総会(第35回)後の石会長記者会見の模様
日時:平成14年11月05日(火)15:30~15:52
〇石会長
それでは、総会、今答申素案をまとめておりますので、皆さんに資料をお渡しすることはできません。みんな回収しました。ただ、不良債権については、別なコーナーというか、別な時間を作りまして議論いたしましたので、その点は今からご報告をいたします。
先に段取りを申し上げますと、もう1回総会、来週の15日(金)に最後の総会をやりたいと思っています。そこで一応対立する意見もある方向に収束すれば一任を頂いて、その次の週に上げたいと考えています。その前に、起草会合をもう1回開きまして、今日やりました案件を整理して、15日の最終の段階の総会に出す準備をしたいと、このように考えています。
資料がないのでご説明しにくいんですが、恐らく皆さんのご関心のあると思われる、あるいは私自身もまとめるに当たって大変だなと思っている問題を3つ、4つ上げてみたいと思います。
1つは、お手元にございます不良債権、金融機関の不良債権処理と税制の問題でございまして、その資料ももう一度見て、それからこの間出ました例の改革に向けての何とかというのがありましたよね。それから、金融再生プログラム。改革加速のための総合対応策と金融再生プログラムも一応手元に置きまして、事務局から再度説明を聞きました。そこで出てきた結論は、端的に申しますと、税制だけ今飛び出て何か措置はできないだろうと。慎重にあるべきであると。その慎重にあるべきだという理由は幾つかございますが、そもそも今回の不良債権処理は、税効果会計の問題から出てくる過少資本の問題もあって、それが今どうも姿が見えない。そういう段階で税が取り組んだらいいか。つまり、直接償却から間接償却、間接償却から直接償却へ行くのかわからないし、そのことがわからない段階で税はなかなか設計しにくい。それから、もう1つは、やっぱり金融だけで不良債権処理の税制を仕組んでも、金融だけでとどめられるかと。やっぱり一般の事業会社等々にも絡む。特に不良債権は商社も、あるいはノンバンクも絡んでくるわけでありますから、それとの関係で言うなら、やっぱり慎重に議論しなきゃいけないんじゃないかという、恐らく2点があったと思います。
それ以外に、実態論として、税金を払っている金融機関はほとんどないわけですから、そこに税の繰り越しとか、繰り延べとか、あるいは無税償却とかを措置しても、実態面での影響はないんじゃないかと。ただ、制度をやっているときに実態面で効果はないんじゃないかと封じるのはちょっとと思いますが、いずれにしても、そういう点から金融庁が出されました3点セット、つまり無税償却の基準を改める、繰戻しをもう1回復活させる、あるいは欠損金の繰越しを5年以上にするといったところにつきましては、これから引き続き検討したいと思いますし、全体のパッケージの中で税制というよりも、決してふたをするわけではなくて、その辺の議論は今後一緒に取り組んでいきたいというのが今日の結論でありました。そういうトーンで書くつもりでおります。したがって、何十行にもわたるというところまでいかなくて、現下の情勢の中でどういうふうに我々は対応するかという基本姿勢に多分ならざるを得ないと考えています。
それから、連結付加税、これは前から経済界の方のご発言もございましたし、基礎小の中でもございまして、今日はそれをまた集中的に議論いたしましたが、賛否相半ばするような状況でありまして、今日の段階ではどういう形で書くかということは非常に難しいという印象を受けました。ただ、今、税務当局が、税当局が 4,500社ぐらいにアンケート調査しておりまして、連結納税の採用と連結付加税の関係、そういうところで今情報を集めておりますので、それの結果を見ながらこれから判断していきたいと考えています。
それから、例の揮発油税等の暫定税率のところでございますが、本来的には道路特定、道路を造るためにその暫定税率を払っているんだから、やっぱり理屈の世界で言うならば、一旦暫定をやめ、それを環境税に振り替えるなら筋が通る。しかし現在の道路と暫定税率の関係からいってそれは無理だろう。一回組みかえるというのならいいですけど、その時期も熟していないという意味で、今回環境への配慮も含めて、暫定税率はしばらく置かざるを得ないだろうという判断に立っております。
それと同時に、元来我々が議論しております揮発油税等の一般財源化を踏まえての見直しという議論について、やはり一部の方々からは道路というものの重要性はまだまだ衰えていないんだから、はっきりその辺も書いた議論をしてくれということがございまして、これもまた連結付加税同様、これから少し文案を考えつつ、最終的な集約に持っていきたいと考えています。
基本的に、6月の基本方針同様に、両論併記はしないつもりでおりまして、答申に含まれなかった主な意見という形で、さまざまな意見を後で、俗に言われます反対意見、あるいは少数意見になるかもしれませんが、そういうものを後の方で紹介しつつ、主文の方、本文の方ではすっきりした形にしたいと今考えております。大体、A4版で15ページから20ページ、その20ページの中には補論も入っておりますが、それぐらいの分量にまとめて、コンパクトな形で我々の考えを述べたいと、このように考えております。
そういう意味で、先行減税のパッケージにおのずから入ってくる、あるいは後年度増税におのずから入ってくるパッケージについての項目は当然上がってきますし、それから来年度すぐやるべきものと、後年度、つまり後で議論するべき問題というのは読めばわかるような格好にしておきたいと思います。そういう意味では、抜本税制改革の第1弾として我々の議論が役に立つだろうというふうに考えております。
概略、以上でございます。
〇記者
先ほどの金融庁の金融再生プログラムにかかわる税制なんですけれども、これは無税償却とか欠損金の繰戻しに関しては、これは15年度の改正では念頭に置いていなくてということでよろしいんでしょうか。
〇石会長
我々としてですね、まだ現段階において即断できない、決定できないという理由が一番大きいと思います。つまり、金融庁からは、税の部分に対してはストレートに、極めて要望事項として明確に出てきているんですけれども、自分でやるべきところは何かふやふやしているんだよね。そういう意味で、本体が明らかでない中で、税との絡みがもうひとつわからない。つまり、税効果会計をどうするのかというものを含めてね、引当金をどうするのかも含めてね。だから、そこを見つめながらやりますので、だからさっき申し上げたように、税だ
けばばばっと金融庁の要望みたいな3事項を検討するということができるかどうかをちょっと今苦慮しているところで、それは慎重に対処したい。いずれ全体が統一されてくると思っています。
〇記者
今度の総会で意見を集約するということで、若干対立する意見もそこで集約していくというふうに先ほどおっしゃっていたんですけれども、今意見が若干割れているというものとしてはどういったものがあるんでしょうか。
〇石会長
今申し上げた、連結付加のところ、それから暫定税率の書きっぷりあたりが一番大きいですかね。あとはもう基本方針のところで大分書き込んだものがそのまま方向は出ておりますから、あと酒・たばこのところで、引上げ派と、今の消費動向を踏まえて困るという派と、そのあたりが割れているかなと思います。そんなところですかね。思ったより、我々の提案した問題に対してですね、基本的な方向は今日支持が多かったので、15日までの修文については、予想したよりは比較的楽かなと思っています。今言った懸案事項はありますけどね。
〇記者
金融再生プログラムと同時に出た総合デフレ対策についてなんですけれども、ここで投資減税等々いろいろあるんですけれども、土地の税制と中小企業税制について、中小企業については活力ある経営基盤を強化すると、土地税制に関しては土地の有効利用を図るというような税制ということなんですけれども、これについてはどういうふうに修文するんでしょうか。
〇石会長
中小企業税制については、前から申し上げているように、同族会社の留保金課税を見直すということと、それから研究開発投資、設備投資減税も入っていたかな、中小企業が特にかんでいる場合には、その辺の税額控除の割増しをするとかいう点で配慮ができるようになってくると思います。
それから、土地税制等々は、かねてここでも議論になっておりますように、登録免許税の問題とか、不動産取得税の問題とか等々ではっきり軽減の方向を打ち出すぐらいのことは書けるかなと思っています。
あと、生前贈与等々のところで、住宅取得について特にどういう形で書くか、つまり例の総合対応策に住宅も出ておりますから、その書き振りは今考えておりますが、いずれにいたしましても、現行の贈与税で 110万円を5年にまとめてという 550万円の制度がありますから、それを今度の生前贈与のスキームの中にどう盛り込んで、どう調整するかという議論は多分残るんだと思うんですね。その辺はこれから少し整理していくということになっていくと思います。
〇記者
土地の関係で、土地の保有税の方はですね、それは…。
〇石会長
不動産取得税ではなくて、例の特別土地保有税ですか、あれも一応書き込みます。ただ、その書き込み方がどういう書き方になるかというところで、はっきりマスコミにはもう廃止しちゃうなんていうことを書いたところもあったようでありますが、そこまでは多分書くというところまではいかないと思いますが、一応問題意識としては持っておりますから、頭出しはそういう予定です。
〇記者
今の土地の税金に関して、14年度改正では軽減しても流動化には余りつながらないというふうな答申であったと思うんですけれども、今回、軽減という形で打ち出すんでしたら、理由のその整合性というのはどういうふうにということになるんでしょうか。
〇石会長
まだ、土地がね、どれだけ役に立つかということについては、あくまでそう大手を広げてやるかというと、恐らく基礎問題小委員会の人を含めて、税調全体としてはかなり懐疑的なものもあると思いますよ。明らかにバブル期以前に土地税制は戻っているということは我々認識として持っていますからね。ただ、これだけデフレ要因が強まって、税に対してデフレ対策という関心が高まった以上、何らかの形で答える必要があるというならば、いわゆる研究開発、設備投資以外にね、やっぱり土地のところであろうという形で今度は議論しているわけですから、整合性云々のところでは、やっぱりデフレ状況、外界の状況なり、デフレ対策の一環としてという視点がやっぱり入ってこざるを得ないと思いますね。
〇記者
土地譲渡益課税については触れないと。
〇石会長
26%を20%にですか。そこのところは今のところ触れるつもりはありません。ただ、これからの議論で、ただそれについて我々問題意識まだ共有していませんのでね、そういう強い見直し論者は今のところ我々のところで意見述べておりませんし、そこは落ち着いているかなと思っていますけどね。だって、39%から26%まで下げてきたわけですから。さらにということについてはどうかと思っています。
〇記者
取得税に関しては…。
〇石会長
不動産取得税ですか。これは下げるという方向になると思います。
〇記者
保有税も下げると?
〇石会長
特別土地保有税? 特別土地保有税は、いろんな形で納税者の負担減を図りたいというのは、納税手続も含めてね、そういう段階で僕等の、はっきり書けるところと、その辺はトータルで軽減を図るという書き方になっているところと幾つかありますから、特別土地保有税はトータルの面で軽減を図りたいというスタイルになっているのが現状ですね、どうも。
〇記者
まだはっきりしない?
〇石会長
まあ、そうでしょう。
〇記者
道路特定財源についてなんですけれども、揮発油税について、来年度からの一般財源化みたいなものが答申の中で方向が…。
〇石会長
僕らはね、加藤前会長時代以来から一般財源化しろということを繰り返し言っておりますので、その看板は下げるつもりはございませんし、はっきり書いてあります。ただ、暫定税率というのは、たまたま来年度税制改正にぶつかっちゃったもんですから、恐らく今日もご意見がありましたけれども、暫定税率をやめてね、それをほかの税に振り替える、環境税なら環境税というのがあるんでしょう。ただ、暫定税率を今やめられるかということになりますとね、これはだれも皆さん思うように、これは難しかろうと思っているんですよ。したがって、当分の間、次の見直しぐらいまでは保持せざるを得ないかなという、そういう判断が背後にあって、現状維持ということが暫定税率にある。ただ、長い目で見てというか、余り長くては困るんだけど、一般財源化ということはやっていきたいと思っていますから、暫定税込みでやるのか、本体プラス暫定のところの一般財源化なのか、暫定を外して暫定をいずれ一般財源なのか、あるいは本体がいいのか、この辺はまだ詰まっていないんですよ。政治的な問題もあるから。
〇記者
暫定税率の一般財源化…。
〇石会長
暫定税率は、今度は残せと言わざるを得ないと腹くくったんですよ。ただ、トータルな意味でね、揮発油税は本則プラス暫定の中で、やっぱりこれは一般財源化が筋であろうとかねがね言っていることはそのまま言い続けるつもりでいます。
〇記者
それは、将来ではなくて、来年度についての。
〇石会長
将来。来年度は、だって暫定をしようがないと認めて本体というわけにいかんでしょう。やっぱりやるなら暫定からでしょう、それは。その暫定は、今政治的な配慮もあってね、どう見てもそうはしようがないかなという気にはなっているということでしょうね、書き振りとしては。
〇記者
細かい話ですが、付加税の問題で、今アンケートをなさっていると。結果を見て判断ということなんですが、これはこの中に取り込むおつもりなのでしょうか。
〇石会長
今日、賛成派も反対派ももっと情報が欲しいと。したがって、たまたま今事務当局がそういう形でかなり手広く連結納税、今 100社か 200社ですか、と思われていますよね。したがって、連結納税に踏み切らないでいる等々というのを聞いたときにね、連結付加税の話、これがどのぐらい絡んでくるかと、今見てからでも遅くないだろうと。だから、賛成は、つまりもうやめちゃえという派はストレートに連結納税を入れておいて、付加税なんてブレーキとアクセスでけしからんという議論、これはもう明確ね。もう1つ、せっかく入れて、2年という約束を入れておいて、1年ぐらいでやめるのはこれは法制度的にどうかねという、それは法制度上の理屈がありますね。ですけど、今言ったように、適応の対象者のビヘイビア、これがどうなるかというのを見きわめる時間はあるだろうと。現に、最後ぐらいまでには間に合うと思いますから、その議論は少しこれからやりたいと思っていますが、どっちへ転がるか、どう書くかは、両方今同じ意見が出ていますから、もう少しこれ起草会合でも議論し、次回の総会でとりあえず議論をもう少し交わしたいと思います。現段階では未定ということですね。
〇記者
15日までに結果が出てきて、それを踏まえて15日にやると。
〇石会長
15日に間に合うようにしたいと思いますけど、今日はまだね、10日ぐらいありますからね、何とかなるかもしれません。
〇記者
暫定税率の話なんですが、今の段階では明確な方向性をということでありましたが…。
〇石会長
暫定は整合性がないだろうと判断しているんだよ。
〇記者
基本的な方針は定まってるけれども、この時点でどうかということですけれども、いろいろな配慮があってということですが、それは税収の問題なのか、それとも道路の…。
〇石会長
やっぱり我々は、特定財源、そもそも特定財源は道路以外にも極めて批判的でありますから、財政の硬直化も招きますしね、やっぱり税というのは一般財源が筋であろうということは一貫しておりますから、その位置づけとし、つまり道路の事情は昔と変わったろうという問題を今もって持っていますから、当然、もう優先度が落ちたからいいんじゃないのという議論もかなりあるわけです。ところが、それに対して、地方からご出席の首長さんあたりは、地元の状況などをとくとくと訴えられていますから、それはそれでまだ議論があるということでしょうね。
〇記者
2つなんですけれども、1つは、増減税のパッケージで来年度やるもの、後年度やるものを読めばわかるようにするということで1点確認なんですが、例えば配偶者特別控除なり、消費税の益税解消の問題なり、部分的にやるにせよ来年度やるということを読めばわかるようにするのか、ということが1点。要するに、先行減税だから増税は後でいいよという話ではなくてやっぱり来年度やるのかというのが1つと、もう1つは、さっきの住宅取得のところで、生前贈与一体化の中でどう書き込むかというお話をされていましたが、政府のデフレ対策で1項目、与党の要請で別途入りましたよね。今度の答申では、それは別途の書き振りになる、別項目になるのか、生前贈与、相続・贈与一体化の中の一環として書かれるのか、どういうふうになるんでしょうか。
〇石会長
前段の増減税のパッケージの話は、今回は一応2003年度税制改革に対する基本的な方針という形で出すわけですね。そこで、減税の項目、増税の項目、8つか9つ一応上がってきますよね。そこで読めば、プラスかマイナスかということはわかるようには当然書きますね。問題は、減の方は来年度からやるのは明らかでしょうけど、増の方がね、どの項目が来年頭出しをして、あるいは2年目になるのか、3年目になるかという、そういう仕分けはしていません。できないと思います、まだ我々としてはね。したがって、ひょっとしたら来年増税項目というのはないのかもしれないし、あるとすればどれかねというところまではちょっと、いろんな政治的な判断もあるでしょうから、これはまさにパッケージを組む政治的な判断にゆだねざるを得ないと思っていますから、そこは前段のことで申せば、すぐわかるようには書けません。書いていません。
それから、例の住宅取得が今度の総合対応策に入り込んできたことを踏まえて、550万円のところですね、つまり昔からある贈与税の世界で 550万円、つまり 110万円×5年分、少ないから 2,000万円にしろ、3,000万円にしろという議論がございますね。その昔からある既存税制の中で単に広げればいいとは考えていません。ただし、その 550万円が残りつつ、新しい生前贈与のスキームの中でね、やっぱり調和を図らないといけないでしょう。生前贈与のスキームでは、65歳とか20歳ということはあるけれども、それは 2,000万円でも 3,000万円でも、2億円でも3億円でもいいと考えているわけですから、それは住宅取得に限っているわけではありませんよね。だから、そこにこの総合対応策に住宅取得が入り込んでしまったというのは、向こうの意図というか、先方の意図は 550万円の世界でもっと拡大ということでしょう、多分。それは今の段階では我々としては、そういうことをしないために我々は生前贈与という制度を作って、贈与税・相続税の中で整合のとれた形で資産移転をしたいと思っていますから、そこはちょっと違うんですな。だから、いずれにしても、550万円の世界を生前贈与の世界でどうリンクするかというまだ確定的な案は出ておりませんが、それはやっぱり整合的に考えなければいけないと思っています。
(以上)