総会(第34回)後の石会長記者会見の模様

日時:平成14年10月29日(金)16:14~16:32

石会長

それでは、今日、34回目になりますか、税調総会が終わりましたので、まとめをいたしたいと思います。まとめというか、私がここまで到達した感想を述べたいと思います。

今日で一応、個別の税目につきまして、基礎小、総会という順繰りに繰り返してきたことが終わるわけでありますから、一応皆さんの意見を聴取したと。意見を述べ、意見を交換したという形になると思います。これから次回、基礎問題小委員会を起草会合に変えて、そこで案文を作っていって、5日の日に総会にかけてという、それを1ラウンドずつ繰り返して、そして11月の中旬に我々の答申案をまとめたいと、このように考えております。

そこで、今日、個別の税でお諮りした、法人税でも、相続税・贈与税も、あるいは個別消費税も、これまで使いました資料が主でございますので、もう1回ここでおさらいする必要は全然ないと思いますし、出された意見も大分重複しておりますし、再度強調するという2度目のご発言があったりいたしまして、それはお聞きのとおりだと思っています。

恐らく、皆さんのご関心は、税調として今話題の不良債権の処理、これをどう扱うべきかというところに恐らく今日は議論が集中されると思いますし、私自身もそこに当然のこと関心を持っております。

そこで、明日か明後日、恐らく竹中チームの内容と、それからデフレ対策抱き合わせの総合経済対策が多分出てくるんだと思いますが、今日さまざまな形で議論いたしましたように、不良債権に今あるさまざまな問題を税そのものとして取り扱えるという領域がどれだけあるかということは、慎重に領域を決めなければいけないと思います。

要望側、つまり不良債権の処理の当事者の方から具体的にここが問題で、こうしてくれという議論がまだ出てきていない。それから、当局の方も、こういう形でこうやるという話もまだ出てきていない段階でありますから、それをまず最初に押さえる必要があろうかと思っています。

それから、無税償却、欠損金繰越しの期間を5年から10年にしろとか、あるいは欠損金繰戻し還付制度を凍結しているのを解除しろとかいろいろな議論も出たと同時に、これだけ赤字が続いている金融機関にあって、どれだけの効果があるかねという議論もこれまたありで、それは慎重に、客観的な情報をもう少し集めつつ議論をしたいと思っています。

そういう意味で、私は、税制としてできることがあればやったらいいと思っていますが、そのできることがあればという意味は、政策体系とその整合性ですね。その段階で、不良債権の処理に資するようなものがあれば当然税調としても議論すべきだと思っています。これは、時間も限られてきましたので、起草の段階、それから総会の段階でもう一、二回ずつやる時間があると思いますから、それまで極力事務局にお願いして情報を集めて、何か具体的なことが言えるのであれば、一応そちらの方の議論をしたいと思いますし、来年度税制改革の中に、法人税の中で書くか、その他の項目で書くかは別として、何らかの形で触れて、我々の態度は明らかにしたいと、このように考えています。

そういう意味で、今日、具体的な方向性をどうする、こうするということはまだこれに関して言えませんが、一応、基本的なスタイルとしては、逃げずに、我々としても正面から受けとめたいと、このように考えています。

そういう意味で、今、不良債権の処理というのが日本再生にとって私は個人的に重要だと思っていますので、それに対して税の方から応分の協力ができればいいと思っていますし、その議論は組まれるべきだというふうに考えております。

というわけで、既に何回も繰り返した議論でありますし、それから「これまでの審議状況」という10月29日の資料で、大体この項目に肉づけをし、かつ考えをくっつけるような形でまとまっていくという形になると思いますので、そういう形のものとして受けとめていただき
たいと考えております。

次回は、先ほど申し上げたように、総会は5日、その前に1回起草し、さらに総会で受けた議論のまた修正がございますから、それを受けてさらに起草会合などもやって、それで最終的に11月の中旬、これはまだいつか決まっておりませんが、今年は1カ月早く、我々の年度末の、年度改正に関する答申をまとめ、責任は終えたいと、このように考えています。

簡単でありますが、今日のところのサマリーはそういうことであります。

記者

まず、不良債権処理に関連してのところなんですが、今日の議論を聞いていても、ある種の方向性がある、見えたのかというとそうでもないと思うんですが、これから答申を作るに当たって、方向性を出していかれるのか、議論を続けるという程度にとどまるのか、その辺の見通しを聞かせてください。

石会長

方向はひとえに、具体的な内容がどう固まるかによると思いますよね。そういう意味で、直接償却、間接償却、組み合わせがどうだとか、それから日本の国情に合った形で欠損金繰越しを5年から10年に延ばす、つまりこれは帳簿の管理等々でかなり抵抗もあると聞いておりますので、そういうことを果たして望んでくるのかどうかですね。そういう情報が今の段階では著しく不足しております。

ただ、やはりこれは不良債権の問題を今、国全体を挙げて議論している中でございますから、何らかの基本的な方向が具体的にわかるようなことが言えれば、ぜひ言いたいと思います。言えなければ、税制上で整備を考えるとか何とかという抽象的なものになっちゃうかもしれませんが、なるべく具体性を持たせた方向でできれば考えてみたいと思っています。

記者

それから、総論ような話になるんですが、年明けからずっと1年間議論が続いてきまして、いよいよ最後の答申の起草というところに入ってくるわけですが、1年間を総括して、あるべき税制、それから先行減税の話も途中で入ってきました。1年間総括しての議論を、会長としてどんなふうに思われるか。やや気が早いようですが、お聞かせください。

石会長

いやいや、年の暮れもだんだん迫ってくるから、いいでしょう。

総括というのを急に言われましても、散発的な感想になってしまうかもしれませんが、従来より半年、数カ月早く議論を始めただけのことがあって、内容的にはかなりきめの細かい議論もできましたし、あるべき姿を描いたということで、一応今後の税制改革論議に道筋をつけたという意味では満足しています。

そこで、途中でいろんなものが割り込んできたというのもまた事実でありまして、やはり諮問会議との双方の調整、恐らくいろいろな意味でマスコミをにぎわした面もあったかもしれません。それから、とかくするうちに先行減税論が入ってきまして、かつ短期的な対応、つまり活性化税制をどうするかというような議論が途中から入ってきまして、予想外に守備範囲が広がったかなと考えています。我々、特に私などは、あるべき姿論というのは中長期的な視点からやって、その流れの中でしっかりした将来を見据えればいいと思っていましたから、この短期的な対応、先行減税の具体的な問題をということにつきましては若干の戸惑いも感じましたけど、ただ世論、世間は政府税調が短期的に何を考えているかということを答える、そういう責務もあるわけでありますので、そのあるべき姿論を軸にして、矛盾なくそれなりの議論は展開できたと思っています。

ただ、数量的、期間の問題、数字は入れておりませんが、これは私は政府税調の固有の役割としてそれでいいというふうに会長としても考えています。

そういう意味で、1年たちましたが、これをベースにして来年以降はさらにもっと中長期的なことでやらなきゃいけない問題について、深く理論的に携わっていきたいと、このように考えておりますので、まあまあ、私個人としてはよくやった方かなというふうに、税調の
ほかの委員の方々の活躍も踏まえて、思っています。

記者

もっと中長期的なというところで、今後積み残している課題としてどういうところを重点的にやられるのか。

石会長

まず最初に、金融小委員会を立ち上げて、やはり金融所得課税の一元化というものを早急に議論しなきゃいけない。これは証券税制、非常に今のところクレームも多いし、問題視されておりますから、それを将来的にどう直すかという方向にも当然加わってくるわけでありますから、金融所得課税の一元化を議論する中で二元的所得税の是非、プラス納番についても議論したい、これは早急に立ち上げてもらう必要があろうと思っていますので、年内から始めるか、年明けから始めるかは別として、一番の関心事であります。

それから、例の公益法人関係で、NPOも含めさまざまなことがあるので、早急にワーキンググループを立ち上げますが、いずれにいたしましても、事業体の、S法人的なものを含めて、事業体、法人としての事業体はいずれはやらなきゃいけないと思っていますから、そういう個人と法人の関係を議論することも、いずれ法人課税小委員会でやってもらわなきゃいけないと考えております。

それから、いずれにいたしましても、あるべき税制の姿を着実に第1段階、第2段階、第3段階という形で順を追って設計していかなきゃいけないと思うんですよね。これは恐らく景気の問題もありますし、プライマリーバランスの均衡にかけていつごろから本格的に作業
に入るかということにも絡んでまいりますし、諸々の条件がございますけれども、それは着実にこなしていく仕事として頭に入れておかなきゃいけないと思います。例えば、課税ベースを広げて所得税を見直すといったって、今の段階では中長期的に見直すものを列挙しただけですからね。これを具体的にプログラムに移していくということは、おのずから優先度をつけなきゃいけない。そういう作業もこれからやっていかなきゃならんのかなと思いますし、消費税の問題も当面出てきますし、それから基礎年金の3分の1、2分の1の話も絡まっていますから、そういう意味でやることはこれから山ほどあるんではないかと思っています。

記者

不良債権関係の税制のところなんですけれども、論点は多分3つあって、無税償却の基準が厳しいのかどうなのか、緩和すべきなのかどうかということと、欠損金の繰越控除の期間の問題ですね。それと、いわゆる繰戻し還付の問題があると思うんです。この3点だと思うんです。これについて、税制の専門家のお立場から、今の日本の制度、例えば繰越期間は5年で欧米より短いとか、繰戻し還付を停止されているのはどうかとか、この点についてご見解をお聞かせ願いたいんですが。

石会長

恐らく、今のご発言の背後には、アメリカ型に税効果会計を持っていくなら、アメリカ型の欠損金繰越し期間とか無税償却とかいろいろあるだろうという形で、従来やってきました間接償却の流れと違った要素が入り込む余地がありますね。それで、従来やってきた方法に新しいものを突っ込んでうまく調和できるのか、あるいはそれを入れると従来の流れが大きく狂って何ら問題が出てくるのか、これはもうちょっと情報を集めたり、それから当事者間の議論を聞いてみないとわかりませんので、いずれにいたしましても、私は無税償却、欠損金繰越し期間の延長等々は当然のこと議論の中には入ってくると思います、その是非はね。ただ、それが今できるかどうかわかりません。というのは、引当金で積んでおいて、言うなれば繰延税金資産として持っていくというルートが現に存在していて、そこが疑われているわけですね、ある意味では。健全な資本になるかどうか。その問題がありますから何とも言えませんが、新しい要素として今言った3点、これは日本として導入の是非は税調としても議論しなきゃいけないと思っています。

それから、今日も議論になりましたように、これは金融機関だけの話なのか、一般事業会社にまで及ぶのか、こんな議論も恐らく議論として上ると思いますが、いずれにいたしましても、明日か明後日出るであろう竹中チームの案も含めて、内容がわかってからの議論だというふうに考えています。

記者

先週の金曜日に、与党がデフレ対策に対しての要望というか案をまとめていますけれども、その中で、特に法人税について、政策減税を中心ということになるかと思いますけれども、2兆円規模といった規模を明示しています。会長が言われているのは、今1兆円ぐらいのところが念頭にあるかと思いますけれども、もう1兆円上積みするといってもなかなか玉があるのかという問題もありますし、そうすると一般減税の扱いはどうなるのかとか、そういうこともあるかもしれませんけれども、この2兆という数字を実際の与党の中での合意として出しているわけなんで、それなりに重みもあるかと思うんですけれども、これはどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。

石会長

与党ですね、自民党税調じゃないのね。与党の方ね。重みがあるかどうかわからないけれども、1つの積算のめど、2兆なら2兆、そこへ積み上げていく根拠にはなるでしょうね。ひとえに、私はぼーんとマクロ的な動向で、腰だめ的に、例えばGDPの 0.5%、2.5兆と
かね、1兆を大きく超える規模の額で2兆とかね、腰だめ的と言っては失礼ですが、そういう形の数字が出ておりますが、ひとえに減税の中身をどうするかという議論がどうしてもやっぱり一番重要になってくると思いますよね。そういう意味で、研究開発・設備投資減税、
プラス、今考えている土地税制、土地の流通のところが今有力な候補ですよね。そういう意味で、どれだけのことができるかわかりませんが、極力そっちの範囲で、政治的な判断も踏まえて、規模を決めていくべきだと思いますね。

ただ、ここで急に法人税率まで行くかどうか、これはまさに政治的な判断も踏まえての話でありますが、法人税率というのはまさか1%というわけにいかないよね。やるなら2%とか3%とか、もうちょっと固まった話でしょう。その固まった話を今この段階で急にぼんとつけ加えるかどうかとなると、私は、いずれ射程距離へ入れて議論するとしてもですね、他の手段でも何とかなる、1.5兆とか2兆なんていう話が仮に出たとしても、何とかなるんじゃないかという気がしていますけど。

記者

さっきのお話の不良債権処理の関係の税制面での対応が何かできないかという話で、当事者からの意見を聞くとおっしゃっているんだけれども、これはどういうことでしょうか。

石会長

意見を我々が直接聞くわけじゃないですよ。

記者

当事者の議論を聞かなくちゃいけないというのは、これはどういう意味ですか。

石会長

要するに、今日は全銀協の室町さんもちょっとご発言になっていましたけどね、これは事務局にいろいろ資料、データ、当面そろえてくれといったときに、まだ正式に金融庁からも、あるいは全銀協からも、そういうまさにこの不良債権問題の直接の担当の方からは、正式にですよ、具体的にこうこうという意見は上がってきていないという意味において、何かその辺の情報が必要だろうというんで言ったんです。我々税調が直接会って云々ということはない。恐らくそれは、僕は竹中チームの方でいろいろやった結果として、情報の一端として出されるんじゃないかと思っていますので、それを踏まえてかなという感じは持っています。

ただ、税制そのものについての恐らくいろいろな要望なり問題点というのは、竹中チームの案が出てからもっと顕在化し、かつある意味では税調が携わる領域に出てくるんだったら、そこでまた議論を、情報を集めてという意味です。

いずれにしても、数日間待たないことには、どういう情報が必要で、どういう話に加わっていくか、ちょっとわかりにくいですよね、まだね。ただ、逃げずにそこは対応したいと考えています。

(以上)