第39回総会(3/18)後の石会長記者会見の模様

日時:平成15年3月18日(火)15:50~16:09

石会長

それでは、総会、39回目になりますが、終わりましたので、何をそこからくみ取って今後の議論に役立てようかという視点から説明いたしたいと思います。今日は女性委員からの発言も多くて、いろいろ議論をやりとりできたと思っています。

皆さん、いらっしゃっていたわけでございますから、内容的には解説する必要はないと思います。そこで、3つないし4つ、今日の議論を受けてどういうふうに話を持っていくかという視点からご説明をしたいと思います。

1つは、これから少子高齢化でありますから、所得税の世界で言うならば、控除を見直すという視点で言えば、退職金課税の見直しとか、あるいは公的年金等控除の見直しとか、いろいろやらなきゃいけない。これは、もろに高齢者に響くわけでありますから、やはり長期プランを練って、青写真を作って、経過措置も含めてやれというのはその通りだと思います。ただ、退職金課税をやるとか公的年金等控除を縮小するかという、まだ決めてませんから何とも言えませんが、こういう少子高齢化ということについて税制を議論する時には、タイムスパンを長くとって、しっかりした制度設計をしないと混乱が起きるというご指摘がありましたが、まさにその通りだと思っています。そういう形で議論を今後仕組んでいきたいというのが第1点であります。

それから、恐らくこれから少子高齢化という現象を、まともに受ける政府のレベルは地方自治体だと思います。特に市町村ですが、今日はそういう観点からご発言がございましたが、やはり地域の福祉サービスというものが軸になる。典型的なのは介護ですよね。そういう点からいきますと、供給サービスの機能をどう高めるかという視点もさることながら、財源、受益者負担も含めてどう仕組むかという点がやはり大きくなるだろうと考えております。そういう意味で、今日ご発言があった首長さんは、税源移譲のために申されたようでありますが、もうちょっと包括的な意味で、どういう形でコストをシェアするかという視点、これから議論しなければいけないというふうに考えております。

それから、まだ今日は最初でございますから、消費税の核心部分とか等々議論はしておりませんが、やはり少子高齢化のもとで、最後河野さんが言いましたけど、税制の役割というのはどこにあるかというのは押さえないとですね、何でもかんでも税制というわけにもいかんと思いますし、「北風と太陽」の話もございましたけれども、税でやるのがいいか、あるいは歳出でやるのがいいかという、そういうチョイスもございます。そういう意味で、この辺しっかり考えてみたいとは思っております。

そこで、恐らく、私は税源問題としてはどうしても消費税の問題を避けて通れない時期が来るし、それはいずれ中期答申でもある方向性を出したいと思っていますが、福祉目的税についてどうする、あるいは保険でやるか税でやるか、そういう点も消費税の是非に絡んでくるわけでありますから、それは少しじっくり腰を落ちつけまして、数カ月単位でこれから議論を深めていきたいと思っています。

今日は本格的な議論になりませんでしたけど、実は基礎年金の3分の1から2分の1という議論ですね、これが意外に外側の規制、外側の要因として重要だと私は個人的に考えております。それは、われわれとしては議論の中に取り込まなきゃいけないのかどうか。あるいは、社会保障制度審議会等々がどういうことを考えているのか。これは、外との連携を深めて、というご示唆もありましたけど、そういう点で議論をこれから深めていきたいと考えております。

非営利の法人課税につきましては、報告したところ、かなり各委員のご関心があって、質問がありましたけど、前回もご説明しました通り、今のところ仕切り直しという形で、これからNPOを抜き出してやるのか、将来的に一緒になれるのか、それを含めてこれから議論を深めていきたいというふうに考えております。

4月に入りましてからは少しスピードも上げて、週に2回やる週もあるかもしれません。基礎問題小委員会と同時に金融小委員会も具体的にスタートさせたいと思っています。それをやりますと、2回ぐらいやりますと総会に上げて、今日みたいなご審議をいただくという
ことになりますので、4月、5月、6月はかなりの頻度でやらざるを得ないと考えておりますし、中期答申のまとめに入れば、また起草といったような作業も別途やる時期が来ようかと思っています。そういう意味で、今日は第1回目の総会…第1回目というのは、1月17日
が第1回目でありますから、第2回目になりますが、フリーディスカッションとしては今日が第1回目、その内容につきましては、ある程度今後の方向性を示唆するような議論が展開されたというふうに考えております。

内容的には詳しく申し上げませんが、こういう形で今日の議論を受け止めて、今後の審議に向けていきたいと考えております。以上です。

記者

話の中で所得控除等ですね、その中の先ほどおっしゃった長期プランが必要という声が結構大きかったと思うんですけど、具体的に議論を持っていく場でどういうイメージでそういうのをとらえられたんでしょうか、先生は。

石会長

今年度、今年の議論としては、来年の税制改正にかけた配特と特定扶養控除の2つ上げて、特定扶養控除は残っておりますから、それをどうするかという議論は残りますが、少子高齢化と、あるいは社会保障と税制といった時には、どうしても社会保障絡みの所得控除、これがどうしても問題になってきますよね。具体的には、公的年金等控除の問題とか老齢者控除の問題とか、あるいは、いろいろ付加的にくっついているところの老親の介護の問題であるとか、あるいは生保控除とか、今日出しました「少子高齢化・社会保障に関わる税制調査会の主な考え方」の中に書いておきましたようなことを第二弾としては整理したいと思っています。

ただ、これはいずれも大きな所得項目でありますから、一挙にというのはなかなか難しいと思いますが、論点としては出して、一応その方向性は示唆したい。ただ、一挙に単年度でできるかどうか分かりませんが、それが第2弾としての今年の大きな問題だと思っています。

記者

非営利法人のほうなんですが、これもNPOはもう除外すべきだという声が議論の中で結構強かったと思うんですが、これはある程度そういう方向付けをして論議をワーキンググループは今後続けていくという…どうなんでしょうか、その方向付けは。

石会長

内閣官房のほうで、これからどういう形でまたボールを再度投げてくるか分かりませんけれども、自民党の最後の整理から言いますと、従来のように3つ固めてどうだという議論には多分ならないと思いますよね。とりわけNPO法人のところは別に、という議論が即出てくるのかなとは思っていますから。まあ、課税だけでもやったらという議論もありますから、そういう議論も頭に置きつつ、ちょっと来月まで待って、外側からどういう形で議論せいということか、もう一回眺めて議論したいと思います。われわれとしては、そんなここ1~2
カ月で何がなんでも明確な答えを出せというところまで切羽詰まっていると僕は全然考えておりませんので…。だって、例のNPO法は認定NPO法人を作って、少し課税を緩めてなんて、やったばかりですからね、それとの整合性から言うと、我々は我々独自の路線があると思いますから、そっちのほうを少し追求したいとも考えています。

記者

消費税の福祉目的税化することが是か非かの判断もしないといけないということですが、これは6月か7月にまとめる中期答申には、はっきりと是か非かの判断は盛り込まれるのでしょうか。

石会長

いや、まだ難しいと思います。というのは、平成12年、僕の前の加藤前会長の時の最終報告には、両論併記で書いてあるんですね。多数は、やはり福祉目的税化に対して疑問を投げかけているほうが多数派で、さはさりながら、完全に芽をつまないほうがいいだろうという趣旨で、少数派として認めると、そこに書いてあると思いますが、いずれにしても、そのままの形でずっといくというのはちょっと難しかろうと思います。この6月に断を下すということは時期尚早とは思いつつ、先ほど申し上げたように、基礎年金の時にもしか消費税が入ってくる、あるいはもっと先に、経済界からもああいう声が出ているということを踏まえてですね、議論する時には是か非か議論すると思いますが…。ただ、税調の大きな流れとして、私個人もそうなんですけど、やはり目的税というのには慎重になるべきだという税の議論があって、これがやはり根っこにあって、多数派を形成すると思います。ただ、私個人的には、今後消費税率アップが議論になった時には、所得税の減税で相殺するという従来のやり方が到底できませんからね、そうなると国民各層の、まあ対話集会でよく分かった話だけど、支払う税がはっきり使途が決まっていれば、それに対して必ずしも反対しないところもあったりしますから、これはまさに国民的論議だと思いますね。そういう意味で、7月、8月、もしか対話集会をやるなら、こういうものをテーマに議論を少ししてもらおうかということも考えておりますから、まだ今言った福祉目的税の決めはまだ数年先か、具体的には消費税率アップなどが具体的な視野に入った時の議論だと思っています。

記者

タイムスパンのことなんですが、所得控除とか社会保障にかかわる部分で、社会保障にかかわる所得控除でもいろいろありますよと。それをどれを優先していくのかということを何か年次的に示すようなイメージなのか、それとも、1つ例えば老年者控除でも何でもいいんです、公的年金等控除でもいいんですけど、それをただ1回でその目的を果たすのではなくて、何%かずつ分けて、少しずつ控除していくんだと。何年かけてその控除をなくしていくんだとか、そういうようなイメージなのか。これは、会長としてはどう考えていますか。

石会長

いや、全くそこはですね、今、決め打ち的には頭にはないんですよ。例えばですよ、配偶者特別控除の上乗せ部分を今度は一挙に解消という形の法案になっていますよね。あれとて私、ここで何回か申し上げたように、一挙にいくのかねということを申し上げた。ご記憶のある方いらっしゃると思いますが、やはり大物の控除を一挙にやるというのは大変な負担増になりますから。まして、今挙がっているだけの少子高齢化関係の所得控除も5つや6つあるでしょう、勘定していきますとね。退職金課税の是正まで含めるともっとあるかもしれない。ですから、その中で順序をつけるということは、いずれやらなきゃいけないと思いますし、具体的に何をやるかというふうになった時に、その経過措置的な配慮も具体的にしなきゃいけないという時期が来るかもしれません。そういう意味で、まだ当面中期答申で書き込むのは、それはどういう方向に持っていくかという程度で、具体策については年度改正の時何か言えるかどうかという段階ではないかと思います。そういう意味で、とりあえず焦点は少子高齢化絡みの控除であるというのは決まりましたが、詳細設計につきましては、これから本格的な議論に入りたいと思っています。そういう意味で、今の佐藤さんの質問に答えると、漠とした形になるのか、具体的に何%と刻んでいくか、いつまでにやるかということ自体、今のところ全く白紙の状態ですね。どうしたらいいでしょうかね、それはこれから総会も含め、基礎問題も含めて議論したいと思っています。

記者

先ほどの確認でもあるんですけれども、基礎年金のところ3分の1を2分の1という、すぐに、年末には迫ってくる課題と大きな制度設計みたいな話とですね、つまり社会保障審とか、外との連携というのを絡めて、年間どういうスケジュールでどういうふうに議論を進めていくことになるんでしょうか。

石会長

大体2分の1にいく、3分の1、2分の1のところの問題とか、その辺が非営利法人みたいに腰砕けになりかかっているところもあるので、われわれとしては、どういうところで相撲をとろうか、土俵をしっかり決めてもらいたいという気がするんですよ。それは恐らくどうだろう、夏開けぐらいには決まってくるのかなあ。(事務局に向かい)どうですか、君の感じでは。(笑い)まあ、夏休み以降に開かれてくるのかもしれないし、とりあえず我々として、大きな枠があって、その制度設計の中で、果たして消費税でやるのか他のものでやるのかいろいろあると思いますから、今の段階ではなかなかそこははっきりしたことは申し上げにくいですね。つまり、この間の非営利でつくづく分かったことは、何か外からものを投げてきても、筋のいいボールか暴投かというのは見極めないとやたらと時間だけ使いますから、今後慎重に対応したいと思っていますけどね。それに似たような話じゃないかと思います。

記者

だんだんあるべき税制の、所得控除の整理という方向性がはっきりしてきたと思うんですが、反面、多年度税収中立という枠組みを組んで15年度改正をやったと。今の議論は多分16年度以降の話になると思うんですが、減税を先行していくということで、経済にも配慮しながら組んでいったスキームというのが、またここで増(税)に効いてきた場合にもう一度考え直すとか、その辺の連関性はどういうふうに考えますか。

石会長

それは、多年度税収中立に踏み切ろうといった時には、十分われわれ議論しました。多年度税収中立というのは、後年度の税制論議を縛らないというのがわれわれの共通の了解でありますから、これ5年か6年、多年度税収中立でスキームを作りましたよね、これは走っているわけですね。それにオンする形で、例えば所得控除見直し等々が具体的に出てきていますね。それはそれでやるしかないだろうと。だから、多年度税収中立の中にもう一回新しいボールを放り込んで、ごちゃまぜにして再計算ということはやる気はありません。それは別ですね。ただ、それはまさに景気の話…、イラクの話がそういうふうに効いてくるとは思いませんけれども、長期的な中で議論する時には景気の動向も絡んできますから、それは別に考えています。

記者

地方自治体の話がありましたね、財源の話とか。国と地方の問題ですね、税源移譲の話とか、あそこら辺は、政府税調が6月までやるとか、そこら辺はどうなっていますか。

石会長

実は、諮問会議の、6月で出るであろう、「骨太第3弾」は、国と地方の関係をしっかりと書き込むと。三位一体でどこまでできるか分からないけど、僕は結論は出ないと思いますけどね。こういう方向でやれというぐらいはやってくれと、この間ちょっと竹中大臣に会いましたので、それはしかとお願いしておきました。それまた土俵の話でありまして、例えば税調の役割として地方交付税交付金の算定の仕方を変えるとか、あるいは、税源移譲ということが可能性あるのかないのかという具体的な話があって議論が成立するんだと思いますが、これまた土俵の問題で、まず諮問会議あたりである方向性を出すということが恐らく先決事項ではないかと考えています。ただ、われわれとしては、常々国と地方の関係は気にしております。特にわれわれ一番気にしているのは地方交付税が今のままでいいと誰も思っていませんので、そういう意味では、外枠で、恐らく諮問会議等々とある共通の方向で走り出せるということならば、議論は可能かと思っています。したがって、ちょっとまず6月ぐらいまでにわれわれが最初に先頭を切ってやるということではありませんが、相乗りできれば議論に参加したいし、具体的にやりたいと考えています。でも、いずれやらなきゃいかんでしょうな、この問題は。

かねがね言っているんですけどね、国と地方の関係というのは税調だけではできないんですね。地方分権改革推進委員会のほうの議論もあるし、地方制度調査会の議論もあるし、財政制度等審議会のほうもあるし、みんなおのおの自分のパーツ、パーツを持っていますから。私は、かねがね、竹中大臣も言っているんですけど、幾つか関係する審議会で具体的に新しい土俵を作ってやってもらわざるを得ないんじゃないかと言っているんですが、まだそれは具体的に場を作ってくれるまでいっていないので、これからそういうことにも少し配慮しながら呼びかけたいと思っています。

(以上)