総会(第37回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成14年11月19日(火)16:33~17:06

石会長

今日の総会で、このお手元に配っております答申と、それから主な意見という2つのセットをご承認いただきまして、今小泉さんの方に渡してまいりました。10分ぐらい、15分あったかな、短い会話でございましたけれども、この答申に沿って来年度税制改革をやりたいとはっきりおっしゃっていただいていましたし、それから今年の方式ですね。つまり、1月ごろ、総理から、あるべき税制を考えてくれというようなご下問をいただいて、11月、例年より1カ月早いんですが、総理に渡すというようなやり方もですね、1つの考え方として来年もやってはどうかなと私考えておりますので、その点についてお願いしてまいりました。1月に総理に来てもらって、総会で問題意識を述べてもらう。恐らく来年は、社会保障と税の問題、国と地方の税源配分の問題等々山積みになっているかと思います。

ちょっと先走りいたしましたが、今日のこの答申について、もう既に内容は事務局からご説明があったと思いますので、私は会長としてどういう視点でまとめ、どこに問題点を感じているか、あるいはどういう点を強調したいかということを4つ、5つ、まとめてご説明を
したいと思います。

今年1月、総理から予断なく、予見なく、聖域なく議論してくれというお話があったわけで、我々のキャッチフレーズは「あるべき税制」というのをもとに、10年、15年先の税制のあり方を議論してきたわけであります。ところが、6月以降、短期的な視点からの税制の対応というのも大きな問題になってまいりました。一言で言うと、経済活性化に資する税制ということでしょうか。それとの兼ね合いもあって、9月以降は短期的な対応もその議論の中に入れてまいりました。

しかし、あくまで我々の基本は、あるべき税制という姿から短期の、言うなれば対応も考えようという形でありますので、そこの軸足はずっとぶれてこなかったと思います。つまり、バブル崩壊以降のいろんな税制改革を見ていますと、足元の景気の要請が強くて、とりあえず減税して、あとはどうにかなるよという形で来たと思っております。景気をよくして、自然増収で減税財源を賄えばいいよというようなたぐいの議論が横行したと思いますが、今回我々のとった手法はそうではなくて、やっぱりこれだけ財政赤字も累積してきたし、あるい
は少子・高齢化の到来も目前になってきた以上、国民の負担ということを軸足に置いた税制のあるべき姿論を言って、そこから足元を見つめようというやり方が正しいのではないかと。そういう意味で、そこは我々の一番言いたかったところであり、そういう視点が今日お出しいたしました答申、平成15年度の税制改革につながっている答申であり、それは税制のあるべき姿論の中から描いたということでございます。

そこで、サマリーとしては2ページに書いてございます、(1)から(8)までの、これはもう既にこの間お渡ししたと思いますが、増税と減税の組み合わせ、これははっきりどっちの方向でやるということは書いてございます。あえてこれに2つつけ加えるとすれば、その連結付加税の是非をめぐる議論が、これまで決着がついていませんので、本論に入れました。それから、もう1つ目は、恐らく不良債権、金融機関の不良債権処理と税制の問題でしょう。これはどちらかというと税収の云々の問題ではございませんので入れてございませんが、いずれにいたしましても、この8つの項目の組み合わせで、今あります先行減税、そして後年度増税といった多年度税収中立、これをしっかりとやってくれということを今日首相にも申し上げてきたわけでありまして、先行減税というのは、文字どおり先行減税だけで終わってしまうような議論も最近出てきておりますが、我々としてはしっかり後年度の方の税源手当まで考えた形で処理してくれとここに書き込んでございます。

それはですね、後からも触れますが、対話集会等々を通じてわかってきたことは、国民の中にも財政のサステナビリティー、持続可能性について非常な不安と心配を持っているという意見が出ていることから、減税の、財源の目的なく闇雲に大規模な減税をやるという時期ではなくなったと判断しております。特に、若い世代の反発が大規模な減税に対して大きいというのは、財政赤字でありますと将来の負担は若者に来ます。そういう意味で、第1点はあるべき税制の視点から、来年度税制改革も短期的な対応としてつくったと。

それから、2つ目は、これまた幾つか議論を呼んでおるんですが、政府の審議会としての機能・役割ということについて、税調は伝統的に、「あるべき」というのは今年使った言葉ですけど、長い目で見て青写真を描く、あるいはグランドデザインをするという形で来てお
りますから、主要な論点を整理し、政策的にパッケージとして政策的にとり得る選択肢を出して、あとは政治的な決断でいろいろ増税とか減税とかやってもらうと。これは政府税調としてかれこれ創設以来この方針をとってきておりますので、今回もその方針を踏襲いたしました。まして今年は答申の提出が1カ月早いわけでありますから、これから本格的な増減税のパッケージ等々の議論が積み上がっている中で、我々は土俵をつくったという形で基礎的な作業を終えたということが政府の審議会の役割ではないか。何分にも国民の付託を受けているわけでございませんから、増税という極めて国民の方々に負担を強いるようなやり方は、恐らく政治的な決断でやるのが筋であろうと思っています。

と同時に、政府税調の主張をはっきりさせるために、その両論併記を極力廃しまして、ほとんどないといっていいぐらいにしました。あと、「答申に盛り込まれていない主な意見」の方でその遺漏についてはまとめたという形の、6月にやった方式と同じ方式をとっており
ます。そういう意味で、すっきりした形になってきたなというふうには思っています。これが第2点であります。

第3点は、今のことに関連しますが、1カ月早く例年より答申したというところがですね、今年の我々の政府税調の年度答申の特色ではないかと思います。私、政府税調に関係いたしまして、かれこれ10数年、20年近くたつかもしれませんが、絶えず思っていたことはですね、政府税調が党税調と競って、租特の期限切れのものをどうするかとか、あるいはささいなといってはなんですが、かなり細かい点にまで触れて増税・減税を考えても、何か大きな視点からの税制改革論議がいつも年度末にない。それで、私は、税調の役割としては、中長期的なあり方論をやるのが政府税調だから、昨年の今ごろも確か申したと思いますが、年度改正を党税調と同じ時期に行うのはですね、極力避けたい。そういう意味で、事務局にもかなり無理を申しまして、今年は1カ月早めてもらって、そういう意味では結果としてこれからどうなるかわかりませんけれども、土俵を設定して、今後の税制改正の議論に役立てるというスタイル、これが今年の基本的な税調の役割ではなかったかと考えています。

それから、最後に、例年にない手法として、12回やりました対話集会、この成果は我々としては非常に大きいものであったと考えています。これが第4点です。対話集会でいろいろ集めました、あるいは意見を交わしました成果、これが政府税調の議論のベースになっており、財産になったと考えております。 2,000ぐらいの回答を、サンプル 2,000ぐらいで、各地区でのばらつきもそうなく、それなりに国民の各層の意見を酌み上げられたと思っています。参加人数とか、平日にやったとか、いろいろご批判はあるにしても、2,000でほぼ同じような方向が出れば、それなりの成果ではないかと思っています。

そこで受けた1つの印象的なことは、やはり将来のビジョンをしっかり書いて、老後の不安が少ない、あるいは払った税金がちゃんと使われる、むだ遣いされていない、それから年金とか医療とか介護についてもしっかりした制度的な保障があるということならば、国民負
担増はやぶさかではないというような、そういう声がやはり大層を占めてきたということは、ここ10年、あるいは15年来の税制改革の論議については、新しい側面ではないかと思います。とりわけ、若者集会などについてわかりましたことは、消費税に対する感覚がね、私どもの世代と違ってきたなという印象を受けています。といって、すぐさま消費税アップということではなくて、将来の社会保障、あるいはそういうものについての財源としては十分に消費税というものが候補になり得る素地が、昔と違って特段に出てきたと。これはもうひとえに、若者が今ヨーロッパ等々を旅行して、20%、25%の付加価値税を払って帰ってきていますから、そういうような背景があるというふうに理解してもいいのかなと考えております。

以上4点、私の感じましたことを申し上げました。

そこで、お読みいただくとおわかりいただけると思いますが、何かどっちにでもとれるという箇所が1カ所、ないし2カ所ございます。これは連結付加税のところ。それからたばこ税の所ですかね。まあ、そんなところでしょうか。ほかはすっきりお読みいただけると思いますし、私の個人的な希望もあって、「見直し」という言葉を極力使わないようにしました。「見直し」というのはプラスの方に見直すのか、マイナスの方で見直すかわからない言葉ですからね、これは制度を見直すということはなっていいんですけれども、税負担を見直すと
いう言い方は極めて不適当であると思い、極力それをわかるような形の見直し論を展開したはずであります。

あとの方の今後のことはですね、これでとりあえず出しましたので、あと党税調なり諮問会議なり、その他さまざまなところで行われます税制論議を見ていきたいと思いますが、税調としてしかるべき意見を、やはり物申さなきゃいけないときには会長談話という形でそこ
に対してコメントする、あるいはみんなの意見を集約して何か言うということをしたいと考えております。

年明けから、先ほど冒頭申し上げましたように、総会を開きつつ、幾つかの小委員会も開いて、本格的な次なるステップの議論を始めたいと考えています。先ほど申し上げたような社会保障と税の問題、地方と国の問題もありますし、それと同時にあるべき税制の姿を具体化していく第2段階、第3段階のステップ・バイ・ステップの議論も必要でしょう。それから、2010年、プライマリーバランスということを具現化しようというような形も諮問会議で言っておりますから、いずれ多年度税収中立の時期が過ぎれば本格的にその議論になる、そういう準備をしなきゃいけないし、あるいは多年度税収中立というフレームをそこに置いてもですね、横に置いても、新しい仕掛け、新しい税の議論というのはできると我々は考えておりますから、それはたしか3ページの下ぐらいに書いてございますが、そういうことを考え、来年度も早々から議論を起こしたいということを事務局にお願いしてありますので、それも踏まえて今日総理にお願いしてまいりました。というようなことを考えております。

概略、以上です。

記者

今日の総理とお会いしたときの総理からの言葉というか、そのやりとりはどういうものがあったのか紹介していただけますか。

石会長

幾つか印象的なことはあったかと思いますが、これだけ早目に議論してくれたことについて、税調の意見を多とするという形ですね。このことと、それから答申をお出しいただいたので、これをベースにして来年度税制改正をしっかりやりたいということですね。その2点
と、それから個別の税で幾つか感想めいたことがありますが、それはお話しするほどの話ではないと思います。同時に、我々、6月、今度来るべき6月には中期答申を出したいということもお話ししまして、そういう意味で1月早々から議論しなきゃいけないのかなというこ
ともちゃんと申し上げておきました。そんなところでしょうかね。

記者

1年を振り返って、税制改正の決定のプロセスについてなんですけれども、今年諮問会議が税制の議論に加わってきたと。いろいろと摩擦もあったような感じもするんですけれども、来年に向けて、政府税調の改選時期にも当たるということですけれども、組織的にもどうなのかとか、あるいはあり方はどうかという点について…。

石会長

そこは非常に問題意識を持っています。諮問会議が税制改革の方でさまざまなことを言うということについては、プラス・マイナス両方あると思いますが、結果的にはすみ分けようという当初の方法を完全に守れなかったわけだ。例えば、向こうが基本設計でこっちが詳細設計だというようなことがありましてやりましたけれども、ただ一部の具体的な実施の方法について差はあっても、全体のグランドデザインという意味においてはですね、私は諮問会議、あるいは政府税調は異なっていないと思います。一部というのは、法人税の負担減を実効税率引き下げでやるか、研究開発でやるかというあたりでございます。それは余り大きな問題じゃない。マスコミの方々にも取り上げていただいたという意味もあって、「中立」か「活力」かなんていう話も踏まえて、極めて活発な議論をご紹介いただいたという意味では、非常にメリットがあったと思っています。

それから、はっきりしてきたことは、政府税調はもう税制改革論議をする独占的媒体じゃないんですね。恐らく20年前、30年前だと、政府税調1つがしかるべき政府の諮問機関で、そこで大体まとめましたことは自民党1党独裁のもとで、国会ですんなり無修正で行ったなんていう時代もございましたけれども、今は税制改革論議の、言うなれば主要な論点を整理して、幾つかの選択肢を整理してというような本格的な専門家的な議論、これをする場にしなきゃいけないと考えています。それがないとですね、恐らく諮問会議あたりとのやりとりのときに、どうも多数の意見をごちゃごちゃにしてきたような意見だけ出したらだめだと。そういう意味ですっきりした答申をしたかったと思います。

ただ、あえてもう1つ、よき要素という意味で申し上げると、やっぱり国民各層、特に納税者の代表としての国民各層の代表が入っているということ、これまた重要なんですね。単に学者、研究者だけでつくってくるということではなくて、その辺のバランスをこれから、来年、税調の組織変更がありますから、どうするかということはちょっとこれから時間をかけて、上野会長代理あたりと相談しながら決めていきたいと考えています。

記者

今回の答申で、所得税を基幹税としてとらえた部分を評価するというところが特徴的だと思うんですけれども、そこで個人に対して増税をしていくということで、消費を逆に冷やすんではないかというような声もこれにあるんですが、でも、とはいえ、政府税調としてはこれが将来の財政規律を保つというところで安心感を与えて活性化に資すると、その理由というところは…。

石会長

それは、来年度から即ですね、どのぐらいの規模で増税やるか、本格的にやるかという議論に絡んでくる話だと思っています。つまり、減税の方は多分静々粛々とタイミングよくできるんでしょう。問題は、多年度税収中立をいつの時点で、どのぐらいの規模で始めるかというのはこれからの議論であって、恐らくあるべき税制というのを描いた以上は、あるべき税制の実現に向けて増収なり増税を今後考えるというストーリーになってくる、その時期的にはね、これが来年度すぐやるのか、あるいは今後の景気いかんでそれがわからないという点も不明確でありますけれども、その辺はすぐ所得税をばんと上げて、消費を冷やすといったようなことをすぐやるんじゃないかという点については、これからの今言った景気動向を見定めて慎重に考えなきゃいけないと思っています。

記者

先ほどの総理とのやりとりで、個別の税制で感想めいたこととおっしゃっいたんですけれども、しつこいようですけれども、これはどういうようなことだったんでしょうか。

石会長

議論の終わりの方ですから、幾つか議論があってですね、何だったかな、内税と外税なんていうことも言ったかな。それから、ちょっと余り記憶にないんだな。内税、外税で、例の自動販売機を統一されたのかななんていう話もしたし、あとは所得税、法人税については、
特段これといった印象に残る話もなかったかなと思いますが、やっぱり基本的な姿勢、あるいはやり方、プロセス等々が主として問題になったというふうに思います。

記者

たばこ税なんですけれども、先ほど触れられていましたが、酒税の方に比べると大義名分が非常に曖昧だと。こういう決着をした背景と、それでも必要だということなんでしょうけれども、その辺の…。

石会長

私、両論併記を排除してすっきり書いたと大手を振って言いましたけれども、実は2つぐらい、3つと言うべきか、2つかな、やっぱり例外があります。その1つが連結付加税のところ。これを読んでいただくと、どっちに転がってもいいように書いてあります。これはある意味では、2つに議論が割れてね、これ以上に書きようがなかったというのが1つ。それから、たばこ税のところはそのとおりです。いろいろ言っているけど、税率の是非を検討するという段でトーンダウンします。ただ、その前に、近年、世界の動向はたばこ税を上げているよなんていうところから踏まえていえば、是非はね、ニュアンスあるけど、僕はこういう書き方が一番嫌いなんだけれども、もっとストレートに書いた方がいいと思うんだけどね、いかんせんやっぱりいろんな人いますからね。たばこ喫う人、喫わない飲まない人いるじゃないですか、ここにも。そういう意味でまとめ切らなかったという意味で、その辺はこれ以上は無理だと判断いたしました。確かに、酒税の方ははっきりしています。これはもう6月の段階、加藤寛さんの時代から書いてある大体基本的な論調なんです、酒税の方は。それで、たばこ税の方がそれについていけなかったというところだと思いますけれどもね。そういう意味で、やや値上げの方向に近いようなトーンですけれども、まだはっきりしていませんね。そこの2つかな。

あえて言えば、あとは道路特定財源をはっきり一般財源とは書いてございますが、暫定税率のところは読めないと。これはある意味ではしようがないなという感じで書いたんですけれどもね。その辺が心残りといえば心残りですかね、個人的には。

記者

1カ月早い答申なんですが、1カ月早めることによってどんなメリットがあった、何ができたかというところを。

石会長

2つあると思いますが、1つは従来の党税調と同じレベルでの細かい年度改正、期切れ法案的なものに首を突っ込まなくてよかった。それは、政府税調として本来の守備範囲ではないと私は考えを持っていましたから、それが1つ。

それから、もう1つはね、先行したということの多分メリットだと思いますが、今回、あるべき税制、プラスそこから見た短期的な対応というような形で、しっかりした土俵、フレーム、これを作ったと思います。そういう意味で、今後、各機関でさまざまな議論があろうかと思いますが、少なくともこの土俵に乗ってね、議論は展開してもらえるんじゃないかというふうに希望していますし、仮にこの土俵を余り採用しないのは、またこれに対して自分の土俵をつくんなきゃいけない。というのは、これは多分政府税調以外にはなかなかできない仕事だと思っていますので、そこは若干なりとも自負をしております。以上2点です。

記者

関連で、この先政治プロセスに入っていくわけですが、会長はかねがね役割分担というのを強調してこられましたけれども、自分たちの手を離れた先に対してどんな期待、どんな思いを持ってこの先見ていかれるかという。

石会長

思いはね、この2ページに書いてある8項目ありますね。これは我々としてはある質的なプロポーザルかもしれないけれども、一応答申という形で出したわけでありますから、これについてですね、しかとした組み合わせ、パッケージをつくってもらって、増税・減税の多年度税収中立のパッケージをしっかり出してもらうということだと思いますね。そこで、ある意味ではね、これかなりフレキシブルなフリーハンドをそのパッケージをつくる人に与えているんですよ。このやり方によっては、減税規模を拡大することも可能ですよ。そのかわり、増税規模も膨らむかもしれない。そういう意味で、これからこれがどういう仕上がりをし、これにどういう数字が加わってくるか、これは注意深く見ていきたいと考えていますね。

記者

9ページの消費税のところなんですが、表現なんですけれども、「今後、その役割を高めていかざるを得ない」という表現なんですが、これはどうして「税率を引き上げていかざるを得ない」という表現にならなかったんでしょうか。

石会長

税率引き上げは、6月の段階でしかと書いてあると思います。そこで、これ来年度税制改革ですからね。来年の税制改革のパッケージに消費税率は入っていないんですよ。そういう意味です。今後と書いてございますように、主役だけど、まだ後の方の主役であると、こういう意味ですね。

記者

特に消費税を意識した問題意識なんですけれども、今回の答申を見る限り、10年、15年先の税制改革の全体的な設計図がこれで言い尽くせたとはとても言えない…。

石会長

と思いますよ。

記者

と思うんですけれども、今回、この答申の意味づけ、意義づけというんですか、それと、第一歩ということなんでしょうけれども、会長自身満足しているのかどうか、その辺。

石会長

満足というのはかなり主観的な話だから。ただね、これだけのフレームをつくったということは、まさに税調の委員の人のご努力の賜物だということで、おっしゃる意味は、もっとクリアカットな税率であるとか、数字であるとか、期間だというのが入らなかったということだと思います。と同時に、優先度がついていないということだと思いますよね。これはね、今の段階では私は無理だと思っています。というのは、ここに書いてあります8項目、特に所得税の課税ベース拡大のところに2つしか入っていない。で、我々が挙げたのはもっともっといっぱいあるわけですよね。そういう意味で、いろんな政治情勢等々あることも踏まえて、これから第2段階、第3段階としてステップ・バイ・ステップで次なるものを組んでいこうと思いますから、とりあえず時間もなかったということもありますが、これはある意味では最初の最重要課題は一応くっつけたものです。それから心残りといえば、私はもう6月とか5月の段階では、来年度で増減税一体でいいかと思ったんですが、景気の情勢もあるし、先行減税の要請も強いしという意味で、これはこれでもうしようがないと思っていますから、問題は、それをどうやってパッケージして、仕組んでもらえるかというところであります。

と同時に、今の段階で10年、15年先のすべての青写真を書くというのは不可能ですよ。仮にそれがいいかどうかわからない、今の段階で。僕は、基本的な方向を示すだけで今は満足すべきじゃないかと思っています。それらわからないですよ、これから何が起こるか。ただ、方向としては、これははっきりしてきたでしょう。所得税にしても、消費税にしても、法人税にしても。あるいは、資産課税にしても。そういう点で評価していただけたらと思います。

記者

今回を第一歩とすると、この税制改正じゃなくて、改革の議論というのは何年ぐらい続くと思われますか。何年ぐらいやれば出てくるんだろうかと。

石会長

それはエンドレスに続くんじゃないですか、改革というのは。毎年毎年新しい問題も出てくるしね、それから恐らく10年、15年先になった我々が言っているやつがどのぐらい実現されているかというと、僕は 100%実現されていると思っていないから、半分超えればいいん
じゃないかとぐらい思っていますよ。そういう意味で、大げさなことを言えば、私が何年税調会長をやるかわからないけれども、その間は絶えず改正の積み重ねになるんじゃないかと思いますけどね。それは、年度改正というような区切りでやる場合と、それからそれを越えて大きな目でね、例えば恐らく、まだいつの段階かわかりませんけれども、所得税を基幹税にしたい、消費税も基幹税にしたいという組み合わせから出てくる、その大きな流れを再度強調するようなことがあるかもしれないし、それと同時に、法人税はやっぱり国際的に下げていくという方向になればまた議論しなきゃいけないし、それから資産課税もあるでしょう。さまざまな問題がこれからどんどん出てくると思いますから、その場その場でタイミングよく、タイムリーに議論するしかないと考えています。そういう意味では、今回ここまでみんなの協力をもってまとめてもらったということは、合格点でいいんじゃないかとは思っています。まあ、ひとえに今の景気情勢で、税制改革の流れ、方向も時間的にかなり選択の幅が縮められて、難しい問題だと思っていますね。大手を振ってあるべき税制の姿を最前面に出して議論できる時期が早く来てもらったらいいと思いますけれども、これはいつになりますやら。

記者

タイトルなんですけれども、「15年度における税制改革」となっていますよね。

石会長

そうなんだよね。それで本文の方は「改正」になっているんだよ。それでね、ちょっとはたと気がついてさ、統一をとればよかったと思っているんだけど、これはいつこうして作っちゃったんだっけ。「改革」になっているんだよ。つまり、従来のパターンはね、年度改正は「改正」で使っているんだよ、ね。それで、長いロングレンジのときには「改革」といっているんだよ。今にして思えば、ちょっとはたと。僕は表紙までチェックしていないからね、内容はチェックしているけどね。ちょっとね、言う前に言おうかと思っていたんだけれども、先越されたな。どうしようかな、やっぱり「改革」なんだろうな。もう小泉さんに渡しちゃったもんな。だから、あえて言えば、このパッケージはあるべき姿をベースにしていますから、やっぱり「改革」なんだよ。それで、中身の中の来年どうするこうするは「改正」なんですな。苦しいね。まあ、いいじゃない、そこは。おっしゃるとおり。

ただ、「改正」というと、いかにも縮こまった印象を与えるから、あえて今から後知恵的にいうなら、この「改革」も勇ましくていいんじゃないですか。済みません。

事務局

少なくとも例の6月にまとめた「あるべき税制の構築に向けた基本方針」の短期的なやつはこの中でほぼ網羅されていると思うんですね。

石会長

思いますよ。

事務局

そういう意味では、あくまでもあれは税制改革なんであって、どういう表題をつけようが、多分皆様方にも批判を受けているように、増税も、増収も相当入り込んだ改正になっているわけで、どう実現できるかどうかというのはいろいろこれからの政治プロセスですけれども、かなり多分これがある程度もしできたとすると、相当大きな話だと私は思いますね。少なくとも所得税について、今までのベクトルと全く逆のベクトルが書かれているというのは初めてなんじゃないですかね。

それから、消費税についても、この益税の話というのは、多分アンタッチャブルで、免税点の話というのはずっといじれないで来ている話ですよね。

それから、どうあれかわかりませんけれども、瀧野さんが言っていただくべきでしょうけれども、外形課税の話もそうだと思いますね。ですから、それはどういうふうにできるかどうかわかりませんけれども、それは私は拝見している限り、私も表題まで云々というのは恥
ずかしながら申しわけないんですが、明らかに僕は税制改革だと思いますけれどもね。歴史的に後の方が振り返ったら、多分そう思われると思いますよ。税率だけがすべてじゃ、僕は税制というのはないと思いますけどね。

石会長

瀧野さん、せっかくだから、こっちから出たから何か、外形も含めて何か…。

事務局

地方税についても、今までの流れとは随分変わってきているというふうに我々も思っております。税調でもいろいろ基本的な議論をしていただきました。改正、改革と、そういう言葉は別といたしまして、やはり今後あるべき税制をにらんだ年度改正に取り組んでいくんだ
ということになってきておることは事実でありますけれども、我々としても今までの流れに単に流されるんではなくて、きちんと会長おっしゃられますように、あるべき税制をにらんだ中で毎年の改正に取り組んでいくというスタンスで行きたいというふうに思っております。

石会長

上野さんもお願いします。

上野会長代理

座って何も言わないというのもつらいものですから、一言しゃべらせていただきますけれども、先ほど会長も言っておられましたように、今回、前回の基本方針のところもそうですけれども、会長のご意思がしっかりと反映をされた結論になっていると。両論併記というのをできるだけ避けて、方向を明確に打ち出すというものができたという点、これは私は評価をしております。

それからもう1つ、大武さんのお話がございましたが、やはり財政というものを考えて、税の歳入の方を考えた税制改革というものをやらなきゃいけないと。そういう意味で、全体を見渡した提言ができたという点は非常にやはり意味のある答申じゃなかろうかというふう
に思っています。

石会長

どうもありがとうございました。上野さんにはいつも助けていただいていまして、よきコンビだろうと自画自賛しています。

(以上)