総会(第38回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成15年1月17日(金)12:19~12:39
〇石会長
今年最初の税調総会を開きました。ご出席の方がいっぱいいらっしゃるので内容については触れませんが、今日の議論を受けて、今年どういう形で税調審議を進めるかというあたりの、私の感触なり印象なりをまず整理させていただきます。
年初来、奥田経団連会長の話に触発されたか、消費税論議が政界あるいは財界で非常に活発であります。それについては、まさに河野特別委員が冒頭指摘されましたように、われわれの受け止め方は、税制全般の中で、広い視野からその議論をしなきゃいけないと。全く同意見であり、これはもう税調の方は皆同意見だと思います。つまり、どういうことかと言いますと、年金の特定財源に役立てるとか、福祉目的税的な話にすぐもっていくということではなくて、所得税、法人税、その他諸々がある税制の中で消費税をどう位置付けるかという議論をしなければいかんと、私も個人的に思っております。そういう意味で、これから当然議論を起こしていきますが、広い視野から論点を整理しつつ、当然のこと、社会保障に資する税制というのは、考え方として当然あるわけですが、それが即目的税的に行くのではなくて、他のいろんな所得税、法人税、資産課税等々の改革の中でそういうことも考えたい。選択肢としていろんな、その目的税的な要素は残すにしても、大きな視野からやっていきたい。まあ、早速この辺の議論はしなければいけないと考えております。どういう形で進めるかはもう少し時間をかけ、基礎問題小委員会あたりで少しやり方を考えたいと考えています。
それから、今日、いろんなご議論があり、私も同感であったんですが、政府税調はこれしか議論できないというような限定的な問題設定、これでは、今われわれに課されている任務は当然耐え切れないと思っています。小泉首相が自らおっしゃっていましたように、歳出のカットこそ様々な形の税負担増に先行すべきだというのは、全く私、同意見でございます。
そういう意味で、何か新しい形の問題提起ができないかどうか、それは財政審とぶつかる場合もありましょう、それから、社会保険、あるいは社会保障の財源問題で言えば、当然のこと社会保障審議会と絡むでしょう。しかし、それは積極的にわれわれとしても球をつくり、投げたい、そういう感じでおりますので、あえてこれまでの住み分けにそれほど縛られずに、自由闊達に議論したいと思っています。それは、他の審議会についても同じことが言えるわけでありまして、税の問題、あるいは財源の問題、やはりいろいろな角度から向こうは向こうで議論してもらったらいいのでありまして、それは相互に財産を共有して議論を進めていけばいいと、このように考えております。
それから、恐らくですね、国と地方の問題、今日大分総理自らも問題を投げかけられましたし、片山総務大臣の議論もございましたし、委員の中からもございましたように、国と地方の問題というのは随分長いこと言われていまして、結局は何も進んでいないというのが現状ですよね。まあ、その言い訳として、いろんな多様なしがらみというか関連があって、一審議会だけではできないと。議論する場がないと、こういうことを言っておりますが、ある前提を置けばそれなりに議論というのが十分できるんじゃないかと思いますので、この辺の問題についても積極的に議論を展開していきたいと考えております。
それから、国民の合意を得るような、そういう税制改革はできないかという問題提起もございましたけど、これはまさに税調として考えていることでございます。できれば、またある機会を見つけて対話集会みたいなものをやり、特に今回は、社会保障であるとか年金であるとか、あるいは消費税、もっともっと身近なテーマが出てきますから、対話集会というのを通じまして、幾つかの視点を提起しつつ議論ができるのではないかと思います。
あと、時間が許せば、また資金的に許されれば、夏ぐらいに海外の調査もしてみたいと考えています。これからやるべき問題の中に幾つか海外の事情を見ておいたほうがいいと思うものがございますので、そういうものを少し積極的にやってみたいと思います。どんなものが主な議題になるかというのは、今日お配りいたしました資料の最後のページに付いてございますが、「少子・高齢化と税制」、これは既に年金税制の課題という形でも、今説明した通り大きなテーマになると思います。それから、第2の大きなテーマは「国と地方」でございまして、これもビッグイシューですね。それから、今ご説明しておりませんでしたけれども、金融資産性所得の一元化、あるいは総合課税化、これは今日総会では全然触れられておりませんですが、われわれとしても非常に大きな関心でございます。恐らく金融小委員会でやってもらうことになると思いますが、これは国会の開催中どこまでできるかですが、4月ぐらいから金融小委員会と考えていますが、そういう形で納税者番号制度も含めてこういう議論をしてもらおうと思っています。
それから、3月中にある程度方向を出さなきゃいけないのが、非営利法人課税の話でございまして、これは既に水野委員によってワーキンググループが開かれておりますから、これは2月、3月で固めて、それなりの方向を出したいと考えています。ここに書いてある「その他」は、今日も議論になりましたけれども、道路特定財源がらみの話としてわれわれとして取り上げるとすれば、やっぱり環境税、地球温暖化対策税、こういうような問題は、京都議定書の関連でそんなに先々へと延ばすわけにいかない事態が出てこようかと思いますので、できればですが、そういう形で議論したいと考えています。
具体的な段取りは、今日も何回か申し上げましたけど、この1月からスタートさせて、1、2、3ぐらいは基礎問題小委員会を中心に月1~2回、まあ2回できたらいいと思っていますが、それを受けて総会を開くという段取りで6月まで、あるいは7月までの報告書を整理するまでと思っています。俗に言われています中期答申というのは、年度改正でないという意味での中期答申、あるいは私などは基本答申のほうがいいかもしれないと思っていますが、そういうものは6月~7月の段階で整理して、できればそれでまとまったものがあれば、また夏の間対話集会みたいなものをやるのも一つの方法かと思っています。9月に税調の3年間の任期が切れまして、リシャッフルをしなければいけないということもございますので、スケジュールとしてはそういうことを考えています。
6月に盛り込むべき内容は、実は、端的に申し上げて、昨年の6月に基本方針というものを出しておりまして、ほぼ言いたいことはすべてあそこに尽きていると。で、方向性も出しておると。その第一弾として11月に出しました「平成15年度における税制改革についての答申」ですか、そこに盛り込んだものがもうスタートしているわけですから、それもかなり取り入れられたと考えております。そういう意味で、第二弾、第三弾、今日の首相の言葉を借りれば、残された問題をどうやってこれから議論していくかと。これが申し上げた少子高齢化と税制とか金融資産税制とか、あるいは国と地方の関係とか、いろいろございます。それを順次、11月までに整理していけば2004年度税制改正に、あるべき税制の姿の次のステップとしての改正に結び付く、そういう提案ができるんじゃないかと考えております。
概略、以上です。
〇記者
「少子高齢化と税制」なんですが、これは税調としては、まず当面年金課税…公的年金等控除とか、そうしたものを中心に議論をしていくということになるんでしょうか。
〇石会長
所得税の、課税ベースを広げる所得税の見直しの中で、当然のこと第二弾として考えているのは年金所得等控除、老齢者控除、それから退職所得控除みたいにいろいろ絡みがあるかもしれません。あるいは勤労学生控除もあるかもしれません。そういうことを含めて考えていきたいと。所得税の世界で、少子高齢化で残ったものは多々ありますので、それは当然のこと議論していきたいと思っています。
〇記者
すると、消費税というのはその中じゃなく…。
〇石会長
いえ、消費税も当然のこと、今後の少子高齢化社会の重要な財源であることは誰しも否定はしないわけでありますから、直接その目的税だとか特定財源というような切り口ではなくて、消費税というのはどのぐらいの改革をこれからやったらいいか。まあ、来年度第一弾として 3,000万円が 1,000万円になる免税点の改正とか、あるいは総額表示であるとか、あるいは簡易課税制度の適用限度が下がったとか、いろいろあったわけでありますが、まだ内部的にはいろいろ残っている問題もありますから、そういうものを踏まえつつやり、そして、年度末にどれだけのことが言えるか分かりませんが、少し将来展望ができるかどうか。それはこれからの議論次第だと思っています。消費税も当然のこと、これだけ周りのほうからも関心が高まっているし、国民的課題になりますから、議論は大いにしてくれという総理の言葉通り、取り上げたいと考えています。
〇記者
あと、国と地方の問題なんですが、会長先ほど、ある前提を置けば積極的に議論できるとおっしゃいましたが、それは具体的にどういうことですか。
〇石会長
三位一体論と言って、みんなその前提、つまり国庫支出金が削れないからどうだとか、地方交付税がどうだとか、議論を先に送っているわけですね、税源移譲の問題をする前に。ただ、議論としては、地方交付税はこれだけ財源を見直す、あるいは国庫支出金をこれだけ削るというような話を仮に実現したとして、その世界で財源移譲なり、あるいは今日、首相が言っておりましたけど、地方の独自の課税権の問題等々、議論は十分できると思いますのですね。それで、われわれの案が出た後で、その条件が、基礎条件が満ちていなければその時は見直せばいいだけの話でありまして、何か先送りはまずいと思っています。
〇記者
冒頭の発言でもありましたが、例えば社会保障で言えば給付の部分についても口を出していきたいと。財政の面で言うと歳出カットのところにも、塩川さんも私見として述べられていましたけれども、その部分を税調としてどれぐらいの踏み込み方をするのか。具体的に制度設計…ある制度についてここを改正すれば義務的経費の削減につながるというようなところまで踏み込まれるのかどうなのかという点をお伺いします。
〇石会長
これまで財政審の幹部の方々と税調幹部が集まって議論したとか、あるいは、地方分権改革推進会議の方とやったとかという、その情報交換というのは随分やってきたんですね。それで、お互いにどういうことを考えているかというところまでは詰める作業をしましたけれども、しかし、実際に議論を踏み込んでということまではやっていませんよね。それはある意味で、少し遠慮があったんだと思います。しかし、これから例の社会保障の税制だったらもろに年金の給付の問題、あるいは医療保険の給付の程度の問題等々まで絡んで、つまり、ファイナンスを考えるということは、給付の方もワンセットですから…。ただ、われわれとしては、専門家がいろいろ考えてくれているというのを尊重したいと思いますし、まずできたら、税調に来てもらって、向こうの担当官から一体年金給付のレベルをどう考えているのか、あるいは医療制度の改訂、特に老人医療制度の改訂をどう考えているかなどという情報をまず集めて議論しなきゃいけない。それから、今日、グラム・ラドマン法などという話も出ましたけれども、歳出カットの手法というのは財政審でやってますけど、それに対してわれわれが、こういう方法もあるんじゃないかという案が出れば、具体的に提言もしていきたいと思っています。
それから、厚生省のほうで、別に税でやるか保険でやるかという議論は、全部われわれ丸投げしないで、向こうは向こうで考えてくれということも言ってみたいと思うし、そこは前より踏み込んだ形で、具体的にわれわれとしては提言したいなと思っています。ボールは投げたいと思っています。
〇記者
今の関連でもう1点だけ追加でお聞きしますけれども、そういった総合的な議論を税調でしていきたいということは結構だと思うんですが、経済財政審問会議が一方で大所高所からいろんなことを議論していくという位置付けを与えられていて、ダブってくるのかなという印象も受けるんですけれども。
〇石会長
もう、いいんじゃないですか、ダブったって。小泉総理の言葉を使えば、競ってやればいいアイデアが出るということをさんざん言っていますし、これまである意味で自己抑制的に結構自分の縄張りを決めていましたけど、ある意味では諮問会議ができたということは、自由闊達にどんどん、言葉は悪いけど他の領域に入り込んでやったっていいという話でもありますから、自己限定的にやるとどうしても議論が矮小化されますから、大きな視点から議論したほうがいいと思っていますから、それについて諮問会議のほうから全然僕はクレームはついてこないと思いますよ。
〇記者
消費税関連で2つ。今年初めてということなので、改めて会長の見解を伺いたいんですけれども、消費税の増税は必要なのかということと、それから、消費税のことについて答申で最後どういう書き込み方ができるのかと。小泉さんがああいう強い縛りをかけている中で、また去年と同じような「将来の引き上げが必要だ」程度しかいかないんじゃないか。ちょっと想像がつかないんですけども、どこまで踏み込むことが可能なのかどうか。この2つ。
〇石会長
そうですね。昨年の基本方針ではっきり、将来の消費税引き上げは避けられないということをわれわれは書いています。それも、むしろ先進国並みだと。2ケタだと書いておりますから、公の立場としてはっきりもの申しているのは事実であります。
そこで、今後の議論の仕方として、小泉総理が盛んにおっしゃっているように、条件整備がなきゃだめだよという、その条件整備もわれわれちょっと口を出したいと思っていますが、将来的に、いつの段階で、いついつから何%上げろと。例の経団連みたいな形のことをわれわれとしてはっきり言えるかどうか。最終的にはあくまでやはりこれは政治家が判断すべき、あるいは内閣が判断すべき問題だとも思っています。その辺の引き上げはもう、われわれは必要だ、避けられないと言っています。引き上げに当たっての条件整備、これは2つあって、歳出面みたいなこと、それから年金給付みたいなこと、いろいろあるけど、もっと1つは消費税の中身自体でね、俗に言われる益税みたいなこと、インボイスみたいなこともまだ残っていますからね、そういうことをまずやることが先でしょう。
そこで、12月まで議論をしますが、9月にまた税調の委員の交代があったりして、それでも機関としてはConsistentで議論しなきゃいけないと思います。河野特別委員が今日いみじくも冒頭言っていましたけど、年度改正の時に、いつまでの時期でどれだけ上げられるかというのが言えるかどうかということを彼、おっしゃっていましたが、まあ、それは今の段階で言えるとも言えないとも言えないので、それを目指して頑張るということでしょう。しかし、期間と幅、これについてはこれから一層議論しなきゃいけないと思っています。
〇記者
そうなると、現時点では私見ということになるんでしょうけれども、会長自身、消費税アップは必要なのかどうかと。
〇石会長
いや、だからそれはもう税調として機関決定していますから、当然必要ですよ。それはもう明らかじゃないですか。何度も言っていることだから。それは否定もしないし、去年の段階で言っているわけですよ。だから、お聞きになりたいのは、どれぐらいの幅で、いつだということでしょう。今年の年末にそれが言えるか。あるいは小泉総理のああいう強い意向の中でいけるかということでしょう。それについては、みんなの議論を固めてと思いますが、首相があれだけ条件整備ができなきゃいけないとおっしゃっているのを超えてね、いついつまでにやるとはちょっと言いにくいとは思いますよ。言えないと思いますよ、それはね。
僕はね、やっぱり消費税というのは、そう簡単に事は進まないと思っています。大平さんの1979年の一般消費税で議論、それから、中曾根さんの俗に言われる「ウソつき発言」に絡む売上税騒動、それから、竹下さんの89年の消費税導入、僕はあれつぶさに全部体験して見ていますから、そう今みたいな、やれやれという機運が出たとしても、簡単にいかないですよ、それは。そういう意味で慎重にいろんな角度から議論し、かつ対話を重ねつつと言うしかないと思っていますので、そう簡単にある方向を出しても、砂上の楼閣になっちゃうなという感じはしています。だから、慎重にやりたいと思いますが、基本問題としては、あくまで将来的に上げざるを得ない。そのやり方、そのスピード、その条件、いろいろ考えてみたいと思います。何か小泉総理的発言になっちゃったな(笑)。
〇記者
去年、例の経済の活性化との関係で、その視点が足りないという議論がありましたが、それで経済情勢は依然、今年は去年よりもまたちょっと厳しくなる。当然、経済活性化という声が出てくるであろうとは思われますが、またまた大規模な減税をするわけにもいかないと。そうなると、税制からの経済活性化というのは、今年の審議ではどういう点があれになるんでしょうか。
〇石会長
何ぶんにも先行減税で1兆何ぼという形でね、もう既に4月からスタートするわけでね。まだ制度も始まってない、それから制度が1年目のものにまた新たなスキームで乗せるということは難しいでしょう。そういう意味では、4月からスタートした先行減税の中身を議論しつつですね。それから、またいつの日かどうか分かりませんが、活性化に役立つための例えば法人実効税率引き下げ問題とか、それはわれわれとしても十分な議論をしておかなきゃいけないと思いますし、すぐいつやるかというわけではなくて、メニューとして議論をしたいと思っています。
ただ、おっしゃるように、活性化という議論がある傍ら、今日もありましたように82兆円の歳出のうち42兆円しか税収がないという、これはまた大問題ですよね。そういう問題に対応するためにどういうことをしたらいいかという、そういう議論もあわせてしなければいけませんから、活性化の問題と財政の健全化の問題と2本立て、両立で考えなきゃいけないでしょう。しかし、活性化については先行減税という仕組みを入れて、5年では終わらなくて6~7年かかるのかもしれませんが、それがスタートしたので、そっちはそっちでとりあえず一つ宿題に対しては答えていると、このように思っています。ただ、経済の情勢いかんでまた新しい問題が出るかもしれませんが、それに対してまたさらなる減税上積み等々はかなり厳しかろうと思っています。
(以上)