濃厚に出ていたと思われます。

そういうことを前広にやって、それで税源移譲という問題があるのが当然であるということは、私も認識しておりますので、やにわに三位一体という形で、どれをどうという、無目的にやにわに移せばいいというだけの話ではなかろうということについて、基礎問題小委員会は一応ある順序づけの議論、そういった議論をかなりやったという意味で、単に三位一体論がひとり歩きしないような、そういう歯どめをかけたという感じはいたしております。

地方税体系は今のところ国税でやっていましたけど、今度は地方税体系は地方税体系でしっかり見直すことが必要であるということがベースにあったと思われます。

それでは、基礎資料として出されましたものがいくつかございますから、課税自主権等につきまして、具体的に事務局のほうからご説明いただきましょうか。

岡崎さん、それではお願いいたします。

岡崎企画課長

資料は「基礎小26-1」「国・地方関係資料(課税自主権等)」というのをご覧いただきたいと思います。

今、会長からもお話がありましたけれども、三位一体の話とはこれはまた別の話として、地方税の中で努力できる話ではありますので、また、1月に総理からもこのお話がありましたので、このご説明ということで資料を作成いたしました。

1ページをご覧いただきます。今の地方税法上の課税自主権という概念に2つございまして、1つはここに地方税がずっと並んでおりますが、このうちのかなりの税について、後ほど申し上げますように、税率が自由であるということで、税率の自由設定権がございます。これが1点。

それから、もう1点は、道府県の普通税、目的税、市町村の普通税、目的税、4つに括られておりますが、それぞれの中にいわゆる法定外普通税ないし法定外目的税というのがありまして、独自の課税を創設できるというのがございます。この2つが大きな意味で課税自主権と言われるものの内容ではないかと思っております。

2ページは飛ばしまして3ページ、まず税率の自由のほうでございます。地方税法上の税率を分類いたしますと、この4つぐらいに考え方が分けられるのかなと思います。

1つは標準税率というものでありまして、これは法律上の定義がございまして、地方団体が課税する場合に、通常よるべき税率として法定されている税率であって、地方団体は財政上特別の必要があると認める場合には、これと異なる税率を定めることができるということでございます。

なお、地方交付税の算定の際にも、この標準的な税率で徴収をしているものということで計算をするということになっております。

この書きぶりといいますか定義づけ、「特別の必要があると認める場合にできる」というようなことが、今後よろしいのかどうかというような議論はあるかと思います。

それから、制限税率というのは上限税率でございまして、これを超えてはいけないと定められているものであります。

一定税率は、この税率によりなさいということで法定されている税率でありますし、任意税率というのは、この税目について特に税率の定めがないというものでございます。

4ページをご覧いただきます。それぞれの税につきまして概要をざっとご覧いただきたいと思いますが、道府県民税、一番上のほうに個人の所得割、均等割がございますが、税率はそれぞれ2%、3%、均等割なら1,000円というふうにありますけれども、制限税率はなくなっております。実はこの個人の所得割につきまして、平成9年度まで届出制の適用がありますけれども、届出制のものがずいぶんあったのですけれども、これは全部平成9年度で整理をしてなくなっております。ですから自由にどこまでも上げられるということであります。

それから、法人のところでは5%という標準税率がありますが、例えば右に制限税率を見ますと6%、これは2割増しまでいいよという考えでございます。法人の均等割、道府県については制限税率はありませんので、ここで大阪府が14年度からは零細法人を除きまして2倍にするというような改正をいたしたところでございます。

それから、事業税法人をご覧いただきますと、50年度から1.1倍とございますが、実は49年度に東京都が税率12%時代に14%の超過課税をいたしまして、そうした議論を契機にいろいろ、ちょうど今の銀行税のような議論がございまして、それで1.1倍という制限税率が創設をされたということでございます。

なお、16年度から外形標準課税の導入に合わせて1.2倍にするということが今回の改正で決められております。

あと、地方消費税、たばこ税のようなものは、一定税率という決め方をしております。

それから、次のページに市町村税がございますけれども、やはり個人については上限がございません。制限税率がないということでありますが、これは平成10年度の改正で、それまで制限税率はあったのですけれども、その廃止を行ったということで、いわゆる課税の自由化の流れの中で改正をしたものでございます。

法人につきましては、それぞれ制限税率はやはり標準で大体1.2倍というような決め方をされております。

固定資産税については、1.5倍の2.1%という上限になっておりますけれども、特に摘要にありますように、一定の場合、これはその市町村の固定資産の課税標準のいわゆる 3分の2以上が1人の納税者が持っているというふうな場合に、1.7%を超える税率を定める場合には、議会でその人の意見を聞かなければいけないという趣旨の規定が法律上ございます。

ざっとそういうことでございまして、いわゆる制限税率は個人についてはほとんどなくなっております。法人については概ね1.2倍程度のところまでという制限税率がついているというのが今の状況でございます。

それから、6ページ、それでは実際にどのぐらい標準税率によらないで増えているかということ、いわゆる超過課税と言っておりますけれども、都道府県についていいますと、ここにございますように54団体、法人関係税で1,881億円でございます。市町村については、若干個人もございますが、法人を中心に、それから固定資産税、法人関係で2,830億円、合わせて4,712億円というのが13年度の決算額でございます。

なお、参考でございますが、個人で、高知県が今度、均等割1,000円に対して500円、法人にも500円ということで、県民税について、法人、個人ともに500円の超過課税を実施するということが、今回の春の議会で改正されておりますが、これについて相当住民への説明等に時間をかけたというふうに聞いております。

それから、7ページでございますが、過去の推移でございます。先ほど会長からお話がありましたように、法人に偏っているのではないかということがありましたが、過去を見ますと必ずしもそうではなくて、古い話ですが、昭和40年ごろには、市町村が個人の住民税について、1,200団体ぐらい超過課税をしておったということがございました。ただ、これについて、昭和44年に、むしろ住民の税負担を考慮して、こういう市町村の住民税所得割について、超過課税を解消するべきではないかというようなことを通知をいたした経緯がありまして、その後急激に減ってきたということで、今は所得割についてはゼロになってございます。

それから、先ほど申し上げましたように、49年に事業税で東京都が超過課税を始めた。あるいは法人住民税では兵庫県が同じ年の49年度に始めたというのを最初にしまして、県分で超過課税が増えてきたのが50年ごろからの傾向でございます。

以上が超過課税でして、8ページからは法定外税でございます。8ページは法定外税の仕組みでございまして、これも平成12年の4月の分権一括法の改正で、それまでの独自課税の創設についての自治大臣の許可制というものを同意制にした。同意を必要な協議制としまして、かつ、上の3つにあるような要件、ほかの国税、地方税と同じような課税標準で、住民の負担が著しく過重になるというようなこと、あるいは物の流通に支障がある、あるいは3番のように、国の経済政策に対して適当でないというふうなことがない限りは、大臣は同意するという法律の規定になっておりますので、ある意味では非常に作りやすくなっているということで増えてきているわけでございます。

9ページが法定外税の状況でございます。許可時代からございます核燃料税等が大きな額でございますが、最近できたものとして神奈川県の臨時特例企業税というのがございまして、これは40億円ぐらいの収入見込みでございます。括弧は見込みでございます。

それから、市町村税は前からあります別荘等所有税のほかに、太宰府市で歴史と文化の環境税という、これは太宰府市の観光用駐車場などの車に課税するというような税でございます。

それから、10ページに法定外目的税です。この目的税というのは新しく12年4月の改正でできるようになった課税でありますが、したがってここにあるのは全部新しいものでございまして、産業廃棄物関係がいろいろな県で出てきております。それから、宿泊税、いわゆるホテル税というのが東京都で上から2番目にございますが、10億円を超えるような税ができております。市町村でも、一番下の北九州、産廃にかける環境未来税というものでありますが、これも15億円程度の税収が見込まれるということでございます。

11ページ以降は表でございますので、省略をいたします。

15ページに過去の経緯でございまして、県分が15ページでございます。これは昔、家畜税はじめ若干ございましたが、それでもそう多くはなかったですが、16ページに市町村分がございまして、実は昭和30年ごろは、犬にかける税金、犬税だけで2,700団体近くが課税をしておったという経緯がございます。その他ミシン税、扇風機税とありまして、これにつきましても、実は昭和33年に通知をいたしまして、このときに法定税目の自転車荷車税というのが廃止をされましたこともありまして、こういう法定外税についてもある程度整理をしたらどうか、漫然とかけ続けてはいけないよという通知を出しました。かつ、当時は大臣の許可制でございましたので、その通知をきっかけに急速に縮小していったということでございます。

それから、17ページはシャウプ勧告で、そういう感覚で書いてありますが省略いたします。

18ページでございますが、超過課税、法定外税、全体の地方税35兆円に占めるウエイトを概括いたしますと、超過課税で4,712億円、法定外税で288億円、ちょうど合わせまして5,000億円になりますけれども、35兆円に占めますと、大体1.4%ぐらいの割合かなということでありまして、ロット的にもそうそう大きな額を稼げるわけではないということ。

それから、やはり標準的な行政経費については、きちっと財源として手当てをすべきでして、標準的な経費までこういう独自課税で稼ぎなさいということはできないだろうということがありまして、やはり基本は法定税の充実であろうと思います。

そういう意味で、以降にございます、例えば20ページにそうした考え方、これは地方分権推進委員会の最終報告でありますけれども、上のほうの(1)の4行目あたりからですが、国・地方を通じて主要な税目は法定税目になっておりますので、課税自主権の発揮のみでは量的な拡充は限界もありますということ。ただ、独自課税については、制度立案の過程で納税者を含めた関係者の意見を聞き、受益と負担の関係をより意識する議論が行われるという意義も評価すべきだというような考え方が、最も全体としてまとめていただいた考えだろうと思います。

そういうこともありまして、21ページ以降にありますし、最後の24ページに昨年の閣議決定がありますけれども、やはり大きな財源ということにはこの課税自主権はなり得ないと思いますので、ここにありますような三位一体なり税源移譲を含む税源配分の問題というものを、これからまた議論していかなければいけないのではないかと思っております。

資料の説明は以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

石会長

ありがとうございました。

それでは、10分か15分時間を取りまして、いろいろご議論賜りたいと思いますが、お手元の最後の資料に、松浦さんの「地方への税源移譲の取り組みについて」という、今日ご欠席でございますので、書面で意見が来ておりますので、後ほどご覧いただけたらと思います。

それでは、どうぞ、どなたからでもけっこうです。課税自主権を中心に。

では、貝原さんどうぞ。

貝原委員

課税自主権の充実の問題については、それはそれで大変重要なことだと思いますが、最初会長から、基礎小での意見の集約ということでお話があったことに関連いたしまして、ちょっと私の視点を申し上げたいと思うのです。

釈迦に説法みたいなことでございますけれども、各国の行政制度を非常に大雑把に分類しますと、連邦制の国と単一国家制の国があるわけですね。そして、単一国家制の見本のようなイギリスとかフランスあたりにおきましては、中央政府の役割が非常に大きい。行政サービスの担当も中央政府が非常に大きなものを担っているわけです。これが連邦制になりますと、アメリカとかドイツ、カナダ、オーストラリアがあるわけですけれども、かなり各州のウエイトが大きくなりまして、中央政府と地方の各州との行政に対します責任の度合いというのは、単一国家制に比べますと、非常に地方の州のウエイトが高い。

こういうことに分類できると思うのですが、日本の場合は、単一国家制度でありながら、行政サービスの責任という点につきましては、都道府県、市町村のウエイトが非常に大きくなっているということが特徴だと思うのです。こういった制度をなぜとっていたかということになりますと、明治以来の制度改革の流れがあるわけでありますが、明治憲法のときには、地方自治体がほとんどなかったわけですけれども、新しい憲法で地方自治制度ができたときに、暫定的に、そうはいいながら地方自治体がそれだけの行政能力がないのではないかというような考え方のもとに機関委任事務制度ができ、それをまた裏打ちするような税財政の仕組みができて、今日まで来ている。

こういう状況の中で、今、国際的にも、官主導、集権型の国であっても、民自立、分権型の社会構造へ移行している中で、我が国においてもそういう方向へ進むべきだということが、ここ10年来分権化の流れだと思うのです。

そして、まさにその中で、行政権限に関しては機関委任事務制度というものを、地方分権推進委員会のご努力で、今回、地方分権一括法で是正をされたわけですが、税財政の分野では、その部分がまだなされていない。そういった意味では、私はこの三位一体論といいますか、地方と国との税源の問題は、構造的な問題だと思うのです。

基礎小で議論されたように、国も地方も財源が足りないから、お互いにバランスをとるように努力することが先だという議論があったというふうにお聞きしましたけれども、私はその問題と構造的な国と地方の税源配分の問題は、次元が違う問題であるわけですから、これはこれでしっかり議論していただかないといけないのではないか。よく言われているように、国が税収では6、地方が4。それが歳出の面では国が4で地方が6になっている。この乖離が中央政府に対するコントロールの手段として使われているのではないか。また現にそういう実態があるわけでありますけれども、この部分を是正していかないと、先ほど言った行財政の構造的な問題の解決ができない。私はそのように思います。

そういった意味では、国民負担という点では、ニュートラルといいますか、増税でもない、減税でもない、国と地方の税収の帰属ということを、行政の責任分担に応じてそれに近づけていくという努力をしていく。そういうことが必要であるし、また、小泉総理もおっしゃっておられますことも、やはり地方について、自分たちの財源については、できるだけ地方が責任を持っていくというような仕組みを作っていくこと自体が、行政改革ということにもつながっていくし、税の痛みということに関する国民の責任という部分も醸成をしていくということになるのではないか。そういった意味でも、構造的な問題としてぜひご議論をいただきたい。このように思います。

石会長

ありがとうございました。どうぞ、松本さん。

松本委員

今、松浦市長のほうからここに出されているわけでございますが、町村関係でも、ちょっとばかり違うといいますか、考え方もあるのではないかというような感じがいたします。

実は、16ページに市町村の法定外税の推移関係が出ているのですが、やはり町村にとっては、課税自主権を与えられても、なかなかその客体関係がないということですね。何とか税をかけたいという気持ちはあるのですが、かけても大したことないということになるのではないかと思います。

それから、さっきも三位一体の話が出てまいったわけですが、税源移譲についてでありますが、今後、いわゆる三位一体改革の検討を進めるに当たりましては、常に地方分権改革推進という基本的な立場に立っていただいて、地方関係者も十分理解ができ、納得ができるような結論を出していただきたいというような感じを持っております。

また、国庫補助負担金の縮減・廃止に伴う整理・合理化が、単に国の負担軽減にとまることではなくて、地方への負担転嫁ももたらすようなものであってはいけないという感じを持っております。

また、必要とされる事務事業である限り、地方が引き続き実施する仕事については、税源移譲等により必要な財源が確保されるようにお願いしたいと思います。

また、特に町村の立場でちょっと申し上げたいと思うのですが、具体的に税源移譲の検討に当たりましては、町村が人口や、あるいは企業に働く従業員数とも少ないという町村の実情も考えていただきまして、配分基準の見直し、あるいは税収の偏在という問題についても、あわせて検討をお願いしたいと思います。

石会長

何か具体的なご注文はございますか。つまり、仮に税源を移せといったときに、町村の立場からいって、今おっしゃったようなことがまともに来ますよね。何がもらいたいですか。

松本委員

結局、今偏在があると思うんですよね。制度的な問題もあると思うのですが、やはり一般財源、地方交付税、そういうところの考え方があるのではないかというような気がいたします。

石会長

ただ、地方交付税を見直さなければいけないというのがずいぶん議論になっているわけであります。難しい問題ですね。

ほかによろしゅうございますか。どうぞ。

柳島委員

これは何度も議論になっているのですが、やはり分権化するには、受け皿をちゃんとしなければいけない。今3,300あるのですが、大体300ぐらいの単位にして、道州制を敷かないと、分権化してかえって人が増えてコストが増えたのでは意味がないと思います。

卑近な例で、例えば江東区は今マンションが建ちまして、業者に学校を建てるので協力金を納めろと言ってもめているらしいのですが、橋を一つ渡った中央区では、学校が閉校で、1学年1人だというんですね。橋一つ渡ってくれば廃校の学校があって、1学年1人だ2人だと築地のあたりで騒いでいて、隣りではラッシュで、業者から協力金をよこせと。こんなのは併合してしまえば何ていうことはないので、だからそういう権限というか、そういうことが地方で無駄というのが非常に多いのではないかというような気がしているのです。

だから、まずそういう無駄をなくして、それで交付税と補助金の一体処理というのをすることが望ましいと、このように考えます。

石会長

税源移譲を仮にするにしても、条件整備が必要だというご意見でしたね。

では、ぼつぼつ次に移ってよろしゅうございますか。

では、和田さん、最後にどうぞ。

和田委員

今すでにお話が出ましたけれども、受け皿を私たちが十分信頼に足るだけのものにしてほしいというのを、まず申し上げたいと思います。

いろいろな実態を見ていますと、私ども地方の団体があるものですから、その役員などが東京へ出てきましたときに、やはり地方分権でこれから頑張っていくんだという意気込みはあるんです。そのためにも事業として今まで国庫の補助をもらっていたものが、本当に必要かどうかということは、十分に考えた上で、もしやるのであれば、そこのところへきちんと税源の移譲ということを進めてほしいと。課税自主権というのは、それも大事だけれども、なかなかそれだけで済むような問題ではないのだということを、よく地方の会員が来ましたときに言っております。

そして、私たちの消費者としてのいろいろな消費者行政とかそういう面からいいますと、非常に各地方自治体は後退する一方なんです。詳しくは申し上げませんけれども、昨年、47の都道府県の消費者行政の予算とか、人の配置とか、消費者センターの数とか、そういうものを全部消費者団体で分担して調べたのですけれども、ご存じのように、相談件数は増える一方なんですけれども、それの受け皿は減る一方だということがはっきりと出ております。

大雑把に言うと、自治体の一般会計の予算が、前の5年間と比べたのですけれど、6.2%の減少にとどまっているのに、消費者行政予算というのは、17%減っているという実態が出ているんです。細かくはもう申し上げませんけれども、やはり本当の消費者、生活者の行政というものをきちんと見てほしいという声は非常に強く出ております。そういう条件をつけた上で、やはり私たちのこれからの生活というのは、地方分権というものは、もっと進めていく必要があると思います。

税金というのは、自分たちの身近なところで納めれば、その使い方、情報公開を求めて、どう使われているのかを見て、そして注文をつけていくということが一番望ましいやり方であって、そういう方向には向かってほしいということを申し上げておきます。

石会長

ありがとうございました。和田さんのおっしゃる信頼に足る受け皿の受け皿は、必ずしも市町村合併ではないんですね。もうちょっとベーシックないろいろな……。

和田委員

合併の場合もあり得ると思いますけれども、合併すればいいという問題でもないと思います。

石会長

わかりました。

猪瀬委員

一言ですけど、やはり基本的には数兆円規模で歳出削減ができるということが重要だということですよね。中央省庁のスリム化ということを当然考えなければいけないので、当たり前のことですけれども、やはりこれは……。

僕、この基礎小はこの日出ていなかったので、すみません。

石会長

わかりました。

これはなかなか仕分けしにくいですね。様々な角度から様々な問題が出ましたから、これからどういう形で話を収束させるか、基礎小でも課題になると思います。

今日はご意見を拝聴したという形で、国と地方の関係はこのままにさせていただきます。

環境問題を第3番目の問題としてちょっとご紹介しておきます。これは4月1日に中央環境審議会の会長の森嶌先生においでいただきまして、地球温暖化の問題の現状と課題という形で、大きな問題を取り扱いました。

環境税そのものというわけではなくて、温暖化の現状がどうか、あるいは京都議定書がどういう位置づけになっているか等々、前部分というか、本体と言うべきでしょうか、温暖化の現状について、いくつかのデータをお出しいただきました。

ご承知のように、京都議定書でいいますと、2008年から2012年の5年間に、1990年代のCO2廃止量の6%下げなければいけないんですね。その批准について、おそらく、アメリカは拒否していますが、ロシアが多分批准するだろうという前提で発効するのではないかということをおっしゃっていますが、これもなかなかわからない問題ですね。

いずれにいたしましても、2008年~2012年というのを最後の目標にすると、その前に2つ段階があって、ファーストステップ、セカンドステップがあるよという形で、どういう形で議論したらいいかということをお話しになりました。

ただ、私、環境税というような問題を税調に来てもっと熱っぽく語られるのではないかと思いましたが、極めてクールでありまして、いろいろな規制の手法とか自主的取組みとかがあるよと。それと同時に、新エネルギーというものに対して、技術開発等々もあることだし、助成措置を加えれば、かなり技術開発が生きてくるのではないか。これはCO2の削減につながるのではないかという点で、かなり強調されておりました。

国民から、あるいは企業から理解を得るために、環境税の議論というのは今勉強中であると。いついつ、どうだ、というような断定的なことについてのお話はなかったと記憶しております。

委員からいろいろ議論が出たのですが、そういう意味で環境税を本格的な議論に突入させるという環境にはないなという形で議論しましたものですから、環境税は環境省もしっかりすべきであるとか、あるいは税でなくて課徴金というような、そういう形のものも考えられるのではないかと。そういう意味で、環境税そのものの議論というのは、本格的に入る前の段階として、予備的な、あるいは準備的な議論をしたという程度だろうと思います。

いずれにいたしましても、地球温暖化問題の現状が、あるいは将来の課題がわかったという点については、収穫だったと思っています。

これについて別に資料等々のご説明するものは用意されておりませんが、何かこれについて、環境税の取組みなどについて、ご意見等々あればお伺いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

津田委員

今、会長がおっしゃられたように、環境税の問題は先日の中央環境審議会のお話を聞いても、まだ本当に前段階ですので、あまり税として具体的に議論する段階ではないと思うのですが、ただ、やはり環境税制として仕組みます際には、1つは課税による排出抑制効果、それとあと財源をどうするか。こういう2つの大きな流れがあるのですが、排出抑制効果としては、むしろ消費段階などの下流領域というものがわりに効くのではないか。そうすると、地方税の分野でもかなりこれは考えておく必要があるのではないか。現に軽油引取税がありますし、かつての電気税、ガス税などの問題等もあるわけですので、国税だけの問題としてでなく、地方税においてもやはり環境税制に関心を持っていかなければいけないのではないかということだと思います。

石会長

だんだん地方税のほうに話が行く傾向にありますが、それも1つの方法だと思います。

いずれにいたしましても、税調としても、中央環境審議会があまりやる気がないからどうかという、放っておいていい話ではない。いずれにしても、京都議定書の発効が日本にも義務づけられれば、2006年あたりに何か具体的な政策措置というのはおそらく打たないと、もうすでに1990年代で8%ぐらいCO2は高まっているんですよ。したがって、今後2008年~2012年平均までゼロでいったって、8%と6%を足すとマイナス14のCO2を削るというのは大変なんですね。そう簡単ではない。したがって、我々としても、この環境税の問題はいずれしかるべきところで議論しなければいけないと思っています。そのときは当然地方のほうも含めて全体的に議論すればいいと思っています。よろしゅうございますか。

次の問題はあまり時間は割かなかったのですけど、不良債権の問題につきまして、実は与党金融政策プロジェクトの話があったり、あるいは政府与党の協議会において塩川大臣の発言があって、政府税調で少し検討せいというような話があったりして、事情説明を受けまして、我々としてもしばらく時間を割いて検討はいたしました。

そこで、これはかなりテクニカルな話でございますので、まず道盛さんからどういうデータがあるかを簡単に説明いただきまして、そのあとで基礎小の問題をご紹介しましょうか。

では、道盛さん、お願いします。

道盛税制第二課長

それでは、お手元の資料「基礎小25-6」「資料(不良債権処理関係)」という資料に基づきましてご説明を申し上げます。

目次をおめくりいただきまして、1ページに平成15年度、昨年の11月に金融庁から税制改正要望が出されましたそのものをご紹介いたしております。金融機関の自己資本を強化するための税制措置として3つございまして、1点目が金融機関についての無税償却の拡大。2点目が金融機関についての欠損金の繰戻還付、これは凍結されてございますが、それを解除するとともに15年に延長する。3点目が、金融機関について欠損金の繰越控除期間5年を10年に延長するという3点についての要望がございました。減税見込額平年度で9兆5,000億円というものでございました。

これにつきましてはいろいろな問題がございまして、これが採用されるということはございませんでしたが、2ページ目をお開きいただきますと、14年11月の答申におきましては、不良債権処理は重要な課題であるということで、2行目以降でございますが、「繰延税金資産の取扱いをはじめとする諸課題に対し、金融行政、企業会計を含め全体として相互の関連を考慮しつつ検討しなければならない。その対応策の一環として、税制面の対応についても検討する必要がある。その際、課税の適正・公平の原則をはじめ、税務執行、企業全体に及ぼす影響等を踏まえねばならない」というふうにおまとめいただいたところでございます。

その後、一方、年末の与党の税制改正におきましては、引き続き検討ということになりまして、今年の3月になりまして、与党3党の金融政策プロジェクトチームが「緊急金融対応策」というものをとりまとめまして、その中で、この金融庁の要望にございました3項目につきまして、早急な検討をしてほしいということが盛り込まれまして、塩川大臣からも、政府の税制調査会において検討してもらうというようなご発言をなさっておられます。

この3点の要望につきましてでございますが、まず3ページに、無税償却基準の拡大につきましての資料を用意させていただいております。これは税法上の基準でございますけれども、我が国の税法上は直接償却という債権自体を減額する手法と、間接償却という、債権自体はそのまま置いておきますが、一方で貸倒引当金を積むという間接償却の手法と、両方が税制上認められております。

下のほうにそれぞれの判定基準が書いてございますが、直接償却につきましても、法律上の会社更生等の一定の事実に基づきます計上のほかに、事実上の貸倒損失として、企業の状況を見た上で判断をする実質基準のようなものがございます。また、間接償却、右の下にございますが、こちらにつきましても、一括評価という貸倒実績率を債権残高に掛けて一括計上する方法のほかに、個別評価をいたしまして、一部回収不能見込が立った場合には、その不能見込額を立てるという形で、実質的な判断基準というのがあるわけでございます。

したがいまして、法律上の倒産等に伴わなければ計上できないといったことは間違いでございますが、一方、こういう事実上の貸倒損失あるいは一部回収不能の個別の評価の計上につきまして、税務基準が金融行政と比べて厳しすぎるのではないかというご指摘もいただいているところでございます。

4ページ、5ページは、4ページが直接償却、5ページが間接償却につきましての制度を文章で示してございますので、省略をさせていただきます。

6ページをお開きいただきまして、この無税償却基準の問題でございます。企業間信用のイメージ図をお示ししてございますが、税務上の観点からは、やはり公平という観点を踏まえて検討をする必要があるということでございます。左にございますが、金融機関につきまして、同じ債務者に対しまして金融機関も貸していれば、その他の法人、一般的な様々な法人が債権を持っておられるわけでございます。金融行政上は、この左にございます金融機関の債権につきまして、金融システムの安定性を図るという観点から、なるべく債権の回収可能性を厳しく見積もるということで、厳しく厳しくやってきたというのが、この数年間の推移でございます。

ただ、一方、税務会計上考えますと、同じ債務者に対しまして、金融機関であれば無税で償却ができるが、その他の例えば中小企業であるとか、あるいはノンバンクや商社であるとか、こういったその他の法人が有税でしか償却できないということは、公平の面で非常に大きな問題があると考えられます。したがいまして、企業会計と税務会計、それぞれ目的とするところが別でございますので、それぞれの観点から考えていく必要があり、特に税務会計の面からは、公平の問題ということを抜きに考えることはできないのではないかと思われます。

7ページをお開きいただきますと、不良債権処理につきましては、これまでもいろいろな問題が指摘されてございまして、公平の問題に反しない範囲で様々な対応というのが何度かに分けて講じられてきております。

8ページはその事前相談の状況等をお示ししてございます。

9ページ目に、無税償却基準の拡大と、最近話題になっておりました繰延税金資産との関係の問題を1枚の表で整理をいたしております。よく繰延税金資産ができる原因が、金融行政上の基準と税務上の基準が合っていないことがゆえに出てきているので、これを合わせれば、現在の繰延税金資産がなくなるかのような議論が行われることがございますが、ここは必ずしもそうではないということをお示ししているものでございます。

上のほうで、現在、例えば有税償却を100億円ある銀行がいたといたしますと、その有税償却ということは、事柄の性質上、税務上は損金に入れることができないということになります。右のほうに矢印がございますが、そうはいっても将来損金が可能となった時点で、その時点での法人税を減少させることができるという意味で、いわば将来に向けて法人税を減少させる権利があるということで、それを資産と概念をいたしますのが繰延税金資産でございます。

現在、地方税を含めました実効税率が約40%ということでございますので、100億円有税償却をすれば、その実効税率を掛けた40億円が繰延税金資産として計上されるというのが現在の姿でございます。

下のほうにまいりまして、これが仮に無税償却基準が拡大されたといたしまして、損金算入ができるようになった場合にどうなるかということでございますが、黒字法人であれば、下のほうにまいりまして、法人税が現に減少いたしますので、キャッシュフローの増加となりますが、赤字法人、これは現在の銀行の場合は、残念ながらほとんどの銀行が赤字法人でございますが、損金が増えても所得がそもそもございませんので、税金が減るということがなく、むしろ欠損金が拡大するということになります。欠損金につきましても、将来繰越が5年間認められておりますので、同じように資産性があるという観点から、仮に100億円の無税償却をいたしますと、100億円欠損金が拡大し、その40%分の40億円を資産計上するという意味で、結局、有税償却をとっても無税償却をとっても、現在の金融機関の経営状況のもとで繰延税金資産を減らすことはできないという現実はございます。

10ページが2つ目の金融庁要望の内容でございまして、欠損金の繰戻しでございます。1にございますが、本来、制度上は1年間以内に払った税金の繰戻し還付を受けられるという制度でございますが、2にございますように、平成4年から不適用という措置になってございます。

この繰戻しにつきましても、(参考)の一番下にございますが、還付を受けるには、繰戻し年度に納税額があることが必要でございまして、銀行の場合は、ご承知のとおり、住専処理をして以来、ほとんど税金を払っておらない状況にございますので、1年ないし2年、これを還付したところで、そもそも、もともと払った税金がないということになります。そういう関係から、金融庁要望では、15年間の間に払った税金を戻してもらえれば、当然バブル時代が全部含まれますので、その間に払った税金を返してもらえるということになるわけでございます。

これにつきましては、15年間の払った税金という観点で見れば、もちろん銀行も払っておられましょうが、ほかにも、ゼネコンであろうが、あるいは流通業であろうが、バブル時代には巨額の納税をしていただいたわけでございまして、その中から銀行のみに繰戻し還付をすることが適切か、公平かどうかという大きな問題があると思われます。

また、上の参考のところにございますが、15年前の税金を返すということになりますと、15年前に払っていただいた税金が適正かどうかということが確認できる必要がございますが、その際には帳簿の保存等が必要でございまして、帳簿が今となってはおそらくどこのところも残っていないと思われますが、帳簿がなければ、その正しさすら検証することができないという問題がございます。

いずれにせよ、巨額の財政負担になる問題でもございますので、公的資金の投入是か非かという議論を、本来的にはきちんと正面からすべき問題ではなかろうかということでございました。

それから、11ページが欠損金の繰越し、これは将来の5年間の繰越し、これを10年に延長してほしいというものでございまして、これにつきましても、帳簿の保存期間あるいは納税額が間違っていた場合に更正決定が打てるという意味の除斥期間との整合性の問題が必要である。帳簿が残っていなければ、そもそも過去の欠損金が正しいかどうかの確認のしようもないという問題がございます。

12ページにまいりまして、この観点でよく指摘いただく問題で、アメリカやイギリスはこの欠損金の繰越期間が非常に長い。表の一番上を見ていただきますと、アメリカは20年、イギリス無期限といった非常に長い国があることは事実でございます。

ただ、この背景には税制のインフラストラクチャーといったような問題がございまして、一番下に立証責任という欄がございます。ある納税者の方の税金が正しいかどうか、経費が正しいかどうかということの立証責任がどちらにあるかという問題で、アメリカ、イギリスなどは納税者側に立証責任がある。つまり、納税者のほうで帳簿を全部準備をして、このとおり経費があるということを立証していただく必要がある。そういうインフラの国もある一方、日本やフランスのように税務署側がその立証責任を負っている国もございます。

そういう意味では、日本やフランスのように税務署側が立証責任を持っております国においては、そもそも税務署が税務調査にまいりましたときに、納税者の方のところに帳簿がなければ、そもそも調べることもできない。あるいは、納税者の方本人だけではなく、納税者の方の取引先、銀行だけではなく銀行の取引先の方にも帳簿が残っていなければ確認のしようもないという問題がございまして、日本やフランスの場合は、見ていただくとわかりますが、繰越期間、繰戻期間、いずれも帳簿の保存期間の中で認めさせていただいているという仕組みをとっているわけでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

長時間時間を取って議論したわけではございませんが、税で何かできないかという視点で、基礎小でもいろいろ議論を交わしたわけでありますが、所詮、税金を納めていないわけですから、納めていないのに税で何とかしようというのは非常に難しいんですね。そういう意味で、繰戻しも繰越しも、極端なことをやればまだしも、他の業種との関連において何かできるかとなると、非常に限られてきた。そういう意味では、やはり本筋は公的資金の投入というそっちのほうの議論が筋ではないかという議論、つまり公的資金がどうもやりにくい、金融機関等々の抵抗もあるのでしょう、そのかわりに税だという形でやられても、そう意味のある解は出てこないなというような印象だと思います。

ただ、無税償却の範囲というのを、もっと使い勝手をよくするような、そういう議論はあり得るのではないかという形で、引き続き検討という形になったというのが基礎問題小委員会の内実ではないかと思われます。

何かこれにつきまして、ご意見なりご要望等々ございますればどうぞ。

室町さん、よろしいですか。何かあれば。どうぞ。

室町特別委員

ご指摘の点は多分ほとんどがそのとおりでありますが、何となく聞いておりまして、悪者になっているような気がしますので、若干釈をさせていただければ。

そもそも話のスタートが、例えばBISの自己資本計算上、繰延税金資産を翌年の所得範囲内とか、あるいは自己資本の1割にすべきである。これを突然そうするのだと、こう言われますと、たちまち今の話で、じゃあすぐ公的資金を入れなければだめですねと、こうなるわけですね。だけど、それはあまり短絡的過ぎるのではないかなと。そこから話がスタートして、金融庁からこういう要望が出たわけですね。

繰延税金資産そのものの生い立ちというのは、皆さんもご存じのとおり、1998年ですか、金融再生プログラムの中で不良債権処理を加速すると。そのために無税償却をもっと弾力化すべきであるという議論があったと思います。それが、当時、財源の問題かどういうことかちょっとあれですが、いずれにしても、税効果会計を導入することによって、実効上やりやすいように制度を担保しようと、こういうことになったという理解でございます。したがいまして、今回、例えば税効果会計によって出てくる繰延税金資産の問題が議論されるのであれば、税制というのは一緒に議論しなければいけないだろう。無税償却範囲の弾力化というのは、そういうところから出てきている問題だと思うのです。

それから、銀行がずっと長くわたって非常に不良債権処理で苦しんでいるということは事実でありまして、そういう意味で所得がないのも事実であります。

実は、ではアメリカもそのようにすぐやるかというと、アメリカがルールを導入したのが1995年でございまして、それ以前はそういうものはなかった。それ以前は20年間にわたって実はアメリカは、所得の繰戻しを10年間認めてきたわけですね。もうちょっと正確に言いますと、1993年までは10年間繰戻しを持っている。これはその当時のアメリカの金融界の不況というものに対処するために、政策的に対応してきた。これは公平かどうか、いいか悪いか、それはちょっと私も申し上げられません。ただ、事実としてそういうことをやって、治まって、1年間余裕を見て、1995年にこのBISルールを厳格化するという制度を導入したわけですね。

だから、こういう歴史的なものを一応全部見て、その上で、確かに私も個人的にこのとおりできるとは思いません、正直言いまして。銀行もこういうことを直接要求していないと思います。むしろ銀行がやるのであれば、例えば繰越期間を延べろというのは、銀行だけではなくて、銀行だけ5年を10年にしろと言っているのではなくて、あらゆる産業界でも思い切った構造改革をやるとか、リストラをやるとか、我々の不良債権の裏にはやはり企業の再生があるわけですから、それをやるためには、そういう措置があってもいいのではないか。こういう意味で銀行は申し上げているのです。

金融庁は、そうはいっても目の前に先ほどの話があるわけですから、もうちょっとストレートに言った。ではないかと私は思うのですが。若干弁解じみて申しわけありません。

石会長

弁解ではなくて、裏のストーリーもお教えいただきまして……。

室町特別委員

おわかりいただければありがたいと思います。

石会長

この問題は引き続きまた検討していく問題だと思っていますので、また議論が煮詰まりましたら、総会でもご報告したいと思います。

それでは、実は金融小委員会も活動しておりますので、その内容につきましてまずご報告いただいて、事務局から資料説明という形にしたいと思います。

今日は奥野小委員長がご欠席でございますので、中里さん、委員長代理としまして、ちょっとご説明いただけますか。

中里特別委員

時間も押してきていますから、手短に済まさせていただきます。

4月15日の火曜日に金融小委員会を再開したわけですが、その前が平成13年の11月27日ということで、1年半ぶりでございました。

平成15年度の税制改正において、金融・証券税制は配当課税を中心に大きな見直しが行われましたけれども、今回の税制改正は、市場や政治の動向等を踏まえて行われた結果でございます。ただ、一方でその内容や意義について、理論的な側面からの検討も十分に行う必要があるだろうと、こういうことでございます。

さらに、金融資産性の所得に対する課税の一体化が、いろいろなところで今後の方向性として語られることが多いのですけれども、その意味内容について、やはり理論的にきちんと検証していくことが重要であろうということでございます。そこで、金融小委員会として、今後比較的中長期のタームを想定して、多岐にわたる論点について、じっくり議論を詰めていきたいというわけでございます。

4月15日の金融小委員会の模様ですが、まずはじめに15年度の税制改正の内容と日本の税制の現状、それから、ブッシュ大統領が提案しております米国の配当及び株式譲渡益課税の見直しの内容等について、事務局から説明をしていただきました。

次に、今後の議論のたたき台ということで、検討の視点について、事務局からこれも説明していただいたわけです。これは今日配っていただいてあります、最後のほうに1枚紙がございますが、これについての説明をいただきました。

その後、田近委員から、「資本所得課税の展開について」というプレゼンテーション、それから、私、中里から「経済理論とともに考慮すべき若干の法的視点について」というテーマでプレゼンテーションをいたしました。

田近委員のほうは、資本所得課税についての様々な歴史的な経緯とか論点について、整理していただいたということです。納税者側の節税の努力あるいは資本の国際的な移動等がございまして、総合課税に基づく資本所得課税が若干困難になってきている。それをいかに克服するかという点から、総合課税を強化していくという方法もあるでしょうし、ドラスティックには、資本所得課税を廃止するという、そんな方向での例えば支出税とかフラットタックスとかという考え方もあるかもしれません。あるいは、その中間としてCBIT(Comprehensive Business Income Tax)とか、あるいは、いわゆる北欧の二元的所得税とか、オランダのボックス課税とか、そういう点について、きれいに整理して説明していただきました。それから、税務執行についてもお話を多少いただいたわけです。

私のほうは、経済理論を田近先生のほうがお話しいただくということでしたから、法的視点だけ述べさせていただきました。資本所得課税のことを考えるときには、経済学の理論が基本となるのは当然のことでございますけれども、経済的な理論がいろいろな制約を受けることがあるということで、例えば憲法による制約というのもあるかもしれませんし、それから、執行上あるいは手続的な制約というのもある。したがって、経済的に望ましい税制改革がそういう制約のために理論的に実行できないというような場合があって、そういうのをクリアしながら税制改革を考えていかなければいけないという、そういうことを申し上げさせていただいたわけでございます。

そういうプレゼンテーションに対して、自由討議が行われました。そこでは例えば次のような意見が出たわけです。資産性所得と勤労性所得との課税のバランスについて、税額控除を導入して調整するといった考え方、あるいは資産性所得に定率の比例税率を課した場合、所得再分配において問題が生ずる可能性があるのではないか。勤労性所得は累進で、資産性所得は比例税率という場合に、所得再分配の問題が出てくるということ。それから、企業の資金調達の手段によって税制が異なるということが、租税回避行為や法人成りを招く一因となっているのではないかといったご意見。あるいは我が国で法人成りを招く誘因としては、むしろ給与所得控除や社会保険料控除など、個人所得段階での控除の大きさが挙げられるのではないかといった、そんな意見が出たわけですが、将来の方向性として、こういうものがいいとか、例えば二元的所得税がいいとか、そういうような議論は基本的には行われなかったわけでございます。

今後の具体的なスケジュール等について多少ありまして、5月に2回金融小委員会の開催を予定すると。5月16日と23日。

それから、金融に対する所得の捉え方についての様々な点と一緒に、納税者番号制度についても議論を行う予定であると。こういう理でございます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

では、時間も押してきておりますが、事務局のほうからちょっと用意した資料を説明していただきましょう。古谷さんと吉崎さん、国税、地方税分けて簡単にお願いします。

古谷税制第一課長

金融・証券税制関係の資料をお開きいただきたいと思います。横長の「金融小11-1」と右肩に書いてございます。簡単に補足で事実関係だけご覧をいただきます。

目次を飛ばしていただきまして1ページ、昨年の11月に答申をおまとめをいただいたときの金融・証券税制のパーツでございますが、簡素で安定した金融・証券税制ですとか、金融商品間の中立性の確保という観点から、下のほうにございますが、できる限り一体化する方向を目指すべきであるという答申をおまとめいただいております。

この「できる限り一体化する方向」というのを踏まえまして、15年度の改正をいたしたわけでございますが、ご承知のとおりの点でございますが、2ページだけご覧をいただきますと、将来の一体化に向けた措置ということと、投資家の利便の向上ということで、源泉徴収だけで納税を完了できる仕組みを導入しようということで、そこに「見直し措置I」とございますように、上場株式等の配当や譲渡益、あるいは公募株式投資信託の収益分配金について、利子並みの20%で源泉課税が完了する仕組みを基本に入れてございます。

その上で、右のほうにございますように、貯蓄から投資への対応を一層明確化するという政策要請がございまして、今後5年間は税率を10%に軽減をするということで、これは、これまで預貯金しかやってこなかったような一般の個人の方に、株式投資に向かっていただきたいという政策要請で、大幅に配当を中心に簡素化・軽減をした措置ということでございます。

それらについての細かい資料が3ページ以下についてございますが、大体ご承知のとおりの点でございますので、省略をさせていただきまして、ずっと飛んでいただいて、14ページをご覧いただきたいと思います。今後金融小委でご検討いただく課題の中心は、金融資産性所得の課税の一体化ということであろうかと思いますが、その観点から、先ほど所得税のところでもご覧いただいたフローチャートを、若干金融所得の観点から整理をしてございますけれども、日本の場合、あるいはそのあとについてございますG5諸国、基本的には総合累進課税なわけですけれども、資産性所得について、特に日本はやや分離課税という特別な仕組みが多用されてございます。

その中でちょっと事実関係だけ見ていただきますと、右のほうで資産性絡みのところに少し黒い影をつけてございますが、この中で譲渡収入というのを3つ箱で囲ってありますが、土地等の譲渡収入については、右のほうで見ていただきますように、累進税率ではなくて、比例税率で分離課税をしてございますが、これは損益通算のところに線がつながっております。土地については、譲渡益、譲渡損とも、他の所得と損益通算をした上で分離課税、比例税率ということでございます。

株式につきましては、損益通算のところをピョンと飛んでおりまして、他の所得との譲渡損が出ても、損益通算はしないで申告分離課税ということでございます。

その他の資産の譲渡収入というのがありますが、これは通常の計算で損益通算をした上、累進税率で最高50%の税率がかかるというものですが、例えばゴルフ会員権などは損益通算をしますが、50%の最高税率でかかるということでございまして、土地が軽減された比例税率ですが、損益通算をしておる。株式は軽減された比例税率で損益通算はないというのが日本の特徴でございます。

時間の関係で細かくは申し上げられませんが、15ページ以降、G5のそれぞれの姿が書いてございます。総合累進課税が原則でございますが、例えばアメリカなどは、譲渡収入については特別な扱いで、土地、株式、資産の区別をせずに、譲渡損が出ると一定の金額までしか損益通算はしないということになっております。

それから、19ページにいわゆる二元的所得税をとっている国としてフィンランドの例を書いてございますけれども、稼得所得、投資所得というふうに2つに分けて箱を計算してございます。ところが、下の譲渡益とか預金等の利子というのは、二元的所得税の国であるフィンランドでも、譲渡損の損益通算を投資所得との間で制限をするとか、それなりの配慮が行われているということで、やはりキャピタルゲインというのは、意図的に実現の時期が操作できるといったこともございまして、諸外国も含め、かなり租税回避といった点については、気を使っているようでございます。

そういう中で、20ページ、21ページは、株式の譲渡損失とその他の所得との損益通算、それから、株式以外の資産の譲渡損失とその他の所得との損益通算を、それぞれ図式的に比較してございます。株の譲渡損については、日本も諸外国も何らかの制限を設けておりますが、土地や建物の譲渡損失については、日本の場合には諸外国に比べると、若干損益通算面で融通がいいかなといったような比較ができようかと思います。

大変簡単ですが、以上でございます。

石会長

吉崎さん、お願いします。

吉崎市町村税課長

地方税におきます金融・証券税制でございます。資料は24ページをご覧いただきたいと存じます。

まず、利子所得でございますけれども、金融機関が納税義務者に代行しまして、その所在する都道府県に特別徴収で納めて課税関係を終了するという利子割が昭和62年以降設けられております。配当につきましては総合課税、そして、譲渡につきましては申告分離課税でございますけれども、特に一般投資家から、課税庁とかかわることなく課税関係を終了させたいという声が非常に強うございましたので、その利子の利子割をならいまして、配当、譲渡につきまして、配当割、譲渡所得割という新たな税制を設けまして、課税庁とかかわることなく課税関係を終了することもできるという制度を15年度改正で設けました。来年の1月から稼働するということで、現在準備を進めておるところでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。中里さんと事務局から資料説明を2つ受けまして、これも今日ここで結論というよりは、今後どういうことをやるかということについての問題の設定をしていただいたという捉え方でもいいかと思いますが、納番の話とか二元的所得税、これから本格的に議論していくと思います。今の段階で何かご質問なりご注文があればと思っていますが、よろしゅうございますか。

それでは、時間にもなりましたので、あと若干のご報告をしておきます。お手元の資料の最後のほうに、海外調査視察日程というのがついていると思いますが、北米と北欧に私も含めて2チーム出す予定でございます。大きなテーマは、今ご説明がありました証券税制等々の話と、それから、社会保障と税制という形で、どういうことを各国でやっているか、これを吸収してきて、またご説明したいと思います。

総会は一応今5月下旬、27日ごろを考えております。連休まで小委員会もございません。連休後に基礎問題小委員会を13日、16日、20日というふうなあたりで数回セットしまして、金融小は16日、23日と、この辺のあたりのことを27日の総会でご報告し、またご意見を賜りたいということでございます。

それから、5月20日に、先ほどちらっと申しましたが、社会保障審議会の委員の方々と意見を交換してきたいと思います。やはり外のほうの意見も聞いてこないといけないし、何をやっているか、情報も集めてこなければいけませんので、そういう意味で意見交換をしたいと考えております。

ちょうど25分でありまして、5分早くなりました。何か特にご発言等々ございますでしょうか。よろしゅうございますか。

では、長時間どうもありがとうございました。これにて散会いたしましょう。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。